JP2015072153A - バイオセンサ及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】水晶基板22と、該水晶基板の一面に固着された複数の第1の電極24a,24bと、他面に固着された第2の電極26とを有する水晶振動子28を備えてなり、複数の第1の電極の少なくとも1つの表面には、特定の生体関連物質と特異的に結合する部位を有する捕捉物質が固定化され、残りの第1の電極の少なくとも1つの表面には、当該捕捉物質が固定化されていない。複数の第1の電極の表面には、体液中に含まれる生体関連物質の非特異的吸着を防止するためにブロッキング剤及び/又はカゼインが好適に固定化されている。
【選択図】図2
Description
一般的に、マーカーの検出法としては、マーカーが持つ固有のアフィニティを利用してマーカーのみを分離し計測する高速液体クロマトグラフィーや特定のマーカーのみを捕捉する抗体を利用した抗原抗体反応を用いる酵素免疫測定法などがある。しかしながら、これらの方法は、前処理工程が多く、高感度を実現するためには長時間の作業や反応時間が必要となる。また、標識化した抗体が必要なため測定キットの価格が高い。簡便な検出手法としてイムノクロマト法が知られているが、定量性に欠けるという問題がある。
[1] 生体関連物質を検出するバイオセンサであって、水晶基板と、該水晶基板の一面に固着された複数の第1の電極と、他面に固着された1つの第2の電極とを有する水晶振動子を備えてなるバイオセンサ。
[2] 複数の前記第1の電極の少なくとも1つは、表面に特定の生体関連物質と特異的に結合する部位を有する捕捉物質が固定化されており、残りの1つは、表面に前記捕捉物質が固定化されていない上記[1]記載のバイオセンサ。
[3] 複数の前記第1の電極は、表面に体液中に含まれる生体関連物質の非特異的吸着を防止するために1又は複数種類のブロッキング剤が固定化されている上記[2]記載のバイオセンサ。
[4] 前記ブロッキング剤の1つは、カゼインを含む液体であり、カゼインが前記第1の電極の表面に固定化されている上記[3]記載のバイオセンサ。
[5] 前記ブロッキング剤の1つは、合成樹脂を主成分とし、動物由来の物質を含まない上記[3]又は[4]記載のバイオセンサ。
[6] 前記水晶基板に固着され、且つ前記第1の電極上に液体を保持するためのケースを有し、該ケースが液体を注入する注入口を備える上記[1]ないし[5]のいずれかに記載のバイオセンサ。
[7] 複数の前記第1の電極の少なくとも1つは、前記生体関連物質とは異なる生体関連物質を捕捉するために、表面に該異なる生体関連物質と特異的に結合する部位を有する捕捉物質が固定化されている上記[2]ないし[6]のいずれかに記載のバイオセンサ。
[8] 前記捕捉物質は、生体関連物質との特異的な結合を解離させる再生液によって当該生体関連物質との結合が解離したものを含む上記[2]ないし[7]のいずれかに記載のバイオセンサ。
[9] 生体関連物質を検出するバイオセンサを製造する方法であって、水晶振動子を構成する水晶基板の一面に複数の第1の電極を、他面に1つの第2の電極を固着し、複数の前記第1の電極の少なくとも1つに特定の生体関連物質と特異的に結合する部位を有する捕捉物質を固定化し、前記第1の電極のすべてに体液中に含まれる生体関連物質の非特異的吸着を防止するブロッキング剤を固定化する各ステップを含むバイオセンサの製造方法。
[10] 前記ブロッキング剤が、合成樹脂を主成分とし、実質的に動物由来の物質を含まないブロッキング剤、及び/又はカゼインであることを特徴とする上記[9]記載のバイオセンサの製造方法。
[11] 上記[1]ないし[7]のいずれかに記載のバイオセンサを用いて生体関連物質を定量する方法であって、特定の生体関連物質と特異的に結合する部位を有する捕捉物質によって固定化された前記第1の電極(本明細書において「検体電極」ということがある。)に生じる周波数と該捕捉物質によって固定化されていない前記第1の電極(本明細書において「参照電極」ということがある。)に生じる周波数の差によって特定の生体関連物質を定量する方法。
[12] 競合阻害法によって特定の生体関連物質を定量する上記[11]記載の方法。
図1は、本発明の第1の実施形態によるバイオセンサを示し、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
バイオセンサ10は、水晶基板12を共振させるために、水晶基板12の一面に4つの第1の電極14a〜14dと、他面に1つの第2の電極16がそれぞれ固着された水晶振動子を備えてなる。
本発明のバイオセンサを使用する生体関連物質の測定法(QCM法)とは、水晶振動子の電極表面に物質が付着すると、その重量に応じて周波数が低下する現象を利用する方法である。その周波数の変化は、固有周波数の2乗及び付着した物質の重量に比例する。従って、固有周波数が大きいほど高感度な測定に適している。
