JPWO2006109661A1 - 2,3,4−トリフルオロ−5−(ヨード又はブロモ)安息香酸の製造方法 - Google Patents

2,3,4−トリフルオロ−5−(ヨード又はブロモ)安息香酸の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JPWO2006109661A1
JPWO2006109661A1 JP2007512940A JP2007512940A JPWO2006109661A1 JP WO2006109661 A1 JPWO2006109661 A1 JP WO2006109661A1 JP 2007512940 A JP2007512940 A JP 2007512940A JP 2007512940 A JP2007512940 A JP 2007512940A JP WO2006109661 A1 JPWO2006109661 A1 JP WO2006109661A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
acid
agent
trifluoro
bromo
oxidizing agent
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2007512940A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5025466B2 (ja
Inventor
博司 小谷野
博司 小谷野
仁 飯倉
仁 飯倉
義明 一色
義明 一色
靖典 河内
靖典 河内
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Chugai Pharmaceutical Co Ltd
Original Assignee
Chugai Pharmaceutical Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Chugai Pharmaceutical Co Ltd filed Critical Chugai Pharmaceutical Co Ltd
Priority to JP2007512940A priority Critical patent/JP5025466B2/ja
Publication of JPWO2006109661A1 publication Critical patent/JPWO2006109661A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5025466B2 publication Critical patent/JP5025466B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07CACYCLIC OR CARBOCYCLIC COMPOUNDS
    • C07C51/00Preparation of carboxylic acids or their salts, halides or anhydrides
    • C07C51/347Preparation of carboxylic acids or their salts, halides or anhydrides by reactions not involving formation of carboxyl groups
    • C07C51/363Preparation of carboxylic acids or their salts, halides or anhydrides by reactions not involving formation of carboxyl groups by introduction of halogen; by substitution of halogen atoms by other halogen atoms

Abstract

本発明は、2,3,4−トリフルオロ−5−(ヨード又はブロモ)安息香酸の製造方法であって、2,3,4−トリフルオロ安息香酸を、酸化剤の存在下、反応溶媒中で、ヨード化剤又はブロモ化剤で直接ヨード化又はブロモ化するハロゲン化工程を備える方法を提供する。本発明によれば、高収率、高純度で、高位置選択的、簡便に2,3,4−トリフルオロ−5−(ヨード又はブロモ)安息香酸を製造する方法が提供される。

