JPWO2006098516A1 - 電動パワーステアリング装置の制御方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
Description
このような電動パワーステアリング装置の一般的な構成を第1図に示す。操向ハンドル301の軸302は減速ギア303、ユニバーサルジョイント304a及び304b、ビニオンラック機構305を経て操向車輪のタイロッド306に連結されている。軸302には,操向ハンドル301の操舵トルクを検出するトルクセンサ307が設けられており、操向ハンドル301の操舵力を補助するモータ308が減速ギア303を介して軸302に連結されている。
このような構成の電動パワーステアリング装置において、操向ハンドル301から伝達された運転手のハンドル操作による操舵トルクをトルクセンサ307で検出し、当該トルク信号や車速に基づいて算出される電流指令値によってモータ308は駆動制御され、この駆動が運転手のハンドル操作の補助力となり、運転手は軽い力でハンドル操作を行うことができる。つまり、ハンドル操作によって出力された操舵トルクから、どのような電流指令値を算出し、当該電流指令値に基づきモータ308をどのように制御するかによって、ハンドル操舵におけるフィーリングの善し悪しが決まり、電動パワーステアリング装置の性能が大きく左右される。
そこで、このような観点から電動パワーステアリング装置における望ましいモータ制御を実現するための課題を説明する前に、電動パワーステアリング装置に用いられるモータの一般的なモータ特性及びモータのトルク制御について説明する。
先ず、モータ特性について説明する。モータの通常動作領域は、モータ出力方程式から導かれるトルク−速度特性(T−n特性)で定義できる。そこで、3相ブラシレスDCモータ(BLDCモータ)に関するモータ出力方程式は数1のように示すことができる。
ここで、飽和状態(PWMのデューティが100%)であるならば、モータ駆動のためのバッテリ電圧Vbatがモータの2巻線に印加されるので、数1は数2のように表現し直すことができる。
次に、逆起電圧EMFの方程式である数3とトルク方程式である数4を用いて数2を演算すると、数5を導くことができる。
上記数5を、単位をrpmにして書き直すと数6のようになる。
ここにおいて、実際のブラシレスDCモータのトルク−速度特性(T−n特性)は数6と僅かに異なり、下記数7のように表わすことができる。
数6と数7の式を図に示すと第2図のようになる。なお、第2図においてA点は定格を示す点で、B点は無負荷を示す点である。数6が示す破線は理想の直線であるのに対し、数7が示す実特性(実線)は僅かに理想の直線とは異なる。これは、モータのインダクタンス値Lの影響によるものである。大きな電流が通電するほど、実特性は理想の直線から離れた線になる。
ここで、第2図のT−n特性が示す意味は、モータの限界を示すものである。第2図のT−n特性の下領域で、モータは熱的及び電気的限界を超えることなく、停止状態から最大角速度まで動作し、最大トルクを出力できる。
第3図において、特性1は出力の小さいモータのT−n特性、特性3は出力の大きいモータ特性を表わしている。また、特性2が電動パワーステアリング装置のモータ負荷特性を表わすとすると、特性3で表わす大出力のモータを使用できれば、特性2の負荷特性を全領域でカバーすることができるが、モータのコストや外形が大型になる問題がある。そこで、特性1の出力の小さいモータで特性2の負荷特性をカバーしようとすると、高速回転領域でカバーできなくなる。そのため、特性1のモータで特性2の負荷特性をカバーする方法として、モータのベクトル制御における弱め界磁制御を用いて、特性1のモータのT−n特性を特性4のT−n特性に変更する方法が考えられる。
弱め界磁制御も考慮したベクトル制御によって電動パワーステアリング装置のモータを制御することは、従来良く知られている。例えば特開2001−18822号公報においても、ベクトル制御を用いて電動パワーステアリング装置のモータを制御している。
第4図は、特開2001−18822号公報のベクトル制御を用いた電動パワーステアリング装置の制御装置の基本的構成を示している。
トルク指令値Trefを基に指令電流決定手段324でd軸、q軸の電流指令値idref、iqrefが算出される。一方、モータ308のモータ電流ia,ib,icは電流検出手段341,342で検出され、検出された電流ia,ib,icは3相/2相変換手段343でd−q2軸の電流id,iqに変換される。減算部325,326でd軸、q軸の電流指令値idref,iqrefとフィードバックされた電流id,iqとの偏差電流が算出される。偏差電流はPI制御手段328に入力され、偏差電流を0とするような電圧指令値vd,vqが算出される。モータ308は3相モータであり、電圧指令値vd、vqは2相/3相変換手段336によって3相の電圧指令値va,vb,vcに変換される。
PWM制御手段337は、3相の電圧指令値va,vb,vcに基づいてPWM制御されたゲート信号を生成する。インバータ338はPWM制御手段337で生成されたゲート信号によって駆動され、モータ308には偏差電流が0になるような電流が供給される。なお、レゾルバ316によってモータ308の角度(回転位置)θが検出され、角度θから角速度変換手段348で角速度(回転速度)ωが算出され、ベクトル制御に使用される。
このようなベクトル制御では、モータの高速回転領域では、弱め界磁制御が用いられる。
ここで、トルクセンサ307で検出された操舵トルク(や車速等)を基に算出される操舵補助電流指令値Irefに基づき、モータ308はベクトル制御される。このベクトル制御を数式で表現すると、下記数8或いは数9のようになる。数8は弱め界磁制御が無い場合(Id=0)で、数9は弱め界磁制御を実行している(Id≠0)場合である。
