JPWO2005111618A1 - 物質固定化剤、それを用いた物質固定化方法及びそれを用いた物質固定化基体 - Google Patents

物質固定化剤、それを用いた物質固定化方法及びそれを用いた物質固定化基体 Download PDF

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Abstract

要約基体上に種々の固定化すべき物質を共有結合により固定化することができ、かつ、非特異吸着の防止効果に優れた、物質固定化剤が開示されている。また、ポリペプチド、核酸、脂質等の所望の物質を、その種類に関わらず金等の金属表面に固定化することができ、かつ、非特異吸着を抑制することができる物質固定化剤が開示されている。基体上に所望の物質を固定化するための物質固定化剤は、1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有する光架橋剤と、分子全体として電気的に中性な水溶性ポリマーとを含む。金属に物質を固定化するための物質固定化剤は、両極性又はノニオン性の水溶性ポリマーであって、1個以上の光反応性基を有し、かつ、金属と共有結合又は配位結合可能な基を有するポリマーから成る。

Description

本発明は、ポリペプチド、核酸、脂質等の所望の物質を基体上に固定化するための物質固定化剤、それを用いた物質固定化方法及びそれを用いた物質固定化基体に関する。
従来より、抗体又は抗原をプレート上に固定化した、免疫測定のためのイムノプレートや、核酸をチップ上に固定化したDNAチップ等が広く用いられている。従来、基体上にタンパク質や核酸を固定化する方法の1つとして、物理吸着が広く用いられている。すなわち、例えばポリスチレンのような疎水性の基体と、基体上に固定化すべきタンパク質や核酸の水溶液とを接触させて放置することにより、物理吸着によってタンパク質や核酸が基体上に固定化される。
しかしながら、物理吸着を用いる方法では、基体と固定化物質との結合が弱く、物質を固定化した基体の安定性が不十分であるという問題がある。また、目的のタンパク質や核酸で被覆されなかった領域への非特異吸着を防止するために、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、スキムミルク等のタンパク質(タンパク質を固定化する場合)や、サケ精子DNA等のDNA(DNAを固定化する場合)でブロッキングすることが行われているが、ブロッキングによる非特異吸着の防止効果も必ずしも満足できるものではない。
また、基体上の官能基と、固定化すべきタンパク質や核酸の官能基とを共有結合させることにより基体上にタンパク質や核酸を固定化することも行われている。しかしながら、この方法では、用いる官能基が物質の活性部位の中又はその近傍にある場合には、固定化により物質の活性が失われてしまう。また、適当な官能基が存在しない場合には、この方法により固定化することができない。また、物理吸着の場合と同様、ブロッキングにより非特異吸着が防止されているが、その防止効果は必ずしも満足できるものではない。
一方、光反応性基を利用して物質を基板に固定化することも知られている(Y. Ito and M. Nogawa, "Preparation of a protein micro-array using a photo-reactive polymer for a cell adhesion assay," Biomaterials, 24、3021-3026 (2003))。しかしながら、この方法では、非特異吸着を防止するための配慮は特にされてはいない。
また、ある物質と他の物質との相互作用を調べる方法として、水晶発振子(QCM)や表面プラズモン共鳴(SPR)が広く用いられている。これらの方法は、物質間の反応をリアルタイムで検出することができるという優れた利点を有しており、化学分野における様々な研究に広く用いられている。これらの方法を用いる場合には、被検物質を金に結合することが必要である。
従って、ポリペプチド、核酸、脂質等の所望の物質と他の物質の相互作用、例えば、抗原抗体反応や核酸間のハイブリダイゼーションをQCMやSPRで検出しようとする場合には、これらの生体分子を金表面に結合することが必要になる。生体分子を金表面に結合するために、従来、アミノ基やカルボキシル基のような官能基を生体分子に導入したり、ビオチンやFcセグメントを生体分子に導入することが必要であった。このため、金表面に固定化できないか又は固定化すると活性が失われて目的とする反応を行なうことができない場合も多かった。また、金表面に生体分子が結合できる場合であっても、該生体分子との反応を調べようとする物質が金表面に非特異的に吸着し、所望の反応を特異的に検出することが困難になる場合もしばしばあった。
特開平11−337551号公報 特開2001−337089号公報 Y. Ito and M. Nogawa, "Preparation of a protein micro-array using a photo-reactive polymer for a cell adhesion assay," Biomaterials, 24、3021-3026 (2003) ナノテクノロジー大辞典((株)工業調査会発行(2003年12月25日))838〜839頁 Japan Nanonet Bulletin 第58号(2004年3月16日)
従って、本発明の目的は、基体上に種々の固定化すべき物質を共有結合により固定化することができ、かつ、非特異吸着の防止効果に優れた、物質固定化剤、それを用いた物質固定化方法及びそれを用いた物質固定化基体を提供することである。
また、本発明の目的は、ポリペプチド、核酸、脂質等の所望の物質を、その種類に関わらず金等の金属表面に固定化することができ、かつ、非特異吸着を抑制することができる物質固定化剤、それを用いた物質固定化方法及びそれを用いた物質固定化基体を提供することである。
本願発明者らは、鋭意研究の結果、1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有する光架橋剤と、分子全体として電気的に中性な水溶性ポリマーとの混合物を物質固定化剤として用いることにより、基体上に種々の固定化すべき物質を共有結合により固定化することができ、かつ、非特異吸着の防止効果に優れることを見出し本発明を完成した。
すなわち、本発明は、1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有する光架橋剤と、分子全体として電気的に中性な水溶性ポリマーとを含む、基体上に所望の物質を固定化するための物質固定化剤を提供する。また、本発明は、基体に固定化すべき物質と、上記本発明の物質固定化剤とを含む水溶液又は水懸濁液を前記基体に塗布し、光照射することを含む、基体上への物質の固定化方法を提供する。さらに、本発明は、上記本発明の方法により前記物質が固定化された基体を提供する。
また、本願発明者らは、鋭意研究の結果、光反応性基を有し、かつ、金属と共有結合又は配位結合可能な基を有する両極性又はノニオン性の水溶性ポリマーを、所望の物質を固定化するための物質固定化剤として利用することにより、金属に所望の物質を固定化することができ、かつ、該所望の物質との相互反応を調べようとする他の物質の非特異吸着を効果的に抑制することができることを見出した。さらに、上記水溶性ポリマーに代えて、1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有する両極性若しくはノニオン性の水溶性ポリマーと、金属と共有結合若しくは配位結合可能な基を有する化合物との混合物、又は両極性若しくはノニオン性の水溶性ポリマーと、1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有する光架橋剤と、金属と共有結合又は配位結合可能な基を有する化合物との混合物を用いても、同様の効果が得られることを見出した。
すなわち、本発明は、両極性又はノニオン性の水溶性ポリマーであって、1個以上の光反応性基を有し、かつ、金属と共有結合又は配位結合可能な基を有するポリマーから成る、金属に物質を固定化するための物質固定化剤を提供する。また、本発明は、両極性又はノニオン性の水溶性ポリマーであって、1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有する水溶性ポリマーと、金属と共有結合又は配位結合可能な基を有する低分子化合物とを含む、金属に物質を固定化するための物質固定化剤を提供する。さらに、本発明は、両極性又はノニオン性の水溶性ポリマーと、1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有する光架橋剤と、金属と共有結合又は配位結合可能な基を有する低分子化合物とを含む、金属に物質を固定化するための物質固定化剤を提供する。さらに、本発明は、基体に固定化すべき物質と、上記本発明の物質固定化剤又は物質固定化剤とを含む水溶液又は水懸濁液を前記基体に塗布し、光照射することを含む、基体上への物質の固定化方法を提供する。さらに、本発明は、上記本発明の方法により、前記物質が金属上に固定化された基体を提供する。
本発明により、基体上に種々の固定化すべき物質を共有結合により固定化することができ、かつ、非特異吸着の防止効果に優れた、物質固定化剤、それを用いた物質固定化方法及びそれを用いた物質固定化基体が提供された。本発明によれば、固定化すべき物質を、その種類に関係なく共有結合により固定化することができ、安定な固定化基板を得ることができる。また、本発明の物質固定化剤を用いて物質を固定化すると、非特異吸着が効果的に防止される。さらに、本発明の物質固定化剤を用いて物質を固定化する場合、選択露光を行うことにより、固定化物質のパターニングも可能であり、容易にマイクロアレイ等の任意のパターンに物質を固定化することができる。
