JP4124451B2 - ポリトリメチレンテレフタレートの安定した製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリトリメチレンテレフタレートの製造方法に関するものであり、更に詳しくは、重縮合反応の際に生じる環状オリゴマーに起因する問題を解決し、工業的に生産性良く連続してポリトリメチレンテレフタレートを製造できる方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年ポリトリメチレンテレフタレート(以下「PTT」と略すこともある。)は、繊維化した場合、低弾性率から由来する柔らかい風合、優れた弾性回復性、易染性といったナイロン繊維に類似した性質と、ウォッシュアンドウェアー性、寸法安定性、耐黄変性といったポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略すこともある。)繊維に類似した性質を併せ持つ画期的な繊維となり、その特徴を活かして、カーペットや衣料等へ応用のできる素材として注目され始めている。また、低吸湿性、耐黄変成といったナイロンにない特徴や、易成形性といったポリブチレンテレフタレート(以下「PBT」と略すこともある。)にない特徴を利用して、優れた成形材料となることも予想される。今後、このような特徴を生かして更に用途を拡大していくためには、ポリマーを工業的に高い生産性にて製造できることが求められる。
【0003】
PTTを工業的に重合する技術としては、トリメチレングリコール(以下「TMG」と略すこともある。)とテレフタル酸(以下「TPA」と略すこともある。)とをエステル化反応させた後、減圧下にて重縮合を行ってポリマーを得る方法において、TMG蒸気を用いた蒸気ジェットポンプにより反応器内を減圧にし、重縮合反応時に発生するTMGオリゴマー、PTTオリゴマー及び低沸点溶剤を除去する方法が開示されている。(例えば、特許文献1参照。)該技術では、除去した低沸点溶剤は、スプレー凝縮器を用いて凝縮し、エステル化反応器に再循環されている。
【0004】
また、複数の反応器を用いる連続重合法において、各反応器を適正な温度、滞留時間とすることにより熱分解による副生成物であるアクロレイン等の発生量を少なくし、且つ、高い分子量のポリマーを得る技術も提案されている(例えば、特許文献2、3参照。)。該技術では、重縮合反応器より過剰のTMGを蒸発させて抜き出し、該ガス状副生物を、TMGをシャワーさせるスプレイコンデンサーにより凝縮させて回収している。
【0005】
しかしながら、本発明者らの検討によると、PTTでは重縮合反応時に副生するTMGとともに環状オリゴマーが発生し、該環状オリゴマーがTMGを抜き出すための配管や装置に多量付着してしまうことが判った。このような現象は、PETやPBTのポリマーは300℃以上の高い融点、低い揮発性のオリゴマーを1%程度しか含まないのに対して、PTTのポリマーは250℃程度と重合温度程度の低い融点、高い揮発性の環状オリゴマーを3%近く含んでいるためであると考えられる。環状オリゴマーは平衡状態で存在するため、たとえ揮発したとしても含有量が減ることは無い。この環状オリゴマーはポリカーボネートなどと異なり、重合中に副生するTMGにほとんど溶解しないため、一度、配管や装置に付着すると重合中に取り除かれることはほとんどない。環状オリゴマーの付着を放置しておくと、配管を閉塞させて減圧度を悪化させたり、装置に過大な負荷をかけてしまい、ついには破損させたりしてしまう。付着した環状オリゴマーを取り除くためには、運転を停止し、配管や装置を全て分解し、内部を物理的に洗浄しなければならず、長期間の運転停止、多大な労力と費用が必要となってしまう。このようにPTTでは長期間、連続して重合を行うことが困難である。
【0006】
前記した技術の中には、この環状オリゴマーに由来する問題に関して全く示唆や記載されておらず、この問題を解決する事は到底できない。
昇華する環状オリゴマーの量を抑えて上記のような問題を改善しようとする試みとしては、PTTを重合する際に、重合途中のオリゴマーにリン化合物を添加し、重縮合温度に対して最適重縮合減圧度となるようにして重縮合する方法が開示されている。(例えば参考文献4参照。)しかしながら、該技術を用いても、配管等に付着する環状オリゴマーの量を著しく少なくすることはできず、長期間重合する場合は、環状オリゴマーに起因する上記問題を避けることは困難である。
【0007】
