本発明は、フィルタの特性周波数を調整する特性調整装置、及びその特性調整方法に関する。
フィルタは、MOSFET−CフィルタやGm−Cフィルタで構成されることが多い。これは、MOSFET−CフィルタやGm−Cフィルタが演算増幅器を用いないフィルタであるため、高速化が可能であるという利点があるからである。
しかし、前述したようなアナログフィルタでは、該フィルタを構成する素子値のばらつきや、温度変動に起因して、フィルタ特性の劣化を起こす問題が存在する。例えば、低域通過型のフィルタの場合、該フィルタの特性周波数であるカットオフ周波数がその設計値と実際の値との間に誤差を生ずる。この誤差を解消するため、従来では、フィルタを有する装置内に、フィルタとは別にVoltage Controlled Oscillator(以下、「VCO」と称す。)を含むPLL回路を設け、該PLL回路を用いてマスタ/スレーブ方式と呼ばれる方式で前記フィルタ特性を調整したり(例えば非特許文献1参照)、あるいは、実動作で使用するフィルタそのものを用いて該フィルタの特性を調整したりする手法が用いられてきた(例えば特許文献1参照)。
以下に、従来のフィルタの特性調整方法について詳述する。
従来のマスタ/スレーブ方式のフィルタ特性調整装置300は、図15に示すように、フィルタ10をスレーブ側とし、PLL回路60に含まれるVCO61をマスタ側とする。マスタ側であるPLL回路60は、基準クロックs62に基づいて発振するVCO61と、該VCO61から出力される発振信号s64の周波数を測定する発振周波数測定部62と、該発振周波数測定部62からの出力信号に基づいてフィルタ10を制御する制御信号s61を生成する制御部63とを備える。但し、VCO61の発振周波数とフィルタ10の特性周波数とは比例関係にあるものとする。このような構成を有するフィルタ特性調整装置300は、マスタ側であるPLL回路60内において、VCO61の発振波形s64を発振周波数測定部62に入力し、そこで測定された周波数の情報を元に、制御部63でフィルタ10の特性周波数を制御する制御信号s61を生成し、VCO61及びフィルタ10のGm値を制御することで、フィルタ10の周波数特性を自動的に調整することを実現している(例えば、非特許文献1参照)。
また従来の、通常動作で使用するフィルタそのものを用いたフィルタ特性調整装置400は、図16に示すように、フィルタ10のチューニング動作時に使用するステップ信号s74を生成するステップ信号生成部77と、前記フィルタ10に入力する信号を選択信号s72に基づいて選択する信号選択部71と、フィルタ10から出力されるフィルタ出力信号s76をカウントすることでその周波数を測定する応答波形周期測定部74と、該応答波形周期測定部74から出力される測定信号s78が基準の周波数の範囲内に収まるように制御する特性周波数制御信号s71を生成する制御部78とを備える。このフィルタ10は、通常動作とチューニング動作の両方に使用されるため、フィルタ特性調整装置400は、フィルタ10の通常動作時には、入力信号として通常信号s73を信号選択部71にて選択して、フィルタ10にこれを入力し、フィルタ10は、該フィルタ入力信号s75に対する応答波形であるフィルタ出力信号s76を出力する。一方、フィルタ10のチューニング動作時には、フィルタ10に対してステップ信号s74を直接入力し、該ステップ信号s74に対するフィルタ10の応答波形の周期を応答波形周期測定部74で測定し、制御部78によりフィルタ10の特性周波数を所望の周波数に自動的に調整することを実現している(例えば、特許文献1参照)。
ケー.タン アンドピー.アール.グレイ(K.Tan and P.R.Gray):「フルリー インテグレイテッド アナログ フィルターズ ユージング ビポラー−ジェイエフイーティー テクノロジィ(Fully Integrated Analog Filters Using Bipolar−JFET Technology)」,アイイーイーイー ジェイエスエスシー(IEEE JSSC),1978年12月 特開2000−59162号公報(第4−7頁、第1図)
しかしながら、前述したマスタ/スレーブ方式の場合、通常使用するVCO61の次数は2次で、一方の制御対象であるフィルタ10の次数はそれ以上であることが多い。図17は、互いに次数が異なる低域通過型フィルタ及びVCOの周波数特性を示す図である。図17に示すように、VCOも低域通過型フィルタとしての特性を持つ。次数の低いVCO61は次数の高い低域通過型フィルタに比べてカットオフ周波数付近でゲインの立ち下がりが鈍く、また次数の低いフィルタの位相特性は次数の高いフィルタに比べてゆっくりと変化する。
従って、例えば、マスタ/スレーブ方式の特性調整装置300でフィルタ10のチューニングを行った後に、フィルタの特性周波数を制御する制御信号s61が多少なりとも最適点から外れて、VCO61で位相誤差ΔP1が生じた場合、図18に示すように、フィルタ10では、前記位相誤差ΔP1よりも大きな位相誤差ΔP2が生じ、この結果フィルタの特性周波数がずれてしまうという問題がある。
そのため、マスタ/スレーブ方式においては、フィルタ10とVCO61との間の相対ばらつきに起因する、最適なチューニング状態からのフィルタ特性のズレを抑えるために、別途、前記誤差を修正するための回路が必要となり、これにより、回路規模が大きくなっているという問題もある。
また、マスタ/スレーブ方式では、フィルタ10の特性周波数とVCO61の発振周波数の設計上設定された相関と、実際の相関が異なるという問題もある。
一方、前述した従来のフィルタ10を直接チューニングに用いる手法では、応答波形周期測定部74において、フィルタ10の周波数測定時に、前記フィルタ10の特性周波数よりも高いサンプリング周波数が必要である。
また、応答波形周期測定部74におけるフィルタ10の周波数測定は、ステップ信号s74に対するフィルタ10からの応答波形と基準レベルとを図示しないコンパレータで比較し、該コンパレータの出力波形の立ち上がり遷移もしくは立ち下がり遷移の周期を測定するのであるが、特性調整対象のフィルタ10の次数によっては通過帯域のゲイン特性が大きく変動するために、コンパレータにて正しく比較できず、これにより調整誤差が生じる問題もある。そして、このような調整誤差を防ぐためには、別途、誤差を調整するための調整手段が必要となり、回路規模が大きくなってしまう。
さらに、従来の方法では、フィルタ10の特性周波数が所望の周波数の誤差範囲となるまで、制御信号の値を変更しながら何度もステップ信号s74を生成してフィルタ10に入力し、応答波形周期測定部74において該フィルタ10からのフィルタ出力信号s76を測定して誤差の判定を行うことを繰り返すものであるため、フィルタの調整に時間がかかるという問題もある。
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、フィルタの特性調整装置の回路規模の増大、すなわち回路面積の増大を防止し、且つより高速にフィルタの特性周波数を所望の周波数に調整できる、フィルタの特性調整装置、及びその特性調整方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するため、本発明の請求項1に記載のフィルタの特性調整装置は、基準信号を入力とし、フィルタの周波数特性の調整時に前記フィルタに供給するテスト信号を生成するテスト信号生成部と、前記テスト信号生成部で生成された前記テスト信号を、前記フィルタの位相特性と該テスト信号の周波数とに基づいて、前記フィルタに前記テスト信号を入力した際に得られる理想のフィルタ出力信号の位相と所定の位相差が生じるように位相シフトする位相シフト部と、前記フィルタに前記テスト信号を入力した際に得られるフィルタ出力信号と、前記位相シフト部で位相をシフトさせた前記テスト信号とを用いて、前記フィルタの特性周波数を制御する制御信号を生成する制御信号生成部と、を備えるものである。
これにより、前記フィルタの特性調整時に、テスト信号生成部にて生成されたテスト信号の位相をシフトさせた信号の立ち上がりあるいは立ち下がりのタイミングで、フィルタ出力信号を検知し、その結果に基づいてフィルタの周波数特性を制御する制御信号を生成することが可能となるため、フィルタの特性調整を短時間で行なうことができ、且つ当該フィルタの特性調整装置の構成をシンプルなものとし、且つその回路面積も小さくすることができる。
また、本発明の請求項2に記載のフィルタの特性調整装置は、請求項1に記載のフィルタの特性調整装置において、前記位相シフト部は、前記テスト信号の位相と、前記理想のフィルタ出力信号との位相差が180°となるように、前記テスト信号の位相をシフトするものである。
これにより、フィルタの特性周波数を制御する制御信号を二分岐探索により検出することが可能となり、前記フィルタの特性調整処理を短時間で行なうことができる。
また、本発明の請求項3に記載のフィルタの特性調整装置は、請求項1に記載のフィルタの特性調整装置において、前記制御信号生成部は、前記フィルタ出力信号を基準信号と比較する第1のコンパレータと、前記位相シフト部からの出力信号を前記基準信号と比較する第2のコンパレータと、前記第1,第2のコンパレータそれぞれから出力される2値信号の位相比較を行う位相比較器と、前記位相比較器からの出力と前記第2のコンパレータからの出力とを用いて、前記制御信号を生成するロジック部と、を備えるものである。
これにより、テスト信号から位相をシフトされた信号と、該フィルタからのフィルタ出力信号との位相比較結果に基づいて、フィルタの周波数特性を制御する制御信号を生成することが可能となり、フィルタの特性調整装置の構成をシンプルで、且つ小さくすることができる。
また、本発明の請求項4に記載のフィルタの特性調整装置は、請求項3に記載のフィルタの特性調整装置において、前記ロジック部は、前記位相比較器からの出力と、前記第2のコンパレータの出力とを入力とし、該第2のコンパレータの出力の立ち上がりあるいは立ち下りのタイミングで、前記位相比較器からの出力を二分岐探索する二分岐探索処理部と、該二分岐探索処理部において得た値に基づいて前記制御信号を生成する制御信号決定部とからなるものである。
これにより、前記制御信号を二分岐探索により得ることができ、フィルタの特性調整を短時間で行うことができる。
また、本発明の請求項5に記載のフィルタの特性調整装置は、請求項1に記載のフィルタの特性調整装置において、前記テスト信号はパルス信号であるものである。
