JPWO2005019109A1 - マンガン酸化物ナノ構造体の製造方法とそのマンガン酸化物ナノ構造体を用いた酸素還元電極 - Google Patents

マンガン酸化物ナノ構造体の製造方法とそのマンガン酸化物ナノ構造体を用いた酸素還元電極 Download PDF

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Abstract

本発明は、優れた酸素還元触媒能を有する酸素還元電極を提供することを主な目的とする。本発明は、マンガン酸化物の一次粒子が凝集した二次粒子からなり、かつ、酸素還元触媒能を有するマンガン酸化物ナノ構造体を製造する方法であって、マンガン酸化物からなるターゲット板にレーザ光を照射することによって、ターゲット板の構成物質を脱離させ、前記ターゲット板にほぼ平行に対向する基板上にその脱離した物質を堆積させる工程を有する製造方法に係る。

Description

本発明は、酸素還元触媒能を有するマンガン酸化物ナノ構造体を製造する方法に関する。また、本発明は、マンガン酸化物ナノ構造体を用いた酸素還元電極に関する。
従来、微細構造を有する材料は、金属、合金、化合物等の複合材料を急速に凝固することにより得られ、数ミクロンレベルの粒子サイズを有しているものがほとんどである。これに対し、近年では、材料サイズをミクロンスケールからナノスケールに小さくする研究が活発化している。こうしたナノ粒子を中心としたナノ構造体の特徴は、粒子境界(表面)に存在する原子の割合が高いことであり、例えば5nmのナノ粒子で40%に達する。ナノ構造体は、同一の化学組成を有するミクロンレベルの材料と比較した場合、化学的及び物理的特性が大きく異なり、優れた特性を示すことが多い。
例えば、マンガン酸化物(MnOx)は、現在ナノ構造体として入手することは困難である。通常、市販用に合成されたマンガン酸化物の粒子サイズはミクロンレベルである。そして、ミクロンレベルのマンガン酸化物の酸素還元触媒としての特性も報告されている。例えば特表2000−505040号公報によれば、マンガン酸化物の酸化状態(価数)の異なる材料では触媒活性が異なり、三価のマンガン化合物であるMn及びMnOOHの酸素還元触媒活性は、価数の異なるMn及びMnと比較して高く、酸素還元電位がそれぞれ−0.3V付近と−1.0V付近に観測されている。
一方、ナノ構造体の作製方法としては、二酸化マンガン(MnO)を例に挙げると、過マンガン酸カリウム(KMnO)水溶液を硫酸マンガン(MnSO)の溶解した硫酸水溶液に噴霧し、合成反応を生じさせ、析出後、加熱処理する方法が知られている(特表2000−505040号公報(第42頁、第2図))。
さらに、マンガン酸化物を応用した酸素還元電極を例に挙げると、ミクロンレベルの粉末体である四酸化三マンガンと二酸化マンガンの混合体を酸素還元電極として使用した空気亜鉛電池の例がある(特開平10−302808号公報(第8頁、第2図))。
その他、本発明に関連する文献として、佐々木毅ら「レーザーアブレーションによる金属酸化物ナノ微粒子の調製」社団法人 レーザー研究 第28巻第6号 2000年6月、Journal of The Electrochemical Society,149(4)A504−A507(2002)等を挙げることができる。
ナノ構造を有する大表面積材料は、活性部位が仲介する化学反応が重要な役割を果たす用途(触媒的な用途)において特に有益である。この材料は、触媒反応においては周囲環境(気体、液体等)との接触面積が大きいほど良い。このため、このような触媒材料をナノ構造体化することには明確な利点がある。
さらに、マンガン酸化物を酸素還元電極の触媒材料として用いる場合には、酸素還元電位は小さいほど良く、コスト的な観点から坦持量が少量であるほど良い。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、優れた酸素還元特性(酸素還元触媒性能)を有する酸素還元電極を提供することを主な目的とする。
本発明者は、上記問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の微細構造を有する材料を酸素還元電極として用いることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記のマンガン酸化物ナノ構造体の製造方法とそのマンガン酸化物ナノ構造体を用いた酸素還元電極に係る。
1. マンガン酸化物の一次粒子が凝集した二次粒子からなり、かつ、酸素還元触媒能を有するマンガン酸化物ナノ構造体を製造する方法であって、
マンガン酸化物からなるターゲット板にレーザ光を照射することによって、ターゲット板の構成物質を脱離させ、前記ターゲット板にほぼ平行に対向する基板上にその脱離した物質を堆積させる工程を有する製造方法。
2. 前記マンガン酸化物ナノ構造体を作用極とし、白金を対極とし、銀/塩化銀を参照極とし、かつ、濃度0.1mol/L及びpH13の水酸化カリウム水溶液を電解液とする三極セルを用いたサイクリックボルタンメトリー法によるサイクリックボルタモグラムにおいて、−0.1V付近に酸素還元電位を示す、前記項1に記載の製造方法。
3. 不活性ガスを雰囲気ガスとして用いる、前記項1に記載の製造方法。
4. 不活性ガス及び反応性ガスとの混合ガスを雰囲気ガスとして用いる、前記項1に記載の製造方法。
5. 反応性ガスの割合が質量流量比で0.1%以上50%以下である、前記項4に記載の製造方法。
6. 反応性ガスが、酸化性ガスである、前記項4に記載の製造方法。
7. 酸化性ガスが、酸素ガスを含むガスである、前記項6に記載の製造方法。
8. 雰囲気ガスにエネルギーを与えることにより活性化する、前記項3に記載の製造方法。
9. 雰囲気ガスにエネルギーを与えることにより活性化する、前記項4に記載の製造方法。
10. 雰囲気ガスの圧力が、13.33Pa以上1333Pa以下の範囲である、前記項3に記載の製造方法。
11. 雰囲気ガスの圧力が、13.33Pa以上1333Pa以下の範囲である、前記項4に記載の製造方法。
12. レーザ光が、パルス幅5ns以上20ns以下のパルスレーザ光である、前記項1に記載の製造方法。
13. レーザ光が、ハロゲンガス及び希ガスをレーザ媒体とするエキシマレーザである、前記項1に記載の製造方法。
14. レーザ光のエネルギー密度が0.5J/cm以上2J/cm以下である、前記項1に記載の製造方法。
15. ターゲット板が、レーザー光の波長域で吸収する材料である、前記項1に記載の製造方法。
16. ターゲット板が、マンガン酸化物の焼結体である、前記項1に記載の製造方法。
17. 得られたマンガン酸化物ナノ構造体をさらに加熱する工程を有する、前記項1に記載の製造方法。
18. 前記雰囲気ガスの圧力を変化させる、前記項3又は4に記載の製造方法。
19. 前記工程に先立って、予め前記ターゲット板及び基板を互いに平行に対向するように反応系内に設置する工程を有する、前記項1に記載の製造方法。
20. 前記ターゲット板にビーム光を照射することによって前記ターゲット板近傍に形成される高温高圧領域のサイズを制御するために、1)雰囲気ガスの圧力及び2)前記ターゲット板と基板との距離の少なくとも一方を調整する工程を含む、前記項1に記載の製造方法。
21. 一次粒子が凝集した二次粒子からなるマンガン酸化物ナノ構造体を含む酸素還元電極であって、
前記電極を作用極とし、白金を対極とし、銀/塩化銀を参照極とし、かつ、濃度0.1mol/L及びpH13の水酸化カリウム水溶液を電解液とする三極セルを用いたサイクリックボルタンメトリー法によるサイクリックボルタモグラムにおいて、−0.1V付近に酸素還元電位を示す、酸素還元電極。
22. 前記一次粒子の平均粒径が1nm以上50nm以下である、前記項21に記載の酸素還元電極。
23. 前記二次粒子の平均粒径が100nm以上1μm以下である、前記項21に記載の酸素還元電極。
24. 前記一次粒子の平均粒径が1nm以上50nm以下であり、かつ、前記二次粒子の平均粒径が100nm以上1μm以下である、前記項21に記載の酸素還元電極。
25. 前記マンガン酸化物が、一酸化マンガン、四酸化三マンガン、三酸化二マンガン及び二酸化マンガンの少なくとも1種である、前記項21に記載の酸素還元電極。
26. 前記サイクリックボルタモグラムにおいて、−0.2V以上0V以下の範囲内に酸素還元電位を示す、前記項21に記載の酸素還元電極。
27. 前記マンガン酸化物ナノ構造体が、厚み500nm以下の層状である、前記項21に記載の酸素還元電極。
28. 前記マンガン酸化物ナノ構造体が、導電性基材上に形成されている、前記項21に記載の酸素還元電極。
29. 前記マンガン酸化物ナノ構造体が、マンガン酸化物からなるターゲット板にレーザ光を照射することによって、ターゲット板の構成物質を脱離させ、前記ターゲット板にほぼ平行に対向する基板上にその脱離した物質を堆積させる工程を有する製造方法により得られるものである、前記項21に記載の酸素還元電極。
図1は、本発明の実施の形態1における、一次粒子が凝集した二次粒子からなる構造を有するマンガン酸化物ナノ構造体の走査電子顕微鏡写真を示す。
図2は、本発明の実施の形態における、一次粒子が凝集した二次粒子からなる構造を有するマンガン酸化物ナノ構造体の構造模式図を示す。
図3は、本発明の実施の形態における、マンガン酸化物ナノ構造体の作製方法に使用するナノ構造体作製装置を示す構成図を示す。
図4は、本発明の実施の形態2における、一次粒子が凝集した二次粒子からなる構造を有するマンガン酸化物ナノ構造体の走査電子顕微鏡写真を示す。
図5は、本発明の実施例1における試験電極を示す図を示す。
図6は、本発明の実施例1におけるサイクリックボルタモグラムを示す。
図7は、本発明の実施例2における試験電極を示す。
図8は、本発明の実施例2におけるサイクリックボルタモグラムを示す。
図9は、三極セルを用いたサイクリックボルタンメトリー法の測定装置の概略図である。
符号の説明
201 一次粒子
202 二次粒子
301 反応室
302 超高真空排気系
303 マスフローコントローラ
304 ガス導入ライン
305 ガス排気系
306 ターゲットホルダ
307 ターゲット
308 パルスレーザ光源
309 基板
310 レーザ導入窓
311 スリット
312 レンズ
313 反射鏡
314 プルーム
501 グラッシーカーボン
502 銅ロッド
503 マンガン酸化物ナノ構造体
701 金ロッド
1.マンガン酸化物ナノ構造体の製造方法
本発明の製造方法は、マンガン酸化物の一次粒子が凝集した二次粒子からなり、かつ、酸素還元触媒能を有するマンガン酸化物ナノ構造体を製造する方法であって、
