JPWO2006068093A1 - 重縮合ポリマー回収品のリサイクル方法 - Google Patents
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Abstract
Description
ところがこれらの重縮合ポリマーを成形する際に、成形品のバリ、射出成形の際生じるランナー、スプル、シートやフィルム成形で生じる耳などの成形時に成形品にならない部分や、切り替え時の切り替え品、ボトルの不良品であるピンホールボトルや規格外品、安定化までのパージ品、樹脂ペレットなど、成形製造段階で製品とならない部分が大量に発生する。また重縮合ポリマーを製造する際にも、切り替え時の切り替え品、規格外品、パージ品などの製品とならない重縮合ポリマーが大量に発生する。さらには市場に出た成形品も回収されており、昨今の環境保護の見地からこれら回収品のリサイクルが望まれている。
例えば、ポリエステル製造工程のある時点において新しいポリエステルとスクラップのポリエステルを配合し、スクラップの成分をポリエステル製造工程流中に戻して再使用する試みがなされている(例えば特許文献1参照)。
なおエステルの連続溶融重合技術の一つとして、重合反応器の上部から重合中間体を重力落下させながら重合する方法が提案されている。例えばポリエステルの製法として、平均重合度が8〜12(極限粘度で0.1dl/g以下に相当する)のPETオリゴマーを285℃にて供給し、反応容器内に垂直に配置した円筒状の金網に沿わせて重力落下させ、該反応器内を減圧にしながら重合を行う技術(特許文献2を参照)や、ポリアミドやポリエステルの製法として反応容器内に垂直に配置した線状支持体に沿ってポリマーを重力落下させながら重合させる技術(特許文献3を参照)などがある(特許文献4〜7を参照)。しかしながら、本発明者らの検討によると、上記の方法をそのまま用いても高重合度のポリエステルを得ることはできない。さらに多孔板等から吐出したオリゴマーが激しく発泡して多孔板の表面や容器壁面を汚染してしまい、この汚染物が長期間運転しているうちに分解変性してポリマーに混入するため、ポリエステル製品の品質が悪くなるという問題があった。これらの方法による重合工程流中に熱履歴を経て品質の低下したスクラップの成分を戻しても、高重合度のポリエステルを得ることは不可能なうえ、製品の色相が著しく劣化するので実用に供することは不可能であった。
また回収された樹脂を完全にモノマー単位にまで分解して再び原料として使う試みもなされている(例えば、特許文献8参照)が、樹脂のモノマー単位までの解重合に有機溶媒中での超臨界が必要であること、晶析溶媒や回収モノマーの精製工程が必要であることから多大なコストアップは避けられない。
このことから簡便に低コストで回収された重縮合ポリマーの分子量を増加させることにより回収品をリサイクルする方法が望まれていた。
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究した結果、驚くべきことに、回収された重縮合ポリマーを適切な条件で支持体に沿わせて落下させながら重合させることにより、前記課題を達成できることを見出し、本発明をなすに至った。
(1)重縮合ポリマーの回収品を、多孔板を有する重合器に溶融状態にて供給し、該多孔板の孔から吐出させた後、支持体に沿わせて落下させながら、減圧下又は減圧不活性気体雰囲気下にて該重縮合ポリマーの重合度を上昇させることを含む重縮合ポリマー回収品のリサイクル方法、
(2)前記重縮合ポリマーの回収品を、未使用の重縮合ポリマー及び/又は重合中間体と共に前記多孔板の孔から吐出させる、上記(1)に記載の方法、
(3)重合度の上昇した重縮合ポリマー回収品の数平均分子量が20000〜100000である、上記(1)又は(2)に記載の方法、
(4)前記重合器に供給される重縮合ポリマーの回収品、又は重縮合ポリマーの回収品と未使用の重縮合ポリマー及び/又は重合中間体との混合物の溶融粘度を連続的に測定し、該溶融粘度の測定結果から重合器の減圧度を連続的に調整する、上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の方法、
