JP6461687B2 - 酸化ジルコニウム材料、およびそれを用いた成膜方法、ならびにその成膜方法によって形成された被膜 - Google Patents

酸化ジルコニウム材料、およびそれを用いた成膜方法、ならびにその成膜方法によって形成された被膜 Download PDF

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Description

本発明は、溶射材料として用いることができる酸化ジルコニウム材料、およびその材料を用いた成膜方法、ならびにその成膜方法によって形成された被膜に関するものである。
溶射法は樹脂のような低融点材料から、セラミックスのような高融点材料まで幅広い材料を用いて、被膜を効率よく形成できる成膜方法である。この方法は、主として100ミクロン以上の被膜を必要とする、発電プラントなどのエネルギー機器、自動車、飛行機、または船舶などの輸送機器、印刷用ロールなどの印刷機器、または建設機械などの幅広い分野で適用がなされている。
一般的な溶射法では、粉末の温度を材料の融点以上に加熱して溶融させ、この溶融した材料を液滴としたうえで高速のガス流によって搬送して、基材表面に衝突させるものである。しかし、このような一般的な溶射法では、高温加熱に起因する溶射材料や被覆対象物の酸化または相変態などが起こることがあった。
このような既存の溶射法に対して、近年では、非溶融スプレー法やコールドスプレー法と呼ばれる溶射法が提案され、実用化が進められている。これらの溶射法は、材料を溶融させること無く、粉末状態、すなわち固相状態のまま、音速を超えるような高速で基材に衝突させるものである(以後、非溶融粒子積層法という)。この方法によれば、酸化や相変態などを抑制することが可能であり、材料や被覆対象物の特性や機能を損なうことなく、被膜の形成が可能になる。
非溶融粒子積層法により形成される被膜は、銅などの低融点の金属がほとんどであるが、金属とセラミックスとの複合材料であるサーメットなどの被膜形成例も報告されている。一方で、セラミックス材料を用いた非溶融粒子積層法も検討されている。セラミックス材料を用いた被膜は、絶縁性、多孔質性、強度などの点で特徴的な性質を示すため、各種の用途におけるニーズが高い。このようなニーズに応えるために、例えば、特殊な粉末を用いた二酸化チタン被膜の形成に関する報告例がある。
特開2012−193441号公報 特開2012−192401号公報 特開2008−297184号公報
前記したように、非溶融粒子積層法は高温で不安定な材料の特徴や機能を損なうことなく成膜が可能な技術である。しかし、材料としてセラミックスのような脆性材料を選択した場合、非溶融粒子積層法を適用することが困難であった。事実、二酸化チタンを用いた非溶融粒子積層法について報告例があるが、それ以外のセラミックス材料を用いた非溶融粒子積層法に関する報告例はほとんど見当たらない。
一方、酸化ジルコニウムは耐熱コーティングや固体電解質等の機能性被膜として幅広く応用可能であり、その機能を十分発揮させるために、低温で酸化ジルコニウム被膜を形成させることが望ましい。このため、非溶融粒子積層法に用いることができる酸化ジルコニウム粉末、およびそれを用いた成膜方法が望まれていた。
実施形態による非溶融粒子積層法用酸化ジルコニウム材料は、平均1次粒子径が1nm〜1000nmの酸化ジルコニウムナノ粒子が凝集した構造を有し、平均2次粒子径が1μm〜100μmであることを特徴とするものである。
本実施形態によれば、酸化ジルコニウム被膜を非溶融粒子積層法で歩留まりよく形成させることが可能となり、幅広い用途で機能性の高い酸化ジルコニウム被膜を利用可能となる。
また、本実施形態によれば、酸化ジルコニウムの被膜を低温で形成させることが可能となるので、成膜に必要な機材がコンパクトになり、エネルギープラントのような大型機器に対して、現場で被膜を形成させるための施工が可能となり、また成膜装置もコンパクトに構成することが可能となる。
