JP4998329B2 - 磁気記録媒体、および磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents

磁気記録媒体、および磁気記録媒体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、磁化の向きで情報が記録される磁気記録媒体、および、そのような磁気記録媒体を製造する磁気記録媒体の製造方法に関する。
コンピュータの分野では、日常的に多量の情報が取り扱われるようになっており、このような多量の情報を記録再生する装置の1つとして、ハードディスク装置(HDD:Hard Disk Drive)が使用されている。このHDDには、情報が記録されるディスク状の磁気記録媒体である磁気ディスクが内蔵されている。磁気ディスクとしては、従来、非磁性材料からなるディスク上に連続的な磁性層が形成された連続媒体の磁気ディスクが知られている。このタイプの磁気ディスクでは、磁性層を構成する結晶粒の集合体からなる磁区に、各結晶粒に生じる磁化の向きで情報が記録される。
ここで、磁気ディスクに記録された情報の長期保存を妨げる現象の1つに、熱揺らぎと呼ばれる現象がある。熱揺らぎは、磁性粒子における磁化の向きが、外部の熱エネルギーの影響により不安定となってしまう現象であり、磁性粒子が小さいほど顕著に現れる。近年では、磁気ディスクの分野で高記録密度化が進み、磁性層を構成する結晶粒が微細化される傾向にあり熱揺らぎが大きな問題となっている。
各磁区における磁化を、磁気ディスクのディスク面に対する垂直方向に向けることで情報を記録するいわゆる垂直磁気記録方式は、従来、熱揺らぎに強い記録方式として知られておりHDDの分野における現行の主流技術となっている。しかし、磁気ディスクに対する高記録密度化の要望は依然として強く、一層の高記録密度化のために結晶粒がさらに微細化されると垂直磁気記録方式でも熱揺らぎに対抗することが困難となってしまう。
そこで、記録密度をさらに高めつつ熱揺らぎに強い磁気ディスクの一例として、以下に説明するパターンドメディアと呼ばれるタイプの磁気ディスクが提案されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
図1は、パターンドメディアの磁気ディスクの一例を示す模式図である。
図1のパート(a)には、垂直磁気記録方式で情報が記録されるパターンドメディアの磁気ディスク500と、その磁気ディスク500に対して情報の読み書きを行なう磁気ヘッド551(パート(b)に図示)が先端に搭載されたヘッドジンバルアセンブリ550とが示されている。また、パート(b)には、パート(a)に示す磁気ディスク500における領域Dの拡大図が示されている。
図1のパート(b)に示すように、パターンドメディアの磁気ディスク500は、複数の微小磁性体(ドット)502を有している。各ドット502は、1つの結晶粒が成形されたもの、あるいは、磁気的に強く結合した複数の結晶粒の集合体であって磁気的に1つの結晶粒のように振舞う集合体が成形されたものである。
また、ここでの例では、各ドット502には、磁気ヘッド551によって情報が垂直磁気記録方式で読み書きされる。これは、各ドット502に、上記の結晶粒における結晶構造を利用して、ドット502内の磁化が磁気ディスク500の表面に対して垂直な方向を向くときに最も安定となるような異方性(結晶異方性)を持たせることで実現されている。これにより、各ドット502は、図中に示す磁化Mのように、磁気ディスク500の表面に対して垂直で一様な磁化を個別に保持する。そして、磁気ディスク500では、これら複数のドット502が、非磁性材料のディスク501上に、同心円状に複数列に亘って配列されることで、パート(a)に示すように複数本のトラック510が形成されている。
情報の読み書きの際には、ヘッドジンバルアセンブリ550が、図中の矢印R1が示す方向に回動することでトラッキングが行なわれ、先端の磁気ヘッド551が、情報の読取り対象あるいは記録対称のトラック510の上に配置される。この状態で、磁気ディスク500が、矢印R2が示す方向に回転すると、磁気ヘッド551の下を、その対象のトラック510を形成する複数のドット502が順次に通過する。そして、磁気ヘッド551が、直下を通過するドット502における磁化の向きを検出することで情報の読取りが行われ、磁気ヘッド551が、直下を通過するドット502に磁界を印加してそのドット502における磁化をその磁界の向きに応じた向きに向かせることで情報の記録が行われる。
図1のパート(b)には、隣り合う3本のトラック510それぞれにおけるドット502の配列と、磁気ヘッド551が、それら3本のトラック510のうち中央のトラック510を情報の読取り対象あるいは記録対称として、そのトラック510の上方に配置された様子が示されている。
ここで、情報の最小単位が複数の結晶粒の集合体に記録される上記の連続媒体の磁気ディスクとは異なり、パターンドメディアの磁気ディスク500では、情報の最小単位が上記のドット502に記録される。このドット502は、1つの結晶粒そのもの、あるいは、1つの結晶粒として振る舞うものである。このため、各ドット502の微細化を図って高記録密度化を測りつつも、熱揺らぎに対する耐性に影響する結晶粒の大きさについては、上記の連続媒体の磁気ディスクにおける結晶粒の大きさよりも大きくすることができる。一般に、パターンドメディアの磁気ディスクでは、連続媒体の磁気ディスクが有する記録密度と同程度の記録密度を、連続媒体の磁気ディスクにおける結晶粒の大きさの数倍から数十倍の大きさの結晶粒で実現し、熱揺らぎに対する非常に強い耐性を得ることができる。
特開平9−297918号公報 特開平10−334460号公報
図1に示すパターンドメディアの磁気ディスク500では、ドット502における、磁気ディスク500の半径に沿う方向(半径方向)の幅Wは、トラック510の幅に相当するが、トラック510の幅は磁気ヘッド551のサイズによって制限される。このため、高記録密度化を狙ってドット502の微細化を図るに際し、半径方向の幅Wをある程度以上に狭くすることは困難である。このため、パターンドメディアの磁気ディスク500では、ドット502における、磁気ディスク500の中心周りを周回する方向(周方向)の幅Lを狭くすることで、ドット502の微細化が図られている。一般に、パターンドメディアの磁気ディスクでは、各ドットにおける、半径方向の幅Wに対する周方向の幅Lの比であるビットアスペクト比(BAR)として、「2」から「3」程度が採用されることが多い。