(6)前記重縮合ポリマーの回収品が、ポリエチレンテレフタレート樹脂の回収品であり、該重縮合ポリマーの回収品を(結晶融点−10℃)以上、(結晶融点+60℃)以下の温度にて、前記多孔板の孔から吐出させる、上記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の方法、
(7)上記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の方法によってリサイクルされたポリマーを溶融状態で成形機に移送して成形することを特徴とする成形体の製造方法。
本発明の重縮合ポリマー回収品のリサイクル方法によれば、回収された重縮合ポリマーを生産性良く、低コストに、高品質のまま高重合度化することができる。
上記の重縮合樹脂はホモポリマーであってもよいし、コポリマーであってもよい。またエステル結合、アミド結合、カーボネート結合等の異なる結合がランダム又はブロック状に存在するコポリマーであってもよい。このようなコポリマーの具体例としては、ポリエステルカーボネート及びポリエステルアミドが挙げられる。
共重合成分としては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、3,5−ジカルボン酸ベンゼンスルホン酸テトラメチルホスホニウム塩、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、イソフタル酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、ドデカン二酸、フマル酸、マレイン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等のエステル形成性モノマーやポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール及びこれらの共重合体などが挙げられる。
また、本発明のPET樹脂は、PET樹脂以外に環状や線状のオリゴマーや、テレフタル酸ジメチル(以下DMTと略す)、テレフタル酸(以下TPAと略す)、エチレングリコール(以下EGと略すことがある)などのモノマーや、各種添加剤や他樹脂を含有している場合も含む。
ここで重縮合ポリマーの回収品とは、重合時に発生した切り替え品、樹脂ペレット等、重縮合ポリマーの成形体を成形する際に発生する、バリ、ランナー、ゲート、シートやフィルムの耳等、またスタートアップ時の安定化までに発生する樹脂塊、規格外成形品、生産時に発生したピンホールボトル等の不良品等及び、使用済みの廃PETボトルなどの回収容器や、これに分別、洗浄、粉砕処理等を施した廃PETボトルなどの回収フレーク等である。
PET樹脂などの重縮合ポリマーの分子量は熱履歴とともに解重合が起こって低下するため、回収品を再融解して元の用途に利用することはできない。ところが低分子量化した回収された重縮合ポリマーを高分子量化すれば充分製品として用いることができるだけでなくコスト面及び環境問題の観点から好ましい。
本発明者等は以上のことに鑑みて鋭意研究した結果、重縮合ポリマーの回収品を、多孔板を有する重合器に溶融状態にて供給し、該多孔板の孔から吐出させた後、支持体に沿わせて落下させながら、減圧下又は減圧不活性気体雰囲気下にて該重縮合ポリマーの重合度を上昇させ、重合器から連続的に抜き出すことによって高重合度の重縮合ポリマーを得ることができることを見出した。
例えばPET樹脂の回収品の場合、回収品を溶融状態にて重合器に供給し、該樹脂の(結晶融点−10℃)以上、(結晶融点+60℃)以下、好ましくは(結晶融点−5℃)以上、(結晶融点+40℃)以下、さらに好ましくは(結晶融点+1℃)以上、(結晶融点+30℃)以下の温度にて多孔板の孔から吐出させた後、支持体に沿わせて落下させながら減圧下にて重合度を上昇させ、重合器より連続的に抜き出すことにより高重合度のPET樹脂を得ることができる。
