JP2002309364A - 低温溶射皮膜被覆部材およびその製造方法 - Google Patents

低温溶射皮膜被覆部材およびその製造方法

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JP2002309364A JP2001113604A JP2001113604A JP2002309364A JP 2002309364 A JP2002309364 A JP 2002309364A JP 2001113604 A JP2001113604 A JP 2001113604A JP 2001113604 A JP2001113604 A JP 2001113604A JP 2002309364 A JP2002309364 A JP 2002309364A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 低温高速溶射によって、基材表面に酸化物や
分解生成物の含有が少ない緻密な溶射皮膜を高い密着性
を確保して付着形成すること、また、基材表面に耐高温
酸化性、耐食性、熱伝導性などの物理化学的性質に優れ
た溶射被膜を被覆形成する有利な方法を提供すること。 【解決手段】 被処理基材の表面に吹付け溶射材料の粒
子を、温度を300℃以下の低温に保持した状態で、飛
行速度500m/s以上である高速低温溶射によって衝突
させることにより付着させて、低温溶射皮膜を形成して
なる低温溶射被覆部材を提案する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、低温溶射皮膜被覆
部材およびその製造方法に関し、とくに基材表面に、高
速の作動ガスを介して、金属(合金)や非酸化物系サー
メット粒子を低温で吹付け、衝突させることにより、低
温溶射皮膜を被覆形成する技術についての提案である。
【0002】本発明は、ガラス・ほうろう質材料粒子を
はじめ、プラスチック粉末材料などのように、基材表面
に衝突した際、その運動エネルギーが熱に変換される現
象によって、軟化したり、溶融する粉体物質であれば、
これらの皮膜を被覆する部材の形成にも適用できる。
【0003】
【従来の技術】溶射法は、燃焼炎やプラズマジェット中
に金属、セラミックス、サーメットなどの粉末材料を投
入して溶融または半溶融状態にしつつ、基材表面に吹付
けて皮膜を形成させる高温の表面処理法である。その
他、粉末材料を使う溶射法とは別に、金属線を直流電源
に直結して電気アークを発生させ、このアーク熱源によ
って該金属線を溶解して吹付ける方法もある。
【0004】このように、溶射法は、溶射材料を溶融ま
たは半溶融状態に導いて、成膜化する高温処理方法であ
る。なお、この溶射法によれば、熱源中で溶融したり、
軟化することが困難な炭化物や硼化物、窒化物などであ
っても、金属や合金を混在させることにより、いわゆる
サーメットの状態にすれば、金属質がバインダーとなっ
て容易に成膜できる。このため、溶射法による成膜は、
材料選択の自由度が大きく、金属、セラミックス、サー
メット材料が保有する種々な物性値を付加価値の高い皮
膜として利用できる有用な表面処理法として認識され、
各種の産業分野で汎用されている。
【0005】ただし、一般的な溶射法の場合、金属(合
金)、炭化物などを主成分とする溶射材料を空気中で溶
射する方法であるから、溶射材料の酸化を避けることが
できない。そのため、形成された溶射皮膜が、酸化物を
含む粒子が堆積した状態になると共に、これらの酸化物
粒子が基材表面を覆うことになるため、粒子間結合力や
基材との密着性を弱め、皮膜中に微細な欠陥(例えば気
孔)を発生したものとなっている。しかも、酸化物を含
むことによって、溶射前の溶射材料の物性値が変化し、
期待通りの機能を発揮できないこともある。
【0006】溶射法が抱えている上述した技術的課題を
解決するため、従来、次のような技術が提案されてい
る。 (1)実質的に空気(酸素)を含まないArガスの減圧環
境中で、プラズマ溶射する方法(減圧プラズマ溶射法) (2)音速以上の燃焼ガスフレームを熱源とし、この中
に溶射用の粉末材料を投入して、熱源中に存在する時間
を極力短くすることによって、溶射材料の酸化を抑制す
る方法。(高速フレーム溶射法)
【0007】しかし、これらの従来技術のうち、減圧プ
ラズマ溶射法は、空気(酸素)を除去するための真空容
器を必須条件としているため、被処理基材に寸法および
形状に制約を受けたり、溶射法が大きな特徴としている
現地施工ができないという問題がある。さらに、装置全
体が高価で、生産性の面でも不利な点が多い。
【0008】また、前記高速フレーム溶射法は、大気プ
ラズマ溶射法による皮膜に比較すると酸化物含有量は少
ないが、減圧プラズマ溶射皮膜と比較すると、酸化物含
有量は多い。その結果、高速フレーム溶射法で得られた
