JPWO2008068942A1 - ウォームスプレーコーティング方法とその粒子 - Google Patents

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Abstract

本発明のコーティング法は、粒子がこれよりも遙かに微小な粒子の集合体であって、その融点未満の温度に加熱して超音速で被処理物に吹き付け付着させることを特徴とする。本発明のウォームスプレーでは、その粒子は、標準粒子とこれよりも大きい粒径を有する添加粒子は、下記の関係式で求めたK値が1以上2以下であるように混合されてなることを特徴とする。本発明は、接着剤などを用いなくとも、微小な酸化物結晶体を、その機能に変化を生じさせずに付着させることを目的とする。また、実質的に空隙のない緻密な層も実現する。K=A×(B/C)×DA:添加粒子の含有質量%B:標準粒子の中心粒子径(μm)C:添加粒子の中心粒子径(μm)D:添加粒子の(最大粒子径−最小粒子径)/10(μm)

Description

本発明は、被処理物の表面に、粒子を付着させるウォームスプレーコーティング方法とこれに用いる粒子に関するものである。
被処理物の表面に各種の機能を持つ物質粒子を付着する方法としては、接着剤を介在したり、ペイント状にして塗布するなど方法が代表的なものとして知られている。しかしながら、これらの方法では、たとえば機能性の物質粒子が結果的には接着剤などに覆われ、その表面での機能を阻害する結果を招いていた。
特に、触媒などは、物質粒子としての結晶体の粒子をより小さくすることがその機能を効率よく発揮させることになるが、上記のような従来方法では、接着剤中に多くが埋没して機能不全を生じるという問題があった。
このため、接着剤などを用いなくとも、微小な物質粒子、たとえば酸化物結晶体等であっても、その機能に変化を生じさせずに付着させることのできる技術手段が求められていた。
一方、各種の物質粒子を被処理物の表面に付着させる方法として、粒子をその融点未満に加熱し、超音速で吹き付けて付着させるウォームスプレー法が知られている。この方法は、この種のウォームスプレー法では、非被処理物の表面を改質するのに、粒子を非対象物に吹き付け付着させることで完成することができるので、現場での改質作業などが実現できるなどの各種作業上の優位性により注目されるに至っている。
そこで、機能性の物質粒子の付着についても、このウォームスプレーによるコーティング法を適用することが考えられる。しかしながら、従来では、機能性に変化を生じさせることなくウォームスプレー法により粒子付着させることは、その可能性からして考慮されて来ていない。また、具体的にこのことを実現するための方策についても検討されてきていない。
そしてまた、ウォームスプレーによるコーティング方法については、その特有の課題として、粒子吹き付けによる場合は空隙が生じやすく、そのため粒子径をできるだけ小さくする工夫がなされてきたが、噴射時のジェット圧により、その粒径の小ささには限界があることが解った。
このため、粒子粒径についての制約を克服して実質的に空隙のない緻密な層を形成するための技術手段の実現も望まれていた。
本発明は、以上のとおりの背景から、従来技術の問題点が制約を克服し、機能性に実質的な変化を生じさせることなく機能性の物質粒子を被処理物表面に付着させること、特にこのことをウォームスプレー法によって実現可能とすることとともに、粒子粒径の制約を超えて、実現的に空隙のない緻密な層をウォームスプレー法によって実現可能とする新しい技術手段を提供することを課題としている。
本発明は、上記課題を達成するために、以下のことを特徴としている。発明1のウォームスプレーコーティング方法では、粒子がこれよりも粒径の小さい微小粒子の集合体であって、その相転移温度未満の温度に加熱して超音速で被処理物に吹き付け付着させることを特徴とする。
発明2は、発明1のコーティング法において、前記粒子は、微小粒子を有機化合物からなる糊剤により相互に集合固化されたものであり、吹き付け時の加熱温度がこの糊剤の昇華温度以上であることを特徴とする。