PWMのデューティが飽和すると、電流波形が歪んでモータのトルクリップルが大きくなり、その結果ハンドルに振動が発生したり、モータから異常音が発生する。
このように、定トルク出力の限界を越えて制御しようとすると、PWMのデューティが飽和してトルクリップルが大きくなり、運転手はハンドル操作に振動や違和感を感じることになる。
そこで、このような不具合に対応する制御方式として、特開平8−142886号公報のような制御方式が知られている。第5図は、特開平8−142886号公報に示されている制御ブロック図である。電流指令演算器2018で演算されたモータの電流指令値SIに基づき演算されたモータ駆動信号SMが、上限値SMAXと下限値−SMAX間にある時は、演算されたモータ駆動信号SMに従ってモータ308はPWM制御される。しかし、モータ電流指令値SIに基づき演算されたモータ駆動信号SMが、上限値SMAX以上或いは下限値−SMAX以下となる場合には、モータ駆動信号SMは、上限値SMAX或いは下限値−SMAXに置き換えられ、出力値がリミッタ2110で制限されるようになっている。
このように、特開平8−142886号公報に示される装置ではPWMのデューティが強制的に制限されるため、PWMのデューティの飽和を防止することができる。
しかし、特開平8−142886号公報に記載の装置では、PWM回路2029への出力値がリミッタ2110で制限されることになるため、運転手に対するハンドル操作の違和感を取り除くことはできない。
ここにおいて、永久磁石型ブラシレスDCモータの弱め界磁制御には、3つの概念が存在する。即ち、定電圧定電力制御、定電流定電力制御及び定電流定電圧制御である。最初の2つの概念は比較的簡易なものであるが、定電力条件は広範囲な速度において保持されるものではない。第3番目の概念はリミット条件が考慮されるために、より正確なものである。しかしながら、モータ抵抗はしばしば無視され、特に小型モータに対して顕著な計算誤差を与え、モータ抵抗はインダクタンスに関して比較的大きいものである。つまり、モータ抵抗は勿論、インダクタンスの影響も考慮する必要がある。
電動パワーステアリングシステムにおいては、操舵補助トルクは操舵トルクの関数となっている。ハンドルが非常に早く切り返されたときには要求される操舵補助トルクが大きく、モータが直ちに追従できないので正確な補助トルクを付与することができない。これは、モータ電流を制限する上述のようなシステム(制限されたモータ電力、デューティの飽和)では、要求されるトルクに直接比例する電流指令値(基準電流)に相当するモータ電流を流すことができない。この状態ではトルクリップルが発生し、それによってハンドル操作の違和感や騒音を引き起こすことになる。
本発明は上述のような事情から成されたものであり、本発明の目的は、ベクトル制御のd軸弱め界磁制御時に、要求仕様を満足する範囲内でできるだけ小さいd軸電流を設定するように電流指令値を制限することによって、ハンドルの急速な切り返し操舵の際にもモータの高速領域におけるトルクリップルを抑え、その結果、ハンドルに振動が発生せず、しかもハンドル操作に違和感のない電動パワーステアリング装置の制御方法及び装置を提供することにある。弱め界磁制御をモータ性能の限界を超えて使用すると、トルクリップル等によって騒音が大きくなってしまう問題があるからである。
また、本発明の目的は、モータ駆動におけるトルクリップルを最小にする基準電流を制限するための方法、モータの動作領域を広げるために弱め界磁制御領域のd軸電流の計算を、インバータ及び最大機能化の概念に基づいて計算することにより、トルクリップルが常に小さく、しかもハンドル操作に違和感のない電動パワーステアリング装置の制御方法及び装置を提供することにある。
本発明の上記目的は、前記電流指令値の制限に関する演算値をルックアップテーブル等に保持して行うことにより、或いは前記電流指令値の制限に、更にバッテリ電圧を用いることにより、より効果的に達成される。
本発明は、操舵トルク及び車速に基づいて演算された電流指令値を、トルク成分電流(q軸電流)と励磁成分電流(d軸電流)に変換してモータ電流を制御するベクトル制御によってモータを駆動し、車両の操舵系に操舵補助力を付与するようになっている電動パワーステアリング装置の制御方法に関し、本発明の上記目的は、前記ベクトル制御の弱め界磁制御領域のd軸電流指令値の計算を前記モータの定格出力特性及び角速度に基づいて行って前記電流指令値を制限すると共に、前記d軸電流指令値及びバッテリ電圧の変化分を求め、前記変化分で前記角速度を補正することにより達成される。
また、本発明は、操舵トルク等に基づいて操舵補助電流指令値を演算する操舵補助電流指令値演算部と、前記操舵補助電流指令値のベクトル制御によってモータを駆動制御する駆動制御部とを具備し、前記モータによって車両の操舵系に操舵補助力を付与するようになっている電動パワーステアリング装置の制御装置に関し、本発明の上記目的は、前記モータの定格出力特性と、前記電流指令値及び前記モータの角速度とに基づいて前記操舵補助電流指令値を制限する電流指令値算出部を設け、前記ベクトル制御の弱め界磁制御時及び非弱め界磁制御時に、前記電流指令値算出部は電流指令値の制限値及びd軸電流指令値を出力することにより達成される。
本発明の上記目的は、前記電流指令値算出部を、前記角速度に基づいて第1制限値を出力する第1ルックアップテーブルと、前記角速度に基づいてベース制限値を出力する第2ルックアップテーブルと、前記操舵補助電流指令値及び第1制限値を比較して前記制限値を出力する第1比較部と、前記操舵補助電流指令値及びベース制限値を比較してベース指令値を出力する第2比較部と、前記角速度及び制限値を入力して前記d軸電流指令値を出力する第3ルックアップテーブルと、前記制限値及びベース制限値を切り替えて出力するスイッチ部と、前記角速度を検出して前記スイッチを切り替える検出切替え部とで構成することにより、より効果的に達成される。
