JP5620676B2 - 燃料電池及び他の用途のための樹枝状金属ナノ構造体 - Google Patents

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Description

(政府権益の声明)
米国政府は本発明に対してある一定の権利を有する。
(関連出願の参照)
本出願は、2006年3月31日出願の米国仮出願第60/788,003号、及び2006年11月29日出願の米国特許出願第11/564,510号に対して優先権を主張するものであり、これら両出願の内容全体は、参照として本明細書に援用されるものとする。
本発明は、触媒、特に、燃料電池、特に高分子電解質膜(PEM)燃料電池のための白金又は白金ベースの金属材料を含む触媒に関する。
燃料電池は、携帯電子機器、定置型電源、及び自動車用の用途における次世代のエネルギー変換技術として、近年注目を集めている。いくつかのタイプの燃料電池が研究中であり、作動温度及び電解質によって、固体電解質型燃料電池、溶融炭酸塩燃料電池、リン酸燃料電池、アルカリ燃料電池、及び高分子電解質膜(PEM)燃料電池等に分類される。また、高分子電解質膜なる用語の代わりに、プロトン交換膜なる用語が使用されることもあり、水素ベースの燃料を使用する燃料電池の場合には互換性をもって使用されることが多い。
PEM燃料電池は、他のタイプと比べ、柔軟な作動条件、急速な電源出力可変能力、相対的な耐久性、並びにシステムの単純さ等の点から自動車用電源の最有力候補と目されている。しかしながら、現状の技術を商業化するためには越えなければならないハードルもいくつか存在する。主要なハードルの1つはPEM燃料電池の触媒であり、触媒は燃料電池の性能とコストの両方に影響を及ぼす。
典型的な高分子電解質膜(PEM)燃料電池(FC)では、アノード(負極)とカソード(正極)との2つ電極間にPEMが挟まれている。燃料電池においては、アノードに水素ガス等の燃料が供給され、そこで水素が水素イオン(プロトン)と電子に変換される。また、カソードには酸素が供給され、そこで酸素、PEMを通じて輸送された水素イオン、及び外部回路を通じて供給された電子が結合して水が形成される。触媒は、これらの電極反応を促進するために使用され、燃料電池において使用される場合にはより具体的に電極触媒と呼ばれる場合がある。
より優れた燃料電池性能を実現するために、白金等の触媒は、通常、電子伝導性材料(例えば、電子を伝導するカーボンブラック(又は他の黒鉛状炭素)等)、及びプロトンを伝導するプロトン伝導体(PEM)と接している。典型的な触媒は、白金黒粒子によって炭素担体上に形成される。
多量の白金を必要とすることは、コストへの大きな負担となる。そのため、燃料電池に使用される白金の量を減らすことができれば、この技術の商業化に大いに役立つはずである。さらに、所望の燃料電池の作動条件下における触媒活性及び触媒の耐久性の改良も、PEM燃料電池の商業化を促進することにつながるであろう。燃料電池としての条件下における白金の安定化を目的とする研究の大部分は、白金とコバルト等の半金属又は非貴金属との合金化に集中しているが、他のアプローチも必要とされている。
本発明は、高分子電解質膜燃料電池(PEM−FC)における使用のためのデンドリマーを含む触媒、特に、例として金属デンドリマー(例えば、白金又は他の白金含有金属ナノ構造体)を含む触媒に関する。
本発明による触媒は、樹枝状ナノ構造体、例えば金属ナノシート及び金属ナノ粒子等を含む。ナノ構造体は、白金、白金合金(例えば、白金−コバルト合金等)、パラジウム、他の遷移金属等を含有してもよい。金属前駆体化合物の混合物を使用することにより、白金−コバルト合金ナノ構造体等の合金ナノ構造体を形成することができる。