耐熱性金属溶射皮膜を高温の燃焼ガス中で使用すると、
次のような問題が生じる。それは、ボイラ、ガスタービ
ンなどの高温部に溶射皮膜を適用する場合、溶射皮膜の
表面には耐熱性と耐高温酸化性に優れたAl2O3、Cr2O3
どの酸化膜が必要である。こうしたAl2O3やCr2O3の溶射
皮膜は、皮膜構成材料としてのAlやCrが高温環境中にお
いて皮膜表面へ拡散移動することによって形成されるの
が普通である。しかし、該溶射皮膜中に既に酸化物が含
まれていると、この酸化物がAlやCrの拡散移動の障壁と
なって該溶射皮膜表面にAl2O3やCr2O3の膜の生成が阻害
される。このため、溶射材料として、たとえば耐熱性や
耐高温酸化性を有する耐熱合金を用いたとしても、溶射
皮膜化するとその特性を十分に発揮させることができな
くなる。しかも、溶射熱源中で酸化した溶射粒子を含む
皮膜は、海水や工業用水さらには、一般の大気中におい
ても、酸化物を含まない同種の材料皮膜に比較すると、
防食性能や電気伝導性、熱伝導性などの諸性質に劣ると
いう傾向があった。
【0009】以上説明したように、従来の溶射法は、溶
射材料が保有する優れた物理化学的性質を劣化させずに
成膜することが非常に困難な状況にあった。このような
現状に対し、発明者らは、先に特開平11-256303号公報
において、溶射熱源中の溶射粒子の飛行速度を150m/s以
上として粒子の被爆上昇温度を300℃〜軟化点直下に制
御することによって、硬質溶射粒子の分解、変質するこ
とを防止する技術を提案した。但し、この技術の場合、
被溶射基材の硬さをHV170以下とすると共に、溶射材料
粒子の硬さをHV250以上としなければならないという制
約があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】従来の、とくに大気雰
囲気中で行う溶射処理およびこの方法の実施によって得
られた溶射皮膜には、次に示すような問題があった。 (1)プラズマジェット、電気アーク、可燃性ガスや可
燃性液体の燃焼フレームなどを熱源とする従来の大気溶
射法で得られる金属系の皮膜は、酸化物を含むため、皮
膜を構成する溶射粒子の相互結合力が弱く、また被処理
基材との密着性にも劣るうえ、皮膜の気孔率も悪い。 (2)なお、上記(1)の現象は、炭化物、窒化物など
を含むサーメット溶射皮膜にも発生するが、炭化物や窒
化物自体が酸化されたり、分解されたりして変質するた
め、これらの非酸化性セラミックスが保有する優れた耐
熱性、耐摩耗性、潤滑性などの性質を十分に利用するこ
とができない。 (3)溶射熱源中で生成した酸化物を含む金属系溶射皮
膜は、酸化物を含まない同種・同成分の皮膜に比較する
と、耐食性、耐高温酸化性、電気伝導度などの物理化学
的性質に劣り、その適用範囲が限定される傾向があり、
今後、高度化されていく産業界の要求に応えることがで
きない。
【0011】そこで、本発明の主たる目的は、低温高速
溶射法の採用によって、基材表面に酸化物や分解生成物
の含有が少ない緻密な溶射皮膜を高い密着性を確保して
付着形成することにある。
【0012】また、本発明の他の目的は、基材表面に耐
高温酸化性、耐食性、熱伝導性などの物理化学的性質に
優れた溶射皮膜を被覆形成する有利な方法を提案するこ
とにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】上掲の目的に対し、その
実現のために鋭意研究した結果、発明者らは、以下の要
素構成に係る本発明に想到した。即ち、本発明は、被処
理基材の表面に吹付け溶射材料の粒子を、温度を300℃
以下という溶射法としては著しく低温に保持した状態
で、飛行速度500m/s以上の高速溶射によって衝突させる
ことにより付着させて、低温溶射皮膜を形成してなる低
温溶射被覆部材である。
【0014】本発明において、上記低温溶射皮膜は、膜
厚が3μm〜10mm、酸化物含有量が酸素量として0.01未満
〜0.08wt%、気孔率が0.5%以下の性状を有し、表面の粗
さRaが0.03〜3μmの範囲内であり、そして、この皮膜中
には熱処理によって析出する金属間化合物を分散含有し
ていることが好ましい。
【0015】なお、本発明において、上記溶射材料粒子
としては、 融点が2000℃以下のIn、Sn、Zn、Te、Sb、Mg、Al、S
r、Ge、Ag、Au、Cu、Mn、Si、Ni、Co、Fe、Pa、Ti、P
t、Zr、Cr、Vから選ばれる1種の金属もしくは、2種以上
からなる合金、 または、TiC、WC、TaC、B4C、SiC、ZrCおよびVCから
選ばれる1種または2種の炭化物、TiN、ZrN、TaN、AlN、
BN、Si3N4およびNbNから選ばれる1種または2種以上の窒
化物、TiB2、ZrB4、CrB2、NbB2、WB2(W2B5)およびVB2
ら選ばれる1種または2種以上の硼化物からなるセラミッ