本発明は、操舵トルク等に基づいて操舵補助電流指令値を演算する操舵補助電流指令値演算部と、前記操舵補助電流指令値のベクトル制御によってモータを駆動制御する駆動制御部とを具備し、前記モータによって車両の操舵系に操舵補助力を付与するようになっている電動パワーステアリング装置の制御装置に関し、本発明の上記目的は、前記モータの定格出力特性と、前記電流指令値、前記モータの角速度及びバッテリ電圧とに基づいて前記操舵補助電流指令値を制限する電流指令値算出部と、d軸電流指令値及び前記電流指令値算出部からの電流指令値の制限値を入力すると共に、バッテリ電圧を入力して角速度変化分を算出するバッテリ電圧変化適合部と、前記モータの角速度及び前記角速度変化分を加算した加算値を前記電流指令値算出部に入力する加算部とを設け、前記ベクトル制御の弱め界磁制御時及び非弱め界磁制御時に、前記電流指令値算出部は電流指令値の制限値及びd軸電流指令値を出力することにより達成される。
本発明の上記目的は、前記電流指令値算出部を、前記加算値に基づいて第1制限値を出力する第1ルックアップテーブルと、前記加算値に基づいてベース制限値を出力する第2ルックアップテーブルと、前記操舵補助電流指令値及び第1制限値を比較して前記制限値を出力する第1比較部と、前記操舵補助電流指令値及びベース制限値を比較してベース指令値を出力する第2比較部と、前記加算値及び制限値を入力して前記d軸電流指令値を出力する第3ルックアップテーブルと、前記制限値及びベース制限値を切り替えて出力するスイッチ部と、前記加算値の大きさ検出して前記スイッチを切り替える検出切替え部とで構成することにより、或いは前記バッテリ電圧変化適合部を、前記d軸電流指令値及び電流指令値の制限値を入力して適合演算値を出力する第4ルックアップテーブルと、前記バッテリ電圧及び前記適合演算値を乗算する乗算部とで構成し、前記乗算部から角速度変化分を出力することにより、或いは前記モータを永久磁石型ブラシレスDCモータとすることにより、より効果的に達成される。
第2図はモータのT−n特性を示す図である。
第3図はモータ特性とモータ負荷特性を重ねて示す図である。
第4図は従来のベクトル制御装置の構成例を示すブロック図である。
第5図は従来の電流制限値による制御装置の構成例を示すブロック図である。
第6図は本発明の原理を説明するための図である。
第7図は本発明を適用できる疑似ベクトル制御の構成例を示すブロック図である。
第8図は電流指令値算出部の構成例を示すブロック図である。
第9図はd軸電流指令値及び電流指令値とモータ回転速度の特性例(3領域)を示す図である。
第10図はd軸電流指令値及び電流指令値とモータ回転速度の特性例(4領域)を示す図である。
第11図は本発明の動作例を示すフローチャートである。
第12図は基本波と、3次高調波と、実際にモータに印加される電圧との関係を示す波形図である。
第13図はモータのT−n特性と望ましい弱め界磁制御の特性を示す図である。
第14図は本発明の他の実施例を示すブロック構成図である。
第15図は本発明の他の動作例を示すフローチャートである。
本発明の基本的な考えは特開平8−142886号公報に開示されている電流リミッタとは異なり、つまり操舵補助電流指令値に基づいて演算された電流指令値に制限を課するのではなく、操舵補助電流指令値に予め制限を課し、この制限された電流指令値に基づいてモータ駆動のための演算をすることにある。そして、電流指令値の制限値を求める条件として、モータの定格出力特性及び角速度(回転速度)ω、更にはバッテリ電圧Vdc(DCリンク電圧)を利用していることにある。つまり、第3図の定格出力特性を表わす特性2(定格出力特性)又は特性4(最大出力特性)に基づいて、モータへの電流指令値を抑えることにある。そして、特性4の最大出力特性で電流指令値に制限を課すれば電流制限値が最大となり、ハンドル操作に最も忠実に電動パワーステアリング装置が追従することができる。
定格出力特性として最大出力特性を用いた場合の電流制限値の算出について、以下に説明する。
モータの定格出力Pnは、モータの表示値として数11のように算出できる。
また、モータの最大出力Pmaxは常時動作可能である最大出力を意味しており、モータのメーカによって与えられる特性である。一般的に、最大出力Pmaxと定格出力Pnには下記数12のような関係がある。
モータの定格出力Pnの特性2と最大出力Pmaxの特性4を同一図面上に表示すると、第6図のようになる。この第6図から、最大出力Pmaxを示す特性4が、定格出力Pnを示す特性2を回転数軸(縦軸)方向にn−offset(“nos”と記す)だけシフトした関係となっていることが分かる。回転数n(rpm)表示に対応する角速度ω(rad/s)にて表示すると、オフセットnosは角速度“ωos”と表示できる。つまり、角速度ωosは回転軸方向に関し、オフセットnosだけシフトしている。ここで、最大出力角速度を(ωn+ωos)と定義し、この関係を式で表わすと下記数13のようになる。
そして、数13を数15に代入すると、数16が得られる。
そして、数4と数17とから、下記数18が得られる。
数18を用いれば、モータのトルク定数Ktは不要である。角速度ωから電流指令値を制限する場合は、上記数17又は数18が基本式となる。
本発明の説明の前に、本発明を適用し得るベクトル制御の一例であるPVC制御について、第7図を参照して説明する。
