JP2010103720A - 弾性表面波デバイス - Google Patents
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Abstract
【課題】圧電基板に水晶基板を用い、SH波を利用した、端面反射波の影響が少なく、小型化したSAWデバイスを提供する。
【解決手段】SAWデバイス10は、水晶基板71と、水晶基板上に形成されAl又はAlを主成分とする合金からなるIDT電極72とを備え、水晶基板は、そのカット角θを結晶X軸を回転軸とした結晶Z軸の回転角度とし、結晶+Z軸から結晶+Y軸側へ回転させる方向を前記カット角が負となる回転方向とした時に、カット角を結晶Z軸より−64.0°<θ<−49.3°の範囲に設定し、且つ、弾性表面波の伝搬方向を結晶X軸に対し90°±5°とした水晶平板であり、励振する弾性表面波の波長をλとした時、IDT電極の波長で基準化した電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12とした励振波をSH波としたSAWデバイスであって、弾性表面波の伝搬方向と水晶基板の長辺方向の間のなす傾斜角θEを0°<θE<3°とする。
【選択図】図9
【解決手段】SAWデバイス10は、水晶基板71と、水晶基板上に形成されAl又はAlを主成分とする合金からなるIDT電極72とを備え、水晶基板は、そのカット角θを結晶X軸を回転軸とした結晶Z軸の回転角度とし、結晶+Z軸から結晶+Y軸側へ回転させる方向を前記カット角が負となる回転方向とした時に、カット角を結晶Z軸より−64.0°<θ<−49.3°の範囲に設定し、且つ、弾性表面波の伝搬方向を結晶X軸に対し90°±5°とした水晶平板であり、励振する弾性表面波の波長をλとした時、IDT電極の波長で基準化した電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12とした励振波をSH波としたSAWデバイスであって、弾性表面波の伝搬方向と水晶基板の長辺方向の間のなす傾斜角θEを0°<θE<3°とする。
【選択図】図9
Description
本発明は、水晶基板を用いた弾性表面波デバイスにおいて、端面反射波の影響を小さくした弾性表面波デバイスに関する。
近年、弾性表面波(Surface Acoustic Wave:以下、SAW)デバイスは移動体通信用端末や車載用機器等の部品として幅広く利用され、小型であること、Q値が高いこと、周波数温度特性が優れていること等が強く要求されている。
これらの要求を実現するSAWデバイスとして、STカット水晶基板を用いたSAWデバイスがある。圧電基板のカット角θを結晶X軸を回転軸とした結晶Z軸の回転角度とし、結晶+Z軸から結晶+Y軸側へ回転させる方向を前記カット角θが負となる回転方向とした時に、STカット水晶基板はXZ面を結晶Z軸より42.75°回転した面(XZ’面)を持つ水晶板のカット名であり、結晶X軸方向に伝搬するレイリー波と呼ばれる(P+SV)波であるSAW(以下、STカット水晶SAWと称す)を利用する。STカット水晶SAWデバイスの用途は、発振素子として用いられるSAW共振子や、移動体通信端末のRF段とIC間に配置されるIF用フィルタなど幅広く存在する。
しかしながら、前記STカット水晶SAWデバイスは、1次温度係数は零であるが、2次温度係数は−0.034(ppm/℃2)と比較的大きいので、使用温度範囲を拡大すると周波数変動量が極端に大きくなってしまうという問題があった。
そこでこの問題を解決する手法として、非特許文献1及び特許文献1に開示されたSAWデバイスがある。このSAWデバイスは、図11に示すように回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より−50°回転した付近に設定し、且つ、SAWの伝搬方向を結晶X軸に対して垂直方向(Z’軸方向)にしたことが特徴である。なお、前述のカット角をオイラー角で表示する場合は(0°,θ+90°,90°)=(0°,40°,90°)となる。