発明3は、発明1又は2のコーティング方法において、前記微小粒子は、酸化物結晶体であることを特徴とする。
そして発明4から発明6は、発明1から発明3におけるウォームスプレーコーティング用粒子そのものを特徴としている。
また、発明7のウォームスプレーコーティング方法は、粒子を標準粒子とそれよりも大きい粒径の添加粒子を用い、以下の関係式で求めたK値が1以上2以下であるように混合して吹き付けることを特徴とする。
K=A×(B/C)×D
A:添加粒子の含有質量%
B:標準粒子の中心粒子径(μm)
C:添加粒子の中心粒子径(μm)
D:添加粒子の(最大粒子径−最小粒子径)/10(μm)
発明8は、発明7のウォームスプレー法において、標準粒子と添加粒子とは共に同種の金属粒子であることを特徴とする。
発明9の方法は、前記の標準粒子と添加粒子は、その少くとも一方が、各々の粒子径よりも小さい微小粒子の集合体であることを特徴とする。
発明10の方法は、発明9での集合体を構成する微小粒子は酸化物結晶体であることを特徴とする。
さらに、発明11から発明14は、発明7から発明10におけるウォームスプレーコーティング用の粒子そのものを特徴としている。
発明1〜6の方法は新しいウォームスプレー法に属するものである。従来では、吹き付け可能な粒子の粒径の最小値が限定されており、その最小値を超えると超音速での吹き付けは不可能とされていた。
しかし、本発明によれば、その最小限度の限界を超えてサブミクロン以下の微小粒子も被処理物に吹き付け付着させることができるようになる。
また、糊剤は飛翔中に昇華又は気化されてしまうので、従来のように接着剤により微小粒子が覆われてしまいその機能を発現できなくなるようなことがなくない。
さらには、微小粒子状の結晶体を変質させることなく付着させることができ、被処理物表面において、それがもつ機能を最大限に発揮させることができる。
また、発明7〜14によれば顕著に緻密な層(皮膜)が形成されることになる。従来では、緻密性を損なうとして排除されていた大型の粒子をわずかに添加すること自体、従来の技術常識からすれば全く予想だにしなかったことであり、さらに従来の技術常識からすれば真反対の効果を生じることになる。
本方法に用いスプレー装置の構造を示す概略図 実施例Aの実験No.2で使用した粒子の顕微鏡写真 図2で示す粒子の断面拡大写真 実施例のコーティング層の表面拡大写真。 図4で示すコーティング層の側面拡大写真。 図5の一部を拡大した拡大写真。 実験No.1によるコーティング層の断面写真。 実験No.1によるコーティング層の4倍拡大断面写真。 実験No.1サンプルの塩水浸漬試験の結果を示す写真。 実験No.2によるコーティング層の断面写真。 実験No.2によるコーティング層の4倍拡大断面写真。 実験No.2サンプルの塩水浸漬試験の結果を示す写真。 実験No.3によるコーティング層の断面写真。 実験No.3によるコーティング層の4倍拡大断面写真。 実験No.3サンプルの塩水浸漬試験の結果を示す写真。 実験No.4によるコーティング層の断面写真。 実験No.4によるコーティング層の4倍拡大断面写真。 実験No.4サンプルの塩水浸漬試験の結果を示す写真。 実験No.5によるコーティング層の断面写真。 実験No.5によるコーティング層の4倍拡大断面写真。 実験No.5サンプルの塩水浸漬試験の結果を示す写真。 実験No.6によるコーティング層の断面写真。 実験No.6によるコーティング層の4倍拡大断面写真。 実験No.6サンプルの塩水浸漬試験の結果を示す写真。 実験No.7によるコーティング層の断面写真。 実験No.7によるコーティング層の4倍拡大断面写真。 実験No.7サンプルの塩水浸漬試験の結果を示す写真。 実験No.8によるコーティング層の断面写真。 実験No.8によるコーティング層の4倍拡大断面写真。 実験No.8サンプルの塩水浸漬試験の結果を示す写真。 実験No.9によるコーティング層の断面写真。 実験No.9によるコーティング層の4倍拡大断面写真。 実験No.9サンプルの塩水浸漬試験の結果を示す写真。 実験No.10によるコーティング層の断面写真。 実験No.10によるコーティング層の4倍拡大断面写真。 実験No.10サンプルの塩水浸漬試験の結果を示す写真。 実験No.11によるコーティング層の断面写真。 実験No.11によるコーティング層の4倍拡大断面写真。 実験No.11サンプルの塩水浸漬試験の結果を示す写真。 実験No.12によるコーティング層の断面写真。 実験No.12によるコーティング層の4倍拡大断面写真。 実験No.12サンプルの塩水浸漬試験の結果を示す写真。
