JPWO2005047567A1 - 固体プレーティング材の製造方法及びその固体プレーティング材 - Google Patents
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Abstract
本発明は、導電性と耐久性に優れたコート層を有する固体プレーティング材の製造方法、及びその固体プレーティング材を提供するものである。有機系結合剤を含有するコート液に、導電性を有するプレーティング用粉末と結合用金属粉末とを混合して懸濁液を作製し、該懸濁液を遠心流動されているコア粒子に噴霧して、コア粒子の表面にプレーティング用粉末と結合用金属粉末とが有機系結合剤により固着されたコート層を形成する。その後、コア粒子を結合用金属粉末の融点以上に加熱して、有機系結合剤を熱分解によって除去するとともに、結合用金属粉末を溶融させて、コア粒子の表面にプレーティング用粉末を強固に固着した溶着層を形成することができ、プレーティング用粉末に導電性に優れた材質の粉末を用いれば、導電性と耐久性に優れたコート層を有する固体プレーティング材を製造することができる。
Description
本発明は、例えば近年需要が増大傾向にあり今後もさらに需要拡大が予想される自動車用、定置用、モバイル用などに多様化される燃料電池のセパレーター等の表面に、ブラスト法によって導電性に優れた被膜形成に使用する固体プレーティング材の製造方法、及びその固体プレーティング材に関するものである。
被処理品の表面を改質する被膜を形成する方法としては、電気、溶融、拡散、蒸着などによるメッキ法や、被膜形成する金属粉末を溶融状態に加熱してから吹き付けて形成する溶融法、などがあるが、これらの方法はその設備が大掛かりになって設備費に費用がかかり、また、形成する被膜が酸化物などの非金属の場合には前記のメッキ法が使用できないなどの問題があった。
本発明者らは、係る問題点を解決してメッキ法、溶融法に替わり被膜形成をすることができるブラスト法、およびそのブラスト法に用いるための固体プレーティング材に関する特許文献1、2、3、を本出願より先に開示している。
特許文献1は、粒子径が30〜300μm、硬さがHv400〜2000、材質が超硬合金などからなる核の粒子(以下「コア粒子」という)の表面に、導電性(低電気抵抗)に優れている金、銀、銅、ニッケル等のいずれかよりなる金属粉末(以下「プレーティング用粉末」という)をメッキ法によりプレーティングした固体プレーティング材に関するもので、最も導電性に優れたプレーティング用粉末として、高価な金や銀であることが明示されている。
特許文献2は、前記特許文献1の固体プレーティング材を用いた乾燥空気流、羽根車(インペラー)、高圧水流、負活性ガス流等によるブラスト法によって、燃料電池セパレーターに導電性(低電気抵抗)が優れた被膜を形成する方法を開示している。
特許文献3は、粒子径が2mm以下で、材質が鉄鋼、非鉄金属、非鉄合金、非金属のいずれかのコア粒子の表面に、有機系結合材を溶質として調製したコート液を噴霧してコート層を形成した後、粒子径が0.5mm以下、材質が亜鉛、銅(卑金属)、金、銀(貴金属)、酸化物(非金属)等のいずれかの無機系粉末をプレーティング用粉末とし、該プレーティング用粉末とコート液とを混合して調製した懸濁液を、前記コート層の表面に噴霧してプレーティング用粉末をコート層の表面にプレーティングした固体プレーティング材の製造方法とその方法で製造された固体プレーティング材を開示している。
特開2001−089870号公報
特許3468739号公報(米国特許6726953)
特開2003−160884号公報
ブラスト法により導電性を向上させる被膜を形成するようにした固体プレーティング材の製造方法を開示した前記特許文献1、および特許文献3の方法には以下に説明するような問題点があった。