クス90〜10wt%と残部が前記金属・合金とからなる非酸
化物系サーメットを用いることが好ましい。
【0016】本発明は、被処理基材の表面に、金属・合
金および/または非酸化物系サーメットからなる溶射材
料粒子を、温度600℃以下の高速作動ガスを介して溶射
する際、前記溶射材料粒子の温度を300℃以下の低温に
保持した状態で、飛行速度500m/s以上の高速吹付けによ
る衝突力をもって付着させることによって、低温溶射皮
膜を形成することを特徴とする低温溶射皮膜被覆部材の
製造方法である。
【0017】なお、本発明に係る上記製造方法において
は、上記低温溶射皮膜形成後、1000〜1200℃、1〜10hの
溶体化処理を施した後、700〜1000℃×1〜30hの時効処
理を行うことによって、前記低温溶射皮膜中にCoAlx、N
iAlx、FeAlx、CrAlx、FeCo、CuZnあるいはAgZnなどの金
属間化合物を析出させるか、1030℃以下×60日未満の析
出硬化熱処理を施してAl、Ti、Cu、Nb、P、Cr、Si、M
g、Fe、Vなどの炭化物、窒化物あるいは硼化物を析出さ
せることが好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】図1および図2は、本発明に係る
低温溶射皮膜を形成するのに有効な装置の好適な実施例
を示すものである。図示の1は、圧縮ガスボンベから供給
される作動ガス源、2は溶射材料の供給器、3はガス加熱
用熱交換器、4は溶射容器、5は噴射ガン、6はノズル、7
は被処理体、8は消音器、9は作動ガス用主ガス管、10は
溶射材料粉末搬送用の副ガス管、11は作動ガスの整流
板、12、13はそれぞれのガス管に設けられた流量調整バ
ルブである。
【0019】この装置は、ガス源から供給された高圧ガ
スを、2つに分け、その一方を作動ガスとして熱交換器
に送って400〜600℃に加熱し、超音速流の噴射ガスとし
てノズル6から被処理体7に向けて噴射させる。この場
合、断熱膨張に伴なう極端な低温化を防ぐように温度制
御する。そして、他の一方のガスは、溶射粉末材料の搬
送用ガスとして使用するが、噴射ガン5の直前で前記作
動ガスと合流させ、(図1の場合)ノズル6中で超音速ガ
ス流にして溶射材料粒子を高速度で被処理体に向けて飛
行衝突させ、表面に喰い込むように楔着させながら肥厚
化して、所定の厚みの溶射皮膜を形成する。また、図2
のように、溶射材料粒子を噴射ガン5の出口(ノズル6の
取付部近傍)の減圧部から投入してもよい。なお、超音
速のガス発生部や被処理体は、鋼製の溶射容器4によっ
て保護され、超音速ガスによって発生する衝撃波音は、
消音器8の作用と相俟って外部には洩れないような構造
にする。
【0020】使用する上記高圧ガスとしては、空気、
N2、ArあるいはHe単体のガスまたは、これらの混合ガス
を使用することができ、また、これらのガスの圧力は1
〜4MPaの範囲内に制御することが好適である。
【0021】本発明において使用する溶射材粒子として
の金属・合金は、融点が2000℃以下、好ましくは、1000
℃以下、さらに好ましくは700℃以下を示す下記の実用
金属に適用することが好適である。括弧内は、融点(℃)
を示す。 In(157)、Sn(232)、Zn(420)、Te(450)、Sb(63
1)、Mg(651)、Al(660)、Sr(770)、Ge(936)、Ag(961)、A
u(1063)、Cu(1083)、Mn(1244)、Si(1410)、Ni(1452)、C
o(1493)、Y(1509)、Fe(1535)、Pa(1552)、Ti(1668)、Pt
(1769)、Zr(1852)、Cr(1875)、V(1919)
【0022】また、サーメット溶射材料としては、前記
金属またはそれらの合金と混在させる非金属化合物とし
て、次のような非酸化物系セラミックスが好適である。 炭化物:TiC、WC、TaC、B4C、SiC、ZrCおよびVCから選
ばれた1種または2種以上 窒化物:TiN、ZrN、TaN、AlN、BN、Si3N4およびNbNから
選ばれた1種または2種以上 硼化物:TiB2、ZrB4、CrB2、NbB2、WB2(W2B5)およびVB2
から選ばれた1種または2種以上
【0023】なお、上記非酸化物系サーメット溶射膜材
料に添加する金属または合金類の添加量は、10wt%〜90w
t%の範囲が好適である。この理由は、金属質成分の量が
10wt%未満では、炭化物、窒化物、硼化物などの硬質粒
子による被処理体(基材)表面のブラスト作用が大き
く、成膜することができないからである。また、90wt%
以上の金属質を含む皮膜では、炭化物、窒化物、硼化物
の特性が十分発揮されないからである。
【0024】溶射材料としての金属(合金)や非酸化物
系サーメットの粒径は、1〜50μmの範囲がよく、1μmよ
り小さい粒子は、流動性が悪いため連続的にガス流体中
へ投入することが困難であり、また50μmより大きい粒