符号の説明
(1)燃焼室
(2)燃料供給口
(3)酸素供給口
(4)ノズル
(5)不活性ガス供給口
(6)バレル
(7)粒子投入口
(8)被処理物
前記の発明1から発明6は、より粒径の小さい微小粒子の集合体である粒子を用いるウォームスプレーコーティング法と、そのための前記粒子に係わるものであるが、この場合のウォームスプレーコーティング法においては、前記のとおり、
<1>より粒径の小さい微小粒子、たとえば酸化物結晶体や金属、合金、その他セラミックス等の微粒子の集合体をスプレー用粒子として用いること、
<2>この粒子の相転移温度未満の温度に加熱すること、
を基本的な要件としている。本発明のウォームスプレーコーティングでは、前記の加熱された粒子を超音速で被処理物に吹き付けることになる。
ここでの要件<1>については、微粒子やその集合体の粒径については任意とすることができ、被処理物、すなわち基板、基体に吹き付けられた皮膜の目的、用途、機能、そして、ウォームスプレーの装置規模や操作条件に対応して設定することができる。
たとえば、微小粒子の粒径に対して、10倍〜1000倍の粒径の集合体粒子とすることができる。たとえば、10〜1000nm粒径の微小粒子から、10μm〜100μmの粒径の集合体粒子とすること等が目安として考慮される。
集合体としての粒子については、震動ふるい等の装置を用いて、所要の粒径範囲にあるものとすることができる。微小粒子の集合体を形成する方法については各種であってよい。たとえば、有機化合物や無機物の糊剤(バインダー)を用いてもよいし、静電引力により集合させ、その後焼成することで集合体を形成する等の方法が適宜に考慮される。
集合体を簡便に形成することができ、取扱いも容易であって、吹き付け皮膜にも実質的な影響を及ぼさない方法としては有機化合物の糊剤を用いるものが好適に考慮される。この場合には、糊剤の有機化合物の昇華又は気化温度は、ウォームスプレー時の加熱温度以下であることが望ましい。
たとえば、このような糊剤としての有機化合物としては、入手や取扱の容易性、価格等を考慮して、ポリビニルアルコール(PVA)をはじめ、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系等の各種の合成高分子糊剤、あるいはデンプン等からなる天然又は半合成の糊剤等を使用することが考慮される。
これらの糊剤の使用量は、前記微小粒子の集合体の形成と、フォームスプレー装置手段へのその供給時に粒子形状を保持できるものであればよい。その量は、最少量であってよい。集合体の形成は、前記微小粒子とこれらの糊剤とを混合し、加熱あるいは乾燥して造粒するという通常の手段によることができる。その際にはスプレードライ方法等が適宜に採用されてよい。
前記要件<2>の加熱温度についての「相転移温度未満」との規定は、熱力学的な低温安定相が高温安定相に変わる時の温度として定義される「相転移温度」未満であることを意味している。たとえば後述の実施例でも用いている酸化チタンの場合には、「相転移温度」は1000k以上である。
ここで「相転移温度未満」での加熱は、対象とされる粒子のウォームスプレーのジェット内への滞在時間は通常1ms以下と短いため、ジェット温度が測定値としては「相転移温度」を上まわっていても粒子の加熱温度は「相転移温度」に達していないと判断される場合がある。
このような判断には、粒子の比転や熱伝導度を考慮すればよい。
たとえば、以上のことから、酸化チタンの場合には、ジェット温度の測定値としては1600k未満とすることが実際的には考慮される。
ウォームスプレー法そのものの概要はすでに知られているものであり、本発明においては、これらの公知の知識を踏まえて実施することができる。