実施形態による酸化ジルコニウム材料に含まれる凝集体の形態を示す模式図。 実施形態による酸化ジルコニウム材料の解砕後の状態の透過型電子顕微鏡写真。 実施形態による成膜装置の構成を示す模式図。 実施形態による酸化ジルコニウム被膜の断面を表す顕微鏡写真。 実施形態による酸化ジルコニウム被膜の構造を表す透過型電子顕微鏡写真。
[酸化ジルコニウム材料]
第1の実施形態による酸化ジルコニウム材料は、非溶融粒子積層法に用いられるものである。ここで、非溶融粒子積層法とは、微細な粒子を高速で被覆対象物に衝突させ、被覆対象物の表面に粒子を堆積させて被膜を形成させるものである。ここで、粒子は実質的に高温に付されること無く、すなわち溶融されること無く、積層される。したがって、その被膜形成プロセスは一般的な溶射とは異なっている。なお、この非溶融粒子積層法は、コールドスプレー法と呼ばれることもある。
第1の実施形態による酸化ジルコニウム材料は、酸化ジルコニウムのナノ粒子が凝集した凝集体の形状を取っている。以下、このナノ粒子を1次粒子、凝集体を2次粒子と呼ぶことがある。
第1の実施形態において、材料を構成するナノ粒子の平均粒子径、すなわち平均1次粒子径は、1nm〜1000nmであり、好ましくは5nm〜500nmである。そして、材料を構成する凝集体の平均粒子径、すなわち平均2次粒子径は、1μm〜100μmであり、好ましくは、5μm〜50μmである。
実施形態において、この粒子の形状及び大きさは非常に重要な意味合いを含んでいる。非溶融粒子積層法に用いられる材料を構成する粒子は、粒子体積に対して表面積の割合が高く、表面での粒子間の凝集力が高いことが好ましい。このため、材料を構成するナノ粒子は、平均粒子径が1000nm以下であることが必要であり、500nm以下であることが好ましい。一方、実施形態による材料に含まれる凝集体は比較的大きな粒子を含むことが好ましい(詳細後述)。このため、平均粒子径が1nm以上であることが必要であり、10nm以上であることが好ましい。
また、非溶融粒子積層法は、一般には高速なガス流に粉末材料を導入し、被覆対象物に高速で衝突させるものである。そして、衝突時に粒子が有していた運動エネルギーによって粒子が変形して被膜が形成される。
したがって、材料に含まれる凝集体(2次粒子)の寸法が過度に小さいと、非溶融粒子積層法による被膜施工時に運動する粒子が持つ運動エネルギーが不足して、衝突時の粒子の変形が小さくなり、被膜が形成されない場合がある。また、粒子径が過度に小さいと、周囲のガス流の影響を強く受けて、粒子が被覆対象物まで到達しない場合があるなどの問題が生じることもある。このような観点から、凝集体の平均2次粒子径は、1μm以上であることが必要であり、10μm以上であることが好ましい。
一方、凝集体の粒子径が大きすぎると、装置のノズルを閉塞したりするなどの問題が生じることがある。また、粒子の速度が遅くなってしまったり、粒子が過剰の運動エネルギーを持ち、被覆対象物との衝突時に跳ね返ってきてしまい、良好な被膜形成が達成できないという問題も生じうる。このため、用いられる装置や用いられる凝集体の密度などにも依存するが、凝集体の平均2次粒子径は、100μm以下であることが必要で有り、50μm以下であることが好ましい。
なお、本実施形態において、平均1次粒子径は、電子顕微鏡などを用い、材料を観察した画像を解析することにより求められる。例えば、以下の方法により求めることができる。まず透過型電子顕微鏡で材料を観察し、各1次粒子の投影断面積を測定する。その投影断面積から球換算した粒子の直径を求める。同様の操作を、例えば200個以上の1次粒子について行って、1次粒子径の算術平均径を平均1次粒子径とする。
また、本実施形態において、平均2次粒子径は、レーザー回折法により測定することができる。レーザー回折による粒子径測定装置は市販されており、任意のものを用いて測定することができる。例えば、HORIBA LA−950を用いて測定することができる。