このSAWデバイスは、圧電基板の表面直下を伝搬するSH波をIDTによって励起し、その振動エネルギーを電極直下に閉じ込めることを特徴としていて、周波数温度特性が3次曲線となり、使用温度範囲における周波数変動量が極めて少なくなるので良好な周波数温度特性が得られる。
しかしながら、前記SH波は基本的に基板内部に潜って進んでいく波である為、圧電基板表面に沿って伝搬するSTカット水晶SAWと比較してグレーティング反射器によるSAWの反射効率が悪い。従って、小型で高QなSAWデバイスを実現し難いという問題がある。また、前述の先行文献においてもSAWの反射を利用しない遅延線としての応用については開示されているものの、SAWの反射を利用したデバイスへの応用は提案されておらず、発振素子やフィルタ素子としての実用化は困難であると言われていた。
この問題を解決すべく、特許文献2では、図12に示すように回転Yカット水晶基板のカット角θを−50°付近に設定し、SAWの伝搬方向を結晶X軸に対し垂直方向(Z’軸方向)にした圧電基板111上に800±200対もの多対のIDT112を形成することにより、グレーティング反射器を利用せずIDT112自体の反射だけでSAWエネルギーを閉じ込め高Q化を図った所謂多対IDT型SAW共振子が開示されている。
しかしながら、前記多対IDT型SAW共振子はグレーティング反射器を設けたSAW共振子と比較して効率的なエネルギー閉じ込め効果が得られず、高いQ値を得るのに必要なIDT対数が800±200対と非常に多くなってしまうので、STカット水晶SAW共振子よりもデバイスサイズが大きくなってしまい、近年の小型化の要求に応えることができないという問題があった。
また、特許文献2に開示されているSAW共振子においては、IDTにて励振されたSAWの波長をλとした時、電極膜厚を2%λ以上、好ましくは4%λ以下にすることによりQ値を高めることができるとされており、共振周波数200MHzの場合、4%λ付近でQ値が飽和に達するが、その時のQ値は20000程度しか得られずSTカット水晶SAW共振子と比較してもほぼ同等のQ値しか得られない。この原因として、膜厚が2%λ以上4%λ以下の範囲ではSAWが圧電基板表面に十分集まっていないので反射が効率良く利用できないことが考えられる。
そこで、本発明者は特許文献3にて、回転Yカット水晶基板のカット角θを、結晶X軸を回転軸とした結晶Z軸の回転角度とし、結晶+Z軸から結晶+Y軸側へ回転させる方向を前記カット角θが負となる回転方向とした時に結晶Z軸より−64.0°<θ<−49.3°、好ましくは−61.4°<θ<−51.1°の範囲に設定し、且つ、弾性表面波の伝搬方向を結晶X軸に対し90°±5°とした水晶平板上に、Al又はAlを主成分とする合金からなるIDTを形成し、該IDTのSAWの波長で基準化した電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12、好ましくは0.05<H/λ<0.10としたSAWデバイスを発明した。当該発明によれば、本来、圧電基板内部に潜って進んでいく波を基板表面に集中させてグレーティング反射器等によりSAWの反射を効率良く利用することができるので、従来のSTカット水晶SAWデバイスと比較して小型でQ値が高く、且つ周波数温度特性に優れたSAWデバイスが実現できる。
ところで、小型化されたSAWデバイスは、弾性波が伝搬する基板の大きさを十分に長くとれない。このため、反射器の本数が制限され表面波の振動エネルギーが反射器間で十分に吸収されず、基板端面に達し、端面での反射によるスプリアスが発生することが知られている。
この反射波を抑制するため、反射器の両端に、振動エネルギー吸収のためのアブソーバを塗布して減衰させる方法や、電極の裏面を粗面加工して裏面からの反射を減衰させる方法がある。また特許文献4では、弾性表面波の主伝搬方向に垂直な方向と圧電性基板の端面のなす角度θを3°〜8°の範囲で反射波を抑制することが開示されている。