マンガン酸化物からなるターゲット板にレーザ光を照射することによって、ターゲット板の構成物質を脱離させ、前記ターゲット板にほぼ平行に対向する基板上にその脱離した物質を堆積させる工程を有する。
出発原料であるマンガン酸化物は、レーザ光のターゲット材になり得るものであれば限定的でなく、各種のマンガン酸化物を用いることができる。例えば、一酸化マンガン(MnO)、四酸化三マンガン(Mn)、三酸化二マンガン(Mn)及び二酸化マンガン(MnO)の少なくとも1種を好適に用いることができる。この場合、目的とするマンガン酸化物ナノ構造体と同じ酸化物を選択することが望ましい。例えば、四酸化三マンガンのナノ構造体を作製しようとする場合には、四酸化三マンガンの焼結体からなるターゲット板を用いることが好ましい。
これらマンガン酸化物は、結晶質又は非晶質のいずれであっても良い。また、結晶質である場合は、多結晶又は単結晶のいずれも使用することができる。従って、例えばマンガン酸化物の焼結体等を好適に用いることができる。
マンガン酸化物からなるターゲット板の形状は限定的でなく、レーザ光の照射に適した形態とすれば良い。例えば、厚み0.5mm以上10mm以下程度のマンガン酸化物をターゲット板として好適に用いることができる。ターゲット板は、適当な支持体を用い、その上にマンガン酸化物を積層しても良い。なお、ターゲット板の大きさは、レーザアブレーション法の条件等に応じて適宜設定すれば良い。
基板は、特に限定されず、例えばSi、SiO等の各種の材質からなる基板を用いることができる。
本発明では、前記ターゲット板にビーム光を照射することにより、ターゲット板の構成物質を脱離させ、前記ターゲット板にほぼ平行に対向する基板上にその脱離した物質を堆積させる。すなわち、本発明ではレーザアブレーション法(好ましくはパルスレーザアブレーション法)を用いる。レーザアブレーション法は、既存の反応装置等を利用することもできる。
レーザアブレーション法とは、高いエネルギー密度(特に0.5J/cm以上、好ましくは0.5J/cm以上2J/cm以下)のレーザ光をターゲットに照射し、ターゲット表面を溶融・脱離させる方法である。パルスレーザアブレーション法は、レーザ光としてパルスレーザ光を用いる方法である。
レーザアブレーション法の特徴は、非熱平衡性及び無質量性プロセスであることにある。非熱平衡性における具体的効果としては、空間的・時間的選択励起が可能であることが挙げられる。特に、空間的選択励起性という点で有利である。すなわち、従来の熱プロセス又はプラズマプロセスにおいては反応槽のかなり広い領域あるいは反応槽全体が熱やイオンに晒されるのに対し、レーザアブレーション法では、必要な物質源のみを励起することができるので、不純物混入が抑制されたクリーンなプロセスとなる。また、無質量性とは、同じ非熱平衡性のイオンプロセスに比較して、格段な低ダメージ性であることを意味する。レーザアブレーションにおいて脱離する物質は、主にイオン及び中性粒子である原子・分子・クラスター(数個から数十個程度の原子から構成される)であり、その運動エネルギーはイオンで数十eV、中性粒子の場合は数eVのレベルに達する。これは、加熱蒸発原子よりはるかに高エネルギーであるが、イオンビームよりはるかに低エネルギーの領域である。
このようにクリーンでダメージの少ないレーザアブレーションプロセスは、不純物の混入・組成・結晶性等が制御されたナノ構造体の作製に適している。この場合、レーザアブレーション法を用いてナノ構造体作製を行うためには、ターゲット材料が、光源であるレーザ光の波長域で吸収があることが望ましい。
本発明の製造方法において、レーザ光としてパルスレーザ光を用いる場合のパルス幅は、特に5ns以上20ns以下とすることが好ましい。また、波長は、一般に150nm以上700nm以下とすることが好ましい。パルスエネルギーは、通常は10mJ以上500mJ以下とすることが好ましい。また、繰り返し周波数は、通常は5Hz以上1KHz以下とすることが好ましい。
レーザ光のレーザ媒体(レーザの種類)は特に限定されず、例えばエキシマレーザ等の気体レーザのほか、YAGレーザ等の固体レーザを採用することができる。特にエキシマレーザ、とりわけハロゲンガス及び希ガスをレーザ媒体として用いたエキシマレーザが用いることが望ましい。例えば、フッ素ガスとアルゴンとをレーザ媒体とするArFエキシマレーザを好適に用いることができる。
特に、本発明では、前記ターゲット板から脱離した物質を堆積させるに際し、ターゲット板にほぼ平行に対向する基板上で前記物質を堆積させる(図3)。換言すれば、ターゲット板と基板とを互いにほぼ平行にした状態で、脱離した物質を基板上に堆積させる。この方式は、いわゆるOn Axisの形態であり、いわゆるOff Axis(ターゲット板と基板が互いにほぼ垂直に配置された状態で基板に堆積させる方法)と異なる方法である。本発明では、On Axisの状態で前記物質を堆積させることによって、最終的に得られるマンガン酸化物ナノ構造体がOff Axisの場合に比して優れた酸素還元特性を発揮することができる。
従って、On Axisによるレーザアブレーション法を既存の反応装置等を用いて実施する場合にあっては、予め前記ターゲット板及び基板を互いに平行に対向するように、ターゲット板及び基板を反応系内に設置しておくことが望ましい。
また、反応装置を用いる場合は、前記ターゲット板にビーム光を照射することによって前記ターゲット板近傍に形成される高温高圧領域のサイズを制御するために、1)雰囲気ガスの圧力及び2)前記ターゲット板と基板との距離の少なくとも一方を調整することもできる。これにより、効率的にマンガン酸化物ナノ構造体を基板上に形成させることができる。
本発明の製造方法では、適当な雰囲気ガスを使用することが望ましい。雰囲気ガスを用いる場合は、目的とするマンガン酸化物ナノ構造体の種類(所望の酸化数等)に応じて雰囲気ガスの種類を適宜選択することができる。通常は不活性ガスを使用することができる。例えば、Ar、He、N等を不活性ガスとして用いることができる。
また、必要に応じて、不活性ガスと反応性ガスの混合ガスを用いることもできる。この方法によれば、不活性ガスのみを用いた場合に比べて他のプロセスとの整合性をとることができる。すなわち、チャンバ等に残存する反応性ガス種の影響を無視することができる。反応性ガスとしては、例えば酸化性ガス等を用いることができる。反応性ガスを用いる場合、反応性ガスの含有割合は、反応性ガスの種類、所望の特性等に応じて適宜決定すれば良いが、通常は反応性ガスの割合が質量流量比で0.1%以上50%以下の範囲となるように設定すれば良い。
特に、反応性ガスとして酸化性ガスを好適に用いることができる。酸化性ガスとしては、具体的にはO(酸素)、O、NO等の各種ガスが挙げられる。特に酸素を含むガスを酸化性ガスとして好適に用いることができる。
雰囲気ガスの圧力は、雰囲気ガスの組成等に応じて適宜設定することができる。特に、ターゲット材と同一組成のマンガン酸化物ナノ構造体を好適に作製することができるという点では、13.33Pa以上1333Pa以下の範囲内になるように調整することが好ましい。
本発明では、必要に応じて雰囲気ガスの圧力を変化させることもできる。これにより、ナノ構造体の堆積方向における構造を制御し、マンガン酸化物ナノ構造体の物性を制御することができる。
また、雰囲気ガスにエネルギーを与えることにより、雰囲気ガスを活性化することもできる。これにより、マンガンの価数を増加させることができる。雰囲気ガスにエネルギーを与える方法としては、例えば紫外光照射、電子線照射等を使用することができる。
このようにして、ターゲット板から脱離した物質を基板上に堆積させることにより、最終的に基板上でマンガン酸化物ナノ構造体を形成させることができる。一般的に、レーザアブレーション法によりターゲット板から脱離した物質(原子、分子、イオン、クラスター等)は、凝集又は成長しながら基板に堆積し、最終的には一次粒子が凝集した二次粒子からなるマンガン酸化物ナノ構造体が基板上に形成されることとなる。
本発明では、必要に応じて、上記マンガン酸化物ナノ構造体をさらに加熱することもできる。特に、酸化性ガス雰囲気下で加熱することにより、マンガン酸化物の酸化数を上げることができる。例えば、得られるマンガン酸化物ナノ構造体が四酸化三マンガン(Mn)である場合、酸化性雰囲気中で加熱することにより三酸化二マンガン(Mn)を得ることができる。加熱温度は特に限定されないが、通常は600℃以上とすれば良い。なお、上限値は適宜設定することができる。
一般的に、本発明の製造方法で得られるマンガン酸化物ナノ構造体は、一次粒子が凝集した二次粒子からなるものである。このように、微小な一次粒子により多大な触媒活性点を持たせることができ、二次粒子のサイズにより反応物質の効果的な拡散を促すことができる。
一次粒子の平均粒径は限定的ではないが、通常は1nm以上50nm以下の範囲であることが好ましい。また、二次粒子の平均粒径も特に制限されないが、通常は100nm以上1μm以下の範囲であることが好ましい。
また、マンガン酸化物ナノ構造体を構成するマンガン酸化物は、所望の用途等に応じて適宜採択することができる。特に、一酸化マンガン、四酸化三マンガン、三酸化二マンガン及び二酸化マンガンの少なくとも1種を好適に採用することができる。
2.酸素還元電極
本発明の酸素還元電極は、一次粒子が凝集した二次粒子からなるマンガン酸化物ナノ構造体を含む酸素還元電極であって、
前記電極を作用極とし、白金を対極とし、銀/塩化銀を参照極とし、かつ、濃度0.1mol/L及びpH13の水酸化カリウム水溶液を電解液とする三極セルによるサイクリックボルタンメトリー法のサイクリックボルタモグラムにおいて、−0.1V付近に酸素還元電位を示すことを特徴とする。
本発明の酸素還元電極では、少なくとも電極材料(特に電極活物質(触媒材料))として一次粒子が凝集した二次粒子からなるマンガン酸化物ナノ構造体を用いる。マンガン酸化物をナノ構造体化することにより、一般のバルク材料にはない優れた酸素還元触媒能を発現しうる。
本発明の電極は、電極材料として上記マンガン酸化物ナノ構造体を用いるほかは、公知の酸素還元電極の構成要素を用いることができる。例えば、前記マンガン酸化物ナノ構造体を導電性基材上に形成した状態で使用することもできる。
マンガン酸化物ナノ構造体は、前記1.の製造方法で得られるものを好適に用いることができる。従って、一次粒子の平均粒径は1nm以上50nm以下であることが望ましい。また、二次粒子の平均粒径が100nm以上1μm以下であることが望ましい。さらに、マンガン酸化物として、一酸化マンガン、四酸化三マンガン、三酸化二マンガン及び二酸化マンガンの少なくとも1種であることが好ましい。
マンガン酸化物ナノ構造体の形状・大きさは特に制限されない。例えば、厚み500nm以下(好ましくは100nm以上500nm以下)の層状(フィルム状)にしても所望の酸素還元特性を発揮することができる。