また、本発明により、ポリペプチド、核酸、脂質等の所望の物質を、その種類に関わらず金等の金属表面に固定化することができ、かつ、非特異吸着を抑制することができる物質固定化剤が初めて提供された。光反応性基は、有機化合物中の炭素原子とも結合するので、本発明の物質固定化剤を用いれば、有機物をその種類に関わらず金属表面に固定化することができる。また、両極性又はノニオン性の水溶性ポリマーにより非特異吸着が効果的に抑制される。従って、本発明は、各種生体分子と他の物質との相互作用のQCM測定やSPR測定に大いに寄与するものと考えられる。
本発明の実施例3で行った免疫測定における基板の平均表面粗さと発光強度との関係を示す図である。 水晶発振子マイクロバランス測定装置を用いてQCM測定する方法を模式的に示す図である。 本発明の実施例6で調製した物質固定化剤と、水晶発振子マイクロバランス測定装置のセンサチップの金電極との反応をQCM測定した際の、周波数変化の経時変化を示す図である。 本発明の実施例7で行った、本発明の物質固定化剤を用いてダニアレルゲン抗体を水晶発振子マイクロバランス測定装置のセンサチップの金電極に固定化し、ダニアレルゲンとの抗原抗体反応をQCM測定した際の、周波数変化の経時変化を示す図である。
上記の通り、本発明の第1の局面の物質固定化剤は、1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有する光架橋剤と、分子全体として電気的に中性な水溶性ポリマーとを含む。
光架橋剤が有する光反応性基の好ましい例として、アジド基(-N3)を挙げることができるがこれに限定されるものではない。光架橋剤としては、アジド基を2個有するジアジド化合物が好ましく、特に水溶性ジアジド化合物が好ましい。本発明に用いられる光架橋剤の好ましい例として、下記一般式[III]で表されるジアジド化合物を挙げることができる。
Figure 2005111618
一般式[I]中、Rは単結合又は任意の基を示す。-R-は、2個のフェニルアジド基を連結するだけの構造であるから、特に限定されない。好ましい-R-の例として、単結合(すなわち、2個のフェニルアジド基が直接連結される)、炭素数1〜6のアルキレン基(1個又は2個の炭素間不飽和結合を含んでいてもよく、1個又は2個の炭素原子が酸素と二重結合してカルボニル基を構成していてもよい)(特に好ましくはメチレン基)、-O-、-SO2-、-S-S-、-S-、-R2 ・・・Y・・・R3-(ただし、・・・は単結合又は二重結合を示し、Yは炭素数3〜8のシクロアルキレン基、R2及びR3は互いに独立に炭素数1〜6のアルキレン基(1個又は2個の炭素間不飽和結合を含んでいてもよく、該アルキレン基の基端の炭素原子とYとの結合が二重結合であってもよく)、1個又は2個の炭素原子が酸素と二重結合してカルボニル基を構成していてもよい)を示し、シクロアルキレン基は、1個又は2個以上の任意の置換基で置換されていてもよく(置換されている場合、好ましくはシクロアルキレン基を構成する炭素原子のうち、1個若しくは2個が酸素と二重結合してカルボニル基を構成し、及び/若しくは1個若しくは2個の炭素数1〜6のアルキル基で置換されている)を挙げることができ、また、一般式[II]中のそれぞれのベンゼン環は、1個又は2個以上の任意の置換基(好ましくはハロゲン、炭素数1〜4のアルコキシル基、スルホン酸若しくはその塩等の親水性基)で置換されていてもよい。好ましい-R-の具体例として次のものを例示することができる。−、-CH2-、-O-、-SO2-、-S-S-、-S-、-CH=CH-、-CH=CH-CO-、-CH=CH-CO-CH=CH-、-CH=CH-、
Figure 2005111618
好ましいジアジド化合物の具体例として、下記のものを例示することができる。
Figure 2005111618
Figure 2005111618
Figure 2005111618
Figure 2005111618
Figure 2005111618
本発明に用いられる光架橋剤の内、特に好ましいのは水溶性のものである。光架橋剤についての「水溶性」とは、0.5mM以上、好ましくは2mM以上の濃度の水溶液を与えることができることを意味する。
光架橋剤の使用時の濃度(被固定化物質と混合する前の濃度)は、特に限定されないが、1μMないし2mMが好ましく、さらに好ましくは0.01mMないし0.5mMである。また、水溶性ポリマーに対する添加量としては、特に制限はないが、好ましくは0.1〜50重量%、特に1〜30重量%、更には1〜10重量%である。
本発明の物質固定化剤に含まれる水溶性ポリマーは、分子全体として電気的に中性な水溶性ポリマーである。ここで、「分子全体として電気的に中性」とは、中性付近のpH(pH6〜8)の水溶液中で電離してイオンになる基を有さないか、又は有していても陽イオンになるものと陰イオンになるものを有していて、その電荷の合計が実質的に0になることを意味する。ここで「実質的に」とは、電荷の合計が0になるか、又は0にはならないとしても本発明の効果に悪影響を与えない程度に小さいことを意味する。
本発明に用いられる水溶性ポリマーの水に対する溶解度(水100gに溶解するグラム数)は、好ましくは5以上である。
水溶性ポリマーの好ましい例として、ノニオン性水溶性ポリマーを挙げることができる。ノニオン性水溶性ポリマーは、優れた非特異吸着防止効果を有し、また、安価に製造又は入手可能であるという利点を有する。
ここで、「ノニオン性」とは、中性付近のpH(pH6〜8)の水溶液中で電離してイオンになる基を実質的に有さないことを意味する。ここで「実質的に」とは、このような基を全く含まないか、又は含んでいるとしても本発明の効果に悪影響を与えない程度に微量(例えば、このような基の数が炭素数の1%以下)であることを意味する。
ノニオン性水溶性ポリマーの分子量(平均分子量、以下同じ)は、特に限定されず、通常、350〜500万程度であるが、ノニオン性水溶性ポリマーの分子量が大きいと、ノニオン性水溶性ポリマー同士の架橋が多くなり、被固定化物質と、被固定化物質との反応に供される物質(以下、便宜的に「反応物質」と呼ぶことがある)との反応が起きにくくなる場合があるので、500〜数10万程度が好ましい。
本発明で用いられるノニオン性水溶性ポリマーの好ましい例として、ポリエチレングリコール(PEG)やポリプロピレングリコールのようなポリアルキレングリコール;ビニルアルコール、メチルビニルエーテル、ビニルピロリドン、ビニルオキサゾリドン、ビニルメチルオキサゾリドン、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、N-ビニルサクシンイミド、N-ビニルホルムアミド、N-ビニル-N-メチルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-iso-プロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、メチロールアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、アクリロイルピロリジン、アクリロイルピペリジン、スチレン、クロロメチルスチレン、ブロモメチルスチレン、酢酸ビニル、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、メチルシアノアクリレート、エチルシアノアクリレート、n-プロピルシアノアクリレート、iso-プロピルシアノアクリレート、n-ブチルシアノアクリレート、iso-ブチルシアノアクリレート、tert-ブチルシアノアクリレート、グリシジルメタクリレート、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、iso-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、iso-ブチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテルなどのモノマー単位を単独か混合物を構成成分とするノニオン性のビニル系高分子;ゼラチン、カゼイン、コラーゲン、アラビアガム、キサンタンガム、トラガントガム、グアーガム、プルラン、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、キトサン、キチン誘導体、カラギーナン、澱粉類(カルボキシメチルデンプン、アルデヒドデンプン)、デキストリン、サイクロデキストリン等の天然高分子、メチルセルロース、ビスコース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースのような水溶性セルロース誘導体等の天然高分子を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。これらのうち、特に好ましいものはポリエチレングリコール系ポリマー(ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール部分を有するビニル化合物のビニル重合体)、ポリ(メタ)アクリルアミド(本明細書及び特許請求の範囲において、「(メタ)アクリル」は、「メタクリル」又は「アクリル」を意味する)及びポリ(グリシジル(メタ)アクリレート)であり、これらの中で特に好ましくは、ポリエチレングリコール系ポリマーであり、更には、疎水性の主鎖に親水性の側鎖がついたポリエチレングリコール(メタ)アクリレートのビニル重合体がもっとも好ましい効果を有する。
水溶性ポリマーの好ましい例として、下記一般式[I]で表される構造を有する単位を有する水溶性ポリマーを挙げることができる。
Figure 2005111618
(ただし、一般式[I]中、Xは、重合した状態の重合性原子団を表わす)
なお、上記一般式[I]で表される構造を有する単位を以下、便宜的に「単位[I]」と言うことがある。
上記ホスホリルコリン含有ポリマーは、生体膜が種々の物質と接触するにもかかわらず、非特異吸着がほとんど起きないことに着目し、生体膜の構成成分であるホスホリルコリンを含む高分子を利用して、所望の物質を基体に固定化することにより非特異吸着を有効に防止できるのではないかという着想に基づいて発明されたものである。