特公昭62−016050号公報
特公平01−034411号公報
国際公開第WO2005/099089A1号パンフレット
特開2000−341083号公報
Meirion Lewis,"SurfaceSkimming Bulk Wave,SSBW", IEEE UltrasonicsSymp. Proc.,pp.744〜752 (1977)
しかしながら特許文献4に示すSAWデバイスでは、角度θを3°〜8°の範囲に設定すると十分なスプリアス抑制効果が得られると記載されているが、角度θが増加するにしたがって、圧電基板の短辺方向の幅寸法が長くなり、デバイス全体の小型化が困難であるという問題がある。また、特許文献4の圧電基板は材質に一例としてニオブ酸リチウム単結晶を用いることが開示されているが、これ以外の材質については開示されていない。また特許文献3では基板端面の反射波については言及されておらず、反射波の抑制について検討の余地がある。
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、圧電基板に水晶基板を用いSH波を利用したSAWデバイスにおいて、端面反射波の影響を少なくし、小型化したSAWデバイスを提供することを目的とする。
本発明は上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
〔適用例1〕圧電基板と、該圧電基板上に形成されAl又はAlを主成分とする合金からなるIDTとを備え、前記圧電基板は、そのカット角θを結晶X軸を回転軸とした結晶Z軸の回転角度とし、結晶+Z軸から結晶+Y軸側へ回転させる方向を前記カット角θが負となる回転方向として、−64.0°<θ<−49.3°の範囲に設定し、且つ、弾性表面波の伝搬方向を結晶X軸に対し90°±5°とした水晶平板からなる回転Yカット水晶基板であり、励振する弾性表面波の波長をλとした時、前記IDTの波長で基準化した電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12とした励振波をSH波とした弾性表面波デバイスであって、
前記弾性表面波の伝搬方向と前記圧電基板の長辺方向のなす傾斜角θEを0°<θE<3°とすることを特徴とした弾性表面波デバイス。
〔適用例1〕圧電基板と、該圧電基板上に形成されAl又はAlを主成分とする合金からなるIDTとを備え、前記圧電基板は、そのカット角θを結晶X軸を回転軸とした結晶Z軸の回転角度とし、結晶+Z軸から結晶+Y軸側へ回転させる方向を前記カット角θが負となる回転方向として、−64.0°<θ<−49.3°の範囲に設定し、且つ、弾性表面波の伝搬方向を結晶X軸に対し90°±5°とした水晶平板からなる回転Yカット水晶基板であり、励振する弾性表面波の波長をλとした時、前記IDTの波長で基準化した電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12とした励振波をSH波とした弾性表面波デバイスであって、
前記弾性表面波の伝搬方向と前記圧電基板の長辺方向のなす傾斜角θEを0°<θE<3°とすることを特徴とした弾性表面波デバイス。
本発明は弾性表面波の伝搬方向と圧電基板の長辺方向のなす角度(傾斜角)θEを0°<θEの範囲に設定しているので、等価抵抗値を低抵抗化し、水晶基板の端面からの反射波の影響を防止できる。またなす角度θEを3°よりも小さく設定しているので水晶基板の短辺方向の長さを短く形成することができ、デバイスの小型化を図ることができる。
以下、本発明のSAWデバイスの実施形態を添付の図面を参照しながら詳細に説明する。まず本発明の元となった特願2004−310452のSH波型表面波について説明する。SH波型表面波は、図1(a)に示すように、圧電基板のカット角θを結晶X軸を回転軸とした結晶Z軸の回転角度とし、結晶+Z軸から結晶+Y軸側へ回転させる方向を前記カット角θが負となる回転方向とした時に、Yカット水晶基板の回転角θを結晶Z軸より約−50°とし、結晶軸Xに対し90°±5°方向に伝搬するSH波型の表面波である。図1(b)はSH波型SAW共振子であって、水晶基板1の主面上にZ’軸方向に沿ってIDT電極2を配置すると共に、該IDT電極2の両側にグレーティング反射器3a、3bを配設してSH波型SAW共振子を構成する。IDT電極2は互いに間挿し合う複数の電極指を有する一対の櫛形電極より構成され、それぞれの櫛形電極よりリード電極を伸ばす。