これにより、フィルタの位相差を連続して計測できるため、該特性調整処理を短時間で行うことができる。
また、本発明の請求項6に記載のフィルタの特性調整装置は、請求項5に記載のフィルタの特性調整装置において、前記テスト信号は、前記フィルタの特性周波数と同一の周波数であるものである。
これにより、フィルタの位相シフト量の設定がしやすい効果がある。
また、本発明の請求項7に記載のフィルタの特性調整装置は、請求項1に記載のフィルタの特性調整装置において、前記フィルタの前段に、前記テスト信号と、通常動作時に処理対象となる入力信号を入力とし、前記フィルタの特性調整時には前記テスト信号を選択し、前記通常動作時には前記入力信号を選択する信号選択部を備えるものである。
これにより、前記フィルタの通常動作時とチューニング動作時に同じフィルタを用いることができるとともに、別途、VCOやPLLといった調整手段を必要とせず、当該装置の面積を小さくすることができる。
また、本発明の請求項8に記載のフィルタの特性調整装置は、基準信号を入力とし、低域通過型の4次バタワースフィルタの周波数特性の調整時に前記フィルタに供給する、該フィルタの周波数特性と同じ周波数のテスト信号を生成するテスト信号生成部と、前記低域通過型の4次バタワースフィルタに前記テスト信号を入力した際に得られるフィルタ出力信号と前記テスト信号とを用いて、前記フィルタの特性周波数を制御する制御信号を生成する制御信号生成部と、を備えるものである。
これにより、位相シフト部を設ける必要がなくなり、特性調整装置の回路面積をさらに小さくすることができる。
本発明の請求項9に記載のフィルタの特性調整方法は、フィルタの特性周波数を制御するフィルタの特性調整方法において、前記フィルタの特性調整時に該フィルタに供給するテスト信号を生成するテスト信号生成ステップと、前記テスト信号生成ステップで生成された前記テスト信号の位相を、前記フィルタの位相特性と該テスト信号の周波数とに基づいて、前記フィルタに前記信号を入力した際に得られる理想のフィルタ出力信号と所定の位相差が生じるようにシフトする位相シフトステップと、前記フィルタに前記テスト信号を入力した際に得られるフィルタ出力信号と、前記位相シフトステップで位相をシフトさせた前記テスト信号とを用いて、前記フィルタの特性周波数を制御する制御信号を生成する制御信号作成ステップと、を含むものである。
これにより、前記フィルタの特性調整時にフィルタの特性を直接的に測定し、テスト信号から位相をシフトされた信号の立ち上がりあるいは立ち下がりのタイミングで、フィルタ出力信号を検知しその結果を元にフィルタの周波数特性を制御する制御信号を生成することが可能となるため、フィルタの特性調整を短時間で行なうことができる。
また、本発明の請求項10に記載のフィルタの特性調整方法は、請求項9に記載のフィルタの特性調整方法において、前記制御信号作成ステップは、前記フィルタに前記テスト信号を入力した際に得られるフィルタ出力信号の位相と、前記位相シフトステップで位相をシフトさせた前記テスト信号の位相とを比較する位相比較ステップと、前記位相比較ステップの比較結果を二分岐探索処理して前記制御信号を生成する二分岐探索ステップと、を含むものである。
これにより、前記フィルタの特性調整時にフィルタの特性を直接的に測定し、テスト信号から位相をシフトされた信号の立ち上がりあるいは立ち下がりのタイミングで、フィルタ出力信号を検知しその結果を元にフィルタの周波数特性を制御する制御信号を生成することが可能となるため、フィルタの特性調整を短時間で行なうことができる。
本発明のフィルタの特性調整装置によれば、前記フィルタの特性調整時に前記テスト信号の位相を所定量シフトする位相シフト部を備え、前記フィルタからの出力と前記位相シフト部の出力との位相差に基づいて、制御信号を生成するようにしたので、フィルタの特性調整処理を高速化することができる。
また、本発明のフィルタの特性調整装置によれば、特にフィルタの特性周波数を最適な状態とするために、フィルタの通常動作時とチューニング動作時に、同じフィルタを用いるようにしたので、別途、PLL回路、あるいはVCOなどを必要としないために、その回路面積の増大を防ぐことが可能となる。
また、本発明のフィルタの特性調整装置によれば、前記フィルタの制御信号生成部は、位相シフト部において、テスト信号と、特性調整後の最適な状態にあるフィルタにテスト信号を入力した際に得られる理想のフィルタ出力信号との位相差が180°となるように、前記テスト信号の位相をシフトさせ、該位相をシフトされたテスト信号とフィルタ出力信号との位相差を二分岐探索を用いたデジタル処理によって生成するようにしたので、短時間で制御信号を生成できると共に、当該フィルタの特性調整装置の構成をシンプルなものとし、且つ小面積で実現することが可能となる。
また、本発明のフィルタの特性調整装置によれば、フィルタが特に4次バタワース低域通過型フィルタ、あるいは4次バタワース高域通過型フィルタであれば、該フィルタに入力される信号の周波数がその特性周波数と同じ周波数のとき、位相特性は理論上180°回転するので、位相シフト部を設ける必要がなくなる。このため、特性調整装置の構成をよりシンプルで、且つ小面積にすることができる。
図1は、本発明の実施の形態1におけるフィルタの特性調整装置の構成を示す図である。
図2は、本発明の実施の形態1におけるフィルタの特性調整装置の、特性調整動作時に必要な構成を示す図である。
図3は、本発明の実施の形態1のフィルタ特性制御部内の制御信号生成部の構成を詳細に示す図である。
図4は、本発明の実施の形態1におけるフィルタの特性調整装置の、通常動作時に必要な構成を示す図である。
図5は、本発明の実施の形態1におけるフィルタの特性調整装置の、特性調整動作時の一連の流れを示す図である。
図6は、本発明の実施の形態1における、フィルタ特性制御部内の各部からの信号波形図である。
図7は、二次バタワース低域通過型フィルタの周波数特性を示す図である。
図8は、本発明の実施の形態1における、フィルタ特性制御部内のロジック部の一構成例を示す図である。
図9は、本発明の実施の形態1のロジック部内での二分岐探索処理を説明する図である。
図10は、本発明の実施の形態1におけるロジック部内の制御信号決定部の処理を説明する図である。
図11は、本実施の形態2におけるフィルタの特性調整装置の構成を示す図である。
図12は、Gm・C回路で構成された4次のバタワース低域通過型フィルタを示した図である。
図13は、4次低域通過型バタワースフィルタの周波数特性を示した図である。
図14は、本実施の形態2にかかるフィルタの特性調整装置の、特性調整動作時に必要な構成を示す図である。
図15は、従来における、PLLを用いたマスタ/スレーブ方式によるフィルタの特性調整装置を示す図である。
図16は、従来における、通常動作時に使用するフィルタそのものを用いた特性調整装置の構成を示す図である。
図17は、次数の異なる2つの低域通過型フィルタの周波数特性を示す図である。
図18は、次数の異なる2つの低域通過型フィルタの位相特性を示す図である。
符号の説明
10 フィルタ
20,61 信号選択部
30,50 フィルタ特性調整部
31,51 テスト信号生成部
32 位相シフト部
33,53 制御信号生成部
34 第1のコンパレータ
35 第2のコンパレータ
36 位相比較器
37 ロジック部
38 二分岐探索処理部
39 制御信号決定部
40 4次バタワース低域通過型フィルタ
41〜44 Gm回路
45〜48 C回路
60 PLL回路
61 VCO
62 発振周波数測定部
63 制御部
74 応答波形周期測定部
77 ステップ信号生成部
78 制御部
(実施の形態1)
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態1について説明する。
図1は、本実施の形態1にかかるフィルタの特性調整装置の構成を示す図である。図1において、フィルタの特性調整装置100は、フィルタ10と、選択信号s12に基づいて前記フィルタ10に入力するフィルタ入力信号s15を選択する信号選択部20と、基準信号s17に基づいて前記フィルタ10の特性を調整する制御信号s11を出力するフィルタ特性制御部30とを備える。前記信号選択部20には、当該フィルタの特性調整装置100が通常動作時(以下、「通常モード時」と称す。)である場合に処理対象となる通常入力信号s13と、前記フィルタ特性制御部30で生成されたテスト信号s14とが入力され、選択信号s12に基づいて、前記通常入力信号s13と、テスト信号s14とのいずれか一方が前記フィルタ入力信号s15として選択されて、フィルタ10に入力される。具体的に述べると、フィルタの特性調整装置100が通常モード時である場合は、前記信号選択部20は、前記通常入力信号s13を選択してフィルタ10に入力し、一方当該フィルタ特性調整装置100が特性調整時(以下、「チューニングモード時」と称す。)である場合は、前記テスト信号s14を選択してフィルタ10に入力する。この選択信号s12は、当該装置100外部で独立に調整されて入力されるものであってもよいし、前記フィルタ特性制御部30から出力されるものであってもよい。
図2は、本実施の形態1の特性調整装置100におけるフィルタ特性制御部30の詳細な構成を示す図である。なお、図2は、チューニングモード時に必要な構成のみを示している。図2において、フィルタ特性制御部30は、基準信号s17からテスト信号s14を生成するテスト信号生成部31と、前記テスト信号s14の位相をフィルタ10の位相特性に応じてシフトさせる位相シフト部32と、該位相シフト部32から出力される位相シフトテスト信号s14’と、前記フィルタ10から出力されるフィルタ出力信号s16とを入力とし、フィルタ10の周波数特性の制御を行なう制御信号s11を生成する制御信号生成部33とからなる。
さらに、図3は、前記フィルタ特性制御部30内の制御信号生成部33の詳細な構成を示す図である。図3において、制御信号生成部33は、前記フィルタ出力信号s16を、前記テスト信号s14の中心値を基準として2値化した第1の2値信号s34を生成する第1のコンパレータ34と、前記位相シフトテスト信号s14’を前記テスト信号s14の中心値を基準として2値化した第2の2値信号s35を生成する第2のコンパレータ35と、前記第1の2値信号s34と第2の2値信号s35とを位相比較し、該位相比較結果s36を出力する位相比較器36と、該比較結果s36と前記第2の2値信号s35とを用いて前記制御信号s11を生成するロジック部37とを備えるものである。