即ち、特許文献1の方法は、メッキ法であって、該メッキ法はその設備が大掛かりになって設備費に費用が掛かる問題があった。
また、特許文献3の方法は、前記特許文献1のメッキ法を回避してその問題点は解決するものの、この特許文献3の方法により導電性に優れた被膜形成を目的とした固体プレーティング材を製造してブラスト法によって被膜形成をした場合に、その固体プレーティング材のコート層にプレーティング用粉末と有機系結合剤が共存するので、その被処理品の表面にはプレーティング用粉末と共に有機系結合剤もプレーティングされることとなる。この有機系結合剤は、コート層へのプレーティング用粉末の固着強度を高めて繰り返し使用に耐える耐久性を付与するものであるが、非導電性物質であるのでプレーティングされた被膜の面抵抗や接触抵抗などの電気抵抗を高くするものでもある。
前記のように、特許文献3の方法で製造された導電性に優れた被膜形成を目的とした固体プレーティング材の場合、コート層にプレーティング用粉末と共存する有機系結合剤の含有量の多少が影響して、固体プレーティング材の性能として要求される繰り返し使用に耐える高い耐久性(プレーティング用粉末の固着強度)と導電性が相反する関係にあって、優れた耐久性と導電性を兼ね備えたコート層を形成した固体プレーティング材を製造することは困難である。
本発明は、かかる問題点を解決して、優れた導電性と耐久性を兼ね備えたコート層が形成された固体プレーティング材の製造方法、及びその固体プレーティング材を提供するためになされたものである。
本発明に係る固体プレーティング材の製造方法は、有機系結合剤を含有するコート液に導電性を有するプレーティング用粉末と結合用金属粉末とを混合して懸濁液を作製し、核となるコア粒子を遠心流動により攪拌しながらこのコア粒子に前記懸濁液を噴霧して、コア粒子の表面にプレーティング用粉末と結合用金属粉末とが有機系結合剤によって固着されたコート層を形成した後に、該コア粒子を結合用金属粉末の融点以上に加熱して有機系結合剤を除去するとともに、コア粒子の表面にプレーティング用粉末が結合用金属粉末の溶融によって固着された溶着層を形成することを特徴とするものである。
上記した発明において、コア粒子を30〜70℃に加熱しながら懸濁液を噴霧することにより、更に優れた導電性と耐久性を有するコート層が形成された固体プレーティング材が得られる。
また、懸濁液の噴霧流量として0.5〜2g/minの供給量にてコア粒子に噴霧することがより望ましい。
コート液として、水または水とアルコールとの混合液を使用し、これに添加する有機系結合剤の含有量は4質量%以下とすることがより望ましい。
プレーティング用粉末は平均粒径が20μm以下の導電性セラミックス粉末とすることがより望ましく、結合用金属粉末をコア粒子より融点が低くなるようにして、平均粒径を20μm以下の粉末とすることがより望ましい。
コア粒子は、平均粒径が2mm以下のものを使用することがより望ましく、超硬合金、鉄鋼、非鉄金属、非金属無機物からなる粒子を使用することができる。
また、コート層を形成した後に行うコア粒子の加熱は、結合用金属粉末の融点≧350℃、または結合用金属粉末の融点≧プレーティング用粉末の酸化開始温度−50℃の場合は無酸化雰囲気で行い、結合用金属粉末の融点<350℃または結合用金属粉末の融点<プレーティング用粉末の酸化開始温度−50℃の場合は大気雰囲気で行うことが望ましい。
さらに、コア粒子に対するプレーティング用粉末の量を5質量%以下とし、かつ、コア粒子に対する結合用金属粉末の量を3質量%以下として固体プレーティング材を製造することが望ましい。
本発明に係る固体プレーティング材は、上記したような方法により製造されたことを特徴とするものである。
