JP4064249B2 - ポリトリメチレンテレフタレートの製造方法 - Google Patents

ポリトリメチレンテレフタレートの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はポリトリメチレンテレフタレートの製造方法に関するものであり、更に詳しくは高い重合度を有し、環状ダイマーの含有率が低く、溶融滞留時の色調や耐熱分解性などにも優れた品質を有するポリトリメチレンテレフタレートを生産性良く、工業的に安定して得ることの出来る製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年ポリトリメチレンテレフタレート(以下「PTT」と略す)は、繊維化した場合、低弾性率から由来する柔らかい風合、優れた弾性回復性、易染性などナイロン繊維に類似した性質と、ウォッシュアンドウェアー性、寸法安定性、耐黄変性といったポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略す)繊維に類似した性質を併せ持つ画期的な繊維となり、その特徴を活かして、カーペットや衣料等へ応用できる素材として注目されている。また、低吸湿性、耐黄変性などナイロンにない特徴や、易成形性などポリブチレンテレフタレート(以下「PBT」と略す)にない特徴を利用して、優れた成形材料となることが予想される。今後、このような特徴を生かして更に用途を拡大していくためには、より高い重合度や溶融熱安定性を有し、繊維や成型品とした場合に高い強度や、良好な白度を有するPTTの製造方法が求められている。
【0003】
通常PTTは、テレフタル酸またはテレフタル酸ジメチルのようなテレフタル酸の低級アルコールジエステルとトリメチレングリコール(以下「TMG」と略す)とを、無触媒あるいは金属カルボン酸塩、チタンアルコキサイド等の触媒存在下でエステル交換反応または直接エステル化反応を行い、ビス(3−ヒドロキシプロピル)テレフタレート(以下「BHPT」と略す)を得た後、該BHPTをチタンアルコキサイドやアンチモン酸化物等の触媒存在下、溶融状態にて加熱して、副生するTMGを系外に抜き出しながら重縮合反応させてポリマーを得る。しかしながら高重合度のPTTを溶融重合により得ようとする場合、PETやPBTなどと比較して高重合度化しにくく、且つ、着色しやすい問題がある。この原因としては、PTTがPETやPBTなどと比較して熱分解しやすいことや、PTTは重縮合反応平衡定数が小さく、TMGの沸点が重合温度に比較的近いために重縮合速度が遅いことが挙げられる。
【0004】
従来PTTの黄色度特性を改善し、より高い固有粘度で製造する方法として、有効触媒量の錫と、登録商標ホスタパーム顔料やコバルトを組み合わせる方法が提案されている。(例えば、特許文献1参照)
しかしながら特許文献1の実施例に使用されているブチル錫酸に代表される炭素原子と錫原子が直接結合を有するオルガノスズ化合物は、ポリマーの色調を改善するには登録商標ホスタパーム顔料やコバルトと組み合わせが必須であり、尚色調を改善するには触媒量もDMT基準で525ppm以下に制限する必要があった。高重合度化に関しても1kgスケール前後の液容量に対する蒸発面積の比率が大きい場合は可能であるが、工業的規模では蒸発面積に対する液容量の比率が大きく、高い重合度を有するPTTを得ることは困難であった。さらにこのようなオルガノスズ化合物は毒性にも問題があるため好ましくない。
【0005】
重合設備の面では、従来PTTの溶融重合としては、撹拌機を備えた槽型の重合器を用いる方法が広く知られている。(例えば、特許文献2〜4参照)
また溶融重合のみで高い重合度のPTTを得る方法としては、重縮合工程の最終反応器にdisc ring reactor 又はcage type reactorを用いる方法が提案されている。(例えば、特許文献5、6参照)
しかしながら工業的規模では、撹拌機を備えた槽型の重合器は、通常、蒸発面積に対する液容量の比率が大きく、高い重合度を有するPTTを得ることが困難となる場合が多い。また、これら重合器は回転駆動部分を有し、高真空下での重合において微量の酸素の漏れ込みを防止できず、ポリマーの色調が損なわれやすい。また本発明の目的とするような高重合度のポリマーを製造する場合には粘度が非常に高く、攪拌熱によってポリマーが熱分解するため高重合度のPTTの製造は困難である。
【0006】
これに対し高重合度の縮合系ポリマーの製造法として、本体に回転駆動部分を有さず、多孔板の孔から不活性ガス下又は減圧下へ糸状又は支持体に沿わせ落下させて、所望の分子量のポリマーを製造する方法が提案されている。(例えば特許文献7〜10参照)
しかしながら、これら文献にはPTTに関する記載が全くなく、熱分解が激しく副生する物質の揮発性が低いPTTでは、文献の方法をそのまま応用しても、高品質の繊維や成型品を得るために要求されるような、高重合度で溶融熱安定性や色調が良好なポリマーを製造することはできない。
【0007】
近年、特定範囲の重合度を有するPTTプレポリマーを、溶融状態で、特定温度範囲にて多孔板の孔から吐出させた後、支持体に沿わせて落下させながら減圧下にて重合させる方法が提案されている。(特許文献11参照)
ここに提案された方法を用いることで、はじめて重合度や色調が改良されたPTTを製造することが可能となる。しかしながら、最近望まれるような高品質の繊維や成型品を製造するためには、さらにポリマーの色調や耐熱分解性などの品質に改良の余地がある。またこの方法の連続安定運転性に関しても、重合時にPTTプレポリマーから揮発する環状ダイマーが重合設備の配管内に析出して閉塞を引き起こす問題があり、改良の余地がある。尚、PTTとPTT中に含有される環状ダイマーとの間には環鎖平衡が存在することから揮発量に相当する環状ダイマーが再生成するためにPTTの収量が低下するうえ、PTTに含有される環状ダイマーは繊維や成型品として加工された後に、その表面にブリードアウトする問題もある。
【0008】
【特許文献1】
米国特許第5340909号明細書
【特許文献2】
国際公開第98/23662号パンフレット(第13項)
【特許文献3】
国際公開第01/14450号パンフレット(第11項)
【特許文献4】
国際公開第01/14451号パンフレット(第11項)
【特許文献5】
国際公開2000/64962号パンフレット
【特許文献6】
米国特許第5599900号明細書
【特許文献7】
米国特許第3110547号明細書
【特許文献8】
特公昭48−8355号公報
【特許文献9】
特開昭53−17569号公報
【特許文献10】
国際公開99/65970号パンフレット
【特許文献11】
特願2002−172735号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、90モル%以上がトリメチレンテレフタレート繰返単位から構成されるPTTを製造する方法において、従来に無い高重合度及び、環状ダイマーの含有率が低く、溶融滞留時の色調や耐熱分解性などにも優れた品質を有するPTTを工業的に安定して得ることができる製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を進めた結果、炭素原子と錫原子が直接結合を有さぬ錫系化合物を触媒として重合されたPTTプレポリマーを、溶融状態で特定温度範囲にて多孔板の孔から吐出させた後、支持体に沿わせて落下させながら重合を行うことによりその目的を達成できる事を見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち本発明は以下のとおりのものである。