第1の電極14a〜14d及び第2の電極16は、金でコーティングされている。
バイオセンサ20は、水晶基板22を共振させるために、水晶基板22の一面に2つの第1の電極24a,24bと、他面に1つの第2の電極26がそれぞれ固着され、第1の電極24a,24bはケース29で覆われている。ケース29は、それぞれ液体を注入する注入口29iと排出する排出口29oを備える。その他の構成、水晶基板22及び電極24a,24bの材料等は、バイオセンサ10と同じである。ケース29の容量は100nL以上が好ましい。
バイオセンサ20では、電極24a,24bを覆うケース29が備えられているので、その中に試料溶液を入れ、あるいは通液しながら、電極24a,24bの表面に試料溶液中の被測定物質を接触させることができる。
溶液は、シリンジポンプ72によってインジェクションバルブ74を介してバイオセンサ20の注入口29iからケース29(図2参照)内に供給され、排出口29oから排出される。検体を注入するときには、インジェクションバルブ74を介して溶液とともに一定量の検体がバイオセンサ20のケース29へ供給される。検体がバイオセンサ20に到達すると、第1の電極24a表面に固定化された捕捉物質に被測定物質が結合することで水晶振動子の質量が増加し、固有周波数が変化する。その変化が周波数カウンタ76で測定され、パソコン78でデータの取得が行われる。
溶液としては、例えば、リン酸緩衝溶液(Phosphate Buffered Saline;PBS)又は、トリス緩衝溶液等の従来公知の緩衝溶液を用いることができる。緩衝溶液のpHは特に限定されないが、通常pH5.5〜8.5であり、好適にはpH7〜8である。
生物学的親和性を利用する測定法においては、被測定物質の捕捉物質に対する結合能の有無を特異的に検出できることが重要であるとともに、非特異的に吸着する非特異的吸着物質(夾雑物質)をいかに除去するかが重要である。一般的に動物由来のブロッキング剤としてウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、スキムミルクやそれに近い材料を含有する試薬が使われている。これらの他に、合成樹脂を主成分とし、実質的に動物由来の物質を含まないブロッキング剤、例えば、日油株式会社の免疫学的測定用ブロッキング試薬N101,N102、及びLipidure(登録商標)が好ましい。
また、本発明では、上記バイオセンサの第1の電極に抗カゼイン抗体を含む液体を塗布した場合には、抗原抗体反応により抗体が付着されるので該第1の電極の重量が増加することによって周波数低下が生じる。
−実施例1−
(バイオセンサの製造)
バイオセンサ20の第1の電極24aに被測定物質に対する抗体を塗布し、10分間保持して電極24a表面に抗体を固定化した。次に、第1の電極24a,24bの双方に対して免疫学的測定用ブロッキング試薬N102を3倍に希釈して塗布し、30分間保持して電極表面に固定化した。その後、カゼインを1.0重量%含む溶液を塗布し、10分間保持した後、これら電極の表面を生理食塩リン酸緩衝液(PBS)pH7.4を用いて洗浄した。
上記の方法で製造されたバイオセンサ20が設置された測定装置70(図3参照)に、pH7.4のPBSをシリンジポンプ72によってインジェクションバルブ74を介してバイオセンサ20に供給した。次に、測定検体として市販の牛乳を、インジェクションバルブ74を介してPBSによって10倍希釈となる量をバイオセンサ20へ供給した。
測定検体の供給開始から約6.5分経過後、測定検体の供給を止めた。同時に、PBSに替えて、再生液Glycin-NaOHを供給した。
図4は、バイオセンサによる測定結果(時間と周波数の関係)を示す。
測定検体(牛乳)がバイオセンサ20に到達すると、第1の電極24a(検体電極)と第1の電極24b(参照電極)はともに、周波数が低下し、測定検体の到達から約2分後には、ほぼ一定値(−100Hz)となった。これは、検体電極と参照電極の表面に牛乳中の生体関連物質が結合することで水晶振動子の質量が増加し、その周波数が低下したためと考えられる。図4において、差分は、検体電極と参照電極の周波数の差を示す。差分がほとんど0Hzであるのは、検体電極、参照電極ともにほぼ同量の非特異吸着が生じたためと考えられる。
また、測定検体の供給を止め再生液を供給すると、検体電極と参照電極はともに、一時的に大きくその周波数が低下するが、2分程度でほぼ一定値(−30Hz)に戻った。このことは、再生液が注入されたことにより電極表面から吸着物質が外れたことが考えられ、再生可能であることがわかった。このとき差分はほぼゼロであった。
本実施例では、ストレスマーカーであるコルチゾールを定量した。コルチゾールは、分子量が362と小さいため、分子量の大きい蛋白質であるBSAを固定化したトレーサーを利用した競合法を利用した。
(バイオセンサの製造)