本発明の固体プレーティング材の製造方法は、コア粒子の表面にプレーティング用粉末と結合用金属粉末とをコート液中の有機系結合剤によって固着したコート層を形成し、更にコア粒子の最終の熱処理として結合用金属粉末の融点以上に加熱することによって、前記有機系結合剤を熱分解させて除去すると共に、結合用金属粉末の溶融によりコア粒子の表面にプレーティング用粉末が強固に固着され、耐久性に優れた溶着層を形成することができる。プレーティング用粉末を導電性の金属粉末とした場合に、酸化しない導電性に優れた被膜を形成することができる固体プレーティング材を製造することができる。
以下に本発明の好ましい実施形態について説明する。
本発明の固体プレーティング材を製造するには、前もって、有機系結合剤を含有するコート液にプレーティング用粉末と結合用金属粉末とを混合して懸濁液を作製する。
次いで、遠心流動により攪拌されているコア粒子を所定温度に加熱しながら前記懸濁液を噴霧して、コア粒子の表面にプレーティング用粉末と結合用金属粉末とが有機系結合剤により固着されたコート層を形成する。
コア粒子の表面にコート層を形成した後、このコア粒子を結合用金属粉末の融点以上に加熱して、有機系結合剤を熱分解して除去するとともに、結合用金属粉末を溶融させる。この結合用金属粉末の溶融によって、前記コート層にプレーティング用粉末を更に強固に固着形成することができる。
上記の固体プレーティング材の製造方法におけるコート液としては、水または水とアルコールとの混合液に、ビニル系、アクリル酸系の有機系結合剤を添加したものを使用することができる。有機系結合剤の濃度として、均一なスプレー噴霧ができる範囲であれば使用することができるが、一般的には有機系結合剤の濃度が高くなると粘度が増加し、均一なスプレー噴霧が困難になるので濃度を4%程度以下に押さえることが望ましい。
有機系結合剤としては、PVA(ポリビニルアルコール)、変性PVA、PVP(ポリビニルピロリドン)、メタアクリル酸コポリマーなどを使用することができる。
プレーティング用粉末には、TiN,TiC,VC,NbC,MoSi2などの非酸化物系の導電性セラミックス粉末を用いることができる。また、プレーティング用粉末の平均粒径としては20μm以下のものがより望ましい。
結合用金属粉末には、金、銀以外に安価な銅、錫、などの粉末を用いることができ、結合用金属粉末の融点はコア粒子より低いものでなければならない。また、その平均粒径は20μm以下のものがより望ましい。
ここで、プレーティング用粉末、結合用金属粉末の平均粒径として20μm以下のものがより望ましい理由は、20μmを超えるとノズルから噴霧する際に、コア粒子の表面に均一に分布させることが難しくなってくるからである。
また、コア粒子としては、超硬粒子、または高速度鋼、炭素鋼などの鉄鋼粒子、または銅などの非鉄金属粒子、またはガラスビーズ、アルミナなどの非金属無機物粒子などを用いることができる。コア粒子の平均粒径としてはφ2mm以下のものがより望ましい。ここで、コア粒子の平均粒径としてはφ2mm以下のものがより望ましい理由は、φ2mmを超えると、ブラスティングされた被処理品の表面の粗さが粗くなり、その変形も大きくなるからである。
懸濁液をノズルから噴霧する際に、コア粒子を遠心流動によって攪拌すると共に、コア粒子を30〜70℃の温度に加熱するのがより望ましい。30℃未満ではコート液中の水などの溶媒が蒸発しにくく乾燥に時間を要する一方、70℃より高くなると溶媒の蒸発は速くなるが、コート層の溶質であるプレーティング粉末と結合用金属粉末、及びコート液中の有機系結合剤の付着ムラが生じやすくなるからである。
コア粒子への懸濁液の噴霧流量は、0.5〜2g/minとするのがより望ましい。0.5g/min未満ではコートするのに時間を要し過ぎるし、2g/minを超えるとコート層の前記溶質の付着ムラが生じやすくなるからである。