実施形態による酸化ジルコニウム材料に含まれる1次粒子は、一般に粒子径に分布がある。すなわち、相対的に大きな粒子(以下、簡単のために大粒子ということがある)と相対的に小さな粒子(以下、簡単のために小粒子ということがある)との混合物であるといえる。本実施形態においては、1次粒子が分布を有するため、大粒子の間にある隙間に、小粒子が嵌まり込む形状を取り得る。本発明者らの検討によれば、前記した通りの平均1次粒子径および平均2次粒子径を有する酸化ジルコニウム材料を非溶融粒子堆積法に用いると、形成される被膜は特徴的な微視的構造を有することが分かった。具体的には、被膜は酸化ジルコニウムの結晶質相と非晶質相からなっており、その非晶質相は結晶質相中に不連続に分散している。この分散した非晶質相は結晶質相を結合していると考えられる。その結果、被覆対象物の表面に被膜が安定して形成されるものと考えられている。また、大粒子を含むナノ粒子を用いると、この大粒子が被膜内部の空間の多くを占め、その隙間を小粒子が埋めることで被膜が形成されるため、成膜速度を格段に高速化できることもできると考えられる。そして、酸化ジルコニウム材料の平均1次粒子径および平均2次粒子径が前記した範囲外であると、安定な被膜が形成されにくくなり、また成膜速度が遅くなることから、前記の平均粒子径の範囲は重要な意味合いを有していることが分かる。
このような理由から、平均1次粒子径が異なる複数種の酸化ジルコニウムナノ粒子を組み合わせることが好ましい。具体的には、平均1次粒子径が100nm〜1000nmである第1のナノ粒子と、平均1次粒子径が1nm〜50nmの第2のナノ粒子との混合物であることが好ましい。このようなナノ粒子混合物を用いると、本実施形態による効果がより顕著に発現される。
ここでナノ粒子が単分散の球状粒子であると仮定した場合、その粒子が細密充填されたとき、粒子の隙間に内接することができる粒子の直径は、数学的に算出することができ、ナノ粒子の直径の0.225倍となる。したがって、酸化ジルコニウム粒子が、異なる大きさの粒子の混合物である場合、より小さい粒子の直径が、より大きい粒子の0.225倍以下であると、より大きい粒子の隙間に小さい粒子が嵌まり込む。本発明者らの検討によれば、酸化ジルコニウム材料に含まれる凝集体が、このように組み合わさった構造を取ると、酸化ジルコニウム材料が成膜時に被覆対象物に衝突した際に、より小さい粒子が非晶質相に転換してより大きな粒子を結合し、より一体性に優れた酸化ジルコニウム被膜を形成するものと考えられる。なお、実際の酸化ジルコニウムナノ粒子は単分散ではなく、粒子径に分布があるので、より小さい粒子の直径が、より大きい粒子の0.4倍以下であれば優れた酸化ジルコニウム被膜を得ることができる。
したがって、酸化ジルコニウム材料の原料として大きさの異なる、第1のナノ粒子と第2のナノ粒子を組み合わせて用いる場合には、より小さい、第2のナノ粒子の平均1次粒子径が、より大きい、第1のナノ粒子の平均1次粒子径の、0.4倍以下であることが好ましく、0.225倍以下であることがより好ましい。また、このとき、第1のナノ粒子と第2のナノ粒子の配合比は、個数基準で5:1〜1:5であることが好ましく、2:1〜1:2であることがより好ましい。
また、酸化ジルコニウムナノ粒子が、2種類以上のナノ粒子の混合物でなくても、粒子径の分布が一定の条件を満たすと同様の効果を得ることができる。具体的には、実施形態による酸化ジルコニウム材料を構成するナノ粒子のうち、ナノ粒子全体の平均1次粒子径に対して0.4倍以下の粒子が個数基準で10〜50%であることが好ましい。
