JPWO2006049259A1 - パターンド磁気記録媒体の設計方法およびパターンド磁気記録媒体 - Google Patents

パターンド磁気記録媒体の設計方法およびパターンド磁気記録媒体 Download PDF

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Abstract

垂直方向に磁気異方性を持ち,ドット状にパターン化された磁性膜を含むパターンド磁気記録媒体を設計する方法であって,ドットパターン周期Px,Py,膜厚t,熱磁気安定性指数Kn,最小ドット間スペーシングSo,最大記録磁界Hmを設定し,飽和磁化Msの初期値を設定し,磁化反転開始磁界Hnを求め,抗磁力Hcおよび飽和磁界Hsを見積もり,飽和磁界Hsが最大記録磁界Hm未満となるように前記ステップを繰り返し,所望の条件を満足する磁気特性Ms,Hn,Hcを決定する。

Description

本発明は,パターン化された磁性膜を有するパターンド磁気記録媒体を設計する方法,およびパターンド磁気記録媒体に関する。このようなパターンド磁気記録媒体は,コンピュータ,ビデオレコーダ等の各種記録機器に搭載される磁気記録装置に適用される。
磁気記録装置の記録密度を高める技術として,垂直磁気記録方式が注目されている。この方式では垂直方向に磁気異方性を持つ微粒子構造の磁性薄膜が記録媒体として用いられ,情報が磁気ヘッドにより微小な磁化パターンとして記録される。垂直磁気記録方式は,磁化転移を境に隣接する磁化が反平行に結合するため,面内磁気記録方式と比較すると,熱磁気緩和に対してより安定な記録状態を維持することが可能となり,より高密度化が可能となる。
しかし,垂直磁気記録方式といえども面内磁気記録方式と同様に,記録ビット長が小さくなるのに対応して,記録媒体の微粒子の寸法もその1/10ほどに小さくする必要があり,これに伴い磁性粒子が保持する磁気エネルギーの低下により熱磁気緩和の影響が現れてくる。磁性粒子の磁気エネルギーを大きくするには磁性体の磁気異方性を大きくすることが有効であるが,記録の際の磁化反転に必要な磁界強度も大きくなってしまい,現実の磁気ヘッドでの記録が出来なくなってしまうという問題があった。
この磁気記録媒体の熱磁気緩和現象による限界をブレークスルーする方法として,磁性ドットの面積をビットの大きさとするパターンド磁気記録媒体が提案されている(Charles T.Rettner,Margaret E.Best,and Bruce D.Terris,“Patterning of Granular Magnetic Media with a Focused Ion Beam to Produce Single−Domain Islands at > 140 Gbit/in,”IEEE Transactions on Magnetics,vol.37,no.4,pp.1649−1651,July 2001;および青山勉,佐藤勇武,石尾俊二,「パターンド磁気記録媒体の作製方法と磁気的特性」,応用物理,第72巻,第3号,2003年参照)。パターンド磁気記録媒体は,磁性ドットの面積をビットの大きさとすることで磁気エネルギーを飛躍的に大きくでき,磁気異方性を大きくすることなしに熱磁気安定性を確保できるようになる。しかし,従来,パターンド磁気記録媒体に関して,熱磁気安定性,記録容易性,作製の容易さ,および記録時のヘッドのトラック幅方向のシフト許容量を総合的に考慮した設計手法は知られておらず,またパターンド磁気記録媒体の最適な構造も知られていない。パターンド磁気記録媒体では,よりトラック幅が小さくなりトラッキング精度が要求される。にもかかわらず,面記録密度1Tbit/inを目指したパターンド磁気記録媒体でも,単に熱磁気安定性と記録条件を満たすことが検討されているだけであるか,または目的の密度を満たす磁性ドットの寸法が検討されているだけにすぎない。
上述したように,パターンド磁気記録媒体では,所望の記録密度を実現する磁性ドットパターンが熱磁気安定性,記録の容易性,および作製の容易さを兼ね備え,かつ記録時のヘッドのトラック幅方向のシフト許容量を広くするように,磁性膜の磁気特性,寸法,膜厚を設計する必要がある。
本発明の目的は,所望の記録密度を実現する磁性ドットパターンが熱磁気安定性,記録の容易性,および作製の容易さを兼ね備え,かつ記録時のヘッドのトラック幅方向のシフト許容量を広くするように,磁性膜の磁気特性を簡易に決定することができる設計方法を提供することにある。本発明の他の目的は,上述した特性を兼ね備えたパターンド磁気記録媒体を提供することにある。
本発明によれば,垂直方向に磁気異方性を持ち,ドット状にパターン化された磁性膜を含むパターンド磁気記録媒体を設計する方法であって,
x方向およびy方向のドットパターン周期P,P,膜厚t,熱磁気安定性指数K,最小ドット間スペーシングS,最大記録磁界Hを設定し,
飽和磁化Mの初期値を設定し,
ドットのx方向寸法aと磁化反転開始磁界Hを,次式a=P−S,H=2K*kT/(a*M*γ*t)[ここに,k:ボルツマン定数,T:絶対温度,γ:x方向のドット寸法に対するy方向のドット寸法の比である]に従って求め,(a,γa,t)なる形状の磁性体ドットの垂直方向M−Hループの傾きαを,次式α=4π/(N+ΔH/M)[ここに,Nは磁性ドットの垂直方向の反磁界係数,ΔHは抗磁力Hのパターンド磁気記録媒体内での分布幅である]に従って求め,抗磁力H=H+(4πM/α)と飽和磁界H=H+(8πM/α)を見積もり,