本発明の酸素還元電極は、この電極を作用極とし、白金を対極とし、銀/塩化銀を参照極とし、かつ、濃度0.1mol/L及びpH13の水酸化カリウム水溶液を電解液とする三極セルを用いたサイクリックボルタンメトリー法によるサイクリックボルタモグラムにおいて、−0.1V付近(好ましくは−0.2V以上0V以下)に酸素還元電位を示すものである。すなわち、本発明電極は、より低い電圧で酸素還元性能を発揮することができる。
上記サイクリックボルタンメトリー法は、より具体的には後記の実施例1のような条件とすれば良い。特に、試験電極として、直径3mm×高さ3mmのグラッシーカーボン501の上面の円の中心部に直径2mm・厚さ100nmのマンガン酸化物ナノ構造体を形成し、これを銅製ロッドに固定したものを使用すれば良い。
以下、本発明の製造方法の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
(実施の形態1)
本実施の形態においては、マンガン酸化物(MnO)からなるナノ構造体及びその作製方法ついて説明する。
図1は、本実施の形態におけるマンガン酸化物ナノ構造体の走査電子顕微鏡により観察した結果を示すイメージ図である。マンガン酸化物ナノ構造体の模式図を図2に示す。図2のように、上記ナノ構造体は、粒径が数十nmの一次粒子201が凝集し、粒径が数百nmの二次粒子202を形成した構造を有する。図1のマンガン酸化物ナノ構造体をX線吸収微細構造分析により調べたところ、主として四酸化三マンガンから構成されていることを確認した。
なお、マンガン酸化物ナノ構造体の主たる構成物質は、価数の異なる一酸化マンガン、三酸化二マンガン、二酸化マンガン等であっても良い。
図3は、本発明のマンガン酸化物ナノ構造体の作製方法に使用するナノ構造体の作製装置を示す図である。
ここでは、四酸化三マンガン焼結体からなるターゲットを用いてレーザアブレーションを行うことにより、主として四酸化三マンガンから構成される、図1に示すようなマンガン酸化物ナノ構造体を作製できる。以下、この四酸化三マンガンから構成されるナノ構造体を製造する場合を例に挙げて説明する。
図3には、参照符号301はターゲットが配置される金属製の反応室を示す。反応室301の底部には、反応室301内の空気を排気して反応室301内を超真空にする超真空排気系302が設けられている。反応室301には、反応室301へ雰囲気ガスを供給するガス導入ライン304が取り付けられている。このガス導入ライン304には、反応室301へ供給する雰囲気ガスの流量を制御するマスフローコントローラ303が取り付けられている。また、反応室301の底部には、反応室301内の雰囲気ガスを差動排気するガス排気系305が設けられている。なお、反応室301とマスフローコントローラ303との間のガス導入ライン304にはバルブが設けられている。また、超真空排気系302と反応室301との間、及びガス排気系305と反応室301との間にも、それぞれバルブが設けられている。
反応室301内には、ターゲット307を保持するターゲットホルダー306が配置されている。このターゲットホルダー306には、回転シャフト306aが取り付けられており、この回転シャフトが回転制御部(図示せず)の制御で回転することにより、ターゲット307が回転する(8回転/分)ようになっている。このターゲット307の表面にほぼ平行対向するようにして基板309が配置されている(On Axis)。この基板309には、レーザ光の照射により励起されたターゲット307から脱離・射出された物質が堆積される。ここでは、ターゲット307として、四酸化三マンガン(Mn)多結晶焼結体ターゲット(純度99.9%)を用いる。
反応室301の外側には、ターゲット307にエネルギービームとしてのレーザ光を照射するパルスレーザ光源308が配置されている。反応室301の上部には、レーザ光を反応室301内に導入するレーザ導入窓310が取り付けられている。パルスレーザ光源308から出射したレーザ光の光路上には、レーザ光源308から近い順にスリット311、レンズ312及び反射鏡313が配置されており、パルスレーザ光源308から出射したレーザ光がスリット311により整形され、レンズ312で集光され、反射鏡313で反射されて、レーザ導入窓310を通って反応室301内に設置されたターゲット307に照射されるようになっている。
上記構成を有するナノ構造体作製装置における動作について説明する。反応室301の内部を、ターボ分子ポンプを主体とする超高真空排気系302により到達真空1.0×10−6Pa程度まで排気した後、マスフローコントローラ303を経由して、ガス導入ライン304より、Heガスの導入を行う。ここで、スクロールポンプ又はヘリカル溝ポンプを主体としたガス排気系305の動作と連動することにより、反応室101内の雰囲気希ガス圧力を、13.33〜1333Pa程度の範囲の一圧力値に設定する。
この状態で、自転機構を有するターゲットホルダー306に配置された、純度:99.9%のMn多結晶焼結体ターゲット307の表面に対し、パルスレーザ光源308からレーザ光を照射する。ここでは、アルゴン弗素(ArF)エキシマレーザ(波長:193nm、パルス幅:12ns、パルスエネルギー:50mJ、エネルギー密度:1J/cm、繰返し周波数:10Hz)を用いた。このとき、Mnターゲット307表面では、レーザアブレーション現象が発生し、Mn、O、MnO、Mn等のイオンあるいは中性粒子(原子、分子、クラスター)が脱離し、当初はイオンで50eV、中性粒子で5eVのオーダーの運動エネルギーを有し、主にターゲット法線方向(すなわち、ターゲット307の表面に対する法線方向)に分子、クラスターレベルの大きさを維持して、射出して行く。そして、この脱離物質は、雰囲気希ガス原子(ここではHe)と衝突することにより、飛行方向が乱雑になるとともに、運動エネルギーが雰囲気(すなわち、He)に散逸され、約35mm離れて対向した基板309上にナノ構造体として堆積される。なお、基板309の温度、ターゲット307の温度とも積極的な制御は行っていない。
ここでは雰囲気ガスとして、Heガスを用いているが、Ar,Kr,Xe,N等の他の不活性ガスを用いても良い。この場合、気体密度がHeガスの場合と同等になるように圧力を設定すれば良い。例えば、雰囲気ガスとしてAr(気体密度:1.78g/l)を用いる場合には、He(気体密度:0.18g/l)を基準とすると0.1倍程度の圧力に設定すれば良い。
上記の方法により雰囲気ガスであるHeガスの圧力を667Paとして堆積したマンガン酸化物について、微細構造、価数の評価を行った。なお、価数の評価に関してはX線吸収微細構造分析を用いて、粉末材料(純度:99.9%以上)との比較をすることにより行った。
堆積されたマンガン酸化物は、図1に示したように、最小構成単位が数十nmの一次粒子が数百nmの二次粒子として凝集したナノ構造体を形成していることが確認された。なお、図1に示したようなマンガン酸化物ナノ構造体はX線球種微細構造分析により、主として四酸化三マンガンから構成されていることが確認された。
以上の結果は、本実施の形態のマンガン酸化物ナノ構造体の作製方法によって、酸素を含有しない不活性ガスを用いても、その雰囲気ガス圧の制御によりターゲット組成を反映したナノ構造体を作製できることを示している。換言すれば、レーザ照射によりターゲットから射出した物質(主に原子・イオン・クラスター)と不活性ガスとの相互作用(衝突、散乱、閉じ込め効果)の最適化により、ターゲット307の組成が保たれた一次粒子が凝集した二次粒子からなる構造を有するマンガン酸化物ナノ構造体の作製が可能であることを示している。
以上述べてきたように、本実施の形態のマンガン酸化物ナノ構造体の作製方法により、酸化性ガスの導入や基板加熱を必要とすることなく、ターゲット307のマンガン価数が保たれた一次粒子が凝集した二次粒子からなる構造を有するマンガン酸化物ナノ構造体を作製することができる。
さらに、上記方法で得られたマンガン酸化物ナノ構造体の価数をさらに調整する必要が生じる場合がある。このような場合には、基板を加熱し、一定温度に保持する工程を付け加えることが有効である。一例として、Heガス圧:667Paで堆積した四酸化三マンガンナノ構造体に対して、酸素ガス中で熱処理を行った。得られた試料をX線吸収微細構造分析したところ、ターゲット307の材料よりも価数が高くなり、主として三酸化二マンガンから構成されるナノ構造体となることが確認された。
なお、ターゲット307の材料は四酸化三マンガン多結晶焼結体に限定されるわけではなく、三酸化二マンガン等の価数の異なるものを用いても良いし、単結晶ターゲットを用いても良い。
(実施の形態2)
以下、本実施の形態に係るマンガン酸化物ナノ構造体の作製方法を詳細に説明する。
本実施の形態では、希ガス(Ar、He等)と酸化性ガスとの混合ガス雰囲気中におけるレーザアブレーションを用いて基板上にマンガン酸化物を堆積させる。この場合、酸化性ガスの混入割合は、質量流量比0.1〜50%の範囲で希ガスに対して混入すれば良い。
本実施の形態においては、実施の形態1と同様に、光源として、エキシマレーザ又はYAGレーザの高調波を用い、図3に示す装置を用い、ターゲットのレーザアブレーションを行うことにより、マンガン酸化物ナノ構造体を作製する。反応室301は、ターボ分子ポンプを主体とする超高真空排気系302により到達真空1.0×10−6Paまで排気した後、マスフローコントローラ303を経由して、ガス導入ライン304より、HeとOの混合ガス(質量流量比9:1)の導入を行う。ここで、スクロールポンプもしくはヘリカル溝ポンプを主体としたガス排気系305の動作と連動することにより、反応室301内のガス圧力を、13.33〜1333Pa程度の範囲の一定圧力値に設定する。
この状態で、自転機構を有するターゲットホルダー306に配置された、純度:99.9%の三酸化二マンガン(Mn)多結晶焼結体ターゲット307の表面に対して、パルスレーザ光源308からレーザ光を照射する。ここでは、アルゴン弗素(ArF)エキシマレーザ(波長:193nm、パルス幅:12ns、パルスエネルギー:50mJ、エネルギー密度:1J/cm、繰返し周波数:10Hz)を用いた。このとき、Mnターゲット107表面では、レーザアブレーション現象が発生し、Mn,O,MnO,Mn等のイオンあるいは中性粒子(原子、分子、クラスター)が脱離し、当初はイオンで50eV、中性粒子で5eVのオーダーの運動エネルギーを有し、主にターゲット法線方向に分子、クラスターレベルの大きさを維持して、射出して行く。そして、脱離物質は、雰囲気希ガス原子と衝突することにより、飛行方向が乱雑になるとともに、運動エネルギーが雰囲気に散逸され、約35mm離れて対向した基板309上に薄膜あるいはナノ構造体として堆積される。なお、基板、ターゲット温度とも積極的な制御は行っていない。