IDT電極2、グレーティング反射器3a、3bの電極材料はアルミニウム(Al)又はAlを主成分とする合金とし、IDT電極2、グレーティング反射器3a、3bの電極膜厚HをSH波型表面波の波長λで基準化したH/λを基準化電極膜厚、IDT電極2を構成する電極指幅をL、電極指幅Lと電極指間のスペースSとの和を(L+S)としたとき、L/(L+S)をライン占有率mrとし、特に記述しないときは、mr=0.60を用いる。
本発明においては、従来の欠点を鑑みて電極膜厚H/λを従来より大きく設定することで、SAWを圧電基板表面に集中させて、グレーティング反射器によりSAWの反射を効率良く利用できるようにし、少ないIDT対数やグレーティング反射器本数でもSAWエネルギーをIDT内に閉じ込めるようにしてデバイスサイズの小型化を図った。
図2は、図1に示すSH波型SAW共振子において、圧電基板1に−51°回転Yカット90°X伝搬水晶基板(オイラー角表示では(0°,39°,90°))を用い、共振周波数を315MHz、電極膜厚H/λを0.06、IDT2の対数を100対、グレーティング反射器3a、3bの本数を各々100本とした場合のSH型共振子の周波数温度特性(実線)を示した図である。また比較のために、圧電基板の大きさを同一にしたSTカット水晶SAW共振子の周波数温度特性を破線で示し併記している。
図2よりSH波型SAW共振子と従来のSTカット水晶SAW共振子とを比較すると、Q値が1.8倍強、figure of meritが約2倍と大きい値が得られている。また、周波数温度特性については、頂点温度Tpは常温である約+25℃が得られ、2次温度係数は従来の約0.6倍程度に小さくなるという非常に優れた効果が確認された。
更に、SH波型SAW共振子は従来のSTカット水晶SAW共振子よりも良好なQ値を保ちながら圧電基板のサイズを小型化できる。これは、SH波型SAW共振子の電極膜厚H/λの増加に対するIDT又はグレーティング反射器でのSAWの反射量の増加分が、STカット水晶SAW共振子と比較して著しく大きいことに起因する。即ち、SH波型SAW共振子は電極膜厚H/λを大きくすることで、STカット水晶SAW共振子よりも少ないIDT対数又はグレーティング反射器本数で高いQ値を実現可能である。
図3はSH波型SAW共振子における電極膜厚H/λとQ値の関係を示したものであり、共振子設計条件は前述と同等である。同図より、0.04<H/λ<0.12の範囲においてSTカット水晶SAW共振子のQ値(=15000)を上回る値が得られることが分かる。更に、0.05<H/λ<0.10の範囲に設定することにより20000以上もの高いQ値が得られる。
また、特許文献2にある多対IDT型SAW共振子とSH波型SAW共振子のQ値を比較すると、特許文献2で得られているQ値は共振周波数が207.561(MHz)における値であり、これを本実施例で適用している共振周波数315(MHz)に換算するとQ値は15000程度となるから、STカット水晶SAW共振子とほぼ同等である。また、共振子のサイズを比較すると、特許文献2の多対IDT型SAW共振子は800±200対もの対数が必要なのに対し、本発明ではIDTとグレーティング反射器の両方で200対分の大きさで十分であるので格段に小型化できる。従って、電極膜厚を0.04<H/λ<0.12の範囲に設定し、グレーティング反射器を設けて効率良くSAWを反射することで、特許文献2に開示されている多対IDT型SAW共振子よりも小型で且つQ値が高いSAWデバイスを実現できる。