特にPET樹脂の回収品には成形又は溶融物を排出した時に急冷されたことによって低結晶状態となるものがあり、乾燥時に急激な加熱によって樹脂片同士が融着固結することがある。融着がおきると押出機による樹脂送りなどが阻害されるため、あらかじめ融点以下に加熱して結晶化させることが好ましい。
重縮合ポリマーの回収品を単独で本発明の重合器に供給してリサイクルすることも可能であるし、重縮合ポリマーの回収品を未使用の重縮合ポリマー及び/又は重合中間体と共に本発明の重合器に供給してリサイクルすることも可能である。ここで未使用の重縮合ポリマーとは、製造されてから未だ成形には用いられていない未使用の樹脂ペレットや、溶融重合器にて製造して抜き出された、溶融状態のままの未使用の重縮合ポリマーを指す。また重合中間体とは製品として使用される重縮合ポリマーに比べ重合度が低い、重合初期のポリマーであって、オリゴマーやモノマーを含んでいてもよい。これらの未使用の重縮合ポリマー及び/又は重合中間体に、重縮合ポリマーの回収品を配合して予備融解槽及び/又は押出機から溶融状態で本発明の重合器に供給することができる。
また、重縮合ポリマーの回収品又は重縮合ポリマーの回収品と未使用の重縮合ポリマー及び/又は重合中間体との混合物を本発明の重合器に供給する以前の任意の工程において、該回収品又は該混合物を任意の量の分子量調節剤と反応させることで操作性を改良したり、リサイクル製品の重合度や生産量を調整する方法も好ましく用いられる。
本発明の重合器に供給するのに適した、重縮合ポリマーの回収品又は重縮合ポリマーの回収品と未使用の重縮合ポリマー及び/又は重合中間体との混合物の重合度は、本発明の重合器において重合を実施する温度にて、ずり速度が1000(sec−1)の条件で評価したときの溶融粘度で規定することができ、60〜100000(poise)の範囲であることが好ましい。溶融粘度を60(poise)以上とすることで、重合器の多孔板の孔から吐出させた重合中間体の激しい発泡及び飛散を抑制することができ、100000(poise)以下とすることで、反応副生物を効率良く系外に除去することができるため重合が速やかに進行する。より好ましくは100〜50000(poise)の範囲であり、さらに好ましくは200〜10000(poise)の範囲であり、特に好ましくは300〜5000(poise)の範囲である。このように比較的高粘度の重合中間体が本発明において好ましい理由は、前記のように樹脂が多量の泡を含んだ状態で重合し、その結果重合速度が飛躍的に高くなるためである。
重縮合ポリマーの回収品がPET樹脂の場合、重合度の表記方法としてより一般的な極限粘度[η]でいえば、0.40〜1.20dl/gの範囲が好ましい。
多孔板の孔から吐出させる樹脂が激しく発泡して飛散すると、吐出する多孔板の口金面や壁面に飛散物が付着して汚してしまう。付着した樹脂は長期間滞留しているうちに熱分解して、着色した低分子量物や変性物となる。このようなものが得られる樹脂中に混入すると、樹脂の品位が低下したり、所定の重合度まで上がらなくなってしまう。
なお、ここで結晶融点とは、Perkin Elmer社製Pyris 1 DSC(商品名、入力補償型示差熱量計)を用いて、下記の条件にて測定した時の、結晶の融解に由来する吸熱ピークのピーク温度である。ピーク温度は、付属の解析ソフトを用いて決定した。
測定温度 : 0〜300℃
昇温速度 : 10℃/分
吐出温度は(結晶融点−10℃)以上、(結晶融点+60℃)以下が好ましく、(結晶融点−5℃)以上、(結晶融点+40℃)以下がより好ましく、(結晶融点+1℃)以上、(結晶融点+30℃)以下がさらに好ましい。特にアセトアルデヒド等の不純物含有量を少なくするためには、できるだけ低温で重合を行うことが望ましい。
多孔板の材質は、通常、ステンレススチール製、カーボンスチール製、ハステロイ製、ニッケル製、チタン製、クロム製、及びその他の合金製等の金属材質が好ましい。
また、多孔板より上流側の、溶融された回収ポリマーの流路にフィルターを設けることが好ましい。フィルターにより、多孔板の孔を閉塞する異物を除去することが可能となる。フィルターの種類は、多孔板の孔径以上の異物を除去でき、且つ、回収ポリマーの通過によって破損しないよう適宜選定する。
