JPWO2006051941A1 - ジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物を含む共重合体の重合抑制方法 - Google Patents
ジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物を含む共重合体の重合抑制方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】 芳香族ビニル化合物の蒸留工程、精製工程および貯蔵工程において、芳香族ビニル化合物の製造によって生成したジビニルベンゼンあるいは芳香族ビニル化合物の製造原料に伴って混入したジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物との共重合体の生成抑制方法および装置類・設備類への該共重合体の付着による汚れの抑制方法を提供することにある。【解決手段】 芳香族ビニル化合物の製造工程、精製工程および貯蔵工程において、(A)ジニトロフェノール化合物と、(B)スルホン酸化合物と、(C)p−フェニレンジアミン化合物を同時に用いることを特徴とするジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物を含む共重合体の重合抑制方法。【選択図】 なし
Description
本発明は芳香族ビニル化合物の製造工程、精製工程において、芳香族ビニル化合物の製造の際に生じるジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物を含む共重合物の生成を抑制する重合抑制方法に関するものである。
芳香族ビニル化合物であるスチレンおよびその誘導体は、ポリスチレン、合成ゴム、ABS樹脂などの製造原料として産業上非常に重要な化合物であり、工業的に大量に生産されている。
芳香族ビニル化合物は、一般に対応するアルキルベンゼンを触媒存在下、脱水素反応を行って得られる。例えば、スチレンの場合、エチルベンゼンを無機系触媒に接触させて、スチレンを得、蒸留によりエチルベンゼンと分離、精製を行って得られる。その際、スチレンと同時に少量のジビニルベンゼンも生成する。ジビニルベンゼンは、スチレンより沸点が高いので、蒸留・精製工程でスチレンと蒸留分離され、蒸留釜にはジビニルベンゼンが多く残り、濃縮される。ジビニルベンゼンは、分子内にビニル基を2つ有することから架橋剤として働き、スチレンの製造中にジビニルベンゼンとスチレンが架橋した共重合体が生成され、装置内部に汚れとして付着し、スチレン製造装置・設備の運転に重大な問題を引き起こしている。この架橋した重合体は、有機溶剤への溶解性が低いために、一旦生成され装置内部に付着すると人力による除去を行うしか除去方法がない。そのため、定期的にその除去作業を行なっており、その改善が強く望まれていた。
そこで、ジビニルベンゼンとスチレンが架橋した共重合体の生成を抑制し、スチレン製造装置・設備への該共重合体による汚れの付着を防止し、スチレン製造装置の運転に重大な問題を引き起こさないようにスチレンおよびその誘導体の重合抑制剤あるいは重合抑制方法が適用されてきた。具体的には、フェノール化合物、ニトロソフェノール化合物、ニトロフェノール化合物を用いるスチレンの重合抑制剤および重合抑制方法(例えば特許文献1参照)、ピペリジン−1−オキシル化合物を用いる方法(例えば、特許文献2参照)、ニトロフェノール化合物とピペリジン−N−オキシル化合物を用いる方法(例えば特許文献3参照)などがある。しかし、これらの重合抑制方法では、重合抑制剤の使用量を多くして対応しているが、依然としてジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物の架橋した共重合体の重合抑制に満足しうる効果を得ることはできず、その改善が強く望まれていた。
本発明は、芳香族ビニル化合物の蒸留工程、精製工程および貯蔵工程において、芳香族ビニル化合物の製造によって生成したジビニルベンゼンあるいは芳香族ビニル化合物の製造原料に伴って混入したジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物とを含む共重合体の生成抑制方法および装置類・設備類への該共重合体の付着による汚れの抑制方法を提供することにある。