単位[I]は、ホスホリルコリン基を含む単位であり、Xは重合した状態の重合性原子団を表す。Xとしては、ビニル系モノマー残基が好ましい。単位[I]としては、下記一般式[I']で示されるものが好ましい。
Figure 2005111618
(ただし、X'は、ビニル部分が付加重合している状態のメタクリルオキシ基、メタクリルアミド基、アクリルオキシ基、アクリルアミド基、スチリルオキシ基又はスチリルアミド基を表し、R1は単結合又は炭素数1〜10のアルキレン基(ただし1個又は2個のヒドロキシル基で置換されていてもよい)を表す)
このような単位の好ましい具体例として、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、2−アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、N−(2−メタクリルアミド)エチルホスホリルコリン、4−メタクリロイルオキシブチルホスホリルコリン、6−メタクリロイルオキシヘキシルホスホリルコリン、10-メタクリロイルオキシデシルシルホスホリルコリン、ω−メタクリロイルジオキシエチレンホスホリルコリン又は4−スチリルオキシブチルホスホリルコリンに由来する(すなわち、これらの単位を重合させた)単位を挙げることができる。これらの中でも2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに由来する単位が特に好ましい。
単位[I]を含有する水溶性ポリマーは、単位[I]のみが重合したものであってもよいし、単位[I]と、本発明の効果に悪影響を与えない他の重合性モノマーとの共重合体であってもよい。他の重合性モノマーとしては、ビニル系モノマーが好ましく、特に(メタ)アクリル酸又はその塩若しくはエステル(好ましくは低級アルキル(炭素数1〜6)エステル)が好ましい。共重合体の場合、共重合体を構成する単位[I]と他の重合性モノマーとの比率は、特に限定されないが、モル比で1:0.7以下、特に1:0.5以下が好ましい。なお、光架橋剤として親水性基と疎水性基の両方を有する化合物を用いる場合、ミセル化を防ぐため、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキル部分の炭素数が好ましくは3〜6)のような親水性基と疎水性基(アルキルエステル部分)の両方を含むモノマーと共重合することが好ましい。
単位[I]を含有する水溶性ポリマーの分子量は、特に限定されないが、通常、1,000〜2,000,000程度であり、好ましくは、5,000〜1,500,000程度である。
水溶性ポリマーの使用時の濃度(被固定化物質と混合する前の濃度)は、特に限定されないが、通常、0.005重量%〜10重量%、好ましくは0.04重量%〜1重量%程度である。
本発明の物質固定化剤は、上記した光架橋剤及び水溶性ポリマーに加え、さらに溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、水、水と任意の割合で混じり合う低級アルコール(好ましくはエタノール)及びこれらの混合物を用いることができ、水が好ましい。
本発明の物質固定化剤に含まれる光架橋剤及び水溶性ポリマーは、それ自体公知であり、公知の製造方法により製造可能であり、また、市販されているものもある。
本発明の物質固定化剤を用いて固定化される物質は、特に限定されないが、ポリペプチド(糖タンパク質及びリポタンパク質を包含する)、核酸、脂質並びに細胞(動物細胞、植物細胞、微生物細胞等)及びその構成要素(核、ミトコンドリア等の細胞内小器官、細胞膜や単位膜等の膜等を包含する)を例示することができる。本発明の物質固定化剤に光反応性基として用いられるアジド基は、光を照射することにより窒素分子が離脱すると共に窒素ラジカルが生じ、この窒素ラジカルは、アミノ基やカルボキシル基等の官能基のみならず、有機化合物を構成する炭素原子とも結合することが可能であるので、ほとんどの有機物を固定化することが可能である。
基体としては、少なくともその表面が、上記光反応性基と結合し得る物質から成るものであれば特に限定されず、マイクロプレート等で広く用いられているポリスチレンをはじめ、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートやポリプロピレン等の有機物から成るものを例示することができる。ガラス板にシランカップリング剤をコーティングしたもの等も用いることができる。更には、金表面をアルキルチオールなどで有機処理されたものも好ましく使用可能である。また、基体の形態は何ら限定されるものではなく、マイクロアレイ用基板のような板状のものや、ビーズ状、繊維状のもの等を用いることができる。さらに、板に設けられた穴や溝、例えば、マイクロプレートのウェル等も用いることができる。本発明の物質固定化剤は、これらのうち、特にマイクロアレイ用に適している。また、基体の平均表面粗さが14μmないし17μm、特に15μmである場合に、被固定化物質と反応物質との反応が特に起きやすくなるので好ましい。なお、平均表面粗さは、通常使用されている表面粗さ計により測定することができる。
本発明の物質固定化剤を用いて、基体上に所望の物質を固定化することは、次のようにして行うことができる。先ず、基体に固定化すべき物質と、本発明の物質固定化剤とを含む水溶液又は水懸濁液を前記基体に塗布する。この場合、水溶液中の物質固定化剤の各成分の好ましい濃度は上記した通りである。また、固定化すべき物質の濃度(重量基準)は、通常、用いる物質固定化剤の10倍ないし200倍程度であり、好ましくは20倍ないし100倍程度である。
次に、塗布した液を好ましくは乾燥した後、光を照射する。光は、用いる光反応性基がラジカルを生じさせることができる光であり、光反応性基としてアジド基を用いる場合には、紫外線が好ましい。照射する光線の線量は、特に限定されないが、通常、1cm2当たり1mW〜100mW程度である。
光を照射することにより、光架橋剤中の光反応性基がラジカルを生じ、光架橋剤が基体及び固定化すべき物質の双方と共有結合する。その結果、固定化すべき物質が光架橋剤を介して基体に固定化される。また、水溶性ポリマーも光架橋剤を介して基板に固定化される。光反応性基として用いられるアジド基は、光を照射することにより窒素分子が離脱すると共に窒素ラジカルが生じ、この窒素ラジカルは、アミノ基やカルボキシル基等の官能基のみならず、有機化合物を構成する炭素原子とも結合することが可能であるので、ほとんどの有機物を固定化することが可能である。なお、本発明の方法では、光反応性基により生じるラジカルを利用して結合反応を行うので、固定化すべき物質の特定の部位と結合するのではなく、ランダムな部位と結合する。従って、活性部位が結合に供されて活性を喪失する分子も当然出てくると考えられるが、活性部位に影響を与えない部位で結合する分子も当然存在するので、本発明の方法によれば、従来、適当な置換基が活性部位又はその近傍にあるために、共有結合で固定化することが困難であった物質であっても、全体として活性を喪失させることなく、共有結合により基体に固定化することができる。
光が照射されなかった部分では、光反応性基が基体及び固定化すべき物質に結合しないので、洗浄すれば光架橋剤も固定化すべき物質も除去される。従って、フォトマスク等を介して選択露光を行うことにより、任意のパターンで固定化すべき物質を固定化することができる。従って、選択露光により、マイクロアレイ等の任意の種々の形状に固定化すべき物質を固定化することができるので、非常に有利である。
あるいは、本発明の物質固定化剤と、固定化すべき物質の混合物を基体上にマイクロスポッティングし、基体の全面を光照射してもよい。マイクロスポッティングは、液を基体上に非常に狭い領域に塗布する手法であり、DNAチップ等の作製に常用されており、そのための装置も市販されているので、市販の装置を用いて容易に行うことができる。あるいは、先ず、基体上に本発明の物質固定化剤を全面にコーティングし、その上に固定化すべき物質をマイクロスポッティングし、次いで基体の全面に光照射してもよい。この場合、固定化すべき物質のスポットが、物質固定化剤の層の上に形成され、光架橋剤を介して基体に共有結合で固定化される物質の割合が高くなる。さらに、基体上に本発明の物質固定化剤をマイクロスポッティングし、その上に固定化すべき物質をマイクロスポッティングし、次いで基体の全面に光照射してもよい。この場合にも固定化すべき物質のスポットが、物質固定化剤の層(それぞれ分離したスポット)の上に形成され、光架橋剤を介して基体に共有結合で固定化される物質の割合が高くなる。
本発明の方法は、抗体若しくはその抗原結合性断片又は抗原を固定化した免疫測定用プレートの作製、DNAやRNAを基板上に固定化した核酸チップ、マイクロアレイ等の作製に好適に用いることができるがこれらに限定されるものではなく、例えば、細胞全体やその構成要素の固定化等にも適用することができる。
一方、上記の通り、本発明の第2の局面の物質固定化剤は、両極性又はノニオン性の水溶性ポリマーであって、1個以上の光反応性基を有し、かつ、金属と共有結合又は配位結合可能な基を有するポリマーから成る。ここで、「両極性」とは、中性付近のpH(pH6〜8)の水溶液中で電離して陽イオンになる基と陰イオンになる基を有していて、その電荷の合計が実質的に0になることを意味する。ここで「実質的に」とは、電荷の合計が0になるか、又は0にはならないとしても本発明の効果に悪影響を与えない程度に小さいことを意味する。また、「ノニオン性」とは、上記したとおり、中性付近のpH(pH6〜8)の水溶液中で電離してイオンになる基を実質的に有さないことを意味する。ここで「実質的に」とは、このような基を全く含まないか、又は含んでいるとしても本発明の効果に悪影響を与えない程度に微量(例えば、このような基の数が炭素数の1%以下)であることを意味する。
上記水溶性ポリマーの水に対する溶解度(水100gに溶解するグラム数)は、好ましくは5以上である。
上記光反応性基の好ましい例としてアジド基(-N3)を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