ところで、このように形状に偏りのある磁性体には、上述した結晶異方性とは別に、その形状の偏りに依存した異方性(形状異方性)が生じる。以下、図1に示すパターンドメディアの磁気ディスク500のドット502が有する形状異方性について説明する。
図2は、図1のドット502が有する形状異方性について説明する図である。
上述したように、ドット502は、周方向の幅Lが半径方向の幅Wよりも狭い直方体形状の磁性体となっている。直方体形状の磁性体では、磁化は、短手側よりも長手側に向き易い。一般に、結晶異方性の方が形状異方性よりも強いので、ドット502内の磁化Mは、図中に示す座標系におけるZ軸に相当する、磁気ディスク500の表面に対して垂直な方向を向く。その上で、この磁化Mは、ドット502の形状異方性に起因して、図中に示す座標系におけるZ−X面内で回転する矢印R3が示す回転方向、即ち、ドット502の短手側に回転する回転方向よりも、Z−Y面内で回転する矢印R4が示す回転方向、即ち、長手側に回転する回転方向に反転し易い状態となっている。
ここで、上述したように、情報の記録の際には、トラッキングにより磁気ヘッド551が情報の記録対象のトラック510の上方に配置される。そして、磁気ヘッド551は、直下を通過するその対象のトラック510に属するドット502に磁界を印加してそのドット502における磁化をその磁界の向きに応じた向きに向かせる。磁気ヘッド551から印加される磁界は、一般的にZ軸方向成分のみでなく、磁気ディスクの表面に平行な方向(X軸方向もしくはY軸方向)の成分を有し、これらの合成磁界によって記録が行われる。すなわち、磁気ヘッド551の先端から磁気ディスクへ放射状に傾いた磁界が印加されるため、記録対象のトラック510に属するドットには、ほぼZ−X面内でZ軸に対して傾いた、矢印R3が示す相対的に反転させ難い方向に磁化Mを反転させる磁界が磁気ヘッド551から印加されることとなる。
図3は、磁気ヘッド551が、直下を通過するドット502に磁界を印加する様子を示す模式図である。
この図3には、磁気ヘッド551による情報の記録対象のトラック(センタートラック)510_1に属するドット(センタードット)502_1と、センタートラック510_1に隣り合う2本のトラック(サイドトラック)510_2,510_3それぞれに属しセンタードット502_1に隣り合う2つのドット(サイドドット)502_2,502_3が示されている。
上述したように、情報の記録時には、センタードット502_1に、磁気ヘッド551からほぼZ−X面内でZ軸に対して傾いた磁界H1が印加されることとなる。その結果、このセンタードット502_1の磁化M1には、その磁化M1をZ−X面内で矢印R5が示す方向に反転させようする作用が働く。
このとき、磁気ヘッド551からは、センタードット502_1の周辺に漏れ磁界H2,H3が印加される。図中左側のサイドドット502_2には、ほぼZ−Y面内で左下がりに傾いた漏れ磁界H2が印加され、図中右側のサイドドット502_3には、ほぼZ−Y面内で右下がりに傾いた漏れ磁界H3が印加される。その結果、左側のサイドドット502_2の磁化M2には、その磁化M2をZ−Y面内で矢印R6が示す方向に反転させようする作用が働き、右側のサイドドット502_3の磁化M3には、その磁化M3をZ−Y面内で矢印R7が示す方向に反転させようする作用が働く。
ここで、上述したように、Z−Y面内での反転方向は、各ドット502の形状異方性により磁化Mが反転し易い方向である。その結果、上記の漏れ磁界H2,H3自体は小さな磁界であったとしても、上記のような反転のし易さから、左側のサイドドット502_2の磁化M2と、右側のサイドドット502_3の磁化M3とが、この漏れ磁界H2,H3に過敏に反応して反転してしまう恐れが生じる。
つまり、以上に説明した従来のパターンドメディアでは、ドットの形状異方性に起因して、情報の記録時に既存の記録情報が破壊されてしまうおそれがある。
尚、ここまで、垂直磁気記録方式のパターンドメディアを例に挙げ、情報の記録時に既存の記録情報が破壊されてしまうという問題について説明したが、このような問題は、垂直磁気記録方式のパターンドメディアに限らず、磁化を記録ディスクの面内方向に向かせて情報を記録する水平磁気記録方式のパターンドメディアでも同様に生じ得る問題である。また、上記では、既存の記録情報の破壊の例として、ドットの形状異方性に起因して、サイドトラックのドット内の磁化が漏れ磁界に過敏に反応して反転してしまうという例について説明したが、漏れ磁界による磁化の反転は、ドットが形状異方性を持っていなくても、例えば、情報の記録密度を上げるためにトラック間隔が非常に狭く、サイドトラックのドット内の磁化が漏れ磁界の影響を受け易い場合等にも起こり得る事態である。
本発明は、上記事情に鑑み、既存の記録情報に影響を与えることなく情報を記録することができるパターンドメディア(磁気記録媒体)と、そのような磁気記録媒体を製造する磁気記録媒体の製造方法とを提供することを目的とする。
上記目的を達成する磁気記録媒体の基本形態は、
各々トラック幅方向に間欠的に配列され、記録方向について磁気的な連続膜からなる記録トラックと、
上記記録トラック内において、上記記録方向に沿って間欠的に設けられた複数の記録ドットと、
上記記録方向に沿って上記記録ドットと交互に設けられ、単位面積あたりの磁気モーメントが上記記録ドットの磁気モーメントよりも小さいスペースドットと、
を有することを特徴とする。
上記基本形態の磁気記録媒体は、上記記録ドットが上記ベース上に配列されたいわゆるパターンドメディアに相当する。この基本形態では、上記記録ドットと交互に設けられているスペースドットが、上記のような単位面積当たりの磁気モーメントを有していることから若干の磁性を帯びている。このことは、パターンドメディアの特徴の1つである各記録ドットの個別性が保たれたまま、記録ドットにおける上記記録方向の長さが、上記スペースドットの磁気モーメントに相当する分だけ延び、この記録ドットに、内部の磁化が上記記録方向に反転し易いという形状異方性が付与されたとみなすことができる。その結果、上記記録ドット内の磁化は、この新たに付与された形状異方性の分だけ、上記記録トラックに直交する上記トラック幅方向に磁化を反転させるような磁界に対して鈍感になる。これにより、例えば、ある記録ドットに情報が記録される際に、周辺の他の記録ドットに、磁化を上記トラック幅方向に反転させるような漏れ磁界が印加されたとしても、上記基本形態によれば、そのような漏れ磁界による磁化の反転が回避される。このように、上記基本形態の磁気記録媒体によれば、既存の記録情報に影響を与えることなく情報を記録することができる。