なお、ここではマンガン酸化物を堆積する際の雰囲気ガスとしてHeとOの混合ガスを用いているが、Heガスの代わりにAr,Kr,Xe等の他の希ガスを用いても良く、またOガスの代わりにO,NO,NO等の他の酸化性ガスを用いても良い。この場合、雰囲気ガスの平均気体密度がHeとOの混合ガスの場合と同等になるように圧力を設定すれば良い。
上記の方法により雰囲気ガスであるHe/O混合ガスの圧力を667Paとして堆積したマンガン酸化物について、微細構造及び価数の評価を行った。なお、価数の評価は、X線吸収微細構造分析を用い、粉末材料(純度:99.9%以上)と比較することにより行った。
堆積されたマンガン酸化物は、図4に示すように、最小構成単位が数nmの一次粒子が数百nmの二次粒子として凝集したナノ構造体を形成していることが確認された。なお、図4に示したようなマンガン酸化物ナノ構造体はX線球種微細構造分析により、主として二酸化マンガンから構成されていることが確認された。
以上の結果は、本実施の形態に係る遷移金属化合物からなるナノ構造体の作製方法によるマンガン酸化物ナノ構造体作製において、反応室内の圧力を制御するとともに、その雰囲気に含まれるOガスにより、遷移金属であるマンガンの価数を増加させることができたことを示している。換言すれば、レーザ照射によりターゲット307から射出した物質(主に原子・イオン・クラスター)が、不活性ガスとの物理的相互作用(衝突、散乱、閉じ込め効果)と酸素ガスとの化学的相互作用(酸化反応)を介して基板に到達し、ターゲット307の材料が有する遷移金属価数よりも高い価数を有するマンガン酸化物ナノ構造体が作製できたことを示している。さらに、雰囲気ガス中のO分子は、エキシマレーザにより分解されて活性なO原子あるいはイオンとなり、ターゲットからの射出物質の酸化が促進されていると考えられる。
なお、ターゲット307の材料は三酸化二マンガン多結晶焼結体に限定されるわけではなく、四酸化三マンガン等の価数の異なるものを用いても良いし、単結晶ターゲットを用いても良い。
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
[実施例1]
マンガン酸化物ナノ構造体を触媒材料とする試験電極(酸素還元電極)を作製し、その酸素還元特性を調べた。
上記マンガン酸化物ナノ構造体としては、図1に示すように、主として四酸化三マンガンの一次粒子が凝集した二次粒子からなるマンガン酸化物ナノ構造体を用いた。以下、その製造方法を説明する。
まず、実施の形態1に示す方法により、図5(b)に示すような直径3mm×高さ3mmのグラッシーカーボン501の上面(円)の中心部に直径2mm・厚さ約100nmの四酸化三マンガンナノ構造体(参照符号:503)をマスクを介して直接堆積(担持)した。次に、銅製のロッド502に撥水性熱収縮チューブを用いて四酸化三マンガンナノ構造体503が坦持されたグラッシーカーボン501を固定し、図5(a)に示すような試験電極を得た。
上記の方法で作製した試験電極を用い、三極セルによるサイクリックボルタンメトリー法により酸素還元触媒能の評価を行った。三極セルによるサイクリックボルタンメトリー法は、図9に示すような公知の装置を利用して実施した。
試験は、試験電極を作用極とし0.1mol/Lの水酸化カリウム水溶液(pH13)中に酸素を飽和溶存させ、酸素雰囲気下で実施した。この場合において、対極として白金線、参照極として銀/塩化銀電極をそれぞれ用いた。
図6には、上記試験電極のサイクリックボルタモグラムを実線で示す。なお、図6中には、四酸化三マンガンナノ構造体を坦持していないグラッシーカーボンのみの比較電極の結果を破線で示す。
両者と比較すると、実線で示した四酸化三マンガンナノ構造体を坦持した試験電極では同電位において電流量が全体的に増加している上、比較電極には認められない−0.1V付近に酸素還元電位のピーク(図6の矢印を参照)が観測された。すなわち、試験電極において、背景技術の欄で述べた還元電位と比較して約0.2V小さい過電圧で酸素還元性能が認められた。
上記の結果は、触媒としてのマンガン酸化物を本発明による一次粒子が凝集した二次粒子からなる構造を有する四酸化三マンガンナノ構造体としたために、約100nmという非常に薄い触媒層にもかかわらず、新たな酸素還元触媒能を発現したものと考えられる。
[実施例2]
マンガン酸化物ナノ構造体を触媒材料とする試験電極(酸素還元電極)を作製し、その酸素還元特性を調べた。
上記マンガン酸化物ナノ構造体としては、図1に示すように、主として四酸化三マンガンの一次粒子が凝集した二次粒子からなるマンガン酸化物ナノ構造体を用いた。以下、その製造方法を説明する。
まず、実施の形態1で説明した方法により、図7(b)に示すように、直径3mm×高さ3mmの金ロッド701の上面(円)の中心部に直径2mm・厚さ約100nmの四酸化三マンガンナノ構造体(参照符号:503)をマスクを介して直接堆積(担持)した。次に、銅製のロッド502に撥水性熱収縮チューブを用いて四酸化三マンガンナノ構造体503が坦持された金ロッド701を固定し、図7(a)に示すような試験電極を得た。
上記の方法で作製した試験電極を用いて、三極セルによるサイクリックボルタンメトリー法により酸素還元触媒能の評価を行った。三極セルによるサイクリックボルタンメトリー法は、図9に示すような公知の装置を利用して実施した。試験は、試験電極を作用極とし0.1mol/Lの水酸化カリウム水溶液中(pH13)に酸素を飽和溶存させ、酸素雰囲気下で実施した。この場合において、対極として白金線、参照極として銀/塩化銀電極をそれぞれ用いた。
図8には、上記試験電極のサイクリックボルタモグラムを実線で示す。なお、図8中には、四酸化三マンガンナノ構造体を坦持していない金ロッドのみの比較電極の結果を破線で示す。両者を比較すると、実線で示した四酸化三マンガンナノ構造体を坦持した試験電極では電流量が全体的に増加している上、比較電極に認められない+0.1V付近と−0.1V付近に酸素還元電位が観測された。すなわち、背景技術の欄で述べた還元電位と比較してそれぞれ約0.4Vと約0.2V小さい過電圧で酸素還元が生じた。
上記の結果は、触媒としてのマンガン酸化物を本発明による一次粒子が凝集した二次粒子からなる構造を有する四酸化三マンガンナノ構造体としたために、約100nmという非常に薄い触媒層にもかかわらず、新たな酸素還元触媒能を発現したものと考えられる。
(比較例1)
四酸化三マンガンナノ構造体を基板上に堆積する工程(実施の形態1)に際し、ターゲット板と基板とを互いにほぼ垂直になるようにそれぞれを配置した(Off Axis)ほかは、実施例1と同様にして試験電極を作製した。得られた試験電極について、実施例1と同様にしてサイクリックボルタモグラムを求めた結果、0.4V付近に酸素還元電位が観測された。
本発明にかかるマンガン酸化物ナノ構造体は、優れた酸素還元触媒活性を有し、空気亜鉛電池、燃料電池等の酸素極に用いられる触媒材料として有用である。また、高価な白金触媒材料に代わる安価な還元触媒等の用途にも応用でき、大幅なコストの低減も可能である。
発明の効果
本発明の製造方法では、いわゆるOn Axisでレーザアブレーションすることによりマンガン酸化物を作製するので、一次粒子が凝集した二次粒子からなる特異な構造のマンガン酸化物ナノ構造体を製造することができる。
また、本発明の製造方法によれば、レーザ光の照射によりターゲット材から射出した物質(主に原子・イオン・クラスター)と雰囲気ガスとの相互作用(衝突、散乱、閉じ込め効果)の最適化によりマンガン酸化物に含まれるマンガンの価数及びナノメートルサイズの微細構造を制御することもできる。
本発明の電極では、上記のような特異な構造を有するマンガン酸化物ナノ構造体を電極材料(触媒材料)として用いることにより、優れた酸素還元特性(触媒活性)を得ることができる。
【書類名】明細書
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素還元触媒能を有するマンガン酸化物ナノ構造体を製造する方法に関する。また、本発明は、マンガン酸化物ナノ構造体を用いた酸素還元電極に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微細構造を有する材料は、金属、合金、化合物等の複合材料を急速に凝固することにより得られ、数ミクロンレベルの粒子サイズを有しているものがほとんどである。これに対し、近年では、材料サイズをミクロンスケールからナノスケールに小さくする研究が活発化している。こうしたナノ粒子を中心としたナノ構造体の特徴は、粒子境界(表面)に存在する原子の割合が高いことであり、例えば5nmのナノ粒子で40%に達する。ナノ構造体は、同一の化学組成を有するミクロンレベルの材料と比較した場合、化学的及び物理的特性が大きく異なり、優れた特性を示すことが多い。
【0003】
例えば、マンガン酸化物(MnOx)は、現在ナノ構造体として入手することは困難である。通常、市販用に合成されたマンガン酸化物の粒子サイズはミクロンレベルである。そして、ミクロンレベルのマンガン酸化物の酸素還元触媒としての特性も報告されている。例えば特表2000−505040号公報によれば、マンガン酸化物の酸化状態(価数)の異なる材料では触媒活性が異なり、三価のマンガン化合物であるMn及びMnOOHの酸素還元触媒活性は、価数の異なるMn及びMnと比較して高く、酸素還元電位がそれぞれ−0.3V付近と−1.0V付近に観測されている。
【0004】
一方、ナノ構造体の作製方法としては、二酸化マンガン(MnO)を例に挙げると、過マンガン酸カリウム(KMnO)水溶液を硫酸マンガン(MnSO)の溶解した硫酸水溶液に噴霧し、合成反応を生じさせ、析出後、加熱処理する方法が知られている(特表2000−505040号公報(第42頁、第2図))。
【0005】
さらに、マンガン酸化物を応用した酸素還元電極を例に挙げると、ミクロンレベルの粉末体である四酸化三マンガンと二酸化マンガンの混合体を酸素還元電極として使用した空気亜鉛電池の例がある(特開平10−302808号公報(第8頁、第2図))。
【0006】
その他、本発明に関連する文献として、佐々木毅ら「レーザーアブレーションによる金属酸化物ナノ微粒子の調製」社団法人 レーザー研究 第28巻第6号 2000年6月、Journal of The Electrochemical Society, 149 (4) A504-A507 (2002)等を挙げることができる。
【発明の開示】
ナノ構造を有する大表面積材料は、活性部位が仲介する化学反応が重要な役割を果たす用途(触媒的な用途)において特に有益である。この材料は、触媒反応においては周囲環境(気体、液体等)との接触面積が大きいほど良い。このため、このような触媒材料をナノ構造体化することには明確な利点がある。