本発明に用いられる水溶性ポリマーの好ましい例として、下記一般式[I](上記一般式[I]と同じ)で表される構造を有する単位と、下記一般式[II]で示される構造を有する単位を含むポリマーを挙げることができる。なお、以下に説明する好ましい水溶性ポリマーは、光反応性基を有するが、金属と共有結合又は配位結合可能な基はまだ導入されていない。金属と共有結合又は配位結合可能な基は、該水溶性ポリマーに後で説明する方法により導入される。
Figure 2005111618
Figure 2005111618
(ただし、一般式[I]及び[II]中、X及びYは、互いに独立して、重合した状態の重合性原子団を表し、Rは光反応性基を有する原子団を表し、一般式[I]及び[II]で表される単位は、[I]は2個以上で[II]は1個以上であり、かつ、一般式[I]で表される単位の数は、一般式[II]で表される単位の数よりも大きい)。
(上記一般式[I]で表される構造を有する単位を、上記の通り本明細書において便宜的に「単位[I]」と言うことがある。また、上記一般式[II]で示される構造を有する単位を、以下、便宜的に「単位[II]」と言うことがある。)
を挙げることができる。
上記ホスホリルコリン含有ポリマーは、生体膜が種々の物質と接触するにもかかわらず、非特異吸着がほとんど起きないことに着目し、生体膜の構成成分であるホスホリルコリンを含むポリマーを利用して、所望の物質を基体に固定化することにより非特異吸着を有効に防止できるのではないかという着想に基づいて発明されたものである。
単位[I]は、ホスホリルコリン基を含む単位であり、Xは重合した状態の重合性原子団を表す。Xとしては、ビニル系モノマー残基が好ましい。単位[I]としては、下記一般式[I'](上記一般式[I']と同じ)に示されるものが好ましい。
Figure 2005111618
(ただし、式中、X’は、ビニル部分が付加重合している状態のメタクリルオキシ基、メタクリルアミド基、アクリルオキシ基、アクリルアミド基、スチリルオキシ基又はスチリルアミド基を表し、Rは単結合又は炭素数1〜10のアルキレン基(ただし1個又は2個のヒドロキシル基で置換されていてもよい)を表す)。
このような単位の好ましい具体例として、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、2−アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、N−(2−メタクリルアミド)エチルホスホリルコリン、4−メタクリロイルオキシブチルホスホリルコリン、6−メタクリロイルオキシヘキシルホスホリルコリン、10-メタクリロイルオキシデシルシルホスホリルコリン、ω−メタクリロイルジオキシエチレンホスホリルコリン又は4−スチリルオキシブチルホスホリルコリンに由来する(すなわち、これらの単位を重合させた)単位を挙げることができる。これらの中でも2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに由来する単位が特に好ましい。
一方、単位[II]中の光反応性基の好ましい例としてアジド基(-N3)を挙げることができるがこれに限定されるものではない。また、一般式[II]のYとしては、ビニル系モノマー残基が好ましい。単位[II]の好ましい例として、下記一般式[VI]で示されるものを挙げることができる。
Figure 2005111618
(ただし、Y’は、ビニル部分が付加重合している状態のメタクリルオキシ基、メタクリルアミド基、アクリルオキシ基、アクリルアミド基、スチリルオキシ基又はスチリルアミド基を表し、Rは単結合、炭素数1〜10のアルキレン基(ただし1個又は2個のヒドロキシル基で置換されていてもよい)、フェニレン基(ただし、1〜3個の炭素数1〜4のアルキル基又はヒドロキシル基で置換されていてもよい。)
単位[I]の数は単位[II]の数よりも大きく、その比率は、特に限定されないが、100:1〜100:50程度が好ましく、特に100:1〜100:20程度が好ましい。このように、ポリマーは、ホスホリルコリン基を有する単位[I]から主として成ることにより、非特異吸着が効果的に防止される。また、水溶性ポリマーの分子量は、特に限定されないが、通常、1,000〜2,000,000程度であり、好ましくは、5,000〜1,500,000程度である。
上記水溶性ポリマーは、本発明の効果に悪影響を与えない範囲で他の重合性モノマー由来の単位を含んでいてもよい。このような他の単位の割合は、本発明の効果に悪影響を与えない範囲であれば特に限定されないが、通常、ポリマー中の全単位中の70モル%以下、好ましくは50モル%以下である。
上記水溶性ポリマーの好ましい例として、下記一般式[V]で表すものを挙げることができる。
Figure 2005111618
(ただし、式中、X’、Y’、R、Rは上記定義と同じ意味を表し、n及びmは、互いに独立して、nは2以上、mは1以上の整数であり、かつ、nはmよりも大きく、X’を含む単位とY’を含む単位はランダムな順序で結合している。)
上記一般式[V]で示される化合物の中でも、特に下記式[IV]で示されるポリマーが好ましい。
Figure 2005111618
(ただし、n'は2以上の整数、m'は1以上の整数を表し、かつn'はm'よりも大きく、ホスホリルコリン含有単位と、アジドフェニル基含有単位はランダムな順序で結合している)。
なお、n'は10〜6000が好ましく、m'は1〜200が好ましい。
上記水溶性ポリマーは、上記した単位[I]及び単位[II]を単に重合させることにより製造することができる。あるいは、側鎖(ホスホリルコリン基含有基及び光反応性基含有基)を含まない主鎖のポリマーを先に合成し、後から側鎖を結合してもよい。また、ホルホリルコリン基含有基を有する単位[I]と、光反応性基を有さない単位[II]とを先ず重合し、後から光反応性基含有基を結合させてもよい。下記の実施例ではこの方法を採用している。なお、モノマーの重合や、側鎖の結合は、当業者の技術常識に従って容易に実施することができるし、下記の実施例にもその一例が具体的に記載されている。
なお、上記したホスホリルコリン含有水溶性ポリマーは、後述の通り、金属と共有結合又は配位結合可能な基を導入するために、遊離のカルボキシル基を有していることが好ましい。このような遊離のカルボキシル基は、メタクリル酸やアクリル酸のようなカルボキシル基含有ビニルモノマーをさらに共重合させるか、又は、光反応性基含有基を側鎖に結合させる際に、反応させる光反応性基含有基のモル数を、遊離のカルボキシル基のモル数よりも少なくして、光反応性基含有基を側鎖に導入した後にも遊離のカルボキシル基が残留するようにすることにより、水溶性ポリマー中に含めることができる。なお、遊離のカルボキシル基のモル数は、水溶性ポリマー分子を構成する全ての単位の合計のモル数を基準として、5%〜50%程度が好ましい。
また、本発明に用いられる水溶性ポリマーとしては、上記した、ホスホリルコリン部分を含有する両極性ポリマーの他に、ノニオン性水溶性ポリマーも好ましく用いることができる。ノニオン性水溶性ポリマーは、上記したホスホリルコリン含有ポリマーと同等の非特異吸着防止効果を有し、それでいてホスホリルコリン含有ポリマーよりも安価に製造又は入手可能であるという利点を有する。
ノニオン性水溶性ポリマーの分子量は、特に限定されないが、通常、350〜500万程度であり、好ましくは、500〜数10万程度である。
このようなノニオン性水溶性ポリマーの好ましい例として、ポリエチレングリコール(PEG)やポリプロピレングリコールのようなポリアルキレングリコール;ビニルアルコール、メチルビニルエーテル、ビニルピロリドン、ビニルオキサゾリドン、ビニルメチルオキサゾリドン、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、N-ビニルサクシンイミド、N-ビニルホルムアミド、N-ビニル-N-メチルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-iso-プロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、メチロールアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、アクリロイルピロリジン、アクリロイルピペリジン、スチレン、クロロメチルスチレン、ブロモメチルスチレン、酢酸ビニル、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、メチルシアノアクリレート、エチルシアノアクリレート、n-プロピルシアノアクリレート、iso-プロピルシアノアクリレート、n-ブチルシアノアクリレート、iso-ブチルシアノアクリレート、tert-ブチルシアノアクリレート、グリシジルメタクリレート、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、iso-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、iso-ブチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテルなどのモノマー単位を単独か混合物を構成成分とするノニオン性のビニル系ポリマー;ゼラチン、カゼイン、コラーゲン、アラビアガム、キサンタンガム、トラガントガム、グアーガム、プルラン、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、キトサン、キチン誘導体、カラギーナン、澱粉類(カルボキシメチルデンプン、アルデヒドデンプン)、デキストリン、サイクロデキストリン等の天然ポリマー、メチルセルロース、ビスコース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースのような水溶性セルロース誘導体等の天然ポリマーを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。これらのうち、特に好ましいものはポリエチレングリコール系ポリマー、ポリ(メタ)アクリルアミド及びポリ(グリシジル(メタ)アクリレート)であり、これらの中で特に好ましくは、ポリエチレングリコール系ポリマーであり、更にはポリエチレングリコール(メタ)アクリレートである。