本発明者らはジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物を含む共重合体の重合反応を詳細に検討した結果、ジニトロフェノール化合物とスルホン酸化合物とp−フェニレンジアミン化合物を組み合わせて同時に使用することにより、ジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物の架橋した共重合体の生成を著しく抑制することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本請求項1に係わる発明は、芳香族ビニル化合物の製造工程、精製工程および貯蔵工程において、(A)ジニトロフェノール化合物と、(B)スルホン酸化合物と、(C)一般式(1)〔R1、R2、R3、R4は各々独立して水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3〜20の直鎖及び分岐鎖あるいは3員環〜8員環を形成していてもよいアルキル基である。〕で表されるp−フェニレンジアミン化合物を同時に用いることを特徴とするジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物を含む共重合体の重合抑制方法である。
請求項2に係る発明は、請求項1記載のジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物を含む共重合体の重合抑制方法であり、(A)ジニトロフェノール化合物が、2,4−ジニトロフェノール、2,6−ジニトロフェノール、2,6−ジニトロ−4−メチルフェノール、2,4−ジニトロ−6−メチルフェノールおよび2,4−ジニトロ−6−第二ブチルフェノールから選ばれる1種以上であることを特徴としている。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載のジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物を含む共重合体の重合抑制方法であり、(B)スルホン酸化合物がトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸およびジノニルナフタレンスルホン酸から選ばれる一種以上であることを特徴としている。
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のいずれか記載のジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物を含む共重合体の重合抑制方法であり、(C)p−フェニレンジアミン化合物が、N−フェニル−N−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N−ジ−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミンから選ばれる1種以上であることを特徴としている。
請求項5に係わる発明は、請求項1ないし4のいずれか記載のジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物を含む共重合体の重合抑制方法であり、(B)成分と(C)成分の配合比は、重量比で90:10〜40:60、かつ、(A)成分と、(B)成分と(C)成分の合計量とを重量比で99:1〜50:50で添加することを特徴とする。
本発明の方法により、芳香族ビニル化合物との製造工程、精製工程および貯蔵工程において、芳香族ビニル化合物との製造工程、精製工程で生じる、あるいは含まれてくるジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物を含む架橋した共重合体の生成を抑制し、該共重合体に起因する装置・設備中での汚れの発生と付着を抑制し、従来の重合体除去作業の低減・改善をもたらし、プロセスの流れの維持、熱伝導の維持、長期連続運転を可能にし、安全操業、製品の収率向上、さらには製品品質の向上も達成できる等の経済的効果が得られる。
本発明は、芳香族ビニル化合物の製造工程、精製工程および貯蔵工程において、芳香族ビニル化合物の製造に由来して生成したジビニルベンゼンと該芳香族ビニル化合物を含み、架橋した共重合体の生成を抑制する重合抑制方法であり、さらに該共重合体の生成を抑制することによって、芳香族ビニル化合物の製造工程、精製工程および貯蔵工程内の装置・設備への該共重合体の付着により生じる汚れの抑制方法である。
本発明における芳香族ビニル化合物は、スチレン、炭素数1〜10のアルキル基を持つアルキルスチレン、α位に炭素数1〜10のフェニル基、アルキル基を持つα−アルキルスチレン、β位に炭素数1〜10のフェニル基、アルキル基を持つβ−アルキルスチレンなどの重合性ビニル基を持ったスチレンおよびスチレン誘導体である。具体的には、スチレン、メチルスチレン(オルト体、メタ体、パラ体およびこれらの混合物)、エチルスチレン(オルト体、メタ体、パラ体およびこれらの混合物)、プロピルスチレン(オルト体、メタ体、パラ体およびこれらの混合物)、ブチルスチレン(オルト体、メタ体、パラ体およびこれらの混合物)、オクチルスチレン(オルト体、メタ体、パラ体およびこれらの混合物)、ノニルスチレン(オルト体、メタ体、パラ体およびこれらの混合物)、デシルスチレン(オルト体、メタ体、パラ体およびこれらの混合物)、α−メチルスチレン(2−フェニルプロペン)(シス体、トランス体、およびその混合物)、1−フェニルプロペン(シス体、トランス体、およびその混合物)、2−フェニル−2−ブテン(シス体、トランス体、およびその混合物)、スチルベン(シス体、トランス体、およびその混合物)などがある。