(1)炭素原子と錫原子が直接結合を有さぬ錫系化合物を触媒として重合された、90モル%以上がトリメチレンテレフタレート繰返単位から構成されるポリトリメチレンテレフタレートプレポリマーを、重合反応器に連続的に供給し、該プレポリマーの結晶融点以上、280℃以下の温度にて重合反応器内にある多孔板の孔から吐出させた後、支持体に沿わせて落下させながら減圧下にて重合させることを特徴とするポリトリメチレンテレフタレートの製造方法。
(2)錫系化合物触媒が、2−エチルヘキサン酸錫であることを特徴とする(1)記載のポリトリメチレンテレフタレートの製造方法。
【0012】
(3)錫系化合物触媒の量が、ジメチルテレフタレート基準で600ppm〜6000ppmの範囲であることを特徴とする(1)〜(2)のいずれかに記載のポリトリメチレンテレフタレートの製造方法。
(4)錫系化合物を予めトリメチレングリコールと反応させて、均一溶液を調整したものを触媒として使用することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のポリトリメチレンテレフタレートの製造方法。
(5)重合により得られるポリトリメチレンテレフタレート中の環状ダイマーの含有率が、2wt%以下であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のポリトリメチレンテレフタレートの製造方法。
【0013】
本発明は、従来のチタンアルコキサイド等を触媒とした場合と比較して、炭素原子と錫原子が直接結合を有さぬ錫系化合物を触媒とした場合、重合時に生成し揮発する環状ダイマーの量を大幅に低減出来ることから、重合反応装置の連続安定運転性が改良でき、環状ダイマー含有率が低く、溶融滞留時の色調や、耐熱分解性などにも優れた品質を有するPTTが製造出来る特長がある。
【0014】
以下、本発明を(1)PTTプレポリマー、(2)フィニッシャーとしての重合反応器、(3)本発明で用いることのできる添加剤等の順に詳細に説明する。
(1)PTTプレポリマーについて
PTTプレポリマーとはフィニッシャーとしての重合反応器に供給されるBHPTまたはBHPTの2量体以上の分子量であって、この重合反応器によって製造されるPTTよりも分子量の低い重縮合物を示す。重合反応器に供給されるPTTプレポリマーは、極限粘度[η]が0.2〜2dl/gであることが好ましく、より好ましくは0.25〜1.5dl/gであり、さらに好ましくは0.3〜1.0dl/gであり、最も好ましくは0.35〜0.8dl/gの範囲である。極限粘度[η]が0.2未満では、重合反応器に供給されたときに反応器壁面への飛散が著しく、熱分解によって製造されるPTTの品位が低下するおそれがある。また、極限粘度[η]が2dl/gを越えると、重合反応器内部での表面更新速度が非常に遅くなるため、重合度を高めることが困難になる。
【0015】
本発明のPTTとは、90モル%以上がトリメチレンテレフタレート繰返し単位から構成されるPTTであって、90モル%以上がトリメチレンテレフタレート繰返し単位から構成されるPTTプレポリマーをフィニッシャーとしての重合反応器で重合することにより製造出来る。該PTTプレポリマーには10モル%以下で1種類以上の他の共重合成分を含有することも含む。
【0016】
そのような共重合成分としては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸、4−ナトリウムスルホ−2,6−ナフタレンジカルボン酸、3,5−ジカルボン酸ベンゼンスルホン酸テトラメチルホスホニウム塩、3,5−ジカルボン酸ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3,5−ジカルボン酸ベンゼンスルホン酸トリブチルメチルホスホニウム塩、3,6−ジカルボン酸ナフタレン−4−スルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3,6−ジカルボン酸ナフタレン−4−スルホン酸テトラメチルホスホニウム塩、3,5−ジカルボン酸ベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、3,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールが挙げられる。
【0017】
またネオペンチルグリコール、1,5−ペンタメチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、ヘプタメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2−メチルグルタル酸、2−メチルアジピン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸等のエステル形成性モノマーが挙げられる。
【0018】
本発明のPTTプレポリマーの重合触媒として用いられる、炭素原子と錫原子が直接結合を有さぬ錫系化合物は、登録商標ホスタパーム顔料やコバルトと組み合わせなくてもポリマーの色調の改善に効果があり、しかも色調を改善するために触媒量をDMT基準で525ppm以下に制限する必要もない。具体的には、金属錫、2価あるいは4価の酸化錫、2価あるいは4価の硫化錫、塩化錫、臭化錫、ヨウ化錫に代表される2価あるいは4価の錫のハロゲン化物、酢酸錫、プロピオン酸錫、ブチル酸錫、2−エチルヘキサン酸錫、ネオドデカン酸錫、オキザル酸錫、酒石酸錫に代表される2価あるいは4価の錫のカルボン酸塩、錫(II)アセチルアセトナート、錫(II)ヘキサフルオロペンタジオネート、錫(II)トリフルオロメタンスルホネート、錫(II)フタロシアニン、錫(IV)フタロシアニンジクロリド、錫メトキシド、錫エトキシド、錫プロポキシド、錫ブトキシドに代表される2価あるいは4価の錫のアルコキシド等が挙げられ、これらの中でも反応性や、製造されるポリマーの色調の面から、2価あるいは4価の錫のハロゲン化物および2価の錫のカルボン酸塩が好ましく、特に好ましくはブチル酸錫、2−エチルヘキサン酸錫、ネオドデカン酸錫が好ましく、最も好ましくは2−エチルヘキサン酸錫である。これらの触媒は1種だけで用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0019】
重合触媒の量としては原料として使用するジメチルテレフタレート基準で600〜6000ppmの範囲であることが好ましい。ただし原料としてテレフタル酸を使用したり、共重合成分として他の二官能性芳香族化合物を用いたりする場合は、それを等モル量のジメチルテレフタレートに換算して考える。より好ましくは600〜3000ppmであり、さらに好ましくは800〜1000ppmである。炭素原子と錫原子が直接結合を有さぬ錫系化合物は、重合触媒としての作用の他にもPTTに適量包含されることにより、高温で長時間溶融保持したときの熱分解によるアクロレインの発生を抑制する作用があり、アクロレインの発生を抑制する目的から好ましくは600〜3000ppmの範囲であり、さらに好ましくは800〜1000ppmである。また、高重合度化を達成するためにも触媒量は600ppm以上であることが好ましい。