一般的にベクトル制御は、3相モータを制御するときに電流指令値をd軸(励磁成分)及びq軸(トルク成分)の2軸成分に分離して演算し、モータのフィードバック電流も3相からd軸、q軸成分に分解してPI制御を実行し、最後にインバータにゲート信号を与える段階で2相/3相変換をして3相モータを制御している。このようなベクトル制御に対して、PVC制御は、d軸とq軸の成分での演算を、3相の電流基準値Iavref,Ibvref,Icvrefを演算する段階まで使用し、モータ電流をフィードバックしてPI制御する段階では3相で制御することに特徴がある。
電流指令値演算部(図示せず)は操舵トルクT、車速等を基に操舵補助電流指令値Irefを演算で求め、操舵補助電流指令値Irefはベクトル制御相指令値算出部100内の換算部106、q軸電流基準値算出部103及びd軸電流基準値算出部105に入力される。なお、操舵補助電流指令値Irefの代わりに、トルク換算したトルク指令値Tref(=Kt・Iref)としても良い。レゾルバ209でモータ208の角度θeが検出され、角度θeを入力とする微分回路24で角速度ωeが算出される。操舵補助電流指令値Iref、角度θe及び角速度ωeはベクトル制御相指令値算出部100に入力され、ベクトル制御相指令値算出部100で各相電流基準値Iavref,Ibvref,Icvrefが算出され、電流基準値Iavref,Ibvref,Icvrefはそれぞれ減算部20−1,20−2,20−3を経てPI制御部21に入力される。
ベクトル制御相指令値算出部100では、d軸電流基準値算出部105において下記数19に示されるd軸電流基準値Idrefが算出される。なお、ベース角速度ωbは、換算部106で操舵補助電流指令値Irefを換算して得られる。
一方、換算部101で角度θe及び角速度ωeを入力としてモータ208の各相逆起電圧ea,eb,ecが算出され、3相/2相変換部102でd軸、q軸の逆起電圧ed,eqがそれぞれ算出される。そして、q軸電流基準値算出部103はd軸、q軸の逆起電圧ed,eq及び角速度ωe,d軸電流基準値Idref、更に操舵補助電流指令値Irefを入力して、下記数20に従ってq軸電流基準値Iqrefを算出する。
3相の電流基準値Iavref,Ibvref,Icvrefが2相/3相変換部104で算出された後の制御は、一般的なフィードバック制御と全く同一である。つまり、モータ208の各相電流Ia,Ib,Icを電流検出回路32−1,32−2,32−3で検出し、減算部20−1,20−2,20−3で3相の電流基準値Iavref,Ibvref,Icvrefとの偏差電流をそれぞれ算出し、その偏差電流をPI制御部21に入力する。PI制御部21では、偏差電流を零にするように電圧指令値Va,Vb,Vcを算出してフィードバック制御を実行する。電圧指令値Va,Vb,Vcを入力としてPWM制御部31ではインバータ31へのPWMのゲート信号が算出され、インバータ31はそのゲート信号によってPWM制御され、各相電流Ia,Ib,Icと電流基準値Iavref,Ibvref,Icvrefとの偏差がそれぞれ0になるようにインバータ31は電流制御される。
以上が、PVC制御の説明であるが、上述したようにd軸電流基準値Idrefは、モータ208の角速度ωeがベース角速度ωb以下である時は0である、つまり、弱め界磁制御を実行しないのでIqref=Irefであり、各相電流Ia,Ib,Icは最大出力時の電流Inより小さく、PWMデューティは飽和(デューティ=100%)することがないので問題はない。しかし、モータ208の角速度ωeがベース角速度ωbを越えると、d軸電流基準値Idrefはもはや0ではなく、√(Iq2+Id2)が最大出力時の電流Inをオーバーする恐れがある。モータ電流が最大出力時の電流In以上を出力しようとするとデューティ=100%となり、トルクリップルが大きくなり、モータ208の異常音の発生などの問題が発生する。そのため、モータ208の角速度ωeが高速になって、弱め界磁制御が実行される角速度以上においては、操舵補助電流指令値Irefは数18で示す可変の制限値Ireflimによって制限する必要が出てくる。また、弱め界磁制御をモータ性能の限界を超えて使用すると、トルクリップル等によって騒音が大きくなってしまう問題がある。
そこで、本発明では、モータの最大条件(Vmax,Imax)(なお、Vmax,Imaxは数12における最大出力Pmax時の電圧、電流)からベース速度(Id=0のとき)における電流指令値のリミットを計算し、高速領域(負のd軸電流指令値Idが制御システムに入力されるとき)における電流指令値のリミットを計算する。顧客から要求された性能仕様から要求仕様のモータトルク−速度(T−n)特性を確立し、操舵補助電流指令値Iref、モータ角速度ωe及びバッテリ電圧Vdcを入力し、最大条件(Vmax,Imax)を用いて弱め界磁制御のためのd軸電流指令値Idを計算する。上記各計算はマイコン等での演算を高速化するため予め設計されたルックアップテーブル等によって実行され、バッテリ電圧Vdcの変化は、モータ速度の変化及び電圧変化に起因する電流を計算することによって適用され得る。これら変化信号の計算も、付加的なルックアップテーブル等によって実行される。
本発明に係る電流指令値算出部の構成は第8図に示すようになっており、操舵補助電流指令値Irefは比較部13及び14に入力され、推定若しくは検出された角速度ωeはルックアップテーブル11及び12に入力されると共に、ルックアップテーブル15に入力され、更に角速度ωeがベース角速度ωb以上であるかを検出してスイッチ16の接点c1、c2を切り替える検出切替え部17に入力される。ルックアップテーブル11で算出された電流指令値の制限値Ireflimは比較部13に入力され、ルックアップテーブル12で算出された電流指令値の制限値Ireflim_baseは比較部14に入力される。本例では、バッテリ電圧Vdcは不要となっている。比較部13から出力される電流指令値の制限値Iref_limはスイッチ16の接点c2に与えられ、比較部14から出力される電流指令値のベース制限値Iref_baseはスイッチ16の接点c1に与えられる。