本実施形態に用いる酸化ジルコニウムは一般には蛍石型の結晶構造を有するものである。この酸化ジルコニウムは不純物を含まないものであってもよいが、本実施形態の効果を損なわない範囲で、そのほかの金属酸化物などを含んでいてもよい。このような酸化物としては、酸化イットリウム(Y)、酸化セリウム(CeO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)酸化イッテルビウム(Tb)、酸化スカンジウム(Sc)、酸化ランタン(La)、その他のランタノイド酸化物、アクチノイド酸化物を含んでいてもよい。このような酸化物は材料結晶の相安定化の効果を示すことがある。また、そのほかの不純物は本実施形態の効果を損なわない範囲で含まれていてもよい。これらの酸化ジルコニウム以外の成分の含有量は、形成しようとする被膜の用途などによって限定されるが、一般に、不純物含有量は酸化ジルコニウム材料の総重量を基準として1重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以下であることがより好ましい。
酸化ジルコニウム材料の製造方法は特に限定されない。しかしながら、例えば以下のような方法によって製造することができる。
材料を構成するナノ粒子は、大きな酸化ジルコニウム粉末を破砕してナノ粒子にする方法、結晶の核から気相中、もしくは液相中で粒子成長を促し、ナノ粒子を製造する方法などが挙げられる。これらのうち、ナノ粒子を効率的に製造するためには、後者の方が好ましい。また、ナノ粒子を凝集させて、凝集体とするための方法としては、溶媒となる液相中にナノ粒子を分散させ、溶媒を蒸発させて凝集体である酸化ジルコニウム材料を製造する方法、ナノ粒子を機械的にミリングして混合し、凝集体とする方法などが考えられる。また、ナノ粒子を気相中に適正な期間保持しておくだけで凝集が進むことから、この状態で使用することも可能である。なお、凝集体を形成させるために、ポリマーなどのバインダーを用いることも可能であるが、一般的にはバインダーを用いずに凝集体を形成させることが好ましい。
[酸化ジルコニウム被膜の成膜方法]
実施形態による酸化ジルコニウム被膜の成膜方法は、前記した酸化ジルコニウム材料を用いて被膜を形成する方法である。具体的には、前記の材料を溶融させることなく被覆対象物に高速で衝突させ、前記被覆対象物の表面に酸化ジルコニウムを含む被膜を形成させる。
実施形態による材料は、一般的な溶射法に利用することも可能であるが、温度を融点以上に上げると、溶融・凝固過程を経るため、酸化ジルコニウムナノ粒子または凝集体が有する材料特性をそのまま被膜に付与することが困難となる。このため、材料が有する優れた特性を被膜に付与するために、材料を溶融させることなく、固相状態のまま被膜を形成させることが好ましい。材料を固相状態のままで被膜とするためには、材料に含まれる粒子を大きく変形させる強加工が必要となる。このため、被覆対象物に衝突する材料粒子の運動エネルギーを支配する粒子速度は、100m/s以上であることが好ましく、500m/s以上であることがより好ましい。
実施形態による酸化ジルコニウム材料は、成膜のための装置を限定するものではないが、高温、高圧のガスを先細末広形状のノズルで加速させて被覆対象物に衝突させるコールドスプレー装置を用いることが好ましい。
コールドスプレー装置を用いて、前記した粒子速度の条件を満たすためには、一般的には高い作動ガス圧力が必要とされる。しかしながら、実施形態による酸化ジルコニウム材料は、その大きさ、形状、および密度などの関係から、比較的低い作動ガス圧力を用いても酸化ジルコニウム被膜を形成することが可能である。すなわち、法制などの制限が比較的少ない、作動ガス圧力が1MPa未満である低圧型コールドスプレー装置を用いて製膜することが可能である。なお、優れた特性を有する酸化ジルコニウム被膜を、比較的短時間で形成させるためには、材料に十分な運動エネルギーを与えることが好ましい。このような観点から、作動ガス圧力は0.5MPa以上であることが好ましく、0.8MPa以上であることがより好ましい。