【0020】
重合触媒の調整方法としては、予め原料の一部である、トリメチレングリコールと反応させて均一溶液を調整したものを使用することが好ましい。なぜなら錫系化合物、原料のトリメチレングリコール及びジメチルテレフタレートまたはテレフタル酸とは、溶解性及び比重の違いから分離して沈降する場合があり、触媒濃度にムラが出来る可能性があるからである。
また、この際少なくとも部分的に形成される錫グリコールオキシドによって、反応の誘導期間を短縮出来る利点もある。反応の進行度合いは、例えば2−エチルヘキサン酸錫とトリメチレングリコールとの反応の場合、遊離する2−エチルヘキサン酸の量をガスクロマトグラフィー等を用いた分析によって評価が可能であり、錫グリコールオキシドの生成に関しては赤外分光分析などの手法で確認が可能である。なお触媒の調整は窒素雰囲気で実施することが好ましく、さらに好ましくは窒素を溶液中にバブリングすることによって溶液中の水分なども同時に除去する方法である。
【0021】
触媒調整の具体例としては、トリメチレングリコールを50〜200℃の範囲で加熱撹拌しつつ、錫系化合物たとえば2−エチルヘキサン酸錫を滴下し、さらに10分間以上加熱撹拌し均一化させることによって調整出来る。
一方、ブチル錫酸、ジブチル錫オキサイドに代表される炭素原子と錫原子が直接結合を有するオルガノスズ化合物は高い反応性を示すものもあるが、登録商標ホスタパーム顔料やコバルトと組み合わせず単体で用いる場合、さらには高重合度化を達成するために600ppm以上使用した場合、ポリマーの色調を著しく損なううえ、化合物の毒性にも問題があるため好ましくない。
【0022】
本発明に用いるPTTプレポリマーは、カルボキシル末端基比率が50%以下であることが好ましい。カルボキシル末端基比率とは下記式に従って求めた値である。
カルボキシル末端基比率=カルボキシル基濃度/総末端基濃度×100(%)
ここで、カルボキシル基濃度:サンプル1kg当たりのカルボキシル基の当量
総末端基濃度 : サンプル1kg当たりの全末端基の当量
カルボキシル末端基比率が50%を越えると重合速度が低下し、製造されるPTTの色調を損なう。カルボキシル末端基比率はより好ましくは30%以下であり、更に好ましくは20%以下であり、最も好ましくは0%である。
【0023】
次に本発明に用いるPTTプレポリマーの製造法について述べる。
本発明のPTTプレポリマーを工業的に製造する好ましい方法としては原料の違いから大きく分けて、テレフタル酸の低級アルコールジエステルとTMGとをエステル交換反応させ、PTTの中間体であるBHPTを得た後、該BHPTを重縮合反応させてPTTプレポリマーを製造する方法(以下「エステル交換法」と略す)並びにテレフタル酸とTMGとをエステル化反応させ、BHPTを得た後、第一の方法と同様に、該BHPTを重縮合反応させてPTTプレポリマーを製造する方法(以下「直接エステル化法」と略す)がある。また、製造方式の違いから大きく分けて、原料等を反応装置に全て投入し、これら同時に反応させてPTTプレポリマーを得るバッチ重合法(回分法とも呼ぶ)並びに原料を反応装置に連続して投入し、連続してPTTプレポリマーを得る連続重合法がある。これらいずれの原料及び、製造方式とも可能であるが、本発明においては連続重合法によってPTTプレポリマーを得て、該PTTプレポリマーを本発明のフィニッシャーとしての重合器にて連続的に重合することが最も好ましい。ここでBHPTとは、未反応のテレフタル酸、テレフタル酸の低級アルコールエステル、TMG及びPTTオリゴマーが含まれていてもよいが、全反応物の70重量%以上がBHPTであることが好ましい。
【0024】
以下にBHPTを製造する方法の一例としてエステル交換法について述べる。
エステル交換法ではテレフタル酸の低級アルコールジエステルの一種であるテレフタル酸ジメチルとTMGとを、上述の炭素原子と錫原子が直接結合を有さぬ錫系化合物、チタンテトラアルコキサイド、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛などのエステル交換反応触媒存在下150〜240℃の温度でエステル交換させてBHPTを得ることができる。錫系化合物触媒はエステル交換反応の触媒としても、引き続き行うBHPTの重縮合反応の触媒としても働くので好ましい。エステル交換反応触媒量は、ジメチルテレフタレート基準で600〜6000ppmの範囲であることが好ましく、より好ましくは600〜3000ppmであり、さらに好ましくは800〜1000ppmである。
【0025】
テレフタル酸の低級アルコールジエステルとTMGの仕込み時のモル比は1:1.3〜1:4が好ましく、より好ましくは1:1.5〜1:2.5である。1:1.3よりもTMGが少ないと、反応に長時間を要す。一方、1:4よりもTMGが多いと、TMGの留去のために重合時間が長くなり好ましくない。上記の方法で得られたBHPTを引き続き重縮合して本発明に用いるPTTプレポリマーを製造できる。
【0026】
BHPTの重縮合は、BHPTを減圧下あるいは不活性気体雰囲気下にて所定温度で反応させ、副生するTMGを除去しながら行う。このような重縮合を行う温度は230〜280℃とすることが好ましい。230℃未満では反応に長時間を要する。一方280℃を越えると熱分解が激しくなり、PTTの色調が低下する。温度はより好ましくは232〜275℃であり、さらに好ましくは235〜270℃である。重縮合反応は、減圧下あるいは不活性気体雰囲気下で行うことができる。減圧下で実施する場合はBHPTや重縮合反応物の昇華状態や反応速度により適宜減圧度を調節する。不活性気体雰囲気下で実施する場合は、副生するTMGが効率的に除去できるように不活性気体を随時十分置換させることが重要である。
【0027】
重縮合触媒の添加量としては、上述の炭素原子と錫原子が直接結合を有さぬ錫系化合物を、原料として用いるジメチルテレフタレート基準で600〜6000ppmの範囲で使用することが好ましく、より好ましくは600〜3000ppmであり、さらに好ましくは800〜1000ppmである。エステル交換反応時に添加した錫系化合物触媒によってBHPTを重縮合することも可能であるが、BHPTを重縮合する際に、錫系化合物触媒を新たに追加添加することも可能である。
【0028】
BHPTの重縮合を行う装置は、縦型攪拌反応装置、1軸又は2軸の攪拌翼を有した横型攪拌反応装置、棚段を有する自然流下式の薄膜重合機、傾斜した平面を自然流下する薄膜重合機等が挙げられ、これらを併用することも可能である。重縮合反応装置は、連続重合法では反応を効率的に進めるために2つ以上の反応槽に分け、温度、減圧度等を段階的に変えることが好ましい。
【0029】