本発明において対象となる工程は、芳香族ビニル化合物の製造工程、芳香族ビニル化合物製造後の精製工程、製造および精製した芳香族ビニル化合物を貯蔵・保管する貯蔵工程でジビニルベンゼンを含む当該工程、および各工程でジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物を含む工程液と接する付随装置類、付帯設備類、さらにこれらを含む循環系や回収系も包含する。具体的には、芳香族ビニル化合物製造工程におけるアルキル芳香族化合物の脱水素反応塔や合成反応塔、および反応後の反応物排出ラインや回収循環ライン、精製工程における精製塔への芳香族ビニル化合物のフィード配管や予熱ラインおよび冷却ラインさらに循環ライン、貯蔵工程における保管タンクや貯蔵タンク、移送タンクおよび輸送タンクさらにその移送ラインなどがある。
本発明におけるジビニルベンゼンは、芳香族ビニル化合物の製造の際に副生成物として生じたジビニルベンゼン、および芳香族ビニル化合物の製造の際に使用する原料中に含まれて入ってきたジビニルベンゼンがあり、さらにジビニルベンゼンがメタ体、パラ体およびその混合物のいずれの形態のものであってもよい。
本発明におけるジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物を含む共重合体(以下、「共重合体」とする。)は、2つの重合性のビニル基を持ったジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物を含み、さらに架橋構造を持った共重合体であり、例えばジビニルベンゼン−スチレン共重合体が挙げられる。この架橋構造を持った共重合体は、芳香族ビニル化合物の製造工程〜貯蔵工程において、各工程内の装置類、配管類に付着、成長して汚れとなる。
本発明におけるジニトロフェノール化合物は、分子中にニトロ基を2個有するフェノール化合物である。具体的には2,4−ジニトロフェノール、2,4−ジニトロ−6−メチルフェノール、2,4−ジニトロ−6−エチルフェノール、2,4−ジニトロ−6−プロピルフェノール、2,4−ジニトロ−6−イソプロピルフェノール、2,4−ジニトロ−6−n−ブチルフェノール、2,4−ジニトロ−6−第二ブチルフェノール、2,4−ジニトロ−6−第三ブチルフェノール、2,6−ジニトロフェノール、2,6−ジニトロ−4−メチルフェノール、2,6−ジニトロ−4−エチルフェノール、2,6−ジニトロ−4−プロピルフェノール、2,6−ジニトロ−4−イソプロピルフェノール、2,4−ジニトロ−6−n−ブチルフェノール、2,6−ジニトロ−4−sec−ブチルフェノール、2,6−ジニトロ−4−tert−ブチルフェノールなどがあり、これらの1種以上が用いられる。
本発明におけるスルホン酸化合物は、ベンゼン環やナフタレン環にスルホン酸基が結合したアルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸である。具体的には、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸およびジノニルナフタレンスルホン酸などがあり、これらの1種以上が用いられる。
本発明におけるp−フェニレンジアミン化合物は、一般式(1)で表されたp−フェニレンジアミン化合物である。式中、R1、R2、R3、R4は各々独立して水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3〜20の直鎖及び分岐鎖あるいは3員環〜8員環を形成していてもよいアルキル基である。具体的には、N−フェニル−N−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N−ジ−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミンなどが挙げられ、これらの1種以上が用いられる。
本発明の重合抑制方法における(B)スルホン酸化合物と(C)p−フェニレンジアミン化合物の添加量の比は、重量比で90:10〜40:60、好ましくは80:20〜50:50、より好ましくは70:30〜60:40である。(B)スルホン酸化合物と(C)p−フェニレンジアミン化合物の添加量の比がこの範囲外であれば、本発明の効果を十分に発揮できない場合がある。また、(A)ジニトロフェノール化合物と、(B)スルホン酸化合物と(C)p−フェニレンジアミン化合物の合計添加量との比は、重量比として99:1〜50:50、好ましくは95:5〜75:25、より好ましくは90:10〜80:20である。(A)ジニトロフェノール化合物と、(B)スルホン酸化合物と(C)p−フェニレンジアミン化合物の合計添加量との比がこの範囲外であれば、本発明の効果を十分に発揮できない場合がある。