【0007】
さらに、マンガン酸化物を酸素還元電極の触媒材料として用いる場合には、酸素還元電位は小さいほど良く、コスト的な観点から坦持量が少量であるほど良い。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、優れた酸素還元特性(酸素還元触媒性能)を有する酸素還元電極を提供することを主な目的とする。
【0009】
本発明者は、上記問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の微細構造を有する材料を酸素還元電極として用いることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記のマンガン酸化物ナノ構造体の製造方法とそのマンガン酸化物ナノ構造体を用いた酸素還元電極に係る。
1. マンガン酸化物の一次粒子が凝集した二次粒子からなり、かつ、酸素還元触媒能を有するマンガン酸化物ナノ構造体を製造する方法であって、
マンガン酸化物からなるターゲット板にレーザ光を照射することによって、ターゲット板の構成物質を脱離させ、前記ターゲット板にほぼ平行に対向する基板上にその脱離した物質を堆積させる工程を有する製造方法。
2. 前記マンガン酸化物ナノ構造体を作用極とし、白金を対極とし、銀/塩化銀を参照極とし、かつ、濃度0.1mol/L及びpH13の水酸化カリウム水溶液を電解液とする三極セルを用いたサイクリックボルタンメトリー法によるサイクリックボルタモグラムにおいて、−0.1V付近に酸素還元電位を示す、前記項1に記載の製造方法。
3. 不活性ガスを雰囲気ガスとして用いる、前記項1に記載の製造方法。
4. 不活性ガス及び反応性ガスとの混合ガスを雰囲気ガスとして用いる、前記項1に記載の製造方法。
5. 反応性ガスの割合が質量流量比で0.1%以上50%以下である、前記項4に記載の製造方法。
6. 反応性ガスが、酸化性ガスである、前記項4に記載の製造方法。
7. 酸化性ガスが、酸素ガスを含むガスである、前記項6に記載の製造方法。
8. 雰囲気ガスにエネルギーを与えることにより活性化する、前記項3に記載の製造方法。
9. 雰囲気ガスにエネルギーを与えることにより活性化する、前記項4に記載の製造方法。
10. 雰囲気ガスの圧力が、13.33Pa以上1333Pa以下の範囲である、前記項3に記載の製造方法。
11. 雰囲気ガスの圧力が、13.33Pa以上1333Pa以下の範囲である、前記項4に記載の製造方法。
12. レーザ光が、パルス幅5ns以上20ns以下のパルスレーザ光である、前記項1に記載の製造方法。
13. レーザ光が、ハロゲンガス及び希ガスをレーザ媒体とするエキシマレーザである、前記項1に記載の製造方法。
14. レーザ光のエネルギー密度が0.5J/cm以上2J/cm以下である、
前記項1に記載の製造方法。
15. ターゲット板が、レーザー光の波長域で吸収する材料である、前記項1に
記載の製造方法。
16. ターゲット板が、マンガン酸化物の焼結体である、前記項1に記載の製造
方法。
17. 得られたマンガン酸化物ナノ構造体をさらに加熱する工程を有する、前記項1に記載の製造方法。
18. 前記雰囲気ガスの圧力を変化させる、前記項3又は4に記載の製造方法。
19. 前記工程に先立って、予め前記ターゲット板及び基板を互いに平行に対向するように反応系内に設置する工程を有する、前記項1に記載の製造方法。
20. 前記ターゲット板にビーム光を照射することによって前記ターゲット板近傍に形成される高温高圧領域のサイズを制御するために、1)雰囲気ガスの圧力及び2)前記ターゲット板と基板との距離の少なくとも一方を調整する工程を含む、前記項1に記載の製造方法。
21. 一次粒子が凝集した二次粒子からなるマンガン酸化物ナノ構造体を含む酸素還元電極であって、
前記電極を作用極とし、白金を対極とし、銀/塩化銀を参照極とし、かつ、濃度0.1mol/L及びpH13の水酸化カリウム水溶液を電解液とする三極セルを用いたサイクリックボルタンメトリー法によるサイクリックボルタモグラムにおいて、−0.1V付近に酸素還元電位を示す、酸素還元電極。
22. 前記一次粒子の平均粒径が1nm以上50nm以下である、前記項21に記載の酸素還元電極。
23. 前記二次粒子の平均粒径が100nm以上1μm以下である、前記項21に記載の酸素還元電極。
24. 前記一次粒子の平均粒径が1nm以上50nm以下であり、かつ、前記二次粒子の平均粒径が100nm以上1μm以下である、前記項21に記載の酸素還元電極。
25. 前記マンガン酸化物が、一酸化マンガン、四酸化三マンガン、三酸化二マンガン及び二酸化マンガンの少なくとも1種である、前記項21に記載の酸素還元電極。
26. 前記サイクリックボルタモグラムにおいて、−0.2V以上0V以下の範囲内に酸素還元電位を示す、前記項21に記載の酸素還元電極。
27. 前記マンガン酸化物ナノ構造体が、厚み500nm以下の層状である、前記項21に記載の酸素還元電極。
28. 前記マンガン酸化物ナノ構造体が、導電性基材上に形成されている、前記項21に記載の酸素還元電極。
29. 前記マンガン酸化物ナノ構造体が、マンガン酸化物からなるターゲット板にレーザ光を照射することによって、ターゲット板の構成物質を脱離させ、前記ターゲット板にほぼ平行に対向する基板上にその脱離した物質を堆積させる工程を有する製造方法により得られるものである、前記項21に記載の酸素還元電極。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1における、一次粒子が凝集した二次粒子からなる構造を有するマンガン酸化物ナノ構造体の走査電子顕微鏡写真を示す。
【図2】本発明の実施の形態における、一次粒子が凝集した二次粒子からなる構造を有するマンガン酸化物ナノ構造体の構造模式図を示す。
【図3】本発明の実施の形態における、マンガン酸化物ナノ構造体の作製方法に使用するナノ構造体作製装置を示す構成図を示す。
【図4】本発明の実施の形態2における、一次粒子が凝集した二次粒子からなる構造を有するマンガン酸化物ナノ構造体の走査電子顕微鏡写真を示す。
【図5】本発明の実施例1における試験電極を示す図を示す。
【図6】本発明の実施例1におけるサイクリックボルタモグラムを示す。
【図7】本発明の実施例2における試験電極を示す。
【図8】本発明の実施例2におけるサイクリックボルタモグラムを示す。
【図9】三極セルを用いたサイクリックボルタンメトリー法の測定装置の概略図である。
【符号の説明】
【0012】
201 一次粒子
202 二次粒子
301 反応室
302 超高真空排気系
303 マスフローコントローラ
304 ガス導入ライン
305 ガス排気系
306 ターゲットホルダ
307 ターゲット
308 パルスレーザ光源
309 基板
310 レーザ導入窓
311 スリット
312 レンズ
313 反射鏡
314 プルーム
501 グラッシーカーボン
502 銅ロッド
503 マンガン酸化物ナノ構造体
701 金ロッド
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
1.マンガン酸化物ナノ構造体の製造方法
本発明の製造方法は、マンガン酸化物の一次粒子が凝集した二次粒子からなり、かつ、酸素還元触媒能を有するマンガン酸化物ナノ構造体を製造する方法であって、
マンガン酸化物からなるターゲット板にレーザ光を照射することによって、ターゲット板の構成物質を脱離させ、前記ターゲット板にほぼ平行に対向する基板上にその脱離した物質を堆積させる工程を有する。
【0014】
出発原料であるマンガン酸化物は、レーザ光のターゲット材になり得るものであれば限定的でなく、各種のマンガン酸化物を用いることができる。例えば、一酸化マンガン(MnO)、四酸化三マンガン(Mn)、三酸化二マンガン(Mn)及び二酸化マンガン(MnO)の少なくとも1種を好適に用いることができる。この場合、目的とするマンガン酸化物ナノ構造体と同じ酸化物を選択することが望ましい。例えば、四酸化三マンガンのナノ構造体を作製しようとする場合には、四酸化三マンガンの焼結体からなるターゲット板を用いることが好ましい。
【0015】
これらマンガン酸化物は、結晶質又は非晶質のいずれであっても良い。また、結晶質である場合は、多結晶又は単結晶のいずれも使用することができる。従って、例えばマンガン酸化物の焼結体等を好適に用いることができる。
【0016】
マンガン酸化物からなるターゲット板の形状は限定的でなく、レーザ光の照射に適した形態とすれば良い。例えば、厚み0.5mm以上10mm以下程度のマンガン酸化物をターゲット板として好適に用いることができる。ターゲット板は、適当な支持体を用い、その上にマンガン酸化物を積層しても良い。なお、ターゲット板の大きさは、レーザアブレーション法の条件等に応じて適宜設定すれば良い。
【0017】
基板は、特に限定されず、例えばSi、SiO等の各種の材質からなる基板を用いることができる。
【0018】
本発明では、前記ターゲット板にビーム光を照射することにより、ターゲット板の構成物質を脱離させ、前記ターゲット板にほぼ平行に対向する基板上にその脱離した物質を堆積させる。すなわち、本発明ではレーザアブレーション法(好ましくはパルスレーザアブレーション法)を用いる。レーザアブレーション法は、既存の反応装置等を利用することもできる。
【0019】
レーザアブレーション法とは、高いエネルギー密度(特に0.5J/cm以上、好ましくは0.5J/cm以上2J/cm以下)のレーザ光をターゲットに照射し、ターゲット表面を溶融・脱離させる方法である。パルスレーザアブレーション法は、レーザ光としてパルスレーザ光を用いる方法である。
【0020】
レーザアブレーション法の特徴は、非熱平衡性及び無質量性プロセスであることにある。非熱平衡性における具体的効果としては、空間的・時間的選択励起が可能であることが挙げられる。特に、空間的選択励起性という点で有利である。すなわち、従来の熱プロセス又はプラズマプロセスにおいては反応槽のかなり広い領域あるいは反応槽全体が熱やイオンに晒されるのに対し、レーザアブレーション法では、必要な物質源のみを励起することができるので、不純物混入が抑制されたクリーンなプロセスとなる。また、無質量性とは、同じ非熱平衡性のイオンプロセスに比較して、格段な低ダメージ性であることを意味する。レーザアブレーションにおいて脱離する物質は、主にイオン及び中性粒子である原子・分子・クラスター(数個から数十個程度の原子から構成される)であり、その運動エネルギーはイオンで数十eV、中性粒子の場合は数eVのレベルに達する。これは、加熱蒸発原子よりはるかに高エネルギーであるが、イオンビームよりはるかに低エネルギーの領域である。
【0021】