Description

本発明は、2,3,4−トリフルオロ−5−(ヨード又はブロモ)安息香酸の製造方法、すなわち、2,3,4−トリフルオロ安息香酸の5位ヨード又はブロモ置換物の製造方法に関する。
2,3,4−トリフルオロ−5−(ヨード又はブロモ)安息香酸は、医薬品・農薬等の合成中間体として有用であり、例えば、特に抗癌剤として有用な、特許文献1に記載のジフェニルアミン類を製造するための重要な中間体として用いることができる。
2,3,4−トリフルオロ−5−ブロモ安息香酸は、例えば、重要中間体である5−ブロモ−3,4−ジフルオロ−2−(4−ヨード−2−メチルフェニルアミノ)安息香酸を製造するための原料として有用であり、特許文献1に記載の方法に準じて2−アミノ−5−ヨードトルエンとカップリングさせることにより、5−ブロモ−3,4−ジフルオロ−2−(4−ヨード−2−メチルフェニルアミノ)安息香酸に変換することができる。5−ブロモ−3,4−ジフルオロ−2−(4−ヨード−2−メチル−フェニルアミノ)安息香酸は、特許文献1に記載の方法に準じて、抗癌剤であるフェニルアミノベンズヒドロキサム酸誘導体に変換することができる。
他方、2,3,4−トリフルオロ−5−ヨード安息香酸は、抗菌剤又は抗ウイルス剤として有用なキノロンカルボン酸類の合成における重要な中間体である2,3,4−トリフルオロ−5−トリフルオロメチル安息香酸を製造するための原料としても有用である。2,3,4−トリフルオロ−5−トリフルオロメチル安息香酸は、例えば、特許文献2又は特許文献3に記載の方法に準じて、6−トリフルオロメチル基を有するキノロンカルボン酸類に変換することができる。
従来、2,3,4−トリフルオロ−5−ヨード安息香酸を得る方法としては、(i)2,3,4−トリフルオロ安息香酸を出発原料として、多段階反応で合成する方法(例えば、2,3,4−トリフルオロ安息香酸を原料として、ニトロ化、ニトロ基のアミノ基への還元、及びSandmeyer反応によるヨード化、という3工程を実施する方法(特許文献4))、(ii)2,3,4−トリフルオロ−1,5−ジヨードベンゼンをLDAで処理した後、二酸化炭素と反応させる方法(非特許文献1)、等が報告されている。
また、2,3,4−トリフルオロ−5−ブロモ安息香酸を得る方法としては、(iii)1−ブロモ−2,3,4−トリフルオロベンゼンを出発原料とし、これを−78℃で塩基存在下、二酸化炭素と反応させて、カルボキシル化する方法が報告されている(特許文献1)。
国際公開WO99/01426号パンフレット 国際公開WO96/02512号パンフレット 特開昭64−66180号公報 特許第3573249号公報 Eur. J. Org. Chem. 2001, 2771-2777
しかしながら、上記(i)の方法は、3工程を要する上に、総収率54%であり、また、上記(ii)の方法も、総収率が36%であり、いずれも工業的に有利な方法であるとはいえず、より効率的な合成法が求められていた。また、上記(ii)及び(iii)の方法も、過酷な低温条件が必要であり、経済効率の点で改善の余地があった。
更に、一般に、位置異性体等の異性体が生成する可能性のあるハロゲン化反応において、目的生成物とその副生成物である異性体とは、その物理化学的性質が類似していて、分離精製が容易でない場合が多い。このため、副生成物である異性体の生成を極力抑え、目的化合物を高純度で、かつ簡便に得られる製造方法が求められていた。
そこで、本発明は、工業的に有利な、2,3,4−トリフルオロ−5−(ヨード又はブロモ)安息香酸の製造方法、すなわち、高収率、高純度で、高位置選択的、簡便に2,3,4−トリフルオロ−5−(ヨード又はブロモ)安息香酸を製造する方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、下記一般式(I)で表される2,3,4−トリフルオロ−5−(ヨード又はブロモ)安息香酸の製造方法であって、下記式(II)で表される2,3,4−トリフルオロ安息香酸を、酸化剤の存在下、反応溶媒中で、ヨード化剤又はブロモ化剤で直接ヨード化又はブロモ化するハロゲン化工程を備える方法を提供する。この方法のように、ヨード化剤又はブロモ化剤を用いると、2,3,4−トリフルオロ安息香酸を直接ブロモ化又はヨード化することが可能になる。なお、本明細書において、「直接ヨード化又はブロモ化する」とは、2,3,4−トリフルオロ安息香酸を一工程でヨード化又はブロモ化して、2,3,4−トリフルオロ−5−(ヨード又はブロモ)安息香酸を得ることを意味する。
Figure 2006109661
[式中、Xはヨウ素原子又は臭素原子を示す。]
上記製造方法によれば、99%以上の反応転化率(反応によって消失した原料の割合)で、その上、高収率で目的化合物(2,3,4−トリフルオロ−5−(ヨード又はブロモ)安息香酸)を得ることが可能になる。
また、原料である2,3,4−トリフルオロ安息香酸には、ヨード化又はブロモ化が可能な位置が、芳香環上の5位及び6位の二箇所に存在するため、二種類の位置異性体が生成する可能性がある。しかしながら、上記製造方法によれば、5位について非常に高い位置選択性でヨード化又はブロモ化することができる。そして、目的化合物を、98%以上の純度(反応生成物に占める目的化合物の割合)で得ることが可能になる。
更に、上記製造方法によれば、酸溶媒の中和工程を含まない抽出操作のみによって、精製工程(再結晶、蒸留等)を必要とせず、高収率、高純度で、かつ簡便に目的化合物を単離することが可能になる。
このように、上記製造方法は工業的に極めて有利な製造方法である。
上記ハロゲン化工程では、反応溶媒が無機プロトン酸及び/又は有機酸を含むのが好ましく、無機プロトン酸及び有機酸の双方を含むのがより好ましい。そして、反応溶媒が無機プロトン酸及び/又は有機酸を含む場合、無機プロトン酸の少なくとも一部は硫酸であるのが好ましく、また、有機酸の少なくとも一部は酢酸であるのが好ましい。なお、本明細書において、「硫酸」及び「HSO」とは、特に断りのない限り濃硫酸(濃度90%以上、好ましくは96%以上の硫酸水溶液)を意味する。
また、上記ハロゲン化工程では、式(II)で表される2,3,4−トリフルオロ安息香酸に先立って、反応系に当該無機プロトン酸及び/又は有機酸を添加するのが好ましい。2,3,4−トリフルオロ安息香酸に先立って、反応系に無機プロトン酸及び/又は有機酸を添加すると、そうでない場合と比較して、反応性を向上させることができ、これにより、2,3,4−トリフルオロ−5−(ヨード又はブロモ)安息香酸をより高収率で、より高位置選択的に得ることが可能になる。
また、上記ハロゲン化工程では、ハロゲン化反応を開始させた後、反応系に、更に、酸化剤及びヨード化剤、又は、酸化剤及びブロモ化剤を添加することが好ましく、2回以上添加することがより好ましい。上記ハロゲン化工程における反応は、典型的には固体及び液体の二層系、又は異なる2種の液体の二層系で進行するが、このような二層系では、酸化剤及びヨード化剤、又は、酸化剤及びブロモ化剤を更に添加すると、そうでない場合と比較して、反応効率を向上させることができ、工業化に相応しいスケールでも、高い反応転化率をより再現性よく維持することが可能になる。
また、上記ハロゲン化工程では、酸無水物を共存させてヨード化又はブロモ化を行うことが好ましく、酸無水物としては、カルボン酸無水物又はスルホン酸無水物(更には、無水酢酸、無水シュウ酸及び無水マレイン酸からなる群より選ばれる少なくとも一種)が好適である。このような酸無水物を添加することにより、ヨード化又はブロモ化反応が活性化される。
ヨード化又はブロモ化は、水分捕捉剤を共存させて行うこともできる。水分捕捉剤は、反応系に含まれたり生じたりする水をトラップするが、水のトラップにより酸化剤の活性低下を抑制できると考えられる。なお、上記酸無水物を水分捕捉剤として用いることもできる。