この環状オリゴマーに起因する問題は前記したようにPTT特有のものであるため、従来のPETやPBTなどのポリエステルやナイロンなどの製造技術をそのまま応用しても解決することはできない。
このように従来の技術では、環状オリゴマーに起因する問題を解決することができないためPTTポリマーを、工業的に生産性良く連続して製造することは極めて困難である。
【0008】
【特許文献1】
米国特許第6277947号明細書
【特許文献2】
国際公開第2000/158980号パンフレット
【特許文献3】
国際公開第2000/158981号パンフレット
【特許文献4】
特開2001−240665号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、重縮合反応の際に生じる環状オリゴマーに起因する問題を解決し、工業的に生産性良く連続してポリトリメチレンテレフタレートを製造できる方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意研究した結果、驚くべきことに、重縮合反応を行う際に反応器からTMGを抜き出す配管の途中に環状オリゴマーを捕集する装置を配し、反応器と該装置との間の配管を240〜320℃に加熱することにより、環状オリゴマーに由来する問題を解決でき、PTTを工業的に生産性良く連続して製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
即ち本発明は以下のとおりのものである。
1.トリメチレングリコールを反応器から系外に抜き出しながら重縮合してポリトリメチレンテレフタレートを製造する方法において、反応器からトリメチレングリコールを抜き出す配管の途中に環状オリゴマーを捕集する装置を配し、反応器と該装置との間の配管を240〜320℃に加熱することを特徴とするポリトリメチレンテレフタレートの製造方法。
【0012】
2.該環状オリゴマーを捕集する装置が、湿式スクラバーであることを特徴とする上記1に記載のポリトリメチレンテレフタレートの製造方法。
3.該湿式スクラバーに用いる液体が、トリメチレングリコールであることを特徴とする上記2に記載のポリトリメチレンテレフタレートの製造方法。
4.該湿式スクラバーに用いるトリメチレングリコールの温度が、−20℃〜40℃であることを特徴とする上記2または3に記載のポリトリメチレンテレフタレートの製造方法。
【0013】
5.該湿式スクラバーに用いたトリメチレングリコールの少なくとも一部を重合原料として用いることを特徴とする上記2〜4のいずれかに記載のポリトリメチレンテレフタレートの製造方法。
6.該湿式スクラバーに用いた液体をフィルター及び/又は遠心分離機を用いて固形物を取り除いた後、再度循環させて湿式スクラバーにて使用することを特徴とする上記2〜5のいずれかに記載のポリトリメチレンテレフタレートの製造方法。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明にて製造するPTTとは、50モル%以上がトリメチレンテレフタレート繰返し単位から構成されるPTTである。ここでPTTとは、テレフタル酸を酸成分としトリメチレングリコール(1,3−プロパンジオールともいう、以下「TMG」と略すこともある。)をジオール成分としたポリエステルである。本発明にて製造するPTTには50モル%以下で1種類以上の他の共重合成分を含有することも含む。そのような共重合成分としては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸、3,5−ジカルボン酸ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3,5−ジカルボン酸ベンゼンスルホン酸トリブチルメチルホスホニウム塩、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、アジピン酸、ドデカン二酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等のエステル形成性モノマーが挙げられる。
【0015】