なお、ここでは、前記テスト信号s14の中心値が、前記第1,第2のコンパレータ34,35での比較で用いられるしきい値としての基準信号となっている。また、前記位相シフトテスト信号s14’がすでに2値化信号であるにもかかわらず、第2のコンパレータ35を設けている理由は、前記第1の2値信号s34と第2の2値信号s35とを同じタイミングで後段の位相比較器36に入力させるためである。
次に、動作について説明する。
まず、図4を用いて、フィルタ10の通常動作について説明する。図4は、本実施の形態1のフィルタの通常モード時と等価な構成を示す図である。
前記フィルタ10は、後述するフィルタの特性調整動作によって、該フィルタ10の制御信号s11が生成された後に、通常モードの状態となる。このとき、前述したように、信号選択部20では、前記選択信号s12に基づいて前記通常入力信号s13が選択され、フィルタ10に入力される。
そして、図4に示すように、通常モード時には、その特性周波数が制御され固定されたフィルタ10に通常入力信号s13が入力され、その応答波形がフィルタ出力信号s16として出力される。
次に、図2、図5、図6を参照しながら、フィルタ10の特性調整動作について説明する。図5は、本実施の形態1におけるフィルタの特性調整装置のチューニングモード時のフローチャートであり、図6は、本実施の形態1のフィルタの特性調整装置における制御信号生成部の信号波形図である。
まず、フィルタの特性調整装置100をチューニングモードにする(ステップS1)。具体的には、図1に示す信号選択部20において、選択信号s12によりテスト信号s14が選択されるように設定し、ロジック部37に初期値C0を設定する。なお、ロジック部37の構成及びその具体的な処理については後述する。
そして、前記テスト信号s14を生成する(ステップS2)。前記テスト信号s14は、前記フィルタ特性制御部30内のテスト信号生成部31において、基準信号s17に基づいて生成される。ここでは、前記テスト信号s14が、図6(a)に示されるようなパルス信号で、フィルタ10の特性周波数と同じ周波数の信号であるものとする。なお、この時テスト信号s14は、フィルタ10のダイナミックレンジに収まるようにその振幅を制限される。
そして、前記テスト信号s14はフィルタ10へ出力されるとともに、位相シフト部32へ出力される(ステップS3)。
前記フィルタ10は、テスト信号s14を入力とし、フィルタ出力信号s16を出力する。
一方、位相シフト部32は、テスト信号s14を入力とし、その位相をシフトさせて位相シフトテスト信号s14’を出力する。ここで、前記位相シフト部32における位相シフト量は、次のように設定される。すなわち、周波数特性を調整済みのフィルタ10に前記テスト信号s14を入力した際に、該フィルタ10から出力される理想のフィルタ出力信号s16と、前記位相シフト部32から出力される位相シフトテスト信号s14’との位相差が180°となるように、位相シフト量が設定される。この位相シフト量の設定は、図17に示したように、フィルタ10の位相特性により、入力されるテスト信号の周波数が決定していれば、前記理想のフィルタ出力信号の位相シフト量が予め分かるため、該位相シフト量に基づいて、テスト信号s14をシフトさせる位相量を設定すればよい。
例えば、前記フィルタ10が2次バタワース低域通過型フィルタである場合を例に挙げて説明する。図7は、2次バタワース低域通過型フィルタのゲイン特性、及び周波数特性を示す。
2次バタワース低域通過型フィルタの場合、図7に示されるように、該フィルタに入力される信号の周波数がその特性周波数fcに一致するとすれば、該フィルタから出力される応答波形の位相は入力信号より90°だけシフトする(図6(a),(b)参照)。従って、フィルタ10に対して、特性周波数fcと同じ周波数のテスト信号s14が入力されると、該フィルタ10から出力されるフィルタ出力信号s16は、フィルタ10の特性が最適であった場合、テスト信号s14より位相が90°シフトされて出力される、理想のフィルタ出力となるはずであるから、位相シフト部32でシフトさせる位相シフト量として−90°を設定する。
そして、前記フィルタ10から出力されたフィルタ出力信号s16と、前記位相シフト部32にて位相シフトされた位相シフトテスト信号s14’は、制御信号生成部33に入力され、該フィルタ出力信号s16と位相シフトテスト信号s14’とを位相比較し(ステップS5)、該位相比較された結果に基づいて、該フィルタ10の周波数特性を制御する制御信号s11を生成する(ステップS6)。
以下、制御信号生成部33について詳細に述べる。
まず、前記フィルタ出力信号s16は、第1のコンパレータ34に、また前記位相シフトテスト信号s14’は第2のコンパレータ35に入力される。前記第1,第2のコンパレータ34、35は、テスト信号s14の中心値を基準に、前記フィルタ出力信号s16及び位相シフトテスト信号s14’を2値化し、それぞれ第1,第2の2値信号s34,s35として出力する(図6(b),(c)参照)。ここでは、前記各コンパレータ34、35は、各信号のレベルがテスト信号の中心値よりも低い場合は“L”レベル、高い場合は“H”レベルを出力するものとする。
そして、位相比較器36において、前記第1,第2の2値信号s34,s35の位相を比較し、位相比較結果s36を出力する。前記位相比較器36は、例えばフリップフロップによって実現され、前記第2の2値信号s35をクロックとして、該第2の2値信号s35の立ち上がりエッジあるいは立ち下りエッジ(図6では立ち上がりエッジ)で、前記第1の2値信号s34をラッチし、その際、第1の2値信号s34のレベルが“H”レベルであれば“H”レベルを、“L”レベルであれば“L”レベルを出力する(図6(e)参照)。
図6の関係では、フィルタ10が最適な状態にある場合、第1の2値信号s34(フィルタ出力信号のデジタル値)と、第2の2値信号s35(位相シフトテスト信号のデジタル値)とは、図6(b),(d)に示す関係と同様の関係になるはずであるため、該理想とする第1の2値信号(図6(d))に比べて第1の2値信号s34の位相が進んでいる場合は“H”レベル、位相が遅れている場合は“L”レベルとする信号s36を出力する。
そして、ロジック部37において、前記位相比較結果s36の状態をもとに、ステップS1において初期値C0に設定された制御信号s11を微調整する。
ここでは、位相比較結果s36が“H”レベルの場合に制御信号s11の値を下げる方向へ、位相比較結果s36が“L”レベルの場合に制御信号s11の値を上げる方向に微調整する。微調整する期間は、前記第2の2値信号s35がn回(nは1以上の整数)カウントされる所定の期間とする。つまり、前記カウント数nが多ければ、フィルタの調整に長時間がかかるが、フィルタの特性調整の精度は向上し、一方カウント数nが少なければ、フィルタの調整は短時間ですむが、フィルタの特性調整の精度は下がる。
ロジック部37は、例えば、図8に示すような構成で実現できる。図8は、ロジック部の詳細な構成の一例を示す図であり、図9は、ロジック部の二分岐探索処理部の処理を説明する図であり、図10は、ロジック部の制御信号決定部の処理を説明する図である。
図8に示すように、ロジック部37は、位相比較結果s36を、第2の2値信号s35をクロックとして二分岐探索処理する二分岐探索処理部38と、該二分岐探索処理部38で生成されたnビットの制御レジスタ値Cnに応じて、制御信号s11の値を決定する制御信号決定部39とからなる。
二分岐探索処理部38には、前述したように図5のステップS1において初期値C0が設定される。初期値C0は、最上位の1ビットのみ“1”で、他の下位ビットは全て“0”となっている(図9のStep0)。
この後、前記第2の2値信号s35の立ち上がりエッジもしくは立ち下がりのエッジのタイミング毎(図6では立ち上がりエッジタイミング)に、位相比較結果s36の情報をモニタしていく。具体的には、前記第2の2値信号s35の立ち上がりエッジのタイミング時に、制御レジスタ値C0の最上位ビットを、位相比較結果s36の状態が“H”レベルなら“1”を、“L”レベルなら“0”に設定し、最上位ビットの1つ下位のビットを“1”とした制御レジスタC1を生成する(図9のStep1)。
そして、第2の2値信号s35の次の立ち上がりエッジのタイミング時に、制御レジスタ値C1の最上位ビットの1つ下位のビットを、位相比較結果s36が“H”レベルなら“1”に、“L”レベルなら“0”に設定し、最上位ビットの2つ下位のビットを“1”とした制御レジスタC2を生成する(図9のStep2)。
以下、同様に、nビットの制御レジスタ値Cnの第(n−i+1)ビット(但し、iはStepの回数を示し、1≦i≦nを満たす整数である。)の値の二分岐探索動作、すなわち、制御レジスタ値Cnの第(n−i+1)ビットを位相比較結果s36の状態に応じて“1”あるいは“0”に決定する動作、をn回目まで順次続けることにより、制御レジスタ値Cnを得る(図9のStep(n))。なお、図9中の“*”は、そのビットが“1”あるいは“0”のいずれかの値であることを示す。
以上の動作を行うことにより、例えば、図6の関係では、制御レジスタ値C7=“1111101”が得られる。
そして、前述のようにして得られた制御レジスタ値Cnは、制御信号決定部39に入力される。そして該制御信号決定部39において、前記制御レジスタ値Cnに対応する制御信号s11の値が決定される。制御信号s11と制御レジスタ値Cnとは、図10に示されるように、1対1の関係となっており、制御レジスタ値Cnが“000…00”で最小の時は制御信号s11の値も最小となり、制御レジスタ信号Cnが“111…11”で最大の時は制御信号s11の値も最大となる。なお、通常、図10に示されるように、制御レジスタ値の初期値C0は、制御信号s11の値のセンター値に対応する。また、制御レジスタ値Cnのビット数によって、前記二分岐探索処理部38でのStep数が変化するため、フィルタ10の周波数特性の調整時間は制約されることがわかる。
このようにして決定された制御信号s11により、フィルタ10の特性周波数を制御し、フィルタ10の特性周波数は決定される。