子では、衝突エネルギーが大きくなって被処理体表面を
粗面化する現象が強く現れるため、均等で緻密な皮膜が
得られないからである。
【0025】以上のような方法で得られる本発明の低温
溶射皮膜の厚さは、3μm〜10mmの範囲が適当であり、1
μmより薄い溶射皮膜では均一性に劣り、また10mm以上
厚くても、その用途が格別拡大しないからである。
【0026】なお、本発明の方法を適用して低温溶射皮
膜を形成するには、高速で飛行する粒子が非処理体表面
に対し、90°(直角)±20°の角度で強く衝突させるこ
とが望ましい。これ以外の角度では、衝突エネルギーの
大部分が基材表面を機械的に削りとる作用に使用される
ので、低温溶射皮膜を形成することができない。
【0027】次に、図1の装置を用いて、低温高速作動
ガスを駆動力として低温低速溶射皮膜を形成したときの
各皮膜の特性とその成膜桟構の違いについて説明する。
【0028】この実験では、成膜用溶射材料としては、
Al粉末(純度99.5%):粒径10〜50μm、Cu粉末(純度9
9.8%):粒径10〜45μm、Cr3C2(73%)−Ni(20%)−Cr
(7%):粒径8〜55μmを用い、被処理体(基材)として
は、SS400(寸法50×100×6mmt)を用い、そして作動ガ
スとしては、高圧の圧縮空気を用い、図1の加熱器3によ
って500℃に加熱し、噴射ガンを通じて高速ガス流とし
たものを用いた。また、前記成膜用の溶射材料粉末は、
粉末供給器2から供給して前記高速作動ガス流中へ添加
した。なお、高速作動ガス中を飛行する粉末材料の速度
は、バルブ12を調整することによって制御し、飛行速度
はレーザー速度計を用いて測定した。
【0029】表1は、上記実験の結果を示すものであっ
て、同一の溶射材料を用いた大気プラズマ溶射法によっ
て得られた溶射皮膜と比較して示したものである。この
結果から、次に示すようなことが判明した。すなわち、 低温の高速作動ガス流によって成膜するには、粒子
の飛行速度を500m/s以上とすることが必要である。500m
/s未満の速度では、基材表面がブラスト状態になるだけ
で、溶射皮膜が得られなかった。 成膜した溶射皮膜中の酸素含有量は、非常に少な
く、ほぼ粉末材料中に含まれている程度の状態を維持し
ている。これに対し、従来法に属するプラズマ溶射法で
は、高温の熱源と大気中の酸素によって甚しく酸化さ
れ、酸化物含有量の多い皮膜となっていた。 溶射皮膜の気孔率は、本発明に適合する低温の高速
作動ガス流によって得られたものは、すべて0.3%程度の
緻密な皮膜であるのに対し、大気プラズマ溶射皮膜では
極めて多孔質であった。
【0030】これらのことから、従来の大気プラズマ溶
射法では、溶射材料は飛行中に強い酸化反応を受けて、
該粒子表面に酸化物を生成し、この酸化物が粒子の相互
結合の妨げとなり、これが気孔の発生原因となっている
ものと考えられる。これに対し、本発明のような低温の
高速作動ガスを用いる溶射法の下では、成膜用の粉末粒
子は殆ど酸化せず、溶射材料が保有する物理化学的性質
を全く変化させることなく、皮膜として利用することが
可能であることがうかがえる。
【0031】
【表1】
【0032】次に、本発明では、溶射材料粒子の飛行速
度を500m/s以上の超高速度とすることが必要である。こ
の超高速溶射の下での成膜桟構については、表1に示す
結果から次のように考えることができる。 500m/s未満の飛行速度で基材表面に衝突した粒子の
運動エネルギーは、基材表面の変形と破壊のみに使用さ
れて成膜に至らない。 500m/s以上の飛行速度で基材表面に衝突した粒子
は、運動エネルギーが熱エネルギーに変化して瞬時に発
熱し、軟化する。その結果、粒子は大きな変形能を受け
て基材表面の微細な凹凸部へ強固に付着する。また、後
続して衝突する粒子も同様の挙動を示すが、とくに先行
して付着した粒子と基材との結合力が比較的弱い部分に
ついてだけは、これをブラスト作用を発揮するので、皮
膜として残存したものは、結果的に緻密で、密着性にも
優れた皮膜のみとなる。
【0033】次に、発明者らは、高速作動ガスとしてA
r、N2を用いて、同じ溶射材料についての実験を行っ
た。その結果、形成された溶射皮膜の酸素含有量、気孔
率などの測定値は、概ね表1の圧縮空気を使用した場合
に類似していることがわかった。従って、酸化力のある
空気を高速作動ガス流体としても、比較的温度が低い
上、この中を飛行する粒子は、500m/s以上の高速噴射す
るため、ほとんど昇温せず、雰囲気ガス種による酸化作
用を受けないことがわかった。
【0034】以上説明した本発明にかかる低温溶射皮膜
は、次のような特徴を有する。 酸化物を含まない溶射皮膜になる(主として金属の
場合)。従って、 a:皮膜を構成する堆積粒子の相互結合力や被処理体と
の密着性が強く、剥離することがない。 b:aの現象によって、気孔率が著しく小さくなり、腐