このように低圧型と呼ばれるコールドスプレー装置は、装置が小型で、安全性も高いというメリットも有する。このため、機器類の製造現場だけでなく、機器を使用する現場でも利用することが可能であり、格段に被膜適用範囲を広げられる点で大きなメリットを有する。すなわち、大型のタービンや発電機など、使用する現場に設置済みの装置に対して酸化ジルコニウム被膜を形成させようとする場合には、その現場に成膜装置を持ち込めるために非常に便利である。
また、スプレー装置を用いる場合、ガス温度を高くすることにより材料の軟化を誘発することができ、同時にガス速度を増大させることもできるため、被覆対象物に対する材料の付着効率を向上させるのに好適である。しかしガス温度をより高くするためには加熱装置が多く必要になり、また装置自体の加熱を防ぐために特別な冷却構造が必要となる。このような理由でスプレー装置が大型かつ複雑になることを防ぐため、ガスの温度はノズル入り口部で300〜800℃の範囲となるように調整することが望ましい。
以上の通り説明した方法により形成された酸化ジルコニウム被膜は、特徴的な微視的構造を有する。すなわち、酸化ジルコニウムの結晶質相と非晶質相からなっており、前記結晶質相が前記非晶質相中に不連続に分散している構造を有する。このような構造が形成される理由は、以下の通りであると推定されている。実施形態による酸化ジルコニウム材料を高速で被覆対象物に衝突させると、粒子と粒子に挟まれた境界面ですべり等によって高い応力が発生し、結晶構造が崩れて、非晶質相が形成される。この非晶質相が材料粒子を構成する結晶性相を結合する。一方で酸化ジルコニウム粒子の表面以外の部分は結晶性を維持しているので、全体的には酸化ジルコニウム粒子はほとんど溶融することがない。この結果、実質的に固相状態を維持したまま被膜が形成される。
なお、酸化ジルコニウムナノ粒子に、相対的に小さい粒子が含まれている場合には、相対的に大きな粒子に挟まれた相対的に小さな粒子が応力により非晶質相に転換しやすい。このため、大きさの異なる1次粒子が含まれている場合には、相対的に小さな粒子が相対的に大きな粒子を結合する作用を有する。そして、典型的には相対的に小さな粒子は全体的に非晶質に転換されるので、酸化ジルコニウム被膜中には相対的に大きな粒子に由来する結晶質相だけが残留する。
このように、実施形態による酸化ジルコニウム被膜中には、その被膜を形成させるために用いられた酸化ジルコニウム材料に含まれる粒子に由来する結晶質相が存在する。この結晶質相は、酸化ジルコニウム材料に含まれる粒子よりもわずかに小さい大きさである。被膜中に存在する結晶質相の大きさと、原料となる酸化ジルコニウム材料に含まれる粒子の大きさの関係は、材料中に含まれる粒子の大きさ、被覆時の条件などによって変動するが、一般に被膜中に存在する結晶質相の大きさ(直径)は、原料となる酸化ジルコニウム材料に含まれる粒子の大きさ(直径)の50〜95%程度である。
[酸化ジルコニウム被膜の応用]
実施形態による酸化ジルコニウム被膜は、各種機器に優れた特性を付与し得るものである。その例を挙げると以下の通りである。
本実施形態による被膜はエネルギー機器用遮熱コーティングとして利用することができる。ここで、エネルギー機器としては、例えばガスタービンや蒸気タービン、ボイラ等が挙げられる。一般に酸化ジルコニウム被膜は、他のセラミックスに比べて熱伝導率が低く、熱膨張率が大きいことからエネルギー機器の金属部材を熱から保護する遮熱コーティングに好適である。従来、酸化ジルコニウム被膜を安定に、また迅速かつ安全に形成させる方法が知られていなかったため、そのような応用例は報告されていないが、本実施形態によってそのような応用が可能である。実施形態による酸化ジルコニウム被膜は施工が容易であり、大型のエネルギー機器部品への適用が簡便に可能であり、また施工時の処理温度が低いために薄板や耐熱温度の低い材料にも施工できる。したがって、エネルギー機器の遮熱コーティングとして従来にない広範な適用が実現できる。