チューニング動作が終了すると、フィルタの特性調整装置100は通常モード状態となり、信号選択部20にて選択信号s12に基づいて通常入力信号s13が選択され、フィルタ10前後の信号の流れは、前述した図4に示す通りとなる。
なおフィルタ10が差動構成の場合であっても、前述と同様のチューニング動作が適用できる。この場合、前記第1,第2のコンパレータ34,35には差動信号が入力される構成となり、差動信号の一方を基準として同様に処理することができる。
以上のように、本実施の形態1によれば、通常動作時に使用するフィルタ10に、周波数特性を調整済みとなった状態での該フィルタの特性周波数と等しい周波数のテスト信号s14を直接入力し、該フィルタ10の特性周波数が設計値と等しくなるように調整するようにしたので、別途VCOやPLL回路を設ける必要がなくなり、フィルタの特性調整装置100の回路規模をかなり小さくすることができる。
また、本実施の形態1によれば、フィルタ10の特性を調整するフィルタ特性制御部30に、テスト信号s14の位相を所定量シフトさせる位相シフト部32を設け、該位相シフト部32で位相をシフトさせた位相シフトテスト信号s14’と、前記テスト信号s14をフィルタ10に入力して得たフィルタ出力信号s16とから、該フィルタ10の周波数特性を制御する制御信号s11を生成するようにしたので、フィルタ10の周波数を測定する際に、別途該フィルタ10の特性周波数より高いサンプリング周波数を発生させてクロックとして使用する必要がなく、フィルタの特性調整装置100の回路規模をさらに小さくできる効果がある。
また、本実施の形態1によれば、前記位相シフト部32において、フィルタ10の周波数特性が最適な状態にあるとした際に、前記テスト信号s14を位相シフトさせた位相シフトテスト信号s14’と、前記フィルタ出力信号s16との位相差が180°となるように、前記テスト信号s14を所定量シフトさせ、該位相シフトテスト信号s14’と前記フィルタ出力信号s16との位相差からフィルタ10の周波数特性を制御する制御信号s11を得るようにしたので、前記制御信号s11を二分岐探索処理によって得ることが可能となるため、フィルタ10の特性周波数を短時間で調整することができる。また、このような構成にすることで、位相シフト部32に設定する位相シフト量を変更すれば、すべてのフィルタに対応できる。
なお、本実施の形態1では、テスト信号s14の周波数をフィルタの特性周波数に一致させる場合について説明したが、異なる周波数であってもよい。この場合、フィルタ10の位相特性から、テスト信号s14の周波数に対応する位相量を確認しておき、位相シフト部32が該位相量と180°位相差が生じるような位相シフトテスト信号s14’を生成するようにすればよい。
また、本実施の形態1では、第1,第2のコンパレータ34,35は、テスト信号s14の中心値を基準信号として2値化を行っているが、実際に前記コンパレータで用いる基準信号はこの値に限るものではない。また、前記コンパレータは、例えばヒステリシス型のように2つの基準信号を元に、入力された信号を2値化するものであってもよい。
(実施の形態2)
本実施の形態2では、フィルタが4次バタワース低域通過型フィルタ(以下、「4次バタワースLPF」と称す)、あるいは4次バタワース高域通過型フィルタの場合について説明する。
図11は、本実施の形態2にかかるフィルタの特性調整装置の構成を示す図であり、図12は、本実施の形態2により周波数特性が調整される4次バタワース低域通過型フィルタの構成を示す図であり、図13は、図12に示す4次バタワース低域通過型フィルタの周波数特性を示す図であり、図14は、本実施の形態2のフィルタの特性調整装置におけるフィルタ特性制御部50の構成を詳細に示す図である。なお、図14は、チューニングモード時に必要な構成のみを示している。
図11に示すように、本実施の形態2のフィルタの特性調整装置の構成は、前記実施の形態1と同様、フィルタ40と、選択信号s12に基づいて前記フィルタ40に入力するフィルタ入力信号s15を選択する信号選択部20と、基準信号s17に基づいて前記フィルタ40の特性を調整する制御信号s11を出力するフィルタ特性制御部50とを備える。そして、前記信号選択部20には、前記実施の形態1と同様、当該フィルタの特性調整装置200が通常モード時に処理対象となる通常入力信号s13と、前記フィルタ特性制御部50で生成されたテスト信号s14とが入力され、選択信号s12に応じて、前記通常入力信号s13と、テスト信号s14のいずれかが前記フィルタ入力信号s15として選択されて、フィルタ40に入力される。前記選択信号s12は、当該装置200外部で独立に調製されて入力されるものでもよく、前記フィルタ特性制御部50から出力されるものでもよい。
本実施の形態2が特性調整の対象とするフィルタ40である4次バタワースLPFは、図12に示すように、Gm回路41〜44およびC回路45〜48からなるGm−Cフィルタで構成されているとする。このような4次バタワースLPF40は、Gm回路41〜44のGm値が制御信号s11によって調整されることで、その特性周波数であるカットオフ周波数が制御される。
このように、特性調整の対象となるフィルタ40が、前述したような4次バタワースLPFであると、図14に示すように、フィルタの特性調整装置200のフィルタ特性制御部50内に、位相シフト部が不要となる。この理由は、図13に示すように、4次のバタワースLPF40の位相特性が、理論上、カットオフ周波数fcにおいて位相が180°シフトするものとなるからである。よって、特に特性調整対象のフィルタが4次バタワース低域通過型LPF40の場合は、図13に示すように、位相特性が特性周波数fcの位置で180°シフトされるため、を設ける必要がなく、テスト信号s14の位相を、理想のフィルタ出力信号s16との位相差が180°になるように、シフトさせる必要が無く、位相シフト部32が不要となる。もちろん、4次バタワース高域通過型フィルタの場合も同様である。
次に、動作について説明する。なお、本実施の形態2におけるフィルタ40の通常動作は前記実施の形態1と同様であるため、ここでは、フィルタ40のチューニング動作を図14を用いて説明する。
本実施の形態2の特性調整装置200におけるフィルタ特性制御部50において、テスト信号生成部51で生成されたテスト信号s14は、4次バタワースLPF40を介して制御信号生成部53に入力されるとともに、位相シフト部を介することなく直接、制御信号生成部53に入力される。そして、制御信号生成部53において、直接入力された該テスト信号s14と、4次バタワースLPF40のフィルタ出力信号s16との位相比較が行われた後、前記実施の形態1と同様、該位相比較結果を二分岐探索処理して制御レジスタ値Cnを得、該制御レジスタ値Cnに相当する制御信号s11を検出する。そして、該制御信号s11によって図12のGm回路41〜44のGm値を制御し、この結果、フィルタ40のカットオフ周波数が所望の周波数に調整される。
以上のことから、本実施の形態2によれば、フィルタの特性調整装置200は、図14に示すように、テスト信号s14を直接制御信号生成回路53に入力すればよいため、テスト信号s14の位相を所定量シフトさせる位相シフト部が必要なくなり、装置規模をさらに小さくすることができる。
本発明にかかるフィルタの特性調整装置は、フィルタの周波数特性を調整するために、フィルタに入力するテスト信号を生成するテスト信号生成部と、テスト信号の位相をシフトする位相シフト部と、フィルタの出力信号とテスト信号の位相差を比較しデジタル処理にて制御信号を生成する制御信号生成部とを有し、フィルタの特性周波数を高精度に調整するとともに、その回路面積の増加を防ぐうえで有用である。
本発明は、フィルタの特性周波数を調整する特性調整装置、及びその特性調整方法に関する。
フィルタは、MOSFET-CフィルタやGm-Cフィルタで構成されることが多い。これは、MOSFET-CフィルタやGm-Cフィルタが演算増幅器を用いないフィルタであるため、高速化が可能であるという利点があるからである。
しかし、前述したようなアナログフィルタでは、該フィルタを構成する素子値のばらつきや、温度変動に起因して、フィルタ特性の劣化を起こす問題が存在する。例えば、低域通過型のフィルタの場合、該フィルタの特性周波数であるカットオフ周波数がその設計値と実際の値との間に誤差を生ずる。この誤差を解消するため、従来では、フィルタを有する装置内に、フィルタとは別にVoltage Controlled Oscillator(以下、「VCO」と称す。)を含むPLL回路を設け、該PLL回路を用いてマスタ/スレーブ方式と呼ばれる方式で前記フィルタ特性を調整したり(例えば非特許文献1参照)、あるいは、実動作で使用するフィルタそのものを用いて該フィルタの特性を調整したりする手法が用いられてきた(例えば特許文献1参照)。
以下に、従来のフィルタの特性調整方法について詳述する。
従来のマスタ/スレーブ方式のフィルタ特性調整装置300は、図15に示すように、フィルタ10をスレーブ側とし、PLL回路60に含まれるVCO61をマスタ側とする。マスタ側であるPLL回路60は、基準クロックs62に基づいて発振するVCO61と、該VCO61から出力される発振信号s64の周波数を測定する発振周波数測定部62と、該発振周波数測定部62からの出力信号に基づいてフィルタ10を制御する制御信号s61を生成する制御部63とを備える。但し、VCO61の発振周波数とフィルタ10の特性周波数とは比例関係にあるものとする。このような構成を有するフィルタ特性調整装置300は、マスタ側であるPLL回路60内において、VCO61の発振波形s64を発振周波数測定部62に入力し、そこで測定された周波数の情報を元に、制御部63でフィルタ10の特性周波数を制御する制御信号s61を生成し、VCO61及びフィルタ10のGm値を制御することで、フィルタ10の周波数特性を自動的に調整することを実現している(例えば、非特許文献1参照)。