多孔板の孔の数に特に制限はなく、反応温度や圧力などの条件、触媒の量、重合させる分子量の範囲等によっても異なるが、通常ポリマーを例えば100kg/hr製造する際、5〜105個の孔が必要である。
ワイヤーは、針金状等の単一なものも、捩り合わせる等の方法によって複数組み合わせたものも含む。ワイヤーの表面は平滑なもの、凹凸があるもの、部分的に突起等を有するものなどが挙げられる。ワイヤーの材質に特に制限はないが、通常、ステンレススチール、カーボンスチール、ハステロイ、チタン等の中から選ばれる。また、ワイヤーは、メッキ、ライニング、不働態処理、酸洗浄等必要に応じて種々の表面処理がなされている場合も含む。
立体格子状とは、ワイヤー状の材料をいわゆるジャングルジムのように立体的な格子状に三次元に組み合わせた材料を表すものである。組み合わせるワイヤーは直線状であっても、曲率している場合も含み、組み合わせる角度は任意に選ぶことができる。
支持体は形状によって単数設ける場合と複数設ける場合とを適宜選択することができる。ワイヤー状や線状に連なったチェーン状の場合は通常1〜100000個であり、好ましくは3〜10000個である。格子状、2次元に連なったチェーン状、薄板状、多孔板状の場合は通常1〜1000個であり、好ましくは2〜100個である。3次元に連なったチェーン状、立体格子状、充填塔状の場合は単数とするか、分割して複数とするかは、装置の大きさや、設置スペース等を考慮して適宜選択できる。
支持体が複数の場合、適宜スペーサー等を用いて支持体同士が接触しないようにする事も好ましい。
支持体の位置は回収ポリマーが支持体に沿って落下できる位置であれば特に制限はなく、支持体の多孔板への取り付け方は、多孔板の孔を貫通して設置される場合と貫通せず多孔板の孔の下部に設置される場合を適宜選択できる。
孔を通過した回収ポリマーを支持体に沿わせて落下させる高さは、好ましくは0.5〜50mであり、さらに好ましくは1〜20mであり、より好ましくは2〜10mである。
支持体に沿わせて落下させるのに要する時間の平均は10秒〜100時間の範囲が好ましく、1分〜10時間の範囲がより好ましく、5分〜5時間の範囲が更に好ましく、20分〜3時間が特に好ましい。
また、減圧下で、反応に悪影響を及ぼさない不活性なガスを少量導入して、生成してくるEGやアセトアルデヒド等の揮発性物質をこれらのガスに随伴させて除去するのも好ましい方法の一つである。
リサイクル製品の重合度に影響を与える重合条件は、重合温度、減圧度及び重合器へ重縮合ポリマー回収品を送り込む流速である。このうち減圧度が導入樹脂に対応して変化させるのに最も好ましい条件である。
供給される溶融樹脂の重合度は重合器の直前で溶融粘度によって評価することが望ましい。溶融状態で樹脂を送るギアポンプの電圧から粘度を測定することが最も好ましい。また重合器の直前に粘度計を組み込むことも好ましい。そして、得られた粘度に応じて、即座に重合器の減圧度を変化させることができるように重合系の減圧度を制御できるようにするのが望ましい。
不活性ガスの重合器内への導入は、従来、重縮合反応で生成する副生物の分圧を下げ、平衡をずらすことによって反応を有利に進めるためであると理解されている。しかし、本発明において導入する不活性ガスの量は極めて少なくてよく、分圧低下効果によって重合速度を高める効果はほとんど期待できず、不活性ガスの役割は従来の理解では説明できない。本発明者らの検討によると、驚くべきことに、不活性ガスを重合器内に導入することにより、該支持体上での溶融ポリマーの発泡現象が激しくなり、溶融ポリマーの表面積が飛躍的に増加するとともに、表面更新状態が極めて良くなることが観察されている。原理は定かではないが、この溶融樹脂の内部及び表面状態の変化が重合速度を飛躍的に高める原因になっているものと推定される。