食性ガスや液体の皮膜内部への侵入がないので耐食性が
向上する。即ち、本発明方法の下で形成された皮膜につ
いては、溶射皮膜を剛性の大きい基材面に衝突させるの
で、運動エネルギーから熱エネルギーへの転換率が高い
ことに加え、粒子の変形(扁平率)も大きいため、皮膜
の気孔率が極めて小さくなる。しかし、堆積した粒子層
に向けて衝突させる溶射粒子は、その粒子層表面の剛性
が基材面ほど大きくないため、その表面に衝突する粒子
の熱エネルギーへの転換率や衝突に伴なう変形度が小さ
いので、皮膜の気孔率は成膜初層ほど小さいものとはな
らない傾向がある。なお、本発明では、気孔率を1mm厚
の溶射皮膜を形成した場合、その1/10の膜厚(基材表面
から0.1mmの間に形成された溶射皮膜)の平均をとっ
て、本発明方法による溶射皮膜の気孔率と定義した。以
上説明したように、本発明の方法で得られる溶射皮膜の
気孔率の分布は、膜厚の方向に対して傾斜的に変化する
ので、このような性状の皮膜としても利用可能であり、
また膜全体を緻密化するには、さらに本発明の方法によ
って皮膜形成を続けると下層部の皮膜は連続して粒子の
衝撃を受けて、次第に緻密化する特徴があり、通常のプ
レス加工による圧縮緻密化も可能である。 c:aの現象及び熱伝導率や電気伝導率の悪い酸化物の
混在率が低下するので、熱伝導率、電気伝導率が向上す
る。 d:酸化物を含まないため、高温環境下において、保護
性の強い酸化皮膜(Al2O 3、Cr2O3など)を生成しやす
く、また長時間その性能が維持できる。 e:従来溶射皮膜のように、成膜用溶射材料粒子が熱源
によって単に酸化するだけでなく、昇華(CrO3、MoO3
ど)現象によって皮膜の化学組成が溶射材料のもつ性質
と異なることがなくなる。従って、皮膜の物理化学性質
が溶射熱源によって変化するようなことがない。 f:緻密で酸化物を含まない本発明に係る溶射皮膜は、
溶射材料中にMCrAlx合金や析出硬化性の元素を添加して
おき、その混合粉末を溶射して形成した低温溶射皮膜を
熱処理することによって、溶射皮膜の強度、硬度、耐摩
耗などを向上させることができる。例えば、表2に示す
通り、MCrAlx合金(Xは、CoまたはNiであり、YはTa、S
i、Ce、Cs、Laなどの少なくとも1種の金属または合金)
を含む容赦皮膜を1000℃〜1200℃×1〜10hの条件で溶体
化処理し、次いで700〜1000℃×1〜30hの条件で時効処
理すると、溶射皮膜中にはNiAlx、CoAlx、FeAlx、AuCu
x、AgMgx、MoSix、CuAlx、NiTix、AlTix、CuZn、NiPt、
CrAlx、CrSix、MgZnx(x=0.25〜5)などの硬く微細な
金属間化合物が該皮膜中に均等に分散析出し、機械的強
度(引張り強さ)や耐摩耗性を著しく向上させる。な
お、上記熱処理ののち、必要に応じて焼入れや焼なまし
などの熱処理を行ってもよい。
【0035】また、表2に示すとおり、Al、Cu、Tiなど
を含有する溶射皮膜の場合もまた、これらの元素の炭化
物、窒化物、硼化物が分散析出する。
【0036】
【表2】
【0037】熱源によって酸化したり分解したりしな
い(非酸化物系セラミックの場合)。 a:炭化物、窒化物、硼化物は溶射熱源中では、酸化し
たり、分解したりする。そのため、形成された溶射皮膜
は、酸化物を含むと共に多孔質で耐熱性、耐摩耗性、耐
食性に劣る。例えば、WCを溶射すると、W2C、WO3、COx
(CO、CO2)となり、Cr3C2を溶射すると、Cr7C3、Cr
2O3、COx(CO、CO2)となり、TiNを溶射するとTiO2、NO
x(NO、N2O5)となり、そしてTiB2を溶射するとTiO2、BO2
となる。しかし、本発明の方法で得られる溶射皮膜は、
酸化したり、分解することがないので、非酸化物系セラ
ミックスが有するもともとの性質が変化することがな
く、そのまま長時間にわたって、それぞれの機能を発揮
させることができる。 b:皮膜表面の研削、研磨仕上面が良好であり、目的に
応じてRa:0.03〜3μmに調整可能である。 c:硬質のセラミックス粒子を溶射材料とすると、被処
理体表面に深く喰いこむため、皮膜の密着性が非常に大
きくなる。
【0038】
【実施例】試験実施例(1):この試験例では、本発明
の方法で得られた溶射皮膜と、従来の溶射法で形成され
た溶射皮膜との酸化物としての酸素含有量と、それが皮
膜の断面組織に及ぼす影響について調査した。
【0039】本発明の方法:高速ガス流体として500℃
の高圧空気を使用して、溶射材料粒子の飛行速度を600m
/sでSS400基板上に低温溶射皮膜を形成させた。 比較例の方法:大気プラズマ溶射法、高速フレーム溶射
法、フレーム溶射法(低速)、電気アーク溶射法 溶射材料:Zn、Zn−15wt%Al、Al、Mg合金(JISH4201-MP