コート層を形成後に行うコア粒子の最終の加熱処理は、結合用金属粉末の融点≧350℃または結合用金属粉末の融点≧プレーティング用粉末の酸化開始温度−50℃の場合は窒素ガス、アルゴンガスなどを用いて無酸化雰囲気で加熱することが望ましい。このような条件下で導電性被膜を形成する場合に、大気中などの酸化雰囲気中で加熱すると、プレーティング用粉末に用いる導電性セラミックス粉末が酸化して電気抵抗値が大きくなった状態で固着形成され、被処理品の表面に導電性が低下した被膜が形成されることがあり特に注意を要する。結合用金属粉末の融点<350℃または結合用金属粉末の融点<プレーティング用粉末の酸化開始温度−50℃の場合には、大気雰囲気で加熱してもよい。
以上のような固体プレーティング材の製造方法において、コア粒子質量に対するプレーティング用粉末の質量%が最終的に5質量%以下となるようにし、かつコア粒子質量に対する結合用金属粉末の質量%が最終的に3%以下となるように調整することが望ましい。
プレーティング用粉末の質量%を5%超、結合用金属粉末の質量%を3%超とすると、懸濁液中の導電性プレーティング用粉末および結合用金属粉末の量が多量となって、懸濁液にむらが生じ均一なスプレー噴霧ができにくくなるからである。
実施例1は、前もって濃度3%、320gのPVA溶液に平均粒径7μmの窒化チタン粉末を1.6Kgのコア粒子の質量に対して最終的に4.4質量%となるように70gを混合し、更に平均粒径10μmの結合用金属粉末(バインダー)である銅粉末を前記コア粒子の質量に対して最終的に1.9質量%となるように30gを混合して懸濁液を調製しておき、平均粒径100μm、材質が超硬粒子であるコア粒子をコーティングマシンに1.6kg投入して、コア粒子の温度が59℃になるように加熱しながら130min−1にて遠心流動させつつ、前記懸濁液を口径φ0.7mmのノズルから噴射圧0.15MPa、噴霧量1.7g/minとして噴霧した結果、コア粒子の表面には窒化チタン粉末と銅粉末が固着されたコート層が形成された。
このコア粒子を雰囲気が窒素ガスである炉内に収容し、炉内温度を1100℃に設定し1h加熱した結果、PVAは完全に除去され銅粉末の溶融によってコア粒子の表面に窒化チタン粉末が均一に固着された、酸化されていないコート層を有する固体プレーティング材を製造することができた。
ここで、前記コア粒子の最終の熱処理の条件として、炉内雰囲気を窒素ガスとし加熱温度を1100℃(加熱時間:1h)としたのは、プレーティング用粉末(窒化チタン)の酸化開始温度が550〜560℃であり、結合用金属粉末(銅)の融点が1083℃であるという関係から請求項8に記載の条件により決定したものである。
次に、上記実施例1で製造された固体プレーティング材800gをエアーブラスト装置に投入し、材質をSUS316、径φ30mm、厚さ4mmのプレーティング被膜を形成する試験片を装置内に固定し、該試験片とノズルの距離を100mm、ノズル角度を試験片の表面に対して90°に設定し、噴射圧力0.3MPaにて18秒間、試験片の全面に向けて噴射した。
その結果、試験片の表面に酸化されていない窒化チタン被膜を形成することができた。
この試験片の表面とカーボンとの接触抵抗を測定したところ、3.8mΩ・cm2と極めて小さい抵抗値を有することが確認できた。なお、本発明に係るプレーティング被膜を形成させる前のステンレスとカーボンの接触抵抗値は500〜600mΩ・cm2であった。
さらに、実施例1で製造された固体プレーティング材をエアーブラスト装置を使用しSS400材の板をターゲットとして繰り返しブラストし、コート層の剥離耐久試験を行った結果、コート層全体の50%が剥離するまでのブラスト使用可能回数は80回という良好な耐久性を得ることができた。