上記したノニオン性水溶性ポリマーは、光反応性基を有する。ノニオン性水溶性ポリマー1分子当りの光反応性基の数は、1個以上であれば、特に限定されるものではないが、2個以上が好ましく、一方、あまりに多すぎると、非特異吸着が増大する恐れがあるので、ポリマーを構成する炭素数(側鎖の炭素を含まない)の10%以下が好ましく、さらに好ましくは5%以下である。光反応性基の好ましい例としてアジド基(-N3)を挙げることができるがこれに限定されるものではない。光反応性基の具体例としてフェニルアジド基、アセチル基、ベンゾイル基が挙げられるが、特に好ましくはフェニルアジド基である。アジド基等の光反応性基は、ノニオン性水溶性ポリマーに直接結合していてもよいが、任意のスペーサー構造を介してノニオン性水溶性ポリマーに結合されていてもよく、通常、後者の方が製造が容易であり好ましい。後者の場合、スペーサー構造は、何ら限定されるものではなく、例えば炭素数1〜10のアルキレン基(ただし1個又は2個のヒドロキシル基で置換されていてもよい)、フェニレン基(ただし、1〜3個の炭素数1〜4のアルキル基又はヒドロキシル基で置換されていてもよい)等を挙げることができる。
ノニオン性水溶性ポリマーへの光反応性基の導入は、常法に基づき容易に行うことができる。例えば、官能基を有するノニオン性水溶性ポリマーと、該官能基と反応する官能基を有するアジド化合物を反応させて、ノニオン性水溶性ポリマーにアジド基を結合させることができる。好ましいノニオン性水溶性ポリマーであるポリエチレングリコールを用いる場合、両末端にアミノ基やカルボキシル基を有するポリエチレングリコールが市販されているので、このような市販の官能基含有ポリエチレングリコールの官能基に、アジド基含有化合物を反応させてポリエチレングリコールにアジド基を結合させることができる。あるいは、ノニオン性水溶性ポリマーが水溶性ビニル系ポリマーのように、モノマーの重合により形成されるものである場合には、水溶性ビニル系ポリマーの主な構成単位となるビニル系モノマーと、光反応性ビニル系モノマーとを共重合させることにより光反応性基を有するノニオン性水溶性ポリマーを製造することもできる。この方法により得られる光反応性水溶性ビニル系ポリマーの好ましい例として、ポリ((メタ)アクリルアミド−光反応性(メタ)アクリル酸アミド)共重合体及びポリ(グリシジル(メタ)アクリレート−光反応性(メタ)アクリル酸アミド)共重合体、(ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート−光反応性アクリル酸アミド)共重合体等を挙げることができ、特に(ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート−光反応性アクリル酸アミド)共重合体が好ましい。
なお、上記したノニオン性水溶性ポリマーは、後述の通り、金属と共有結合又は配位結合可能な基を導入するために、遊離のカルボキシル基を有していることが好ましい。このような遊離のカルボキシル基は、例えば、メタクリル酸やアクリル酸のようなカルボキシル基含有ビニルモノマーをさらに共重合させることにより容易に付与することができる。なお、遊離のカルボキシル基のモル数は、水溶性ポリマーを構成する全ての単位の合計のモル数を基準として、5%〜50%程度が好ましい。
上記の通り、本発明に用いられる水溶性ポリマーは、金属と共有結合又は配位結合可能な基を有する。ここで、金属としては、QCMやSPRに用いられている金が重要である。金と共有結合可能な基としては、チオール基を挙げることができる。なお、チオール基が金と共有結合すること自体は公知であり、例えば、Japan Nanonet Bulletin 第58号(2004年3月16日)に記載されている。
上記した水溶性ポリマーにチオール基を導入する方法としては、例えば、アミノ基とチオール基の両方を1分子中に有する2-メルカプトエチルアミン等の化合物のチオール基を保護し、そのアミノ基と、水溶性ポリマー中の上記した遊離のカルボキシル基とをカルボジイミド等の架橋剤で結合し、次いで、チオール基を脱保護する方法を挙げることができる。チオール基の保護は、例えば、1分子中にアミノ基とチオール基を有する2-メルカプトエチルアミンのような化合物をジスルフィドダイマーに変換することにより行なうことができる。一方、脱保護は、ジスルフィドダイマーを、例えばジチオスレイトールのようなジスルフィド結合を切断する還元剤を作用させてジスルフィド結合を切断して遊離のチオール基を生じさせることにより行うことができる。このような方法によりチオール基を導入する方法が、下記実施例に具体的に記載されている。なお、チオール基の導入方法は、上記の方法に限定されるものではない。チオール基のモル数は、水溶性ポリマー1分子中に0.1〜100モル、特に1〜50モル程度が好ましい。
水溶性ポリマー中のチオール基は、水溶性ポリマーの溶液を金に常温で接触させるだけで金と結合する。
一方、金と配位結合可能な基としては、カルボキシル基及びアミノ基を挙げることができる。カルボキシル基は、上記した、水溶性ポリマー中に含まれる遊離のカルボキシル基をそのまま利用することができる。また、アミノ基は、該遊離のカルボキシル基に、カルボジイミドのような架橋剤を用いてジアミン化合物を結合させることにより容易に導入することができる。
なお、上記方法では、光反応基を有する水溶性ポリマーに、金属と共有結合又は配位結合可能な基を導入する態様を記載したが、金属と共有結合又は配位結合可能な基を先にポリマーに結合し、後から光反応性基を導入してもよい。これは、上記した遊離のカルボキシル基を利用して先にチオール基等を導入し、次に、余っている遊離のカルボキシル基を利用して上記のように光反応性基を導入することにより行うことができる。また、光反応性基と、金属と共有結合又は配位結合可能な基を同時にポリマーに導入することも可能である。
上記の通り、本発明は、両極性又はノニオン性の水溶性ポリマーであって、1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有する水溶性ポリマーと、金属と共有結合又は配位結合可能な基を有する低分子化合物とを含む、金属に物質を固定化するための物質固定化剤をも提供する。ここで、1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有する水溶性ポリマーは、上記した通りである(ただし、光反応性基は1分子中に少なくとも2個導入する必要があり、また、金属と共有結合又は配位結合可能な基を導入する必要がないので、上記した、遊離のカルボキシル基は含まない)。一方、金属と共有結合又は配位結合可能な基を有する低分子化合物は、好ましくは上記したチオール基又はカルボキシル基若しくはアミノ基を有する低分子化合物であり、これらの基を有するものであれば特に限定されない。好ましい例として、オクタデカンチオールのようなアルキルチオール、メルカプトエタノールのようなメルカプトアルキルアルコール、アルキルアミン及びアルキルカルボン酸等を挙げることができる(これらの化合物中のアルキル基の炭素数は好ましくは2〜20)。また、「低分子化合物」とは、分子量が1000以下の化合物を意味し、好ましくは、分子量は、50〜500程度である。
上記水溶性ポリマーと、上記低分子化合物との混合比率は、特に限定されないが、好ましくは、水溶性ポリマー100に対して低分子化合物がモル比で1〜50、さらに好ましくは5〜50程度である。
上記の通り、本発明はまた、両極性又はノニオン性の水溶性ポリマーと、1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有する光架橋剤と、金属と共有結合又は配位結合可能な基を有する低分子化合物とを含む、金属に物質を固定化するための物質固定化剤をも提供する。ここで、「両極性又はノニオン性の水溶性ポリマー」は、上記した水溶性ポリマーと同様である(ただし、光反応性基は1分子中に少なくとも2個導入する必要があり、また、金属と共有結合又は配位結合可能な基を導入する必要がないので、上記した、遊離のカルボキシル基は含まない。また、光反応性基が不要であるので、上記水溶性ポリマーから-N3基を除去したもの又は単位[II]を含まないものでよい)。また、「金属と共有結合又は配位結合可能な基を有する低分子化合物」は、上記の通りである。
光架橋剤が有する光反応性基の好ましい例として、アジド基(-N3)を挙げることができるがこれに限定されるものではない。光架橋剤としては、アジド基を2個有するジアジド化合物が好ましく、特に水溶性ジアジド化合物が好ましい。本発明に用いられる光架橋剤の好ましい例として、下記一般式[III](上記一般式[III]と同じ)で表される、本発明の第1の局面の物質固定化剤において光架橋剤として好ましく用いられるジアジド化合物を挙げることができる。
Figure 2005111618
一般式[III]中、Rは単結合又は任意の基を示す。-R-は、2個のフェニルアジド基を連結するだけの構造であるから、特に限定されない。好ましい-R-の例として、単結合(すなわち、2個のフェニルアジド基が直接連結される)、炭素数1〜6のアルキレン基(1個又は2個の炭素間不飽和結合を含んでいてもよく、1個又は2個の炭素原子が酸素と二重結合してカルボニル基を構成していてもよい)(特に好ましくはメチレン基)、-O-、-SO2-、-S-S-、-S-、-R2 ・・・Y・・・R3-(ただし、・・・は単結合又は二重結合を示し、Yは炭素数3〜8のシクロアルキレン基、R2及びR3は互いに独立に炭素数1〜6のアルキレン基(1個又は2個の炭素間不飽和結合を含んでいてもよく、該アルキレン基の基端の炭素原子とYとの結合が二重結合であってもよく)、1個又は2個の炭素原子が酸素と二重結合してカルボニル基を構成していてもよい)を示し、シクロアルキレン基は、1個又は2個以上の任意の置換基で置換されていてもよく(置換されている場合、好ましくはシクロアルキレン基を構成する炭素原子のうち、1個若しくは2個が酸素と二重結合してカルボニル基を構成し、及び/若しくは1個若しくは2個の炭素数1〜6のアルキル基で置換されている)を挙げることができ、また、一般式[III]中のそれぞれのベンゼン環は、1個又は2個以上の任意の置換基(好ましくはハロゲン、炭素数1〜4のアルコキシル基、スルホン酸若しくはその塩等の親水性基)で置換されていてもよい。好ましい-R-の具体例として次のものを例示することができる。−、-CH2-、-O-、-SO2-、-S-S-、-S-、-CH=CH-、-CH=CH-CO-、-CH=CH-CO-CH=CH-、-CH=CH-、