酸化剤としては、金属酸化物が好ましく、Mn酸化物及び/又はCr酸化物がより好ましく、活性化MnO及び/又はMnO 塩(NaMnO、KMnO等)が更に好ましい。ヨード化剤としては、ヨウ素分子(I)及び/又はヨウ素アニオン含有分子(LiI、NaI、KI等)が好ましく、特にIが好ましい。また、ブロモ化剤としては、臭素分子(Br)及び/又はブロモアニオン含有分子(LiBr、NaBr、KBr等)が好ましく、特にBrが好ましい。このように酸化剤でないヨード化剤又はブロモ化剤を用いる場合には、酸化剤を併せて添加する。他方、ヨード化剤又はブロモ化剤の少なくとも一部として、酸化剤としても機能するヨード化剤又はブロモ化剤、すなわち酸化剤でもあるヨード化剤又はブロモ化剤を用いることもできる。酸化剤でもあるヨード化剤としては、NaIO、NaIO、KIO及びKIOからなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましく、また、酸化剤でもあるブロモ化剤としては、NaBrO、NaBrO、KBrO及びKBrOからなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。ここで例示したヨード化剤及びブロモ化剤は、基質が2,3,4−トリフルオロ安息香酸である反応に特に適しており、これらを用いることにより、高収率、高純度で、高位置選択的に、かつ簡便に2,3,4−トリフルオロ−5−(ヨード又はブロモ)安息香酸を得ることができる。なお、酸化剤でもあるヨード化剤又はブロモ化剤を用いる場合、別種の酸化剤、又は別種のヨード化剤若しくはブロモ化剤を更に添加してもよい。
また、ハロゲン化工程の後には、当該ハロゲン化工程で得られた反応混合物を水に添加し、更に、有機溶媒で、一般式(I)で表される2,3,4−トリフルオロ−5−(ヨード又はブロモ)安息香酸を抽出する抽出工程を実施することが好ましい。ここで、水としては、中性(pH:6〜8)の氷水が好ましい。
ハロゲン化工程で得られる反応混合物は、反応終了、液温低下、成分抽出等を目的として、水中(氷水中)に添加することができるが、この水(氷水)を非塩基性(好ましくは中性(pH:6〜8))にすることで、NaOH、(NHCO、NaSO、Na等を含む氷水に添加するような場合と比較して、中和熱の発生、及び目的物であるカルボン酸(2,3,4−トリフルオロ−5−(ヨード又はブロモ)安息香酸)の水層への移行をより容易に防止でき、工業的にも非常に有利である。
上記製造方法によれば、ハロゲン化工程後の精製を経ずに、一般式(I)で表される2,3,4−トリフルオロ−5−(ヨード又はブロモ)安息香酸を純度98%以上で得ることができる。
他方、芳香族性化合物の芳香環上の水素原子をヨード化又はブロモ化する方法は種々知られているが、特に、フェノール性水酸基等の電子供与基を有さず、かつカルボキシル基等の電子吸引基を有する、いわゆる電子不足アリール化合物への直接(一工程)ヨード化又はブロモ化の方法としては、下記のものが報告されている。
1)Crを利用したヨード化(Bull. Chem. Soc. Jpn. 1997, 70, 1665-1669)
2)Mnを利用したヨード化(Bull. Chem. Soc. Jpn. 1999, 72, 115-120)
3)NaIO又はNaIOを利用したヨード化(Bull. Chem. Soc. Jpn. 2000, 73, 951-956)
4)Hを利用したヨード化(Synthesis 2004, 441-445)
5)NaBrOを利用したブロモ化(Organic Process Research and Development 2000, 4, 30-33)
6)Hを利用したブロモ化(特開昭63−171452号公報)
7)Hgを利用したブロモ化(Journal of Organic Chemistry 1988, 53, 1799)
8)NBSを利用したブロモ化(Synlett 1999, 1245)
しかしながら、上記文献に、2,3,4−トリフルオロ安息香酸を原料に用いた例はない。また、2,3,4−トリフルオロ安息香酸のように、配向性の異なる官能基が3以上結合したようなアリール化合物、又は電子吸引基が3以上結合した、極めて反応性が低いアリール化合物を用いた例もなく、このようなアリール化合物に対する直接ヨード化又はブロモ化の方法については、記載も示唆もない。つまり、不活性基であるカルボキシル基(1つ)及びフルオロ基(3つ)を併せ持つ2,3,4−トリフルオロ安息香酸の直接ハロゲン化における反応性の高さ、及びハロゲン化の位置選択性については、従来明らかでなかった。上記ハロゲン化工程を実施することにより、高収率、高純度で、かつ高位置選択的に2,3,4−トリフルオロ−5−(ヨード又はブロモ)安息香酸を製造することが可能になることは、本発明者らが初めて見出した知見である。
本発明によれば、高収率、高純度で、高位置選択的、簡便に2,3,4−トリフルオロ−5−(ヨード又はブロモ)安息香酸を製造する方法が提供される。
実施例1で得られた2,3,4−トリフルオロ−5−ヨード安息香酸を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に通して得られたチャートである。 実施例2で得られた2,3,4−トリフルオロ−5−ブロモ安息香酸を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に通して得られたチャートである。 実施例3で得られた2,3,4−トリフルオロ−5−ブロモ安息香酸を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に通して得られたチャートである。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。
本発明の製造方法は、下記一般式(I)で表される2,3,4−トリフルオロ−5−(ヨード又はブロモ)安息香酸の製造方法であって、
下記式(II)で表される2,3,4−トリフルオロ安息香酸の5位を、酸化剤の存在下、反応溶媒中で、ヨード化剤又はブロモ化剤で直接ヨード化又はブロモ化するハロゲン化工程を備える方法である。
Figure 2006109661
[式中、Xはヨウ素原子又は臭素原子を示す。]
ヨード化剤及びブロモ化剤としては、I及びBrの他に、LiI、LiBr、NaI、NaBr、KI、KBr等のアニオン種(ヨウ素アニオン又はブロモアニオンを含む化合物)、又はNBS、NIS等のラジカル若しくはカチオン種が挙げられる。また、HIO、HIO、LiIO、LiIO、NaIO、NaIO、KIO、KIO、LiBrO、LiBrO、NaBrO、NaBrO、KBrO、KBrO等、酸化剤及びハロゲン化剤の両方の役割を示す試薬も含まれる。好ましくはI、Br、NaI、NaBr、NaIO、NaIO、KIO、KIO、NaBrO、NaBrO、KBrO又はKBrOであり、特に好ましくはI又はBrである。
酸化剤としては、金属酸化剤、過酸化物等が挙げられ、好ましくは金属酸化剤である。用いるヨード化剤又はブロモ化剤が酸化作用を併有していない場合には、ヨード化剤又はブロモ化剤に加えて、酸化剤を更に添加する。なお、NBS、NIS、HIO、HIO、LiIO、LiIO、NaIO、NaIO、KIO、KIO、LiBrO、LiBrO、NaBrO、NaBrO、KBrO、KBrO等は、その反応の特徴から酸化剤としても機能すると考えられ、本発明の製造方法においては、これらを用いることで、別種の酸化剤を更に添加しなくても、直接ハロゲン化が進行すると考えられる。