次に、図4はSH波型SAW共振子における電極膜厚H/λと2次温度係数の関係を示しており、共振子設計条件は前述と同等である。同図より、高いQ値が得られる0.04<H/λ<0.12の範囲においてSTカット水晶SAW共振子の2次温度係数−0.034(ppm/℃2)よりも良好な値が得られることが分かる。
以上より、電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12の範囲に設定することで、STカット水晶SAWデバイス及び特許文献2に開示されているSAWデバイスよりも小型でQ値が高く、且つ周波数安定性に優れたSAWデバイスを提供できることが確認された。
また、これまでカット角θを−51°とした場合についてのみ示してきたが、SH波型SAW共振子においてはカット角θを変えても膜厚依存性は大きく変化せず、−51°から数度ずれたカット角においても電極膜厚を0.04<H/λ<0.12の範囲に設定することで、良好なQ値と2次温度係数が得られることを確認した。
ところで、本発明のSH波型SAW共振子は、非常に広い温度範囲では3次的な温度特性となるが、特定の狭い温度範囲では2次特性と見なすことができ、その頂点温度Tpは電極膜厚やカット角によって変化する。従って、いくら周波数温度特性が優れていても頂点温度Tpが使用温度範囲外となってしまうと周波数安定性は著しく劣化してしまうので、実用的な使用温度範囲(−50℃〜+125℃)において優れた周波数安定性を実現するには、2次温度係数だけでなく頂点温度Tpについても詳細に検討する必要がある。
図5(a)は、本発明のSH波型SAW共振子においてカット角θを−50.5°としたときの電極膜厚H/λと頂点温度Tpの関係を示している。図5(a)から明らかなように、電極膜厚H/λを大きくすると頂点温度Tpは下がり、電極膜厚H/λと頂点温度Tpの関係は次の近似式で表わされる。
また、−50°近傍のカット角においても切片を除けばおおよそ数式1が適用できる。
また、図5(b)は、本発明のSAW共振子において電極膜厚H/λを0.06とした時のカット角θと頂点温度Tpの関係を示している。図5(b)から明らかなように、カット角θの絶対値を小さくすると頂点温度Tpは下がり、カット角θと頂点温度Tpの関係は次の近似式で表わされる。
数式1及び数式2から電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12とした時に頂点温度Tpを実用的な使用温度範囲(−50〜+125℃)に設定するには、カット角θを−59.9°≦θ≦−48.9°の範囲に設定すれば良いことが分かる。
また、電極膜厚H/λとカット角θの双方を考慮する場合、頂点温度Tpは数式1及び数式2から次の近似式で表わされる。
数式3より、頂点温度Tpを使用温度範囲(−50〜+125℃)に設定するには、次式で表される範囲に電極膜厚H/λ及びカット角θを設定すれば良い。
このように、本発明ではカット角θが−59.9°≦θ≦−48.9°の範囲にある回転Yカット水晶基板を用い、SAWの伝搬方向がX軸に対してほぼ垂直方向として励振されるSH波を用い、IDT電極やグレーティング反射器の電極材料をAlまたはAlを主とした合金にて構成し、その電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12とすることで、STカット水晶SAWデバイスより小型で、且つQ値が大きく、且つ周波数安定性の優れているSAWデバイスを実現できる。
ここで、より最適な条件について検討すると、電極膜厚H/λは図3よりQ値として20,000以上が得られる0.05<H/λ<0.10の範囲に設定するのが好ましい。また、頂点温度Tpをより実用的な使用温度範囲(0°〜+70℃)に設定するためには、カット角θは−55.7°≦θ≦−50.2°の範囲に設定するのが好ましく、更には、数式3より得られる次式の範囲にカット角θ及び電極膜厚H/λを設定するのが好ましい。