PTTは、テレフタル酸またはDMTのようなテレフタル酸の低級アルコールジエステルと、TMGとを、無触媒あるいは金属カルボン酸塩、チタンアルコキサイド等の触媒存在下で加熱してエステル交換反応または直接エステル化反応させて(3−ヒドロキシプロピル)テレフタレート(以下「BHPT」と略すこともある。)を得た後、該BHPTをチタンアルコキサイド等の触媒存在下、溶融状態にて加熱して副生するTMGを系外に抜き出しながら重縮合反応させることにより得ることができる。本発明では原料より重合を行う方法以外に、中間体であるBHPTや低重合度のポリマーより所望の重合度のポリマーを得る方法も含む。ここでBHPTとは、BHPT以外に、テレフタル酸、テレフタル酸の低級アルコールエステル、TMG及びPTTのオリゴマーが含まれるものも含む。
【0016】
また、製造方式の違いより大きく分けて、原料等を反応装置に全て投入し、これらを同時に反応させてポリマーを得るバッチ重合法(回分法とも呼ぶ)と、原料を反応装置に連続して投入し、連続してポリマーを得る連続重合法がある。本発明は、これらいずれの方法も含むが、生産性を大幅に高めることができる連続重合法がより好ましい。
【0017】
PTTの重縮合反応は、副生するTMGを抜き出すことで進行するが、先に述べたように、PTTポリマーは揮発性の高い環状オリゴマーを多量含んでいるため、TMGと共に環状オリゴマーも抜き出されてしまう。本発明では、この抜き出される環状オリゴマーを重縮合に悪影響を及ぼさないように集めて系外に取り除くことが肝要であり、この具体的な方法が、反応器からTMGを抜き出す配管の途中に、環状オリゴマーを捕集する装置を配置することで該装置より下流に環状オリゴマーが行くのを防ぎ、反応器と該装置との間の配管を240〜320℃に加熱することで、配管に付着させないで該装置に環状オリゴマーを捕集させるようにすることである。
【0018】
環状オリゴマーを捕集する装置が無い場合は、長期間重合を行っていると抜き出された環状オリゴマーが配管や、TMGを抜き出すために用いる真空ポンプや排気ポンプ等に付着し、TMGを抜き出す効率を低下させたり、最悪の場合は完全に配管を閉塞させたり、機器を破損させたりしてしまう。
反応器と該装置との間の配管温度は、環状オリゴマーを捕集する装置を用いたとしても、該装置と反応器の間に環状オリゴマーが付着し、TMGの抜き出し効率が低下したりすることを考慮すると、240℃以上が好ましい。一方、環状オリゴマーの分解物が配管に付着してしまい、TMGの抜き出し効率を低下させたり、配管を閉塞させたりしてしまうことを考慮すると、温度は320℃以下であることが好ましい。反応器と該装置との間の配管の温度は、好ましくは245〜300℃、更に好ましくは250〜280℃、特に好ましくは255〜270℃が良い。
【0019】
環状オリゴマーを捕集する装置としては、室温近くに冷却した配管中に抜き出しガスを通し、これを二系統準備し切り替えて用いるような冷却固化式や、シャワーあるいは液膜状に落下させた液体と抜き出しガスを接触させる湿式スクラバー式、冷却した液体を流した壁面に抜き出しガスを吹き付ける塗れ壁式などがあげられる。なかでも、系を複数準備して切り替える必要無く、連続運転が可能で、効率が高い湿式スクラバー式が最も望ましい。また、スクラバーに用いる液体は、重縮合により抜き出される成分と同じTMGであることが、液体を再利用する際に分離する必要がなくなるために好ましい。
【0020】
また、TMGは揮発性が比較的低いため、減圧度を高め、反応器から副生するTMGを効率良く抜き出すことが容易となる。スクラバーに用いるTMGの温度は−20〜40℃とすることが好ましい。高い減圧度を達成するためにTMGの揮発性を低く抑えるには40℃以下が好ましい。一方、均一に落下するようにTMGの粘性を低くするためや、冷却設備を大きくしないためには−20℃以上が好ましい。TMGの温度は−10〜30℃がより好ましく、0〜20℃が更に好ましい。スクラバーに用いるTMGは一度ガスと接触させた後、循環させて再使用することが望ましいが、再使用する前に、TMG中に含まれる環状オリゴマーや重合中に副生するゲル状物などの固形物を全部又は一部取り除くことが好ましい。固形物を取り除く装置は、効率の良さ、大きさなどよりフィルターや遠心分離器を用いるものがより好ましい。
【0021】
本発明において重縮合反応器の数は1基以上であるが、連続重合法を用いて高い重合度や高い品質のポリマーを得るためには2基以上であることが好ましい。また、重縮合反応器としては、縦型攪拌反応器、1軸又は2軸の攪拌翼を有した横型攪拌反応器、支持体に沿わせてポリマーを落下させながら重合させる反応器、棚段を有する自然流下式の薄膜反応器、傾斜した平面を自然流下する薄膜反応器、二軸押出機型反応器などを用いることができる。もちろんこれらを併用する場合もある。連続重合法を用いて高い重合度のポリマーを得るためには、最終の重合反応器を1軸又は2軸の攪拌翼を有した横型攪拌反応器や支持体に沿わせてポリマーを落下させながら重合させる反応器とすることが好ましい。重縮合反応器では減圧あるいは不活性ガスを流通させながらTMGを抜き出して重縮合を行うが、TMGを効率良く抜き出して重合速度を高める為には減圧とすることが好ましい。
