JP2008095837A - 摺動構造体及び皮膜形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】互いに接触する摺動面を有する少なくとも一対の摺動部材を備える摺動構造体において、上記摺動面で生じる繰り返し衝撃及び微小すべりを伴う摩擦に対する耐摩耗性及び寿命の向上を図る。
【解決手段】互いに接触する摺動面を有する少なくとも一対の摺動部材を備える摺動構造体であって、一方の摺動部材の摺動面にDLC(ダイアモンドライクカーボン)系皮膜を形成し、他方の摺動部材の摺動面に二硫化モリブデン系皮膜を形成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、摺動構造体及び皮膜形成方法に関する。
従来、振動により互いに接する部材同士に発生する摩耗を抑制するコーティング技術として、二硫化モリブデン、PTFE(ポリテトラフルオロチレン樹脂)、グラファイト等の固体潤滑剤や、金、銀等の軟質金属メッキ、またはTiN、CrN、WC(タングステンカーバイド)、DLC(ダイアモンドライクカーボン)等の硬質コーティングなどが用いられている。
例えば、下記特許文献1では、軸受ハウジングに傾斜自由に支持されたティルティングパッドの内周面と高速回転する回転軸の外周面との間に気体の動圧を発生させて回転軸を支承させるようにした動圧気体軸受において、上記ティルティングパッドと回転軸との接触による摩耗や焼損の発生を抑制することを目的とし、上記ティルティングパッドの内周面及びこれに対向する回転軸の外周面にそれぞれセラミックコーティングを施し、この各セラミックコーティング面上にそれぞれ固体潤滑膜を形成する技術が開示されている。
また、例えば、下記特許文献2では、内燃機関等において、潤滑油の存在下で極めて優れた耐摩耗性、低摩擦特性を示す硬質炭素被膜摺動部材を提供することを目的とし、鋼材又はアルミニウム材から成る基材において、相手材と潤滑油を介して摺動する部位に、ゴム若しくは樹脂、又はこれに固体潤滑剤などの添加粒子を加えた弾性層を中間層とし、さらに当該中間層の表面に、DLCのような硬質炭素被膜を形成する技術が開示されている。
特開平7−317752号公報 特開2004−347053号公報
上記のような固体潤滑剤や、軟質金属メッキ、硬質コーティングなどを用いる方法は、いずれも寿命が存在し、より耐久性に優れるコーティング技術が要求されている。また、振動に起因する摩擦は、無潤滑油の環境下において繰り返し衝撃と微小すべりを伴う複合的な摩擦形態であることが多く、上述したコーティング技術では摺動面において割れや剥離が生じやすく寿命が短いという問題がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、互いに接触する摺動面を有す
る少なくとも一対の摺動部材を備える摺動構造体において、上記摺動面で生じる繰り返し衝撃及び微小すべりを伴う摩擦に対する耐摩耗性及び寿命の向上を図ることを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明では、摺動構造体に係る第1の解決手段として、互いに接触する摺動面を有する少なくとも一対の摺動部材を備える摺動構造体であって、一方の摺動部材の摺動面にDLC(ダイアモンドライクカーボン)系皮膜を形成し、他方の摺動部材の摺動面に二硫化モリブデン系皮膜を形成したことを特徴とする。
また、本発明では、摺動構造体に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記DLC系皮膜と前記一方の摺動部材の母材との間に密着性を高める中間層を形成し、前記二硫化モリブデン系皮膜と前記他方の摺動部材の母材との間に密着性を高める中間層を形成することを特徴とする。
また、本発明では、摺動構造体に係る第3の解決手段として、上記第1または2の解決手段において、前記DLC系皮膜は、Cr(クロム)を含有したDLC皮膜であり、前記二硫化モリブデン系皮膜は、二硫化モリブデンを含む焼成膜であることを特徴とする。
また、本発明では、摺動構造体に係る第4の解決手段として、上記第3の解決手段において、前記一方の摺動部材は、前記Crを含有したDLC皮膜と母材との間に、中間層としてCrまたはCrN層及びCrまたはCrN傾斜層を有することを特徴とする。