また従来の、通常動作で使用するフィルタそのものを用いたフィルタ特性調整装置400は、図16に示すように、フィルタ10のチューニング動作時に使用するステップ信号s74を生成するステップ信号生成部77と、前記フィルタ10に入力する信号を選択信号s72に基づいて選択する信号選択部71と、フィルタ10から出力されるフィルタ出力信号s76をカウントすることでその周波数を測定する応答波形周期測定部74と、該応答波形周期測定部74から出力される測定信号s78が基準の周波数の範囲内に収まるように制御する特性周波数制御信号s71を生成する制御部78とを備える。このフィルタ10は、通常動作とチューニング動作の両方に使用されるため、フィルタ特性調整装置400は、フィルタ10の通常動作時には、入力信号として通常信号s73を信号選択部71にて選択して、フィルタ10にこれを入力し、フィルタ10は、該フィルタ入力信号s75に対する応答波形であるフィルタ出力信号s76を出力する。一方、フィルタ10のチューニング動作時には、フィルタ10に対してステップ信号s74を直接入力し、該ステップ信号s74に対するフィルタ10の応答波形の周期を応答波形周期測定部74で測定し、制御部78によりフィルタ10の特性周波数を所望の周波数に自動的に調整することを実現している(例えば、特許文献1参照)。
ケー.タン アンドピー.アール.グレイ(K.Tan and P.R.Gray):「フルリー インテグレイテッド アナログ フィルターズ ユージング ビポラー−ジェイエフイーティー テクノロジィ(Fully Integrated Analog Filters Using Bipolar-JFET Technology)」,アイイーイーイー ジェイエスエスシー(IEEE JSSC),1978年12月
特開2000−59162号公報(第4−7頁、第1図)
しかしながら、前述したマスタ/スレーブ方式の場合、通常使用するVCO61の次数は2次で、一方の制御対象であるフィルタ10の次数はそれ以上であることが多い。図17は、互いに次数が異なる低域通過型フィルタ及びVCOの周波数特性を示す図である。図17に示すように、VCOも低域通過型フィルタとしての特性を持つ。次数の低いVCO61は次数の高い低域通過型フィルタに比べてカットオフ周波数付近でゲインの立ち下がりが鈍く、また次数の低いフィルタの位相特性は次数の高いフィルタに比べてゆっくりと変化する。
従って、例えば、マスタ/スレーブ方式の特性調整装置300でフィルタ10のチューニングを行った後に、フィルタの特性周波数を制御する制御信号s61が多少なりとも最適点から外れて、VCO61で位相誤差ΔP1が生じた場合、図18に示すように、フィルタ10では、前記位相誤差ΔP1よりも大きな位相誤差ΔP2が生じ、この結果フィルタの特性周波数がずれてしまうという問題がある。
そのため、マスタ/スレーブ方式においては、フィルタ10とVCO61との間の相対ばらつきに起因する、最適なチューニング状態からのフィルタ特性のズレを抑えるために、別途、前記誤差を修正するための回路が必要となり、これにより、回路規模が大きくなっているという問題もある。
また、マスタ/スレーブ方式では、フィルタ10の特性周波数とVCO61の発振周波数の設計上設定された相関と、実際の相関が異なるという問題もある。
一方、前述した従来のフィルタ10を直接チューニングに用いる手法では、応答波形周期測定部74において、フィルタ10の周波数測定時に、前記フィルタ10の特性周波数よりも高いサンプリング周波数が必要である。
また、応答波形周期測定部74におけるフィルタ10の周波数測定は、ステップ信号s74に対するフィルタ10からの応答波形と基準レベルとを図示しないコンパレータで比較し、該コンパレータの出力波形の立ち上がり遷移もしくは立ち下がり遷移の周期を測定するのであるが、特性調整対象のフィルタ10の次数によっては通過帯域のゲイン特性が大きく変動するために、コンパレータにて正しく比較できず、これにより調整誤差が生じる問題もある。そして、このような調整誤差を防ぐためには、別途、誤差を調整するための調整手段が必要となり、回路規模が大きくなってしまう。
さらに、従来の方法では、フィルタ10の特性周波数が所望の周波数の誤差範囲となるまで、制御信号の値を変更しながら何度もステップ信号s74を生成してフィルタ10に入力し、応答波形周期測定部74において該フィルタ10からのフィルタ出力信号s76を測定して誤差の判定を行うことを繰り返すものであるため、フィルタの調整に時間がかかるという問題もある。
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、フィルタの特性調整装置の回路規模の増大、すなわち回路面積の増大を防止し、且つより高速にフィルタの特性周波数を所望の周波数に調整できる、フィルタの特性調整装置、及びその特性調整方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するため、本発明の請求項1に記載のフィルタの特性調整装置は、基準信号を入力とし、フィルタの周波数特性の調整時に前記フィルタに供給するテスト信号を生成するテスト信号生成部と、前記テスト信号生成部で生成された前記テスト信号を、前記フィルタの位相特性と該テスト信号の周波数とに基づいて、前記フィルタに前記テスト信号を入力した際に得られる理想のフィルタ出力信号の位相と所定の位相差が生じるように位相シフトする位相シフト部と、前記フィルタに前記テスト信号を入力した際に得られるフィルタ出力信号と、前記位相シフト部で位相をシフトさせた前記テスト信号とを用いて、前記フィルタの特性周波数を制御する制御信号を生成する制御信号生成部と、を備えるものである。
これにより、前記フィルタの特性調整時に、テスト信号生成部にて生成されたテスト信号の位相をシフトさせた信号の立ち上がりあるいは立ち下がりのタイミングで、フィルタ出力信号を検知し、その結果に基づいてフィルタの周波数特性を制御する制御信号を生成することが可能となるため、フィルタの特性調整を短時間で行なうことができ、且つ当該フィルタの特性調整装置の構成をシンプルなものとし、且つその回路面積も小さくすることができる。
また、本発明の請求項2に記載のフィルタの特性調整装置は、請求項1に記載のフィルタの特性調整装置において、前記位相シフト部は、前記テスト信号の位相と、前記理想のフィルタ出力信号との位相差が180°となるように、前記テスト信号の位相をシフトするものである。
これにより、フィルタの特性周波数を制御する制御信号を二分岐探索により検出することが可能となり、前記フィルタの特性調整処理を短時間で行なうことができる。
また、本発明の請求項3に記載のフィルタの特性調整装置は、請求項1に記載のフィルタの特性調整装置において、前記制御信号生成部は、前記フィルタ出力信号を基準信号と比較する第1のコンパレータと、前記位相シフト部からの出力信号を前記基準信号と比較する第2のコンパレータと、前記第1,第2のコンパレータそれぞれから出力される2値信号の位相比較を行う位相比較器と、前記位相比較器からの出力と前記第2のコンパレータからの出力とを用いて、前記制御信号を生成するロジック部と、を備えるものである。
これにより、テスト信号から位相をシフトされた信号と、該フィルタからのフィルタ出力信号との位相比較結果に基づいて、フィルタの周波数特性を制御する制御信号を生成することが可能となり、フィルタの特性調整装置の構成をシンプルで、且つ小さくすることができる。
また、本発明の請求項4に記載のフィルタの特性調整装置は、請求項3に記載のフィルタの特性調整装置において、前記ロジック部は、前記位相比較器からの出力と、前記第2のコンパレータの出力とを入力とし、該第2のコンパレータの出力の立ち上がりあるいは立ち下りのタイミングで、前記位相比較器からの出力を二分岐探索する二分岐探索処理部と、該二分岐探索処理部において得た値に基づいて前記制御信号を生成する制御信号決定部とからなるものである。
これにより、前記制御信号を二分岐探索により得ることができ、フィルタの特性調整を短時間で行うことができる。
また、本発明の請求項5に記載のフィルタの特性調整装置は、請求項1に記載のフィルタの特性調整装置において、前記テスト信号はパルス信号であるものである。
これにより、フィルタの位相差を連続して計測できるため、該特性調整処理を短時間で行うことができる。
また、本発明の請求項6に記載のフィルタの特性調整装置は、請求項5に記載のフィルタの特性調整装置において、前記テスト信号は、前記フィルタの理想状態におけるカットオフ周波数と同一の周波数の信号であるものである。
これにより、フィルタの位相シフト量の設定がしやすい効果がある。
また、本発明の請求項7に記載のフィルタの特性調整装置は、請求項1に記載のフィルタの特性調整装置において、前記フィルタの前段に、前記テスト信号と、通常動作時に処理対象となる入力信号を入力とし、前記フィルタの特性調整時には前記テスト信号を選択し、前記通常動作時には前記入力信号を選択する信号選択部を備えるものである。
これにより、前記フィルタの通常動作時とチューニング動作時に同じフィルタを用いることができるとともに、別途、VCOやPLLといった調整手段を必要とせず、当該装置の面積を小さくすることができる。
また、本発明の請求項8に記載のフィルタの特性調整装置は、基準信号を入力とし、低域通過型の4次バタワースフィルタの周波数特性の調整時に前記フィルタに供給する、該フィルタの周波数特性と同じ周波数のテスト信号を生成するテスト信号生成部と、前記低域通過型の4次バタワースフィルタに前記テスト信号を入力した際に得られるフィルタ出力信号と前記テスト信号とを用いて、前記フィルタの特性周波数を制御する制御信号を生成する制御信号生成部と、を備えるものである。
これにより、位相シフト部を設ける必要がなくなり、特性調整装置の回路面積をさらに小さくすることができる。
本発明の請求項9に記載のフィルタの特性調整方法は、フィルタの特性周波数を制御するフィルタの特性調整方法において、前記フィルタの特性調整時に該フィルタに供給するテスト信号を生成するテスト信号生成ステップと、前記テスト信号生成ステップで生成された前記テスト信号の位相を、前記フィルタの位相特性と該テスト信号の周波数とに基づいて、前記フィルタに前記信号を入力した際に得られる理想のフィルタ出力信号と所定の位相差が生じるようにシフトする位相シフトステップと、前記フィルタに前記テスト信号を入力した際に得られるフィルタ出力信号と、前記位相シフトステップで位相をシフトさせた前記テスト信号とを用いて、前記フィルタの特性周波数を制御する制御信号を生成する制御信号作成ステップと、を含むものである。
これにより、前記フィルタの特性調整時にフィルタの特性を直接的に測定し、テスト信号から位相をシフトされた信号の立ち上がりあるいは立ち下がりのタイミングで、フィルタ出力信号を検知しその結果を元にフィルタの周波数特性を制御する制御信号を生成することが可能となるため、フィルタの特性調整を短時間で行なうことができる。