以上では、図5(a)のカット角θを−50.5°とした時の電極膜厚H/λと頂点温度Tpの関係、及び図5(b)の電極膜厚H/λを0.06とした時のカット角θと頂点温度Tpの関係から、頂点温度Tpが実用的な使用温度範囲に入るような電極膜厚H/λとカット角θの関係式を導き出したが、更にカット角θの範囲を広げて実験を行ったところ、より詳細な条件を見出すことができたので以下説明する。
図6から、頂点温度Tp(℃)を実用的な範囲である−50≦Tp≦+125に設定するには、Tp=−50℃及びTp=+125℃の曲線に囲まれた領域、即ち、−1.34082×10−4×θ3−2.34969×10−2×θ2−1.37506×θ−26.7895<H/λ<−1.02586×10−4×θ3−1.73238×10−2×θ2−0.977607×θ−18.3420となるようにカット角θ及び電極膜厚H/λを設定すれば良いことが分かる。また、この時の電極膜厚H/λの範囲は、従来のSTカット水晶デバイスより優れた特性が得られる0.04<H/λ<0.12とし、カット角θの範囲は図6の点Aから点Bに示す範囲の−64.0<θ<−49.3とする必要がある。
更に、より最適な条件について検討すると、頂点温度Tp(℃)はより実用的な使用温度範囲である0≦Tp≦+70に設定するのが望ましい。Tp(℃)を前述の範囲に設定するには、図6に示すTp=0℃及びTp=+70℃の曲線に囲まれた領域、即ち、−1.44605×10−4×θ3−2.50690×10−2×θ2−1.45086×θ−27.9464<H/λ<−9.87591×10−5×θ3−1.70304×10−2×θ2−0.981173×θ−18.7946となるようにカット角θ及び電極膜厚H/λを設定すれば良い。また、電極膜厚H/λはQ値が20,000以上得られる0.05<H/λ<0.10の範囲にするのが望ましく、電極膜厚を前述の範囲とし、頂点温度Tp(℃)を0≦Tp≦+70の範囲内に設定するには、カット角θを図6の点Cから点Dに示す範囲の−61.4<θ<−51.1に設定する必要がある。
以上、詳細に検討した結果、カット角θが−64.0°<θ<−49.3°、好ましくは−61.4°<θ<−51.1°の範囲にある回転Yカット水晶基板を用い、表面波の伝搬方向がX軸に対してほぼ垂直方向として励振されるSH波を用い、IDT電極やグレーティング反射器の電極材料をAlまたはAlを主とした合金にて構成し、その電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12、好ましくは0.05<H/λ<0.10とすることで、STカット水晶SAWデバイスよりQ値が大きく優れた温度特性が得られると共に、頂点温度Tpを実用的な使用温度範囲内に設定できることを見出した。
ところで、これまでIDTのライン占有率mrを0.60と固定したときの例について説明してきたが、以下ではライン占有率を変数に含めた場合のTp特性について検討した。図7は、電極膜厚とライン占有率の積(H/λ)×mrと頂点温度Tpの関係を示している。なお、縦軸は頂点温度Tp(℃)を、横軸は電極膜厚とライン占有率との積(H/λ)×mrを示しており、このときの水晶基板のカット角θは−51.5°としている。図7に示すように、電極膜厚とライン占有率の積(H/λ)×mrの値を大きくする程、頂点温度Tpは下がることが分かる。
次に、図8は頂点温度Tp(℃)がTp=−50,0,+70,+125である時の水晶基板のカット角θと電極膜厚とライン占有率の積(H/λ)×mrの関係を示している。なお、各Tp特性の近似式は以下の通りである。
図8から、頂点温度Tp(℃)を実用的な範囲である−50≦Tp≦+125に設定するには、Tp=−50℃及びTp=+125℃の曲線に囲まれた領域、即ち、−8.04489×10−5×θ3−1.40981×10−2×θ2−0.825038×θ−16.0737<H/λ×mr<−6.15517×10−5×θ3−1.03943×10−2×θ2−0.586564×θ−11.0052となるようにカット角θ及び電極膜厚とライン占有率の積H/λ×mrを設定すれば良いことが分かる。また、この時の電極膜厚H/λの範囲は従来のSTカット水晶デバイスより優れた特性が得られる0.04<H/λ<0.12とし、カット角θの範囲は−64.0<θ<−49.3とする必要がある。
