JP2006182717A - ジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物を含む共重合体の重合抑制方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 芳香族ビニル化合物の蒸留工程、精製工程あるいは貯蔵工程において、芳香族ビニル化合物の製造によって生成したジビニルベンゼンあるいは芳香族ビニル化合物の製造原料に伴って混入したジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物を含む共重合体の生成を長時間に亘り効率的に重合を抑制し、さらに生成した前記共重合体の装置類・設備類への付着による汚れを抑制するジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物を含む共重合体の重合抑制方法を提供することにある。
【解決手段】 芳香族ビニル化合物の製造工程、精製工程あるいは貯蔵工程において、(A)2,6−ジニトロフェノール化合物と、(B)スルホン酸化合物を同時に添加する。好適には(A)と(B)を重量比で99:1〜50:50の割合で用いる。
【選択図】 なし
【解決手段】 芳香族ビニル化合物の製造工程、精製工程あるいは貯蔵工程において、(A)2,6−ジニトロフェノール化合物と、(B)スルホン酸化合物を同時に添加する。好適には(A)と(B)を重量比で99:1〜50:50の割合で用いる。
【選択図】 なし
Description
本発明は、芳香族ビニル化合物の蒸留工程、精製工程あるいは貯蔵工程において、芳香族ビニル化合物の製造の際に生じるジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物を含む共重合物の生成を抑制する重合抑制方法に関するものである。
芳香族ビニル化合物であるスチレンおよびその誘導体は、ポリスチレン、合成ゴム、ABS樹脂などの製造原料として産業上非常に重要な化合物であり、工業的に大量に生産されている。
芳香族ビニル化合物は、一般に対応するアルキルベンゼンを触媒存在下、脱水素反応を行って得られる。例えば、スチレンの場合、エチルベンゼンを無機系触媒に接触させて、スチレンを得、蒸留によりエチルベンゼンと分離、精製を行って得られる。その際、スチレンと同時に少量のジビニルベンゼンも生成する。ジビニルベンゼンは、スチレンより沸点が高いので、蒸留・精製工程でスチレンと蒸留分離され、蒸留釜にはジビニルベンゼンが多く残り、濃縮される。ジビニルベンゼンは、分子内にビニル基を2つ有することから架橋剤として働き、スチレンの製造中にジビニルベンゼンとスチレンが架橋した共重合体が生成され、装置内部に汚れとして付着し、スチレン製造装置・設備の運転に重大な問題を引き起こしている。この架橋した重合体は、有機溶剤への溶解性が低いために、一旦生成され装置内部に付着すると人力による除去を行うしか除去方法がない。そのため、定期的にその除去作業を行なっており、その改善が強く望まれていた。
そこで、ジビニルベンゼンとスチレンが架橋した共重合体の生成を抑制し、スチレン製造装置・設備への該共重合体による汚れの付着を防止し、スチレン製造装置の運転に重大な問題を引き起こさないようにスチレンおよびその誘導体の重合抑制剤あるいは重合抑制方法が適用されてきた。具体的には、フェノール化合物、ニトロソフェノール化合物、ニトロフェノール化合物を用いるスチレンの重合抑制剤および重合抑制方法(例えば特許文献1参照)、ピペリジン−1−オキシル化合物を用いる方法(例えば、特許文献2参照)、ニトロフェノール化合物とピペリジン−1−オキシル化合物を用いる方法(例えば特許文献3参照)などがある。しかし、これらの重合抑制方法では、重合抑制剤の使用量を多くして対応しているが、依然としてジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物の架橋した共重合体の重合抑制に満足しうる効果を得ることはできず、その改善が強く望まれていた。