たとえば、図1は、本発明の実施に使用したウォームスプレー用ガンの概要であって、燃料と酸素とを燃焼室(1)に圧入する燃料供給口(2)と酸素供給口(3)を有し、その燃焼室(1)の出口であるノズル(4)近くには、前記燃焼室(1)に不活性ガスを供給する口(5)を設けてある。このようにして、前記不活性ガスの圧入の増減に反比例して、前記酸素と燃料の供給量を増減し、前記ノズル(4)からのガス噴出スピードを余り変動しないようにしながら、その温度を4×10〜25×10℃の範囲で調整できるようにしてある。
また、前記ノズル(4)の出口には筒状のバレル(6)が同心状に連結してあり、このノズル側端部近くに、粒子を投入する投入口(7)が設けてある。
たとえば上記の装置を用いて、本発明の場合には、好適には、被処理物への衝突速度500〜1300m/sとなるような条件での超音速での吹き付けを行うことが考慮される。
このような衝突速度流体力学シミュレーションとして算定することができ、この速度は、スプレー装置からのスプレージェットの噴出速度とスプレーノズル出口と被処理物との距離の調節によって可能とされる。
超音速でのウォームスプレーコーティングが実現されることになる。
発明1〜6によれば、微小粒子の持つ機能性を実質的に損うことなしにその集合体である粒子を用いてのウォームスプレーによって機能性皮膜を形成することができる。
また、本発明7〜14のウォームスプレー方法とこれに用いる粒子については、粒子として、
<1>標準粒子
<2>標準粒子よりも大きい粒径の添加粒子
とによって構成し、前記のとおりの関係式で求めたK値が、1以上2以下という特有の範囲となるように両者の粒子を混合して用いることを基本的な要件としている。これによって緻密な皮膜が容易に形成可能となる。
ここでの「標準粒子」については、通常、溶射方法に用いられているもので、市販品等として入手しやすい粒径粒子のものとしてよい。たとえば酸化チタンの場合には45μm以下の粒径粒子で構成されているものと考えることができる。
一方の「添加粒子」は、通常では用いられていない大きな粒径のものであると定義される。
より大きな粒の添加粒子を標準粒子に特有の割合で混合することにより、つまりK値が1以上2以下となるように混合することで、標準粒子のみを用いた場合に比べて皮膜の緻密性は顕著に向上することになる。
なお、皮膜の緻密性については、気孔率Pが低いことが緻密性が高いこととして評価されることになる。この気孔率Pの測定のための方法としては気孔中に水銀を詰め込み、その量を計測する方法がある。あるいは、気孔率Pは、電気化学的手法による数値Rc(腐食抵抗)と関係があることが知られているので、後述の実施例でも用いているこのRc値を気孔率(緻密性)の目安とすることができる。
標準粒子と添加粒子との混合では、相互に種類の異なるものであっても良いが、同種のもの、たとえば同種の金属粒子とすることが、緻密性の顕著な向上の点では好ましい。
なお、一種の標準粒子に対して複数種の添加粒子を用いて、緻密性の向上とともに複合機能性を実現するようにしてもよい。あるいは標準粒子を複数種であり、添加粒子が一種または複数種であることも考慮される。
そして、前記の混合については発明1〜6と同様に、標準粒子や添加粒子は、その少くとも一方が、各々の粒子径よりも小さい微小粒子の集合体であってもよい。これによれば、緻密性が向上し、かつ微小粒子の機能性が皮膜において実質的に損なわれることなしに発現可能ともされる。
発明7〜14においても、ウォームスプレー装置としては、たとえば図1の構成のものを用いることができる。この装置においては、たとえば混合粉末の供給時中のガス中の酸素濃度を5vol%以下に、そして金属粒子等の場合にはガス温度を1500℃以下に制御することが望ましい。このような温度の制御は、燃焼ガス中への不活性ガスの混合によって行うことができる。
また、混合粒子の被処理物への衝突速度は前記の発明1〜6の場合と同様に500〜1300m/sとすることが望ましい。