また、実施形態による酸化ジルコニウム被膜は、固体電解質型燃料電池の固体電解質膜に好適に用いることができる。酸化イットリウムなどの安定化剤を添加した酸化ジルコニウムは、一般に良好なイオン電導性を有し、固体電解質型燃料電池に適した電解質膜として用いられる。このような電解質膜を形成させる場合、従来はコストを低減させることなどを目的に、材料を溶融させるプラズマ溶射法等を用いた方法が検討されてきた。しかしながら、従来の溶射法では被膜内部に気孔等が形成されることがあり、電解質膜のイオン電導性が低下することあった。
これに対して実施形態による酸化ジルコニウム被膜は、ナノ粒子が密に集合した組織を有しており、被膜内部の物理的欠陥が少ないことから、高いイオン電導性を示す。このためこの被膜は、固体電解質型燃料電池用の固体電解質膜として非常に優れた特性を示す。なお、前記したコールドスプレー装置を用いて製膜をした場合には、被膜中に非晶質相が含まれている。電解質膜として酸化ジルコニウム被膜を用いる場合には、イオン電導性を高く維持するために非晶質相が少ないことが好ましい。このため、成膜後に被膜を500℃以上の温度に付す熱処理を行うことによって、被膜の結晶性を改善することが好ましい。このような熱処理により、結晶性の高い酸化ジルコニウム被膜を得ることができ、イオン電導性の高い、優れた固体電解質膜を得ることが可能である。
また、実施形態による酸化ジルコニウム被膜は、ガスセンサー用固体電解質膜として用いることが好ましい。安定化剤が添加された酸化ジルコニウムは、一般に良好なイオン電導性を有するため、酸素センサーとしても広く応用がなされている。上述したように、本発明の被膜はイオン電導性が高いことから、酸素センサーとしても利用が可能である。
また、実施形態による酸化ジルコニウム被膜は、加工工具の被覆材料として用いることが好ましい。酸化ジルコニウムは金属材料に比べて硬度が高いとともに、靱性が高いことが知られている。このため、摩耗しやすい工具の先端部を被覆する被膜に用いることで、加工工具の寿命を延ばし、高性能化の維持に役立つ。特に実施形態による酸化ジルコニウム被膜は、成膜温度が低いことから、加工工具の基材の特性を損なうことなく施工が可能である。また、成膜温度が高い場合には、基材が高温に付されるため、被膜形成後に基材の硬度を回復させるため熱処理がひつようでるが、実施形態による成膜方法ではそのような熱処理は不要である。また、実施形態による酸化ジルコニウム被膜は、加工工具を使用したことによって摩耗した場合でも、実施形態による被膜を再度形成させることが容易である。また、使い捨てのスローアウェイチップに比べてもコストが低いという経済的なメリットも得ることができる。
また、実施形態による酸化ジルコニウム被膜は、歯科治療材料に用いることが好ましい。酸化ジルコニウムは硬さと生体整合性が高いことから、人工歯根や歯科治療用の補綴物として広範な利用がなされている。実施形態による酸化ジルコニウム被膜は施工が容易なことから、成形が容易な金属と組み合わせることによって、短時間に所望の形状に加工することが可能である。そして、そのような加工装置も前記した通り小型化が可能であるため、病院などで治療材料を作成することも可能である。この結果、製造コスト等も大幅に低減することが可能である。
[成膜装置]
実施形態による酸化ジルコニウム被膜の成膜方法を実施する成膜装置は、特に限定されない。しかしながら、コールドスプレー装置と、スプレー部のみを局所的に排気する装置とを具備したものであることが好ましい。本実施形態による酸化ジルコニウム材料は、低温で施工が可能なので、成膜装置を小型化することができる。このため、大型装置などがすでに設置された現場で成膜を行うことができる。このような場合、被膜を形成させる環境が、製造専用ではないため、排気装置も併設する必要がある。この場合、スプレー装置のスプレー部分だけを局所的に吸引する排気装置を併設すればよい。
実施形態に係る酸化ジルコニウム材料について、図面を参照しながら具体的に説明すると以下の通りである。