本発明は、芳香族ビニル化合物の蒸留工程、精製工程あるいは貯蔵工程において、芳香族ビニル化合物の製造によって生成したジビニルベンゼンあるいは芳香族ビニル化合物の製造原料に伴って混入したジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物を含む共重合体の生成を長時間に亘り効率的に重合を抑制し、さらに生成した前記共重合体の装置類・設備類への付着による汚れを抑制するジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物を含む共重合体の重合抑制方法を提供することにある。
本発明者らはジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物を含む共重合体の重合反応を詳細に検討した結果、従来から重合禁止剤として用いられているジニトロフェノール化合物の中でも2,6−ジニトロフェノール化合物が他のジニトロフェノール化合物よりも優れた重合抑制効果を持ち、この2,6−ジニトロフェノール化合物と特定のスルホン酸化合物とを同時に組み合わせて使用することにより、ジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物の架橋した共重合体の生成を著しく抑制することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本請求項1に係わる発明は、芳香族ビニル化合物の製造工程、精製工程あるいは貯蔵工程において、(A)一般式(1)(式中、R1は水素原子、炭素数1〜12の直鎖もしくは分岐のアルキル基およびアルキレン基を示す。)で表される2,6−ジニトロフェノール化合物と、(B)一般式(2)(式中、R2はヒドロキシル基、炭素数1〜32の直鎖もしくは分岐のアルキル基、少なくとも1つの炭素数1〜32の直鎖もしくは分岐のアルキル基を持つアルキルフェニル基あるいはアルキルナフチル基を示す。)で表されるスルホン酸化合物を同時に用いることを特徴とするジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物を含む共重合体の重合抑制方法である。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載のジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物を含む共重合体の重合抑制方法であり、(B)スルホン酸化合物が、硫酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸およびジノニルナフタレンスルホン酸から選ばれる1種以上であることを特徴としている。
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のいずれか記載のジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物を含む共重合体の重合抑制方法であり、(A)成分と(B)成分の重量比が99:1〜50:50で添加することを特徴とする。
本発明の方法により、芳香族ビニル化合物との製造工程、精製工程あるいは貯蔵工程において、芳香族ビニル化合物の製造工程、精製工程で生じるジビニルベンゼンあるいは芳香族ビニル化合物の製造に伴って当該工程で含まれてくるジビニルベンゼンと、芳香族ビニル化合物を含んで架橋した共重合体の生成を抑制し、該共重合体に起因する装置・設備中での汚れの発生と付着を抑制し、従来の重合体除去作業の低減・改善をもたらし、プロセスの流れの維持、熱伝導の維持、長期連続運転を可能にし、安全操業、製品の収率向上、さらには製品品質の向上も達成できる等の経済的効果が得られる。
本発明は、芳香族ビニル化合物の製造工程、精製工程および貯蔵工程において、従来から重合禁止剤として用いられているジニトロフェノール化合物の中でも、2,6−ジニトロフェノール化合物と特定のスルホン酸化合物とを組み合わせて使用することにより、芳香族ビニル化合物の製造に由来して生成したジビニルベンゼンと該芳香族ビニル化合物を含んで架橋した共重合体の生成抑制に優れた重合抑制方法であり、さらに該共重合体の生成を抑制することによって、芳香族ビニル化合物の製造工程、精製工程および貯蔵工程内の装置・設備への該共重合体の付着により生じる汚れを抑制するジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物を含む共重合抑制方法である。