求めた飽和磁界Hが最大記録磁界H未満であるか否かを判断し,飽和磁界Hが最大記録磁界H以上である場合には,飽和磁化Mの値を増加させて前記ステップを繰り返し,所望の条件を満足する磁気特性M,H,Hを決定する方法が提供される。
また,本発明によれば,垂直方向に磁気異方性を持つ磁性ドットがパターン化されて記録トラックを形成しているパターンド磁気記録媒体であって,前記磁性ドットは,膜厚tが15nm以下であり,トラック幅方向のドット寸法aがトラック幅方向のドットパターン周期の1/2以下であり,飽和磁化Mが650emu/cmより大きく,飽和磁界Hが18kOeより小さく,かつ磁化反転開始磁界H(Oe)が下記式
≧140*k*300/MV=4.2×10/M
[kはボルツマン定数(erg/deg),Vは磁性ドットの体積(cm)である]
の関係を満たすパターンド磁気記録媒体が提供される。
本発明のパターンド磁気記録媒体において,前記磁性ドットは,トラック長手方向のドット寸法bがトラック幅方向のドット寸法aより大きい,という異方形状を有していることが好ましい。
垂直磁気異方性膜の垂直方向M−Hループを示す図。 本発明方法を示すフローチャート図。 種々の寸法の正方ドットを含むパターンド磁気記録媒体について,飽和磁界Hの飽和磁化M依存性を示す図。 実施例4におけるパターンド磁気記録媒体および磁気ヘッドを示す断面図。 正方ドットを有するパターンド磁気記録媒体の平面図。 参照例のシミュレーションにより得られた垂直方向残留磁化曲線と残留磁化反転開始磁界Hrn,残留飽和磁界Hrs,および残留抗磁力Hrcを説明する図。 記録シミュレーションに用いたヘッド磁界のx,y方向の分布を示す図。 参照例,No.1およびNo.2のパターンド磁気記録媒体について,記録磁界の反転位置のトラック長手方向シフト量による記録ビットの誤り率の変化を示す図。 参照例,No.1およびNo.2のパターンド磁気記録媒体について,記録磁界の反転位置のトラック幅方向シフト量による隣接トラックのビット誤り率の変化を示す図。 磁性ドット膜厚を10nm,残留磁化反転開始磁界Hを11kOeと仮定した場合に,300Kで熱磁気安定性指数E/kTを70より大きくするのに必要なドット寸法の飽和磁化依存性を示す図。 異方形状の磁性ドットを有するパターンド磁気記録媒体の平面図。 参照例およびNo.4〜8のパターンド磁気記録媒体について,記録磁界の反転位置のトラック長手方向シフト量による記録ビットの誤り率の変化を示す図。 参照例およびNo.4〜8のパターンド磁気記録媒体について,記録磁界の反転位置のトラック幅方向シフト量による隣接トラックのビット誤り率の変化を示す図。 参照例およびNo.1〜8のパターンド磁気記録媒体について,トラック長手方向およびトラック幅方向におけるシフト許容量のドット寸法依存性を示す図。 異方形状の磁性ドットを有するパターンド磁気記録媒体について,トラック長手方向およびトラック幅方向における印加磁界の角度依存性を説明する図。
以下,本発明をより詳細に説明する。
本発明に係るパターンド磁気記録媒体の設計方法においては,初めに面記録密度を決めるx方向およびy方向のドットパターン周期P,P熱磁気安定性を決定する熱磁気安定性指数K,ならびにドットパターンの作り易さを決定する膜厚tおよび最小ドット間スペーシングSを設定する。その後,飽和磁化Mの初期値を設定する。
次いで,熱磁気特性を満たす磁化反転開始磁界H(より正確には残留磁化反転開始磁界Hrn)を求め,これを満足する異方性磁界Hを求める。さらに飽和磁界Hを求め,Hが最大記録磁界H以下となるようにM,H,H(またはHrn)を求める。ここで,垂直磁気異方性膜の垂直方向のM−Hループを図1に示す。この図1には磁化反転開始磁界H,抗磁力Hおよび飽和磁界H表示している。以下,これらの磁気特性の簡易な求め方を説明する。
まず,ドットのx方向寸法aと磁化反転開始磁界Hを次式
a=P−S,および
≧2K*kT/(a*M*γ*t),または
rn≧2K*kT/(MV)
[ここに,k:ボルツマン定数,T:絶対温度,γ:x方向のドット寸法に対するy方向のドット寸法の比,V:磁性ドットの体積である]に従って求める。
次に,(a,γa,t)なる形状の磁性体ドットの垂直方向M−Hループの傾きαを次式
α=4π(dM/dH)〜4π/(N+ΔH/M
[ここに,Nは磁性ドットの垂直方向の反磁界係数,ΔHは抗磁力Hのパターンド磁気記録媒体内での分布幅である]に従って求める。
さらに,抗磁力H=H+(4πM/α)と飽和磁界H=H+(8πM/α)を見積もる。
なお,異方性磁界Hを設定してシミュレーションによりM−Hループ,または残留磁化曲線を求め,磁化反転開始磁界H,または残留磁化反転開始磁界Hrnを求め,このHまたはHrnが上記の式によって求められた値となるようにHを調整し,再度のシミュレーションにより得られたM−HループよりHとHを求めてもよい。
次いで,求めた飽和磁界Hが最大記録磁界H未満であるか否かを判断する。飽和磁界Hが最大記録磁界H未満である場合には,所望の条件を満足する磁気特性M,H,Hを決定して終了する。一方,飽和磁界Hが最大記録磁界H以上である場合には,飽和磁化Mの値を増加させて前記ステップを繰り返し,飽和磁界Hが最大記録磁界H未満となるようにして,所望の条件を満足する磁気特性M,H,Hを決定して終了する。