ここで、金属酸化剤としては、活性化MnO、MnO 塩(NaMnO、KMnO等)、CrO、Cr −2塩(KCr、NaCr、LiCr、(NHCr等)、Pb(OAc)等が挙げられ、好ましくは活性化MnO、KMnO又はCrOであり、特に好ましくは活性化MnOである。ここで、活性化MnOとは、例えば、MnOを加熱減圧して得られるものであり、MnOの活性化は、脱水、表面積増大等によって起こると考えられる。
過酸化物は、有機過酸化物又は無機化酸化物のいずれでもよい。例えば、有機過酸化物としては、CHCOH、CHClCOH、CHClCOH、CClCOH、CHFCOH、CHFCOH、CFCOH、PhCOH等が挙げられ、好ましくはCHCOH、CFCOH又はPhCOHである。また、無機過酸化物としては、H、urea−H、HIO、HIO、LiIO、LiIO、NaIO、NaIO、KIO、KIO、LiBrO、LiBrO、NaBrO、NaBrO、KBrO、KBrO等が挙げられ、好ましくはH、NaIO、NaIO、KIO、KIO、NaBrO、NaBrO、KBrO又はKBrOである。これら無機過酸化物のうち、HIO、HIO、LiIO、LiIO、NaIO、NaIO、KIO、KIO、LiBrO、LiBrO、NaBrO、NaBrO、KBrO、KBrO等は、ハロゲン化作用も併有しており、ハロゲン化剤としても作用させることが可能である。また、これらのハロゲン化作用を併有する過酸化物に加えて、更にI、Br、NaI、NaBr等の別種のハロゲン化剤を同時に添加してもよい。
本発明の製造方法では、酸無水物を添加することが好ましいが、この酸無水物としては、下記一般式(III)で示されるカルボン酸無水物、又は下記一般式(IV)で示されるスルホン酸無水物が好ましい。
Figure 2006109661
[式中、R及びR’は、各々独立に、F、Cl、Br又はIで置換されてもよいC〜C10のアルキル基又はアルケニル基を示す。また、R及びR’は、一緒になってC〜C10のアルキレン鎖となって環を形成してもよい。]
このような酸無水物としては、例えば、無水酢酸(AcO)、(CHCHCO)O、無水シュウ酸、無水マレイン酸、(CFCO)O、(CHSOO、(CHCHSOO等が挙げられ、好ましくはカルボン酸無水物であり、より好ましくはAcOである。本発明の製造方法において、酸無水物を添加することが好ましいのは、併用する酸化剤が微量の水分で失活することを防ぐことができるためであるが、酸無水物の作用はこれに限定されるものではない。
反応溶媒としては、無機プロトン酸又は有機酸を含有するものが好ましい。無機プロトン酸としては、硫酸(HSO)、水(HO)、リン酸(HPO)等が挙げられ、有機酸としては、酢酸(AcOH)等が挙げられる。2種以上の異なる溶媒を混合させて用いてもよく、例えば、無機プロトン酸(例えば、HSO)と有機酸(例えば、AcOH)との混合物、又は異なる2種の無機プロトン酸(例えば、HSO及びHO)の混合物であってもよい。特に、無機プロトン酸と有機酸との混合物が好ましい。また、反応溶媒は、反応系の一部を構成しても、構成しなくてもよい。
用いる反応溶媒の量としては、2,3,4−トリフルオロ安息香酸1molに対して、0.8〜8.0Lが好ましく、例えば、AcOH及びHSOの混合溶媒を用いる場合は、AcOH及びHSOの量として、それぞれ、0.4〜3.6L及び0.5〜4.5Lが好ましい。なお、溶媒量を減少させると、溶解度不足により、反応系の安定した一様な撹拌が困難になるため、例えば、2,3,4−トリフルオロ安息香酸1molに対して、0.8L以上の反応溶媒を用いるのが好ましい。溶媒量を上記範囲より多く用いても特に反応進行に影響を与えないが、反応溶媒を過剰に用いることは経済効率上不適当である。また、例えば、HSO等の無機プロトン酸の割合を特に増加させると、反応系の粘度が高まり、撹拌が不均一になるおそれがある。本発明の製造方法において、特に固体−液体の二層系反応の場合、撹拌が不均一になると、反応進行が阻害されるおそれがある。このようなことから、用いる反応溶媒の量としては上記範囲が好ましい。
また、添加する酸無水物、及びヨード化剤又はブロモ化剤の量は、2,3,4−トリフルオロ安息香酸1molに対して、それぞれ、3〜30mol倍、及び0.7〜3mol倍が好ましい。また、酸化剤をヨード化又はブロモ化剤とは別に添加する場合、その量は、2,3,4−トリフルオロ安息香酸1molに対して、1〜10mol倍が好ましい。
ハロゲン化工程の好ましい態様の一つとしては、(1)ヨード化剤及びブロモ化剤として、それぞれI及びBrを用い、(2)酸無水物(AcO等)を添加し、(3)酸化剤として活性化MnOを添加し、(4)反応溶媒として、AcOH及びHSOの混合溶媒を用いるものを挙げることができる。この態様は、例えば、下記反応式で表すことができる。
Figure 2006109661
また、ハロゲン化工程の別の好ましい態様としては、少なくとも下記工程(a)及び(b)を実施するものを挙げることができる。この態様では、工程(a)及び(b)の後に、下記工程(c)を実施するのが好ましく、工程(c)を2回以上実施するのがより好ましい。また、用いるヨード化剤及びブロモ化剤としては、それぞれI及びBrが好ましい。また、工程(a)で用いる反応溶媒及び酸無水物の混合物は、例えば、有機酸及び酸無水物の混合物に無機プロトン酸を添加することによって得るのが好ましい。
(a)反応溶媒(無機プロトン酸及び/又は有機酸を含む。)及び酸無水物の混合物に、酸化剤及びヨード化剤、又は、酸化剤及びブロモ化剤を添加する工程
(b)工程(a)で得られた混合物に2,3,4−トリフルオロ安息香酸を添加する工程
(c)工程(b)で得られた混合物に、酸化剤及びヨード化剤、又は、酸化剤及びブロモ化剤を添加する工程
また、ハロゲン化工程において、酸化剤でもあるヨード化又はブロモ化剤を用いる場合には、反応溶媒として無機プロトン酸のみからなる溶媒を用いることも好ましく、この場合、用いる無機プロトン酸としては、例えばHO又はHSOが好ましい。
本発明の製造方法を実施する場合に注意すべきことは、下記1)〜4)の通りである。
1)HSOを溶媒又は溶液へ添加する際、熱が発生する。更に具体的には、添加直後は、不均一状態にあり、局所的に高濃度にHSOが存在するポイントでは、極度に発熱していることが予測される。このため、HSO添加前に、反応容器中に既に反応試薬(酸化剤及び/又はヨード化剤若しくはブロモ化剤)、及び反応基質(2,3,4−トリフルオロ安息香酸)が存在する場合、この局所的な高発熱によって、局所的かつ短時間であるが、高温度下で反応基質及び反応試薬が接触して、副生成物が生じ、又は望まない副反応が増加するおそれがある。従って、本発明の製造方法においては、工業的観点から、反応基質を添加する前に、HSOを添加することが好ましい。HSOを添加する際には、特に制限はないが、混合される相手側の溶媒又は溶液を構成する分子の沸点を超えないような状態で行うことが好ましい。
2)HSOを添加後、更にヨード化剤又はブロモ化剤を添加する際の温度、及び、その後のヨード化又はブロモ化反応の際の温度は、通常室温〜100℃であるが、反応促進及び副反応抑制の観点から、40〜90℃であることが好ましく、40〜60℃であることがより好ましい。また、段階的に昇温を繰り返してもよい。撹拌効率を良好にする目的で、ヨード化剤又はブロモ化剤、及び酸化剤は数回に分けて混合することが好ましい。本発明の製造方法における反応時間は、通常2〜7時間であるが、数回に分けて混合する場合は、その2〜15倍の時間をかけて反応させてもよい。本発明の製造方法における反応圧力は、特に制限はないが、通常大気圧下で行われる。
3)本発明の目的物である2,3,4−トリフルオロ−5−(ヨード又はブロモ)安息香酸の単離方法の好適例は次の通りである。まず、反応混合物を氷浴に加える。このとき、中和熱の発生を防ぐために、また、目的物がカルボン酸誘導体であることから、有機層へ抽出しやすいように、水層が塩基性水溶液でないことが好ましい。次に、目的化合物を適当な有機溶媒で有機層に抽出する。還元剤を含む水溶液(Na水溶液、NaSO水溶液等)で有機層を洗浄した後、有機層を脱水、濃縮乾燥し、単離する。