たとえば後述の実施例では、Ti粒子の場合について示しているが、これに限られることなく、酸素濃度が5vol%を超える場合や、ガス温度が1500℃を超える場合、さらには衝突速度が500m/s未満の場合には、たとえばTiの酸化を抑えることや、緻密な組織を得ることは難しくなる。一方、酸素濃度の下限については、高速フレームを生成させる燃焼反応後の酸素含有割合として可能な限り低いことが望ましい。ガス温度は、たとえばTi金属またはその合金粒子の加熱状態と、その流速を左右する。その下限については装置のスケールや粉末の供給料、粉末の種類、たとえば、Tiをはじめ、Mn、Sn、Zn、Mo、Ga、In、W、Al、Cu、Ta、Hf、Nb、Sb、V、Fe、Ni、Co、Rh、Pt等の金属やこれらの2種類以上の合金、あるいはこれら金属の酸化物の1種以上、セラミックス複合酸化物等によっても相違するが、一般的には900℃以上とすることが目安となる。以上のことを考慮して、実際の操作では、装置スケール等をも考慮することで、不活性ガスの供給量、供給速度が定められることになる。
不活性ガスの種類については、たとえば代表的にはN2(窒素ガス)や、Ar(アルゴン)、Hc(ヘリウム)等の希ガスが好適なものとして示される。また、条件によってはCO2等の他のものであってもよい。
そこで、以下に実施例を示し、さらに詳しく説明する。もちろん、以下の例によって発明が限定されることはない。
<実施例A>
糊剤としてPVA(ポリビニルアルコール)を用い、酸化チタン、酸化鉄の各々の微小粒子の集合体粒子を用いてウォームスプレーコーティングを行った。
この際に、図1に示した装置を用いて各種材料をコーティングした例を表1、表2に示す。
表2におけるジェットの温度では、酸化チタン、酸化鉄の粒子そのものの加熱温度は各々の相転移温度未満である。
図2から図6は、実験No.2に関する拡大写真である。
他の実験例においても同様な外観を呈するので、それを示す写真は省略した。
なお、糊剤としては、PVAに限らず、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系などの従来一般に知られた糊剤を使用できることも確認された。また、デンプン質からなる天然又は半合性の糊剤の使用も可能である。
Figure 2008068942
Figure 2008068942
実験No.1〜6と実験No.17〜22は、本粒子が間違いなく付着できるか否かを確認する為のもので、機能面での評価は行っていない。
なお、微小粒子は表中の糊剤を2質量%混合して、スプレードライ法にて造粒して表中の粒子を得たものである。
主機能確認では、以下の方法によって酸化チタンの場合の光触媒機能と、酸化鉄の場合の電子貯蔵機能について評価した。
光触媒機能:電解液中にコーティングを浸し、その表面に向けて紫外線を照射する。その状態でコーティングの電極電位をプラス方向に走査し、流れる電流値(光電流)を計測する。その大小にて比較する。
電子貯蔵機能:電解液中にコーティングを浸し、コーティングの電極電位をマイナス方向に走査し、流れる電流のピーク面積(充電容量)、およびプラス方向に走査し、流れる電流のピーク面積(放電容量)を計測する。その大小にて比較する。
このような評価方法による確認では、糊剤による影響は見られなかった。及び噴射時の温度が糊剤の気化又は昇華温度を超えるものであることから、前記糊剤は、噴射時の加熱により殆どが気化又は昇華したものと思われる。
<実施例B>
標準粒子および添加粒子のいずれもチタンとした場合の混合粒子を用いたウォームスプレーコーティングを行った。
すなわち、図1に示した装置を用いて、以下の条件により、表3に示したように実験例1〜12の各々の粒子を噴射してその性能を確認した。
燃料(灯油):0.30dm3/min
酸素:0.63m3/min
窒素:1.50m3/min
ガン出口から基材までの距離:100mm
パス数:8
ガン移動速度:700mm/s
ピッチ幅:4mm
N2(名称):1500L/min
粒子の材質:チタン
対象部材の材質:炭素鋼
形成された皮膜の緻密性についての評価結果も表3に示した。
この表3においては、Ep、Rcは以下のことを意味している。
腐食電位Ep:銀・塩化銀参照電極に対する試料電極(チタンコーティング・炭素鋼基材)の人工海水中における浸漬電位の定常値である。