Figure 2005111618
好ましいジアジド化合物の具体例としては、本発明の第1の局面の物質固定化剤において光架橋剤として好ましく用いられる、上記したジアジド化合物の好ましい具体例を例示することができる。
本発明に用いられる光架橋剤の内、特に好ましいのは水溶性のものである。光架橋剤についての「水溶性」とは、0.5mM以上、好ましくは2mM以上の濃度の水溶液を与えることができることを意味する。
上記水溶性ポリマー、低分子化合物及び架橋剤の混合比率は、特に限定されないが、好ましくは、水溶性ポリマー100に対して低分子化合物がモル比で1〜50、さらに好ましくは5〜50程度であり、架橋剤がモル比で1〜50、さらに好ましくは1〜30程度である。
上記本発明の物質固定化剤を用いて物質を固定化する基体としては、表面が金属であり、QCM測定やSPR測定において用いられている表面が金製の基板を好ましい例として挙げることができる。
本発明の物質固定化剤を用いて、基体上に所望の物質を固定化することは、次のようにして行うことができる。先ず、基体に固定化すべき物質と、本発明の物質固定化剤とを含む水溶液又は水懸濁液を前記基体に塗布する。この場合、水溶液中の水溶性ポリマーの濃度(重量基準)は、特に限定されないが、通常、0.005%〜10%程度であり、好ましくは0.04〜1%程度である。また、固定化すべき物質の濃度(重量基準)は、通常、用いる水溶性ポリマーの10倍ないし200倍程度であり、好ましくは20倍ないし100倍程度である。塗布後、室温で15分間〜1時間程度放置すると、金属と共有結合又は配位結合可能な基が基体と結合し、それによって水溶性ポリマー(該ポリマーが金属と共有結合又は配位結合可能な基を有する場合)又は上記低分子化合物が基体に結合される。なお、物質固定化剤が上記低分子化合物を含む場合、該低分子化合物を先ず基体に作用させて基体に結合させ、次いで固定化すべき物質と水溶性ポリマーとを含む水溶液若しくは水懸濁液、又は固定化すべき物質と水溶性ポリマーと架橋剤とを含む水溶液若しくは水懸濁液を前記基体に塗布してもよい。
次に、塗布した液を好ましくは乾燥した後、光を照射する。光は、用いる光反応性基がラジカルを生じさせることができる光であり、光反応性基としてアジド基を用いる場合には、紫外線が好ましい。照射する光線の線量は、特に限定されないが、通常、1cm2当たり1mW〜100mW程度である。
光を照射することにより、光反応性基がラジカルを生じる。水溶性ポリマーが、金属と共有結合又は配位結合可能な基及び光反応性基の両者を有する場合には、基体に結合された水溶性ポリマーの光反応性基に、固定化すべき物質が共有結合され、これにより固定化すべき物質が、水溶性ポリマーを介して基体に結合される。また、水溶性ポリマーが1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有し、金属と共有結合又は配位結合可能な基を有する低分子化合物が併用される場合には、基体に結合した低分子化合物に水溶性ポリマーが共有結合し、かつ、固定すべき物質が水溶性ポリマーに共有結合される。また、水溶性ポリマーが光反応性基を含まず、金属と共有結合又は配位結合可能な基を有する低分子化合物及び光架橋剤が併用される場合には、基体に結合した低分子化合物に光架橋剤を介して水溶性ポリマーが共有結合し、かつ、固定すべき物質が水溶性ポリマーに共有結合される。従って、いずれの場合も固定化すべき物質が基体に固定化される。
なお、光反応性基として用いられるアジド基は、光を照射することにより窒素分子が離脱すると共に窒素ラジカルが生じ、この窒素ラジカルは、アミノ基やカルボキシル基等の官能基のみならず、有機化合物を構成する炭素原子とも結合することが可能であるので、ほとんどの有機物を固定化することが可能である。なお、本発明の方法では、光反応性基により生じるラジカルを利用して結合反応を行うので、固定化すべき物質の特定の部位と結合するのではなく、ランダムな部位と結合する。従って、活性部位が結合に供されて活性を喪失する分子も当然出てくると考えられるが、活性部位に影響を与えない部位で結合する分子も当然存在するので、本発明の方法によれば、従来、適当な置換基が活性部位又はその近傍にあるために、共有結合で固定化することが困難であった物質であっても、全体として活性を喪失させることなく、共有結合により基体に固定化することができる。
光が照射されなかった部分では、光反応性基が固定化すべき物質に結合しないので、洗浄すれば固定化すべき物質は除去される。従って、フォトマスク等を介して選択露光を行うことにより、任意のパターンで物質を固定化することができる。従って、選択露光により、マイクロアレイ等の任意の種々の形状に物質を固定化することができるので、非常に有利である。
あるいは、本発明の物質固定化剤と、固定化すべき物質の混合物を基体上にマイクロスポッティングし、基体の全面を光照射してもよい。マイクロスポッティングは、液を基体上に非常に狭い領域に塗布する手法であり、DNAチップ等の作製に常用されており、そのための装置も市販されているので、市販の装置を用いて容易に行うことができる。あるいは、先ず、基体上に本発明の物質固定化剤を全面にコーティングし、その上に固定化すべき物質をマイクロスポッティングし、次いで基体の全面に光照射してもよい。この場合、固定化すべき物質のスポットが、物質固定化剤の層の上に形成され、物質固定化剤を介して基体に共有結合で固定化される物質の割合が高くなる。さらに、基体上に本発明の物質固定化剤をマイクロスポッティングし、その上に固定化すべき物質をマイクロスポッティングし、次いで基体の全面に光照射してもよい。この場合にも固定化すべき物質のスポットが、物質固定化剤の層(それぞれ分離したスポット)の上に形成され、物質固定化剤を介して基体に固定化される物質の割合が高くなる。
本発明の方法は、抗体若しくはその抗原結合性断片又は抗原を固定化した免疫測定用プレートの作製、DNAやRNAをQCMやSPRの基板上に固定化した核酸チップ、マイクロアレイ等の作製に好適に用いることができるがこれらに限定されるものではなく、例えば、細胞全体やその構成要素の固定化等にも適用することができる。
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
1. 水溶性ポリマーの調製
(1) メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)(一般式[I']中、R1が-C2H4-でX'が-CH2-C(CH3)(COO-)-)-メタクリル酸共重合体及びMPC-ブチルメタクリレート共重合体の製造
MPCは市販品を用いた。MPCとメタクリル酸又はブチルメタクリレートとを通常の方法によりランダム共重合した。以上によりMPC-メタクリル酸共重合体(MPC:メタクリル酸(モル比)=9:1)及びMPC-ブチルメタクリレート共重合体(MPC:ブチルメタクリレート(モル比)=3:7)を得た。
(2) 水溶性ポリマー水溶液の調製
上記の通り製造したMPC-メタクリル酸共重合体若しくはMPC-ブチルメタクリレート共重合体又は市販のポリエチレングリコール(平均分子量1000)を水溶性ポリマーとして用いた。各水溶性ポリマーを水に溶解し、0.5重量%の濃度に調整した。
2. A抗原陽性パネル血球の固定化
4,4'-ジアジドスチルベン-2,2'-ジスルホン酸ナトリウム(市販品)を光架橋剤として用いた。光架橋剤の濃度が0.25mMになるように、1(2)で調製した水溶性ポリマーと光架橋剤を混合した。得られた混合物(1mL)とA抗原陽性パネル血球(1mL)を混合した。得られた血球浮遊液をポリスチレンディッシュに0.5μLずつスポットした。乾燥後、UV照射(波長260nm、照射量40mW/cm2、10秒間)によりパネル血球を固定化した(水溶性ポリマーも固定化される)。
3. A抗原の免疫測定
PBS(0.1% Tween20(登録商標))で洗浄後、モノクローナルA抗体(市販品)と室温で2時間反応させた。PBS(0.1% Tween20(登録商標))で洗浄後、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識二次抗体(市販品)と室温で1時間反応させた。PBS(0.1% Tween20(登録商標))で洗浄後、化学発光試薬を添加し、発光強度を測定した。
4. 結果
測定した発光強度を下記表1に示す。
Figure 2005111618
表1に示すように、いずれの水溶性ポリマーを用いた場合にも、有意な発光強度が得られ、免疫測定が可能であることがわかる。また、水溶性ポリマーとして、MPC-ブチルメタクリレートを用いた場合の方がMPC-メタクリル酸を用いた場合よりも発光強度が大きくなっているのは、MPC-ブチルメタクリレートが親水性基と疎水性基(ブチル基)を有し、光架橋剤とミセルを作りにくく、より効率的な反応が可能であったためと考えられる。
スギアレルゲンの免疫測定