4)得られた粗2,3,4−トリフルオロ−5−(ヨード又はブロモ)安息香酸は、用途に応じて任意に、例えば蒸留、水洗又は再結晶で精製を行なってもよい。
本発明の製造方法によって得られる化合物(2,3,4−トリフルオロ−5−(ヨード又はブロモ)安息香酸)は、例えば、医薬、特に抗癌剤として有用なフェニルアミノベンズヒドロキサム酸誘導体の合成中間体である3,4−ジフルオロ−2−(2−フルオロ−4−ヨードフェニルアミノ)−5−(ホルミル又はビニル)安息香酸、5−(ホルミル又はビニル)−3,4−ジフルオロ−2−(4−ヨード−2−メチルフェニルアミノ)安息香酸等を製造するのに利用することができる。
3,4−ジフルオロ−2−(2−フルオロ−4−ヨードフェニルアミノ)−5−ビニル安息香酸、又は3,4−ジフルオロ−2−(2−フルオロ−4−ヨードフェニルアミノ)−5−ホルミル安息香酸は、例えば、下記反応式で表される方法に従って製造することができる。以下、この製造方法を工程ごとに説明する。
Figure 2006109661
[式中、Xはヨウ素原子又は臭素原子を示す。]
工程1:
本発明の製造方法によって得られる2,3,4−トリフルオロ−5−(ヨード又はブロモ)安息香酸(化合物(1))は、例えば、適当な溶媒中、遷移金属触媒下、ビニル化有機金属試薬と反応させることにより、2,3,4−トリフルオロ−5−ビニル安息香酸(化合物(2))に変換することができる。この反応は、文献(J. K. Stille, Angew. Chem., Int. Ed. Engl. 1986, 25, 508-524、N. Miyaura, A. Suzuki, Chem. Rev. 1995, 95, 2457-2483、A. Suzuki, J. Organomet. Chem., 1999, 576, 147-168、Suzuki, A, In Metal-Catalyzed Cross Coupling Reactions; Diederich, F., Stang, P. J., Eds.; VCH: Weinheim, 1998; pp49-97等)を参照することにより、容易に実施することができる。
工程2:
2,3,4−トリフルオロ−5−ビニル安息香酸(化合物(2))は、2−フルオロ−4−ヨードアニリン(化合物(3))とカップリングさせることにより、3,4−ジフルオロ−2−(2−フルオロ−4−ヨードフェニルアミノ)−5−ビニル安息香酸(化合物(4))に変換することができる。この反応は、例えば、文献(国際公開WO00/64856号パンフレット、M. H. Chen, V. G. Beylin, E. Iakovleva, S. J. Kesten, J. Magano, D. Drieze, Synthetic Communications, 32(3), 411-417 (2002)等)に記載の方法又はこれに類似の方法を用いて実施することができる。
工程3:
3,4−ジフルオロ−2−(2−フルオロ−4−ヨードフェニルアミノ)−5−ビニル安息香酸(化合物(4))は、適当な酸化剤(例えば、オゾン、四酸化オスミウム−メタ過ヨウ素酸ナトリウム、塩化ルテニウム−メタ過ヨウ素酸ナトリウム等)と反応させることにより、3,4−ジフルオロ−2−(2−フルオロ−4−ヨードフェニルアミノ)−5−ホルミル安息香酸(化合物(5))に変換することができる。
工程4:
2,3,4−トリフルオロ−5−ビニル安息香酸(化合物(2))は、適当な溶媒中、適当な酸化剤(例えば、オゾン、四酸化オスミウム−メタ過ヨウ素酸ナトリウム、塩化ルテニウム−メタ過ヨウ素酸ナトリウム等)と反応させることにより、2,3,4−トリフルオロ−5−ホルミル安息香酸(化合物(6))に変換することができる。
工程5:
2,3,4−トリフルオロ−5−ホルミル安息香酸(化合物(6))は、2−フルオロ−4−ヨードアニリン(化合物(3))とカップリングさせることにより、3,4−ジフルオロ−2−(2−フルオロ−4−ヨードフェニルアミノ)−5−ホルミル安息香酸(化合物(5))に変換することができる。この反応は、例えば、文献(国際公開WO00/64856号パンフレット、M. H. Chen, V. G. Beylin, E. Iakovleva, S. J. Kesten, J. Magano, D. Drieze, Synthetic Communications, 32(3), 411-417 (2002)等)に記載の方法又はこれに類似の方法を用いて実施することができる。
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
なお、以下の実施例で用いた原料及び試薬は、下記の通りである。
2,3,4−トリフルオロ安息香酸:Oakwood社製、カタログ番号1808、ロット番号H7988
AcOH:和光純薬工業社製、カタログ番号012-00245、ロット番号ASL7730
AcO:和光純薬工業社製、カタログ番号011-00276、ロット番号ASL9439
SO:和光純薬工業社製、カタログ番号192-04696、ロット番号KCQ7389
Br:和光純薬工業社製、カタログ番号024-02401、ロット番号CEQ7093
活性化MnO:Aldrich社製、カタログ番号217646、ロット番号09114AB、純度85%
また、実施例1におけるHPLCの条件は、下記の通りである。
装置:Waters社製996-600E
カラム:Combi ODS(ODS、5μm、4.6 mm I.D.×50 mm、和光純薬工業社製)、COSMOSIL(ODS、5μm、4.6 mm I.D.×50 mm、ナカライテスク社製)、又は Inertsil C18(ODS、5μm、4.6 mm I.D.×50 mm、GLサイエンス社製)
移動相:0.01%トリフルオロ酢酸を含有する水(A)、及び0.01%トリフルオロ酢酸を含有するアセトニトリル(B)
溶出法:ステップワイズな溶媒勾配溶出(溶媒組成を、3.5分間で10%Bから95%Bへ変化させた後、1分間で10%Bへ変化させ、更に0.5分間、10%Bに保持した。)
流速:4.0mL/分
また、実施例2及び3におけるHPLCの条件は、下記の通りである。
装置:Waters社製LCMS2525ZQ
カラム:Waters社製SunFire (ODS、5μm、4.6 mm I.D.×50 mm)
移動相:0.05%トリフルオロ酢酸を含有する水(A)、及び0.05%トリフルオロ酢酸を含有するアセトニトリル(B)
溶出法:ステップワイズな溶媒勾配溶出(溶媒組成を、3.5分間で10%Bから95%Bへ変化させた後、1分間で10%Bへ変化させ、更に5分間、10%Bに保持した。)
流速:4.0mL/分
(実施例1:2,3,4−トリフルオロ−5−ヨード安息香酸)
5LフラスコにAcOH(1.2L)及びAcO(0.63L)を加えた。氷で冷却しながら40℃を超えないように、HSO(1.6L)を同じフラスコに混合した。更に、室温にてI(70g)、活性化MnO(70g)及び2,3,4−トリフルオロ安息香酸(120g、0.68mol)を、よく撹拌しながら固体のまま加えた。得られた黒紫の懸濁液を50℃で撹拌しながら、2〜3時間後にI(70g)及び活性化MnO(70g)を加え、4〜6時間後にI(33g)及び活性化MnO(37g)を更に加えた。24時間後、反応混合物を氷水(2L)に加えた。CHClにて3回(1.6L、1.0L、1.0L)抽出して得た紫色の有機層を、0.2N Na水溶液で2回(2.0L、1.0L)洗浄させると、有機層は淡黄色に変化した。有機層に含まれるAcOHを除去させる目的で1.0Lの水にて4回洗浄し、濁りのない透明な有機層を得た。NaSO(1.3kg)にて有機層に含まれる水を除去した後、溶媒留去し、2,3,4−トリフルオロ−5−ヨード安息香酸192g(0.64mol、94%、純度99LC area%(LCにおけるUVピーク面積%))を白色粉末として得た。なお、必要に応じて、エタノール及びヘキサンの混合溶媒(EtOAc:Hexane=1:9(v/v))にて洗浄してもよい。