図2に本発明方法をフローチャートとして示す。図2を参照して,パターンド磁気記録媒体の設計方法をより具体的に説明する。
(S1)面記録密度1Tbit/inを正方格子ドットパターンで実現しようとすると,パターン周期はP=P=25nmとなる。3年間以上の熱磁気安定性を十分確保しようとすると,熱磁気安定性指数K=E/kT[Eは磁性ドットの磁気エネルギーである]を60から80の値とすればよいことが知られている(Naoki HONDA and Kazuhiro OUCHI,“Time Dependence of Magnetic Properties in Perpendicular Recording Media,”IEICE Trans.Electron.,vol.E80−C,no.9,pp.1180−1186,Sep.1997.参照)。磁性膜の加工プロセスを考慮すると,膜厚tとして10nm程度,最小ドット間スペーシングSとして10nm程度がおよその制限値と考えられる。
(S2)飽和磁化Mの初期値を設定する。この初期値は任意に設定できる。たとえば磁性膜としてCo−Pt−Cr系合金を用いる場合,Mの初期値として400〜600emu/cmの値を設定する。
(S3)磁性ドットのx方向寸法aと磁化反転開始磁界Hを次式(1),(2)に従って求める。
a=P−S (1)
=2K*kT/(a*M*γ*t) (2)
[ここに,k:ボルツマン定数,T:絶対温度,γ:x方向のドット寸法に対するy方向のドット寸法の比であり,正方ドットの場合はγ=1である]。なお,Tについては,室温から実際に使用が想定される上限温度の70℃の間の値を絶対温度で用いる。
(S4)磁性ドットの垂直方向M−Hループの傾きαを次式
α=4π(dM/dH)〜4π/(N+ΔH/M
[ここに,Nは磁性ドットの垂直方向の反磁界係数,ΔHは抗磁力Hのパターンド磁気記録媒体内での分布幅である]に従って求める。
垂直方向反磁界係数Nは四角柱を近似的に回転楕円体として簡易に見積もることができる。即ち,
ε=t/(γa1/2とした時,ε>1,ε=1,ε<1に応じて,
ε>1の場合:N=4π[1/(ε−1)]{[ε/(ε−1)1/2]ln(ε+(ε−1)1/2)−1}
ε=1の場合:N=4π/3
ε<1の場合:N=4π−4π{[ε/(1−ε3/2]sin−1(1−ε1/2−[ε/(1−ε)]}
として求めることができる(例えば,近角總信,「強磁性体の物理(上)」,裳華房,東京,昭和53年,p.15参照)。
また,抗磁力Hの分布幅ΔHは,磁化反転開始磁界Hの20%程度と見積もることができる。
そして,H=H+(4πM/α)とH=H+(8πM/α)として,抗磁力Hと飽和磁界Hを見積もる。
上述したように,このステップでは,異方性磁界Hを設定してシミュレーションによりM−Hループを求め,磁化反転開始磁界Hを求め,このHが設定値となるようにHを調整する方法によりHとHを求めてもよい。
(S5)求まった飽和磁界Hが最大記録磁界H未満かどうか判断する。飽和磁界Hが最大記録磁界H未満である場合には,所望の条件を満足する磁気特性M,H,Hを決定して終了する。一方,飽和磁界Hが最大記録磁界H以上である場合には,ステップS2へ戻り,飽和磁化Mの値を適度に増加させ,その後の各ステップを繰り返すことにより,飽和磁界Hが最大記録磁界H未満となるようにして,所望の条件を満足する磁気特性M,H,Hを決定して終了する。これにより磁気特性を設計することができる。即ち,熱磁気安定性および記録と加工の容易さを兼ね備えた目標記録密度のパターンド記録媒体の磁気特性(飽和磁化M,磁化反転開始磁界H,抗磁力H)が決定される。
以上のように本設計法によれば,熱磁気安定性および記録と加工の容易さを兼ね備えた目標記録密度のパターンド記録媒体の磁気特性と寸法を容易に見出すことができる。
なお,本発明においては,膜厚tが15nm以下であり,トラック幅方向での最小ドット間スペーシングSがドットパターン周期の1/2より大きく,かつ飽和磁化Mが650emu/cmより大きいという条件でパターンド磁気記録媒体を設計することが好ましい。ここで,膜厚tの下限値は磁性膜として有効に機能する厚さで規定され,2nm以上であることが好ましい。最小ドット間スペーシングSのドットパターン周期に対する比率の上限値は,実際的な磁気特性となる最小ドットサイズが5nm×5nmとして,所望の記録密度が得られる範囲によって規定される。飽和磁化Mの上限値は特に限定されず,使用できる磁性材料の最大飽和磁化によって制限される。
実施例
以下,本発明を実施例に基づいて説明する。
[実施例1]
正方ドットを含む,面記録密度1Tbit/inのパターンド磁気記録媒体を設計した例について説明する。
まず,パターン周期PおよびPを25nm,3年間以上の熱磁気安定性を確保するため熱磁気安定性指数K=E/kTを60(Eは磁性ドットの磁気エネルギー),膜厚tを11nm,最小ドット間スペーシングSを18nm,最大記録磁界Hを20kOeと設定した。また,飽和磁化Mの初期値を600emu/cmと設定した。
次に,磁性ドットの寸法aと磁化反転開始磁界Hを,それぞれ次式(3),(4)
a=P−S=7(nm) (3)
=2K*kT/(a*M*γ*t) (4)