また、本発明の請求項10に記載のフィルタの特性調整方法は、請求項9に記載のフィルタの特性調整方法において、前記制御信号作成ステップは、前記フィルタに前記テスト信号を入力した際に得られるフィルタ出力信号の位相と、前記位相シフトステップで位相をシフトさせた前記テスト信号の位相とを比較する位相比較ステップと、前記位相比較ステップの比較結果を二分岐探索処理して前記制御信号を生成する二分岐探索ステップと、を含むものである。
これにより、前記フィルタの特性調整時にフィルタの特性を直接的に測定し、テスト信号から位相をシフトされた信号の立ち上がりあるいは立ち下がりのタイミングで、フィルタ出力信号を検知しその結果を元にフィルタの周波数特性を制御する制御信号を生成することが可能となるため、フィルタの特性調整を短時間で行なうことができる。
本発明のフィルタの特性調整装置によれば、前記フィルタの特性調整時に前記テスト信号の位相を所定量シフトする位相シフト部を備え、前記フィルタからの出力と前記位相シフト部の出力との位相差に基づいて、制御信号を生成するようにしたので、フィルタの特性調整処理を高速化することができる。
また、本発明のフィルタの特性調整装置によれば、特にフィルタの特性周波数を最適な状態とするために、フィルタの通常動作時とチューニング動作時に、同じフィルタを用いるようにしたので、別途、PLL回路、あるいはVCOなどを必要としないために、その回路面積の増大を防ぐことが可能となる。
また、本発明のフィルタの特性調整装置によれば、前記フィルタの制御信号生成部は、位相シフト部において、テスト信号と、特性調整後の最適な状態にあるフィルタにテスト信号を入力した際に得られる理想のフィルタ出力信号との位相差が180°となるように、前記テスト信号の位相をシフトさせ、該位相をシフトされたテスト信号とフィルタ出力信号との位相差を二分岐探索を用いたデジタル処理によって生成するようにしたので、短時間で制御信号を生成できると共に、当該フィルタの特性調整装置の構成をシンプルなものとし、且つ小面積で実現することが可能となる。
また、本発明のフィルタの特性調整装置によれば、フィルタが特に4次バタワース低域通過型フィルタ、あるいは4次バタワース高域通過型フィルタであれば、該フィルタに入力される信号の周波数がその特性周波数と同じ周波数のとき、位相特性は理論上180°回転するので、位相シフト部を設ける必要がなくなる。このため、特性調整装置の構成をよりシンプルで、且つ小面積にすることができる。
(実施の形態1)
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態1について説明する。
図1は、本実施の形態1にかかるフィルタの特性調整装置の構成を示す図である。図1において、フィルタの特性調整装置100は、フィルタ10と、選択信号s12に基づいて前記フィルタ10に入力するフィルタ入力信号s15を選択する信号選択部20と、基準信号s17に基づいて前記フィルタ10の特性を調整する制御信号s11を出力するフィルタ特性制御部30とを備える。前記信号選択部20には、当該フィルタの特性調整装置100が通常動作時(以下、「通常モード時」と称す。)である場合に処理対象となる通常入力信号s13と、前記フィルタ特性制御部30で生成されたテスト信号s14とが入力され、選択信号s12に基づいて、前記通常入力信号s13と、テスト信号s14とのいずれか一方が前記フィルタ入力信号s15として選択されて、フィルタ10に入力される。具体的に述べると、フィルタの特性調整装置100が通常モード時である場合は、前記信号選択部20は、前記通常入力信号s13を選択してフィルタ10に入力し、一方当該フィルタ特性調整装置100が特性調整時(以下、「チューニングモード時」と称す。)である場合は、前記テスト信号s14を選択してフィルタ10に入力する。この選択信号s12は、当該装置100外部で独立に調整されて入力されるものであってもよいし、前記フィルタ特性制御部30から出力されるものであってもよい。
図2は、本実施の形態1の特性調整装置100におけるフィルタ特性制御部30の詳細な構成を示す図である。なお、図2は、チューニングモード時に必要な構成のみを示している。図2において、フィルタ特性制御部30は、基準信号s17からテスト信号s14を生成するテスト信号生成部31と、前記テスト信号s14の位相をフィルタ10の位相特性に応じてシフトさせる位相シフト部32と、該位相シフト部32から出力される位相シフトテスト信号s14’と、前記フィルタ10から出力されるフィルタ出力信号s16とを入力とし、フィルタ10の周波数特性の制御を行なう制御信号s11を生成する制御信号生成部33とからなる。
さらに、図3は、前記フィルタ特性制御部30内の制御信号生成部33の詳細な構成を示す図である。図3において、制御信号生成部33は、前記フィルタ出力信号s16を、前記テスト信号s14の中心値を基準として2値化した第1の2値信号s34を生成する第1のコンパレータ34と、前記位相シフトテスト信号s14’を前記テスト信号s14の中心値を基準として2値化した第2の2値信号s35を生成する第2のコンパレータ35と、前記第1の2値信号s34と第2の2値信号s35とを位相比較し、該位相比較結果s36を出力する位相比較器36と、該比較結果s36と前記第2の2値信号s35とを用いて前記制御信号s11を生成するロジック部37とを備えるものである。
なお、ここでは、前記テスト信号s14の中心値が、前記第1,第2のコンパレータ34,35での比較で用いられるしきい値としての基準信号となっている。また、前記位相シフトテスト信号s14’がすでに2値化信号であるにもかかわらず、第2のコンパレータ35を設けている理由は、前記第1の2値信号s34と第2の2値信号s35とを同じタイミングで後段の位相比較器36に入力させるためである。
次に、動作について説明する。
まず、図4を用いて、フィルタ10の通常動作について説明する。図4は、本実施の形態1のフィルタの通常モード時と等価な構成を示す図である。
前記フィルタ10は、後述するフィルタの特性調整動作によって、該フィルタ10の制御信号s11が生成された後に、通常モードの状態となる。このとき、前述したように、信号選択部20では、前記選択信号s12に基づいて前記通常入力信号s13が選択され、フィルタ10に入力される。
そして、図4に示すように、通常モード時には、その特性周波数が制御され固定されたフィルタ10に通常入力信号s13が入力され、その応答波形がフィルタ出力信号s16として出力される。
次に、図2、図5、図6を参照しながら、フィルタ10の特性調整動作について説明する。図5は、本実施の形態1におけるフィルタの特性調整装置のチューニングモード時のフローチャートであり、図6は、本実施の形態1のフィルタの特性調整装置における制御信号生成部の信号波形図である。
まず、フィルタの特性調整装置100をチューニングモードにする(ステップS1)。具体的には、図1に示す信号選択部20において、選択信号s12によりテスト信号s14が選択されるように設定し、ロジック部37に初期値C0を設定する。なお、ロジック部37の構成及びその具体的な処理については後述する。
そして、前記テスト信号s14を生成する(ステップS2)。前記テスト信号s14は、前記フィルタ特性制御部30内のテスト信号生成部31において、基準信号s17に基づいて生成される。ここでは、前記テスト信号s14が、図6(a)に示されるようなパルス信号で、フィルタ10の特性周波数と同じ周波数の信号であるものとする。なお、この時テスト信号s14は、フィルタ10のダイナミックレンジに収まるようにその振幅を制限される。
そして、前記テスト信号s14はフィルタ10へ出力されるとともに、位相シフト部32へ出力される(ステップS3)。
前記フィルタ10は、テスト信号s14を入力とし、フィルタ出力信号s16を出力する。
一方、位相シフト部32は、テスト信号s14を入力とし、その位相をシフトさせて位相シフトテスト信号s14’を出力する。ここで、前記位相シフト部32における位相シフト量は、次のように設定される。すなわち、周波数特性を調整済みのフィルタ10に前記テスト信号s14を入力した際に、該フィルタ10から出力される理想のフィルタ出力信号s16と、前記位相シフト部32から出力される位相シフトテスト信号s14’との位相差が180°となるように、位相シフト量が設定される。この位相シフト量の設定は、図17に示したように、フィルタ10の位相特性により、入力されるテスト信号の周波数が決定していれば、前記理想のフィルタ出力信号の位相シフト量が予め分かるため、該位相シフト量に基づいて、テスト信号s14をシフトさせる位相量を設定すればよい。
例えば、前記フィルタ10が2次バタワース低域通過型フィルタである場合を例に挙げて説明する。図7は、2次バタワース低域通過型フィルタのゲイン特性、及び周波数特性を示す。
2次バタワース低域通過型フィルタの場合、図7に示されるように、該フィルタに入力される信号の周波数がその特性周波数fcに一致するとすれば、該フィルタから出力される応答波形の位相は入力信号より90°だけシフトする(図6(a),(b)参照)。従って、フィルタ10に対して、特性周波数fcと同じ周波数のテスト信号s14が入力されると、該フィルタ10から出力されるフィルタ出力信号s16は、フィルタ10の特性が最適であった場合、テスト信号s14より位相が90°シフトされて出力される、理想のフィルタ出力となるはずであるから、位相シフト部32でシフトさせる位相シフト量として−90°を設定する。
そして、前記フィルタ10から出力されたフィルタ出力信号s16と、前記位相シフト部32にて位相シフトされた位相シフトテスト信号s14’は、制御信号生成部33に入力され、該フィルタ出力信号s16と位相シフトテスト信号s14’とを位相比較し(ステップS5)、該位相比較された結果に基づいて、該フィルタ10の周波数特性を制御する制御信号s11を生成する(ステップS6)。
以下、制御信号生成部33について詳細に述べる。
まず、前記フィルタ出力信号s16は、第1のコンパレータ34に、また前記位相シフトテスト信号s14’は第2のコンパレータ35に入力される。前記第1,第2のコンパレータ34、35は、テスト信号s14の中心値を基準に、前記フィルタ出力信号s16及び位相シフトテスト信号s14’を2値化し、それぞれ第1,第2の2値信号s34,s35として出力する(図6(b),(c)参照)。ここでは、前記各コンパレータ34、35は、各信号のレベルがテスト信号の中心値よりも低い場合は“L”レベル、高い場合は“H”レベルを出力するものとする。