ここで、上記磁気記録媒体は、
「上記記録ドットと上記スペースドットは、ともに同じ膜厚である」という応用形態であっても良い。
この応用形態では、上記スペースドットは、例えば、上記記録ドットと同じ膜厚の磁性体に対してイオンドーピング等を施すことにより、単位面積当たりの磁気モーメントを上記記録ドットの磁気モーメントよりも下げることによって形成されることとなる。
また、上記磁気記録媒体の基本形態に対し、
「上記スペースドットは上記記録ドットよりも膜厚が薄い」という応用形態は好適である。
この好適な応用形態によれば、上記記録ドットの磁気モーメントよりも小さい、上記スペースドットの単位面積当たりの磁気モーメントを、上記膜厚が薄いという簡単な構造で得ることができる。
また、上記目的を達成する磁気記録媒体の製造方法の基本形態は、
基板上に磁性層を成膜し、
上記磁性層にトラック幅方向に沿って複数の溝を形成し、
上記溝を非磁性体で埋め、
上記磁性層上に記録方向に沿って間欠的にレジストパターンを形成し、
上記レジストパターンから露出する上記磁性層の磁気モーメントを減少させる
ことを特徴とする。
上記基本形態の磁気記録媒体の製造方法によれば、レジストパターンで覆われた磁性層の部分を記録ドットとしたパターンドメディアを得ることができる。ここで、上記基本形態の磁気記録媒体の製造方法によれば、上記レジストパターンから露出する上記磁性層に磁気モーメントが残される。このことは、最終的に形成される記録ドットの個別性が保たれたまま、この記録ドットに、内部の磁化が上記記録方向に反転し易いという形状異方性が付与されたとみなすことができる。その結果、その記録ドット内の磁化は、この新たに付与された形状異方性の分だけ、上記トラック幅方向に磁化を反転させるような磁界に対して鈍感になる。これにより、この基本形態の磁気記録媒体の製造方法で得られる磁気記録媒体では、既存の記録情報に影響を与えることなく情報が記録されることとなる。つまり、上記基本形態の磁気記録媒体の製造方法によれば、既存の記録情報に影響を与えることなく情報を記録することができる磁気記録媒体を得ることができる。
ここで、上記磁気記録媒体の製造方法の基本形態に対し、
「上記レジストパターンから露出する上記磁性層にイオンドーピングすることにより、この磁性層の磁気モーメントを減少させる」という応用形態や、
「上記レジストパターンから露出する磁性層を部分的に除去することにより、この磁性層の磁気モーメントを減少させる」という応用形態は好適である。
これらの好適な応用形態によれば、上記イオンドーピングや上記磁性層の部分的な除去という簡単な処理により、上記磁性層の磁気モーメントを確実に減少させることができる。
以上、説明したように、磁気記録媒体の基本形態によれば、既存の記録情報に影響を与えることなく情報を記録することができ、磁気記録媒体の製造方法の基本形態によれば、そのような磁気記録媒体を製造することができる。
基本形態および応用形態について上記に説明した磁気記録媒体、および磁気記録媒体の製造方法に対する具体的な実施形態を、以下図面を参照して説明する。
まず、磁気記録媒体の具体的な第1実施形態について説明する。
図4は、磁気記録媒体の具体的な第1実施形態であるパターンドメディアの磁気ディスクを示す図である。
図4のパート(a)には、垂直磁気記録方式で情報が記録されるパターンドメディアの磁気ディスク100と、その磁気ディスク100に対して情報の読み書きを行なう磁気ヘッド151(パート(b)に図示)が先端に搭載されたヘッドジンバルアセンブリ150とが示されている。また、パート(b)には、パート(a)に示す磁気ディスク100における領域Aの拡大図が示されている。
図4のパート(b)に示すように、パターンドメディアの磁気ディスク100は、複数の微小磁性体(ドット)102を有している。このドット102は、複数の結晶粒の集合体である。ただし、ドット102を構成する複数の結晶粒は磁気的に強く結合しており、ドット102は、磁気的に1つの結晶粒のように振舞う。
また、本実施形態では、垂直磁気記録方式が採用されており、各ドット102は、上記の結晶粒における結晶構造を利用して、ドット102内の磁化が磁気ディスク100の表面に対して垂直な方向を向くときに最も安定となるような異方性(結晶異方性)を持つようになっている。これにより、各ドット102は、図中に示す磁化Bのように、磁気ディスク100の表面に対して垂直で一様な磁化を保持する。そして、磁気ディスク100では、これら複数のドット102が、非磁性材料のディスク101上に、同心円状に複数列に亘って配列されることで、パート(a)に示すように複数本のトラック110が形成されている。
また、この磁気ディスク100は、トラック110間、即ち、磁気ディスク100の半径に沿う方向(半径方向)におけるドット102間を埋める、非磁性材料で形成された第1間隙部103と、磁気ディスク100の中心周りを周回する方向(周方向)におけるドット102間を埋める、ドット102が有する単位面積当たりの磁気モーメントよりも小さい単位面積当たりの磁気モーメントを有する第2間隙部104とを備えている。
ここで、上記のトラック110、ドット102、および第2間隙部104が、それぞれ上述した磁気記録媒体の基本形態における記録トラック、記録ドット、およびスペースドットの各一例に相当する。また、上記の半径方向および周方向が、それぞれ上述した磁気記録媒体の基本形態におけるトラック幅方向および記録方向の各一例に相当する。このように、基本形態におけるトラック幅方向は、記録トラックに直行する方向であり、基本形態における記録方向は、記録トラックに沿った方向である。
また、本実施形態では、第2間隙部104は、後述するように、ドット102を形成する磁性材料と同じ磁性材料の単位面積当たりの磁気モーメントが、イオンドーピングによって低下されることにより形成されたものである。また、本実施形態では、特定はしないが、第2間隙部104は、単位面積当たりの磁気モーメントとして、ドット102が有する単位面積当たりの磁気モーメントに対して5%以上かつ30%以下の磁気モーメントを有している。