本発明で導入する不活性ガスの量は、極めて少量でよく、重合反応器から抜き出す樹脂1g当たり0.05〜100mgとすることが好ましい。不活性ガスの量は抜き出す樹脂1g当たり0.05mg以上とすることで樹脂の発泡が十分となって重合度を高める効果が高くなる。一方100mg以下とすることで減圧度を高くすることが容易になる。不活性ガスの量は抜き出す樹脂1g当たり0.1〜50mgとすることがより好ましく、0.2〜10mgとすることが特に好ましい。
なおここで「吸収」とは樹脂中に不活性ガスが溶解し、気泡としては存在しない場合を指し、「含有」とは不活性ガスが気泡として存在していることを指す。不活性ガスが気泡として存在する場合は、気泡の大きさは細かいほど好ましく、平均気泡径が5mm以下とすることが好ましく、2mm以下とすることがより好ましい。
重合器内に不活性ガスを直接導入する場所は、多孔板より遠く、樹脂の抜き出し口の近くにすることが望ましい。また、減圧排気ラインから離れていることも望ましい。
最も好ましいのは、不活性ガス雰囲気下で溶融された重縮合ポリマーの回収品を支持体に沿わせて落下させながら不活性ガスを吸収させる装置を用いる方法である。この方法では、不活性ガスを吸収させる装置の内部に重合器内部より高い圧力の不活性ガスを導入する。この時の圧力は0.01〜1MPaが好ましく、0.05〜0.5MPaがより好ましく、0.1〜0.2Paが更に好ましい。
いずれの場合においても、支持体に沿わせて落下させる際に発泡する部分があることが好ましく、特に支持体に沿わせて落下させた下部が発泡していることが望ましい。ここで発泡しているとは、泡がはじけてすぐに無くなる状態と泡が維持された状態の両方を指す。
また製造される樹脂の重合度のばらつきが小さいことも好ましい。
安定した品質の成形体用材料としては、1ロットの製品からランダムに10点、同量ずつサンプリングした樹脂の混合物のMw/Mnが2.6以下であることが好ましく、2.4以下であることが更に好ましく、2.2以下であることが最も好ましい。
ペレットにする場合は、ロスが少なく、且つ、押出成形機にて均一に押し出せることが望まれる。このようなペレットを得るためには、重合器から抜き出された溶融ポリマーをストランド状又はシート状に押出し、水等の冷媒中に速やかに入れて冷却した後、カットすることが好ましい。冷媒の温度は60℃以下が好ましく、50℃以下がより好ましく、40℃以下が更に好ましい。冷媒としては経済性、取扱性を考えると水が好ましく、このため冷媒温度は0℃以上が好ましい。ペレット状とするためのカットは、樹脂を押出してから120秒以内に100℃以下に冷却した後に行うことが好ましい。
また、時間は40分以内が好ましく、20分以内がより好ましく、10分以内が特に好ましい。もちろん短ければ短いほど良い。なお、ここで「時間」とは、溶融樹脂が重合器の排出ポンプを出てから、成形機内で又は成形機から吐出されて、該樹脂の結晶融点以下に冷却されるまでの時間を指す。配管内等を連続的に移動する場合は、配管等の体積と流量から計算した平均時間を用いることができる。また、この時間が変化する場合は、上記の時間以内にする必要がある。
本発明では、必要に応じて各種の添加剤、例えば艶消し剤、熱安定剤、難燃剤、帯電防止剤、消泡剤、整色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、増白剤、不純物の捕捉剤などを共重合又は混合する場合も含む。これらの添加剤は任意の段階で入れることができる。
特に、本発明では、安定剤を入れることが好ましく、回収された重縮合ポリマーがPET樹脂の場合には5価及び/又は3価のリン化合物やヒンダードフェノール系化合物が好ましい。リン化合物の添加量は、PET中に含まれるリン元素の重量割合として2〜500ppmであることが好ましく、10〜200ppmがより好ましい。具体的な化合物としてはトリメチルホスファイト、リン酸、亜リン酸が好ましい。リン系化合物はPET樹脂の着色も抑え、結晶核剤の効果もあり好ましい。
具体的な化合物としては、ペンタエリスリトール テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマミド)が挙げられる。もちろんこれらの安定剤を併用することも好ましい方法の一つである。