最初に、本発明による操舵補助電流指令値Irefの演算について説明する。
3相モータ5のa−b−c相における式を示すと、例えばa相に対する相電圧vanは、iaを相電流、Raを相抵抗、Laを相インダクタンス、eaを相逆起電圧として数21で表わされる。
また、d−q軸上における電圧vd及びvqはそれぞれ下記数23及び数24で示される。
正弦波モータに対してd軸電流id及びq軸電流iqは直流的に変化し、それらの微分はゼロであり、それ故、数23及び数24はそれぞれ下記数25及び数26のような定常状態で表わされる。
よって、数25及び数26に数26を代入することにより、それぞれ下記数28及び数29が得られる。
それ故、下記数31及び数32が成り立つ。
矩形波モータに対して、制御は前述したPVC法(第7図参照)によって実現され得る。電流及び他の変数が正弦波でないため、矩形波モータを解析するためにd−q式を用いることはできない。しかしながら、他の変化分Δiq及び係数kを導入することによって、d−q軸上における解析が可能となる。
正弦波モータの逆起電圧波形と電流波形は正弦波であり、3相/d−q軸変換するとd軸成分(励磁成分)、q軸成分(トルク成分)共に直流値(一定値)になる。これに対して、矩形波モータでは逆起電圧波形と電流波形は擬似矩形波であり、1次成分の正弦波に加えて3,5,7,…次成分の正弦波が重畳されている。3相/d−q軸変換するとd軸成分及びq軸成分がいずれも直流値(一定値)にならず、電気角の関数となる。具体的には、3相での5,7次成分がd−q軸上では6次成分として現れ、同様に3相での11,13次成分がd−q軸上では12次成分として現れ、3,9,…次成分は零相であるため消えてしまう。電気角の関数のままだと制限値を算出するための計算が複雑なので、簡素化する必要があると共に、制限値を求めることが目的なので、ここでは振動する成分の最大値を取扱う。変化分Δiq及び係数kは電気角に依存した値の最大値を表わすパラメータであり、電気角の関数でないこれらのパラメータを導入することにより、矩形波モータでも正弦波モータと同様に制限値を算出することができる。
q軸電流iqの最大値は下記数33で表わされ、q軸電流iqの理論値は下記数34で表わされる。
(1)電圧定数は下記の通りである。
(2)電流定数は下記の通りである。
数31及び数32を数36に代入することによって、下記数38を得る。
上記各式から次のことがいえる。もしモータパラメータ及びバッテリ電圧Vdcが一定であれば、電流指令値Irefは速度だけの関数であり、下記数44のように表わされる。
(1)Iref>Ireflimの場合
Iref=Ireflim、Id=Idmax
(2)Iref≦Ireflimの場合
Iref=Iref、Id=Id
第9図はd軸電流指令値Id及び電流指令値Irefとモータ回転速度の特性例(3領域)を示しており、特性Aのデータがルックアップテーブル11に格納され、特性Bのデータがルックアップテーブル12に格納されている。また、特性Cのデータがルックアップテーブル15に格納されている。同様に、第10図はd軸電流指令値Id及び電流指令値Irefとモータ回転速度の特性例(4領域)の特性例を示しており、特性Aのデータがルックアップテーブル11に格納され、特性Bのデータがルックアップテーブル12に格納され、特性Cのデータがルックアップテーブル15に格納されている。
このような構成において、その動作例を第11図のフローチャートを参照して説明する。
先ず、操舵トルクや車速に基づいて操舵補助電流指令値算出部は操舵補助電流指令値Irefを演算し(ステップS1)、モータ5の角速度ωeを入力する(ステップS2)。この順番は任意である。次に、入力された角速度ωeに基づいてルックアップテーブル11は、第9図又は第10図の特性Bに基づいて電流指令値の制限値Ireflimを算出し(ステップS3)、ルックアップテーブル12は第9図又は第10図の特性Aに基づいて電流指令値のベース制限値Ireflim_baseを算出し(ステップS4)、電流指令値の制限値Ireflimは比較部13に入力され、電流指令値のベース制限値Ireflim_baseは比較部14に入力される。なお、電流指令値の制限値Ireflimと電流指令値のベース制限値Ireflim_baseの算出の順番は任意である。
比較部13は操舵補助電流指令値Irefと電流指令値の制限値Ireflimの比較に基づいて電流指令値の制限値Iref_limを算出し(ステップS5)、比較部14は操舵補助電流指令値Irefと電流指令値のベース制限値Ireflim_baseの比較に基づいて電流指令値の制限値Iref_base及びd軸電流指令値Id=0を算出する(ステップS6)。電流指令値の制限値Iref_limはスイッチ16の接点c2に入力され、電流指令値のベース制限値Ireflim_base及びd軸電流指令値Id=0はスイッチ16の接点c1に入力される。ルックアップテーブル15は角速度ωe及び電流指令値の制限値Iref_limに基づいて、第9図又は第10図の特性Cに基づいてd軸電流指令値Idを算出する(ステップS7)。
その後、検出切替え部17は角速度ωeがベース角速度ωb以上であるか否かを判定し(ステップS10)、角速度ωeがベース角速度ωb未満であればスイッチ16の接点をc1に切替え(ステップS12)、比較部14からの電流指令値のベース制限値Iref_base及びd軸電流指令値Id=0を制限値Iref_limとして出力する(ステップS13)。また、角速度ωeがベース角速度ωb以上であればスイッチ16の接点をc2に切替え(ステップS11)、比較部13からの電流指令値の制限値Iref_limをそのまま電流指令値の制限値Iref_limとして出力する(ステップS13)。