ここで、上記のドット102および第2間隙部104の互いに同一の厚みが、上述した磁気記録媒体の応用形態における「膜厚」の一例に相当する。このように、上述した磁気記録媒体の応用形態における「膜厚」とは磁性を帯びた部分の厚みのことである。
この磁気ディスク100に対する情報の読み書きの際には、ヘッドジンバルアセンブリ150が、図中の矢印P1が示す方向に回動することでトラッキングが行なわれ、先端の磁気ヘッド151が、情報の読取り対象あるいは記録対称のトラック110の上に配置される。この状態で、磁気ディスク100が、矢印P2が示す方向に回転すると、磁気ヘッド151の下を、その対象のトラック110を形成する複数のドット102が順次に通過する。そして、磁気ヘッド151が、直下を通過するドット102における磁化の向きを検出することで情報の読取りが行われ、磁気ヘッド151が、直下を通過するドット102に磁界を印加してそのドット102における磁化をその磁界の向きに応じた向きに向かせることで情報の記録が行われる。
図4のパート(b)には、隣り合う3本のトラック110それぞれにおけるドット102の配列と、磁気ヘッド151が、それら3本のトラック110のうち中央のトラック110を情報の読取り対象あるいは記録対称として、そのトラック110の上方に配置された様子が示されている。
ここで、本実施形態では、各ドット102における、半径方向の幅Wに対する周方向の幅Lの比であるビットアスペクト比(BAR)が「2」となっている。このため、各ドット102は、単体では、上記の結晶異方性に加えて、内部の磁化が、周方向よりも半径方向に反転し易いという形状異方性を有することとなる。
その結果、仮に、この磁気ディスク100が、上記のドット102が単に配列されただけのものであったとすると、磁気ヘッド151が、情報の記録対象のトラック110に属するドット102に磁界を印加したときの漏れ磁界に、そのドット102に半径方向に隣り合うドット102内の磁化が過敏に反応し、その磁化が半径方向に反転してしまうおそれがある。このような磁化の反転が起きると、既存の記録情報が破壊されてしまう。
本実施形態では、各ドット102単体での形状異方性が、第2間隙部104が有する上記のような単位面積当たりの磁気モーメントにより、以下に説明するように緩和される。
図5は、各ドット102単体での形状異方性が緩和される様子を示す模式図である。
上述したようにドット102は、上記のBARが「2」となっているので、このドット102単体では、垂直磁気記録方式で保持された磁化Bは、図中に示す座標系におけるZ−X面内で回転する矢印P3が示す方向、即ち、ドット102の短手側に回転する回転方向よりも、Z−Y面内で回転する矢印P4が示す方向、即ち、長手側に回転する回転方向に反転し易い状態となっている。
ここで、本実施形態では、各ドット102が、ドット102が有する単位面積当たりの磁気モーメントに対して5%以上かつ30%以下の磁気モーメントを単位面積当たりの磁気モーメントとして有する第2間隙部104によって、周方向に挟まれている。このことは、各ドット102の個別性が保たれたまま、周方向の長さLが、上記の第2間隙部104の磁気モーメントに相当する分だけ延びた長さL’になったものとみなすことができる。このことは、各ドット102に、この周方向に見かけ上延びた長さの分だけ、磁化Bが周方向側に反転し易いという形状異方性が新たに付与されたことに相当する。その結果、この新たに付与された形状異方性により、ドット102単体での形状異方性が緩和されることとなる。本実施形態では、このような形状異方性の緩和により、情報の記録対象以外の他のドット102における、漏れ磁界に対する磁化の感度が鈍くなってその漏れ磁界による磁化の反転が回避される。これにより、情報の記録時に既存の記録情報が破壊されてしまうという問題が回避される。
次に、第2間隙部104が有する磁気モーメントによる上記の問題の回避について、さらに具体的に説明する。
以下では、上記の問題の回避の程度を、磁気ヘッド151が、情報の記録対象のドット102に、半径方向に隣り合うドット102の記録情報を破壊することなく情報を記録することができる、半径方向のぶれ幅であるオフトラックマージンによって評価する。ここでは、このオフトラックマージンを、次のような条件の下で算出する。
図6は、オフトラックマージンの算出条件を説明するための図である。
オフトラックマージンの算出条件としては、まず、トラックピッチTPを50.8(nm)、1ビットの情報の記録に要するドットピッチであるビット長BLを25.4(nm)とする。これらの値は、情報の記録密度として500(Gbit/in2):322580(Gbit/mm2)を想定した値である。
また、上述したようにBARは「2」である。そして、各ドット102の半径方向の長さWをトラックピッチTPの「1/2」、周方向の長さLをビット長BLの「1/2」とし、各ドット102の厚みを10(nm)とする。また、各ドット102における上記の結晶異方性の強さを表わす結晶異方性磁界を12(kOe):954.96(kA/m)とする。
さらに、磁気ヘッド151の幅WHを40(nm)とし、ヘッドジンバルアセンブリ150の回動量によって決まる、磁気ヘッド151のトラック110に対する傾きを表わすスキュー角Sを、想定される最も大きな値であって記録対象以外のドット102への漏れ磁界の印加量が最も多くなる15度とする。尚、図6では、スキュー角Sに対応して磁気ヘッドのみが傾く例を示したが、個々のドットもスキュー角Sに応じて傾く形状となっていてもよい。
以上に説明した条件下で、あるトラック110を構成する複数のドット102に対し100万回の情報記録を行なったときのオフトラックマージンを、ドット102の単位面積当たりの磁気モーメントに対する第2間隙部104の単位面積当たりの磁気モーメントの比に相当する、両者間における飽和磁化の比を徐々に増加させながら算出する。
図7は、ドット102と第2間隙部104との間における飽和磁化の比の変化に対するオフトラックマージンの変化をプロットしたグラフである。
この図7には、横軸に飽和磁化の比(%)をとり、縦軸にオフトラックマージン(nm)をとったグラフG1が示されており、このグラフG1には、飽和磁化の比の変化に対するオフトラックマージンの変化が黒丸印を結ぶラインL1で表わされている。