このようにクリーンでダメージの少ないレーザアブレーションプロセスは、不純物の混入・組成・結晶性等が制御されたナノ構造体の作製に適している。この場合、レーザアブレーション法を用いてナノ構造体作製を行うためには、ターゲット材料が、光源であるレーザ光の波長域で吸収があることが望ましい。
【0022】
本発明の製造方法において、レーザ光としてパルスレーザ光を用いる場合のパルス幅は、特に5ns以上20ns以下とすることが好ましい。また、波長は、一般に150nm以上700nm以下とすることが好ましい。パルスエネルギーは、通常は10mJ以上500mJ以下とすることが好ましい。また、繰り返し周波数は、通常は5Hz以上1KHz以下とすることが好ましい。
【0023】
レーザ光のレーザ媒体(レーザの種類)は特に限定されず、例えばエキシマレーザ等の気体レーザのほか、YAGレーザ等の固体レーザを採用することができる。特にエキシマレーザ、とりわけハロゲンガス及び希ガスをレーザ媒体として用いたエキシマレーザが用いることが望ましい。例えば、フッ素ガスとアルゴンとをレーザ媒体とするArFエキシマレーザを好適に用いることができる。
【0024】
特に、本発明では、前記ターゲット板から脱離した物質を堆積させるに際し、ターゲット板にほぼ平行に対向する基板上で前記物質を堆積させる(図3)。換言すれば、ターゲット板と基板とを互いにほぼ平行にした状態で、脱離した物質を基板上に堆積させる。この方式は、いわゆる On Axis の形態であり、いわゆるOff Axis (ターゲット板と基板が互いにほぼ垂直に配置された状態で基板に堆積させる方法)と異なる方法である。本発明では、On Axis の状態で前記物質を堆積させることによって、最終的に得られるマンガン酸化物ナノ構造体が Off Axis の場合に比して優れた酸素還元特性を発揮することができる。
【0025】
従って、On Axisによるレーザアブレーション法を既存の反応装置等を用いて実施する場合にあっては、予め前記ターゲット板及び基板を互いに平行に対向するように、ターゲット板及び基板を反応系内に設置しておくことが望ましい。
【0026】
また、反応装置を用いる場合は、前記ターゲット板にビーム光を照射することによって前記ターゲット板近傍に形成される高温高圧領域のサイズを制御するために、1)雰囲気ガスの圧力及び2)前記ターゲット板と基板との距離の少なくとも一方を調整することもできる。これにより、効率的にマンガン酸化物ナノ構造体を基板上に形成させることができる。
【0027】
本発明の製造方法では、適当な雰囲気ガスを使用することが望ましい。雰囲気ガスを用いる場合は、目的とするマンガン酸化物ナノ構造体の種類(所望の酸化数等)に応じて雰囲気ガスの種類を適宜選択することができる。通常は不活性ガスを使用することができる。例えば、Ar、He、N等を不活性ガスとして用いることができる。
【0028】
また、必要に応じて、不活性ガスと反応性ガスの混合ガスを用いることもできる。この方法によれば、不活性ガスのみを用いた場合に比べて他のプロセスとの整合性をとることができる。すなわち、チャンバ等に残存する反応性ガス種の影響を無視することができる。反応性ガスとしては、例えば酸化性ガス等を用いることができる。反応性ガスを用いる場合、反応性ガスの含有割合は、反応性ガスの種類、所望の特性等に応じて適宜決定すれば良いが、通常は反応性ガスの割合が質量流量比で0.1%以上50%以下の範囲となるように設定すれば良い。
【0029】
特に、反応性ガスとして酸化性ガスを好適に用いることができる。酸化性ガスとしては、具体的にはO(酸素)、O、NO等の各種ガスが挙げられる。特に酸素を含むガスを酸化性ガスとして好適に用いることができる。
【0030】
雰囲気ガスの圧力は、雰囲気ガスの組成等に応じて適宜設定することができる。特に、ターゲット材と同一組成のマンガン酸化物ナノ構造体を好適に作製することができるという点では、13.33Pa以上1333Pa以下の範囲内になるように調整することが好ましい。
【0031】
本発明では、必要に応じて雰囲気ガスの圧力を変化させることもできる。これにより、ナノ構造体の堆積方向における構造を制御し、マンガン酸化物ナノ構造体の物性を制御することができる。
【0032】
また、雰囲気ガスにエネルギーを与えることにより、雰囲気ガスを活性化することもできる。これにより、マンガンの価数を増加させることができる。雰囲気ガスにエネルギーを与える方法としては、例えば紫外光照射、電子線照射等を使用することができる。
【0033】
このようにして、ターゲット板から脱離した物質を基板上に堆積させることにより、最終的に基板上でマンガン酸化物ナノ構造体を形成させることができる。一般的に、レーザアブレーション法によりターゲット板から脱離した物質(原子、分子、イオン、クラスター等)は、凝集又は成長しながら基板に堆積し、最終的には一次粒子が凝集した二次粒子からなるマンガン酸化物ナノ構造体が基板上に形成されることとなる。
【0034】
本発明では、必要に応じて、上記マンガン酸化物ナノ構造体をさらに加熱することもできる。特に、酸化性ガス雰囲気下で加熱することにより、マンガン酸化物の酸化数を上げることができる。例えば、得られるマンガン酸化物ナノ構造体が四酸化三マンガン(Mn)である場合、酸化性雰囲気中で加熱することにより三酸化二マンガン(Mn)を得ることができる。加熱温度は特に限定されないが、通常は600℃以上とすれば良い。なお、上限値は適宜設定することができる。
【0035】
一般的に、本発明の製造方法で得られるマンガン酸化物ナノ構造体は、一次粒子が凝集した二次粒子からなるものである。このように、微小な一次粒子により多大な触媒活性点を持たせることができ、二次粒子のサイズにより反応物質の効果的な拡散を促すことができる。
【0036】
一次粒子の平均粒径は限定的ではないが、通常は1nm以上50nm以下の範囲であることが好ましい。また、二次粒子の平均粒径も特に制限されないが、通常は100nm以上1μm以下の範囲であることが好ましい。
【0037】
また、マンガン酸化物ナノ構造体を構成するマンガン酸化物は、所望の用途等に応じて適宜採択することができる。特に、一酸化マンガン、四酸化三マンガン、三酸化二マンガン及び二酸化マンガンの少なくとも1種を好適に採用することができる。
【0038】
2.酸素還元電極
本発明の酸素還元電極は、一次粒子が凝集した二次粒子からなるマンガン酸化物ナノ構造体を含む酸素還元電極であって、
前記電極を作用極とし、白金を対極とし、銀/塩化銀を参照極とし、かつ、濃度0.1mol/L及びpH13の水酸化カリウム水溶液を電解液とする三極セルによるサイクリックボルタンメトリー法のサイクリックボルタモグラムにおいて、−0.1V付近に酸素還元電位を示すことを特徴とする。
【0039】
本発明の酸素還元電極では、少なくとも電極材料(特に電極活物質(触媒材料))として一次粒子が凝集した二次粒子からなるマンガン酸化物ナノ構造体を用いる。マンガン酸化物をナノ構造体化することにより、一般のバルク材料にはない優れた酸素還元触媒能を発現しうる。
【0040】
本発明の電極は、電極材料として上記マンガン酸化物ナノ構造体を用いるほかは、公知の酸素還元電極の構成要素を用いることができる。例えば、前記マンガン酸化物ナノ構造体を導電性基材上に形成した状態で使用することもできる。
【0041】
マンガン酸化物ナノ構造体は、前記1.の製造方法で得られるものを好適に用いることができる。従って、一次粒子の平均粒径は1nm以上50nm以下であることが望ましい。また、二次粒子の平均粒径が100nm以上1μm以下であることが望ましい。さらに、マンガン酸化物として、一酸化マンガン、四酸化三マンガン、三酸化二マンガン及び二酸化マンガンの少なくとも1種であることが好ましい。
【0042】
マンガン酸化物ナノ構造体の形状・大きさは特に制限されない。例えば、厚み500nm以下(好ましくは100nm以上500nm以下)の層状(フィルム状)にしても所望の酸素還元特性を発揮することができる。
【0043】
本発明の酸素還元電極は、この電極を作用極とし、白金を対極とし、銀/塩化銀を参照極とし、かつ、濃度0.1mol/L及びpH13の水酸化カリウム水溶液を電解液とする三極セルを用いたサイクリックボルタンメトリー法によるサイクリックボルタモグラムにおいて、−0.1V付近(好ましくは−0.2V以上0V以下)に酸素還元電位を示すものである。すなわち、本発明電極は、より低い電圧で酸素還元性能を発揮することができる。
【0044】
上記サイクリックボルタンメトリー法は、より具体的には後記の実施例1のような条件とすれば良い。特に、試験電極として、直径3mm×高さ3mmのグラッシーカーボン501の上面の円の中心部に直径2mm・厚さ100nmのマンガン酸化物ナノ構造体を形成し、これを銅製ロッドに固定したものを使用すれば良い。
【0045】
以下、本発明の製造方法の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0046】
(実施の形態1)
本実施の形態においては、マンガン酸化物(MnO)からなるナノ構造体及びその作製方法ついて説明する。
【0047】
図1は、本実施の形態におけるマンガン酸化物ナノ構造体の走査電子顕微鏡により観察した結果を示すイメージ図である。マンガン酸化物ナノ構造体の模式図を図2に示す。図2のように、上記ナノ構造体は、粒径が数十nmの一次粒子201が凝集し、粒径が数百nmの二次粒子202を形成した構造を有する。図1のマンガン酸化物ナノ構造体をX線吸収微細構造分析により調べたところ、主として四酸化三マンガンから構成されていることを確認した。
【0048】
なお、マンガン酸化物ナノ構造体の主たる構成物質は、価数の異なる一酸化マンガン、三酸化二マンガン、二酸化マンガン等であっても良い。
【0049】
図3は、本発明のマンガン酸化物ナノ構造体の作製方法に使用するナノ構造体の作製装置を示す図である。
【0050】
ここでは、四酸化三マンガン焼結体からなるターゲットを用いてレーザアブレーションを行うことにより、主として四酸化三マンガンから構成される、図1に示すようなマンガン酸化物ナノ構造体を作製できる。以下、この四酸化三マンガンから構成されるナノ構造体を製造する場合を例に挙げて説明する。
【0051】
図3には、参照符号301はターゲットが配置される金属製の反応室を示す。反応室301の底部には、反応室301内の空気を排気して反応室301内を超真空にする超真空排気系302が設けられている。反応室301には、反応室301へ雰囲気ガスを供給するガス導入ライン304が取り付けられている。このガス導入ライン304には、反応室301へ供給する雰囲気ガスの流量を制御するマスフローコントローラ303が取り付けられている。また、反応室301の底部には、反応室301内の雰囲気ガスを差動排気するガス排気系305が設けられている。なお、反応室301とマスフローコントローラ303との間のガス導入ライン304にはバルブが設けられている。また、超真空排気系302と反応室301との間、及びガス排気系305と反応室301との間にも、それぞれバルブが設けられている。