【0022】
本発明では、このような重縮合反応器のうち最終重縮合反応器に前記したような環状オリゴマーを捕集する装置を配し、配管を所定の温度に加熱する必要があるが、好ましくは全ての重縮合反応器を同様にすることが良い。
次に、本発明のPTT製造法の一例として、原料よりエステル交換反応によってBHPTを得た後、重縮合を行ってポリマーを得る方法を例示するが、本発明はこの方法に限定されるものではない。
【0023】
エステル交換法ではテレフタル酸の低級アルコールジエステルの一種であるテレフタル酸ジメチルとTMGとをエステル交換触媒の存在下150〜240℃の温度でエステル交換させてBHPTを得ることができる。
テレフタル酸の低級アルコールジエステルとTMGの仕込み時のモル比は1:1.3〜1:4が好ましく、1:1.5〜1:2.5がより好ましい。反応時間の長さを考慮すると1:1.3よりもTMGが多いことが好ましい。一方、反応に関与しないTMGを揮発させる必要があり、重合時間が長くなってしまうことを考慮すると1:4よりもTMGが少ないことが好ましい。
【0024】
エステル交換法ではエステル交換触媒を用いる必要があり、好ましい例としては例えばチタンテトラブトキシドやチタンテトライソプロポキシドに代表されるチタンアルコキサイド、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、2−エチルヘキサン酸錫、酢酸亜鉛等が挙げられ。なかでもチタンテトラブトキシドや2−エチルヘキサン酸錫が続いて行う重縮合反応触媒としても働くので好ましい。エステル交換触媒量はテレフタル酸ジエステルに対して0.02〜1重量%が好ましく、0.05〜0.5重量%がより好ましく、0.08〜0.2重量%が更に好ましい。
【0025】
上記した方法で得られたBHPTは、減圧下にて所定温度で反応させ、副生するTMGを抜き出しながら重縮合させてポリマーを得る。重縮合を行う温度は230〜280℃とすることが好ましい。反応物の固化や、反応時間の長さを考慮すると230℃以上であることが好ましい。一方、熱分解が激しくなり、優れた色調のポリマーを得ることが困難となりうることを考慮すると280℃以下であることが好ましい。温度は232〜275℃がより好ましく、235〜270℃が更に好ましい。重縮合反応は、減圧下あるいは不活性気体雰囲気下で行うことができるが、TMGの抜き出し効率を高めるためには減圧とすることが好ましい。減圧度は、BHPTや重縮合反応物の昇華状態や反応速度により適宜減圧度を調節するが、最終的には10〜1000Pa程度にすることが好ましい。
【0026】
重縮合反応には、重縮合時間が長くなることもあるので重縮合触媒を用いることが望ましい。重縮合触媒の好ましい例としてはチタンテトラブトキシドやチタンテトライソプロポキシドに代表されるチタンアルコキサイド、二酸化チタンや二酸化チタンと二酸化珪素の複塩、三酸化二アンチモン、酢酸アンチモンなどのアンチモン化合物、ブチル錫酸、2−エチルヘキサン酸錫、ブチル錫トリス(2−エチルヘキソエート)等の錫化合物等が挙げられる。反応速度が速く、色調を良好にできる点で2−エチルヘキサン酸錫、チタンテトラブトキシドが特に好ましい。これらの触媒は1種だけで用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。重縮合触媒量は用いるプレポリマーの重量に対して0.001〜1重量%となるように添加することが好ましく、0.005〜0.5重量%添加することがより好ましく、0.01〜0.2重量%添加することが特に好ましい。BHPTを得る過程で重縮合触媒としても作用する化合物を用いた場合は、該化合物の量を含めて上記した量となるようにすれば良い。
【0027】
本発明では、必要に応じて各種の添加剤、例えば艶消し剤、熱安定剤、難燃剤、帯電防止剤、消泡剤、整色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、増白剤などを共重合または混合する場合もある。これらの添加剤は重合の任意の段階で入れることができる。特に、本発明では熱安定剤を添加することが、得られる成型品の白度を向上させるために好ましい。この場合の安定剤としては、5価および/または3価のリン化合物やヒンダードフェノール系化合物が好ましく、もちろんこれらの安定剤を併用することも好ましい方法の一つである。