水溶性ポリマーとして、平均分子量1000のポリエチレングリコール(PEG1000)(市販品)、平均分子量10000のポリエチレングリコール(PEG10000)(市販品)又は実施例1で製造したMPC-ブチルメタクリレート共重合体を用いた。各水溶性ポリマーを、0.125重量%の濃度になるように水に溶解した。得られた各水溶性ポリマー水溶液を、光架橋剤(4,4'-ジアジドスチルベン-2,2'-ジスルホン酸ナトリウム)と混合した(光架橋剤の終濃度は0.125mM)。得られた各水溶性ポリマー水溶液を、スギアレルゲン(市販品)水溶液(0.25重量%)と1:1で混合した。得られた混合液をポリスチレンディッシュに0.5μLずつスポットした。乾燥後、UV照射(波長260nm、照射量40mW/cm2、10秒間)によりスギアレルゲンを固定化した(水溶性ポリマーも固定化される)。PBS(0.1% Tween20(登録商標))で洗浄後、スギアレルゲン抗体(市販品)と室温で3時間反応させた。PBS(0.1% Tween20(登録商標))で洗浄後、HRP標識二次抗体(市販品)と室温で1時間反応させた。PBS(0.1% Tween20(登録商標))で洗浄後、化学発光試薬を添加し、発光強度を測定した。また、比較のため、スギアレルゲン抗体に代えてダニアレルゲン抗体(市販品)を用いて上記と同じ操作を行なった。
さらに、比較のため、本願発明者らが、先に発明し、国際特許出願(PCT/JP2004/004510)している、光反応性ポリエチレングリコール又は光反応性MPCポリマーを物質固定化剤として用い、上記と同様の操作を行なった。光反応性ポリエチレングリコールは、100mgのポリ(エチレングリコール)ビス (3-アミノプロピル)末端(Aldrich社より市販、平均分子量1500)と68.6mgのN-(4-アジドベンジロキシ)スクシンイミドをジメチルホルムアミド10mlに溶解し、pH6で4℃で24時間攪拌して反応させて得られたものである。また、光反応性MPCポリマーは、2mLのPMAc水溶液(5wt%=50mg/mL)(PMAcは2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(90%)とメタクリル酸(10%)のランダム共重合体)に12.44mgの4−アジドアニリンと、17.47mgの水溶性カルボジイミド(WSC)を混合し,最終的に純水で100mLにメスアップし、pH7で24時間撹拌(冷蔵庫中4℃)して反応させて得られたものである。
結果を下記表2に示す。表2に示されるように、ダニアレルゲン抗体を一次抗体として用いた場合の発光強度が0であり、スギアレルゲン抗体を一次抗体として用いた場合にはいずれの水溶性ポリマーを用いた場合も大きな発光強度が測定されたので、本発明の物質固定化剤により非特異吸着を防止して免疫測定が可能であることが明らかになった。なお、先に国際特許出願している光反応性ポリエチレングリコール又は光反応性MPCポリマーを物質固定化剤を用いた場合の発光強度は、PEG1000を用いた場合と同等であった。
Figure 2005111618
基板として、平均表面粗さ0.2μm若しくは0.4μmのポリスチレン基板又は平均表面粗さ2.5μmないし20μmのアクリル基板を用いることを除き、実施例1と同じ操作を行った(用いた水溶性ポリマーはポリエチレングリコール)。
結果を図1に示す。図1に示されるように基板の平均表面粗さが15μmの場合に、他の表面粗さの基板よりも明らかに発光強度が高くなった。
ダニアレルゲンの免疫測定
ポリエチレングリコールモノメタクリレート(ポリエチレングリコール部分子量352)4.5gを50mlの酢酸エチルに溶解し、AIBNを開始剤として14.03mg加え、60℃で6時間反応させた。反応液はエバポレーターにて溶媒を取り除いた後、水で溶解し、限外ろ過を行い未反応のモノマーを取り除いた。ゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)にてポリマー生成を確認した。
水溶性ポリマーとして、上記ポリエチレングリコールメタクリレートのポリマー以外に、平均分子量1000のポリエチレングリコール(PEG1000)(市販品)、平均分子量10000のポリエチレングリコール(PEG10000)(市販品)又は実施例1で製造したMPC-ブチルメタクリレート共重合体を用いた。
各水溶性ポリマーを、0.125重量%の濃度になるように水に溶解した。得られた各水溶性ポリマー水溶液を、光架橋剤(4,4'-ジアジドスチルベン-2,2'-ジスルホン酸ナトリウム)と混合した(光架橋剤の添加量はポリマーに対して5重量%)。得られた各水溶性ポリマー水溶液を、ダニアレルゲン(市販品)水溶液(0.25重量%)と1:1で混合した。得られた混合液をポリスチレンディッシュに50nLずつスポットした。乾燥後、UV照射(波長290〜390nm、照度17mW/cm2、10秒間)によりダニアレルゲンを固定化した(水溶性ポリマーも固定化される)。
本実施例では、処理時間の短縮を図るべく、以下の処理はすべてミキサーを用いて行った。PBS(0.1% Tween20(登録商標))で洗浄後、ダニアレルゲン抗体(市販品)と室温で20分反応させた。同様にPBS(0.1% Tween20(登録商標))で洗浄後、HRP標識二次抗体(市販品)と室温で20分反応させた。PBS(0.1% Tween20(登録商標))で洗浄後、化学発光試薬を添加し、発光強度を測定した。
結果を下記表3に示す。表3に示されるように、ポリエチレングリコールモノメタクリレートポリマー(PEGMAP)を用いた場合が、もっとも大きな発光強度が測定された。これはポリエチレングリコールモノメタクリレートポリマーが、蛋白固定に適した疎水性構造と水溶性を併せ持っているためと考えられる。このため、従来の1/4以下の時間で充分な発光強度を得ることが出来、診断現場での即日検査が可能になった。
また、上記ダニアレルゲン固定化チップを−30℃で1ヶ月保存した後、同様にダニアレルゲン抗体と反応させ、そのときの発光強度も表3の下段に示した。安定性においてもポリエチレングリコールモノメタクリレートポリマーが優れていることが明らかになった。
Figure 2005111618
1. MPCポリマーの合成
下記の合成スキームに従い、常法によりメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)ポリマーを合成した。なお、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸の配合比率をモル比(下記式中のnとmの比)で9:1(以下、「MPC9:1」)、7:3(以下、「MPC7:3」)、5:5(以下、「MPC5:5」)とした3種類のポリマーを合成した。なお、合成したポリマーは、ランダム共重合体である。合成されたMPCポリマーの平均分子量は、MPC9:1が215000、MPC7:3が550000、MPC5:5が1104000であった。
Figure 2005111618
2. MPCポリマーへのチオール基およびアジド基の導入
(1) 2-メルカプトエチルアミンダイマーの調製
2-メルカプトエチルアミン水溶液NaOHによりpH8.5に調整)を攪拌しながらインキュベーション(20℃、48時間)により2-メルカプトエチルアミンダイマーを生成した。なお、生成物は、5-5'ジチオビス2-ニトロベンゼンのエルマン反応の産生した3-カルボキシレート4−ニトロチオフィノイレート(TNB)の412nmの吸光度から評価した。
(2) MPCポリマーへのチオール基の導入
各MPCポリマーに、2-メルカプトエチルアミンダイマー(メタクリル酸モル濃度の2倍濃度)及び水溶性カルボジイミド(メタクリル酸モル濃度の2倍濃度)の水溶液を添加し、4℃、pH7.0で24時間インキュベートした。次いでジチオトレイトール(DTT)(メタクリル酸モル濃度の2倍濃度)を添加し、ジスルフィドダイマーを還元した(pH10、12時間)。透析によりポリマー以外の未反応物を除去した。導入されたチオールの量を、エルマン反応により定量した。MPCポリマー1分子中に導入されたチオール基は、MPC9:1が0.14mol、MPC7:3が7.5mol、MPC5:5が10.3molであった。
(3) MPCポリマーへのアジド基の導入
チオール基を導入したMPCポリマーを、アジドアニリン(メタクリル酸モル濃度の2倍濃度)と水溶液中で4℃で24時間、pH7.0で反応させ、透析により未反応物を除去した。得られた生成物を凍結乾燥し、アジド基を吸光度測定より定量した。MPCポリマー1分子中に導入されたアジド基は、MPC9:1が1.1mol、MPC7:3が29.4mol、MPC5:5が99.5molであった。
金製基板との結合
実施例5で調製した、チオール基及びアジド基含有MPC9:1、MPC7:3、MPC5:5を以下の方法により、水晶発振子マイクロバランス測定装置の金製のセンサチップ電極部分に固定化した。先ず、センサチップの電極部分にピランハ溶液(過酸化水素水:濃硫酸 1:3)をのせ、5分間静置し、水で洗浄後、エアーを吹付け、水を取り除いた。この操作を繰り返した。センサチップを水晶発振子マイクロバランス測定装置に図2のようにセットし、水に浸してベースラインが安定するのを待った。なお、図2中、参照番号1がセンサチップ、2が純水である。安定後、サンプル(チオール基及びアジド基含有MPC9:1、MPC7:3又はMPC5:5の水溶液)を添加し、センサー部への結合量を周波数変化として測定した。対照として、チオール基を導入していないMPC7:3の水溶液も同様にして基板に滴下し、測定した。
結果を図3及び表4に示す。サンプル添加後、コントロールのチオール基の導入していないMPCポリマーではほとんど変化が見られないのに対して、チオール基を導入したMPCポリマーではどの条件でも周波数に変化が生じた。周波数変化は表4に示すように、平均分子量の大きい順、1分子中に含まれるチオール基の量の順に変化量が大きく、予想したデータと同じ結果となった。これにより金表面とチオール基との共有結合を確認することができた。
Figure 2005111618
QCMによるダニアレルゲンの免疫測定
市販のダニアレルゲンを透析により脱塩し、凍結乾燥により25倍に濃縮した。一方、実施例1で調製したMPC7:3と市販のダニアレルゲン抗体を重量比0.5:1で緩衝液中で混合し、得られた水溶液(MPC7:3ポリマー濃度0.125重量%)をセンサチップ上に1μLスポットした。乾燥後、紫外線照射(10秒間、線量40mW/cm)により固定化した。PBS(1%BSA)2mlにセンサチップをセットした。ベースライン安定後、先に濃縮したダニアレルゲン(100μg/ml)10μLを滴下した。周波数変化をQCMにより経時的に測定した。一方、対照として、ダニアレルゲン抗体を含まないものも同様にセンサチップに固定化し、測定した。