このラインL1から分かるように、飽和磁化の比が5%を超えると、オフトラックマージンが増加して大きな値をとるようになっている。上述したように、オフトラックマージンは、磁気ヘッド151が既存の記録情報の破壊を回避しつつ情報を記録することができるブレ幅であり、このオフトラックマージンが大きな値をとるということは、磁気ヘッド151からの漏れ磁界が周辺のドット102にほとんど影響を与えることなく情報を記録することができることを意味する。つまり、このグラフG1から、ドット102の飽和磁化に対する第2間隙部104の飽和磁化の比、即ち、ドット102の単位面積当たりの磁気モーメントに対する第2間隙部104の単位面積当たりの磁気モーメントの比が5%を超えると、既存の記録情報に対する破壊の回避について大きな効果が得られることが分かる。また、オフトラックマージンを算出するために用いた、前述のトラックピッチ等の細かな数値規定は、オフトラックマージンの絶対値には影響するが、飽和磁化の比の変化に対するオフトラックマージンの変化の形状にはさほど影響せず、飽和磁化の比が5%を超えるとオフトラックマージンが増加して大きな値をとるという現象は、上記の数値規定に限定されるものではなく一般的に成り立つ。
ここで、第2間隙部104の単位面積当たりの磁気モーメントが大きいと既存の記録情報に対する破壊の回避について大きな効果が得られる反面、この単位面積当たりの磁気モーメントがあまり大きくなり過ぎると、各ドット102の個別性が保てなくなり、情報の読出し時のノイズが大きくなってしまう。
図8は、ドット102と第2間隙部104との間における飽和磁化の比の変化に対する信号対ノイズ比(SNR)の変化をプロットしたグラフである。
この図8には、横軸に飽和磁化の比(%)をとり、縦軸にSNR(dB)をとったグラフG2が示されている。ここで、このSNRは、上記の算出の条件と同じ条件において、周方向に磁化の向きが交互に反転するような情報を磁気ヘッド151が読み取ったと仮定したときの、磁気ヘッド151での再生信号とノイズとの比を算出したものである。
図8のグラフG2には、飽和磁化の比の変化に対するSNRの変化が、黒丸印を結ぶラインL2で表わされている。このラインL2から分かるように、飽和磁化の比が30%を超えるとSNRが減少して低い値をとるようになっている。このことは、飽和磁化の比が30%を超えると、各ドット102の個別性の維持が困難となり、情報の読出し時のノイズが許容以上に大きくなってしまうことを意味している。また、前述のトラックピッチ等の細かな数値規定は、SNRの絶対値には影響するが、飽和磁化の比の変化に対するSNRの変化の形状にはさほど影響せず、飽和磁化の比が30%を超えるとSNRが減少して低い値をとるという現象は、上記の数値規定に限定されるものではなく一般的に成り立つ。
以上、説明したように、本実施形態の磁気ディスク100では、各ドット102が有する形状異方性を、周方向の間隙部分である上記の第2間隙部104の単位面積当たりの磁気モーメントで緩和することにより、情報の記録時に既存の記録情報が破壊されてしまうという問題が回避される。また、その回避の効果については、ドット102の単位面積当たりの磁気モーメントに対する第2間隙部104の単位面積当たりの磁気モーメントの比が5%を超えると大きな効果が得られる。一方で、この比が30%を超えると、各ドット102の個別性の維持が困難となってしまうことから、各ドット102の個別性を保ちつつ上記の問題を良好に回避するには、ドット102の単位面積当たりの磁気モーメントに対する第2間隙部104の単位面積当たりの磁気モーメントの比が5%以上かつ30%以下であることが好ましい。
次に、磁気記録媒体の製造方法の具体的な第1実施形態である、図4の磁気ディスク100の製造方法について説明する。
図9は、図4の磁気ディスク100の製造方法を示す模式図である。
この図9に示す磁気ディスク100の製造方法では、まず、非磁性材料のディスク101上に、ここでは特定はしないが、コバルトと白金との合金、クロムと白金との合金、コバルトとパラジウムとの多層膜、あるいはコバルトと白金との多層膜等の磁性材料をスパッタ法により付着させることで磁性膜111が形成される(ステップS101)。次に、磁性膜の上に、ディスク101の半径方向に、上記のドット102の半径方向のピッチと同じピッチで並び周方向に延びる、ドット102の半径方向の幅と同じ幅を有する複数本の第1マスクパターン112が形成される(ステップS102)。さらに、イオンを対象物に衝突させてエッチングを行うイオンミリングにより第1マスクパターン112で覆われていない部分の磁性材料が除去され、その後、有機溶剤を使って第1マスクパターン112も除去されることで、ディスク101上に、ドット102の半径方向のピッチと同じピッチで並び周方向に延びる、ドット102の半径方向の幅と同じ幅を有する複数本の磁性パターン113が形成される(ステップS103)。
ここで、上記のステップS101の処理が、上述の磁気記録媒体の製造方法の基本形態における「磁性膜を成膜」する過程の一例に相当し、上記のステップS102の処理とステップ103の処理とを合せた処理が、上述の磁気記録媒体の製造方法の基本形態における「溝を形成」する過程の一例に相当する。
続いて、磁性パターン113間の隙間が、ここでは特定はしないが、酸化シリコンやアルミナ等の非磁性材料で埋められて、さらに、表面が化学・機械研磨法(CMP)によって研磨され平坦状に整えられて上記の第1間隙部103が形成される(ステップS104)。このステップS104の処理が、上述の磁気記録媒体の製造方法の基本形態における「溝を非磁性体で埋め」る過程の一例に相当する。
さらに、第1間隙部103と磁性パターン113がディスク101の半径方向に交互に並んだ状態の表面上に、今度は、ディスク101の周方向に、上記のドット102の周方向のピッチ(ビット長)と同じピッチで並び半径方向に伸びる、ドット102の周方向の幅と同じ幅を有する複数本の第2マスクパターン114が形成される(ステップS105)。このステップS105の処理が、上述の磁気記録媒体の製造方法の基本形態における「レジストパターンを形成」する過程の一例に相当する。また、上記の第2マスクパターン114が、この基本形態におけるレジストパターンの一例に相当する。