ここで得られた2,3,4−トリフルオロ−5−ヨード安息香酸を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に通して得られたチャートを図1に示す。図1に示されるように、本発明の製造方法によれば、再結晶等の精製を経なくても、高純度で目的化合物が得られることが分かる。すなわち、3.10分の目的化合物のUV強度は99.03%であり、目標純度である98%を上回っている。0.1%より小さいピーク強度を有する不純物は3つのみ(3.31分、3.71分、4.20分)であり、本発明の製造方法によれば、極めて高い純度及び位置選択性で2,3,4−トリフルオロ−5−ヨード安息香酸が得られることが明らかになった。
得られた2,3,4−トリフルオロ−5−ヨード安息香酸の機器分析(H−NMR)データは、下記の通りである。
1H-NMR (CDCl3, 270 MHz) δ(ppm): 8.25 (1H, ddd, J = 6.9, 6.4, 2.5 Hz).
(実施例2:2,3,4−トリフルオロ−5−ブロモ安息香酸)
以下の反応は、マグネティック撹拌子、内部温度測定用温度計(補正なし)及び滴下漏斗を装着した300mL三つ口丸底フラスコを用いて、窒素雰囲気下にて行なった。加熱には油浴を用いた。
フラスコにAcOH(50mL)及びAcO(27mL)を入れ、氷浴を用いて冷却した。内温が40℃を超えないように滴下速度を制御しながら、HSO(67mL)を20分かけて滴下した。氷浴を外し、反応液を室温に戻した後に、Br(0.60mL、11.7mmol)を加えた。激しく10分間撹拌すると、Brが粒状に分散している状態から、均一の赤褐色溶液になった。
活性化MnO(3.0g、29.3mmol)を加え、均一の懸濁液になるまで10分間撹拌した後、2,3,4−トリフルオロ安息香酸(5.00g、28.4mmol)を加えた。反応液を室温から55度に昇温し、撹拌した。反応の進行を確認しながら、3時間後に活性化MnO(3.00g、29.3mmol)及びBr(0.60mL、11.7mmol)を、8時間後に活性化MnO(1.30g、12.7mmol)及びBr(0.30mL、5.86mmol)を、24時間後にBr(0.25mL、4.88mmol)を加え、その後、内部温度を60度に昇温した。
その後、更に、3時間後に活性化MnO(3.05g、29.8mmol)を、6時間後に活性化MnO(4.30g、42.0mmol)及びBr(0.80mL、15.6mmol)を、26時間後に活性化MnO(2.35g、23.0mmol)及びBr(0.30mL、5.86mmol)を、59時間後に活性化MnO(3.20g、31.3mmol)及びBr(0.40mL、7.81mmol)を加えた(合計で、活性化MnO 20.2g(197mmol、7.0eq)及びBr 3.25mL(63.4mmol、2.2eq)を用いた)。その後、18時間撹拌すると、原料の消失が確認された。
反応液(オレンジ色の懸濁液)を氷(80g)に注ぎ込んだ。得られた混合物を塩化メチレン(100mL×3)にて抽出した。有機層を合わせ、0.2N NaSO水溶液(100mL×2)及び水(100mL×6)にて洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧濃縮し、2,3,4−トリフルオロ−5−ブロモ安息香酸(4.53g、63%、純度98.2LC area%(LCにおけるUVピーク面積%))を淡褐色の微小針状結晶として得た。
得られた2,3,4−トリフルオロ−5−ブロモ安息香酸のH−NMRデータは、下記の通りである。
1H-NMR (CDCl3, 270 MHz), δ(ppm): 8.07 (1H, ddd, J = 7.1, 7.1, 2.6 Hz).
1H-NMR (DMSO-d6, 270 MHz), δ(ppm): 13.97 (br.s), 8.02-7.95 (1H, m).
上記DMSO−d中のH−NMRデータは、国際公開WO99/01426号パンフレット(実施例2、(a))に記載の同化合物のH−NMRデータ(下記)と一致した。
1H-NMR (DMSO-d6, 400 MHz), δ(ppm): 13.97 (1H, br.s), 8.00-7.96 (1H, m).
ここで得られた2,3,4−トリフルオロ−5−ブロモ安息香酸を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に通して得られたチャートを図2に示す。図2に示されるように、1.93分の目的化合物のUV強度は98.21%を示し、ピーク強度を有する不純物は4つ(1.37分に0.01%、1.55分に1.24%、2.17分に0.48%、2.70分に0.07%)であった。この結果から、本発明の製造方法によれば、極めて高い純度及び位置選択性で2,3,4−トリフルオロ−5−ブロモ安息香酸が得られることが明らかになった。
(実施例3:2,3,4−トリフルオロ−5−ブロモ安息香酸)
還流装置を装着した三つ口フラスコに2,3,4−トリフルオロ安息香酸(10.0g、56.8mmol)、臭素酸ナトリウム(34.0g、227.1mmol)、硫酸カリウム(692mg、3.98mmol)及び水68mLの順で加え、よく撹拌し懸濁液とした。そして、反応液(懸濁液)を、オイルバスにて内温が90℃になるまで加熱した。次いで、HSO(54mL)を、内温が90℃を超えないように滴下速度を制御しながら、1時間以上かけて滴下した。
滴下終了後、90℃のまま1時間撹拌した。その後、オイルバスを外して反応液を室温に戻し、次いで水(200mL)を注ぎ込んだ。生成物は不溶物として得られるので、これを吸引ろ過にて分別した。得られた固体は少量の冷水で洗浄し、減圧下乾燥して、2,3,4−トリフルオロ−5−ブロモ安息香酸7.75g(53%)を淡黄色の針状結晶として得た。
得られた2,3,4−トリフルオロ−5−ブロモ安息香酸のH−NMRデータは、下記の通りである。なお、H−NMRにて不純物(位置異性体を含む)は観測されず、最も大きな不純物は<1%であった。
1H-NMR (CD3OD, 270 MHz), δ(ppm): 8.02 (1H, ddd, J = 7.1, 7.1, 2.7 Hz).
ここで得られた2,3,4−トリフルオロ−5−ブロモ安息香酸を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に通して得られたチャートを図3に示す。図3に示されるように、1.85分の目的化合物のUV強度は98.01%を示し、ピーク強度を有する不純物は4つ(1.27分に1.27%、2.45分に0.28%、2.68分に0.23%、3.57分に0.21%)であった。この結果から、本発明の製造方法によれば、極めて高い純度及び位置選択性で2,3,4−トリフルオロ−5−ブロモ安息香酸が得られることが明らかになった。
本発明の製造方法によって得られる2,3,4−トリフルオロ−5−(ヨード又はブロモ)安息香酸は、例えば、医薬、特に抗癌剤として有用なフェニルアミノベンズヒドロキサム酸誘導体の合成中間体である3,4−ジフルオロ−2−(2−フルオロ−4−ヨードフェニルアミノ)−5−(ホルミル又はビニル)安息香酸、5−(ホルミル又はビニル)−3,4−ジフルオロ−2−(4−ヨード−2−メチルフェニルアミノ)安息香酸等を製造するための原料として有用である。そして、本発明の製造方法は、2,3,4−トリフルオロ−5−(ヨード又はブロモ)安息香酸の工業的生産に利用することができる。