このような安定剤は成形までの任意の段階で入れることができるが、リン化合物は重縮合反応の初期、ヒンダードフェノール系化合物は重縮合反応の初期、又は、重合器より排出した後に入れるのが好ましい。
重合器から取り出した樹脂を成形器まで移送する段で配管等をヒーター又はジャケットで加熱し、かつ保温することは、溶融樹脂を移送する点で好ましい。加熱保温のための温度は、好ましくは230℃〜300℃であり、さらに好ましくは240℃〜280℃である。
図1は本発明の方法を実施するための重合器の具体例である。溶融した回収PET樹脂などの重縮合ポリマー回収品Rは、移送ポンプ2を介して原料供給口3から重合器1に供給され、多孔板4を通って重合器内部に導入され支持体6(落下樹脂も開示されている)に沿って落下する。粘度計は原料供給口3の前に設置される。重合器内部は粘度計で測定した粘度に応じた減圧度にコントロールされており、回収PET樹脂から留出したEGなどや、必要に応じてガス供給口7から導入した窒素等の不活性ガスなどは減圧排気口8から排出される。重合ポリマーは、排出ポンプ9により排出口から排出される。重合器本体1などはヒーター又はジャケットにより加熱され、かつ保温されている。
重合樹脂は、排出ポンプ9により連続的に排出された後、移送配管及び分岐切替弁10によって成形機A、B、C(11、12、13)に供給されて成形される。成形機は3台以上接続することも可能である。
本発明に用いる重合器は、重合器ボトムに撹拌器などを備えることも可能であるが特に必要ではない。従って、重合器本体での回転駆動部をなくすことが可能であり、高真空下でも良好にシールされた条件で重合できる。排出ポンプの回転駆動部は排出する樹脂によって覆われているため、重合器本体に回転駆動部がある場合に比べシール性ははるかに良好である。
本発明の方法は、重合器1基で行う事も可能であるが、2基以上で行ってもかまわない。
また、1基の重合基を竪型又は横型に仕切って、多段の重合器とすることも可能である。
横型攪拌重合器としては、スクリュータイプ、独立翼タイプ、一軸タイプ、二軸タイプ等、例えば「反応工学研究会研究レポート:リアクティブプロセッシングPart2」(高分子学会;1992)第4章記載の重合器などが挙げられる。
また、撹拌槽型重合器としては、例えば化学装置便覧(化学工学協会編;1989年)11章等に記載された撹拌槽のいずれも使用することができる。槽の形状に特に制限はなく、通常、縦型や横型の円筒型が用いられる。また、撹拌翼の形状にも特に制限はなく、パドル型、アンカー型、タービン型、スクリュー型、リボン型、ダブル翼型等が用いられる。
本発明に用いる重合器の材質には特に制限はなく、通常ステンレススチールやニッケル、グラスライニング等から選ばれる。
実施例中の主な測定値は以下の方法で測定した。
<測定方法>
(1)極限粘度〔η〕
極限粘度[η]は、オストワルド粘度計を用い、35℃、o−クロロフェノール中での比粘度ηspと濃度C(g/100ミリリットル)の比ηsp/Cを濃度ゼロに外挿し、以下の式に従って求めた。
(2)結晶融点
結晶融点はPerkin Elmer社製Pyris 1 DSC(商品名、入力補償型示差熱量計)を用いて、下記の条件にて測定し、結晶の融解に由来する吸熱ピークのピーク値を結晶融点とした。ピーク値は、付属の解析ソフトを用いて決定した。
測定温度 : 0〜300℃
昇温速度 : 10℃/分
(3)ポリマー末端のカルボキシル基量
試料1gをベンジルアルコール25mlに溶解し、その後、クロロホルム25mlを加えた後、1/50Nの水酸化カリウムベンジルアルコール溶液で滴定を行い、滴定値VA(ml)とPETが無い場合のブランク値V0から、以下の式に従って求めた。
カルボキシ基量(meq/kg)=(VA−V0)×20
細かくカットした資料を、SPEX社製6700フリーザーミル(商品名、凍結粉砕機)を用いて液体窒素で冷却下3〜10分間凍結粉砕し、850〜1000μmの粒度の粉末に調整した。該粉末1gを水2mlとともにガラスアンプル管中に入れて窒素置換して封管し、130℃、90分間加熱してアセトアルデヒド等の不純物を抽出した。アンプルを冷却後に開封し島津製作所(株)製GC−14B(商品名、ガスクロマトグラフ)にて下記条件で分析した。