そして、ここでは特定はしないが、酸素イオン、窒素イオン、アルゴンイオン等といった、上記の磁性材料に対して反応を起こさせることが可能なイオンを使ったイオンドーピングによって、上記磁性パターン113のうち第1マスクパターン112で覆われていない部分の単位面積当たりの磁気モーメントが低下され、その後、有機溶剤で上記の第2マスクパターン114が除去され、その除去後の表面にダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなる保護膜が形成されて、磁気ディスク100が完成する(ステップS106)。このステップS106の処理では、上記のイオンドーピングにおけるイオンの照射量が、磁性パターン113のうち第1マスクパターン112で覆われていない部分の単位面積当たりの磁気モーメントが、磁性パターン113の元々の単位面積当たりの磁気モーメントに対して5%以上かつ30%以下となるように調整される。これにより、第1マスクパターン112で覆われていない部分が、上記の第2間隙部104となり、第1マスクパターン112で覆われている部分がドット102となる。このステップS106の処理が、上述の磁気記録媒体の製造方法の基本形態における「磁気モーメントを減少させる」過程の一例に相当する。
この図9に示す製造方法によれば、既存の記録情報に影響を与えることなく情報を記録することができる図4の磁気ディスク100を容易に製造することができる。また、この製造方法では、上記のイオンの照射量を所望の照射量に調整して、上記のような好ましい単位面積当たりの磁気モーメントを得ることができる。
次に、磁気記録媒体の具体的な第2実施形態について説明する。
この第2実施形態は、ドットと、周方向に隣り合うドットどうしの隙間を埋める第2間隙部との構造が、上記の第1実施形態と異なる。以下では、この相違点に注目して説明を行う。
図10は、磁気記録媒体の具体的な第2実施形態であるパターンドメディアの磁気ディスクを示す図である。
尚、この図10では、図4に示す第2実施形態の磁気ディスク100の構成要素と同等な構成要素については図4と同じ符号が付されており、以下では、これらの構成要素については重複説明を省略する。
図10のパート(a)には、垂直磁気記録方式で情報が記録されるパターンドメディアの磁気ディスク200と、その磁気ディスク200に対して情報の読み書きを行なうヘッドジンバルアセンブリ150とが示されている。また、パート(b)には、パート(a)に示す磁気ディスク200における領域Aの拡大図が示されている。
図10のパート(b)に示すように、この第2実施形態の磁気ディスク200では、ドット201と第2間隙部202とがそれぞれ3層構造を有している。
図11は、図10に示すドット201と第2間隙部202との拡大図である。
まず、ドット201は、磁性材料で形成されたドット用表面磁性層201aと、ドット用ディスク側磁性層201bと、これら2つの磁性層で挟まれたドット用中間層201cとで構成されている。ドット用ディスク側磁性層201bは、ドット用表面磁性層201aの磁性材料と同じ磁性材料で形成されている。また、ドット用中間層201cは、チタンを含有する材料で形成されている。ここで、本実施形態では、この3層構造のドット201が、上述の磁気記録媒体の基本形態における記録ドットの一例に相当する。そして、この磁気ディスク200では、各々が3層構造を有する複数のドット201が、非磁性材料のディスク101上に、同心円状に複数列に亘って配列されることで、パート(a)に示すように複数本のトラック210が形成されている。本実施形態では、このトラック210が、上述の磁気記録媒体の基本形態における記録トラックの一例に相当する。
また、第2間隙部202は、非磁性材料で形成された表面層202aと、第2間隙部用ディスク側磁性層202bと、これら2つの層で挟まれた第2間隙部用中間層202cとで構成されている。第2間隙部用ディスク側磁性層202bは、上記のドット用表面磁性層201aおよびドット用ディスク側磁性層201bの磁性材料と同じ磁性材料で形成されるとともにドット用ディスク側磁性層201bに連続的に繋がっている。また、第2間隙部用中間層202cは、ドット用中間層201cの材料と同じ材料で形成されるとともにドット用中間層201cに連続的に繋がっている。ここで、本実施形態では、第2間隙部用ディスク側磁性層202bが、上述の磁気記録媒体の基本形態におけるスペースドットの一例に相当する。また、この第2間隙部用ディスク側磁性層202bの厚みが、上述の磁気記録媒体の応用形態における「膜厚」の一例に相当する。本実施形態では、この第2間隙部用ディスク側磁性層202bによって、上述の磁気記録媒体の応用形態にいう「スペースドット」が「記録ドットよりも膜厚が薄いこと」が実現されている。
ドット201は、上述の第1実施形態のドット102と同様に、半径方向の長さWが、周方向の長さLよりも長く、単体では、内部の磁化が周方向に反転し易いという形状異方性を有している。
また、本実施形態では、第2間隙部202は、第2間隙部用ディスク側磁性層202bとドット用ディスク側磁性層201bとの共通の厚みT1に比例した単位面積当たりの磁気モーメントを有している。
本実施形態では、このドット201を、上記のような単位面積当たりの磁気モーメントを有する第2間隙部202で周方向に挟むことで、第1実施形態の場合と同様に、このドット201単体での形状異方性が緩和されている。これにより、この第2実施形態の磁気ディスク200でも、上述の第1実施形態の磁気ディスク100と同様に、既存の記録情報に影響を与えることなく情報を記録することができる。
また、各ドット201の個別性を保ちつつ上記のような効果を良好に得るためには、第2間隙部202の単位面積当たりの磁気モーメントの、ドット201の単位面積当たりの磁気モーメントに対する比が、5%以上かつ30%以下であることが好ましいのは、上述の第1実施形態と同様である。上述したように、第2間隙部202の単位面積当たりの磁気モーメントは、第2間隙部用ディスク側磁性層202bとドット用ディスク側磁性層201bとの共通の厚みT1に比例する。また、ドット201の単位面積当たりの磁気モーメントは、ドット201および第2間隙部202の共通の厚みT2に比例する。このため、単位面積当たりの磁気モーメントについての上記のような好ましい比を得るためには、第2間隙部用ディスク側磁性層202bとドット用ディスク側磁性層201bとの共通の厚みT1は、ドット201および第2間隙部202の共通の厚みT2に対して、5%以上かつ30%以下の厚みであることが好ましい。