次に、原料よりポリマーを製造する際の、重合装置の態様を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。図3に重合装置の1例を示す。図3において、原料であるTMGとテレフタル酸ジメチル及び触媒がエステル交換反応器18に供給され、攪拌翼20で攪拌しながら所定時間反応してBHPTを得る。反応槽内部は窒素などの不活性ガス雰囲気あるいは、留出するメタノールやTMG雰囲気下となっており、通常常圧付近でコントロールされる。留出するメタノール、TMGなどや過剰の窒素などはベント口19から排出される。エステル化反応槽18にて得られたBHPTは、移送ポンプ21で移送されて第一撹拌槽型重合器22に導入され、攪拌翼24で攪拌しながら所定時間反応して低重合度のPTTプレポリマーを得る。
【0030】
重合器内部は減圧あるいは窒素などの不活性ガスを流通させた状態にある。留出するTMGなどや過剰の窒素などはベント口23から排出される。第一撹拌槽型重合器22にて得られた低重合度のPTTプレポリマーは、移送ポンプ25で移送されて第二撹拌槽型重合器26に導入され、攪拌翼28で攪拌しながら所定時間反応してPTTプレポリマーを得る。重合器内部は減圧あるいは窒素などの不活性ガスを流通させた状態にある。留出するTMGなどや過剰の窒素などはベント口27から排出される。
【0031】
これ以後の工程は、次節で詳細に説明するが、第二撹拌槽型重合器26にて得られたPTTプレポリマーは移送ポンプ29を介して原料供給口3より多孔板4を通って連続的にフィニッシャーとしての重合器内部に導入され、支持体5に沿って落下する。重合器内部は、必要に応じてガス供給口7より窒素等の不活性ガスが一定量導入されたうえで、所定の減圧度にコントロールされている。PTTプレポリマーから留出したTMGなどや、導入された不活性ガスは減圧排気口6より排出される。重合ポリマーは、排出ポンプ9により排出口10から連続的に排出される。
【0032】
重合器本体1などはヒーター又はジャケットにより加熱され、かつ保温されている。エステル交換反応器18、第一撹拌槽型重合器22、第二撹拌槽型重合器26、重合器1や配管、移送ポンプなどはヒーター又はジャケットにより加熱され、かつ保温されている。本発明の方法を達成する重合器の材質に特に制限はなく、通常ステンレススチールやニッケル、グラスライニング等から選ばれる。重合器内側面にスケールが付着するのを防止するため、循環するポリマーの一部で重合器内壁面に濡れ壁を形成させるのも本発明の好ましい実施態様の一つである。
【0033】
(2)フィニッシャーとしての重合器について
本発明においては、PTTプレポリマーを重合器に連続的に供給し、連続的に抜き出す必要がある。連続的に供給するとは、PTTプレポリマーの供給を継続して行うことを意味する。連続的に抜き出すとは、重合したポリマーの抜き出しを継続的して行うことを意味する。供給や抜き出しを停止したり、一度抜き出したポリマーを再度、重合器に戻したりすると、重合器の中におけるポリマーの滞留時間に大きなムラが発生し、熱分解によって平均重合度を十分高くすることが困難になるうえ、部分的に着色した品位の悪いポリマーや、平均白度の悪いポリマーとなるので好ましくない。供給量と抜き出し量は可能な限り等しく、且つ時間によって変動しないことが好ましい。この場合、供給量と抜き出し量が等しいとは化学量論的に等しいことを示し、質量や体積が等しいことではない。
【0034】
本発明においては、PTTプレポリマーを、溶融状態でPTTプレポリマーの結晶融点以上、280℃以下の温度にて多孔板の孔から吐出させる必要がある。熱分解しやすいPTTでは多孔板から吐出させる温度を適正にすることが重要である。吐出温度が280℃を越えると、熱分解により重合度の増加に寄与する活性末端が減少し、高重合度化が困難になるとともに、着色によりポリマーの品質が低下する。一方、吐出温度がPTTプレポリマーの結晶融点未満では、多孔板からの吐出の閉塞や、支持体に沿って落下する途中での部分的な固化がおきる。
【0035】
ここでPTTプレポリマーの結晶融点とは、Perkin Elmer社製Pyris 1 DSC(入力補償型示差熱量計)を用いて、下記の条件にて測定し、結晶の融解に由来する吸熱ピーク値である。ピーク値は、付属の解析ソフトを用いて決定した。
測定温度 : 0〜280℃
昇温速度 : 10℃/分
吐出温度は結晶融点より5℃高い温度以上、275℃以下が好ましく、より好ましくは結晶融点より5℃高い温度以上、275℃以下であり、更に好ましくは結晶融点より10℃高い温度以上、270℃以下である。
重合器の温度は、吐出温度と等しくするのが望ましく、好ましくは両温度の差が20℃以下であり、より好ましくは15℃以下であり、更に好ましくは10℃以下である。
【0036】
PTTプレポリマーを吐出させる多孔板とは、複数の貫通孔がある板状体である。多孔板の孔の数に特に制限はなく、反応温度や圧力などの条件、触媒の量、重合させる分子量の範囲等によっても異なるが、通常ポリマーを100kg/hr製造する際は10〜105個の孔が必要である。多孔板の厚みは、通常0.1〜300mmであり、好ましくは1〜200mmであり、さらに好ましくは5〜150mmである。多孔板は、溶融PTTプレポリマー供給室の圧力に耐えると共に、重合室の支持体が多孔板に固定されている場合には、支持体及び落下する溶融PTTプレポリマーの重量を支えるための強度が必要であり、リブ等によって補強されていることが好ましい。
【0037】
多孔板の孔は、通常、円状、長円状、三角形状、スリット状、多角形状、星形状などの形状から選ばれる。孔の断面積は、通常、0.01〜100cmであり、好ましくは0.05〜10cmであり、特に好ましくは0.1〜5cmの範囲である。また、孔に接続するノズル等を備えることも含む。
孔と孔との間隔は、孔の中心と中心の距離で通常、1〜500mmであり、好ましくは25〜100mmである。多孔板の孔は、多孔板を貫通させた孔であっても、多孔板に管を取り付けた場合でもよい。また、テーパー状になっていてもよい。溶融プレポリマーが多孔板を通過する際の圧力損失が、0.1〜50kg/cmである様に孔の大きさや形状を決めることが好ましい。多孔板の材質は、通常、ステンレススチール製、カーボンスチール製、ハステロイ製、ニッケル製、チタン製、クロム製、及びその他の合金製等の金属材質が好ましい。
【0038】
また、PTTプレポリマー流路の多孔板より上流側には、異物の混入による多孔板の閉塞を防止する目的でフィルターを設けることが好ましい。フィルターの種類は、多孔板の孔径以上の異物を除去でき、且つ、PTTプレポリマーの通過によって破損しないよう適宜選定する。また、多孔板よりプレポリマーを押し出す際は、理由は定かではないが、吐出圧を0.1Pa以上とすることが望ましく、この吐出圧とすることで、より高重合度のポリマーを得ることが容易となる。
このような多孔板を通じてPTTプレポリマーを支持体に沿わせて落下させる方法としては、液ヘッドまたは自重で落下させる方法、またはポンプなどを使い加圧することにより、多孔板の孔から該PTTプレポリマーを押し出す等の方法が挙げられるが、落下するPTTプレポリマー量の変動を抑えるためにギアポンプなどの計量能のあるポンプを用いることが好ましい。
【0039】
本発明では、多孔板の孔から吐出させたPTTプレポリマーを重合器内の支持体に沿わせて落下させながら重合させることが出来る。支持体としては、ワイヤ状、ワイヤ状の材料を組み合わせたチェーン状や金網状、ワイヤ状の材料を立体格子状に連結したいわゆるジャングルジム状、平坦あるいは曲率を有した薄板状、多孔板状、及び規則充填体あるいは不規則充填体を積み重ねた充填塔状などが挙げられる。このうち、ワイヤ状、チェーン状、金網状、ジャングルジム状が落下させるPTTプレポリマーの表面積を大きくしてTMGを効率的に抜き出せるために好ましく、チェーン状、ジャングルジム状が特に好ましい。これらの支持体を組み合わせて用いることも好ましい一つの方法である。