[ここに,k:ボルツマン定数,T:絶対温度,γ:x方向のドット寸法に対するy方向のドット寸法の比であり,正方ドットなのでγ=1である]に従って求めた。Tが293K(20℃)のとき,K≧60に必要なHは15kOeとなった。
次に,(x方向寸法7nm,y方向寸法7nm,膜厚11nm)なる形状の磁性ドットの垂直方向M−Hループの傾きαを,次式
α=4π/(N+ΔH/M
[ここに,Nは磁性ドットの垂直方向の反磁界係数,ΔHは抗磁力Hのパターンド磁気記録媒体内での分布幅である]に従って求めた。このとき,垂直方向反磁界係数Nは,四角柱ドットを近似的に回転楕円体として見積もった。即ち,ε=t/(γa1/2としたとき,ε>1であるので次式
=4π[1/(ε−1)]{[ε/(ε−1)1/2]ln(ε+(ε−1)1/2)−1}
に従って,Nは2.8となった。また,抗磁力Hの分布幅ΔHをHの20%とした。これらの値を用いたとき,α=4π/(N+ΔH/M)=1.6となった。さらに,H=H+(4πM/α),H=H+(8πM/α)として抗磁力Hと飽和磁界Hを見積もった。この結果,Hは19.7kOe,Hは24.4kOeと見積もられた。
ここで求まった飽和磁界Hは,目標とした最大記録磁界H=20kOeより大きいので,飽和磁化Mを大きくする必要があることが分かった。
そこで,図2のS2に戻り,Mを700emu/cmに再設定して,再びH,α,H,Hを求めると,それぞれ12.9kOe,1.9,17.4kOe,21.9kOeとなった。このように,まだH<Hの条件は満たせないので,飽和磁化Mをより大きくする必要があることが分かった。
そこで,図2のS2に戻り,Mを850emu/cmに再設定して,再びH,α,H,Hを求めると,H,α,H,Hがそれぞれ10.6kOe,2.4,15.1kOe,19.6kOeとなった。この場合,H<Hの条件を満たすので,磁気特性M,H,Hを決定することができる。
即ち,パターン周期25nm,ドット寸法7nm×7nm,膜厚11nmで,磁気特性をM=850emu/cm,H=10.6kOe,H=15.4kOeとしてパターンド磁気記録媒体を設計できた。これが熱磁気安定性,および記録と加工の容易さを兼ね備えた目標記録密度のパターンド磁気記録媒体の仕様となる。
なお,以上のような条件を満たす磁性材料としては,Co−Pt系合金たとえばCo−Pt−Cr系合金や,Fe−Pt規則合金が挙げられる。
Co−Pt系合金たとえばCo−Pt−Cr系合金は,組成を調整することにより,飽和磁化Mを約300〜1400emu/cmの範囲,高い抗磁力Hまたは残留抗磁力Hrcを実現するのに必要な磁気異方性定数Kを約5×10〜1.4×10erg/cmの範囲で調整することができ,飽和磁化Mが1000emu/cmでも異方性磁界H(=2K/M)が25kOe以上を示すことが知られており,上記の設計を実現するのに十分な磁気特性を有する。
Fe−Pt規則合金は,飽和磁化Mが1000emu/cm以上,磁気異方性定数Kが5×10erg/cm以上であり,異方性磁界Hは100kOe以上を示し得ることが知られており,上記の設計を実現するのに十分な磁気特性を有する。
次に,上記で設計したパターンド磁気記録媒体の磁気特性仕様をマイクロマグネティックシミュレーションで調べた。シミュレーションソフトとしてEuxine Technologies社(Dayton,Ohio,USA)の「Advanced Recording Model,ver.6」を使用した。膜面垂直方向に磁気異方性を持つ膜厚11nmの7nm正方ドットをドット間スペーシング18nmで64×64の格子状に配置し,飽和磁化Mを850emu/cm,垂直異方性磁界Hの分散を10%,異方性軸の配向分散を1.5度として垂直方向のM−Hループをシミュレーションで得た。このとき,記録磁界を高めるために用いられる軟磁性裏打層はミラーイメージ層として取り込んだ。また,計算はエネルギー平衡法で行い,時間依存性は考慮していない。したがって,得られたM−Hループは記録過程に相当する短時間での磁化挙動と見做すことができる。
垂直異方性磁界Hを19kOeとしたシミュレーションにより,抗磁力H=14.7kOe,ループ傾きα=2.1,磁化反転開始磁界H=9.6kOe,飽和磁界H=19.8kOeが得られ,ほぼ上記で求めた値に近い磁気特性を得ることができた。
[実施例2]
正方ドットを含む,面記録密度1Tbit/inのパターンド磁気記録媒体を,最大記録磁界Hをより実際的な18kOeとして設計した例について説明する。
実施例1と同じく,パターン周期PおよびPを25nm,熱磁気安定性指数K=E/kTを60,膜厚tを11nm,最小ドット間スペーシングSを18nmとした。本実施例でも飽和磁化Mの初期値を600emu/cmに設定した。
この条件で,式(3),(4)により,Tが293K(20℃)のとき,K≧60に必要な磁化反転磁界Hは15kOeとなった。
次に,(7nm,7nm,11nm)なる形状を有する磁性ドットの垂直方向M−Hループの傾きα=4π/(N+ΔH/M)を求め,さらにHおよびHを見積もったところ,H=19.7kOe,H=24.4kOeとなった。この飽和磁界Hは仮定した最大記録磁界H=18kOeより遥かに大きいので,飽和磁化Mを大幅に増す必要があることがわかる。
そこで,Mを1050emu/cmに増加させて,再びH,H,Hを求めると,H=8.6kOe,H=13.2kOe,H=17.9kOeとなった。即ち,パターン周期25nm,ドット寸法7nm×7nm,膜厚11nmで,磁気特性をM=1050emu/cm,H=8.6kOe,H=13.2kOeとしてパターンド磁気記録媒体を設計できた。