本発明の重合抑制方法における(A)ジニトロフェノール化合物と(B)スルホン酸化合物と(C)p−フェニレンジアミン化合物の合計の添加量は、対象とする工程の条件、重合体生成抑制の必要度などにより異なり、一律に決められるものではないが、一般的には、対象とするスチレン類に対して、通常、10〜10,000ppm、好ましくは50〜5,000ppm、さらに好ましくは100〜3,000ppmである。この添加量は、対象とする共重合体の重合抑制効果を発揮する上で適当な範囲として見出されたものであり、この範囲より小さいと効果が充分に発揮されない場合があり、また、この範囲より多いと、効果は充分に発揮されるが、添加量に見合うだけの重合抑制効果の向上が得られず、経済的見地から好ましくない場合がある。
本発明におけるジニトロフェノール化合物とスルホン酸化合物とp−フェニレンジアミン化合物の添加方法は、特に限定されるものではないが、通常、特定の箇所に一括添加するか、あるいは複数の箇所に分けて添加するなどの方法が適宜選択される。この際、ジニトロフェノール化合物とスルホン酸化合物とp−フェニレンジアミン化合物をそれぞれ別々に添加する方法、あるいはジニトロフェノール化合物とスルホン酸化合物とp−フェニレンジアミン化合物を適正な混合比で、そのプロセス流体と同じ液体、例えばスチレンの場合にはエチルベンゼンや粗スチレンに溶解して添加する方法があり、いずれを用いても良い。
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲においてその他公知重合抑制剤を併せて用いることがあるが、本発明はなんら制限を加えるものではない。
本発明の共重合体の重合抑制方法をエチルベンゼンの脱水素反応によるスチレンの製造を例に取り、以下に説明する(図1参照)。
スチレンはエチルベンゼンの触媒による脱水素反応により生成し、生成したスチレンとエチルベンゼンの混合物はフィード油(1)として蒸留塔(2)中央部に送られる。蒸留塔(2)では、供給されたフィード油(1)中の未反応エチルベンゼンが蒸留塔塔頂(7)より分離回収され、再び脱水素反応に用いられる。一方、エチルベンゼンよりも沸点の高いスチレンと少量のジビニルベンゼンはともに塔底液として蒸留塔塔底部に溜まる。蒸留塔塔底部は、通常、2つに仕切られ、1つは塔底液貯留部(3)、他は塔底液貯留部(3)からオーバーフローして次段の蒸留塔(10)へのフィード油となる塔底液の回収貯留部(8)である。この塔底液貯留部(3)は蒸留塔(2)に隣接した蒸発器(リボイラー)(5)と配管(4)で連結され、さらに蒸発器(リボイラー)(5)は蒸留塔(1)中央部に配管(6)で連結されている。塔底液貯留部(3)の塔底液は、塔底部の配管(4)を通して蒸発器(5)に流れ込み、加熱されて気化し、再度、蒸留塔(1)内に入り、低沸点のエチルベンゼン(沸点136℃)は蒸留分離され、それ以外の高沸点物は再び蒸留塔塔底部に戻る。通常、蒸発器(リボイラー)は多数の金属製細管束でできており、その細管内を塔底液が流れ、細管外部はスチーム等でエチルベンゼンの沸点(136℃)以上に加熱される。
蒸留塔塔底の回収貯留部(8)に溜まったスチレンと少量のジビニルベンゼンを含む塔底液は、配管(9)を通り次段のフィード油として、蒸留塔(10)中央部に導かれ、含まれるスチレン(沸点145℃)は蒸留塔塔頂(15)より蒸留分離される。未蒸留分は流下して蒸留塔塔底貯留部(11)に溜まり、さらに配管(12)を通り、蒸発器(13)にてスチレンの沸点以上に加熱されて気化し、配管(14)を通り再び蒸留塔(10)中央部より蒸留塔に入り、残存しているスチレンは再度、塔頂(15)より蒸留分離される。また、蒸留塔(10)塔底の回収貯留部(16)に溜まったスチレンと少量のジビニルベンゼンを含む塔底液は、配管(17)を通り、2段目のスチレン蒸留塔(18)のフィード油として供給される。2段目のスチレン蒸留塔(18)では、前段と同様に蒸留塔塔頂(23)からスチレンの回収が行なわれ、同時に得られたスチレンを配管(26)を通して前段の蒸留塔(10)の中央部に戻して再度、蒸留が行なわれる。このように蒸留塔を複数連結して蒸留を繰り返すことにより、エチルベンゼンの回収と生成スチレンの回収・精製が行なわれる。一方、蒸留塔塔底回収貯留部に溜まった蒸留残渣は次段の蒸留塔のフィード油として供給されるが、最終的にはタール分として廃棄(多くの場合、燃焼処理)される。
その間、生成した共重合体が蒸留工程内で生成する。特に最も温度の高くなる蒸発器(リボイラー)の金属細管内の気液界面でスチレンとジビニルベンゼンによる架橋した共重合体が最も生成しやすく、しかも短時間で生成することが知られている。生成した共重合体は、蒸留できないために蒸留塔塔底部に溜まり、複数段の蒸留・精製を繰り返すうちに徐々に増加し、時として蒸留工程の最終蒸留塔塔底部(塔底液貯留部及び回収貯留部)の共重合体の濃度が30重量%程度となる場合もある。