カラム : VOCOL(60m×0.25mmφ×膜厚1.5μm)
温度条件 : 35℃で10分間保持、その後100℃まで5℃/分で昇温、
その後100〜220℃まで20℃/分で昇温
注入口温度: 220℃
注入法 : スプリット法(スプリット比=1:30)、1.5μl注入
測定法 : FID法
(5)溶液として評価した、樹脂の色相(L値、b値)
試料1.5gを1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール10gに溶解させ、島津製作所製UV−2500PC(商品名、紫外−可視分光光度計)を用いて透過法で分析し、付属の解析ソフトを用いて評価した。
製造される樹脂の重合度の経時的なばらつきを評価する目的で、30分毎に試料を採取し、溶離液1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(トリフルオロ酢酸ナトリウム塩5mmolを溶解)に1.0mg/mlの濃度で溶解した液を作製した。以下の実施例、及び比較例ではそれぞれ5時間以上連続運転を実施しており、上記のように作製した試料溶液を任意に10点混合し、この混合液について、東ソー社製IILC−8020GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)を用いて下記条件で分析し、付属の解析ソフトを用いて評価した。
カラム :Shodex社製HFIP−606M+HFIP−603
カラム温度:40℃
注入量:30μl
測定法:RI検出器、PMMA換算
<プリフォーム、ボトルの成形>
実施例中の成形は以下の条件で行った。
成形機 :青木固研究所(株)製SBIII-100H-15 二軸延伸ボトル成形機
シリンダー温度 :280℃
ホットランナーノズル温度:290℃
射出圧力 :140kg/cm2
金型温度 :水冷
プリフォーム重量:24g
ボトル容量 :500ml
<回収PET樹脂の乾燥、結晶化>
PET製ボトル成形品を洗浄後粉砕機で粉砕し、熱風乾燥機で120℃にて12時間乾燥させた。次に真空乾燥機に移し窒素置換して180℃にて6時間結晶化を行った。
<回収PET樹脂の重合器への供給>
図1に示す装置の回収PETの導入位置に単軸押出機を取り付け、押出機から押出された溶融樹脂が配管を通じて重合器へ導入されるように接続した。
回収洗浄後の極限粘度[η]が0.65dl/g、結晶融点が255℃であるボトル粉砕品の溶融物を、押出機により原料供給口3から重合器1に供給し、260℃の溶融状態にて多孔板4の孔から各孔当たり20g/分の量にて吐出させた後、吐出温度と同じ雰囲気温度にて支持体6に沿わせながら105Paの減圧度にて重合させ、排出ポンプ9によって排出した後、移送配管及び分配機10を通して2軸延伸ブロー成形機に供給して中空体を得た。多孔板は、厚み50mmであり、直径1mmの孔が25mm間隔で直線状に4個配列されたものを用いた。支持体6は、直径2mm、長さ8mのワイヤーを各孔の直近に1本ずつ取り付けて垂直に垂らし、該ワイヤーと直交するように直径2mm、長さ100mmのワイヤーを15mm間隔で取り付けた金網状のものを用いた。支持体6の材質はステンレススチールを用いた。重合器底部に樹脂がほとんど溜まらないようにのぞき窓5から監視しながら排出ポンプ9を運転した。この時の滞留時間は60分であった。なお、滞留時間は重合器内部にある樹脂量を供給量によって除した値を用いている。また、ここで2軸延伸ブロー成形機として(株)青木固研究所製のものを1台用い、他の成形機は設置せずに樹脂を排出させた。成形条件は、樹脂温度280℃、金型温度をコア側90℃、キャビティ側上部を130℃、下部を50℃とし、射出時間7秒、冷却3秒、サイクル18秒で、プリフォーム成形から中空体成形まで続けて行った。結果を表1に示す。重合器中でプレポリマーは適度に発泡しており、得られた成形体は高い重合度、良好な色調を有し、且つ、アセトアルデヒド含有量が少ない、高重合度で高品質なPET中空体であった。