[実施例3]
種々の寸法の正方ドットを含む,面記録密度1Tbit/inのパターンド磁気記録媒体を設計し,飽和磁界Hの飽和磁化M依存性を調べた例について説明する。
パターン周期を25nm,膜厚tを11−15nm,ドット間スペーシングSを15−16nmとした。一方,実施例1より厳しい条件として熱磁気安定性指数K=E/kTを70,温度を343K(70℃)とした。そして,飽和磁化Mによる飽和磁界Hの違いを逐次的に求めた。図3に,膜厚tおよびドット間スペーシングSを以下の3つの場合に設定したときの,HのM依存性を示す。
(a)t=11nm,S=15nm,
(b)t=12nm,S=16nm,および
(c)t=15nm,S=18nm。
飽和磁化Mを650emu/cmより大きくすることで,膜厚tが15nm以下で,かつドット間スペーシングSがドットパターン周期の1/2よりも大きな範囲で,本発明方法に従って飽和磁界Hを18kOe未満に設計できる領域があることがわかる。
即ち,膜厚tが15nm以下とできることは,パターン形成でのエッチング加工を容易にすることができる。また,ドット間スペーシングをパターン周期の1/2よりも大きくできることは,微細加工の分解能による制限を緩和できることになる。
[実施例4]
トラック幅方向のドット寸法aがトラック幅方向のドットパターン周期の1/2以下であり,トラック長手方向のドット寸法bがトラック幅方向のドット寸法aより大きい,という異方形状を有する磁性ドットを含むパターンド磁気記録媒体について説明する。
本実施例のパターンド磁気記録媒体は,磁性ドットについてトラック幅方向のドット寸法をトラック幅方向のドットパターン周期の1/2以下と規定することにより,(1)記録時の隣接トラックへの影響を抑えられるという効果を有する。さらに,本実施例のパターンド磁気記録媒体は,磁性ドットについてトラック長手方向のドット寸法がトラック幅方向のドット寸法より大きい異方形状を有すると規定することにより,(2)正方ドットよりも体積を増加させることで熱磁気安定性を維持しながらも必要な磁化反転磁界を抑えられるという効果,(3)正方ドットと等しい体積を維持しつつ膜厚を抑えることで磁気ヘッドの発生磁界を高めることができ,ヘッドの設計が容易になるという効果,(4)トラック長手方向とトラック幅方向とで残留抗磁力に差が生じ,トラック幅方向のシフト許容量を増加できる効果を有する。
図4に本実施例に係るパターンド磁気記録媒体の概略断面図を示す。図4において,基板1上には軟磁性裏打層2が形成されており,軟磁性裏打層2上にピッチPで規則的に垂直記録層である磁性ドット3が形成されている。磁性ドットは2次元的に規則的に配列され,記録トラックを形成している。図4は説明を目的としているため基板,軟磁性裏打層,および磁性ドットしか示していないが,他の層を設けてもよい。例えば,基板と軟磁性裏打層との間に下地層を設けてもよいし,軟磁性裏打層と磁性ドットとの間に中間層を設けてもよい。磁性ドット間には,非磁性体を埋め込んでもよい。磁性ドット上には,通常,保護層および潤滑層が形成される。
以下,本実施例のパターンド磁気記録媒体の設計をマイクロマグネティックシミュレーションに基づいて行った手法について説明する。
図2を参照してすでに説明したように,パターンド磁気記録媒体の設計においては,初めに面記録密度を決めるx,y方向(トラック長手方向をx方向,トラック幅方向をy方向とする)のドットパターン周期P,P,飽和磁化M,熱磁気安定性を決定する熱磁気安定性指数K,および磁気ヘッドの発生磁界を制限する膜厚tを設定する。
まず,所望の面記録密度が1Tbit/inの正方格子ドットでは,ドットパターン周期PおよびPは25nmとなる。
次に,熱磁気安定性を決定する熱磁気安定性指数Kを設定する。Kは垂直方向の残留磁化反転開始磁界をH,磁性ドットの体積をVとすると,下記式(A)
(1/2)MV/kT>K (A)
(ここで,k:ボルツマン定数,T:絶対温度である)で表される。式(A)の左辺の分子は磁性ドットの磁気エネルギーE(E=(1/2)MV)であり,式(A)の左辺はE/kTとも表される。式(A)の左辺の分母は熱擾乱エネルギーである。この熱磁気安定性指数Kを60以上とすることにより,設定室温での3年間以上の熱磁気安定性が確保される,即ち熱擾乱によるビットエラー率か10−5以下となる(既述のIEICE Trans.Electron.,vol.E80−C,no.9,pp.1180−1186,Sep.1997.参照。ただし,ここではより正確な指標となる残留磁化での磁化反転開始磁界Hを用いる。)。シミュレーションにおいては,実装置で要求される,より高温の70℃での熱磁気安定性を得るためにT=300Kに対してのKを70以上と設定する。これにより,70℃でもK>60が確保される。式(A)から,磁性ドットの体積Vを増加させることで,熱磁気安定性指数Kを維持しつつ必要な磁化反転開始磁界Hを抑えることができることがわかる。