【0028】
【実施例】
以下、実施例をもって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
なお、実施例中の主な測定値は以下の方法で測定した。
(1)極限粘度[η]
極限粘度[η]は、オストワルド粘度計を用い、35℃、o−クロロフェノール中での比粘度ηspと濃度C(g/100ミリリットル)の比ηsp/Cを濃度ゼロに外挿し、以下の式に従って求めた。
[η]=lim(ηsp/C)
C→0
【0029】
【実施例1】
原料としてDMTとTMGを用いて、図1の装置により連続重合法により1日に1000kgのPTTポリマーを重合した。エステル交換反応器1及び第一重縮合反応器5はタービン状の攪拌翼を有した縦型攪拌反応器を、第二重縮合反応器(最終重縮合反応器)11には1軸のディスク状攪拌翼を有した横型攪拌反応器を用いた。また、配管7及び配管13は環状オリゴマーが付着しないように255℃に加熱し、環状オリゴマー捕集装置8及び14には、図2に示す湿式スクラバー式のものを用いた。ここでは、重縮合反応器より配管を通して抜き出したTMGや環状オリゴマーなどを含むガスを、TMGシャワー19に接触させてTMGや環状オリゴマーなどを除去した後、真空ポンプで排気している。シャワーに用いたTMGは、循環液タンク20に入った後、フィルター21のいずれか一方を用いて環状オリゴマーを除去した後、循環ポンプ22Aを用いて循環させて、再度シャワーとして用いていた。シャワーに用いるTMGは温調機22Bを用いて15℃になるように調整した。
【0030】
重合は、まず1:1.5のモル比のDMT、TMG及びDMTに対して0.1重量%のチタンテトラブトキシドを220℃としたエステル交換反応器1に連続投入し、常圧にて攪拌翼2で攪拌し、副生するメタノールをベント口3より抜き出しながらエステル交換反応を行った。その後、移送ポンプ4にて250℃とした第一重縮合反応器5に送液し、減圧下1000Pa、にて攪拌翼6で攪拌し、副生するTMG等を配管7より環状オリゴマー捕集装置8を通して、真空ポンプ9を用いて抜き出しながら重縮合を行って低重合度のポリマーを得た。次いで、移送ポンプ10にて255℃とした第二重縮合反応器11に送液し、減圧下100Paにて、同様に攪拌翼12で攪拌し、副生するTMG等を配管13より環状オリゴマー捕集装置14を通して、真空ポンプ15を用いて抜き出しながら重縮合を行って目的とする重合度のポリマーを得た。この際、得られるポリマーに対してリン元素の量が20ppmとなるようにトリメチルフォスフェートを送液ポンプ4と第一重縮合反応器5の間より連続添加した。また触媒はエステル交換反応の時に添加したものをそのまま用いた。
得られたポリマーの極限粘度[η]は0.90dl/gと目的とする高い重合度であった。また、1ヶ月連続運転を行ったが、配管の閉塞や真空ポンプの異常もなく、安定してポリマーを得ることができた。
【0031】
【比較例1】
環状オリゴマー捕集装置を用いないこと以外は、実施例1と同様にして重合を行った。重合開始時は目的とする高い重合度のポリマーが得られていたが、1週間後より真空ポンプの入口付近の配管内面に環状オリゴマーが付着したため、重縮合反応器の減圧度が悪化し、目的とする重合度のポリマーを得ることができなくなった。
【0032】
【比較例2】
配管7及び13を200℃とした以外は、実施例1と同様にして重合を行った。重合開始時は目的とする高い重合度のポリマーが得られていたが、3日後より配管7及び13内面に環状オリゴマーが付着したため、重縮合反応器の減圧度が悪化し、目的とする重合度のポリマーを得ることができなくなった。
【0033】
【実施例2】
第一重縮合反応器に取り付けてあるオリゴマー捕集装置より、循環液であるTMGの一部を連続して抜き出して原料として使用した以外は、実施例1と同様にして重合を行った。循環液のTMGは循環ポンプ22Aの出口より、循環量の5%を連続して抜き出し(但し図示せず)、代わりに循環液タンク20に未使用のTMGを同量供給した。得られたポリマーの極限粘度[η]は0.90dl/gと目的とする高い重合度であった。また、1ヶ月連続運転を行ったが、配管の閉塞や真空ポンプの異常もなく、安定してポリマーを得ることができた。
【0034】
【実施例3】