実施例2は、懸濁液の噴霧時のコア粒子加熱温度を79℃とした以外は、全て実施例1と同じ条件で固体プレーティング材を製造したものである。試験片のプレーティング被膜とカーボンとの接触抵抗値の試験結果については、実施例2の場合も実施例1の場合とほぼ同様な値を示しており、優れた接触抵抗を有していることが確認できた。また、剥離耐久試験の結果、実施例2におけるコート層全体の50%が剥離するまでのブラスト使用可能回数は実施例1の80回には及ばないものの、50回使用可能であって、良好な剥離耐久性を有することが確認できた。なお、ここで行った接触抵抗値の測定および剥離耐久試験の方法は実施例と同一である。
次に、比較例1、2について説明する。比較例1は懸濁液の噴霧時のコア粒子加熱温度を実施例2に近い温度(80℃)に設定し、結合用金属粉末を使用しないで固体プレーティング材を製造したものである。一方、比較例2は噴霧時のコア粒子加熱温度を実施例1と同一の温度(59℃)に設定し、結合用金属粉末を使用しないで固体プレーティング材を製造したものである。表1には比較例1、2の場合の導電性を示すカーボンとの接触抵抗値と溶着層の剥離耐久試験の結果を併せて示してある。なお、ここで行った接触抵抗値の測定および剥離耐久試験の方法についても実施例1,2と同一である。
試験片のプレーティング被膜とカーボンとの接触抵抗値の試験結果に言及すれば、比較例1、2とも実施例1に対してほぼ10%程度の接触抵抗値の差であって、導電性に優れた特性を有していることが分かる。これは、使用したプレーティング用粉末(窒化チタン)が実施例1と同様であると共に、コア粒子の最終の熱処理の条件である炉内雰囲気(窒素ガス)と加熱温度(1100℃)をも実施例1と同様にしたことによって酸化しない導電性皮膜が形成されたことに起因しているものと判断することができる。
しかし、コア粒子の表面に形成されたコート層の剥離耐久試験の結果については、比較例1、2は実施例1、2に比べ大きく劣っている。その理由として比較例1、2は結合用金属粉末の添加がされてないことに起因してプレーティング被膜の固着状態が脆く、そのため剥離耐久試験の評価結果が良くなかったものと判断することができる。
実施例3は、前もって濃度3%、320gのPVA溶液に平均粒径7μmの窒化チタン粉末を1.6Kgのコア粒子の質量に対して最終的に4.2質量%となるように67g混合し、更に平均粒径10μmの結合用金属粉末(バインダー)である錫粉末を前記コア粒子の質量に対して最終的に1.8質量%となるように29gを混合して懸濁液を調製しておき、平均粒径100μm、材質が超硬粒子であるコア粒子をコーティングマシンに1.6kg投入して、コア粒子の温度が64℃になるように加熱しながら130min−1にて遠心流動させつつ、前記懸濁液を口径φ0.7mmのノズルから噴射圧0.15MPa、噴霧量1.7g/minとして噴霧した結果、コア粒子の表面には窒化チタン粉末と錫粉末が固着されたコート層が形成された。
このコア粒子を雰囲気が大気である炉内に収容し、炉内温度を250℃に設定し2h加熱した結果、PVAは完全に除去され錫粉末の溶融によってコア粒子の表面に窒化チタン粉末が均一に固着され、酸化されていないコート層を有する固体プレーティング材を製造することができた。
ここで、前記コア粒子の最終の熱処理の条件として、炉内雰囲気を大気とし、加熱温度を250℃(加熱時間:2h)としたのは、プレーティング用粉末(窒化チタン)の酸化開始温度が550〜560℃であり、結合用金属粉末(錫)の融点が232℃であるという関係から請求項8に記載の条件に従って決定したものである。
次に、上記実施例3で製造された固体プレーティング材800gをエアーブラスト装置に投入し、プレーティング被膜を形成する試験片、該試験片とノズルの距離、ノズル角度、噴射圧力と噴射時間、を前記実施例1と同条件に設定し、試験片の全面に向けて固体プレーティング材を噴射した結果、試験片の表面には窒化チタン粒子が均一に固着され、酸化されていないプレーティング被膜を形成することができた。