ここでワイヤ状とは、断面の外周の平均長さに対する該断面と垂直方向の長さの比率が非常に大きい材料を表すものである。断面の面積は特に制限はないが、通常10−3〜10cmの範囲であり、好ましくは10−2〜10cmの範囲であり、特に好ましくは10−1〜1cmの範囲である。
【0040】
断面の形状に特に制限はなく、通常、円状、長円状、三角形状、四角形状、多角形状、星形状などの形状から選ばれる。断面の形状は長さ方向に同一であるもの、異なっているもののいずれも含む。また、ワイヤは中空状のものも含む。ワイヤは、針金状等の単一な、捩り合わせる等の方法によって複数組み合わせたものも含む。ワイヤの表面としては平滑なもの、凹凸があるもの、部分的に突起等を有するものなどが挙げられる。ワイヤの材質に特に制限はないが、通常、ステンレススチール製、カーボンスチール製、ハステロイ製、ニッケル製、チタン製、クロム製、及びその他の合金製等の中から選ばれる。また、ワイヤは、メッキ、ライニング、不働態処理、酸洗浄等必要に応じて種々の表面処理がなされている場合も含む。金網状とは前記したワイヤ状の材料を格子状に組み合わせた材料を表すものである。組み合わせるワイヤは直線状であっても、曲率している場合も含み、組み合わせる角度は任意に選ぶことができる。
【0041】
金網状の材料を面に対して垂直方向より投影した際の、材料と空間との面積比は特に制限はないが、通常1:0.5〜1:1000の範囲であり、好ましくは1:1〜1:500の範囲であり、特に好ましくは1:5〜1:100の範囲である。面積比は水平方向には等しいことが好ましく、鉛直方向には等しいか、あるいは下部ほど空間の比率が大きくなることが好ましい。チェーン状とは前記したワイヤ状材料よりできた輪を連結させた材料を表すものである。輪の形状は円形、楕円形、長方形、正方形等が挙げられる。連結のさせ方は一次元、二次元、三次元いずれも含む。ジャングルジム状とはワイヤ状の材料を立体格子状に三次元に組み合わせた材料を表すものである。組み合わせるワイヤは直線状であっても、曲率している場合も含み、組み合わせる角度は任意に選ぶことができる。
【0042】
チェーン状、ジャングルジム状において、組み合わせるワイヤの体積と空間との体積比は特に制限はないが、通常通常1:0.5〜1:10の範囲であり、好ましくは1:10〜1:10の範囲であり、特に好ましくは1:10〜1:10の範囲である。体積比は水平方向には等しいことが好ましく、鉛直方向には等しいか、あるいは下部ほど空間の比率が大きくなることが好ましい。支持体は形状によって単数設ける場合と、複数設ける場合と適宜選択することができる。ワイヤ状や線状に連なったチェーン状の場合は通常、1〜100000個であり、好ましくは3〜50000個である。金網状、2次元に連なったチェーン状、薄板状、多孔板状の場合は通常、1〜1000個であり、好ましくは2〜100個である。3次元に連なったチェーン状、ジャングルジム状、充填塔状の場合は単数とするか、分割して複数とするかは、装置の大きさや、設置スペース等を考慮して適宜選択できる。支持体が複数の場合、適宜スペーサー等を用いて指示体同士が接触しないようにする事も好ましい。
【0043】
本発明において、通常支持体に対し多孔板の孔1つ以上からPTTプレポリマーが供給される。孔の数は支持体の形状に応じて適宜選択することができる。また、一個の孔を通過したPTTプレポリマーを、複数の支持体に沿って落下させることも可能である。支持体の位置は、PTTプレポリマーが、支持体に沿って落下できる位置であれば特に制限はなく、多孔板の孔を貫通して設置される場合、貫通せず多孔板の孔の下部に設置される場合を適宜選択できる。孔を通過した後、支持体に沿わせて落下させる高さは、好ましくは0.3〜50mであり、さらに好ましくは0.5〜20mであり、より好ましくは1〜10mである。孔を通過させるPTTプレポリマーの流量は、好ましくは孔1個当たり、0.01〜100リットル/hrであり、特に好ましくは、0.1〜50リットル/hrの範囲である。この範囲より流量が多い場合は重合速度が小さくなり、流量が少ない場合は生産性が低くなる。支持体に沿わせて落下させるのに要する時間の平均は1分〜10時間の範囲が好ましく、より好ましくは5分〜5時間の範囲であり、特に好ましくは10分〜3時間の範囲である。
【0044】
本発明において、支持体に沿わせて落下させながら重合を行う雰囲気は、不活性ガスを導入した減圧雰囲気とすることが好ましい。ここで不活性ガスを導入した減圧雰囲気とは、重合反応器に不活性ガスを導入し、且つ、重合反応器内の圧力が大気圧より低い雰囲気を意味する。減圧雰囲気とするのは、反応の進行に伴い生成するTMGを効率的に反応系外に除去し重合を進行させるためである。
【0045】
圧力は、10000Pa以下が好ましく、より好ましくは5000Pa以下であり、更に好ましくは1000Pa以下であり、特に好ましくは500Pa以下である。特に極限粘度[η]が1.1以上の高重合度のPTTを製造する場合は、300Pa以下が好ましく、より好ましくは20Pa以下である。下限は特に制限させるものではないが、系内を減圧とするための設備の大きさなどから考え0.1Pa以上とすることが好ましい。不活性ガスの導入は、従来、重縮合反応で生成する副生物の分圧を下げ、平衡的に重縮合を有利に進める効果があると理解されている。しかし本発明者らの検討によると分圧を低下させることによって重合速度を高める効果がほとんど期待できないほど微量の不活性ガスを重合反応器に導入することにより、驚くべきことに支持体上での溶融プレポリマーの発泡現象が促進され、溶融PTTプレポリマーの表面積が増加し表面更新状態が極めて良くなるとともに、重合速度がさらに飛躍的に向上することが観察された。原理は定かではないが、この溶融PTTプレポリマーの内部及び表面状態の変化が重合速度を飛躍的に高めているものと推定される。
【0046】
不活性ガスを導入する場合、ポリマーに着色、分解等の悪影響を及ぼさない窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素や低級炭化水素ガスなどが好ましく、これらの混合ガスであってもよい。本発明で導入する不活性ガスの量は、極めて少量でよく、重合反応器より抜き出すポリマー1g当たり50〜100000μgとすることが好ましい。不活性ガスの量が抜き出すポリマー1g当たり50μg未満では、不活性ガス導入の影響が認められない。一方100000μgを越えると減圧度が悪くなり重合度を十分高めることが困難である。不活性ガスの量は、より好ましくは抜き出すポリマー1g当たり100〜50000μgであり、特に好ましくは200〜10000μgである。
【0047】