式(A)において磁性ドットの体積Vは,磁性ドットのx方向(トラック長手方向)の寸法をb,y方向(トラック幅方向)の寸法をa,膜厚をtとしたとき,V=abtとなる(楕円体形状などの場合は体積をそのまま用いる)。ここで膜厚tを設定する。図4にはパターンド磁気記録媒体上に配置される磁気ヘッド11を示している。磁気ヘッドの発生磁界を大きくするためには,ヘッド磁極先端面と軟磁性裏打層表面との距離を磁極幅の半分程度以下とする必要がある。このため,磁極幅を25nmとして,記録層の膜厚を12nm以下に設定する。
最初に,図5に示すように,正方磁性ドットを形成したパターンド磁気記録媒体について記録特性をマイクロマグネティックシミュレーションで調べた。図5の媒体は,面記録密度1Tbit/in,即ちx,y方向のパターン周期PおよびPを25nmとして,正方格子状に,x方向の寸法b,y方向の寸法aが共に7.5nm,膜厚が10nmである正方磁性ドットを形成したものである。図5で示されるスケールの単位はμmである。x方向の寸法bおよびy方向の寸法aを7.5nmとしたのは,このような寸法の磁性ドットであれば記録時の隣接トラックへの影響を抑えられると予測したためである。以下,このパターンド磁気記録媒体を参照例と呼ぶ。
この参照例の媒体を,上記と同様に,Euxine Technologies社(Dayton,Ohio,USA)の「Advanced Recording Model,ver.6」を使用してシミュレーションした。各磁性ドットを一辺2.5nmの立方体要素に分割してモデル化した。各立方体要素間には交換スティフネス定数A〜1×10−6erg/cmで交換結合が働くとした。これにより,ドット内で磁化の向きが異なる非一斉磁化回転モードも含んだ現実に近いシミュレーションとなっている。立方体要素のパラメーターは,飽和磁化M=1000emg/cm,垂直異方性磁界H=15kOe,その分散(標準偏差)σH=15%,異方性軸の配向分散σθ=2度とした。これらの条件の下で垂直方向残留磁化曲線および単磁極磁気ヘッドによる記録磁化をシミュレーションで得た。このとき,軟磁性裏打層はミラーイメージ層として取り込んだ。また,計算はエネルギー平衡法で行い,時間依存性は考慮していない。したがって,得られた磁化曲線は記録過程に相当する短時間での磁化挙動と見做すことができる。また記録磁化も記録直後の状態を表すが,磁性ドットの磁気エネルギーEと熱擾乱エネルギーkTの比Kを70以上としているので熱磁気緩和による経時変化は無視できる。
図6に,このシミュレーションで得られた垂直方向残留磁化曲線を示す。図6において,Hは残留磁化反転開始磁界,Hrcは残留抗磁力,Hrsは残留飽和磁界をそれぞれ示す。図6から,参照例の媒体の残留磁化反転磁界Hrnは12kOeであることがわかる。
参照例の媒体について磁極寸法が25nm×25nmの単磁極型記録ヘッドを用いたときの記録特性を調べた。ヘッド磁界の一例を図7に示す。このヘッド磁界により,中央トラックの中心に沿って移動量12.5nm毎に磁界を反転させて一定周期のビットパターンを記録する。ドット間の中央で磁界を反転させることで,中央トラック上の磁性ドットの磁化を一つ置きに反転させることができる。即ち,ビット長12.5nmで25個の磁化パターンを誤りなく記録できる。
次に,寸法bおよびaをそれぞれ12.5nm,15nm,17.5nmと変化させた正方磁性ドット(No.1,No.2およびNo.3)を有する媒体を3種類想定した。これら3種の正方磁性ドットについて,膜厚tをそれぞれ5nm,2.5nm,2.5nmとし,垂直異方性磁界Hをそれぞれ15kOe,22kOe,19kOeとした。それ以外のパラメーターについては参照例と同様とし,シミュレーションを行って記録特性を調べた。表1に,参照例を含む4種類の磁性ドットの寸法およびそれぞれの磁気特性をまとめて示す。これらのドットの体積Vとシミュレーションによって得た残留磁化曲線より求めた残留磁化反転磁界Hrnとの積HrnVは全て6190nmkOe以上となっており,室温での熱磁気安定性指数Kが70以上となるように選定している。
Figure 2006049259
次に,ヘッド磁界の反転位置をトラック長手方向にずらせた時のビット誤り率を,参照例及びNo.1〜3のパターンド磁気記録媒体について調べたところ図8のようになった。図8において,x方向の寸法(b)をD,y方向の寸法(a)をDと表示している(他の図においても図8と同様に表示している場合がある)。図8から明らかなように,ドット寸法がドット周期の1/2まで(No.1)はビット誤りがゼロの範囲は参照例と同じ15nmであった。しかし,ドット寸法がドット周期の1/2より大きくなると,No.2では誤りのない範囲は狭くなり,No.3ではビット誤り率がゼロとなる場合がなかった。
同様に,記録磁界をトラック幅方向にずらした場合の隣接トラックの磁化反転による隣接トラックでのビット誤り率を調べた。図9に示すように,トラック幅方向では2.5nm以上の記録磁界のずれに対しても隣接トラックの磁化が影響を受けており,位置ずれに対する許容量は±2.5nmほどしかなく,参照例も含めトラック長手方向に比べて非常に小さい。なお,図8に示したようにNo.3は目的トラックでのビット誤りがゼロとなる場合がなかったので,図9では除外している。また,やはりドットのトラック幅方向の寸法aがドット周期の1/2を超えると隣接トラックへの影響も大きくなることがわかる。
このように,トラック幅方向の位置ずれ許容量は小さいので,トラック幅方向のドット寸法aはトラック幅方向のドットパターン周期Pの1/2以下とすべきであることがわかる。それに対し,トラック長手方向の位置ずれに対する許容量はトラック幅方向の位置ずれに対する許容量よりも大きいため,トラック長手方向の寸法をトラック幅方向の寸法よりも大きくすることができる。