押出機の液添装置からEGを5ml/minで導入し、表1に示す条件以外は実施例1と同様に重合及び成形を行った。結果を表1に示す。重合器中でプレポリマーは適度に発泡しており、得られた成形体は高い重合度、良好な色調を有し、且つ、アセトアルデヒド含有量が少ない、高重合度で高品質なPET中空体であった。
(実施例3〜5)
支持体構造を表2に示すものとした以外は実施例1と同様に重合及び成形を行った。結果を表1に示す。得られた成形体は高い重合度、良好な色調を有し、且つ、アセトアルデヒド含有量が少ない、高重合度で高品質なPET中空体であった。
(実施例6)
表1に示す条件以外は実施例1と同様に重合を行い、水中を通してストランドを曳き、ペレタイザーでペレタイズしてペレットを得た。結果を表1に示す。得られたペレットは、回収品よりも高重合度であり、かつより良好な色調を有し、アルデヒド含有量の少ない高品質なPET樹脂ペレットであった。
(実施例7及び8)
表1に示すように窒素を導入したほかは実施例6と同様に重合ペレタイズを行った。結果を表1に示す。高粘度のPET樹脂ペレットを、良好な色調、かつ少ないアセトアルデヒド含有量で得ることができた。
洗浄粉砕したボトルを乾燥、結晶化させた後、そのまま2軸延伸ブロー成形を行った。結果を表1に示す。比較例1の場合は、分子量の低下によりプリフォームのドローダウンが激しくボトルを成形するのが困難であった。
(比較例2)
重合器としてディスク型の攪拌翼を有した横型二軸重合器を用い290℃で重合を行った以外は、実施例1と同様にして重合及び成形を行った。なおこの重合器の滞留時間は2時間であった。結果を表1に示す。リサイクルポリマーの高重合度化が困難なうえ、得られた中空成形体は黄色く着色し、アセトアルデヒド含有量も多かった。
(比較例3〜5)
洗浄粉砕したボトルを表1に示す条件以外は実施例1と同様にして重合を行った。結果を表1に示す。比較例3は重合温度が高すぎて成形体が黄色く着色しアセトアルデヒド含有量も多かった。比較例4は重合温度が低すぎて樹脂が固化し、重合を行うことができなかった。比較例5は重合が進まず分解が起こって粘度が下がってしまった。
Claims (7)
- 重縮合ポリマーの回収品を、多孔板を有する重合器に溶融状態にて供給し、該多孔板の孔から吐出させた後、支持体に沿わせて落下させながら、減圧下又は減圧不活性気体雰囲気下にて該重縮合ポリマーの重合度を上昇させることを含む重縮合ポリマー回収品のリサイクル方法。
- 前記重縮合ポリマーの回収品を、未使用の重縮合ポリマー及び/又は重合中間体と共に前記多孔板の孔から吐出させる、請求請1に記載の方法。
- 重合度の上昇した重縮合ポリマー回収品の数平均分子量が20000〜100000である、請求項1又は2に記載の方法。
- 前記重合器に供給される重縮合ポリマーの回収品、又は重縮合ポリマーの回収品と未使用の重縮合ポリマー及び/又は重合中間体との混合物の溶融粘度を連続的に測定し、該溶融粘度の測定結果から重合器の減圧度を連続的に調整する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- 前記重縮合ポリマーの回収品、又は重縮合ポリマーの回収品と未使用の重縮合ポリマー及び/又は重合中間体の混合物を重合器に供給する以前の任意の工程において、該回収品又は該混合物を任意の量の分子量調節剤と反応させる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
- 前記重縮合ポリマーの回収品が、ポリエチレンテレフタレート樹脂の回収品であり、該重縮合ポリマーの回収品を(結晶融点−10℃)以上、(結晶融点+60℃)以下の温度にて、前記多孔板の孔から吐出させる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法によってリサイクルされたポリマーを溶融状態で成形機に移送して成形することを特徴とする成形体の製造方法。
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