一般に重合抑制方法としては、重合禁止法と重合抑制法に大別される。重合禁止法は、添加してから特定期間内の重合をほとんど起こらないようにするため、初期の重合抑制に優れているが、時間を経て該重合抑制剤が消耗されると、それ以後の重合抑制効果がなくなり、急速に重合が進む。一方、重合抑制法は、重合抑制剤を添加しても重合を完全に抑えることはできず、僅かながらも重合が起こっているが、長期間にわたって重合速度と重合速度の増加を抑えることができる。両者を厳密に区分することはできないが、通常、ジニトロフェノール化合物は重合抑制タイプの傾向が強いと考えられている。芳香族ビニル化合物を扱う工程では、滞留時間の長い個所がしばしば存在するので、一般的には重合抑制法が好ましく選ばれる。そのため、2,6−ジニトロフェノール化合物が、予想外の優れた重合抑制効果を有することは、芳香族ビニル化合物の重合抑制の向上に大きく寄与し、さらに特定のスルホン酸化合物と組み合わせて使用することにより、芳香族ビニル化合物の製造に由来するジビニルベンゼンと該芳香族ビニル化合物の共重合体の重合抑制効果の更なる向上に大きく寄与している。
本発明における芳香族ビニル化合物は、スチレン、炭素数1〜10のアルキル基を持つアルキルスチレン、α位に炭素数1〜10のフェニル基、アルキル基を持つα−アルキルスチレン、β位に炭素数1〜10のフェニル基、アルキル基を持つβ−アルキルスチレンなどの重合性ビニル基を持ったスチレンおよびスチレン誘導体である。具体的には、スチレン、メチルスチレン(オルト体、メタ体、パラ体およびこれらの混合物)、エチルスチレン(オルト体、メタ体、パラ体およびこれらの混合物)、プロピルスチレン(オルト体、メタ体、パラ体およびこれらの混合物)、ブチルスチレン(オルト体、メタ体、パラ体およびこれらの混合物)、オクチルスチレン(オルト体、メタ体、パラ体およびこれらの混合物)、ノニルスチレン(オルト体、メタ体、パラ体およびこれらの混合物)、デシルスチレン(オルト体、メタ体、パラ体およびこれらの混合物)、α−メチルスチレン(2−フェニルプロペン)、1−フェニル−1−プロペン(β−メチルスチレン:シス体、トランス体、およびその混合物)、2−フェニル−2−ブテン(シス体、トランス体、およびその混合物)、スチルベン(シス体、トランス体、およびその混合物)などがある。
本発明において対象となる工程は、芳香族ビニル化合物の製造工程、芳香族ビニル化合物製造後の精製工程、製造および精製した芳香族ビニル化合物を貯蔵・保管する貯蔵工程でジビニルベンゼンを含む当該工程、および各工程でジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物を含む工程液と接する付随装置類、付帯設備類、さらにこれらを含む循環系や回収系も包含する。具体的には、芳香族ビニル化合物製造工程におけるアルキル芳香族化合物の脱水素反応塔や合成反応塔、および反応後の反応物排出ラインや回収循環ライン、精製工程における精製塔への芳香族ビニル化合物のフィード配管や予熱ラインおよび冷却ラインさらに循環ライン、貯蔵工程における保管タンクや貯蔵タンク、移送タンクおよび輸送タンクさらにその移送ラインなどがある。
本発明におけるジビニルベンゼンは、芳香族ビニル化合物の製造の際に副生成物として生じたジビニルベンゼン、および芳香族ビニル化合物の製造の祭に使用する原料中に含まれて入ってきたジビニルベンゼンがあり、さらにジビニルベンゼンがメタ体、パラ体およびその混合物のいずれの形態のものであってもよい。
本発明におけるジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物を含む共重合体(以下、「共重合体」とする。)は、2つの重合性のビニル基を持ったジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物を含み、さらに架橋構造を持った共重合体であり、例えばジビニルベンゼン−スチレン共重合体が挙げられる。この架橋構造を持った共重合体は、芳香族ビニル化合物の製造工程〜貯蔵工程において、各工程内の装置類、配管類に付着、成長して汚れとなる。