腐食抵抗Rc:試料電極(チタンコーティング・炭素鋼基材)を2枚向かい合わせ、両電極真に交流電圧を印加する。低周波数(100mHz)におけるインピーダンスから高周波数(10kHz)におけるインピーダンスを差し引くことで、腐食反応における抵抗値Rcを求める。
ここで、Rcの高い値は緻密なコーティングができていることを示す。気孔率Pは電気化学的手法による数値Rcと関連性がある。また、Rcの測定は気孔率に比べて簡便である。Rcは、気孔率(緻密性)の目安として用いることができる。
また、Pmin(vol%)は、最小気孔率を示している。
気孔率Pが低いことは緻密性が高いことを意味している。さらに気孔率がゼロ%となると、完全に緻密ということになる。一般的な溶射皮膜では気孔率が1%以下となると、緻密性が高いと言える。測定方法としては前記のように気孔中に水銀を詰め込み、その量を計測するものであるが、データの解釈上、その数値がある範囲内にあるとの表記をせざるを得ない。そこで、表3では最小気孔率Pmin(すなわち最大緻密性)を表記している。
そして表3では、最も気孔率の高かったもの(実験No.1:比較例)と、最も気孔率が低く、緻密性の高かったもの(実験No.4:実施例)についてのPminを示している。
なお、塩水浸漬試験を行っているが、この試験では、人口海水にサンプルを3日間浸漬し、その間の腐食電位Epおよび腐食抵抗Rcを測定し、24時間経過以降に定常に達した値からコーティングの緻密性を判断した。
Figure 2008068942
表3の実験No.4および実験No.9は、K値が1〜2の範囲内の本発明の実施例であって、顕著な緻密性が得られていることがわかる。
なお、添付の図7〜図43については、実験No.1〜12の各試料の;
コーティング層の断面写真(図7、10、13、16、19、22、25、28、31、34、37、40)、
コーティング層の4倍拡大断面図(図8、11、14、17、20、23、26、29、32、35、38、41)、
サンプルの塩水浸漬試験の結果を示す写真(図9、12、15、18、21、24、27、30、33、34、39、42)、
を示している。
「コーティング層の断面写真およびその拡大写真」となっているものは作製したコーティングの横断面を表したものであり、下方にある横一線が基材として用いた炭素鋼とコーティングであるチタン層との界面になる。また、横断面において黒い部分はチタン粒子が未充填の部分であり、コーティングがち密であるほど黒い部分が少なくなる。さらに、「塩水浸漬試験の結果を示す写真」は炭素鋼上にチタンコーティングを施した後、コーティング表面中央部を円形状に残して、他の部分をシリコン樹脂にて絶縁被覆したもので、これを塩水に浸漬することで、コーティング表面に炭素鋼由来の赤錆(写真では黒)が現れるかどうかを観測し、コーティング中に貫通気孔があるかどうかを確認するものである。
<実施例C>
前記表1の実験No.1の25〜90ミクロンの集合体粒子の中から表3の実験No.4に示す粒子径に該当するものを選別し、その実験No.4に示したのと同様にして集合体粒子の混合粒子を作成した。
この粒子は、振動ふるい装置により、適切な範囲の粒子径に選別し、選別した粒子を任意に比率で混合し、スプレー装置に供給することが何ら問題なく行える。
これを、表3の実験No.9と同様の条件で吹き付けた。
その結果、前記実験No.9と同様な効果を得たのみならず、実験No.9を越える緻密な微小粒子の層を得ることができ、付着力は強固なものであった。
本発明の微小粒子の集合体粒子を用いるコーティング方法は、構造用鋼防食(鋼製橋脚、原子力用炉心格納容器内壁など)、太陽エネルギー変換・備蓄デバイス(ソーラーパネルなど)、大気汚染物質浄化(高速道路ガードレールなど)等において機能性材料の被処理物へのコーティングに有効に用いられるものである。
また、標準粒子と添加粒子との混合を用いる本発明では、緻密な皮膜が形成されることから、低耐食材料の防食目的のコーティングに最適である。具体的には、橋脚・建材など構造用鋼、反応容器など化学プラント、製紙用など各種ロール、生体インプラント用金属材料、海水熱交換器などに低耐食材料の防食コーティングを行うのに有効である。