結果を図4に示す。ダニアレルゲン滴下後、MPCポリマーのみではほぼ周波数に変化が無いのに対して、ダニアレルゲン抗体を固定化したセンサチップでは、周波数が約500Hz変化した。この周波数変化は抗原抗体反応によるセンサ表面の重量変化に由来するものであり、MPCポリマーで固定化したダニアレルゲン抗体がアレルゲンを認識できることを実証することができた。これにより、本発明の物質固定化剤を用いたQCMによりアレルゲンを検知することが可能であることが明らかになった。
1. 水溶性ポリマーの調製
ポリエチレングリコールモノメタクリレート(ポリエチレングリコール部分子量350)4.5gを50mlの酢酸エチルに溶解し、AIBNを開始剤として14.03mg加え、60℃で6時間反応させた。反応液はエバポレーターにて溶媒を取り除いた後、水で溶解し、限外ろ過を行い未反応のモノマーを取り除いた。ゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)にてポリマー生成を確認した。
2. 水溶性ポリマー水溶液の調製及び固定化
4,4'-ジアジドスチルベン-2,2'-ジスルホン酸ナトリウム(市販品)を光架橋剤として用いた。光架橋剤の濃度が0.003125%、上記水溶性ポリマーの濃度が0.0625%、BSA(Aldrich社製)濃度が0.125%となるように混合した。得られた水溶液を、ビアコア社製SPR用金基板をメルカプトエタノールで20分間処理した後、その上に7×7mmの面積に20μL塗布し、乾燥した(膜厚約0.2μm)。次いで、UV照射(ブラックライトで7分間)によりBSAを固定化した。
3. 測定
PBS(0.1% Tween20(登録商標))で洗浄後、抗BSAウサギIgG(市販品)(20μg/mL)を使用して、SPR測定を実施した。
4. 結果
測定の結果、SPR感度(RU)は300であった。
1. 水溶性ポリマーの調整
実施例8と同様に処理した。
2. 水溶性ポリマー水溶液の調製及び固定化
イニシアム社製QCM用センサーチップの電極部分に1mMメルカプトエタノールを5μL滴下し、20分静置した後、超純水で洗浄し、乾燥させた。 4,4'-ジアジドスチルベン-2,2'-ジスルホン酸ナトリウム(市販品)を光架橋剤として用いて、光架橋剤の濃度が0.003125%、上記水溶性ポリマーの濃度が0.0625%、BSA(Aldrich社製)濃度が0.125%となるように混合した溶液を、チップに0.5μL滴下し、乾燥させた。次いで、UV照射(ブラックライトで7分間)によりBSAを固定化した。
3.測定
PBS(0.1% Tween20(登録商標))で洗浄後、抗BSA抗体(30μg/ml)を結合させ、QCMにより周波数の変化を測定した。
4.結果
測定の結果、QCM周波数変化(Hz)は1000であった。

Claims (33)

  1. 1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有する光架橋剤と、分子全体として電気的に中性な水溶性ポリマーとを含む、基体上に所望の物質を固定化するための物質固定化剤。
  2. 前記光反応性基がアジド基である請求項1記載の物質固定化剤。
  3. 前記光架橋剤が水溶性のジアジド化合物である請求項2記載の物質固定化剤。
  4. 前記水溶性ポリマーが、ノニオン性ポリマーである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の物質固定化剤。
  5. 前記ノニオン性ポリマーが、ポリアルキレングリコールである請求項4記載の物質固定化剤物質固定化剤。
  6. 前記ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールである請求項5記載の物質固定化剤。
  7. 前記ノニオン性ポリマーが、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートのビニル重合体である請求項4記載の物質固定化剤。
  8. 前記水溶性ポリマーが、下記一般式[I]で表される構造を有する単位を含む、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の物質固定化剤。
    Figure 2005111618
    (ただし、一般式[I]中、Xは、重合した状態の重合性原子団を表わす)。
  9. Xがビニル系モノマー由来である請求項8記載の物質固定化剤。
  10. 前記水溶性ポリマーが、下記一般式[I']で表される構造を有する単位を含む、請求項8記載の物質固定化剤。
    Figure 2005111618
    (ただし、X'は、ビニル部分が付加重合している状態のメタクリルオキシ基、メタクリルアミド基、アクリルオキシ基、アクリルアミド基、スチリルオキシ基又はスチリルアミド基を表し、R1は単結合又は炭素数1〜10のアルキレン基(ただし1個又は2個のヒドロキシル基で置換されていてもよい)を表す)
  11. X’を含む単位が、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、2−アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、N−(2−メタクリルアミド)エチルホスホリルコリン、4−メタクリロイルオキシブチルホスホリルコリン、6−メタクリロイルオキシヘキシルホスホリルコリン、10-メタクリロイルオキシデシルホスホリルコリン、ω−メタクリロイルジオキシエチレンホスホリルコリン又は4−スチリルオキシブチルホスホリルコリンに由来する請求項10記載の物質固定化剤。
  12. 前記一般式[I]で示される単位が、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに由来する請求項8記載の物質固定化剤。
  13. 基体に固定化する物質が、ポリペプチド、核酸、脂質並びに細胞及びその構成要素から成る群から選ばれる請求項1ないし12のいずれか1項に記載の物質固定化剤。
  14. 基体に固定化すべき物質と、請求項1ないし13のいずれか1項に記載の物質固定化剤とを含む水溶液又は水懸濁液を前記基体に塗布し、光照射することを含む、基体上への物質の固定化方法。
  15. 基体に固定化する物質が、ポリペプチド、核酸、脂質並びに細胞及びその構成要素から成る群から選ばれる請求項14記載の方法。
  16. 前記光を選択照射することにより、物質を固定化する領域をパターニングすることを含む請求項14又は15記載の方法。
  17. 請求項14ないし16のいずれか1項に記載の方法により前記物質が固定化された基体。
  18. 前記基体が樹脂製である請求項17記載の基体。
  19. 前記基体の平均表面粗さが14μmないし17μmである請求項18記載の基体。
  20. 請求項1ないし13に記載の組成物の、物質固定化剤としての使用。
  21. 両極性又はノニオン性の水溶性ポリマーであって、1個以上の光反応性基を有し、かつ、金属と共有結合又は配位結合可能な基を有するポリマーから成る、金属に物質を固定化するための物質固定化剤。
  22. 金属と共有結合可能な基がチオール基である請求項21記載の物質固定化剤。
  23. 前記金属が金である請求項21又は22記載の物質固定化剤。
  24. 前記水溶性ポリマーが、下記一般式[I]で表される構造を有する単位と、下記一般式[II]で示される構造を有する単位を含む水溶性ポリマーに、前記光反応性基及び金属と共有結合又は配位結合可能な基が導入されたものである請求項21ないし23のいずれか1項に記載の物質固定化剤。
    Figure 2005111618
    Figure 2005111618
    (ただし、一般式[I]及び[II]中、X及びYは、互いに独立して、重合した状態の重合性原子団を表し、Rは光反応性基を有する原子団を表し、一般式[I]で表される単位は2個以上、一般式 [II]で表される単位は1個以上であり、かつ、一般式[I]で表される単位の数は、一般式[II]で表される単位の数よりも大きい)。
  25. 前記光反応性基がアジド基である請求項21ないし24のいずれか1項に記載の物質固定化剤。
  26. 両極性又はノニオン性の水溶性ポリマーであって、1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有する水溶性ポリマーと、金属と共有結合又は配位結合可能な基を有する低分子化合物とを含む、金属に物質を固定化するための物質固定化剤。
  27. 両極性又はノニオン性の水溶性ポリマーと、1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有する光架橋剤と、金属と共有結合又は配位結合可能な基を有する低分子化合物とを含む、金属に物質を固定化するための物質固定化剤。
  28. 基体に固定化すべき物質と、請求項21ないし27のいずれか1項に記載の物質固定化剤とを含む水溶液又は水懸濁液を前記基体に塗布し、光照射することを含む、基体上への物質の固定化方法。
  29. 前記物質固定化剤が、請求項26又は27記載の物質固定化剤であり、前記低分子化合物を先ず基体に作用させ、次いで前記水溶性ポリマー又は前記水溶性ポリマーと前記架橋剤とを作用させる請求項28記載の方法。
  30. 基体に固定化する物質が、ポリペプチド、核酸、脂質並びに細胞及びその構成要素から成る群から選ばれる請求項29記載の方法。
  31. 請求項28ないし30記載の方法により、前記物質が金属上に固定化された基体。
  32. 請求項21ないし25のいずれか1項に記載のポリマーの、物質固定化剤のとしての使用。
  33. 請求項26又は27記載の組成物の、物質固定化剤としての使用。

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