本発明において、ジニトロフェノール化合物とスルホン酸化合物とp−フェニレンジアミン化合物の添加場所は、特に限定されるものではないが、通常、ジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物が共重合し、架橋化物を生成する箇所より上流のプロセスに添加する。例えば、前述のエチルベンゼンの脱水素反応によるスチレンの製造の場合、エチルベンゼンの脱水素反応後の反応混合物中に添加する方法、エチルベンゼンの脱水素反応後でスチレンを分離するための蒸留塔フィード油中に添加する方法、スチレンの蒸留分離する蒸留塔に添加する方法、蒸留塔塔底液貯留部に添加する方法、蒸留塔塔底と蒸発器(リボイラー)とを連結する配管に注入する方法等が有り、いずれを用いても良い。本発明で用いるアミン化合物の中には、スチレンよりも低沸点のものが含まれているが、蒸留塔塔底液貯留部に添加する方法、蒸留塔塔底と蒸発器(リボイラー)とを連結する配管に注入する方法を用いることにより、スチレンよりも低沸点であることによる影響を及ぼすことなく、その効果を発揮することができる。
実施例によって、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例になんら限定されるものではない。
(ジニトロフェノール化合物)
・DNBP:2,4−ジニトロ−6−第二ブチルフェノール
・DNP:2,4−ジニトロフェノール
・DNOC:2,4−ジニトロ−6−メチルフェノール
・DNPC:2,6−ジニトロ−4−メチルフェノール
・DNBP:2,4−ジニトロ−6−第二ブチルフェノール
・DNP:2,4−ジニトロフェノール
・DNOC:2,4−ジニトロ−6−メチルフェノール
・DNPC:2,6−ジニトロ−4−メチルフェノール
(スルホン酸化合物)
・PTS:パラトルエンスルホン酸
・XSA:キシレンスルホン酸
・CSA:クメンスルホン酸
・DDBSA:ドデシルベンゼンスルホン酸
・PDBSA:ペンタデシルベンゼンスルホン酸
・DNNSA:ジノニルナフタレンスルホン酸
・PTS:パラトルエンスルホン酸
・XSA:キシレンスルホン酸
・CSA:クメンスルホン酸
・DDBSA:ドデシルベンゼンスルホン酸
・PDBSA:ペンタデシルベンゼンスルホン酸
・DNNSA:ジノニルナフタレンスルホン酸
(p−フェニレンジアミン化合物)
・PPPA:N−フェニル−N−イソプロピル−p−フェニレンジアミン
・BPA:N,N−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン〔「UOP#5」(商品名)、UOP社製〕
・PPA:N,N−ジ−フェニル−p−フェニレンジアミン
・NPA:N,N−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン
・PPPA:N−フェニル−N−イソプロピル−p−フェニレンジアミン
・BPA:N,N−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン〔「UOP#5」(商品名)、UOP社製〕
・PPA:N,N−ジ−フェニル−p−フェニレンジアミン
・NPA:N,N−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン
〔重合抑制試験〕
スチレンモノマー、ジビニルベンゼン(メタ体、パラ体の混合物)、エチルビニルベンゼン、ジエチルベンゼンをそれぞれアルカリ洗浄して、それぞれに含まれる重合抑制剤を除き、水洗、乾燥した。還流冷却器を備えた4つ口セパラブルフラスコにスチレンモノマー50.0g、ジビニルベンゼン(メタ体、パラ体の混合物)27.5g、エチルビニルベンゼン11.3g、ジエチルベンゼン11.3gを入れ、重合抑制剤を全試料量に対して所定量加え(各薬剤の配合割合は表1に示した)、高純度窒素ガスを30分間吹き込んで溶存酸素を除き、試験液を作成した。JIS K2276 熱安定度試験方法(JFTOT法)に準じて、210℃に加熱された二重管内部のテストチューブ(重量:Ag)に試験液を定量ポンプにて導入し、液温度を180℃に保持した。90分後にテストチューブの加熱を終了し、二重管からテストチューブを取り出し、樹脂が付着したテストチューブの重量(重量:Bg)を測定した。試験液の加熱により生じた付着物生成量を「B−A」(g)として求めた。本試験において、ジビニルベンゼンを含まない試験液の場合、生成する樹脂はポリスチレンであり、ポリスチレンは試験に使用している試験液に溶解し、テストチューブに付着しない。一方、ジビニルベンゼン−スチレン重合体は架橋した重合体であるため、試験液に溶解せず、テストチューブに付着し付着物となる。結果を表1に示した。