不活性ガスを導入する方法としては、直接反応器内に導入する方法、あらかじめ不活性ガスをPTTプレポリマーに吸収及び/又は含有させ、減圧下にてPTTプレポリマーより吸収及び/又は含有させたガスを放出させる方法、これらを併用する方法が挙げられる。なおここで吸収とはPTTプレポリマー中に不活性ガスが溶解し、気泡としては存在しない場合を称し、含有とは気泡として存在している場合を称す。気泡として存在する場合は、気泡の大きさが細かいほど好ましく、平均気泡径が30mm以下とすることが好ましく、より好ましくは10mm以下であり、さらに好ましくは5mm以下であり、特に好ましくは2mm以下である。不活性ガスを直接系内に導入する場合は、多孔板より遠く、ポリマーの抜き出し口に近くすることが望ましい。また、減圧排気ラインより離れていることも望ましい。
【0048】
一方あらかじめPTTプレポリマーに吸収及び/又は含有させる方法としては、例えば、化学装置設計・操作シリーズNo.2、改訂ガス吸収49〜54頁(昭和56年3月15日、化学工業社発行)に記載の充填塔型吸収装置、棚段型吸収装置、スプレー塔式吸収装置、流動充填塔型吸収装置、液膜十字流接触式吸収装置、高速旋回流方式吸収装置、機械力利用方式吸収装置等の公知の吸収装置を用いる方法や配管内に不活性ガスを圧入する方法などが挙げられる。最も好ましいのは、不活性ガス雰囲気下でPTTプレポリマーを支持体に沿わせて落下させながら不活性ガスを吸収させる装置を用いる方法である。この方法では、不活性ガスを吸収させる装置の内部に重合反応器内部より高い圧力の不活性ガスを導入する。圧力は0.01〜1MPaが好ましく、より好ましくは0.05〜0.5MPaであり、更に好ましくは0.1〜0.2Paである。
【0049】
PTTプレポリマーを支持体に沿わせて落下させる際に、激しく発泡する部分があることが好ましく、特に支持体に沿わせて落下させた下部が発泡していることが好ましく、支持体に沿って全体に渡って発泡していることが最も好ましい。ここで発泡しているとは、泡が継続的に生成、破裂する状態と、生成した泡が維持される状態の両方を指す。
【0050】
次に本発明で用いるフィニッシャーとしての重合装置の一例を、図に基づき説明する。図1は不活性ガスを直接重合器内に導入する方法を用いた装置の具体例である。図1では、PTTプレポリマーは移送ポンプ2を介して原料供給口3より多孔板4を通って連続的に重合器内部に導入され、支持体5に沿って落下する。重合器内部は、必要に応じてガス供給口7より窒素等の不活性ガスが一定量導入されたうえで、所定の減圧度にコントロールされている。PTTプレポリマーから留出したTMGなどや、導入された不活性ガスは減圧排気口6より排出される。重合ポリマーは、排出ポンプ9により排出口10から連続的に排出される。重合器本体1などはヒーター又はジャケットにより加熱され、かつ保温されている。
【0051】
また、図2は不活性ガス雰囲気下でPTTプレポリマーを支持体に沿わせて落下させながら、あらかじめ不活性ガスを吸収及び/又は含有させ、減圧下にてPTTプレポリマーより吸収及び/又は含有させたガスを放出させる方法を用いた装置の具体例である。
図2では、PTTプレポリマーは、まず移送ポンプ12を介して原料供給口13より多孔板14を通って、不活性ガス導入口16より窒素等の不活性ガスを導入してある不活性ガス供給装置内部に連続的に導入され、支持体15に沿って落下する。次いで移送ポンプ17を介して原料供給口3より重合器に供給され、多孔板4を通って重合器内部に連続的に導入され支持体5に沿って落下する。重合器内部は所定の減圧度にコントロールされている。不活性ガス供給装置11でPTTプレポリマーに吸収又は/及び含有された不活性ガスは重合器内部で放出される。PTTプレポリマーから留出したTMGなどや、導入された不活性ガスは減圧排気口6より排出される。重合ポリマーは、排出ポンプ9により排出口10から連続的に排出される。不活性ガス吸収装置11や重合器1などはヒーター又はジャケットにより加熱され、かつ保温されている。
【0052】
いずれの方法においても、支持体に沿って落下したポリマーは、重合器下部に溜まった後、排出ポンプによって排出口より抜き出されるが、この際、重合器下部に溜まる量は熱分解による着色や重合度低下を抑え、且つ、ポリマーの品位バラツキを抑える目的で、できるだけ少なく且つ、できるだけ一定とすることが好ましい。重合器下部に溜まる量を制御する方法としては、のぞき窓48より溜まっている量を監視し、重合反応器への供給量と抜き出し量を調整する。本発明の方法に用いる重合器は、重合器下部に撹拌器などを備えることも可能であるが、重合器本体での回転駆動部を設けないほうが高真空下でも良好にシール出来るため好ましい。循環ラインに備えられた循環ポンプの回転駆動部のシール性は、液ヘッドがあるため重合器本体に回転駆動部がある場合に比べ良好である。
【0053】
本発明の方法は、重合器1基で行う事も、2基以上で行うことも可能である。また、1基の重合器を竪型または横型に仕切って、多段の重合器とする事も可能である。また、PTTプレポリマーから目的とする重合度のPTTまで高重合度化する工程を、全て多孔板の孔から支持体に沿わせて落下させながら重合させる方法で行う事も可能であるが、他の重合方法、例えば撹拌槽型重合器、横型攪拌重合器、薄膜式重合器等と組み合わせて行う事も可能である。横型攪拌重合器としては、スクリュータイプ、独立翼タイプ、一軸タイプ、二軸タイプ等、例えば「反応工学研究会研究レポート:リアクティブプロセッシングPart2」(高分子学会;1992)第4章記載の重合器などが挙げられる。また、撹拌槽型重合器としては、例えば化学装置便覧(化学工学協会編;1989年)11章等に記載された撹拌槽のいずれも使用する事ができる。槽の形状に特に制限はなく、通常、縦型や横型の円筒型が用いられる。
【0054】
また、撹拌翼の形状にも特に制限はなく、アンカー型、タービン型、スクリュー型、リボン型、ダブル翼型等が用いられる。薄膜式重合器としては、濡れ壁式に落下させながら重合させる装置や、遠心薄膜式熱交換器、掻面式液膜熱交換器等を用いた重合装置等が上げられる。濡れ壁式に落下させながら重合させる装置としては例えば化学装置便覧(化学工学協会編;1989年)11章461頁に記載の反応器などが挙げられる。重合器は多管式にすることも可能であり、また、落下させたポリマーを循環させて再び濡れ壁式に落下させながら重合させることも可能である。また、掻面式液膜熱交換器や遠心薄膜蒸発器としては、例えば熱交換機設計ハンドブック(工学図書株式会社;1974)21〜22章記載の装置などが上げられる。
【0055】
(3)本発明で用いることのできる添加剤等について
本発明では、必要に応じて各種の添加剤、例えば艶消し剤、熱安定剤、難燃剤、帯電防止剤、消泡剤、整色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、増白剤などを共重合または混合することが出来る。これらの添加剤は重合の任意の段階で導入することが出来る。特に、安定剤を重合の任意の段階で、好ましくはBHPTを重縮合する前に導入することによりPTTの白度や溶融安定性の向上や、アクロレイン、アリルアルコール等の生成を抑制でき好ましい。
【0056】