また、本発明では、摺動構造体に係る第5の解決手段として、上記第3または第4の解決手段において、前記他方の摺動部材は、母材が鉄系合金である場合、前記二硫化モリブデンを含む焼成膜と当該母材との間に、中間層としてNi−Al(ニッケル−アルミ)溶射層及びCu−Ni−In(銅−ニッケル−インジウム)溶射層を有することを特徴とする。
また、本発明では、摺動構造体に係る第6の解決手段として、上記第3または第4の解決手段において、前記他方の摺動部材は、母材がチタン合金である場合、前記二硫化モリブデンを含む焼成膜と当該母材との間に、中間層としてNi−Tl−B(ニッケル−タリウム−ボロン)メッキ層を有することを特徴とする。
さらに、本発明では、皮膜形成方法に係る解決手段として、互いに接触する摺動面を
有する少なくとも一対の摺動部材を備える摺動構造体において、前記摺動面に対して用いられる皮膜形成方法であって、一方の摺動部材の摺動面にDLC(ダイアモンドライクカーボン)系皮膜を形成し、他方の摺動部材の摺動面に二硫化モリブデン系皮膜を形成することを特徴とする。
本発明によれば、互いに接触する摺動面を有する少なくとも一対の摺動部材を備える摺動構造体において、一方の摺動部材の摺動面にDLC系皮膜を形成し、他方の摺動部材の摺動面に二硫化モリブデン系皮膜を形成するというコーティングの組み合わせを適用することにより、上記摺動面で生じる繰り返し衝撃及び微小すべりを伴う摩擦に対する耐摩耗性及び寿命の向上を図ることが可能である。
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。図1(a)は、本発
明の実施形態に係る摺動構造体STの構成概略図である。本実施形態では、摺動構造体STとして、ガスタービンエンジンのタービンを例示して説明する。すなわち、本摺動構造体STは、互いに接触する摺動面30を有する少なくとも一対の摺動部材(タービンブレード10及びタービンディスク20)から構成されている。
タービンブレード10において翼の下部にはタブテイル10aが設けられており、このタブテイル10aが、タービンディスク20に設けられたダブテイルスロット20aに圧入されることにより、タービンブレード10はタービンディスク20に取り付けられている。上記タブテイル10aとダブテイルスロット20aとの間隙には、タブテイル10aの熱膨張を考慮してある程度の寸法マージンが確保されている。このような状態でタービンが回転すると、タブテイル10aとダブテイルスロット20aは摺動面30において互いに接触し、繰り返し衝撃及び微小すべりを伴う摩擦が摺動面30に生じることになる。
本実施形態では、一方の摺動部材の摺動面、つまりタービンブレード10におけるタブテイル10aの摺動面30にDLC(ダイアモンドライクカーボン)系皮膜を形成し、他方の摺動部材の摺動面、つまりタービンディスク20におけるダブテイルスロット20aの摺動面30に二硫化モリブデン系皮膜を形成する。
以下、上記DLC系皮膜及び二硫化モリブデン系皮膜の具体例について説明する。図1(b)は、タービンブレード10におけるタブテイル10aの摺動面30に形成されたDLC系皮膜の層構造例を示すものである。この図1(b)に示すように、母材L10(つまりタブテイル10a)の表面に、Cr(クロム)層L11が形成され、当該Cr層L11上にCr傾斜層L12が形成されている。このCr傾斜層L12上にDLC系皮膜として、Crを含有したDLC層L13が形成されている。これらCr層L11及びCr傾斜層L12は、Cr含有DLC層L13と母材L10との密着性を向上するための中間層である。なお、Cr層L11、Cr傾斜層L12及びCr含有DLC層L13の厚さの合計値は、約3μm程度とすることが好ましい。
図1(c)は、タービンディスク20におけるダブテイルスロット20aの摺動面30に形成された二硫化モリブデン系皮膜の層構造例を示すものである。この図1(c)に示すように、母材L20(つまりタブテイルスロット20a)の表面に、Ni−Al(ニッケル−アルミ)溶射層L21が形成され、当該Ni−Al溶射層L21上にCu−Ni−In(銅−ニッケル−インジウム)溶射層L22が形成されている。このCu−Ni−In溶射層L22上に二硫化モリブデン系皮膜として、二硫化モリブデン焼成膜L23が形成されている。これらNi−Al溶射層L21及びCu−Ni−In溶射層L22は、二硫化モリブデン焼成膜L23と母材L20との密着性を向上するための中間層である。このような中間層は、母材L20が鉄系合金(例えばA286等)の場合に特に優れた密着性能を有する。この中間層の厚さは、0.2〜0.5mm程度が好ましく、また、二硫化モリブデン焼成膜L23の厚さは、0.005〜0.015mmが好ましい。