触媒は、マトリックス、還元剤、並びに還元剤によって触媒材料に還元される前駆体化合物を含む混合物(例えば、流動媒体)中において調製することができる。この前駆体化合物は白金錯体等の金属錯体であってもよい。この前駆体を還元することにより、触媒物質のナノ構造体(例えば、樹枝状晶)が得られる。また、この混合物は、場合により光触媒を含んでもよく、ナノ粒子の形成を通じてナノ構造体の種晶を形成するために、光、熱、又はレーザー放射等のエネルギー源を使用してもよい。
白金もしくは白金含有の樹枝状ナノシート又はナノ粒子等の樹枝状ナノ構造体は、界面活性剤又は他のミセル形成化合物を含む流動媒体内で形成することができる。本明細書で使用される場合、「ミセル構造」なる用語は、ミセル、小胞、リポソーム等を含むとして、一般的に使用される。「小胞」なる用語は、二重層又は多重ラメラ小胞であろうリポソームを包含する。
「樹枝状ナノ構造体」なる用語は、本明細書に記載のような方法によって調製された金属デンドリマー(例えば、樹枝状ナノ粒子及びナノシート)、及び分岐した枝部分を有する他のナノ構造体(他の方法で調整されてもよい)を包含する。
流動媒体内にミセル構造体を含む場合、マトリックスによって金属ナノ構造体の樹枝状の成長が促進される。そのような樹枝状ナノ構造体は、従来の白金黒触媒と比べ、PEM燃料電池における触媒としての用途において非常に優れていることがわかっている。
ナノ構造体は、流動媒体中で調製される際に、マトリックスの影響により方向性を持って成長し得る。還元剤は、例えば、光触媒による補助の有無によらず、金属カチオンの金属ナノ構造体への還元を引き起こし得る。
光触媒、又は樹枝状の成長部位としての役割を果たす種晶は、マトリックスに相対して十分に分散してもよく、それによって、特に従来手法と比較して、金属ナノ構造体の良好な成長が可能になる。例えば、流動媒体内の十分に分散された多量の光触媒によって誘発された種晶(又は他の方法で導入された種晶)の存在により、粒径及びナノ構造の均一性が向上する。例えばマトリックス又は光触媒等の任意の所望されない有機化合物は、PEM燃料電池の触媒として使用する前にナノ構造体から分離することが可能である。
マトリックスは、有機化合物、高分子、有機金属化合物、金属構造体(例えば、シート、メッシュ、ナノ粒子等)、又は他の材料を含有してもよい。マトリックスは、ナノ構造体を成長させるための表面を提供し、ナノ構造体を所望する構造又はサイズに成長させるための特定の役割を果たし得る。例えば、ナノ構造を成長させるために使用されるマトリックスは、流動媒体内にミセル構造体(例えば、小胞又はリポソーム等)を含んでもよい。ナノ構造体は、例えば、ラメラ構造と水媒体との間の界面のような流動媒体の異なる成分間の界面において、又は任意の2つの流動媒体間の界面において、形成され得る。例えば、略円板形状のナノ構造シートは、多重ラメラリポソームを含む流動媒体中において成長し、このナノ構造の成長は、明らかにそのリポソームを鋳型としている。また、略球状のナノ構造体は、単ラメラリポソームを含む流動媒体において成長する。
デンドリマー触媒に使用されるデンドリマー材料としては、白金金属のような白金含有金属、白金合金(例えば、白金−コバルト合金)、他の遷移金属及びその合金、及び他の触媒材料が挙げられる。水素燃料電池における触媒用途のためのデンドリマー材料の好適な例は、白金金属である。
デンドリマーは、一般的に、例えば1〜10nmの範囲の円板厚を有するような円板形状ナノシートとして形成してもよい。円板直径は、1〜1000nmの範囲、より詳細には1〜500nmの範囲であってもよい。また、デンドリマーは、一般的に、本明細書においてナノ粒子と呼ばれる球体であってもよく、形状は、直径が1〜1000nmの範囲、詳細には1〜500nmの範囲、より詳細には5〜100nmの範囲の略球体であればよい。このような範囲は、上限及び下限を含み、かつ両限界値は近似値である。略球状の粒子において、その直径は粒子の中心を通る任意の測定値であり得る。また、金属デンドリマーの少なくとも一部は単結晶構造を有してもよい。いくつかの実施形態において、直径又は他のサイズの測定値はサイズの中央値又は分布である。