-7相当品)、50wt%Ni−50wt%Cr CoNiCrAlY(32%Ni−21%Cr−8%Al−0.5%Y−残り%Co)wt% 自溶合金(JISH8303規定 SFNi4相当品)
【0040】表3は、以上の結果を要約したものであ
る。表に示す結果から明らかなように、Zn(No.1)、Zn-1
5Al(No.3)のように融点が低いうえ、金属上記として
揮散しやすいZn含有材料は、熱源中で微細な金属フュー
ムを発生して雰囲気を汚染すると共に、その一部が皮膜
中にも混入した。その溶射皮膜中に混入したフェーム
は、粒子間結合作用を妨げると共に、気孔発生の原因と
なっており、耐食性の低下がうかがえる。この現象は、
50Ni−50Cr(No.9)の場合にも認められた。すなわち、
プラズマ熱源中でCrがCrO3のフェームとなって揮散する
と共に、その一部が皮膜中に混入し、粒子の相互結合力
の低下および気孔発生の原因となっていた。
【0041】これに対し、本発明の方法で得られた皮膜
(No.2、4、6、10)では、熱源温度が低く、また成膜材
料の温度上昇が僅かであるうえ、高速ガス流中を飛行す
る時間が極めて短いため、殆ど酸化せず、溶射材料とほ
ぼ同等の状態で低温溶射皮膜を形成していた。そして、
このような傾向は、CoNiCrAlYやNi基自溶合金の場合に
も同様に認められ、比較例の皮膜(No.11、12、14、1
5)に比べると,本発明の方法で得られる低温溶射皮膜
(No.13、16)は、ここでも酸化物の混入がなく、ま
た、皮膜も緻密であった。
【0042】なお、Mg合金(No.7)は、従来法の高速フ
レーム溶射法(No.7)では、熱源中における酸化速度が
大きく、成膜できなかったが、本発明の方法(No.8)で
は成膜可能であり、新しい用途の開発が期待できる。
【0043】
【表3】
【0044】試験実施例(2):この試験例では、試験
例(1)で得られたZnおよびAl溶射皮膜の基材との密着
性について、本発明の方法と従来法による皮膜を比較し
た。 本発明の方法に属する皮膜 :Zn、Al(表3記載のNo.
2、6の皮膜) 比較例の従来法に属する皮膜:Zn、Al(表3記載のNo.
1、5の皮膜) 皮膜の密着強さの測定方法は、JISH8661(1999)規定の
引張試験方法(B法)を用いた。
【0045】その結果、本発明に属する皮膜の密着強さ
(N/mm2)は、Zn:5.4〜7.4、Al:7.1〜8.8を示したの
に対し、比較例の従来技術に属する皮膜の密着強さ(N/
mm2)は、Zn:3.8〜5.5、Al:5.4〜6.9であった。この
結果から明らかなように、本発明に係る低温溶射皮膜の
密着力は、従来法の溶射皮膜に比較して優れていること
がわかった。
【0046】試験実施例(3):この試験例では、試験
例(1)で成膜したCoNiCrAlY(表3記載のNo.11、12、
13)を用いて、大気中1100℃×10hの加熱試験を行った
後、その断面を工学顕微鏡および電子顕微鏡で調査し、
皮膜表面に生成するAl2O3膜の性状を調査した。
【0047】この大気中の加熱試験の目的は、CoNiCrAl
Y皮膜のように、その表面にAl2O3膜を生成することによ
って、基材の酸化損耗を防ぐ作用を発揮するものに対
し、Al 2O3膜の生成が不十分かつ不連続であったり、皮
膜の酸化現象が表面のみにとどまらず、欠陥部(気孔な
ど)を通して、内部においても酸化することなどによっ
て、保護作用を発揮できない場合があることを調査する
ものである。
【0048】加熱試験後のCoCrAlY皮膜を調査した結
果、(No数字は表3に対応) 従来法に属するNo.11の皮膜は、比較的緻密なAl2O3
膜を生成し、皮膜内部には酸化現象は認められなかっ
た。 従来法に属するNo.12の皮膜には、Al2O3膜の生成が
薄いうえ、不連続であった。また、皮膜の断面全体にわ
たって溶射熱源中で生成した酸化物が無数に存在してい
るため、これが皮膜表面のAl2O3生成を妨げたものと考
えられる。 これに対し、本発明に適合するNo.13の皮膜には、
表面全体にわたってNo.11の皮膜以上の均等なAl2O3が生
成し、耐高温酸化用皮膜として優れた性能を発揮するこ
とが判明した。なお、本発明に適合する皮膜は、成膜
後、次のような溶体化処理後時効処理などの熱処理を行
うと、皮膜を構成している粒子が相互に結合すると共
に、基材との密着力を高め、さらに微細な金属間化合物
(例えば、CoAl x、NiAlxなど)を析出し、硬化し、耐摩
耗性を向上することが判明した。 溶体化処理条件:1000℃〜1200℃×1〜10h 時効処理条件:700℃〜1000℃×1〜30h
【0049】試験例(4):この試験例では、Alを成膜
材料として、SS400基材上に、本発明の溶射成膜方法
と、従来法によるアーク溶射法およびフレーム溶射法に
よって溶射皮膜を形成した後、5wt%NaCl水溶液中にて銀
/塩化銀電極を参照電極としてそれぞれの皮膜の腐食電