さらに,Hrn=11kOeとしてE/kT>70(T=300K)を満たす正方ドット寸法aの飽和磁化M依存性を図10に示す。図10から,y方向のドット寸法aをパターン周期25nmの1/2程度以下とするには,飽和磁化Mが300emu/cm以上であればよいことがわかる。ただし,ドット寸法が参照例と等しい7.5mmでは650emu/cm以上の飽和磁化が必要である。
次に,上記の正方磁性ドットでの結果を考慮して,トラック幅方向の寸法aをトラック幅方向のドットパターン周期Pの1/2以下(ここでは参照例と等しい7.5nm)とし,トラック長手方向の寸法bをトラック幅方向の寸法aより長い12.5〜22.5nmとした異方形状の磁性ドットを有するパターンド磁気記録媒体(No.4〜8)を想定し,その記録特性をマイクロマグネティックシミュレーションで調べた。シミュレーションの対象となる7.5nm×15nmの異方形状の磁性ドットを有するNo.5のパターンド磁気記録媒体の概略図を図11に示す。図11で示されるスケールの単位はμmである。シミュレーション条件はドット形状を除き,上記と同様とした。表2に,参照例を含む6種類のパターンド磁気記録媒体のドット寸法および磁気特性を示す。
Figure 2006049259
以下,上記のシミュレーションに基づいて,参照例を基準として,No.4〜8のドット寸法および体積Vと,磁化反転開始磁界Hrnとの関係を評価する。
参照例とNo.4を比較する。No.4は,参照例のドットのy方向の寸法および膜厚の寸法を変えることなく,x方向の寸法を12.5nmに変えたものである。No.4は参照例の約1.67倍(5/3)の体積を有し,それに伴い熱磁気安定性に必要な磁化反転開始磁界Hrnを12kOeから7.2kOeに減少させることができる。このように,トラック長手方向の寸法bをトラック幅方向の寸法aよりも大きな値に設定することにより,x,y方向のドット寸法が等しくaである場合に比べ,面積が概略b/a倍となるのでその分ドットの体積が増し,体積の増分に相当する量だけ磁化反転開始磁界Hrnを小さくしても熱磁気安定性は変わらない。
参照例とNo.5〜8を比較する。No.5は,参照例のドットのy方向の寸法を変えることなく,x方向の寸法を15nm,つまり参照例の2倍にし,膜厚を参照例の半分にしたものである。No.5は膜厚が参照例の半分であるものの,参照例の体積を維持し,磁化反転開始磁界Hrnの増加を抑えることができる。No.6〜8も体積をほぼ一定としてHrnをできるだけそろえたものである。このように,x,y方向のドット寸法が等しくaである場合に比べ,面積が概略b/a倍となるので,体積を元とほぼ同じに保ったまま膜厚を薄くすることができ,磁気ヘッドの発生磁界を高めることができる。
表2に示すNo.4〜8の異方形状ドットを有するパターンド磁気記録媒体について,上述したのと同じ磁極寸法を持つ単磁極ヘッドによる記録を行った。中央トラックの中心に沿ってビット長12.5nmの信号を記録するにあたり,磁界反転位置をトラック長手方向にずらした時のビット誤り率の変化を図12に示す。No.4はドットの膜厚が参照例と同じで,長手方向の寸法を12.5nmとして体積を増しているが,参照例と同じく15nmのトラック長手方向のシフト許容量が確保されている。即ち,シフト許容量が変わらずに,熱磁気安定性に必要な残留磁化反転開始磁界Hrnを7.2kOeと小さくでき,必要な記録磁界強度を低減できる。No.5はトラック長手方向の寸法を参照例の2倍とし,体積を同じとするため膜厚を半分の5nmとしているが,参照例と同じく15nmのトラック長手方向のシフト許容量が確保されている。この場合,膜厚の減少分だけ記録ヘッドの先端部分と媒体の軟磁性裏打層までの距離が縮まるため,高い記録磁界を発生しやすく,ヘッドの設計が容易となる。No.6〜8は膜厚をNo.5と同じにしてbを大きくし,体積増加に応じてHrnを小さくしたものである。図12に示すように,シフト許容量の減少は2.5nmとわずかである。
また,トラック幅方向への記録磁界のシフトによる隣接トラックへの影響を調べたところ,図13に示すように,いずれの異方形状ドットの場合も参照例と同等以上のシフト許容量が得られることがわかった。
図14に,表1および表2に示した磁性ドットについて,トラック長手方向およびトラック幅方向におけるシフト許容量のドット寸法依存性をまとめて示す。図14において,実線は正方ドット,破線は異方形状ドットを示している。正方ドットの場合,ドット寸法を大きくすると,トラック長手方向のシフト許容量が急激に低下する。これに対して,異方形状ドットの場合,ドット寸法を大きくしても,実質的にトラック長手方向のシフト許容量を維持できる。正方ドットの場合,ドット寸法にかかわらず,トラック幅方向のシフト許容量はほぼ一定である。これに対して,異方形状ドットの場合,ドット寸法の大きさに応じてトラック幅方向のシフト許容量を参照例の1〜2倍にすることができる。ここで,No.8はトラック幅方向のシフト許容量が参照例と同じであるが,表2に示すように膜厚を半分にでき,かつ磁化反転開始磁界Hrnも70%以下にできる点で有利である。要するに,磁性ドットを異方形状とすることで,熱磁気安定性とトラック長手方向シフト許容量を維持でき,かつ,トラック幅方向のシフト許容量を1〜2倍にでき,一方で磁化反転開始磁界Hrnを小さくして記録し易い媒体とするか,または膜厚を薄くして記録ヘッドの磁界を発生しやすくすることができることが分かる。