本発明における(A)2,6−ジニトロフェノール化合物(以下「(A)成分」とする。)は、一般式(1)で表され、2位と6位の位置に2つのニトロ基を有するフェノール化合物である。また、式中、R1は水素原子、炭素数1〜12の直鎖もしくは分岐のアルキル基およびアルキレン基である。具体的には、2,6−ジニトロフェノール、2,6−ジニトロ−4−メチルフェノール、2,6−ジニトロ−4−エチルフェノール、2,6−ジニトロ−4−プロピルフェノール、2,6−ジニトロ−4−イソプロピルフェノール、2,6−ジニトロ−4−ブチルフェノール、2,6−ジニトロ−4−sec−ブチルフェノール、2,6−ジニトロ−4−tert−ブチルフェノール、2,6−ジニトロ−4−ペンチルフェノール、2,6−ジニトロ−4−へキシルフェノール、2,6−ジニトロ−4−オクチルフェノール、2,6−ジニトロ−4−デシルフェノール、2,6−ジニトロ−4−ドデシルフェノールなどがあり、好ましくは2,6−ジニトロフェノール、2,6−ジニトロ−4−メチルフェノール、2,6−ジニトロ−4−エチルフェノール、2,6−ジニトロ−4−sec−ブチルフェノール、2,6−ジニトロ−4−tert−ブチルフェノール、より好ましくは2,6−ジニトロフェノール、2,6−ジニトロ−4−メチルフェノール、2,6−ジニトロ−4−tert−ブチルフェノールである。これらの1種あるいは2種以上を用いることができる。
本発明において(A)成分は、従来、2,4−ジニトロフェノール化合物と同等の重合抑制効果を有すると考えられてきた。そのため、重合抑制剤として使用する場合には、通常、(A)成分と2,4−ジニトロフェノール化合物を分割して使用することはなく、両者の混合物や一方を主成分とし、他方を副成分する混合物の状態で使用していた。しかし、本発明者らは、芳香族ビニル化合物の重合抑制について研究を進める中で、予想外にも(A)成分が、2,4−ジニトロフェノール化合物よりも優れた重合抑制効果を有することを見出した。
本発明における(B)スルホン酸化合物(以下「(B)成分」とする。)は、一般式(2)で表され、式中、R2はヒドロキシル基、炭素数1〜32の直鎖もしくは分岐のアルキル基、少なくとも1つの炭素数1〜32の直鎖もしくは分岐のアルキル基を持つアルキルフェニル基あるいはアルキルナフチル基である。また、スルホン酸化合物としては、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属塩やカルシウム等のアルカリ土類金属塩及びアミンと塩もしくは錯体を形成していない、遊離のスルホン酸化合物であれば、如何なる化合物でも使用可能である。具体的には、硫酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸等が挙げられ、好ましくは芳香族ビニル化合物への溶解性、価格等からペンタデシルスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸であり、これらの1種あるいは2種以上が用いられる。
本発明の架橋した共重合体の重合抑制方法をエチルベンゼンの脱水素反応によるスチレンの生成を例に取り、説明する(図1参照)。
スチレンはエチルベンゼンの触媒による脱水素反応により生成し、生成したスチレンとエチルベンゼンの混合物はフィード油(1)として蒸留塔(4)の中央部に送られる。蒸留塔(4)では、供給されたフィード油(1)中の未反応エチルベンゼン(12)が、減圧下で蒸留塔塔頂より分離回収され、再び脱水素反応に用いられる。一方、エチルベンゼンよりも沸点の高いスチレンと少量のジビニルベンゼンはともに塔底液として蒸留塔塔底部に溜まる。蒸留塔塔底部は、通常、2つに仕切られ、1つは塔底液貯留部(6)、他は塔底液貯留部(6)からオーバーフローして次段の蒸留塔(14)へのフィード油となる塔底液の回収貯留部(10)である。塔底液貯留部(6)は蒸留塔(4)に隣接した蒸発器(リボイラー)(8)と蒸発器フィードライン(7)で連結され、さらに蒸発器(リボイラー)(8)は蒸留塔(4)中央部に連結されている。塔底液貯留部(6)の塔底液は、蒸発器フィードライン(7)を通して蒸発器(8)に流れ込み、加熱されて気化し、再度、蒸留塔(4)内に入り、低沸点のエチルベンゼン(沸点136℃/1気圧)は蒸留分離され、それ以外の高沸点物は再び蒸留塔塔底部に戻る。通常、蒸発器(リボイラー)は多数の金属製細管束でできており、その細管内を塔底液が流れ、細管外部はスチーム等でエチルベンゼンの沸点(136℃/1気圧)以上に加熱される。蒸留塔塔底の回収貯留部(10)に溜まったスチレンと少量のジビニルベンゼンを含む塔底液は、蒸留塔フィードライン(11)を通り、次段のフィード油として、蒸留塔(14)中央部に導かれ、含まれるスチレン(沸点145℃/1気圧)は蒸留塔塔頂より減圧下で蒸留分離される。