そして、位相比較器36において、前記第1,第2の2値信号s34,s35の位相を比較し、位相比較結果s36を出力する。前記位相比較器36は、例えばフリップフロップによって実現され、前記第2の2値信号s35をクロックとして、該第2の2値信号s35の立ち上がりエッジあるいは立ち下りエッジ(図6では立ち上がりエッジ)で、前記第1の2値信号s34をラッチし、その際、第1の2値信号s34のレベルが“H”レベルであれば“H”レベルを、“L”レベルであれば“L”レベルを出力する(図6(e)参照)。
図6の関係では、フィルタ10が最適な状態にある場合、第1の2値信号s34(フィルタ出力信号のデジタル値)と、第2の2値信号s35(位相シフトテスト信号のデジタル値)とは、図6(b),(d)に示す関係と同様の関係になるはずであるため、該理想とする第1の2値信号(図6(d))に比べて第1の2値信号s34の位相が進んでいる場合は“H”レベル、位相が遅れている場合は“L”レベルとする信号s36を出力する。
そして、ロジック部37において、前記位相比較結果s36の状態をもとに、ステップS1において初期値C0に設定された制御信号s11を微調整する。
ここでは、位相比較結果s36が“H”レベルの場合に制御信号s11の値を下げる方向へ、位相比較結果s36が“L”レベルの場合に制御信号s11の値を上げる方向に微調整する。微調整する期間は、前記第2の2値信号s35がn回(nは1以上の整数)カウントされる所定の期間とする。つまり、前記カウント数nが多ければ、フィルタの調整に長時間がかかるが、フィルタの特性調整の精度は向上し、一方カウント数nが少なければ、フィルタの調整は短時間ですむが、フィルタの特性調整の精度は下がる。
ロジック部37は、例えば、図8に示すような構成で実現できる。図8は、ロジック部の詳細な構成の一例を示す図であり、図9は、ロジック部の二分岐探索処理部の処理を説明する図であり、図10は、ロジック部の制御信号決定部の処理を説明する図である。
図8に示すように、ロジック部37は、位相比較結果s36を、第2の2値信号s35をクロックとして二分岐探索処理する二分岐探索処理部38と、該二分岐探索処理部38で生成されたnビットの制御レジスタ値Cnに応じて、制御信号s11の値を決定する制御信号決定部39とからなる。
二分岐探索処理部38には、前述したように図5のステップS1において初期値C0が設定される。初期値C0は、最上位の1ビットのみ“1”で、他の下位ビットは全て“0”となっている(図9のStep0)。
この後、前記第2の2値信号s35の立ち上がりエッジもしくは立ち下がりのエッジのタイミング毎(図6では立ち上がりエッジタイミング)に、位相比較結果s36の情報をモニタしていく。具体的には、前記第2の2値信号s35の立ち上がりエッジのタイミング時に、制御レジスタ値C0の最上位ビットを、位相比較結果s36の状態が“H”レベルなら“1”を、“L”レベルなら“0”に設定し、最上位ビットの1つ下位のビットを“1”とした制御レジスタC1を生成する(図9のStep1)。
そして、第2の2値信号s35の次の立ち上がりエッジのタイミング時に、制御レジスタ値C1の最上位ビットの1つ下位のビットを、位相比較結果s36が“H”レベルなら“1”に、“L”レベルなら“0”に設定し、最上位ビットの2つ下位のビットを“1”とした制御レジスタC2を生成する(図9のStep2)。
以下、同様に、nビットの制御レジスタ値Cnの第(n−i+1)ビット(但し、iはStepの回数を示し、1≦i≦nを満たす整数である。)の値の二分岐探索動作、すなわち、制御レジスタ値Cnの第(n−i+1)ビットを位相比較結果s36の状態に応じて“1”あるいは“0”に決定する動作、をn回目まで順次続けることにより、制御レジスタ値Cnを得る(図9のStep(n))。なお、図9中の“*”は、そのビットが“1”あるいは“0”のいずれかの値であることを示す。
以上の動作を行うことにより、例えば、図6の関係では、制御レジスタ値C7=“1111101”が得られる。
そして、前述のようにして得られた制御レジスタ値Cnは、制御信号決定部39に入力される。そして該制御信号決定部39において、前記制御レジスタ値Cnに対応する制御信号s11の値が決定される。制御信号s11と制御レジスタ値Cnとは、図10に示されるように、1対1の関係となっており、制御レジスタ値Cnが“000…00”で最小の時は制御信号s11の値も最小となり、制御レジスタ信号Cnが“111…11”で最大の時は制御信号s11の値も最大となる。なお、通常、図10に示されるように、制御レジスタ値の初期値C0は、制御信号s11の値のセンター値に対応する。また、制御レジスタ値Cnのビット数によって、前記二分岐探索処理部38でのStep数が変化するため、フィルタ10の周波数特性の調整時間は制約されることがわかる。
このようにして決定された制御信号s11により、フィルタ10の特性周波数を制御し、フィルタ10の特性周波数は決定される。
チューニング動作が終了すると、フィルタの特性調整装置100は通常モード状態となり、信号選択部20にて選択信号s12に基づいて通常入力信号s13が選択され、フィルタ10前後の信号の流れは、前述した図4に示す通りとなる。
なおフィルタ10が差動構成の場合であっても、前述と同様のチューニング動作が適用できる。この場合、前記第1,第2のコンパレータ34,35には差動信号が入力される構成となり、差動信号の一方を基準として同様に処理することができる。
以上のように、本実施の形態1によれば、通常動作時に使用するフィルタ10に、周波数特性を調整済みとなった状態での該フィルタの特性周波数と等しい周波数のテスト信号s14を直接入力し、該フィルタ10の特性周波数が設計値と等しくなるように調整するようにしたので、別途VCOやPLL回路を設ける必要がなくなり、フィルタの特性調整装置100の回路規模をかなり小さくすることができる。
また、本実施の形態1によれば、フィルタ10の特性を調整するフィルタ特性制御部30に、テスト信号s14の位相を所定量シフトさせる位相シフト部32を設け、該位相シフト部32で位相をシフトさせた位相シフトテスト信号s14’と、前記テスト信号s14をフィルタ10に入力して得たフィルタ出力信号s16とから、該フィルタ10の周波数特性を制御する制御信号s11を生成するようにしたので、フィルタ10の周波数を測定する際に、別途該フィルタ10の特性周波数より高いサンプリング周波数を発生させてクロックとして使用する必要がなく、フィルタの特性調整装置100の回路規模をさらに小さくできる効果がある。
また、本実施の形態1によれば、前記位相シフト部32において、フィルタ10の周波数特性が最適な状態にあるとした際に、前記テスト信号s14を位相シフトさせた位相シフトテスト信号s14’と、前記フィルタ出力信号s16との位相差が180°となるように、前記テスト信号s14を所定量シフトさせ、該位相シフトテスト信号s14’と前記フィルタ出力信号s16との位相差からフィルタ10の周波数特性を制御する制御信号s11を得るようにしたので、前記制御信号s11を二分岐探索処理によって得ることが可能となるため、フィルタ10の特性周波数を短時間で調整することができる。また、このような構成にすることで、位相シフト部32に設定する位相シフト量を変更すれば、すべてのフィルタに対応できる。
なお、本実施の形態1では、テスト信号s14の周波数をフィルタの特性周波数に一致させる場合について説明したが、異なる周波数であってもよい。この場合、フィルタ10の位相特性から、テスト信号s14の周波数に対応する位相量を確認しておき、位相シフト部32が該位相量と180°位相差が生じるような位相シフトテスト信号s14’を生成するようにすればよい。
また、本実施の形態1では、第1,第2のコンパレータ34,35は、テスト信号s14の中心値を基準信号として2値化を行っているが、実際に前記コンパレータで用いる基準信号はこの値に限るものではない。また、前記コンパレータは、例えばヒステリシス型のように2つの基準信号を元に、入力された信号を2値化するものであってもよい。
(実施の形態2)
本実施の形態2では、フィルタが4次バタワース低域通過型フィルタ(以下、「4次バタワースLPF」と称す)、あるいは4次バタワース高域通過型フィルタの場合について説明する。
図11は、本実施の形態2にかかるフィルタの特性調整装置の構成を示す図であり、図12は、本実施の形態2により周波数特性が調整される4次バタワース低域通過型フィルタの構成を示す図であり、図13は、図12に示す4次バタワース低域通過型フィルタの周波数特性を示す図であり、図14は、本実施の形態2のフィルタの特性調整装置におけるフィルタ特性制御部50の構成を詳細に示す図である。なお、図14は、チューニングモード時に必要な構成のみを示している。
図11に示すように、本実施の形態2のフィルタの特性調整装置の構成は、前記実施の形態1と同様、フィルタ40と、選択信号s12に基づいて前記フィルタ40に入力するフィルタ入力信号s15を選択する信号選択部20と、基準信号s17に基づいて前記フィルタ40の特性を調整する制御信号s11を出力するフィルタ特性制御部50とを備える。そして、前記信号選択部20には、前記実施の形態1と同様、当該フィルタの特性調整装置200が通常モード時に処理対象となる通常入力信号s13と、前記フィルタ特性制御部50で生成されたテスト信号s14とが入力され、選択信号s12に応じて、前記通常入力信号s13と、テスト信号s14のいずれかが前記フィルタ入力信号s15として選択されて、フィルタ40に入力される。前記選択信号s12は、当該装置200外部で独立に調製されて入力されるものでもよく、前記フィルタ特性制御部50から出力されるものでもよい。
本実施の形態2が特性調整の対象とするフィルタ40である4次バタワースLPFは、図12に示すように、Gm回路41〜44およびC回路45〜48からなるGm−Cフィルタで構成されているとする。このような4次バタワースLPF40は、Gm回路41〜44のGm値が制御信号s11によって調整されることで、その特性周波数であるカットオフ周波数が制御される。