また、頂点温度Tp(℃)をより実用的な使用温度範囲である0≦Tp≦+70に設定するには、図8に示すTp=0℃及びTp=+70℃の曲線に囲まれた領域、即ち、−8.67632×10−5×θ3−1.50414×10−2×θ2−0.870514×θ−16.7678<H/λ×mr<−5.92554×10−5×θ3−1.02183×10−2×θ2−0.588704×θ−11.2768となるようにカット角θ及び電極膜厚とライン占有率の積(H/λ)×mrを設定すれば良い。また、この時の電極膜厚H/λはQ値が20,000以上得られる0.05<H/λ<0.10とするのが望ましく、電極膜厚を前述の範囲とし、且つ、頂点温度Tp(℃)を0≦Tp≦+70の範囲内に設定するには、カット角θは−61.4<θ<−51.1とするのが望ましい。
以上の種々のSAWデバイスにおいて、圧電基板に回転Yカット水晶基板のカット角θを結晶Z軸より−64.0°<θ<−49.3°、好ましくは−61.4°<θ<−51.1°の範囲に設定し、弾性表面波の伝搬方向を結晶X軸に対し90°±5°とした水晶平板を用い、電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12、好ましくは0.05<H/λ<0.10の範囲に設定すれば、本発明と同様な効果が得られることは明らかである。
また上述のSAWデバイスにおいて、IDTやグレーティング反射器上にSiO2等の保護膜やAlを陽極酸化した保護膜等を形成し、またAl電極の上部あるいは下部に密着層あるいは耐電力向上等の目的で別の金属薄膜を形成した場合においても、本発明と同様の効果を得られることは明らかである。また、センサ装置やモジュール装置、発振回路等に本発明のSAWデバイスが適用できることは言うまでもない。また、電圧制御SAW発振器(VCSO)等に本発明のSAWデバイスを用いれば、容量比γを小さくできるので周波数可変幅を大きくとれる。
また、本発明のSAWデバイスは、SAWチップとパッケージをワイヤボンディングした構造以外でも良く、SAWチップの電極パッドとパッケージの端子とを金属バンプで接続したフリップチップボンディング(FCB)構造や、配線基板上にSAWチップをフリップチップボンディングしSAWチップの周囲を樹脂封止したCSP(Chip Size Package)構造、或いは、SAWチップ上に金属膜や樹脂層を形成することによりパッケージや配線基板を不要としたWLCSP(Wafer Level Chip Size Package)構造等にしても良い。更には、水晶デバイスを水晶又はガラス基板で挟んで積層封止したAQP(All Quartz Package)構造としても良い。前記AQP構造は、水晶又はガラス基板で挟んだだけの構造であるのでパッケージが不要で薄型化が可能であり、低融点ガラス封止や直接接合とすれば接着剤によるアウトガスが少なくなりエージング特性に優れた効果を奏する。
次に本発明のSAWデバイス10について以下説明する。図9は本発明に係るSH波型のSAWデバイスの構成を示す平面図である。圧電基板となる水晶基板71は、図1(a)に示したように、圧電基板のカット角θを結晶X軸を回転軸とした結晶Z軸の回転角度とし、結晶+Z軸から結晶+Y軸側へ回転させる方向を前記カット角θが負となる回転方向とした時に、Yカット水晶基板の回転角θを結晶軸Zより約−50°とし、結晶軸Xに対し90°±5°方向(Z’軸方向)に伝搬するSH波型表面波を励起する基板を用いる。そして水晶基板71上にIDT電極(IDT)72およびグレーティング反射器73a,73bを配置し形成する方法は、アルミニウムあるいはアルミニウムを主成分とする合金を蒸着あるいはスパッタリング等で付着させ、ホトリソグラフィ手法で形成している。このときIDT電極72の弾性表面波の伝播方向L1は、水晶基板71の長辺方向L2に対して所定角度に傾けている。ここで本発明ではIDT電極72が励起する表面波、すなわち弾性表面波の伝播方向L1と水晶基板71の長辺方向L2との間のなす角度を傾斜角θEと定義する。