未蒸留分は流下して蒸留塔塔底貯留部(16)に溜まり、蒸発器フィードライン(19)を通り、蒸発器(18)にてスチレンの沸点以上に加熱されて気化し、配管を通り再び蒸留塔(14)中央部より蒸留塔に入り、残存しているスチレンは再度、塔頂より蒸留分離される。また、蒸留塔塔底の回収部(20)に溜まったスチレンと少量のジビニルベンゼンを含む塔底液は、蒸留塔フィードライン(21)を通り、2段目のスチレン蒸留塔(24)のフィード油として供給される。2段目のスチレン蒸留塔(24)では、前段と同様に蒸留塔塔頂からスチレン(32)が回収される。同時に配管(33)を通して、スチレン(32)を前段の蒸留塔(14)の中央部に戻して再度、減圧下で蒸留が行なわれる。このように蒸留塔を複数連結して蒸留を繰り返すことにより、エチルベンゼンの回収と生成スチレンの回収・精製が行なわれる。一方、蒸留塔塔底回収貯留部に溜まった蒸留残渣は、次段の蒸留塔のフィード油として供給されるが、最終的にはタール分として廃棄(多くの場合、燃焼処理)される。その間、生成した共重合体が蒸留工程内で生成する。特に最も温度の高くなる蒸発器(リボイラー)の金属細管内の気液界面で架橋した共重合体が最も生成しやすく、しかも短時間で生成することが知られている。生成した共重合体は、蒸留できないために蒸留塔塔底部に溜まり、複数段の蒸留・精製を繰り返すうちに徐々に増加し、時として蒸留工程の最終蒸留塔塔底部(塔底液貯留部及び回収貯留部)の共重合体濃度が30重量%程度となる場合もある。
本発明において、(A)成分と(B)成分の添加場所は、通常、ジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物が共重合し、架橋化物を生成する箇所より上流のプロセスに添加する。例えば、前述のエチルベンゼンの脱水素反応によるスチレンの製造の場合、(A)成分と(B)成分の添加箇所として、蒸留塔フィードライン(2)、(11)および(21)に対応するそれぞれの添加注入ライン(3)、(12)および(22);蒸留塔塔頂部添加注入ラインの(5)、(15)および(24);塔底液貯留部(6)、(16)および(25)への添加;蒸留塔塔底液貯留部と蒸発器(リボイラー)を連結する蒸発器フィードラインへ添加する添加注入ライン(9)、(19)および(26)等の添加箇所があり、適宜選択して決定される。
本発明における(A)成分と(B)成分の添加方法は、特に限定されるものではないが、通常、特定の箇所に一括添加するか、あるいは複数の箇所に分けて添加するなどの方法が適宜選択される。この際、(A)成分と(B)成分をそれぞれ別々に添加する方法、あるいは(A)成分と(B)成分を適切な添加量の比で、そのプロセス流体と同じ液体、例えばスチレンの場合にはエチルベンゼンや粗スチレンに溶解して添加する方法があり、いずれを用いても良い。
本発明の重合抑制方法は、(A)成分と(B)成分を同時に用いることでそれぞれ単独では得られないような優れた重合抑制効果を発揮する重合抑制方法であり、要求される重合抑制の程度に応じて(A)成分と(B)成分の添加量を適宜、決定すれば良いが、通常、(A)成分と(B)成分の添加量比は、重量比として99:1〜50:50、好ましくは95:5〜60:40、より好ましくは90:10〜70:30である。
(A)成分の該工程への添加量は、対象とする工程の条件、重合体生成抑制の必要度などにより異なり、一律に決められるものではないが、対象とする芳香族ビニル化合物に対して、通常、(A)成分を1〜3、000ppm、好ましくは10〜2、000ppm、さらに好ましくは100〜1、000ppmである。また、(B)成分の該工程への添加量は、対象とする工程の条件、重合体生成抑制の必要度などにより異なり、一律に決められるものではないが、対象とする芳香族ビニル化合物に対して、通常、(B)成分を1〜3、000ppm、好ましくは10〜2、000ppm、さらに好ましくは100〜1、000ppmである。それぞれの添加量は、対象とする芳香族ビニル化合物の樹脂生成抑制効果を発揮する上で適当な範囲として見出されたものであり、この範囲より小さいと効果が充分に発揮されない場合があり、また、この範囲より多くと、効果は充分に発揮されるが、添加量に見合うだけの重合抑制効果の向上が得られず、経済的見地から好ましくない場合がある。