次に、磁気記録媒体の製造方法の具体的な第2実施形態である、図10の磁気ディスク200の製造方法について説明する。
図12は、図10の磁気ディスク200の製造方法を示す模式図である。
この図12に示す磁気ディスク200の製造方法では、まず、非磁性材料のディスク101上に、同じ磁性材料からなる2つの磁性層221と、これら2つの磁性層221に挟まれチタンを含有する材料からなる中間層222とで構成された3層構造の磁性膜220が、チタンを含有する材料や磁性材料を、スパッタ法により付着させることで形成される(ステップS201)。ここで、磁性層221の磁性材料は、ここでは特定はしないが、コバルトと白金との合金、クロムと白金との合金、コバルトとパラジウムとの多層膜、あるいはコバルトと白金との多層膜等が挙げられる。また、上記の3層構造の磁性膜220では、最下層の磁性層221の厚みが、ここでは特定はしないが、磁性膜220全体の厚みの5%以上かつ30%以下の厚みで形成される。
次に、磁性膜220の上に、ディスク101の半径方向に、上記のドット201の半径方向のピッチと同じピッチで並び周方向に延びる、ドット201の半径方向の幅と同じ幅を有する複数本の第1マスクパターン231が形成される(ステップS202)。さらに、イオンを対象物に衝突させてエッチングを行うイオンミリングにより第1マスクパターン231で覆われていない部分の磁性材料が除去され、その後、有機溶剤を使って第1マスクパターン231も除去されることで、ディスク101上に、ドット201の半径方向のピッチと同じピッチで並び周方向に延びる、ドット201の半径方向の幅と同じ幅を有する上記の3層構造の複数本の磁性パターン232が形成される(ステップS203)。
本実施形態では、上記のステップS201の処理が、上述の磁気記録媒体の製造方法の基本形態における「磁性膜を成膜」する過程の一例に相当し、上記のステップS202の処理とステップ203の処理とを合せた処理が、上述の磁気記録媒体の製造方法の基本形態における「溝を形成」する過程の一例に相当する。
続いて、これらの磁性パターン232が形成された状態のディスク101上に、今度は、ディスク101の周方向に、上記のドット201の周方向のピッチ(ビット長)と同じピッチで並び半径方向に伸びる、ドット201の周方向の幅と同じ幅を有する複数本の第2マスクパターン233が形成される(ステップS204)。本実施形態では、このステップS204の処理が、上述の磁気記録媒体の製造方法の基本形態における「レジストパターンを形成」する過程の一例に相当する。また、上記の第2マスクパターン233が、この基本形態におけるレジストパターンの一例に相当する。
次に、上記の3層構造の磁性パターン232の、上記の第2マスクパターン233で覆われていない部分における最上層の磁性層221が、反応性ガスとして一酸化炭素ガスを用いた反応性イオンエッチングにより除去される(ステップS205)。ここで、3層構造の磁性パターン232における中間層222は、上述したようにチタンを含有する材料で形成されている。このような材料は、一酸化炭素ガスと反応し難いので、上記のような反応性イオンエッチングに対して良好なストッパとして働く。そのため、ステップS205の処理では、最上層の磁性層221だけが正確に除去されることとなる。このステップS205の処理により、磁性パターン232の、第2マスクパターン233で覆われていない部分の単位面積当たりの磁気モーメントが、除去された最上層の磁性層221の分だけ低下される。上述したように、最下層の磁性層221の厚みは、上記の磁性膜222全体すなわち磁性パターン232全体の厚みの5%以上かつ30%以下の厚みとなっている。このため、このステップS205の処理では、第2マスクパターン233で覆われていない部分の単位面積当たりの磁気モーメントが、第2マスクパターン233で覆われている部分の単位面積当たりの磁気モーメントの5%以上かつ30%以下の磁気モーメントとなる。また、このステップS205の処理で、最上層の磁性層221が残る、第2マスクパターン233で覆われている部分が、ドット201となる。そして、その残った磁性層221が、図11に示すドット用表面磁性層201aであり、その残った磁性層221の下の中間層222が、図11に示すドット用中間層201cであり、さらにその中間層222の下の最下層の磁性層221が、図11に示すドット用ディスク側磁性層201bである。本実施形態では、このステップS205の処理が、上述の磁気記録媒体の製造方法の基本形態における「磁気モーメントを減少させる」過程の一例に相当する。
そして、上記の第2マスクパターン233を有機溶剤で除去した後に、磁性パターン232の間と、各磁性パターン232において最上層の磁性層221が除去された後の窪みとが、ここでは特定はしないが、酸化シリコンやアルミナ等の非磁性材料で埋められて、さらに、表面が化学・機械研磨法(CMP)によって研磨され平坦状に整えられた上に、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなる保護膜が形成されて、磁気ディスク200が完成する(ステップS206)。このステップS206の処理で、磁性パターン232の間が非磁性材料で埋められることで、上記の第1間隙部103が形成され、上記の窪みが非磁性材料で埋められることで、上記の第2間隙部202が形成される。この非磁性材料で埋められた窪みが、図11に示す表面層202aであり、その表面層202aの下の中間層222が、図11に示す第2間隙部用中間層202cであり、さらにその中間層222の下の最下層の磁性層221が、図11に示す第2間隙部用ディスク側磁性層202bである。本実施形態では、このステップS206の処理が、上述の磁気記録媒体の製造方法の基本形態における「溝を非磁性体で埋める」過程の一例に相当する。
この図12に示す製造方法によれば、既存の記録情報に影響を与えることなく情報を記録することができる図10の磁気ディスク200を容易に製造することができる。また、この製造方法では、ステップS201で形成する3層構造の磁性膜220における最下層の磁性層221の厚みを所望の厚みで形成することで、上記のような好ましい単位面積当たりの磁気モーメントを得ることができる。