安定剤としては、5価または3価のリン化合物やヒンダードフェノール系化合物が好ましい。5価または3価のリン化合物としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、フェニルホスホン酸、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、リン酸、亜リン酸等が挙げられ、特にトリメチルホスフェート及びフェニルホスホン酸が好ましい。添加するリン化合物の量としては、PTT中に含まれるリン元素の重量割合として2〜250ppmであることが好ましく、より好ましくは5〜150ppmであり、更に好ましくは10〜100ppmである。ヒンダードフェノール系化合物は、フェノール系水酸基の隣接位置に立体障害を有する置換基を持つフェノール系誘導体であり、分子内に1個以上のエステル結合を有する化合物である。
【0057】
具体的には、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tertブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンゼン)イソフタル酸、トリエチルグリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]である。
【0058】
また、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレン−ビス[3−(3,5−ジ−tertブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を例示しうる。中でもペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tertブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が好ましい。添加するヒンダードフェノール系化合物の量としては、得られるポリマーに対する重量割合として0.001〜1重量%であることが好ましく、より好ましくは0.005〜0.5重量%であり、更に好ましくは0.01〜0.1重量%である。これらの2種以上の安定剤を併用することも可能である。
【0059】
【発明の実施の形態】
以下、実施例をもって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の主な測定値は以下の方法で測定した。
(1)極限粘度[η]
極限粘度[η]は、オストワルド粘度計を用い、35℃、o−クロロフェノール中での比粘度ηspと濃度C(g/100ミリリットル)の比ηsp/Cを濃度ゼロに外挿し、以下の式に従って求めた。
Figure 0004064249
【0060】
(2)結晶融点
結晶融点はPerkin Elmer社製Pyris 1 DSC(入力補償型示差熱量計)を用いて、下記の条件にて測定し、結晶の融解に由来する吸熱ピークのピーク値を結晶融点とした。ピーク値は、付属の解析ソフトを用いて決定した。
測定温度 : 0〜280℃
昇温速度 : 10℃/分
【0061】
(3)カルボキシル基濃度
ポリマー1gをベンジルアルコール25mlに溶解し、その後、クロロホルム25mlを加えた後、1/50Nの水酸化カリウムベンジルアルコール溶液で滴定を行い、滴定値VA(ml)とポリマーが無い場合のブランク値V0より、以下の式に従って求めた。
カルボキシル基濃度(meq/kg)=(VA−V0)×20
【0062】
(4)総末端基濃度
極限粘度より下記式に従ってサンプル1kg当たりの末端基の総量として求めた。
総末端基濃度(meq/kg)=1000/重合度×206×2
重合度=極限粘度×144.6−26.2
【0063】
(5)環状ダイマーの含有量
PTT0.3gをクロロホルム5mlと(CFCHOH5mlの混合物に溶解させた後、さらにクロロホルム5mlを加え、その後アセトニトリルを約80ml加えた。このとき析出した不純物をろ別し、溶液を全て集めた。この溶液にアセトニトリルを添加し200mlの溶液とした。この溶液を高速液体クロマトグラフィーを用いて分析し、環状ダイマー量を測定した。カラムはμBond asphere 15μ C−18−100A 3.9×190mm(ウオータース社製)を用い、検出器として紫外線242nmの波長を用いた。温度は45℃、流量は1.5ml/minとした。
【0064】
(6)色調(L値、b*値)
スガ試験機(株)のカラーコンピューターを用いて測定した。
また、ポリマーを空気雰囲気下、180℃にて24時間加熱した後に、上記と同様にして色調を測定し、加熱時の着色性指標とした。
【0065】
【実施例1】
図1に示す装置を用いて、極限粘度[η]が0.50dl/g、カルボキシル末端基比率が7%、結晶融点が230℃のPTTプレポリマーを移送ポンプ2により原料供給口3より重合器1に供給し、260℃の溶融状態にて多孔板4の孔より、各孔当たり30g/分の量にて吐出させた後、支持体に沿わせながら100Paの減圧度にて重合させ、排出ポンプ9によって排出口10より抜き出してPTTポリマーを得た。重合器内部にはPTTポリマー1g当たり6000μgの窒素を直接導入した。多孔板は厚み50mmであり、直径1mmの孔を格子状に9個配列した。支持体は直径5mm、長さ8mの円形断面をしたステンレススチール製のワイヤ状のものを用いた。支持体は多孔板の孔一つに対して一つ取り付けた。
【0066】
重合器底部にはPTTポリマーがほとんど溜まらないようにのぞき窓から監視しながら排出ポンプを運転した。該PTTプレポリマーは、ジメチルテレフタレート基準で800ppmの2−エチルヘキサン酸錫触媒によってエステル交換反応及び重縮合反応を行い、トリメチルホスフェートをリン元素の重量割合として100ppm/PTTプレポリマーとなるように添加して製造した。重合結果を表1に示す。この時、下部のぞき窓から観察したところ落下ポリマーは泡を多量含んだ発泡状態であった。また、この時の滞留時間は70分であった。なお、滞留時間は重合器内部にあるポリマー量を供給量によって除した値を用いている。得られたPTTポリマーは非常に高い重合度、良好な色調を有し、且つ、均質であるうえ、環状ダイマー含有率の減少が認められた。また、加熱による着色も少なかった。
【0067】
【比較例1】
PTTプレポリマーがジメチルテレフタレート基準で800ppmのチタンテトラブトキシドによって、エステル交換反応及び重縮合反応により製造された以外は実施例1と同様にして重合を行った。環状ダイマー含有率の改善は認められなかった。重合結果を表1に示す。
【0068】
【比較例2】
炭素原子と錫原子が直接結合を有する、ジメチルテレフタレート基準で800ppmのブチル錫酸によってエステル交換反応及び重縮合反応を行なった以外は実施例1と同様にして重合を行った。登録商標ホスタパーム顔料やコバルトと併用しない場合、着色が著しい。重合結果を表1に示す。
【0069】
【実施例2】
重合器内に不活性ガスである窒素を導入しなかった以外は実施例1と同様にして重合を行った。重合結果を表1に示す。
【0070】
【実施例3】
不活性ガス吸収装置を用いて重合器内に不活性ガスを導入する、図2に示す重合装置を用いた以外は、実施例1と同様にして重合を行った。不活性ガス吸収装置の多孔板には直径1mmの孔を格子状に9個配列し、支持体は直径5mm、長さ3mの円形断面をしたステンレススチール製のワイヤ状のものを用いた。支持体は多孔板の孔一つに対して一つ取り付けた。吸収装置内部には内は0.11Paとなるように窒素ガスを供給し、支持体に沿って落下するPTTプレポリマーに窒素を吸収及び含有させた。吸収装置底部にはPTTポリマーがほとんど溜まらないようにのぞき窓から監視しながら移送ポンプを運転した。この時吸収装置より移送されるPTTプレポリマー中には微小の泡が存在した。