この試験片の表面とカーボンとの接触抵抗を測定したところ、7.5mΩ・cm2と極めて小さい抵抗値を得ることができた。
さらに、実施例3で製造された固体プレーティング材をエアーブラスト装置を使用しSS400材の板をターゲットとして繰り返しブラストし、コート層の剥離耐久試験をした結果、そのコート層全体の50%が剥離するまでのブラスト使用可能回数は65回という良好な耐久性を得ることができた。
実施例4は、前もって濃度3%、320gのPVA溶液に平均粒径1.8μmの炭化バナジウム粉末を1.6Kgのコア粒子の質量に対して最終的に4.4質量%となるように70g混合し、更に平均粒径10μmの結合用金属粉末(バインダー)である銅粉末を前記コア粒子の質量に対して最終的に1.9質量%となるように30gを混合して懸濁液を調製しておき、平均粒径100μm、材質が超硬粒子であるコア粒子をコーティングマシンに1.6kg投入して、コア粒子の温度が64℃になるように加熱しながら130min−1にて遠心流動させつつ、前記懸濁液を口径φ0.7mmのノズルから噴射圧0.15MPa、噴霧量1.7g/minとして噴霧した結果、コア粒子の表面には炭化バナジウム粉末と銅粉末が均一に固着されたコート層が形成された。
このコア粒子を雰囲気が窒素ガスである炉内に収容し、炉内温度を1100℃に設定し1h加熱した結果、PVAは完全に除去され銅粉末の溶融によってコア粒子の表面に炭化バナジウム粉末が均一に固着され、酸化されていないコート層を有する固体プレーティング材を製造することができた。
ここで、前記コア粒子の最終の加熱処理の条件として、炉内雰囲気を窒素ガスとし加熱温度を1100℃(加熱時間:1h)としたのは、プレーティング用粉末(炭化バナジウム)の酸化開始温度が440〜450℃であり、結合用金属粉末(銅)の融点が1083℃であるという関係から請求項8に記載の条件に従って決定したものである。
次に、上記実施例4で製造された固体プレーティング材800gをエアーブラスト装置に投入し、プレーティング被膜を形成する試験片、該試験片とノズルの距離、ノズル角度、噴射圧力と噴射時間、を前記実施例1と同条件に設定し、試験片の全面に向けて固体プレーティング材を噴射した結果、試験片の表面には炭化バナジウム粒子が均一に固着され、酸化されていないプレーティング被膜を形成することができた。
この試験片の表面とカーボンとの接触抵抗を測定したところ、3.3mΩ・cm2と極めて小さい抵抗値を得ることができた。
さらに、実施例4で製造された固体プレーティング材をエアーブラスト装置を使用しSS400材の板をターゲットとして繰り返しブラストし、前記固体プレーティング材のコート層の剥離耐久試験をした結果、そのコート層全体の50%が剥離するまでのブラスト使用可能回数は92回という良好な耐久性を得ることができた。
実施例5は、前もって濃度3%、320gのPVA溶液に平均粒径1.8μmの炭化バナジウム粉末を1.6Kgのコア粒子の質量に対して最終的に4.2質量%となるように67g混合し、更に平均粒径10μmの結合用金属粉末(バインダー)である錫粉末を前記コア粒子の質量に対して最終的に1.8質量%となるように29gを混合して懸濁液を調製しておき、平均粒径100μm、材質が超硬粒子であるコア粒子をコーティングマシンに1.6kg投入して該コア粒子の温度が64℃になるように加熱しながら130min−1にて遠心流動させつつ、前記懸濁液を口径φ0.7mmのノズルから噴射圧0.15MPa、噴霧量1.7g/minとして噴霧した結果、コア粒子の表面には炭化バナジウム粉末と錫粉末が均一に固着されたコート層が形成された。