次に本発明の別の実施例を説明する。
本実施例では電圧に第3調波を付加、つまりデューティに第3調波を付加する。その結果、デューティは部分的に減じられ、システムが飽和し難くなる。これは、バッテリ電圧Vdcが15%増加することに等しい。第12図に示すように基本波(破線)のピークを3次高調波(一点鎖線)が潰すことにより、実際にモータに印加される電圧(実線)が低減される。実線の電圧がバッテリ電圧Vdcギリギリまで印加された場合、基本波(破線)はバッテリ電圧Vdcを超えている。そして、3次高調波を重畳すると、ピークが下がってデューティが飽和し難くなるように見えるし、バッテリ電圧Vdcが増加したようにも見える。理論的には1/6ほどバッテリ電圧Vdcが増加したように見えるが、実際上は15%にしている。
それ故、下記数46が成り立つ。
(1)ケース1:Id=0 → Ireflim=f(ω、Vmax)
これは、ベース速度領域の場合である。
(2)ケース2:Id=Idmax → Ireflim=f(ω、Vmax、Imax)
このケース2において、リミット電流条件は“idmax 2+ireflim 2=Imax 2”が使用される。
(3)ケース3:Ireflim=要求仕様のIreflim → Id=f(ω、Vmax、Ireflim)
このケースは、メーカ(顧客)によって要求された仕様が知られている場合である。予め設定されている要求仕様を満たすように、電流指令値の制限値Iref_limを求める。主にメーカ(顧客)から要求される仕様に出力すべき回転数とトルクが記載されているが、これらは事前に分かっている条件であるので、出力要求を満たすギリギリ小さい電流指令値の制限値Iref_limは予め計算してルックアップテーブルとして持つことが可能である。アシスト動作中はこの結果を使用するだけで済むので、複雑な計算は必要なくなる。
以下、上記ケース1〜3について説明する。
先ず、ベース速度領域(ケース1)における電流指令値の制限値Ireflimの計算を説明する。ベース速度領域においては、弱め界磁制御(Id≠0)の必要がなく、それで電流指令値の制限値Ireflimは数48を得るために、また、数49の電流指令値制限値Ireflimを解くために、前記数47においてId=0と置き換えることにより簡易に求めることができる。
先ず、ケース2に当たる最大値解について説明する。最大値解は、モータの角速度ωがベース速度線ωb以上のときに、d軸電流指令値Idが常に最大値をとることを意味している。それは、d軸電流指令値Idを計算するときに最大値電流条件が使用されるからである。数47を電流制限式の数50に代入することにより、いくつかの変形後に下記数51を得ることができる。
次に、ケース3に当たる要求仕様を満たす電流指令値の制限値Ireflimを求める場合について説明する。
上記最大電流解において、d軸電流指令値Idはモータ角速度ωがベース角速度ωb以上のときに常に最大値をとり、上述のようにモータ電流も常に最大値をとる。d軸電流指令値Idの最大電流はモータに余分な損失があることを意味し、d軸電流指令値Idに基づいて一層大きな望ましくない騒音を出す。そのような大きなd軸電流指令値Idは種々のケースにおいて必要ではなく、顧客によって要求された仕様は知られたものである。このケースにおいて、Ireflim=顧客仕様のIreflimの関数におけるd軸電流指令値IdがId=f(ω、Vmax、Ireflim)であることが分かる。それは、特別の操舵補助電流指令値Irefに対応するd軸電流指令値Idの最適値である。
ケース2は従来技術であり、数37の最大電流を超えないようにd軸電流指令値Idを決定するが、d軸電流が大きいと、効率降下、振動、騒音といった弊害がある。出力を出すために弱め界磁制御は必要であるが、デューティが飽和しない最大限のd軸電流指令値Idである必要はない。要求された出力を出すための最小限のd軸電流指令値Idであることが望ましく、電動パワーステアリングシステムとしての要求出力は設計要件であり、既知であり、通常は自動車メーカ(顧客)からの要求によって決定される。
第13図のC点が弱め界磁制御を実行しなければ出力することのできない要求出力であり、このC点の出力を出せるようにd軸電流指令値Idの制限値を決定する。それ以上の出力は要求されていないため、出力する必要はない。また、このようにして求められたd軸電流制限値は最適な値である。
例えば顧客によって要求された仕様が第13図に示すように4点A〜Dであるとき、望ましい弱め界磁制御線は線CDのように定義される。第13図において、A点は定格点、B点は無負荷点、C点は仕様点(顧客によって要求された性能)、D点は弱め界磁制御の開始点(この点を選択でき、簡単化のためにC点よりも2倍大きいD点の電流IrefD(=2×IrefC)を選択する)、線ABは非弱め界磁制御線(Iref0_lim)、線CDは弱め界磁制御線である。
一方、数47をd軸電流指令値Idについて解くと、正確な解として下記数56を得る。
(1)Iref>Ireflimの場合
Iref=Ireflim、Id=Id
(2)Iref≦Ireflimの場合
Iref=Iref、Id=Id
次に、バッテリ電圧Vdc変化への対応を説明する。
もしq軸電流指令値Iq及びd軸電流指令値Idを一定に保持すれば、バッテリ電圧Vdcの変化分ΔVdcは角速度ωeの変化となる。つまり、d軸電流制限値を角速度ωeのみの関数にすることができる。バッテリ電圧Vdcと角速度ωの2変数の関数だと十分な精度を持ったルックアップテーブルの容量が大きく、ROM容量を浪費してしまう。また、アシストマップのように複数のマップを補完して求めると、演算時間がかかってしまう。そこで、本発明ではバッテリ電圧Vdcの変化を角速度ωの変化として表わし、d軸電流制限値を角速度ωのみの関数にすることを提案する。