【0071】
また、吸収装置への窒素ガスの供給を停止してガスの圧力変化を調べたところ、PTTプレポリマー1g当たり1000μgに相当する圧力変化が見られた。この量がPTTプレポリマーに吸収及び含有された窒素ガスの量と考えられ、全量が重合器内に導入されるものとして重合器内への窒素導入量を求めた。重合結果を表1に示す。この時、下部のぞき窓から観察したところ落下ポリマーは泡を多量含んだ激しい発泡状態であった。得られたPTTポリマーは非常に高い重合度、良好な色調を有し、且つ、均質であるうえ、環状ダイマー含有率の減少が認められた。また、加熱による着色も少なかった。
【0072】
【実施例4】
図3の装置を用いて、原料としてテレフタル酸ジメチルとTMGを用いて、連続重合法により1日に約130kgのPTTポリマーを重合した。エステル交換反応器及び第一、第二攪拌槽型重合器にはアンカー状攪拌翼を有した縦型攪拌重合反応器を用い、次の重合器には実施例1に用いたものと同じ重合器を用いた。重合はジメチルテレフタレートと、ジメチルテレフタレートに対して800ppmの2−エチルヘキサン酸錫触媒を予め加熱添加して均一の溶液として調整したトリメチレングリコールとを、1:1.5のモル比でエステル化反応器に連続投入し、表1及び表2の条件にてPTTポリマーを得た。この際、エステル交換反応器と第一攪拌型重合器の間の配管より20ppm/PTTポリマーのトリメチルホスフェートを連続添加した。このような条件により1週間連続運転した結果を表1及び表2に示す。1週間のあいだ安定運転が可能であり、実験後減圧排気口と真空ポンプを接続する配管の内部を観察したが、閉塞に至るほどの環状ダイマーの析出は認められなかった。
【0073】
得られたPTTポリマーは非常に高い重合度、良好な色調を有し、且つ、均質であるうえ、環状ダイマー含有率の減少が認められた。また、加熱による着色も少なかった。原料として用いた、2−エチルヘキサン酸錫触媒を予め加熱添加して均一の溶液として調整したトリメチレングリコールをNMRにより分析したところ、約60モル%の、2−エチルヘキサン酸が遊離していることが確認された。
なお、別に2−エチルヘキサン酸錫触媒を予めTMGと調整せずエステル化反応器に連続投入した場合、ポリマーの極限粘度が経時的に変動したうえ、導入配管に不溶不融の白色の固体が析出した。これはポリマーに混入することで異物となることが懸念された。
【0074】
【比較例3】
テレフタル酸ジメチルとトリメチレンのモル比を1:1.5とし、テレフタル酸ジメチルに対して800ppmのチタンテトラブトキシドを添加した以外は実施例4と同様にして重合を行った。このとき減圧排気口と真空ポンプを接続する配管の内部に、PTTプレポリマーから揮発した環状ダイマーが析出したことによる閉塞傾向があり、3日毎に環状ダイマーを除去する必要があった。
【0075】
【比較例4〜6】
表1に示した条件以外は実施例1と同様にして重合を行った。重合結果を表1に示す。
比較例4の場合は、重合器内を常圧としたため重合度は上がるどころか、熱分解により低下してしまった。このとき発泡は全く見られなかった。
比較例5の場合は、吐出温度が高すぎたために熱分解が起こり、得られたPTTポリマーは十分な重合度に達せず、黄色く着色し、且つ、色調にムラのあるものであった。
比較例6の場合は、吐出温度を低く設定しすぎたために、プレポリマーが固まってしまい、多孔板の孔より吐出することができなかった。
【0076】
【実施例5】
PTTプレポリマーがテレフタル酸を等モルのジメチルテレフタレートに換算した基準で1000ppmの2−エチルヘキサン酸錫触媒によって、直接エステル化反応及び重縮合反応により製造された以外は実施例1と同様にして重合を行った。重合結果を表1に示す。
【0077】
【実施例6】
PTTプレポリマーがジメチルテレフタレート基準で450ppmの2−エチルヘキサン酸錫触媒によって、エステル交換反応及び重縮合反応により製造された以外は実施例1と同様にして重合を行った。環状ダイマー含有率、色調等は改善されているが極限粘度は低下した。重合結果を表1に示す。
【0078】
【表1】
Figure 0004064249
【0079】
【表2】
Figure 0004064249
【0080】
【発明の効果】
高い重合度を有し、環状ダイマーの含有率が低く、溶融滞留時の色調や耐熱分解性などにも優れた品質を有するPTTを生産性良く、工業的に安定して得ることが出来、このPTTを用いることで、白度に優れ、高い強度の繊維や成型品を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用した重合器の模式図である。
【図2】本発明で使用した不活性ガス吸収装置を備えた重合器の模式図である。
【図3】本発明で使用したエステル交換反応器、第一および第二攪拌型重合器並びに重合器を備えた模式図である。
【符号の説明】
1.重合器
2.移送ポンプ
3.原料供給口
4.多孔板
5.支持体及び落下ポリマー、
6.減圧排気口
7.不活性ガス供給口
8.のぞき窓
9.排出ポンプ
10.排出口
11.不活性ガス吸収装置
12.移送ポンプ
13.原料供給口
14.多孔板
15.支持体及び落下ポリマー
16.不活性ガス導入口
17.移送ポンプ
18.エステル交換反応器
19.ベント口
20.攪拌翼
21.移送ポンプ
22.第一攪拌槽型重合器
23.ベント口
24.攪拌翼
25.移送ポンプ
26.第二攪拌槽型重合
27.ベント口
28.攪拌翼
29.移送ポンプ

Claims (5)

  1. 炭素原子と錫原子が直接結合を有さぬ錫系化合物を触媒として重合された、90モル%以上がトリメチレンテレフタレート繰返単位から構成されるポリトリメチレンテレフタレートプレポリマーを、重合反応器に連続的に供給し、該プレポリマーの結晶融点以上、280℃以下の温度にて重合反応器内にある多孔板の孔から吐出させた後、支持体に沿わせて落下させながら減圧下にて重合させることを特徴とするポリトリメチレンテレフタレートの製造方法。
  2. 錫系化合物触媒が、2−エチルヘキサン酸錫であることを特徴とする請求項1に記載のポリトリメチレンテレフタレートの製造方法。
  3. 錫系化合物触媒の量が、ジメチルテレフタレート基準で600〜6000ppmの範囲であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のポリトリメチレンテレフタレートの製造方法。
  4. 錫系化合物を予めトリメチレングリコールと反応させて、均一溶液を調整したものを触媒として使用することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリトリメチレンテレフタレートの製造方法。
  5. 重合により得られるポリトリメチレンテレフタレート中の環状ダイマーの含有率が、2wt%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリトリメチレンテレフタレートの製造方法。
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