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲においてその他公知重合抑制剤を併せて用いることがあるが、本発明はなんら制限を加えるものではない。
実施例によって、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例になんら限定されるものではない。
〔(A)成分:2,6−ジニトロフェノール化合物〕
・26DNP:2,6−ジニトロフェノール
・26DNPC:2,6−ジニトロ−4−メチルフェノール
・26DNP:2,6−ジニトロフェノール
・26DNPC:2,6−ジニトロ−4−メチルフェノール
〔(B)成分:スルホン酸化合物〕
・XSA:キシレンスルホン酸
・CSA:クメンスルホン酸
・DDBSA:ドデシルベンゼンスルホン酸
・XSA:キシレンスルホン酸
・CSA:クメンスルホン酸
・DDBSA:ドデシルベンゼンスルホン酸
〔2,4−ジニトロフェノール化合物〕
・24DNP:2,4−ジニトロフェノール
・24DNOC:2,4−ジニトロ−6−メチルフェノール
・24DNP:2,4−ジニトロフェノール
・24DNOC:2,4−ジニトロ−6−メチルフェノール
〔重合抑制試験〕
スチレンモノマー、ジビニルベンゼン(メタ体、パラ体の混合物)、エチルビニルベンゼン、ジエチルベンゼンをそれぞれアルカリ洗浄して、それぞれに含まれる重合抑制剤を除き、水洗、乾燥した。還流冷却器を備えた4つ口セパラブルフラスコにスチレンモノマー50.0g、ジビニルベンゼン(メタ体、パラ体の混合物)27.5g、エチルビニルベンゼン11.3g、ジエチルベンゼン11.3gを入れ、重合抑制剤を全試料量に対して所定量加え(各薬剤の配合割合は同表に示した)、高純度窒素ガスを30分間吹き込んで溶存酸素を除き、試験液を作成した。次いで内部のテストチューブ(重量Ag)が200℃に加熱された二重管に、試験液を定量ポンプにて導入し、液温度を170℃に保持した。60分後にテストチューブの加熱を終了し、二重管からテストチューブを取り出し、樹脂が付着したテストチューブの重量(重量Bg)を測定した。試験液の加熱により生じた付着樹脂生成量を「B−A」(mg)として求めた。本試験において、ジビニルベンゼンを含まない試験液の場合、生成する樹脂はポリスチレンであり、ポリスチレンは試験に使用している試験液に溶解し、テストチューブに付着しない。一方、スチレン−ジビニルベンゼン重合体は架橋した重合体であるため、試験液に溶解せず、テストチューブに付着して付着樹脂生成物となる。試験の得られた結果を表1に示す。
スチレンモノマー、ジビニルベンゼン(メタ体、パラ体の混合物)、エチルビニルベンゼン、ジエチルベンゼンをそれぞれアルカリ洗浄して、それぞれに含まれる重合抑制剤を除き、水洗、乾燥した。還流冷却器を備えた4つ口セパラブルフラスコにスチレンモノマー50.0g、ジビニルベンゼン(メタ体、パラ体の混合物)27.5g、エチルビニルベンゼン11.3g、ジエチルベンゼン11.3gを入れ、重合抑制剤を全試料量に対して所定量加え(各薬剤の配合割合は同表に示した)、高純度窒素ガスを30分間吹き込んで溶存酸素を除き、試験液を作成した。次いで内部のテストチューブ(重量Ag)が200℃に加熱された二重管に、試験液を定量ポンプにて導入し、液温度を170℃に保持した。60分後にテストチューブの加熱を終了し、二重管からテストチューブを取り出し、樹脂が付着したテストチューブの重量(重量Bg)を測定した。試験液の加熱により生じた付着樹脂生成量を「B−A」(mg)として求めた。本試験において、ジビニルベンゼンを含まない試験液の場合、生成する樹脂はポリスチレンであり、ポリスチレンは試験に使用している試験液に溶解し、テストチューブに付着しない。一方、スチレン−ジビニルベンゼン重合体は架橋した重合体であるため、試験液に溶解せず、テストチューブに付着して付着樹脂生成物となる。試験の得られた結果を表1に示す。
1:エチルベンゼン脱水素反応後のスチレン含有フィード油
2:エチルベンゼン脱水素反応後のスチレン含有フィード油の蒸留塔フィードライン
3:蒸留塔フィードラインへの添加注入ライン
4:蒸留塔
5:蒸留塔塔頂部添加注入ライン
6:蒸留塔塔底貯留部
7:蒸発器フィードライン
8:蒸発器
9:蒸発器手前添加注入ライン
10:蒸留塔塔底回収部
11:蒸留塔フィードライン
12:エチルベンゼン
13:蒸留塔フィードラインへの添加注入ライン