数25の電圧がV→V+ΔVに変化し、数26の角速度ωがω→ω+Δωに変化したとすると、下記数58及び数59が得られる。
そして、下記数62が成立する。
以上の演算を装置化すると第14図に示す構成となり、第8図の電流指令値算出部にバッテリ電圧変化適合部60と加算部18を付加した構成となっている。バッテリ電圧変化適合部60はパラメータVdcnを出力する設定部62と、バッテリ電圧VdcとパラメータVdcnの減算部63と、電流指令値算出部からのd軸電流指令値Id及び電流指令値の制限値Iref_limを入力して適合演算値を出力するルックアップテーブル61と、減算部63からの電圧ΔVとルックアップテーブル61からの適合演算値とを乗算して角速度変化分Δωeを出力する乗算部64とを具備している。ルックアップテーブル61には、電流指令値算出部で算出されたd軸電流指令値Id及び電流指令値の制限値Iref_limが入力され、減算部63にはバッテリ電圧Vdcが入力されてΔV(=Vdc−Vdcn)が求められる。乗算部64で求められた角速度変化分Δωeは加算部18に入力され、角速度ωeと加算された(ωe+Δωe)が電流指令値算出部に入力される。
このような構成において、その動作例を第15図のフローチャートを参照して説明する。
先ず、操舵トルクや車速に基づいて操舵補助電流指令値算出部は操舵補助電流指令値Irefを演算し(ステップS20)、モータ5の角速度ωeをバッテリ電圧変化適合部60からの角速度変化分Δωeを入力して変化量(ωe+Δωe)を計算する(ステップS21)。この順番は任意である。次に、計算された変化量(ωe+Δωe)に基づいてルックアップテーブル11は電流指令値の制限値Ireflimを算出し(ステップS22)、ルックアップテーブル12は電流指令値のベース制限値Iref_baseを算出し(ステップS23)、電流指令値の制限値Ireflimは比較部13に入力され、電流指令値のベース制限値Iref_baseは比較部14に入力される。なお、電流指令値の制限値Ireflimと電流指令値のベース制限値Iref_baseの算出の順番は任意である。
比較部13は操舵補助電流指令値Irefと電流指令値の制限値Ireflimの比較に基づいて電流指令値の制限値Iref_limを算出し(ステップS24)、比較部14は操舵補助電流指令値Irefと電流指令値のベース制限値Ireflim_baseの比較に基づいて電流指令値の制限値Iref_base及びd軸電流指令値Id=0を算出する(ステップS25)。電流指令値の制限値Iref_limはスイッチ16の接点c2に入力され、電流指令値のベース制限値Ireflim_base及びd軸電流指令値Id=0はスイッチ16の接点c1に入力される。ルックアップテーブル15は変化量(ωe+Δωe)及び電流指令値の制限値Iref_limに基づいてd軸電流指令値Idを算出する(ステップS26)。
その後、検出切替え部17は変化量(ωe+Δωe)がベース角速度ωb以上であるか否かを判定し(ステップS30)、変化量(ωe+Δωe)がベース角速度ωb以上であれば弱め界磁制御のためにスイッチ16の接点をc1に切替え(ステップS31)、比較部14からの電流指令値のベース制限値Iref_base及びd軸電流指令値Id=0を制限値Iref_limとして出力する(ステップS33)。また、変化量(ωe+Δωe)がベース角速度ωbよりも小さければスイッチ16の接点をc2に切替え(ステップS32)、比較部13からの電流指令値の制限値Ireflim_limをそのまま電流指令値の制限値Iref_limとして出力する(ステップS33)。
バッテリ電圧変化適合部60はバッテリ電圧Vdcを入力し(ステップS34)、予め設定されているパラメータVdcnとの差電圧ΔV(=Vdcc−Vdcn)を算出して乗算部64に入力する(ステップS35)。一方、ルックアップテーブル61には電流指令値算出部10からd軸電流指令値Id及び電流指令値の制限値Iref_limが入力され(ステップS36)、ルックアップテーブル61はd軸電流指令値Id及び電流指令値の制限値Iref_limに基づいて適合演算値を算出し(ステップS37)、適合演算値を乗算部64に入力する。乗算部64は適合演算値及び差電圧ΔVに基づいて角速度変化分Δωeを算出して加算部18に入力する(ステップS38)。
また、要求仕様の電流Iref_limに従ってd軸電流指令値Idを計算することにより、要求される負荷速度に対応した最小電流を得ることができ、過度なd軸電流指令値Idに基づく操舵の騒音をなくすると共に、省エネにも寄与することとなる。
Claims (14)
- ベクトル制御によってモータを制御すると共に、操舵トルク等に基づいて演算された電流指令値によって前記モータを駆動し、車両の操舵系に操舵補助力を付与するようになっている電動パワーステアリング装置の制御方法において、前記ベクトル制御の弱め界磁制御時に、所望の出力特性及び角速度に基づいて前記電流指令値を制限するようにしたことを特徴とする電動パワーステアリング装置の制御方法。
- ベクトル制御によってモータを制御すると共に、操舵トルク等に基づいて演算された電流指令値によって前記モータを駆動し、車両の操舵系に操舵補助力を付与するようになっている電動パワーステアリング装置の制御方法において、前記ベクトル制御の弱め界磁制御でない時に、所望の出力特性及び角速度に基づいて前記電流指令値を制限するようにしたことを特徴とする電動パワーステアリング装置の制御方法。