このコア粒子を雰囲気が大気である炉内に収容し、炉内温度を250℃に設定し3h加熱した結果、PVAは完全に除去され錫粉末の溶融によってコア粒子の表面に炭化バナジウム粉末が均一に固着され、酸化されていないコート層を有する固体プレーティング材を製造することができた。
ここで、前記コア粒子の最終の熱処理の条件として、炉内雰囲気を大気とし、加熱温度を250℃(加熱時間:3h)としたのは、プレーティング用粉末(炭化バナジウム)の酸化開始温度が440〜450℃であり、結合用金属粉末(錫)の融点が232℃であるという関係から請求項8に記載の条件に従って決定したものである。
次に、上記実施例5で製造された固体プレーティング材800gをエアーブラスト装置に投入し、プレーティング被膜を形成する試験片、該試験片とノズルの距離、ノズル角度、噴射圧力と噴射時間、を前記実施例1と同条件に設定し、試験片の全面に向けて固体プレーティング材を噴射した結果、試験片の表面に炭化バナジウム粒子が均一に固着され、酸化されていないプレーティング被膜を形成することができた。
この試験片の表面とカーボンとの接触抵抗を測定したところ、8.4mΩ・cm2と極めて小さい抵抗値を得ることができた。
さらに、実施例5で製造された固体プレーティング材をエアーブラスト装置を使用しSS400材の板をターゲットとして繰り返しブラストし、前記固体プレーティング材のコート層の剥離耐久試験をした結果、そのコート層全体の50%が剥離するまでのブラスト使用可能回数は68回という良好な耐久性を得ることができた。
Claims (10)
- 有機系結合剤を含有するコート液に導電性を有するプレーティング用粉末と結合用金属粉末とを混合して懸濁液を作製し、核となるコア粒子を遠心流動により攪拌しながらこのコア粒子に前記懸濁液を噴霧して、コア粒子の表面にプレーティング用粉末と結合用金属粉末とが有機系結合剤によって固着されたコート層を形成した後に、該コア粒子を結合用金属粉末の融点以上に加熱して有機系結合剤を除去するとともに、コア粒子の表面にプレーティング用粉末が結合用金属粉末の溶融によって固着された溶着層を形成することを特徴とする固体プレーティング材の製造方法。
- コア粒子を、30〜70℃に加熱しながら懸濁液を噴霧する請求項1に記載の固体プレーティング材の製造方法。
- 懸濁液を、0.5〜2g/minの供給量にてコア粒子に噴霧する請求項1または2に記載の固体プレーティング材の製造方法。
- コート液は、水または水とアルコールとの混合液に、有機系結合剤が4%以下添加されたものである請求項1〜3の何れかに記載の固体プレーティング材の製造方法。
- プレーティング用粉末は、平均粒径が20μm以下の導電性セラミックス粉末である請求項1〜4の何れかに記載の固体プレーティング材の製造方法。
- 結合用金属粉末は、コア粒子より融点が低く、平均粒径が20μm以下の粉末である請求項1〜5の何れかに記載の固体プレーティング材の製造方法。
- コア粒子は、平均粒径が2mm以下で、超硬、鉄鋼、非鉄金属、非金属無機物のうちの何れかの粒子である請求項1〜6の何れかに記載の固体プレーティング材の製造方法。
- コア粒子の加熱を、結合用金属粉末の融点≧350℃または結合用金属粉末の融点≧プレーティング用粉末の酸化開始温度−50℃の場合は無酸化雰囲気で行い、結合用金属粉末の融点<350℃または結合用金属粉末の融点<プレーティング用粉末の酸化開始温度−50℃の場合は大気雰囲気で行う請求項1〜7の何れかに記載の固体プレーティング材の製造方法。
- コア粒子に対するプレーティング用粉末の量を5質量%以下とし、かつ、コア粒子に対する結合用金属粉末の量を3質量%以下とした請求項1〜8の何れかに記載の固体プレーティング材の製造方法。
- 請求項1〜9の何れかの方法により製造されたことを特徴とする固体プレーティング材。
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