原料としてDMTとTMGを用いて、図3の装置によりバッチ重合法によりPTTポリマーを重合した。エステル交換反応器23にはタービン状の攪拌翼24を有した縦型攪拌反応器を、重縮合反応器26には螺旋型攪拌翼を有した縦型攪拌反応器用いた。また、配管28は環状オリゴマーが付着しないように255℃に加熱し、環状オリゴマー捕集装置29には実施例1同様に図2に示すものを用いた。
重合は、まずエステル交換反応器23にDMT650kg、TMG560kg、酢酸カルシウムと酢酸コバルト四水和塩とを9:1の重量比で混合した混合物をDMTに対して0.1重量%を仕込み、常圧下、240℃にて3時間エステル交換反応を行いBHPTを得た。次に得られたBHPTにチタンテトラブトキシドをDMTに対して0.1重量%、次いでトリメチルフォスフェートを得られるポリマーに対するリン元素の重量割合として100ppm添加した後、重縮合反応器に移送し、260℃にて減圧下で重縮合反応を3時間行い固有粘度が0.75のポリマーを得た。減圧度は時間とともに下げていき、最終的には0.8torrとした。このような重合を1日6バッチ、3ヶ月連続しておこなったが、配管の閉塞や真空ポンプの異常もなく、安定してポリマーを得ることができた。
【0035】
【比較例3】
環状オリゴマー捕集装置を用いないこと以外は、実施例3と同様にして重合を行った。重合開始時は目的とする高い重合度のポリマーが得られていたが、1ヶ月後より真空ポンプの入口付近の配管内面に環状オリゴマーが付着したため、重縮合反応器の減圧度を0.8torrとすることができなくなり、目的とする重合度のポリマーを得ることができなくなった。
【0036】
【発明の効果】
本発明の製造法は、重縮合反応の際に生じる環状オリゴマーに起因する問題を解決し、工業的に生産性良く連続してポリトリメチレンテレフタレートを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を連続重合法にて実施する重合装置の概略を示す模式図である。
【図2】スクラバー式のオリゴマー捕集装置の概略を示す模式図である。
【図3】本発明をバッチ重合法にて実施する重合装置の概略を示す模式図である。
【符号の説明】
1.エステル交換反応器
2.攪拌翼
3.ベント口
4.移送ポンプ
5.第一重縮合反応器
6.攪拌翼
7.配管
8.オリゴマー捕集装置
9.真空ポンプ
10.移送ポンプ
11.第二重縮合反応器(最終重合反応器)
12.攪拌翼
13.配管
14.オリゴマー捕集装置
15.真空ポンプ
16.排出ポンプ
17.配管
18.オリゴマー捕集装置
19.TMGシャワー
20.循環液タンク
21.フィルター
22A.循環ポンプ
22B.温調機
23.エステル交換反応器
24.攪拌翼
25.ベント口
26.重縮合反応器
27.攪拌翼
28.配管
29.オリゴマー捕集装置
30.真空ポンプ
Claims (6)
- トリメチレングリコールを反応器から系外に抜き出しながら重縮合してポリトリメチレンテレフタレートを製造する方法において、反応器からトリメチレングリコールを抜き出す配管の途中に環状オリゴマーを捕集する装置を配し、反応器と該装置との間の配管を240〜320℃に加熱することを特徴とするポリトリメチレンテレフタレートの製造方法。
- 該環状オリゴマーを捕集する装置が、湿式スクラバーであることを特徴とする請求項1に記載のポリトリメチレンテレフタレートの製造方法。
- 該湿式スクラバーに用いる液体が、トリメチレングリコールであることを特徴とする請求項2に記載のポリトリメチレンテレフタレートの製造方法。
- 該湿式スクラバーに用いるトリメチレングリコールの温度が、−20℃〜40℃であることを特徴とする請求項2または3に記載のポリトリメチレンテレフタレートの製造方法。
- 該湿式スクラバーに用いたトリメチレングリコールの少なくとも一部を重合原料として用いることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のポリトリメチレンテレフタレートの製造方法。
- 該湿式スクラバーに用いた液体をフィルター及び/又は遠心分離機を用いて固形物を取り除いた後、再度循環させて湿式スクラバーにて使用することを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載のポリトリメチレンテレフタレートの製造方法。
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