- ベクトル制御によってモータを制御すると共に、操舵トルク等に基づいて演算された電流指令値によって前記モータを駆動し、車両の操舵系に操舵補助力を付与するようになっている電動パワーステアリング装置の制御方法において、前記ベクトル制御の弱め界磁制御時と弱め界磁制御でない時のそれぞれの所望の出力特性を前記角速度と電流指令値によって切り替え、切り替えられた所望の出力特性及び角速度に基づいて前記電流指令値を制限するようにしたことを特徴とする電動パワーステアリング装置の制御方法。
- 前記電流指令値の制限に関する演算値をルックアップテーブルに保持して行うようになっている請求項第1項乃至第3項のいずれかに記載の電動パワーステアリング装置の制御方法。
- 前記電流指令値の制限に、更にバッテリ電圧を用いるようになっている請求項第1項乃至第3項のいずれかに記載の電動パワーステアリング装置の制御方法。
- 操舵トルク及び車速に基づいて演算された電流指令値を、トルク成分電流(q軸電流)と励磁成分電流(d軸電流)に変換してモータ電流を制御するベクトル制御によってモータを駆動し、車両の操舵系に操舵補助力を付与するようになっている電動パワーステアリング装置の制御方法において、前記ベクトル制御の弱め界磁制御領域のd軸電流指令値の計算を前記モータの定格出力特性及び角速度に基づいて行って前記電流指令値を制限すると共に、前記d軸電流指令値及びバッテリ電圧の変化分を求め、前記変化分で前記角速度を補正するようにしたことを特徴とする電動パワーステアリング装置の制御方法。
- 操舵トルクに基づいて操舵補助電流指令値を演算する操舵補助電流指令値演算部と、前記操舵補助電流指令値のベクトル制御によってモータを駆動制御する駆動制御部とを具備し、前記モータによって車両操舵系に操舵補助力を付与するようになっている電動パワーステアリング装置の制御装置において、前記モータ定格出力特性と、前記電流指令値及び前記モータの角速度とに基づいて前記操舵補助電流指令値を制限する電流指令値算出部を備え、前記ベクトル制御の弱め界磁制御時及び非弱め界磁制御時に、前記電流指令値算出部は電流指令値の制限値及びd軸電流指令値を出力することを特徴とする電動パワーステアリング装置の制御装置。
- 前記電流指令値算出部がが、前記角速度に基づいて第1制限値を出力する第1ルックアップテーブルと、前記角速度に基づいてベース制限値を出力する第2ルックアップテーブルと、前記操舵補助電流指令値及び第1制限値を比較して前記制限値を出力する第1比較部と、前記操舵補助電流指令値及びベース制限値を比較してベース指令値を出力する第2比較部と、前記角速度及び制限値を入力して前記d軸電流指令値を切り替えて出力するスイッチ部と、前記角速度を検出して前記スイッチを切り替える検出切り替え部とでなる請求項第7項に記載の電動パワーステアリング装置の制御装置。
- 操舵トルクに基づいて操舵補助電流指令値を演算する操舵補助電流指令値演算部と、前記操舵補助電流指令値のベクトル制御によってモータを駆動制御する駆動制御部とを具備し、前記モータによって車両操舵系に操舵補助力を付与するようになっている電動パワーステアリング装置の制御装置において、前記モータの出力定格特性と、前記電流指令値、前記モータの角速度及びバッテリ電圧とに基づいて前記操舵補助電流指令値を制限する電流指令値演算部と、d軸電流指令値演算部及び前記電流指令値演算部からの電流指令値の制限値を入力すると共に、バッテリ電圧を入力して角速度変化分を算出するバッテリ電圧変化適合部と、前記モータの角速度及び前記モータ角速度変化分を加算した加算値を前記電流指令値算出部に入力する加算部とを備え、前記ベクトル制御の弱め界磁制御時及び非弱め界磁制御時に、前記電流指令値演算部は電流指令値の制限値及びd軸電流指令値を出力することを特徴とする電動パワーステアリング装置の制御装置。
- 前記電流指令値演算部が、前記加算値に基づいて第1制限値を出力する第1ルックアップテーブルと、前記加算値に基づいてベース制限値を出力する第2ルックアップテーブルと、前記操舵補助電流指令値及び第1制限値を比較して前記制限値を出力する第1比較部と、前記操舵補助電流指令値及びベース制限値を比較してベース指令値を出力する第2比較部と、前記加算値及び制限値を入力して前記d軸電流指令値を出力する第3ルックアップテーブルと、前記制限値及びベース制限値を切り替えて出力するスイッチ部と、前記加算値の大きさを検出して前記スイッチ切り替える検出切り替え部とでなる請求項第9項に記載の電動パワーステアリング装置の制御装置。
- 前記バッテリ電圧変化適合部が、前記d軸電流指令値及び電流指令値の制限値を入力して適合演算値を出力する第4ルックアップテーブルと、前記バッテリ電圧及び前記適合演算値を乗算する乗算部とでなり、前記乗算部から角速度変化分を出力するようになっている請求項第10項記載の電動パワーステアリング装置の制御装置。
- 前記モータが永久磁石型ブラシレスモータDCモータである請求項第7項乃至第11項のいずれかに記載の電動パワーステアリング装置の制御装置。
- 前記モータの定格出力特性は、所定のバッテリ電圧と所定のインバータ電流により求められるようになっている請求項第6項、第7項、第9項のいずれかに記載の電動パワーステアリング装置の制御装置。
- 操舵トルク及び車速に基づいて操舵補助電流指令値を演算する操舵補助電流指令値演算部と、前記操舵補助電流指令値によってモータを駆動制御する駆動制御部とを具備し、前記モータによって車両の操舵系に操舵補助力を付与するようになっている電動パワーステアリング装置の制御装置において、所定のバッテリ電圧とインバータ電流によって求められるモータ出力特性と、モータの角速度に基づいて前記操舵補助力を制限するようにしたことを特徴とする電動パワーステアリング装置の制御方法。
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