図1は代表的な実施形態による酸化ジルコニウム材料の構造を模式的に示している図である。図1では、便宜的に、大粒子1と、小粒子2とから構成される凝集体を示している。しかしながら、実施形態による粒子の大きさはこの図1に示されたものに限定されるものではない。具体的には、粒子の大きさが揃ったものや、粒径が異なる粒子が3種類以上混在するもの、また粒子形状が異なる粒子を含むものなどが挙げられる。
ただし、大粒子と小粒子が混在する場合には、成膜速度も速く、かつ、良好な組織を有する被膜を形成することが可能になる。
また、図2は実施形態による酸化ジルコニウム材料の透過型電子顕微鏡による観察結果である。
図3は、実施形態による酸化ジルコニウム材料を用いて製膜をするのに用いることができるコールドスプレー装置の模式図である。コンプレッサー(3)で圧縮された作動ガスを加熱用ヒータ(4)で500℃程度まで加熱した後、スプレーガン本体(5)に導入する。ガン本体(5)の出口に設けられた先細末広形状のラバルノズル(6)でガスは数百m/sの速度まで加速され、被覆対象物である基板(9)に噴射される。ラバルノズル(6)の入り口部で、材料供給部(8)から、実施形態にかかる酸化ジルコニウム材料を導入すると、この材料は作動ガスによって搬送されて基材に衝突し、被膜(10)が形成される。
図4は実施形態による被膜の断面写真である。この被膜は、基材(9)としてステンレス鋼SUS304を用い、実施形態による酸化ジルコニウム材料を用いて形成させたものである。この例では、約200μmの厚さの酸化ジルコニウム被膜(10)を作成した。
図5は、図4に示されるこの被膜の断面を、透過型電子顕微鏡を用いて観察したものである。格子縞の観察や、電子線回折パターンの観察等から、暗いコントラストの部分が結晶相(11)であり、明るい部分が非晶質相(12)であることが明らかになった。このように実施形態による被膜は、非晶質相(12)が結晶相(11)を強固に結合することによって、緻密で厚い被膜の形成がなされていることが明らかになった。
1…大粒子
2…小粒子
3…コンプレッサー
4…加熱ヒータ
5…スプレーガン本体
6…ラバルノズル
7…粉末供給ガス
8…粉末供給部
9…基材
10…被膜
11…結晶相
12…非晶質相

Claims (5)

  1. 材料を溶融させること無く、微細な粒子を音速を超えるような高速で被覆対象物に衝突させ、被覆対象物の表面に粒子を堆積させて皮膜を形成する非溶融粒子積層法に用いる材料であって、
    平均1次粒子径が1nm〜1000nmの酸化ジルコニウムナノ粒子が凝集した構造を有し、平均2次粒子径が1μm〜100μmで、且つ
    前記酸化ジルコニウムナノ粒子が、平均1次粒子径が100nm〜1000nmである第1のナノ粒子と、平均1次粒子径が1nm〜50nmの第2のナノ粒子との混合物であることを特徴とする酸化ジルコニウム材料。
  2. 前記第2のナノ粒子の平均1次粒子径が、前記第1のナノ粒子の平均1次粒子径の0.
    4倍以下である、請求項に記載の酸化ジルコニウム材料。
  3. 前記第2のナノ粒子の個数基準の割合が10〜30%である、請求項に記載の酸化ジルコニウム材料。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸化ジルコニウム材料を、溶融させることなく被覆対象物に高速で衝突させ、前記被覆対象物の表面に酸化ジルコニウムを含む被膜を形成させることを特徴とする、酸化ジルコニウム被膜の成膜方法。
  5. 作動ガス圧力が1MPa未満であるコールドスプレー装置を用いて成膜を行う、請求項4に記載の酸化ジルコニウム被膜の成膜方法。
JP2015079344A 2015-04-08 2015-04-08 酸化ジルコニウム材料、およびそれを用いた成膜方法、ならびにその成膜方法によって形成された被膜 Active JP6461687B2 (ja)

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