スチレンモノマー、ジビニルベンゼン(メタ体、パラ体の混合物)、エチルビニルベンゼン、ジエチルベンゼンをそれぞれアルカリ洗浄して、それぞれに含まれる重合抑制剤を除き、水洗、乾燥した。還流冷却器を備えた4つ口セパラブルフラスコにスチレンモノマー50.0g、ジビニルベンゼン(メタ体、パラ体の混合物)27.5g、エチルビニルベンゼン11.3g、ジエチルベンゼン11.3gを入れ、重合抑制剤を全試料量に対して所定量加え(各薬剤の配合割合は表1に示した)、高純度窒素ガスを30分間吹き込んで溶存酸素を除き、試験液を作成した。JIS K2276 熱安定度試験方法(JFTOT法)に準じて、210℃に加熱された二重管内部のテストチューブ(重量:Ag)に試験液を定量ポンプにて導入し、液温度を180℃に保持した。90分後にテストチューブの加熱を終了し、二重管からテストチューブを取り出し、樹脂が付着したテストチューブの重量(重量:Bg)を測定した。試験液の加熱により生じた付着物生成量を「B−A」(g)として求めた。本試験において、ジビニルベンゼンを含まない試験液の場合、生成する樹脂はポリスチレンであり、ポリスチレンは試験に使用している試験液に溶解し、テストチューブに付着しない。一方、ジビニルベンゼン−スチレン重合体は架橋した重合体であるため、試験液に溶解せず、テストチューブに付着し付着物となる。結果を表1に示した。
本発明のジニトロフェノール化合物とスルホン酸化合物とp−フェニレンジアミン化合物を組み合わせることによって、従来のジニトロフェノール化合物単独使用を大きく上回るスチレン−ジビニルベンゼン共重合体の重合抑制効果が発揮され、予想し得ない程に付着物量が減り、高い汚れ抑制効果を示すことが分かる。
1:エチルベンゼン脱水素反応後のスチレン含有フィード油
2:蒸留塔(1)
3:蒸留塔(1)塔底貯留部
4:配管1
5:蒸発器(1)
6:配管2
7:蒸留塔塔頂部
8:蒸留塔(1)塔底回収部
9:配管(3)
10:蒸留塔(2)
11:蒸留塔(2)塔底貯留部
12:配管(4)
13:蒸発器(2)
14:配管(5)
15:蒸留塔(2)塔頂部
16:蒸留塔(2)塔底回収部
17:配管(6)
18:蒸留塔(3)
19:蒸留塔(3)塔底貯留部
20:配管(7)
21:蒸発器(3)
22:配管(8)
23:蒸留塔(3)塔頂部
24:蒸留塔(3)塔底回収部
25:配管(8)
26:配管(9)
Claims (5)
- 芳香族ビニル化合物の製造工程、精製工程および貯蔵工程において、(A)ジニトロフェノール化合物と、(B)スルホン酸化合物と、(C)一般式(1)〔R1、R2、R3、R4は各々独立して水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3〜20の直鎖及び分岐鎖あるいは3員環〜8員環を形成していてもよいアルキル基である。〕で表されるp−フェニレンジアミン化合物を同時に用いることを特徴とするジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物を含む共重合体の重合抑制方法。
- (A)ジニトロフェノール化合物が、2,4−ジニトロフェノール、2,6−ジニトロフェノール、2,6−ジニトロ−4−メチルフェノール、2,4−ジニトロ−6−メチルフェノールおよび2,4−ジニトロ−6−第二ブチルフェノールから選ばれる1種以上である請求項1記載のジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物を含む共重合体の重合抑制方法。
- (B)スルホン酸化合物が、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸およびジノニルナフタレンスルホン酸から選ばれる一種以上である請求項1又は2記載のジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物を含む共重合体の重合抑制方法。
- (C)p−フェニレンジアミン化合物が、N−フェニル−N−イソプロピル−p−フェ
ニレンジアミン、N,N−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N−ジ−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミンから選ばれる1種以上である請求項1ないし3のいずれか記載のジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物を含む共重合体の重合抑制方法。 - (B)成分と(C)成分の配合比は、重量比で90:10〜40:60、かつ、(A)成分と、(B)成分と(C)成分の合計量とを重量比で99:1〜50:50で添加することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか記載のジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物を含む共重合体の重合抑制方法。
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