以上のようにトラック長手方向に伸びたドット形状とした場合にシフト許容量が増加する原因について説明する。図15に印加磁界角度θ,φ(deg)と残留磁化抗磁力Hrc(kOe)の関係を示す(ドット寸法:7.5nm×15nm×5nm)。印加磁界角度θ,φは図11に示すように,それぞれトラック幅方向およびトラック長手方向への印加磁界の傾きを示す。図15から明らかなように,異方性形状のパターンド記録媒体において,残留抗磁力Hrcの印加磁界角度依存性はトラック幅方向とトラック長手方向で異なる。つまり,ドットが異方形状であれば,トラック長手方向ではHrcが低下し記録しやすくなる一方,トラック幅方向では逆にHrcが増加して隣接トラックの磁化反転が起きにくくなり,トラック幅方向のシフト許容量が増すことになる。この効果は磁性ドットの形状異方性が増すほど大きくなるので,ドット形状の寸法比が増すほど,また磁性ドットの材料の飽和磁化Mが大きくなるほど大きくなる。つまり,ドットのx方向の寸法bをドットのy方向の寸法aよりも大きくするに伴い,記録ヘッドによる隣接トラックへの記録が生じないトラック幅方向の変動許容量をより増加させることが可能となる。なお,本実施例では長方形の磁性ドットを例に示したが,磁性ドットの異方形状は長方形に限られるものではなく,楕円形や半円形などであっても,トラック幅方向と長手方向で形状に差が生じるものであればよい。形状異方性による効果はドット形状を回転楕円体と見做して簡易に凡その値を見積もることができる(既述の近角總信,「強磁性体の物理(上)」,裳華房,東京,昭和53年,p.15参照)。また,トラック長手方向のずれ許容量が相対的に大きいので,トラック長手方向にパターン周期を小さくして高密度化することもできる。
以上説明したように本実施例によれば,パターンド記録媒体の磁性ドットについて,ドットのy方向(トラック幅方向)の寸法aをa≦P/2(Pはy方向のドットパターン周期)とし,ドットのx方向(トラック長手方向)の寸法bをaよりも大きくすることにより,所望の記録密度を実現する磁性ドットパターンが所望の熱磁気安定性と記録の容易性および記録時のトラック幅方向のシフト許容量の広さを兼ね備えたパターンド磁気記録媒体を提供することができる。形状異方性については,トラック幅方向のドット寸法aに対するトラック長手方向のドット寸法bの比b/aが1.15以上であれば10%以上の効果を期待できる。一方,a<Py/3と小さくした場合でも,b/aは3以下に制限される。

Claims (5)

  1. 垂直方向に磁気異方性を持ち,ドット状にパターン化された磁性膜を含むパターンド磁気記録媒体を設計する方法であって,
    x方向およびy方向のドットパターン周期P,P,膜厚t,熱磁気安定性指数K,最小ドット間スペーシングS,最大記録磁界Hを設定し,
    飽和磁化Mの初期値を設定し,
    ドットのx方向寸法aと磁化反転開始磁界Hを,次式
    a=P−S
    =2K*kT/(a*M*γ*t)
    [k:ボルツマン定数,T:絶対温度,γ:x方向のドット寸法に対するy方向のドット寸法の比である]
    に従って求め,
    (a,γa,t)なる形状の磁性体ドットの垂直方向M−Hループの傾きαを,次式
    α=4π/(N+ΔH/M
    [Nは磁性ドットの垂直方向の反磁界係数,ΔHは抗磁力Hのパターンド磁気記録媒体内での分布幅である]
    に従って求め,抗磁力H=H+(4πM/α)と飽和磁界H=H+(8πM/α)を見積もり,
    求めた飽和磁界Hが最大記録磁界H未満であるか否かを判断し,飽和磁界Hが最大記録磁界H以上である場合には,飽和磁化Mの値を増加させて前記ステップを繰り返し,所望の条件を満足する磁気特性M,H,Hを決定することを特徴とするパターンド磁気記録媒体の設計方法。
  2. 垂直方向に磁気異方性を持つ磁性ドットがパターン化されて記録トラックを形成しているパターンド磁気記録媒体であって,前記磁性ドットは,膜厚tが15nm以下であり,トラック幅方向のドット寸法aがドットパターン周期の1/2以下であり,飽和磁化Mが650emu/cmより大きく,飽和磁界Hが18kOeより小さく,かつ磁化反転開始磁界H(Oe)が下記式
    ≧4.2×10/M
    [kはボルツマン定数(erg/deg),Vは磁性ドットの体積(cm)である]
    の関係を満たすことを特徴とするパターンド磁気記録媒体。
  3. 前記磁性ドットは,トラック長手方向のドット寸法bがトラック幅方向のドット寸法aより大きい,という異方形状を有することを特徴とする請求項2に記載のパターンド磁気記録媒体。
  4. 前記磁性ドットは,トラック幅方向の寸法aに対するトラック長手方向の寸法bの比b/aが1.15≦b/a≦3を満たすことを特徴とする請求項3に記載のパターンド磁気記録媒体。
  5. 前記磁性ドットは,Co−Pt系合金またはFe−Pt規則合金で形成されていることを特徴とする請求項2に記載のパターンド磁気記録媒体。
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