以上のような、一方の摺動部材の摺動面(タービンブレード10におけるタブテイル
10aの摺動面30)にDLC系皮膜を形成し、他方の摺動部材の摺動面(タービンディスク20におけるダブテイルスロット20aの摺動面30)に二硫化モリブデン系皮膜を形成するという組み合わせを採用することにより、摺動面30において生じる繰り返し衝撃及び微小すべりを伴う摩擦に対する耐摩耗性及び寿命を向上することが可能である。
次に、上述した本実施形態における効果の根拠となる、微動摩耗試験(線接触)、微動摩耗試験(面接触)、衝撃摩耗試験の結果について説明する。
〔微動摩耗試験(線接触)〕
まず、線接触での微動摩耗試験の結果について説明する。図2(a)は、線接触での微動摩耗試験方法を示す模式図である。図2(a)に示すように、円盤形状の固定側試験片40の上面40aに対して、円柱形状の可動側試験片41の延在方向が平行になるように、当該可動側試験片41を配置する。可動側試験片41に対して上方から荷重を加えることにより、可動側試験片41と固定側試験片40とを線接触させ、さらに可動側試験片41をその延在方向に微小変位(微小すべり)させることにより、線接触部分(摺動面)における両試験片の摩耗状態を調査した。なお、固定側試験片40として鉄系合金であるA286を使用し、可動側試験片41としてチタン合金であるTi6242を使用した。
また、固定側試験片40及び可動側試験片41の表面に施すコーティングまたは表面処理の組み合わせは、図2(b)に示すようにケース「A」〜ケース「S」の19通りとし、各組み合わせでの線接触部分における両試験片の摩耗状態を調査した。この図2(b)において、「Cr含有DLC」とは、図1(b)と同様に、母材上に中間層として、Cr層及びCr傾斜層を形成し、最表層にCrを含有したDLC層を形成したものである。また、「MoS焼成膜1」とは、図1(c)と同様に、母材(固定側試験片40)上に中間層としてNi−Al溶射層及びCu−Ni−In溶射層を形成し、最表層に二硫化モリブデンを含有した焼成膜を形成したものである。
また、「MoS焼成膜2」とは、図3(a)に示すように、母材(可動側試験片41)上に中間層としてNi−Tl−B(ニッケル−タリウム−ボロン)メッキ層を形成し、最表層に二硫化モリブデン焼成膜を形成したものである。このような中間層は、母材がチタン合金(Ti6242等)の場合に特に優れた密着性能を有する。また、「DLC」とは、図3(b)に示すように、母材上にSiC(シリコンカーバイド)層を形成し、最表層にDLC層を形成したものである。さらに、「WC/C(BLINIT C)」とは、図3(c)に示すように、母材上にCr層を形成し、当該Cr層上にWC(タングステンカーバイド)層を形成し、さらにWC層上にWC層とDLC層との多重化層を形成したものである。
図2(b)に示す組み合わせにおいて、ケース「R」は、固定側試験片40に「MoS焼成膜1」のコーティングを施し、可動側試験片41に「Cr含有DLC」のコーティングを施したものである。また、ケース「S」は、固定側試験片40に「WC/C(BLINIT C)」のコーティングを施し、可動側試験片41に「MoS焼成膜2」のコーティングを施したものである。すなわち、これらケース「R」及び「S」が、一方の摺動部材にDLC系皮膜を形成し、他方の摺動部材に二硫化モリブデン系皮膜を形成したものである。
このような線接触での微動摩耗試験は図2(c)に示す試験条件で行った。すなわち、可動試験片41に加える荷重(最大接触面圧)は80N(114.3MPa)、可動試験片41の微小変位の周波数は116Hz、微小変位の振幅は0.1mm、温度は160±10°Cである。
図4(a)は、線接触での微動摩耗試験の寿命に関する試験結果である。この図4(a)に示すように、ケース「C」、「Q」、「R」、「S」の組み合わせが摺動面における寿命が長いことがわかる。ケース「C」は、固定側試験片40に「MoS焼成膜2」のコーティングを施し、可動側試験片41は無処理(コーティング及び表面処理なし)の組み合わせである。また、ケース「Q」は、固定側試験片40に「WC/C(BLINIT C)」のコーティングを施し、可動側試験片41は無処理(コーティング及び表面処理なし)の組み合わせである。
図4(b)は、上記のケース「C」、「Q」、「R」、「S」の組み合わせの内、特にケース「C」及び「R」について、荷重を150Nに増加して試験を行った場合の寿命に関する試験結果である。この図4(b)に示すように、ケース「R」、つまり一方の摺動部材にDLC系皮膜を形成し、他方の摺動部材に二硫化モリブデン系皮膜を形成した組み合わせが、摺動面において発生する微動摩擦に対して最も寿命が長いことがわかる。
図4(c)は、各組み合わせでの摺動面における摩耗量の測定結果である。この図4(c)に示すように、ケース「R」及び「S」の組み合わせが摩耗量が少ないことがわかる。他の組み合わせでは、例えばケース「G」、「H」、「I」、「J」も、摩耗量が少ないが、これらの組み合わせは図4(a)に示すように寿命が短いという欠点がある。また、ケース「Q」の組み合わせも摩耗量は小さいが、図5(c)に示すように、片方の摺動部材(試験片)が無処理の場合、一方の摺動部材にDLC系皮膜を形成し、他方の摺動部材に二硫化モリブデン系皮膜を形成した組み合わせと比較して寿命が短いことから、高い耐摩耗性と長寿命を両立し得る組み合わせは、ケース「R」及び「S」であることがわかる。
〔微動摩耗試験(面接触)〕
次に、面接触での微動摩耗試験の結果について説明する。図5(a)は、面接触での微動摩耗試験方法を示す模式図である。図5(a)に示すように、面接触での微動摩耗試験では、円盤形状の可動側試験片42を使用する。この可動側試験片42の下面42aには、所定の接触面積を有する接触部42bが複数設けられており、これら接触部42bが固定側試験片40の上面40aに面接触する状態で両試験片を配置する。そして、可動側試験片42に対して上方から荷重を加えつつ、可動試験片42を微小回転させることにより、面接触部分(摺動面)における両試験片の摩耗状態を調査した。なお、固定側試験片40及び可動側試験片42の材質は、上記線接触での微動摩耗試験と同様である。
このような面接触での微動摩耗試験は図5(b)に示す試験条件で行った。すなわち、可動試験片42に加える荷重(最大接触面圧)は40MPa、可動試験片42の微小回転の周波数は20Hz、微小回転の振幅は0.126mm、温度は室温(常温)である。
図5(c)は、ケース「B」、「Q」、「R」の組み合わせでの摺動面における摩耗の程度を示す摩耗指標の測定結果である。この図5(c)に示すように、ケース「R」、つまり一方の摺動部材にDLC系皮膜を形成し、他方の摺動部材に二硫化モリブデン系皮膜を形成した組み合わせが、面接触での微動摩擦に対しても高い耐摩耗性を有することがわかる。一方、線接触での微動摩擦に対しては高い耐摩耗性を有するケース「Q」の組み合わせは、面接触での微動摩擦に対しては耐摩耗性が低いことがわかる。
以上のような線接触及び面接触での微動摩耗試験結果から、ケース「R」のような、一方の摺動部材にDLC系皮膜を形成し、他方の摺動部材に二硫化モリブデン系皮膜を形成した組み合わせを採用することによって、どのような接触形態であっても高い耐摩耗性と長寿命を両立可能であることがわかる。
〔衝撃摩耗試験〕
次に、衝撃摩耗試験の結果について説明する。図6(a)は、衝撃摩耗試験方法を示す模式図である。図6(a)に示すように、同一の中心軸上において、当該中心軸周りに回転するすべり側試験片43と、当該中心軸に沿って変位するたたき側試験片44とを配置し、接触面(摺動面)45において、たたき側試験片44をすべり側試験片43に衝突させることによって繰り返し衝撃を与えると共に、すべり側試験片43を回転させることにより接触面45においてすべり摩擦を発生させる。すなわち、接触面45において繰り返し衝撃を伴うすべり摩擦が生じることになる。なお、衝撃摩耗試験は図6(b)に示す試験条件で行った。
また、この衝撃摩耗試験では、ケース「A」、「B」、「C」、「I」、「J」、「Q」、「R」の組み合わせについて試験を行った。なお、これらの組み合わせは、すべり側試験片43を固定側試験片40、たたき側試験片44を可動側試験片41とみなした組み合わせと同じである。
図7(a)は、衝撃サイクル数(横軸)と回転トルク(縦軸)との関係に関する測定結果である。コーティング層の潤滑性能が劣化すると回転トルクが増大するため、このような回転トルクの増大点を探索することによりコーティング層の寿命を測定することができる。図7(a)に示すように、ケース「B」の組み合わせは、数千サイクルで回転トルクが増大するので寿命が非常に短いことがわかる。また、ケース「C」の組み合わせは、平均でおよそ4万サイクルで回転トルクが増大し、ケース「R」の組み合わせは、8万サイクルを経過しても回転トルクはほぼ横ばいで大きな変動はない。従って、ケース「R」の組み合わせは、繰り返し衝撃を伴うすべり摩擦に対して寿命が非常に長いことがわかる。
図7(b)は、各ケースの組み合わせで同様に寿命を測定した結果である。この図7(b)に示すように、ケース「J」、「Q」、「R」の組み合わせが、繰り返し衝撃を伴う摩擦に対して8万サイクル以上の長い寿命を有することがわかる。図7(c)は、各ケースの組み合わせで摩耗量を測定した結果である。この図7(c)に示すように、ケース「J」、「Q」、「R」の組み合わせが摩耗量が小さい、つまり繰り返し衝撃を伴うすべり摩擦に対して高い耐摩耗性を有することがわかる。
ケース「J」及び「Q」の組み合わせは、確かに繰り返し衝撃を伴うすべり摩擦に対して高い耐摩耗性及び長寿命を有しているが、図4(a)に示すように、ケース「J」の組み合わせは、線接触による微動摩擦に対する寿命が短く、また、図5(c)に示すように、ケース「Q」の組み合わせは、面接触での微動摩擦に対する耐摩耗性が低い。従って、以上のような線接触及び面接触での微動摩耗試験と衝撃摩耗試験の結果から、摺動面において繰り返し衝撃及び微小すべりを伴う摩擦が生じても、優れた耐摩耗性と長寿命を両立可能なコーティングの組み合わせは、ケース「R」、つまり一方の摺動部材にDLC系皮膜を形成し、他方の摺動部材に二硫化モリブデン系皮膜を形成した組み合わせであることがわかる。さらに、本願発明者は、381°Cという高温条件下での衝撃摩耗試験においても、ケース「R」の組み合わせは優れた耐摩耗性及び長寿命を示すことを確認している。
以上のような試験結果に基づき、本実施形態における摺動構造体STによれば、一方
の摺動部材の摺動面(タービンブレード10におけるタブテイル10aの摺動面30)にDLC系皮膜(Cr含有DLC)を形成し、他方の摺動部材の摺動面(タービンディスク20におけるダブテイルスロット20aの摺動面30)に二硫化モリブデン系皮膜(MoS焼成膜1)を形成するという組み合わせを採用することにより、摺動面30において生じる繰り返し衝撃及び微小すべりを伴う摩擦(高温条件下も含む)に対して、耐摩耗性及び寿命の向上を図ることが可能である。
なお、上記実施形態では、タービンディスク20におけるダブテイルスロット20aの摺動面30には図1(c)に示すような中間層を有するMoS焼成膜1を形成したが、タービンディスク20の材質がチタン合金である場合には、図3(a)に示す中間層を有するMoS焼成膜2を形成しても良い。また、タービンブレード10側に二硫化モリブデン系皮膜を形成し、タービンディスク20側にDLC系皮膜を形成しても良い。さらに、ケース「R」の組み合わせのみならず、ケース「S」の組み合わせを採用しても良い。
また、DLC系皮膜は、純粋なアモルファスカーボンであるよりも、アモルファス水素化炭素や、Crのような金属元素を含有したもの、若しくは図1(b)に示すように中間層を有するものが好ましい。これらの方法により、より母材と最表層のDLC系皮膜との密着性を高め、耐摩耗性及び寿命の向上に寄与することができる。一方、二硫化モリブデン系皮膜は、二硫化モリブデンを含有する焼成膜やスパッタリング膜の他、二硫化モリブデン粉末をショットピーニング法により最表層に含侵させた表面処理を施したものでも良い。
さらに、上記実施形態では、摺動構造体STとしてガスタービンエンジンのタービン
におけるタービンブレード10及びタービンディスク20を例示して説明したが、これに限定されず、互いに接触する摺動面を有する少なくとも一対の摺動部材を備える摺動構造体であって、上記摺動面において繰り返し衝撃及び微小すべりを伴う摩擦が発生するような摺動構造体であれば本発明は適用可能である。なお、必ずしも繰り返し衝撃が伴う必要はなく、上述した微動摩耗試験から明らかなように、微動摩擦(微小すべり摩擦)のみが生じる摺動構造体であっても本発明を適用することにより、優れた耐摩耗性及び長寿命を実現することができる。
例えば、ガスタービンエンジン以外の実施例としては、図8に示すような、ジェットエンジンの部品であるシャフト50とダクト51との接触部52において本発明を適用可能である。シャフト50及びダクト51は、共に回転軸を中心として同じ回転数で回転しているが、接触部52において機械的に接合されているわけではないため、この接触部52において、ダクト51の不整振動による繰り返し衝撃及び微小すべりを伴う摩擦が生じている。つまり、シャフト50及びダクト51は、「互いに接触する摺動面を有する少なくとも一対の摺動部材」に当たり、摺動構造体を構成する部品である。従って、一方の摺動部材の摺動面にDLC系皮膜を形成し、他方の摺動部材の摺動面に二硫化モリブデン系皮膜を形成することにより、接触部52の摺動面における耐摩耗性及び寿命を向上することができる。具体的には、シャフト50には、図1(b)に示すような中間層を有するCr含有DLC膜を形成し、ダクト51の材質が鉄系合金であれば、図1(c)に示すような溶射中間層を有する二硫化モリブデン焼成膜を形成する。
本発明の一実施形態における摺動構造体STの構成概略図である。 本発明の一実施形態における線接触での微動摩耗試験の説明図である。 本発明の一実施形態における微動摩耗試験で使用する皮膜の層構成についての説明図である。 本発明の一実施形態における線接触での微動摩耗試験の試験結果である。 本発明の一実施形態における面接触での微動摩耗試験の説明図である。 本発明の一実施形態における衝撃摩耗試験の説明図である。 本発明の一実施形態における衝撃摩耗試験の試験結果である。 本発明の他の実施例である。
符号の説明
ST…摺動構造体、10…タービンブレード、10a…タブテイル、20…タービンディスク、20a…ダブテイルスロット、30…摺動面、L10、L20…母材、L11…Cr層、L12…Cr傾斜層、L13…Cr含有DLC層、L21…Ni−Al溶射層、L22…Cu−Ni−In溶射層、L23…二硫化モリブデン焼成膜

Claims (7)

  1. 互いに接触する摺動面を有する少なくとも一対の摺動部材を備える摺動構造体であっ
    て、
    一方の摺動部材の摺動面にDLC(ダイアモンドライクカーボン)系皮膜を形成し、
    他方の摺動部材の摺動面に二硫化モリブデン系皮膜を形成したことを特徴とする摺動
    構造体。
  2. 前記DLC系皮膜と前記一方の摺動部材の母材との間に密着性を高める中間層を形成し、
    前記二硫化モリブデン系皮膜と前記他方の摺動部材の母材との間に密着性を高める中間層を形成することを特徴とする請求項1記載の摺動構造体。
  3. 前記DLC系皮膜は、Cr(クロム)を含有したDLC皮膜であり、
    前記二硫化モリブデン系皮膜は、二硫化モリブデンを含む焼成膜であることを特徴とする請求項1または2記載の摺動構造体。
  4. 前記一方の摺動部材は、前記Crを含有したDLC皮膜と母材との間に、中間層としてCrまたはCrN層及びCrまたはCrN傾斜層を有することを特徴とする請求項3記載の摺動構造体。
  5. 前記他方の摺動部材は、母材が鉄系合金である場合、前記二硫化モリブデンを含む焼成膜と当該母材との間に、中間層としてNi−Al(ニッケル−アルミ)溶射層及びCu−Ni−In(銅−ニッケル−インジウム)溶射層を有することを特徴とする請求項3または4記載の摺動構造体。
  6. 前記他方の摺動部材は、母材がチタン合金である場合、前記二硫化モリブデンを含む焼成膜と当該母材との間に、中間層としてNi−Tl−B(ニッケル−タリウム−ボロン)メッキ層を有することを特徴とする請求項3または4記載の摺動構造体。
  7. 互いに接触する摺動面を有する少なくとも一対の摺動部材を備える摺動構造体におい
    て、前記摺動面に対して用いられる皮膜形成方法であって、
    一方の摺動部材の摺動面にDLC(ダイアモンドライクカーボン)系皮膜を形成し、
    他方の摺動部材の摺動面に二硫化モリブデン系皮膜を形成することを特徴とする皮膜
    形成方法。






JP2006278491A 2006-10-12 2006-10-12 摺動構造体及び皮膜形成方法 Active JP4692462B2 (ja)

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