【0052】
反応室301内には、ターゲット307を保持するターゲットホルダー306が配置されている。このターゲットホルダー306には、回転シャフト306aが取り付けられており、この回転シャフトが回転制御部(図示せず)の制御で回転することにより、ターゲット307が回転する(8回転/分)ようになっている。このターゲット307の表面にほぼ平行対向するようにして基板309が配置されている(On Axis)。この基板309には、レーザ光の照射により励起されたターゲット307から脱離・射出された物質が堆積される。ここでは、ターゲット307として、四酸化三マンガン(Mn)多結晶焼結体ターゲット(純度99.9%)を用いる。
【0053】
反応室301の外側には、ターゲット307にエネルギービームとしてのレーザ光を照射するパルスレーザ光源308が配置されている。反応室301の上部には、レーザ光を反応室301内に導入するレーザ導入窓310が取り付けられている。パルスレーザ光源308から出射したレーザ光の光路上には、レーザ光源308から近い順にスリット311、レンズ312及び反射鏡313が配置されており、パルスレーザ光源308から出射したレーザ光がスリット311により整形され、レンズ312で集光され、反射鏡313で反射されて、レーザ導入窓310を通って反応室301内に設置されたターゲット307に照射されるようになっている。
【0054】
上記構成を有するナノ構造体作製装置における動作について説明する。反応室301の内部を、ターボ分子ポンプを主体とする超高真空排気系302により到達真空1.0×10−6Pa程度まで排気した後、マスフローコントローラ303を経由して、ガス導入ライン304より、Heガスの導入を行う。ここで、スクロールポンプ又はヘリカル溝ポンプを主体としたガス排気系305の動作と連動することにより、反応室101内の雰囲気希ガス圧力を、13.33〜1333Pa程度の範囲の一圧力値に設定する。
【0055】
この状態で、自転機構を有するターゲットホルダー306に配置された、純度:99.9%のMn多結晶焼結体ターゲット307の表面に対し、パルスレーザ光源308からレーザ光を照射する。ここでは、アルゴン弗素(ArF)エキシマレーザ(波長:193nm、パルス幅:12ns、パルスエネルギー:50mJ、エネルギー密度:1J/cm、繰返し周波数:10Hz)を用いた。このとき、Mnターゲット307表面では、レーザアブレーション現象が発生し、Mn、O、MnO、Mn等のイオンあるいは中性粒子(原子、分子、クラスター)が脱離し、当初はイオンで50eV、中性粒子で5eVのオーダーの運動エネルギーを有し、主にターゲット法線方向(すなわち、ターゲット307の表面に対する法線方向)に分子、クラスターレベルの大きさを維持して、射出して行く。そして、この脱離物質は、雰囲気希ガス原子(ここではHe)と衝突することにより、飛行方向が乱雑になるとともに、運動エネルギーが雰囲気(すなわち、He)に散逸され、約35mm離れて対向した基板309上にナノ構造体として堆積される。なお、基板309の温度、ターゲット307の温度とも積極的な制御は行っていない。
【0056】
ここでは雰囲気ガスとして、Heガスを用いているが、Ar,Kr,Xe,N2等の他の不活性ガスを用いても良い。この場合、気体密度がHeガスの場合と同等になるように圧力を設定すれば良い。例えば、雰囲気ガスとしてAr(気体密度:1.78g/l)を用いる場合には、He(気体密度:0.18g/l)を基準とすると0.1倍程度の圧力に設定すれば良い。
【0057】
上記の方法により雰囲気ガスであるHeガスの圧力を667Paとして堆積したマンガン酸化物について、微細構造、価数の評価を行った。なお、価数の評価に関してはX線吸収微細構造分析を用いて、粉末材料(純度:99.9%以上)との比較をすることにより行った。
【0058】
堆積されたマンガン酸化物は、図1に示したように、最小構成単位が数十nmの一次粒子が数百nmの二次粒子として凝集したナノ構造体を形成していることが確認された。なお、図1に示したようなマンガン酸化物ナノ構造体はX線球種微細構造分析により、主として四酸化三マンガンから構成されていることが確認された。
【0059】
以上の結果は、本実施の形態のマンガン酸化物ナノ構造体の作製方法によって、酸素を含有しない不活性ガスを用いても、その雰囲気ガス圧の制御によりターゲット組成を反映したナノ構造体を作製できることを示している。換言すれば、レーザ照射によりターゲットから射出した物質(主に原子・イオン・クラスター)と不活性ガスとの相互作用(衝突、散乱、閉じ込め効果)の最適化により、ターゲット307の組成が保たれた一次粒子が凝集した二次粒子からなる構造を有するマンガン酸化物ナノ構造体の作製が可能であることを示している。
【0060】
以上述べてきたように、本実施の形態のマンガン酸化物ナノ構造体の作製方法により、酸化性ガスの導入や基板加熱を必要とすることなく、ターゲット307のマンガン価数が保たれた一次粒子が凝集した二次粒子からなる構造を有するマンガン酸化物ナノ構造体を作製することができる。
【0061】
さらに、上記方法で得られたマンガン酸化物ナノ構造体の価数をさらに調整する必要が生じる場合がある。このような場合には、基板を加熱し、一定温度に保持する工程を付け加えることが有効である。一例として、Heガス圧:667Paで堆積した四酸化三マンガンナノ構造体に対して、酸素ガス中で熱処理を行った。得られた試料をX線吸収微細構造分析したところ、ターゲット307の材料よりも価数が高くなり、主として三酸化二マンガンから構成されるナノ構造体となることが確認された。
【0062】
なお、ターゲット307の材料は四酸化三マンガン多結晶焼結体に限定されるわけではなく、三酸化二マンガン等の価数の異なるものを用いても良いし、単結晶ターゲットを用いても良い。
【0063】
(実施の形態2)
以下、本実施の形態に係るマンガン酸化物ナノ構造体の作製方法を詳細に説明する。
【0064】
本実施の形態では、希ガス(Ar、He等)と酸化性ガスとの混合ガス雰囲気中におけるレーザアブレーションを用いて基板上にマンガン酸化物を堆積させる。この場合、酸化性ガスの混入割合は、質量流量比0.1〜50%の範囲で希ガスに対して混入すれば良い。
【0065】
本実施の形態においては、実施の形態1と同様に、光源として、エキシマレーザ又はYAGレーザの高調波を用い、図3に示す装置を用い、ターゲットのレーザアブレーションを行うことにより、マンガン酸化物ナノ構造体を作製する。反応室301は、ターボ分子ポンプを主体とする超高真空排気系302により到達真空1.0×10−6Paまで排気した後、マスフローコントローラ303を経由して、ガス導入ライン304より、HeとOの混合ガス(質量流量比9:1)の導入を行う。ここで、スクロールポンプもしくはヘリカル溝ポンプを主体としたガス排気系305の動作と連動することにより、反応室301内のガス圧力を、13.33〜1333Pa程度の範囲の一定圧力値に設定する。
【0066】
この状態で、自転機構を有するターゲットホルダー306に配置された、純度:99.9%の三酸化二マンガン(Mn)多結晶焼結体ターゲット307の表面に対して、パルスレーザ光源308からレーザ光を照射する。ここでは、アルゴン弗素(ArF)エキシマレーザ(波長:193nm、パルス幅:12ns、パルスエネルギー:50mJ、エネルギー密度:1J/cm、繰返し周波数:10Hz)を用いた。このとき、Mnターゲット107表面では、レーザアブレーション現象が発生し、Mn,O,MnO,Mn等のイオンあるいは中性粒子(原子、分子、クラスター)が脱離し、当初はイオンで50eV、中性粒子で5eVのオーダーの運動エネルギーを有し、主にターゲット法線方向に分子、クラスターレベルの大きさを維持して、射出して行く。そして、脱離物質は、雰囲気希ガス原子と衝突することにより、飛行方向が乱雑になるとともに、運動エネルギーが雰囲気に散逸され、約35mm離れて対向した基板309上に薄膜あるいはナノ構造体として堆積される。なお、基板、ターゲット温度とも積極的な制御は行っていない。
【0067】
なお、ここではマンガン酸化物を堆積する際の雰囲気ガスとしてHeとOの混合ガスを用いているが、Heガスの代わりにAr,Kr,Xe等の他の希ガスを用いても良く、またOガスの代わりにO,NO,NO等の他の酸化性ガスを用いても良い。この場合、雰囲気ガスの平均気体密度がHeとOの混合ガスの場合と同等になるように圧力を設定すれば良い。
【0068】
上記の方法により雰囲気ガスであるHe/O混合ガスの圧力を667Paとして堆積したマンガン酸化物について、微細構造及び価数の評価を行った。なお、価数の評価は、X線吸収微細構造分析を用い、粉末材料(純度:99.9%以上)と比較することにより行った。
【0069】
堆積されたマンガン酸化物は、図4に示すように、最小構成単位が数nmの一次粒子が数百nmの二次粒子として凝集したナノ構造体を形成していることが確認された。なお、図4に示したようなマンガン酸化物ナノ構造体はX線球種微細構造分析により、主として二酸化マンガンから構成されていることが確認された。
【0070】
以上の結果は、本実施の形態に係る遷移金属化合物からなるナノ構造体の作製方法によるマンガン酸化物ナノ構造体作製において、反応室内の圧力を制御するとともに、その雰囲気に含まれるOガスにより、遷移金属であるマンガンの価数を増加させることができたことを示している。換言すれば、レーザ照射によりターゲット307から射出した物質(主に原子・イオン・クラスター)が、不活性ガスとの物理的相互作用(衝突、散乱、閉じ込め効果)と酸素ガスとの化学的相互作用(酸化反応)を介して基板に到達し、ターゲット307の材料が有する遷移金属価数よりも高い価数を有するマンガン酸化物ナノ構造体が作製できたことを示している。さらに、雰囲気ガス中のO分子は、エキシマレーザにより分解されて活性なO原子あるいはイオンとなり、ターゲットからの射出物質の酸化が促進されていると考えられる。
【0071】
なお、ターゲット307の材料は三酸化二マンガン多結晶焼結体に限定されるわけではなく、四酸化三マンガン等の価数の異なるものを用いても良いし、単結晶ターゲットを用いても良い。
【実施例】
【0072】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
【0073】
(実施例1)
マンガン酸化物ナノ構造体を触媒材料とする試験電極(酸素還元電極)を作製し、その酸素還元特性を調べた。