Claims (18)

  1. 下記一般式(I)で表される2,3,4−トリフルオロ−5−(ヨード又はブロモ)安息香酸の製造方法であって、
    下記式(II)で表される2,3,4−トリフルオロ安息香酸の5位を、酸化剤の存在下、反応溶媒中で、ヨード化剤又はブロモ化剤で直接ヨード化又はブロモ化するハロゲン化工程を備える方法。
    Figure 2006109661
    [式中、Xはヨウ素原子又は臭素原子を示す。]
  2. 反応溶媒が無機プロトン酸及び/又は有機酸を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 無機プロトン酸の少なくとも一部が硫酸である、請求項2に記載の方法。
  4. 有機酸の少なくとも一部が酢酸である、請求項2又は3に記載の方法。
  5. 酸無水物を共存させてヨード化又はブロモ化を行う、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 酸無水物がカルボン酸無水物又はスルホン酸無水物である、請求項5に記載の方法。
  7. 酸無水物が、無水酢酸、無水シュウ酸及び無水マレイン酸からなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項5又は6に記載の方法。
  8. 酸化剤が金属酸化物である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 金属酸化物がMn酸化物及び/又はCr酸化物である、請求項8に記載の方法。
  10. 酸化物が活性化MnO及び/又はMnO 塩である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. ヨード化剤がIであり、ブロモ化剤がBrである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
  12. ヨード化剤が、ヨウ素アニオンを含む化合物であり、ブロモ化剤が、ブロモアニオンを含む化合物である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
  13. ヨード化剤の少なくとも一部、及びブロモ化剤の少なくとも一部が、酸化剤でもある、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 酸化剤でもあるヨード化剤が、NaIO、NaIO、KIO及びKIOからなる群より選ばれる少なくとも一種であり、
    酸化剤でもあるブロモ化剤が、NaBrO、NaBrO、KBrO及びKBrOからなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項13に記載の方法。
  15. 反応溶媒が無機プロトン酸及び/又は有機酸を含み、
    ハロゲン化工程において、少なくとも下記工程(a)及び(b)を実施する、請求項1に記載の方法。
    (a)反応溶媒及び酸無水物の混合物に、酸化剤及びヨード化剤、又は、酸化剤及びブロモ化剤を添加する工程
    (b)工程(a)で得られた混合物に、式(II)で表される2,3,4−トリフルオロ安息香酸を添加する工程
  16. ハロゲン化工程において、工程(a)及び(b)の後に、下記工程(c)を実施する、請求項15に記載の方法。
    (c)工程(b)で得られた混合物に、酸化剤及びヨード化剤、又は、酸化剤及びブロモ化剤を添加する工程
  17. ハロゲン化工程の後に、
    当該ハロゲン化工程で得られた反応混合物を水に添加し、更に、有機溶媒で、一般式(I)で表される2,3,4−トリフルオロ−5−(ヨード又はブロモ)安息香酸を抽出する抽出工程を備える、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
  18. ハロゲン化工程後の精製を経ずに、一般式(I)で表される2,3,4−トリフルオロ−5−(ヨード又はブロモ)安息香酸を純度98%以上で与える、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
JP2007512940A 2005-04-06 2006-04-06 2,3,4−トリフルオロ−5−(ヨード又はブロモ)安息香酸の製造方法 Expired - Fee Related JP5025466B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007512940A JP5025466B2 (ja) 2005-04-06 2006-04-06 2,3,4−トリフルオロ−5−(ヨード又はブロモ)安息香酸の製造方法