抗体としてコルチゾール抗体を塗布し、電極表面に抗体を固定化した。他は、実施例3と同じ条件で、バイオセンサを製造した。
上記の方法で製造されたバイオセンサ20が設置された測定装置70(図3参照)を使用し、測定検体としてコルチゾールに分子量の大きい蛋白質であるBSAを固定化したトレーサーを用いた。その他は実施例1と同様な条件とした。
(結果)
図5は、バイオセンサによる測定結果(時間と周波数の関係)を示す。
測定検体がバイオセンサ20に到達すると、検体電極と参照電極はともに、その周波数が低下するが、検体電極が参照電極より大きな周波数低下を示した。その差分は、測定検体の到達から約4分後には、ほぼ一定値(−100Hz)となった。これは、検体電極に固定化されているコルチゾール抗体に測定検体が結合することで水晶振動子の質量が増加し、その周波数が低下したためと考えられる。図4において、差分は、検体電極と参照電極の周波数の差を示す。差分がほとんど0Hzであるのは、測定検体中に抗体と結合する物質が少なかったためと考えられる。
また、測定検体の供給を止め再生液を供給すると、検体電極と参照電極はともに、一時的に大きくその周波数が低下するが、約2分後にはほぼ一定値となり、検体電極と参照電極ともに測定検体の供給前の周波数に戻った。再生液の注入により電極表面から吸着物質が外れたことが考えられ、バイオセンサは再生された。
トレーサー濃度を一定とし、市販の牛乳を10倍に希釈した検体にコルチゾール濃度を 0.1〜1000pg/mLの範囲で変化させて検体電極と参照電極の周波数を測定した。
図6は、コルチゾール濃度と差分周波数の関係を示す。図6に示すように、コルチゾール濃度が増加するに従い、差分周波数が低下した。このことにより、競合法による測定が行われていることが確認された。
12,22 水晶基板
14,24 第1の電極
16,26 第2の電極
18,28 水晶振動子
29 ケース
29i 注入口
29o 排出口
70 測定装置
72 ポンプ,シリンジポンプ
74 インジェクションバルブ
76 周波数カウンタ
78 パソコン
Claims (12)
- 生体関連物質を検出するバイオセンサであって、
水晶基板と、該水晶基板の一面に固着された複数の第1の電極と、他面に固着された1つの第2の電極を有する水晶振動子を備えてなるバイオセンサ。 - 複数の前記第1の電極の少なくとも1つは、表面に特定の生体関連物質と特異的に結合する部位を有する捕捉物質が固定化されており、残りの1つは、表面に前記捕捉物質が固定化されていない請求項1又は請求項2記載のバイオセンサ。
- 複数の前記第1の電極は、表面に体液中に含まれる生体関連物質の非特異的吸着を防止するために1又は複数種類のブロッキング剤が固定化されている請求項2記載のバイオセンサ。
- 前記ブロッキング剤の1つは、カゼインを含む液体であり、カゼインが前記第1の電極の表面に固定化されている請求項3記載のバイオセンサ。
- 前記ブロッキング剤の1つは、合成樹脂を主成分とし、実質的に動物由来の物質を含まない請求項3又は請求項4記載のバイオセンサ。
- 前記水晶基板に固着され、且つ前記第1の電極上に液体を保持するためのケースを有し、該ケースが液体を注入する注入口を備える請求項1ないし5のいずれか1項記載のバイオセンサ。
- 複数の前記第1の電極の少なくとも1つは、前記生体関連物質とは異なる生体関連物質を捕捉するために、表面に該異なる生体関連物質と特異的に結合する部位を有する捕捉物質が固定化されている請求項2ないし6のいずれか1項記載のバイオセンサ。
- 前記捕捉物質は、生体関連物質との特異的な結合を解離させる再生液によって当該生体関連物質との結合が解離したものを含むことを特徴とする請求項2ないし7のいずれか1項記載のバイオセンサ。
- 生体関連物質を検出するバイオセンサを製造する方法であって、
水晶振動子を構成する水晶基板の一面に複数の第1の電極を、他面に1つの第2の電極を固着し、
複数の前記第1の電極の少なくとも1つに特定の生体関連物質と特異的に結合する部位を有する捕捉物質を固定化し、
前記第1の電極のすべてに体液中に含まれる生体関連物質の非特異的吸着を防止するブロッキング剤を固定化する
各ステップを含むことを特徴とするバイオセンサの製造方法。 - 前記ブロッキング剤が、合成樹脂を主成分とし、実質的に動物由来の物質を含まないブロッキング剤、及び/又はカゼインであることを特徴とする請求項9記載のバイオセンサの製造方法。
- 請求項1ないし7のいずれか1項記載のバイオセンサを用いて生体関連物質を定量する方法であって、特定の生体関連物質と特異的に結合する部位を有する捕捉物質によって固定化された前記第1の電極に生じる周波数と該捕捉物質によって固定化されていない前記第1の電極に生じる周波数の差によって特定の生体関連物質を定量する方法。
- 競合阻害法によって特定の生体関連物質を定量する請求項11記載の方法。
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