Claims (14)

  1. 粒子を加熱し、超音速で被処理物に吹き付け付着させるウォームスプレーコーティング方法であって、前記粒子がこれよりも粒径の小さい微小粒子の集合体であって、その相転移温度未満の温度に加熱して超音速で被処理物に吹き付けることを特徴とするウォームスプレーコーティング方法。
  2. 請求項1に記載のウォームスプレーコーティング方法において、前記粒子は、微小粒子を有機化合物からなる糊剤により相互に集合固化されたものであり、吹き付け時の加熱温度がこの糊剤の昇華又は気化温度以上であることを特徴とするウォームスプレーコーティング方法。
  3. 請求項1又は2に記載のウォームスプレーコーティング方法において、前記微小粒子は、酸化物結晶体である特徴とするウォームスプレーコーティング方法。
  4. ウォームスプレーコーティング方法により相転移温度未満の温度で加熱され、超音速で被処理物表面に吹付けて付着される粒子であって、該粒子がこれよりも粒径の小さい微小粒子の集合体であることを特徴とするウォームスプレーコーティング用粒子。
  5. 請求項4に記載のウォームスプレーコーティング用粒子において、前記粒子は、微小粒子を有機化合物からなる糊剤により相互に集合固化されたものであり、該糊剤の昇華又は気化温度は、ウォームスプレー吹き付け時の加熱温度未満であることを特徴とするウォームスプレーコーティング法粒子。
  6. 請求項4又は5に記載のウォームスプレーコーティング用粒子において、前記微小粒子は酸化物結晶体であることを特徴とするウォームスプレーコーティング用粒子。
  7. 粒子を融点未満で加熱し、超音速で被処理物表面に吹付けて付着されるウォームスプレーコーティング方法であって、前記粒子として標準粒子とそれよりも大きい粒径を添加粒子を用い、以下の関係式で求めたK値が1以上2以下であるように混合されてなることを特徴とするウォームスプレーコーティング方法。
    K=A×(B/C)×D
    A:添加粒子の含有質量%
    B:標準粒子の中心粒子径(μm)
    C:添加粒子の中心粒子径(μm)
    D:添加粒子の(最大粒子径−最小粒子径)/10(μm)
  8. 請求項7に記載のウォームスプレーコーティング方法において、前記標準粒子と添加粒子とは共に同種の金属粒子であることを特徴とするウォームスプレーコーティング方法。
  9. 請求項8に記載のウォームスプレーコーティング方法において、前記標準粒子と添加粒子は、その少くとも一方が、各々の粒子径よりも小さい微小粒子の集合体であることを特徴とするウォームスプレーコーティング方法。
  10. 請求項9に記載のウォームスプレーコーティング方法において、前記集合体を構成する微小粒子は酸化物結晶体であることを特徴とするウォームスプレーコーティング方法。
  11. ウォームスプレーコーティング法により融点未満で加熱され、超音速で被処理物表面に吹付けて付着される粒子であって、コーティング標準粒子とこれよりも大きい粒径を有する添加粒子が、次関係式で求めたK値が1以上2以下であるように混合されてなることを特徴とするウォームスプレーコーティング。
    K=A×(B/C)×D
    A:添加粒子の含有質量%
    B:標準粒子の中心粒子径(μm)
    C:添加粒子の中心粒子径(μm)
    D:添加粒子の(最大粒子径−最小粒子径)/10(μm)
  12. 請求項11に記載のウォームスプレーコーティング方法において、前記標準粒子と添加粒子と共に同種の金属粒子であることを特徴とする。
  13. 請求項14に記載のウォームスプレーコーティング方法において、前記標準粒子と添加粒子は、その少くとも一方が、各々の粒子径より遥かに微小な粒子の集合体であることを特徴とするウォームスプレーコーティング方法。
  14. 請求項13に記載のウォームスプレーコーティングにおいて、前記集合体を構成する微小粒子は酸化物結晶体であることを特徴とするウォームスプレーコーティング方法。
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