尚、上記では、磁気記録媒体の具体的な実施形態として、垂直磁気記録方式のパターンドメディアを例示したが、磁気記録媒体はこれに限るものではなく、例えば、水平磁気記録方式のパターンドメディア等であっても良い。
また、上記では、磁気記録媒体の具体的な実施形態として、形状異方性を有するドットを備えたパターンドメディアを例示したが、磁気記録媒体はこれに限るものではなく、例えば、形状異方性を持たないドットを備えたパターンドメディア等であっても良い。この場合には、磁性を帯びた間隙部によって各ドットに上述したような形状異方性が新たに付与されることにより、単体では形状異方性を持たない各ドットが、半径方向すなわちトラック幅方向には磁化が反転し難く、周方向すなわち記録方向に磁化が反転し易いという形状異方性を持つこととなる。その結果、例えば、磁気ディスクにおけるトラック間隔が、記録密度の向上等を目的として狭かったとしても、既存の記録情報に影響を与えることなく情報を記録することができる。
また、上記では、磁気記録媒体の具体的な実施形態として、非磁性材料のディスク上に、直接にドット等が形成された例を示したが、磁気記録媒体はこれに限るものではなく、磁気記録媒体は、例えば、非磁性材料のディスクとドット等との間に、軟磁性を有する材料からなる下地層(裏打ち層)が設けられたものであっても良く、あるいは、ドット等と下地層との間にさらに何らかの中間層が設けられたものであっても良い。
また、上記では3層構造のドットの一例として、最上層の磁性層と最下層の磁性層とが互いに同じ磁性材料で形成されたものを例示したが、3層構造のドットはこれに限るものではなく、最上層の磁性層と最下層の磁性層とが互いに異なる磁性材料で形成されたものであっても良い。
また、上記では3層構造のドットや第2間隙部の一例として、中間層がチタンを含有する材料で形成されたものを例示したが、3層構造のドットや第2間隙部はこれに限るものではなく、チタンを含有する材料以外の、エッチング処理に対して良好なストッパとして働くような材料で形成されたものであっても良い。
パターンドメディアの磁気ディスクの一例を示す模式図である。 図1のドット502が有する形状異方性について説明する図である。 磁気ヘッド551が、直下を通過するドット502に磁界を印加する様子を示す模式図である。 磁気記録媒体の具体的な第1実施形態であるパターンドメディアの磁気ディスクを示す図である。 各ドット102単体での形状異方性が緩和される様子を示す模式図である。 オフトラックマージンの算出条件を説明するための図である。 ドット102と第2間隙部104との間における飽和磁化の比の変化に対するオフトラックマージンの変化をプロットしたグラフである。 ドット102と第2間隙部104との間における飽和磁化の比の変化に対する信号対ノイズ比(SNR)の変化をプロットしたグラフである。 図4の磁気ディスク100の製造方法を示す模式図である。 磁気記録媒体の具体的な第2実施形態であるパターンドメディアの磁気ディスクを示す図である。 図10に示すドット201と第2間隙部202との拡大図である。 図10の磁気ディスク200の製造方法を示す模式図である。
符号の説明
100,200,500 磁気ディスク
101,501 ディスク
102,201,502 ドット
103 第1間隙部
104,202 第2間隙部
110,210,510 トラック
111,220 磁性膜
112,231 第1マスクパターン
113,232 磁性パターン
114,233 第2マスクパターン
150,550 ヘッドジンバルアセンブリ
151,551 磁気ヘッド
201a ドット用表面磁性層
201b ドット用ディスク側磁性層
201c ドット用中間層
202a 表面層
202b 第2間隙部用ディスク側磁性層
202c 第2間隙部用中間層
221 磁性層
222 中間層
502_1 センタードット
502_2,502_3 サイドドット
510_1 センタートラック
510_2,510_3 サイドトラック

Claims (6)

  1. 各々トラック幅方向に間欠的に配列され、記録方向について磁気的な連続膜からなる記録トラックと、
    前記記録トラック内において、前記記録方向に沿って間欠的に設けられた複数の記録ドットと、
    前記記録方向に沿って前記記録ドットと交互に設けられ、単位面積あたりの磁気モーメントが前記記録ドットの磁気モーメントよりも小さいスペースドットと、
    を有し、
    前記記録ドットは、前記記録方向の寸法が前記トラック幅方向の寸法よりも短いものであり、
    前記スペースドットは、前記記録ドットの飽和磁化の5%以上かつ30%以下の飽和磁化を有するものであることを特徴とする磁気記録媒体。
  2. 前記記録ドットと前記スペースドットは、ともに同じ膜厚であることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体。
  3. 前記スペースドットは前記記録ドットよりも膜厚が薄いことを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体。
  4. 基板上に磁性層を成膜し、
    前記磁性層にトラック幅方向に沿って複数の溝を形成し、
    前記溝を非磁性体で埋め、
    前記磁性層上に記録方向に沿って間欠的にレジストパターンを形成し、
    前記レジストパターンから露出する前記磁性層の磁気モーメントを減少させる
    前記レジストパターンの前記記録方向の寸法が、前記複数の溝相互間の間隔よりも短く、
    前記レジストパターンから露出する前記磁性層の、前記磁気モーメント減少後の飽和磁化が、該磁気モーメント減少前の飽和磁化の5%以上かつ30%以下であることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
  5. 前記レジストパターンから露出する前記磁性層にイオンドーピングすることにより、当該磁性層の磁気モーメントを減少させることを特徴とする請求項4記載の磁気記録媒体の製造方法。
  6. 前記レジストパターンから露出する前記磁性層を部分的に除去することにより、当該磁性層の磁気モーメントを減少させることを特徴とする請求項4記載の磁気記録媒体の製造方法。
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