図10は等価抵抗値R1の平均値(Ave)及び標準偏差(σ)と、傾斜角θEの関係を示すグラフである。横軸は傾斜角θE(°)を示し、左縦軸は等価抵抗値R1の平均値(Ω)、右縦軸は等価抵抗値R1に標準偏差(Ω)を示す。図示のように傾斜角θEが0°のとき、すなわち弾性表面波の伝播方向L1と水晶基板71の長辺方向L2とが平行の場合、等価抵抗値R1の平均値は約16Ωであり、等価抵抗値R1の標準偏差は3.0Ωを示している。これは端面反射波がIDT電極71で受信され等価抵抗値R1の特性が劣化し、抵抗値のばらつきが生じていることが考えられる。次に傾斜角θEが2.0°のとき、等価抵抗値R1の平均値は約15.6Ωであり、等価抵抗値R1の標準偏差は約0.5Ωを示している。また傾斜角θEが3.0°のとき、等価抵抗値R1の平均値は約15.7Ωであり、等価抵抗値R1の標準偏差は約0.5Ωを示している。グラフに示すように、傾斜角θEが0°より大きい僅かな角度でも等価抵抗値R1の平均値及び標準偏差は、減少する傾向にあり、傾斜角θEが1.5°以上では等価抵抗値R1の平均値は15.6〜15.7Ωの間で略飽和状態に達している。そして等価抵抗値R1の標準偏差も略0.5Ωを示し、抵抗値R1のばらつきが減少している。
そこで本発明の水晶基板71上の配置するIDT電極72およびグレーティング反射器73a,73bは、傾斜角θEを0°<θE<3°の範囲で配置し形成している。
このように水晶基板71にIDT電極72と、その両側にグレーティング反射器73a、73bとを配置して、SH波型のSAWデバイス10を構成する。なおIDT電極72は、互いに間挿し合う複数の電極指を有する一対の櫛形電極より形成され、それぞれの櫛形電極よりリード電極を伸ばして二端子とする。
また、水晶基板71のカット角θ、電極材料、IDT電極の基準化電極膜厚H/λ(λはSH波型表面波の波長)、ライン占有率mr(電極指幅Lとスペース幅Sとの和に対する電極指幅Lの比)等は、前述した特願2004−310452号に基づくものとする。
このような本発明のSH波型のSAWデバイスによれば、傾斜角θEを0°<θEに設定することで、等価抵抗値が低抵抗化し、端面反射波がIDT電極に入力されることがなく、スプリアスの影響を防止できる。また傾斜角θEを3°よりも小さく設定しているので、水晶基板の短辺方向の厚みを短く形成することができ、したがってデバイス全体の小型化を図ることができる。
1………圧電基板、2………IDT、3a、3b………グレーティング反射器、4a、4b………入出力用パッド、5a、5b………金属ワイヤ、6………パッケージ、10………SAWデバイス、71………水晶基板、72………IDT電極、73………グレーティング反射器。
Claims (1)
- 圧電基板と、該圧電基板上に形成されAl又はAlを主成分とする合金からなるIDTとを備え、
前記圧電基板は、そのカット角θを結晶X軸を回転軸とした結晶Z軸の回転角度とし、結晶+Z軸から結晶+Y軸側へ回転させる方向を前記カット角θが負となる回転方向として、−64.0°<θ<−49.3°の範囲に設定し、且つ、弾性表面波の伝搬方向を結晶X軸に対し90°±5°とした水晶平板からなる回転Yカット水晶基板であり、
励振する弾性表面波の波長をλとした時、前記IDTの波長で基準化した電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12とした励振波をSH波とした弾性表面波デバイスであって、
前記弾性表面波の伝搬方向と前記圧電基板の長辺方向のなす傾斜角θEを0°<θE<3°とすることを特徴とした弾性表面波デバイス。
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-
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