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005110207 2005-04-06
JP2005110207 2005-04-06
JP2007512940A JP5025466B2 (ja) 2005-04-06 2006-04-06 2,3,4−トリフルオロ−5−(ヨード又はブロモ)安息香酸の製造方法
PCT/JP2006/307310 WO2006109661A1 (ja) 2005-04-06 2006-04-06 2,3,4-トリフルオロ-5-(ヨード又はブロモ)安息香酸の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2006109661A1 true JPWO2006109661A1 (ja) 2008-11-13
JP5025466B2 JP5025466B2 (ja) 2012-09-12

Family

ID=37086937

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007512940A Expired - Fee Related JP5025466B2 (ja) 2005-04-06 2006-04-06 2,3,4−トリフルオロ−5−(ヨード又はブロモ)安息香酸の製造方法

Country Status (7)

Country Link
US (1) US8022247B2 (ja)
EP (1) EP1870392B1 (ja)
JP (1) JP5025466B2 (ja)
DE (1) DE602006014951D1 (ja)
ES (1) ES2346998T3 (ja)
TW (1) TW200702329A (ja)
WO (1) WO2006109661A1 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN114805264A (zh) * 2022-05-27 2022-07-29 宿迁盛基医药科技有限公司 一种四溴苯酐的制备方法

Family Cites Families (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH07116099B2 (ja) 1986-12-16 1995-12-13 三菱化学株式会社 メタブロモ安息香酸の精製法
JPS63171452A (ja) 1987-01-08 1988-07-15 Fujitsu Ltd 光磁気デイスクの製造方法
US4780468A (en) 1987-08-07 1988-10-25 Warner-Lambert Company 8-trifluoromethyl quinolones as antibacterial agents
HUT76643A (en) 1994-07-18 1997-10-28 Sankyo Co Trifluoromethylquinolinecarboxylic acid derivative, pharmaceutical compositions containing them and their use
JP3823385B2 (ja) * 1996-08-23 2006-09-20 宇部興産株式会社 2,4,5−トリフルオロ−3−ヨ−ド安息香酸およびそのエステル類の製造方法
WO1999001426A1 (en) 1997-07-01 1999-01-14 Warner-Lambert Company 4-bromo or 4-iodo phenylamino benzhydroxamic acid derivatives and their use as mek inhibitors
JP3573249B2 (ja) * 1997-07-08 2004-10-06 宇部興産株式会社 2,3,4−トリフルオロ−5−ヨ−ド安息香酸、そのエステル類及びその製造法
JP2000239223A (ja) * 1999-02-18 2000-09-05 Asahi Glass Co Ltd 3−ブロモ−5−フルオロ安息香酸誘導体の製造方法
UA70995C2 (uk) 1999-04-21 2004-11-15 Ворнер-Ламберт Компані Спосіб одержання 2-(n-феніламіно)бензойної кислоти
JP2003012597A (ja) * 2001-07-02 2003-01-15 Ise Chemicals Corp メチル安息香酸のモノヨード体の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
EP1870392B1 (en) 2010-06-16
EP1870392A4 (en) 2009-04-15
WO2006109661A1 (ja) 2006-10-19
EP1870392A1 (en) 2007-12-26
DE602006014951D1 (de) 2010-07-29
TW200702329A (en) 2007-01-16
US20090209785A1 (en) 2009-08-20
US8022247B2 (en) 2011-09-20
ES2346998T3 (es) 2010-10-22
JP5025466B2 (ja) 2012-09-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Kimura et al. Novel synthetic method for the Vilsmeier-Haack reagent and green routes to acid chlorides, alkyl formates, and alkyl chlorides
JP6732744B2 (ja) ルテニウム触媒作用によるアゾベンゾール類からのビフェニルアミン類の製造方法
JP5025466B2 (ja) 2,3,4−トリフルオロ−5−(ヨード又はブロモ)安息香酸の製造方法
JP7344518B2 (ja) ビルスマイヤー試薬の製造方法
CN114133349B (zh) 一种3,4-二取代吡咯衍生物的制备方法
CN107188875B (zh) 一种取代苯酞类化合物的制备方法及其中间体
Liu et al. Radical coupling of arylthiodifluoroacetic acids and ethynylbenziodoxolone (EBX) reagents to access arylthiodifluoromethylated alkynes
JP2005008633A (ja) フッ素含有アセトフェノンの製造方法およびその使用
JPS61257938A (ja) m−フエノキシベンジルアルコ−ルの製造方法
KR101182615B1 (ko) 광학 활성 2,2'-비페놀 유도체 및 그 제조 방법
JP2001512466A (ja) 芳香族ニトリルの製造法
JP3438084B2 (ja) 3,4−ジクロロベンゾニトリルの製造法
JP2018076289A (ja) ハロゲン化ベンゼン誘導体の製造方法
Mase et al. Enantioselective reactions of tert-butyl glycinate–benzophenone Schiff base catalyzed by chiral phase-transfer catalyst in aqueous media without any organic solvent
US7342138B2 (en) Process for producing aromatic aldehyde
JP2003012597A (ja) メチル安息香酸のモノヨード体の製造方法
JP5232335B1 (ja) 1−置換−3−フルオロアルキルピラゾール−4−カルボン酸エステルの製造方法
Islam et al. Dimeric copper (II) tetracarboxylates as catalysts in the selective epoxidation of styrene
CN107074708A (zh) 生产7,8‑二氢‑c15‑醛的方法
JPH10273475A (ja) 3−ヒドロキシ−2−メチル安息香酸及び3−アセトキシ−2−メチル安息香酸の製造方法
JPH08169868A (ja) 4−シアノ−4’−ヒドロキシビフェニルの製造方法
JP5280557B2 (ja) 3,3’,4,4’−テトラシアノジフェニルエーテルの製造方法
JP4147302B2 (ja) 1−インダノン類の製造方法
JP4243683B2 (ja) 1−テトラロン類の製造方法
Kozik et al. Novel synthesis of α-arylnaphthalenes from diphenylacetaldehydes and 1, 1-diphenylacetones

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20090319

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20111108

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120612

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20120619

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150629

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees