JP3431715B2 - 耐久性に優れる溶射被覆電極の製造方法 - Google Patents

耐久性に優れる溶射被覆電極の製造方法

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JP3431715B2 JP02696495A JP2696495A JP3431715B2 JP 3431715 B2 JP3431715 B2 JP 3431715B2 JP 02696495 A JP02696495 A JP 02696495A JP 2696495 A JP2696495 A JP 2696495A JP 3431715 B2 JP3431715 B2 JP 3431715B2
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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】この発明は、電気めっきや可溶性
塩類を含んだ電解質の電気分解操作、さらには塩酸、硫
酸、苛性アルカリおよび中性塩などを含む水溶液の電気
分解等の用途に供して好適な耐久性に優れる溶射被覆電
極の製造方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】陰極における金属の析出現象を利用する
電気めっき法では、多くの場合、析出金属と同質の陽極
を用いて、電解液(めっき液)から陰極へ析出した金属
量を補給する方法を採用している。しかしながら、クロ
ム酸(CrO)を主成分とする電解液を使用する工業
用クロムめっき法では、金属クロムを陽極に用いると不
働態化現象を呈して溶解しないだけでなく、浴電圧を過
度に上昇させて電気消費量の増大を招くことから、主に
鉛およびその合金(例えばPb−Ag, Pb−Sb
等)、鋼鉄または酸化鉄を主成分とするフェライト(マ
グネタイトとも呼ばれている)等が不溶性電極として使
用され、金属成分のクロムは専らめっき浴中へ水溶性塩
として補給されている。 【0003】しかしながら、鉛およびその合金製の電極
は、浴成分と反応して酸化鉛やクロム酸鉛膜を生成する
と共に、これが電解時間の増加と共に粗大化し、めっき
浴中に脱落するため、浴全体が次第に汚染されめっき浴
としての性能が次第に低下するという欠点がある。 【0004】また、鋼鉄製の電極では、、微量ながら鉄
が溶出するため、めっき浴中の鉄イオンの増加を招き、
浴の電気伝導度の低下、めっき時の浴電圧の上昇、電気
めっき効率の低下および陰極におけるめっきの“ツキマ
ワリ性”の低下などが顕在化することが知られている。 【0005】なお、フェライト製の電極は、以上のよう
な従来電極の欠点を補うために開発されたものである
が、焼結プロセスによって製造されているため極めて脆
弱であり、しばしば取扱い時に破損したり、また高温
(50〜60℃)のめっき浴中で使用すると陽極の基板金属
(芯金)の変形によって“き裂”や局部剥離などが生じ
る欠点がある。さらに、焼結体特有の問題として、単純
な形状のものしか製造できないため、クロムめっき浴の
ように“ツキマワリ性”の悪い浴では、複雑な形状の陰
極(被めっき部材)に対しては適用できない等の問題が
ある。なお、一部では、Ti材料にPtを被覆した電極が
使用されているが、高価であるうえ、この電極でも大電
流を通した場合にはしばしばPt膜が剥離するという欠点
があった。 【0006】その他、水や食塩電解工業でも多種類の不
溶性電極が使用されている。例えば、 (1) 水の電解による水素ガスの製造にはNi電極、 (2) 塩酸、食塩水の電解による Clの製造には黒鉛電
極、 (3) 苛性アルカリの溶融塩電解による金属Naの製造には
Niや鋼鉄製電極、 (4) ハロゲン化合物の溶融塩電解によるハロゲンガスの
製造には炭素または黒鉛電極 等が使用されている。かような電解工業における不溶性
陽極の選択基準は、電解操作の電力消費量、熱収支と共
に、酸素過電圧、陽極表面における反応生成物の有無と
その影響度などであり、これらの点について、従来から
精力的に研究開発が進められているが、未だ十分とはい
えない。 【0007】上述したような電気めっきや電解工業にお
ける不溶性陽極の現状を改善するため、次のような技術
が提案されている。 (1) 特開昭53−103980号公報による、Ti,Zr,Ta,
Nbなどの耐食性金属基体上にFeO/FeO が重
量比で 2.4〜2.6 組成のマグネタイト粉末を還元性雰囲
気中でプラズマ溶射した後、この皮膜を鉄塩水溶液中に
浸漬して引き上げ、さらに水蒸気を主成分とするガス中
にて 550〜700 ℃で熱処理を施すことからなる電極の製
造方法。 (2) 特開昭57-82485号公報による、セラミックス基材上
に導電性樹脂を塗布した後硬化させ、その上にAlなど
の金属を溶射する電極形成方法。 (3) 特開昭63−230895号公報による、板状の多孔質導電
性基体上に鉄シアナイド化合物層を形成し、その上にさ
らに金属を蒸着した電極材料。 (4) 特開昭61−168512号公報による、ポリアクリロニト
リル、フェノール樹脂、セルローズ樹脂またはピッチを
焼成した電極材料。 (5) 特開平2-57159号公報による、金属基材上にその金
属および酸化物と、酸、アルカリ、水のいずれかに溶解
する成分との混合溶射層を形成し、この溶射層から易溶
性成分を溶出させた多孔質層を中間層または触媒担持層
として有し、その上に電極触媒能を有する物質を被覆し
た不溶性電極。 (6) 特開昭59-23890号公報による、金属基材上にその金
属、その金属の炭化物、ケイ化物、硼化物、酸化物、W
C、WSi、WB、MOC、MOSi、MOB等を溶射
し、その上に中間層または触媒担持層を形成した不溶性
電極。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記し
た特開昭53−103980号公報に開示のマグネタイト粉末の
溶射、特開昭57-82485号公報に開示の金属溶射、特開昭
59-23890号公報に開示の金属、酸化物もしくは各種の非
酸化物系セラミックスの溶射は全て大気中で行われてい
るため、基材と溶射被覆層の密着性が悪く、電極として
使用中にしばしば剥離する上、多孔質であることから電
気抵抗が大きいというところに問題を残していた。この
発明は、上記の問題を有利に解決するもので、基材と溶
射被覆層との密着性が良く、また電気抵抗を小さくして
大電流の通電にも耐え得るようにした溶射被覆電極の
利な製造方法と共に提案することを目的とする。 【0009】 【課題を解決するための手段】さて、発明者らは、上記
の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、以下に述べ
る知見を得た。 (1) マグネタイト溶射被覆層の形成に先立ち、基体表面
を、減圧状態のAr雰囲気中でプラズマ炎によりスパッ
タリング処理し、その表面を活性化しておけば、緻密で
基材との密着性が良く、しかも電気抵抗の小さい皮膜を
形成できる。 (2) 最初のプラズマ溶射は減圧状態のAr雰囲気中で行
う必要があるが、その後は大気中で行っても密着性の良
好な被覆層を得ることができる。 (3) 溶射被覆の形成に用いる溶射用マグネタイト粉末の
粒度を変化させることによって、溶射被覆層の有効面積
を大きくしてやれば、大電流の通電にも耐え得る。 (4) 溶射被覆層の有効面を鉄めっきし、その後に酸化処
理を施すと、溶射被覆層を構成するマグネタイト粒子の
相互結合力が向上し、電極の寿命延長を図ることができ
る。この発明は、上記の知見に立脚するものである。 【0010】すなわち、この発明は、Ti基材の表面
を、ブラスト処理した後、Arガス:50〜300hpa雰囲気
下にプラズマ炎によるスパッタリング処理を施してその
表面を活性化し、ついで同じ雰囲気中で粒径:5〜50μ
m のマグネタイト粉末を用いるプラズマ溶射法により、
厚み:30〜300 μm のマグネタイト皮膜を被成したの
ち、さらにその上に、大気雰囲気中で粒径:10〜100 μ
m のマグネタイト粉末を用いるプラズマ溶射法により、
厚み:50〜500 μm 厚のマグネタイト第2皮膜を被成
し、ついでその上に鉄めっき法によって厚み:1〜5μ
m の鉄めっき層を形成した後、 500〜700 ℃の水蒸気中
にて1〜5時間の加熱による鉄めっき層の酸化処理を施
すことを特徴とする耐久性に優れる溶射被覆電極の製造
方法である。 【0011】以下、この発明を具体的に説明する。ま
ず、この発明に従う、良好な密着性と大電流の通電可能
なマグネタイト溶射被覆電極の製作要領の概略について
説明すると、次のとおりである。 (1) 電極の基材と直接接触するマグネタイト粉末の溶射
層の施工は、実質的に酸素を含まないAr雰囲気中で行
うが、この際基材の化学的活性度を上げるためにアルゴ
ンガスイオンによるスパッタリングを行い、その直後に
マグネタイト溶射を施工する。 (2) 引き続きAr雰囲気中で溶射被覆を続けてもよい
が、(1) の工程が終了すれば大気中で溶射を行い所定の
膜厚にまで施工する。 (3) 溶射被覆層の有効表面積を大きくし、大電流の通電
を可能とするため、上記(1) および(2) の溶射に用いる
マグネタイト粒子の粒径に変化を持たせ、被覆層の気孔
率を上げる。 (4) (3) の操作に伴う溶射被覆層の機械的強度の低下
は、これを鉄めっきを行うことによって補い、さらにこ
の鉄を水蒸気を主成分とする 500〜700 ℃の雰囲気中で
1〜5時間加熱することによって Fe34へ変化さ
せ、不溶性電極としての特性を発揮させる。 【0012】 【作用】以下、上記の各製造工程順に従いこの発明を具
体的に説明する。まず、この発明では、基材として、T
iおよびTi合金(例えばTi−6%Al−4%V)を
用いるが、その理由は、比較的軽く取扱いが容易である
とともに、耐食性に優れているためである。 【0013】かかる基材の表面に、密着性に富み、かつ
無気孔のマグネタイト溶射皮膜を被成するわけである
が、かかる溶射皮膜の形成方法は次のとおりである
基材の表面に、緻密で密着性の強い酸化膜を形成する
ためには、溶射加工前にブラスト処理を施す。しかしな
がら、たとえブラスト処理を施したとしても、その上に
形成されるマグネタイト溶射皮膜は密着性に乏しい上、
気孔の多い皮膜となるため、電極用の皮膜としては適当
でない。 【0014】そこでこの発明では、Ti基材を、例えば
Al23粒子でブラスト処理したのち、空気を除去
し、Arガスを50〜300 hpa導入した容器中でプラズマ
溶射ガンを陰極、Ti基材を陽極として20〜50V、25〜
40A程度の直流を負荷し、2〜10分間Arガスのプラズ
マ炎を流しつつスパッタリングを行う。この結果、Ti
基材表面はブラスト処理による2〜10μm 程度のマクロ
的な凹凸に加え、1 μm 以下のミクロ的な凹凸が全面に
形成され、しかも空気が存在しないためその表面は極め
て活性に富んだ状態となる。上記のスパッタリングにお
いて、Arガスのガス圧が50 hpaに満たないとスパッタ
リング効果に乏しく、一方 300 hpaを超えるとプラズマ
炎の輻射熱が大きくなって、Ti基材が熱変形しやすく
なるので、スパッタリング処理時のArガス圧は50〜30
0 hpa とする必要がある。 【0015】ついで、この活性Ti基材表面に対し、ス
パッタリング施工を行ったプラズマ溶射ガンを用いて直
接マグネタイト粉末を溶射し皮膜を形成させる。この皮
膜は、活性なTi基材表面に密着するため極めて強固に
結合する。ここに、この溶射に用いるマグネタイト粉末
の粒径を5〜50μm に調整し、減圧下のプラズマ炎中で
完全に軟化、溶融させておくと、それぞれの粒子は相互
に密に結合するため、皮膜中での気孔の生成は極めて少
なく、緻密な皮膜とすることができる。また、皮膜厚さ
は 100〜800 μm とする必要がある。というのは、膜厚
が 100μm より薄いと電極としての寿命が短く、一方 8
00μm より厚い場合には電極の性能には変化はないもの
の、経済的に得策でないからである。 【0016】なお、Ti基材表面に直接施工するマグネ
タイト粉末の粒径が5μm より小さいと、溶射ガンへの
連続した安定供給が困難なだけでなく、プラズマ熱源中
で過熱されてフューム化するため、緻密な皮膜が得難
く、一方50μm より大きい粒子ではプラズマ熱源中で完
全に溶融せず、未溶融粒子として皮膜中に混在するた
め、気孔率が高くなるだけでなく基材との密着性が低下
し、必然的に電気抵抗値も大きくなるので、Ti基材表
面に直接施工するマグネタイト粉末の粒径は5〜50μm
とする必要がある。 【0017】Ti基材上に、この発明法および従来法に
従って 500μm 厚の皮膜を形成させた後、その比抵抗を
基材側から電流を通して測定した結果を以下に示す。 (a) ブラスト後、Arガス中でスパッタリングし、その
上に粒径:5〜50μm のマグネタイト粉末で 500μm 厚
に成膜(発明例)。 (b) 同上の操作で粒径:100 〜180 μm のマグネタイト
粉末で 500μm 厚に成膜(比較例)。 (c) 大気中で10〜55μm のマグネタイト粉末で 500μm
厚に成膜(従来例)。 比抵抗 (a) 0.05 〜 0.06 Ωcm (b) 0.08 〜 0.09 Ωcm (c) 0.07 〜 0.08 Ωcm 上記のとおりであり、この発明法で得られる皮膜の比抵
抗が最も小さく電極用皮膜として適していることが判
る。 【0018】上記の方法に従い、減圧のArガス雰囲気
中で30〜300 μm 厚にマグネタイト溶射皮膜を形成して
これをアンダーコートとして用い、その上にさらに大気
中でマグネタイトを50〜500 μm 厚に被成することによ
って電極皮膜をつくる。この大気プラズマ溶射に用いる
マグネタイト粒子の径は10〜100 μm が適当である。と
いうのは、大気中で形成する溶射皮膜は減圧下で形成し
た皮膜ほど緻密ではないが、この発明法では、下地皮膜
とて減圧下で緻密な皮膜を形成しているので、大気中で
形成した溶射皮膜が多孔質であっても電極の寿命や特性
を損なうことはなく、むしろ多孔質の溶射皮膜を形成す
ることによって電極の有効表面積が拡大され、電解時の
分極の低下に役立つからである。なお、この場合におけ
る皮膜厚は、第1皮膜:30〜300 μm 、第2皮膜:50〜
500 μm 、合計:80〜800 μm が適当である。 【0019】上記のようにして、マグネタイトの2重皮
膜を形成するが、この皮膜があまりに多孔質では、皮膜
を構成するマグネタイト粒子の相互結合力が弱く、使用
中に表面から脱落するおそれがある。そこで、この対策
として、多孔質な溶射皮膜に対してはその表面を鉄めっ
きで1〜5μm 厚に処理して溶射粒子の結合力を上げ
る。その後、鉄めっき面を水蒸気を主成分とする雰囲気
中で 500〜700 ℃、1〜5時間の熱処理し、鉄めっき面
を Feに酸化させて、耐久性を向上させる。こ
こに、鉄めっきの厚みが1μm に満たないと、溶射粒子
の結合力を向上させる効果が少ないうえ、溶射皮膜部に
よっては未めっき部分が存在するおそれがあり、一方
5μm を超えると、めっき処理に長時間を要し、生産コ
ストの上昇を招くので、鉄めっきは1〜5μm 厚の範囲
で被成するものとした。 【0020】鉄めっきを行うための浴組成およびめっき
条件は概略次のとおりである。 ・スルファミン酸第一鉄 :400 g/l ・スルファミン酸アンモン:30 g/l ・ホルマリン :100 ml/l ・水素イオン濃度(PH) :2〜2.5 ・温度 :40〜50℃ ・電流密度 :10〜15 A/dm また、鉄めっきを行う溶射皮膜はその表面の気孔率が5
%〜25%の範囲が適している。というのは、それより緻
密な皮膜では鉄めっきを行う必要がなく、一方25%以上
ではこの種の鉄めっきを施しても溶射粒子の結合力強化
は少なく、効果に乏しいからである。 【0021】 【実施例】実施例1 この発明の電極用皮膜のTi基材に対する密着性を従来
法により得た皮膜のそれと比較検討した。実験条件は次
のとおりである。 A.溶射用の基材:Ti板(JIS H 4600(1988)第1種) 幅:30mm、長さ:500 mm、厚み:2 mm B.溶射用マグネタイト粉末の化学成分および粒度 a. 化学成分 (wt%) Fe:99.18 %, Mo:0.14%, Ca:0.03%, Si:0.24%, Al:0.34%, その他:0.07% b. X線解析の全要ピーク Fe34 c. 粒度 5〜50μm 【0022】C.溶射皮膜の形成方法 a. この発明の溶射皮膜 (1) Al23粉末を用いてTi基材をブラストした後、
Arガス 100〜150hpaの減圧雰 囲気下でスパッタリン
グを行い、そのままの状態でマグネタイト粉末を溶射し
150μm 厚の皮膜を得た。 (2) (1)と同じ工程によってマグネタイト皮膜を50μm
厚に形成した後、その上に大気中でプラズマ溶射を行
い、皮膜厚の合計を 250μm とした。 (3) (2)と同じ工程でマグネタイト皮膜を被成したが、
大気プラズマ溶射時に用いたマグネタイト粉末の粒径を
30〜100 μm の混粒とし、皮膜表面を多孔質化した。そ
の後この皮膜上に鉄めっき(3μm 厚) を施し、さらに
600℃の水蒸気中で1時間の熱処理を行った(全溶射
厚:250 μm)。 b. 比較例の溶射皮膜 (1)大気プラズマ溶射法によって、Ti基材上にマグネ
タイト粉末 (粒径:10〜50μm)を 150μm 厚に施工し
た。 (2) (1)と同じ工程によって粒径:30〜100 μm の混粒
マグネタイト粉末を用い250 μm 厚に施工した。 【0023】D.溶射皮膜の密着性評価方法 成膜後のマグネタイト皮膜の性能は次のような方法によ
って評価した。溶射皮膜の密着性:JIS H 8600セラミッ
ク溶射試験方法(1990)制定の溶射皮膜の付着力試験方法
に準じて行った。 【0024】E.試験結果 試験結果を表1にまとめて示す。 【表1】 【0025】同表から明らかなように、大気中でマグネ
タイトを溶射した皮膜(NO.4, 5)の密着性は 180〜28
0 kgf/cm2 程度であり、この中では粗粒を含む溶射皮膜
(NO.5)の方が密着性が低くなっている。これに対し、
この発明に従い得られた溶射皮膜(NO.3)は、400〜480
kgf/cm2の密着力を示し、比較例と較べると約2程度
の強さを示している。この理由は、(1) Ti基材をAr
ガスの減圧雰囲気中でスパッタリング処理をしてその表
面を活性化させた後、マグネタイト粉末を溶射してその
密着性を向上させたこと、および(2) 粗大粒子を含むマ
グネタイト粒子を溶射した後、その表面に鉄めっきを施
して粒子間結合力を向上さたことによるものである。 【0026】実施例2この実施例では、実施例1で作製
した溶射皮膜試験片を電気クロムめっき浴の陽極として
長時間使用し、その耐久性について調査した。 A.溶射用の基材 実施例1と同じ B.溶射用のマグネタイト粉末 実施例1と同じ C.溶射皮膜の形成方法 実施例1と同じ D.電気クロムめっき浴の組成と電解条件 浴組成 :CrO3 250 g/l, H2SO4 2.5 g/l 電解条件:53℃±1 ℃, 30 A/dm2 (電流密度) E.評価方法 陰極に鋼(SS400), 陽極にマグネタイト溶射皮膜試験
片を用い、ともにめっき浴中に浸漬する面積を同じとし
た後、30 A/dm2の直流を連続 300時間通電し、その後
陽極を引き上げ、外観変化を目視観察すると共に、皮膜
を切断し光学顕微鏡によって皮膜断面の一般性状( 主と
して気孔の大きさ) とTi基材への密着性を調べた。 【0027】F.試験結果 試験結果を表2に示す。 【表2】【0028】同表から明らかなように、比較例の溶射皮
膜(NO.4, 5)は、300 時間の使用後、皮膜の剥離は認
められないものの、小さなフクレが発生していた。また
これらの皮膜の断面を観察すると、Ti基材との密着性
の悪いところが点在し、皮膜の気孔率も11〜17%程度観
察された。以上のような結果から、比較例の皮膜ではめ
っき液が気孔部を通って内部へ浸入してTi基材部に達
し、これを酸化して酸化膜を生成し、この酸化膜の成長
によって陽極としての作用が劣化したものと考えられ
る。これに対し、この発明の溶射皮膜(NO. 3)は、Ar
雰囲気の減圧下で溶射しているため、皮膜は 1.5%以下
の気孔率を示すにすぎず、しかも貫通気孔が認められな
いことからめっき液はTi基材部まで達することはなか
った。このため、第2層として多孔質な皮膜を形成した
り、鉄めっきを処理した皮膜が形成されても健全な状態
を維持することができた。なお、この発明の溶射皮膜は
いずれも電気クロムめっきに対し、悪い影響を与えるよ
うなことは全く観察されなかった。 【0029】 【発明の効果】以上、説明したとおり、この発明に従
い、Ti基材をブラスト処理後、Arガスの減圧雰囲気
下でスパッタリング処理を施してその表面を活性化させ
のちに、マグネタイト皮膜を形成することによって、緻
密で密着性が高く、しかも電気抵抗の小さい皮膜を形成
することができる。その結果、その上に重ねて大気溶射
によりマグネタイト皮膜を被成してもその皮膜の密着性
は良好であり、電極として優れた性能を発揮することが
できる。さらに、大気中で粗粒を用いて成膜した場合に
は、電極の有効表面積が拡大される結果、大電流の通電
が可能となり、またこれを鉄めっきした後水蒸気中で熱
処理することにより、Fe34に変化させると共に溶射
粒子相互の結合力を高めることによって、電極としての
性能を一層向上させることができる。かくして、この発
明に従い得られた電極は、電気クロムめっき浴、NaC
l、HCl水溶液中で従来技術の大気溶射によるマグネ
タイト電極に比べ、耐久性においてはるかに優り、電解
工業の安定した操業および生産性の向上に寄与するとこ
ろ極めて大といえる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 古谷 雅春 福岡県北九州市門司区小森江2丁目2番 1号 神鋼メタルプロダクツ株式会社内 (56)参考文献 特開 昭53−103980(JP,A) 特開 平3−13555(JP,A) 特開 昭62−112768(JP,A) 特開 昭59−41485(JP,A) 特開 平5−263212(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 4/10 - 4/18 C25B 11/10 C25D 17/10

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 Ti基材の表面を、ブラスト処理した
    後、Arガス:50〜300hpa雰囲気下にプラズマ炎による
    スパッタリング処理を施してその表面を活性化し、つい
    で同じ雰囲気中で粒径:5〜50μm のマグネタイト粉末
    を用いるプラズマ溶射法により、厚み:30〜300 μm の
    マグネタイト皮膜を被成したのち、さらにその上に、大
    気雰囲気中で粒径:10〜100 μm のマグネタイト粉末を
    用いるプラズマ溶射法により、厚み:50〜500 μm 厚の
    マグネタイト第2皮膜を被成し、ついでその上に鉄めっ
    き法によって厚み:1〜5μm の鉄めっき層を形成した
    後、 500〜700 ℃の水蒸気中にて1〜5時間の加熱によ
    る鉄めっき層の酸化処理を施すことを特徴とする耐久性
    に優れる溶射被覆電極の製造方法。
JP02696495A 1995-02-15 1995-02-15 耐久性に優れる溶射被覆電極の製造方法 Expired - Fee Related JP3431715B2 (ja)

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