位を測定した。その結果は、次の通りである。 Al成膜材料(電気アーク用の線状材料)= - 0.67V 従来法に属する電気アーク溶接皮膜= -0.65V〜-
0.67V 従来法に属するフレーム溶射皮膜= -0.70V 本発明に適合する溶射皮膜= -0.67V SS400鋼=-4.5V
【0050】以上説明したように、Al溶射皮膜は、どの
ような方法で成膜しても、その腐食電位はSS400鋼に比
較して十分に卑な状態にあるため、犠牲陽極作用は十分
に発揮できる状態にある。しかしながら、腐食電位の絶
対値を比較すると電気アーク皮膜は熱源温度が高いた
め、必然的に酸化物(Al2O3)を多く含み、腐食電位が
最も高い状態にある。フレーム溶射皮膜の腐食電位は、
成膜材料に近い値を示すが、ここでも皮膜中の酸化物の
影響を受けて0.3V程度高くなっている。
【0051】これに対し、本発明に適合する溶射皮膜
は、成膜材料の腐食電位にほぼ等しい値を示し、電気化
学的にも成膜材料と同等の性質を示すことが判明した。
【0052】試験例(5):この試験例では、溶射材料
として耐高温酸化およい耐高温腐食用皮膜として、ボイ
ラ伝熱管の表面に施工されているNi-Cr系材料を用い、
本発明の方法と従来法に属する大気プラズマ溶射法によ
って皮膜を形成した後、その熱伝導率を測定して両者を
比較した。その結果、大気プラズマ溶射皮膜の熱伝導率
(W/m・K at 300℃)は、 (a) 50wt%Ni-50wt%Cr : 3〜5 (b) 80wt%Ni-20wt%Cr : 4〜7 (c) 70wt%Ni-25wt%Cr-5wt%Al : 4〜8
【0053】以上のように、大気プラズマ溶射皮膜は、
高温の熱源中で成膜材料が酸化したり、CrがCrO3となっ
て揮散するなどの変化を受ける上、気孔が2〜6%発生す
るため、これらが熱伝導率の変化(主として低下)とな
って現れ、この成分系では化学組成の影響はほとんど認
められない。
【0054】これに対し、本発明の方法で得られた低温
溶射皮膜の熱伝導率(W/m・K)は、次に示すように、溶射
材料が熱的影響を受けないのに加え、皮膜が緻密(気孔
率0.1〜0.5%)であるため、従来法による皮膜に比較
し、2〜3倍の熱伝導率を示した。 (d) 50wt%Ni-50wt%Cr : 6〜12 (e) 80wt%Ni-20wt%Cr : 8〜13 (f) 70wt%Ni-25wt%Cr-5wt%Al : 8〜16
【0055】試験例(6):この実験例では、炭化物サ
ーメットを成膜材料とした場合の成膜化による材料の変
化を本発明の方法と従来法に属する大気プラズマ溶射法
と白灯油の燃焼エネルギーを利用した高速フレーム溶射
法によって得られた皮膜について実施した。成膜材料と
して、WC-20wt%Ni-10wt%Crを用い、それぞれの方法で形
成された皮膜のX線回析とX線マイクロアナライザーによ
って材料成分の変化を調査した。
【0056】表4は、この結果を示したものである。大
気プラズマ溶射皮膜は、高温の熱源と雰囲気から混入す
る酸素の影響を受けて、WCがW2Cへ変化すると共に、皮
膜中に酸化物の生成が多く認められた。高速フレーム溶
射皮膜では、W2Cの生成は見られなかったが、ここでもW
C、Ni、Crの酸化物が検出された。
【0057】これに対し、本発明の低温の高速ガス体を
駆動力とする方法によって得られる皮膜は、熱的な影響
を受けず、成膜材料と同じ性状の皮膜が形成されてい
た。
【0058】
【表4】
【0059】
【発明の効果】以上説明したように、低温−高速の作動
ガスを駆動力として低温溶射して得た皮膜は、溶射材料
粒子を酸化したり分解しないため、得られた溶射皮膜は
酸化物や分解生成物が非常に少なく、ほぼ溶射材料の純
度および化学成分に等しいものとなる。さらに、成膜に
際し、大きな運動エネルギーによって衝突するため、皮
膜が緻密になると共に、密着性にも優れた皮膜が形成さ
れる。このような低温溶射皮膜を被覆した部材は、同種
・同質の溶射材料粒子を用いて形成された従来法に属す
る溶射皮膜のものに比較して、耐高温酸化性、耐食性、
熱伝導性などの物理・化学的性質に優れた性能を発揮す
る。このため、現行の溶射皮膜が使用されている工業分
野はもとより、より厳しくより優れた性能が求められる
分野への新しい用途が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の低温溶射皮膜形成用の溶射装置の略
線図である。
【図2】 本発明の低温溶射皮膜形成用の他の溶射装置
の略線図である。
【符号の説明】
1 作動ガス源 2 溶射材料の供給器 3 ガス加熱用熱交換器 4 溶射容器 5 噴射ガン 6 ノズル 7 被処理体 8 消音器 9 主ガス管 10 副ガス管 11 作動ガス整流板 12、13 流量調整バルブ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 寺谷 武馬 兵庫県神戸市東灘区魚崎南町4丁目12番19 号 Fターム(参考) 4K031 AB02 AB08 CB07 CB10 CB11 CB12 CB14 CB38 CB42 CB45 CB46 DA01