【0074】
上記マンガン酸化物ナノ構造体としては、図1に示すように、主として四酸化三マンガンの一次粒子が凝集した二次粒子からなるマンガン酸化物ナノ構造体を用いた。以下、その製造方法を説明する。
【0075】
まず、実施の形態1に示す方法により、図5(b)に示すような直径3mm×高さ3mmのグラッシーカーボン501の上面(円)の中心部に直径2mm・厚さ約100nmの四酸化三マンガンナノ構造体(参照符号:503)をマスクを介して直接堆積(担持)した。次に、銅製のロッド502に撥水性熱収縮チューブを用いて四酸化三マンガンナノ構造体503が坦持されたグラッシーカーボン501を固定し、図5(a)に示すような試験電極を得た。
【0076】
上記の方法で作製した試験電極を用い、三極セルによるサイクリックボルタンメトリー法により酸素還元触媒能の評価を行った。三極セルによるサイクリックボルタンメトリー法は、図9に示すような公知の装置を利用して実施した。
【0077】
試験は、試験電極を作用極とし0.1mol/Lの水酸化カリウム水溶液 (pH13)中に酸素を飽和溶存させ、酸素雰囲気下で実施した。この場合において、対極として白金線、参照極として銀/塩化銀電極をそれぞれ用いた。
【0078】
図6には、上記試験電極のサイクリックボルタモグラムを実線で示す。なお、図6中には、四酸化三マンガンナノ構造体を坦持していないグラッシーカーボンのみの比較電極の結果を破線で示す。
【0079】
両者と比較すると、実線で示した四酸化三マンガンナノ構造体を坦持した試験電極では同電位において電流量が全体的に増加している上、比較電極には認められない−0.1V付近に酸素還元電位のピーク(図6の矢印を参照)が観測された。すなわち、試験電極において、背景技術の欄で述べた還元電位と比較して約0.2V小さい過電圧で酸素還元性能が認められた。
【0080】
上記の結果は、触媒としてのマンガン酸化物を本発明による一次粒子が凝集した二次粒子からなる構造を有する四酸化三マンガンナノ構造体としたために、約100nmという非常に薄い触媒層にもかかわらず、新たな酸素還元触媒能を発現したものと考えられる。
【0081】
(実施例2)
マンガン酸化物ナノ構造体を触媒材料とする試験電極(酸素還元電極)を作製し、その酸素還元特性を調べた。
【0082】
上記マンガン酸化物ナノ構造体としては、図1に示すように、主として四酸化三マンガンの一次粒子が凝集した二次粒子からなるマンガン酸化物ナノ構造体を用いた。以下、その製造方法を説明する。
【0083】
まず、実施の形態1で説明した方法により、図7(b)に示すように、直径3mm×高さ3mmの金ロッド701の上面(円)の中心部に直径2mm・厚さ約100nmの四酸化三マンガンナノ構造体(参照符号:503)をマスクを介して直接堆積(担持)した。次に、銅製のロッド502に撥水性熱収縮チューブを用いて四酸化三マンガンナノ構造体503が坦持された金ロッド701を固定し、図7(a)に示すような試験電極を得た。
【0084】
上記の方法で作製した試験電極を用いて、三極セルによるサイクリックボルタンメトリー法により酸素還元触媒能の評価を行った。三極セルによるサイクリックボルタンメトリー法は、図9に示すような公知の装置を利用して実施した。試験は、試験電極を作用極とし0.1mol/Lの水酸化カリウム水溶液中(pH13)に酸素を飽和溶存させ、酸素雰囲気下で実施した。この場合において、対極として白金線、参照極として銀/塩化銀電極をそれぞれ用いた。
【0085】
図8には、上記試験電極のサイクリックボルタモグラムを実線で示す。なお、図8中には、四酸化三マンガンナノ構造体を坦持していない金ロッドのみの比較電極の結果を破線で示す。両者を比較すると、実線で示した四酸化三マンガンナノ構造体を坦持した試験電極では電流量が全体的に増加している上、比較電極に認められない+0.1V付近と−0.1V付近に酸素還元電位が観測された。すなわち、背景技術の欄で述べた還元電位と比較してそれぞれ約0.4Vと約0.2V小さい過電圧で酸素還元が生じた。
【0086】
上記の結果は、触媒としてのマンガン酸化物を本発明による一次粒子が凝集した二次粒子からなる構造を有する四酸化三マンガンナノ構造体としたために、約100nmという非常に薄い触媒層にもかかわらず、新たな酸素還元触媒能を発現したものと考えられる。
【0087】
(比較例1)
四酸化三マンガンナノ構造体を基板上に堆積する工程(実施の形態1)に際し、ターゲット板と基板とを互いにほぼ垂直になるようにそれぞれを配置した(Off Axis)ほかは、実施例1と同様にして試験電極を作製した。得られた試験電極について、実施例1と同様にしてサイクリックボルタモグラムを求めた結果、0.4V付近に酸素還元電位が観測された。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明にかかるマンガン酸化物ナノ構造体は、優れた酸素還元触媒活性を有し、空気亜鉛電池、燃料電池等の酸素極に用いられる触媒材料として有用である。また、高価な白金触媒材料に代わる安価な還元触媒等の用途にも応用でき、大幅なコストの低減も可能である。
【発明の効果】
【0089】
本発明の製造方法では、いわゆるOn Axis でレーザアブレーションすることによりマンガン酸化物を作製するので、一次粒子が凝集した二次粒子からなる特異な構造のマンガン酸化物ナノ構造体を製造することができる。
【0090】
また、本発明の製造方法によれば、レーザ光の照射によりターゲット材から射出した物質(主に原子・イオン・クラスター)と雰囲気ガスとの相互作用(衝突、散乱、閉じ込め効果)の最適化によりマンガン酸化物に含まれるマンガンの価数及びナノメートルサイズの微細構造を制御することもできる。
【0091】
本発明の電極では、上記のような特異な構造を有するマンガン酸化物ナノ構造体を電極材料(触媒材料)として用いることにより、優れた酸素還元特性(触媒活性)を得ることができる。

Claims (29)

  1. マンガン酸化物の一次粒子が凝集した二次粒子からなり、かつ、酸素還元触媒能を有するマンガン酸化物ナノ構造体を製造する方法であって、
    マンガン酸化物からなるターゲット板にレーザ光を照射することによって、ターゲット板の構成物質を脱離させ、前記ターゲット板にほぼ平行に対向する基板上にその脱離した物質を堆積させる工程を有する製造方法。
  2. 前記マンガン酸化物ナノ構造体を作用極とし、白金を対極とし、銀/塩化銀を参照極とし、かつ、濃度0.1mol/L及びpH13の水酸化カリウム水溶液を電解液とする三極セルを用いたサイクリックボルタンメトリー法によるサイクリックボルタモグラムにおいて、−0.1V付近に酸素還元電位を示す、請求項1に記載の製造方法。
  3. 不活性ガスを雰囲気ガスとして用いる、請求項1に記載の製造方法。
  4. 不活性ガス及び反応性ガスとの混合ガスを雰囲気ガスとして用いる、請求項1に記載の製造方法。
  5. 反応性ガスの割合が質量流量比で0.1%以上50%以下である、請求項4に記載の製造方法。
  6. 反応性ガスが、酸化性ガスである、請求項4に記載の製造方法。
  7. 酸化性ガスが、酸素ガスを含むガスである、請求項6に記載の製造方法。
  8. 雰囲気ガスにエネルギーを与えることにより活性化する、請求項3に記載の製造方法。
  9. 雰囲気ガスにエネルギーを与えることにより活性化する、請求項4に記載の製造方法。
  10. 雰囲気ガスの圧力が、13.33Pa以上1333Pa以下の範囲である、請求項3に記載の製造方法。
  11. 雰囲気ガスの圧力が、13.33Pa以上1333Pa以下の範囲である、請求項4に記載の製造方法。
  12. レーザ光が、パルス幅5ns以上20ns以下のパルスレーザ光である、請求項1に記載の製造方法。
  13. レーザ光が、ハロゲンガス及び希ガスをレーザ媒体とするエキシマレーザである、請求項1に記載の製造方法。
  14. レーザ光のエネルギー密度が0.5J/cm以上2J/cm以下である、請求項1に記載の製造方法。
  15. ターゲット板が、レーザー光の波長域で吸収する材料である、請求項1に記載の製造方法。
  16. ターゲット板が、マンガン酸化物の焼結体である、請求項1に記載の製造方法。
  17. 得られたマンガン酸化物ナノ構造体をさらに加熱する工程を有する、請求項1に記載の製造方法。
  18. 前記雰囲気ガスの圧力を変化させる、請求項3又は4に記載の製造方法。
  19. 前記工程に先立って、予め前記ターゲット板及び基板を互いに平行に対向するように反応系内に設置する工程を有する、請求項1に記載の製造方法。
  20. 前記ターゲット板にビーム光を照射することによって前記ターゲット板近傍に形成される高温高圧領域のサイズを制御するために、1)雰囲気ガスの圧力及び2)前記ターゲット板と基板との距離の少なくとも一方を調整する工程を含む、請求項1に記載の製造方法。
  21. 一次粒子が凝集した二次粒子からなるマンガン酸化物ナノ構造体を含む酸素還元電極であって、
    前記電極を作用極とし、白金を対極とし、銀/塩化銀を参照極とし、かつ、濃度0.1mol/L及びpH13の水酸化カリウム水溶液を電解液とする三極セルを用いたサイクリックボルタンメトリー法によるサイクリックボルタモグラムにおいて、−0.1V付近に酸素還元電位を示す、酸素還元電極。
  22. 前記一次粒子の平均粒径が1nm以上50nm以下である、請求項21に記載の酸素還元電極。
  23. 前記二次粒子の平均粒径が100nm以上1μm以下である、請求項21に記載の酸素還元電極。
  24. 前記一次粒子の平均粒径が1nm以上50nm以下であり、かつ、前記二次粒子の平均粒径が100nm以上1μm以下である、請求項21に記載の酸素還元電極。
  25. 前記マンガン酸化物が、一酸化マンガン、四酸化三マンガン、三酸化二マンガン及び二酸化マンガンの少なくとも1種である、請求項21に記載の酸素還元電極。
  26. 前記サイクリックボルタモグラムにおいて、−0.2V以上0V以下の範囲内に酸素還元電位を示す、請求項21に記載の酸素還元電極。
  27. 前記マンガン酸化物ナノ構造体が、厚み500nm以下の層状である、請求項21に記載の酸素還元電極。
  28. 前記マンガン酸化物ナノ構造体が、導電性基材上に形成されている、請求項21に記載の酸素還元電極。
  29. 前記マンガン酸化物ナノ構造体が、マンガン酸化物からなるターゲット板にレーザ光を照射することによって、ターゲット板の構成物質を脱離させ、前記ターゲット板にほぼ平行に対向する基板上にその脱離した物質を堆積させる工程を有する製造方法により得られるものである、請求項21に記載の酸素還元電極。
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