14:蒸留塔
15:蒸留塔塔頂部添加注入ライン
16:蒸留塔塔底貯留部
17:蒸発器フィードライン
18:蒸発器
19:蒸発器フィードラインへの添加注入ライン
20:蒸留塔塔底回収部
21:蒸留塔フィードライン
22:スチレン
23:蒸留塔
24:蒸留塔塔頂部添加注入ライン
25:蒸留塔塔底貯留部
26:蒸発器フィードラインへの添加注入ライン
27:蒸発器
28:蒸発器フィードライン
29:蒸留塔塔底回収部
30:蒸留塔塔底液排出ライン
31:タール
32:スチレン
33:スチレン
2:エチルベンゼン脱水素反応後のスチレン含有フィード油の蒸留塔フィードライン
3:蒸留塔フィードラインへの添加注入ライン
4:蒸留塔
5:蒸留塔塔頂部添加注入ライン
6:蒸留塔塔底貯留部
7:蒸発器フィードライン
8:蒸発器
9:蒸発器手前添加注入ライン
10:蒸留塔塔底回収部
11:蒸留塔フィードライン
12:エチルベンゼン
13:蒸留塔フィードラインへの添加注入ライン
14:蒸留塔
15:蒸留塔塔頂部添加注入ライン
16:蒸留塔塔底貯留部
17:蒸発器フィードライン
18:蒸発器
19:蒸発器フィードラインへの添加注入ライン
20:蒸留塔塔底回収部
21:蒸留塔フィードライン
22:スチレン
23:蒸留塔
24:蒸留塔塔頂部添加注入ライン
25:蒸留塔塔底貯留部
26:蒸発器フィードラインへの添加注入ライン
27:蒸発器
28:蒸発器フィードライン
29:蒸留塔塔底回収部
30:蒸留塔塔底液排出ライン
31:タール
32:スチレン
33:スチレン
Claims (4)
- (A)2,6−ジニトロフェノール化合物が、2,6−ジニトロフェノール、2,6−ジニトロ−4−メチルフェノール、2,6−ジニトロ−4−エチルフェノール、2,6−ジニトロ−4−sec−ブチルフェノール、2,6−ジニトロ−4−tert−ブチルフェノールから選ばれる1種以上である請求項1記載のジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物を含む共重合体の重合抑制方法。
- (B)スルホン酸化合物が、硫酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸およびジノニルナフタレンスルホン酸から選ばれる1種以上である請求項1又は2記載のジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物を含む共重合体の重合抑制方法。
- (A)成分と(B)成分の重量比が99:1〜50:50で添加することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか記載のジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物を含む共重合体の重合抑制方法。
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JP2004379573A JP2006182717A (ja) | 2004-12-28 | 2004-12-28 | ジビニルベンゼンと芳香族ビニル化合物を含む共重合体の重合抑制方法 |
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JP2003012708A (ja) * | 2001-04-25 | 2003-01-15 | Hakuto Co Ltd | 芳香族ビニル化合物の重合抑制方法 |
JP2003286206A (ja) * | 2002-03-29 | 2003-10-10 | Denki Kagaku Kogyo Kk | ジビニルベンゼンを含有するスチレン類の重合抑制方法 |
-
2004
- 2004-12-28 JP JP2004379573A patent/JP2006182717A/ja active Pending
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JP2003286206A (ja) * | 2002-03-29 | 2003-10-10 | Denki Kagaku Kogyo Kk | ジビニルベンゼンを含有するスチレン類の重合抑制方法 |
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