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被処理基材の表面に、吹付け溶射材料の
    粒子を、温度300℃以下、飛行速度500m/s以上の高速低
    温溶射によって付着させてなる、低温溶射皮膜を有する
    ことを特徴とする低温溶射皮膜被覆部材。
  2. 【請求項2】 上記低温溶射皮膜は、膜厚が3μm〜10m
    m、酸化物含有量が酸素量として0.01未満〜0.08wt%、気
    孔率が0.5%以下の性状を有することを特徴とする請求
    項1に記載の低温溶射皮膜被覆部材。
  3. 【請求項3】 上記溶射材料粒子は、 融点が2000℃以下のIn、Sn、Zn、Te、Sb、Mg、Al、S
    r、Ge、Ag、Au、Cu、Mn、Si、Ni、Co、Fe、Pa、Ti、P
    t、Zr、Cr、Vから選ばれる1種の金属もしくは2種以上か
    らなる合金、 または、TiC、WC、TaC、B4C、SiC、ZrCおよびVCの中
    から選ばれる1種または2種以上の炭化物、TiN、ZrN、Ta
    N、AlN、BN、Si3N4およびNbNの中から選ばれる1種また
    は2種以上の窒化物、TiB2、ZrB4、CrB2、NbB2、WB2(W2B
    5)およびVB2の中から選ばれる1種または2種以上の硼化
    物からなるセラミックス90〜10wt%と残部が前記金属・
    合金とからなる非酸化物系サーメット、を用いることを
    特徴とする請求項1に記載の低温溶射皮膜被覆部材。
  4. 【請求項4】 上記低温溶射皮膜は、その表面の粗さRa
    が0.03〜3μmの範囲内であり、その皮膜中にはCoAlxやN
    iAlx、FeAlx、CrAlx、FeCo、CuZn、AgZnなどの金属間化
    合物、あるいはAl、Ti、Cu、Nb、P、Cr、Si、Mg、Fe、V
    などの析出硬化性元素の炭化物、窒化物、硼化物等を分
    散含有していることを特徴とする請求項1に記載の低温
    溶射皮膜被覆部材。
  5. 【請求項5】 被処理基材の表面に、金属・合金および
    /または非酸化物系サーメットからなる溶射材料粒子
    を、温度600℃以下の高速作動ガスを介して溶射する
    際、前記溶射材料粒子の温度を300℃以下の低温に保持
    した状態で、飛行速度500m/s以上の高速吹付けによる衝
    突力をもって付着させることによって、低温溶射皮膜を
    形成することを特徴とする低温溶射皮膜被覆部材の製造
    方法。
  6. 【請求項6】 上記低温溶射皮膜は、膜厚が3μm〜10m
    m、酸化物含有量が酸素量として0.01未満〜0.08wt%、気
    孔率が0.5%以下の性状を有することを特徴とする請求項
    5に記載の製造方法。
  7. 【請求項7】 上記溶射材料粒子は、 融点が2000℃以下のIn、Sn、Zn、Te、Sb、Mg、Al、S
    r、Ge、Ag、Au、Cu、Mn、Si、Ni、Co、Fe、Pa、Ti、P
    t、Zr、Cr、Vから選ばれる、1種の金属もしくは2種以上
    からなる合金、 または、TiC、WC、TaC、B4C、SiC、ZrCおよびVCの中
    から選ばれる1種または2種の炭化物、TiN、ZrN、TaN、A
    lN、BN、Si3N4およびNbNの中から選ばれる1種または2種
    以上の窒化物、TiB2、ZrB4、CrB2、NbB2、WB2(W2B5)お
    よびVB2の中から選ばれる1種または2種以上の硼化物か
    らなるセラミックス90〜10wt%と残部が前記金属・合金
    とからなる非酸化物系サーメット、を用いることを特徴
    とする請求項5に記載の製造方法。
  8. 【請求項8】 上記低温溶射皮膜形成後、1000〜1200
    ℃、1〜10hの溶体化処理を施した後、700〜1000℃×1〜
    30hの時効処理を行うことによって、前記低温溶射皮膜
    中にCoAlx、NiAlx、FeAlx、CrAlx、FeCo、CuZnあるいは
    AgZnなどの金属間化合物を析出させるか、1030℃以下×
    60日未満の析出硬化熱処理を施してAl、Ti、Cu、Nb、
    P、Cr、Si、Mg、Fe、Vなどの炭化物、窒化物あるいは硼
    化物を析出させることを特徴とする請求項5〜7のいずれ
    か1項に記載の製造方法。
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