このように、特性調整の対象となるフィルタ40が、前述したような4次バタワースLPFであると、図14に示すように、フィルタの特性調整装置200のフィルタ特性制御部50内に、位相シフト部が不要となる。この理由は、図13に示すように、4次のバタワースLPF40の位相特性が、理論上、カットオフ周波数fcにおいて位相が180°シフトするものとなるからである。よって、特に特性調整対象のフィルタが4次バタワース低域通過型LPF40の場合は、図13に示すように、位相特性が特性周波数fcの位置で180°シフトされるため、テスト信号s14の位相を、理想のフィルタ出力信号s16との位相差が180°になるように、シフトさせる必要が無く、位相シフト部32が不要となる。もちろん、4次バタワース高域通過型フィルタの場合も同様である。
次に、動作について説明する。なお、本実施の形態2におけるフィルタ40の通常動作は前記実施の形態1と同様であるため、ここでは、フィルタ40のチューニング動作を図14を用いて説明する。
本実施の形態2の特性調整装置200におけるフィルタ特性制御部50において、テスト信号生成部51で生成されたテスト信号s14は、4次バタワースLPF40を介して制御信号生成部53に入力されるとともに、位相シフト部を介することなく直接、制御信号生成部53に入力される。そして、制御信号生成部53において、直接入力された該テスト信号s14と、4次バタワースLPF40のフィルタ出力信号s16との位相比較が行われた後、前記実施の形態1と同様、該位相比較結果を二分岐探索処理して制御レジスタ値Cnを得、該制御レジスタ値Cnに相当する制御信号s11を検出する。そして、該制御信号s11によって図12のGm回路41〜44のGm値を制御し、この結果、フィルタ40のカットオフ周波数が所望の周波数に調整される。
以上のことから、本実施の形態2によれば、フィルタの特性調整装置200は、図14に示すように、テスト信号s14を直接制御信号生成回路53に入力すればよいため、テスト信号s14の位相を所定量シフトさせる位相シフト部が必要なくなり、装置規模をさらに小さくすることができる。
本発明にかかるフィルタの特性調整装置は、フィルタの周波数特性を調整するために、フィルタに入力するテスト信号を生成するテスト信号生成部と、テスト信号の位相をシフトする位相シフト部と、フィルタの出力信号とテスト信号の位相差を比較しデジタル処理にて制御信号を生成する制御信号生成部とを有し、フィルタの特性周波数を高精度に調整するとともに、その回路面積の増加を防ぐうえで有用である。
図1は、本発明の実施の形態1におけるフィルタの特性調整装置の構成を示す図である。
図2は、本発明の実施の形態1におけるフィルタの特性調整装置の、特性調整動作時に必要な構成を示す図である。
図3は、本発明の実施の形態1のフィルタ特性制御部内の制御信号生成部の構成を詳細に示す図である。
図4は、本発明の実施の形態1におけるフィルタの特性調整装置の、通常動作時に必要な構成を示す図である。
図5は、本発明の実施の形態1におけるフィルタの特性調整装置の、特性調整動作時の一連の流れを示す図である。
図6は、本発明の実施の形態1における、フィルタ特性制御部内の各部からの信号波形図である。
図7は、二次バタワース低域通過型フィルタの周波数特性を示す図である。
図8は、本発明の実施の形態1における、フィルタ特性制御部内のロジック部の一構成例を示す図である。
図9は、本発明の実施の形態1のロジック部内での二分岐探索処理を説明する図である。
図10は、本発明の実施の形態1におけるロジック部内の制御信号決定部の処理を説明する図である。
図11は、本実施の形態2におけるフィルタの特性調整装置の構成を示す図である。
図12は、Gm・C回路で構成された4次のバタワース低域通過型フィルタを示した図である。
図13は、4次低域通過型バタワースフィルタの周波数特性を示した図である。
図14は、本実施の形態2にかかるフィルタの特性調整装置の、特性調整動作時に必要な構成を示す図である。
図15は、従来における、PLLを用いたマスタ/スレーブ方式によるフィルタの特性調整装置を示す図である。
図16は、従来における、通常動作時に使用するフィルタそのものを用いた特性調整装置の構成を示す図である。
図17は、次数の異なる2つの低域通過型フィルタの周波数特性を示す図である。
図18は、次数の異なる2つの低域通過型フィルタの位相特性を示す図である。
符号の説明
10 フィルタ
20,61 信号選択部
30,50 フィルタ特性調整部
31,51 テスト信号生成部
32 位相シフト部
33,53 制御信号生成部
34 第1のコンパレータ
35 第2のコンパレータ
36 位相比較器
37 ロジック部
38 二分岐探索処理部
39 制御信号決定部
40 4次バタワース低域通過型フィルタ
41〜44 Gm回路
45〜48 C回路
60 PLL回路
61 VCO
62 発振周波数測定部
63 制御部
74 応答波形周期測定部
77 ステップ信号生成部
78 制御部
前記課題を解決するため、本発明の請求項1に記載のフィルタの特性調整装置は、入力された信号を濾波して出力するフィルタと、一定周期の基準信号を生成して出力するテスト信号生成部と、外部から与える信号と前記テスト信号とを与えて選択信号によって選択した信号を前記フィルタに与える信号選択部と、前記テスト信号を前記フィルタに与えたこのフィルタの出力信号と前記テスト信号とを与えて位相比較した結果に応じて、前記フィルタの周波数特性を異ならせる制御信号を出力する制御信号生成部と、を備えたフィルタの特性調整装置において、前記フィルタが、4次関数のフィルタ特性を用いて、入力信号に対する出力信号の位相差が前記テスト信号の周波数において180度となる特性を有するものであることを特徴とするものである。
これにより、前記フィルタの特性調整時に、テスト信号生成部にて生成されたテスト信号の位相をシフトさせた信号の立ち上がりあるいは立ち下がりのタイミングで、フィルタ出力信号を検知し、その結果に基づいてフィルタの周波数特性を制御する制御信号を生成することが可能となるため、フィルタの特性調整を短時間で行なうことができ、且つ当該フィルタの特性調整装置の構成をシンプルなものとし、且つその回路面積も小さくすることができるとともに、フィルタの特性周波数を制御する制御信号を二分岐探索により検出することが可能となり、前記フィルタの特性調整処理を短時間で行なうことができるとともに、前記フィルタの通常動作時とチューニング動作時に同じフィルタを用いることができるとともに、別途、VCOやPLLといった調整手段を必要とせず、当該装置の面積を小さくすることができ、位相シフト部を設ける必要がなくなり、特性調整装置の回路面積をさらに小さくすることができる。
また、本発明の請求項2に記載のフィルタの特性調整装置は、請求項1に記載のフィルタの特性調整装置において、前記制御信号生成部は、前記フィルタ出力信号を与えて2値信号にして出力する第1のコンパレータと、前記テスト信号を与えて2値信号にして出力する第2のコンパレータと、前記第1,第2のコンパレータそれぞれから出力される2値信号の位相比較を行う位相比較器と、前記位相比較器からの出力と前記第2のコンパレータからの出力とを用いて、前記制御信号を生成するロジック部と、を備えたものであり、前記ロジック部は、前記位相比較器からの出力と、前記第2のコンパレータの出力とを入力とし、該第2のコンパレータの出力の立ち上がりあるいは立ち下りのタイミングで、前記位相比較器からの出力を二分岐探索する二分岐探索処理部と、該二分岐探索処理部において得た値に基づいて前記制御信号を生成する制御信号決定部と、を備えたものであることを特徴とするものである。
これにより、テスト信号から位相をシフトされた信号と、該フィルタからのフィルタ出力信号との位相比較結果に基づいて、フィルタの周波数特性を制御する制御信号を生成することが可能となり、フィルタの特性調整装置の構成をシンプルで、且つ小さくすることができるとともに、前記制御信号を二分岐探索により得ることができ、フィルタの特性調整を短時間で行なうことができる。
また、本発明の請求項3に記載のフィルタの特性調整装置は、請求項1又は2に記載のフィルタの特性調整装置において、前記テスト信号はパルス信号である、ことを特徴とするものである。
これにより、フィルタの位相差を連続して計測できるため、該特性調整処理を短時間で行なうことができる。
また、本発明の請求項4に記載のフィルタの特性調整装置は、請求項3に記載のフィルタの特性調整装置において、前記テスト信号は、前記フィルタのカットオフ周波数と同一の周波数の信号であることを特徴とするものである。
これにより、フィルタの位相シフト量の設定がしやすい効果がある。
また、本発明の請求項5に記載のフィルタの特性調整装置は、請求項1,2,3のいずれかに記載のフィルタの特性調整装置において、前記フィルタは、4次バタワースフィルタの周波数特性を有するものであることを特徴するものである。
これにより、位相シフト部を設ける必要がなくなり、特性調整装置の回路面積をさらに小さくすることができる。
また、本発明の請求項6に記載のフィルタの特性調整方法は、フィルタの特性周波数を制御するフィルタの特性調整方法において、前記フィルタの特性調整時に該フィルタに供給するテスト信号を生成するテスト信号生成ステップと、前記テスト信号生成ステップで生成された前記テスト信号の位相を、前記フィルタの位相特性と該テスト信号の周波数とに基づいて、前記フィルタに前記信号を入力した際に得られるフィルタ出力信号と所定の位相差が生じるようにシフトする位相シフトステップと、前記フィルタに前記テスト信号を入力した際に得られるフィルタ出力信号と、前記位相シフトステップで位相をシフトさせた前記テスト信号とを用いて、前記フィルタの特性周波数を制御する制御信号を生成する制御信号作成ステップと、を含み、前記制御信号作成ステップは、前記フィルタに前記テスト信号を入力した際に得られるフィルタ出力信号の位相と、前記位相シフトステップで位相をシフトさせた前記テスト信号の位相とを比較する位相比較ステップと、前記位相比較ステップの比較結果を二分岐探索処理して前記制御信号を生成する二分岐探索ステップと、を含むことを特徴とするものである。
これにより、前記フィルタの特性調整時にフィルタの特性を直接的に測定し、テスト信号から位相をシフトされた信号の立ち上がりあるいは立ち下がりのタイミングで、フィルタ出力信号を検知しその結果を元にフィルタの周波数特性を制御する制御信号を生成することが可能となるため、フィルタの特性調整を短時間で行なうことができる。