本発明の実施例において、マトリックスは、1,2−ジオクタデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC、99%)の小胞を含有してもよく、また、他の界面活性剤、脂質、あるいは他の化合物を用いてもよい。光触媒は、金属ポルフィリンのような有機金属化合物であってもよい。光触媒の例としては、Sn(IV)オクトエチルポルフィリンジクロライドが挙げられるが、これに限定されるものではない。還元剤(電子供与体)は、例えば、アスコルビン酸(同様に、アスコルビン酸ナトリウム等の任意のアスコルビン酸塩)、又はヒドロキノリンであってもよい。本発明は、これらの例に限定されず、他のマトリックス材料として任意の光触媒及び/又は還元剤を使用してもよい。
光触媒は、小胞を含む混合流体によって分散させてもよく、光触媒被覆材料は還元剤及び金属化合物と混合して混合物とされる。光触媒は、光触媒及びマトリックス材料を共通の溶媒に溶解(又は懸濁)させ、次いで(場合により)その溶媒を蒸発させて除去することによって、固体マトリックス材料の表面上に分散させてもよい。
触媒を作製する方法は、光触媒、還元剤、金属化合物、及びマトリックスを含む混合物を提供する工程、及び金属化合物の還元によって金属ナノ粒子を形成するためにその混合物に光を照射する工程を包含する。そして、この金属ナノ粒子は、残存する金属化合物の還元によってナノ構造体が樹枝状に成長するための種晶としての役割を果たす。マトリックスは、例えば、ミセル構造体を含む流動媒体等、樹枝状の成長を促進するように選択してもよい。
ナノ構造触媒を調製するための他の方法の例は、金属化合物の還元によって第1のマトリックス上で金属ナノ粒子を形成するために、還元剤、金属化合物、及び第1のマトリックス材料を含む混合物を提供する工程を包含する。この混合物は、少なくとも1種の金属化合物(例えば白金化合物、コバルト化合物、又はそれらの混合物等)を含む。白金合金粒子(例えば、コバルト−白金合金粒子)等の合金粒子を形成するために、金属化合物の混合物を使用してもよい。金属ナノ粒子は、100nm未満、例えば1〜10nmの間の中央値粒径を有し得る。金属ナノ粒子は、第1のマトリックス材料上に形成されてもよく、それはカーボン粒子等のような電子を伝導する材料であってもよい。次いで、例えば第2の流動媒体、電解質、又は他の方法を使用した樹枝状の成長を使用し、種晶としてナノ粒子を使用し、可能であれば第1のマトリックス材料上に担持させて、樹枝状ナノ構造体を成長させてもよい。
本発明による触媒としては、白金含有デンドリマー(例えば、白金−コバルト合金等の白金合金デンドリマー)が挙げられる。例えば、他の遷移金属との合金化によって、必要とされる量の白金の還元が可能になる。
どのような方法においても、マトリックス材料及び他の所望されない化合物は、触媒として使用される前に除去することができる。また、光放射としては、可視光及び/又はUV光、並びにレーザー光、例えば、二重タングステン光等への曝露が挙げられる。
本発明は、触媒、特に金属デンドリマーを含む触媒の調製及び使用に関する。触媒材料としては、白金、他の白金含有材料(白金−コバルト合金のような白金合金等)、パラジウム、他の遷移金属及びそれらの合金等が挙げられる。触媒材料は、合金ナノ構造体の形成を可能にするような1種以上の金属前駆体の還元によって調製してもよい。
本発明による触媒は、ナノシート及びナノ粒子を含むような樹枝状ナノ構造体を含む。この触媒は、より小さい樹枝状ナノ構造体の部分溶融によって形成される構造体を含んでもよい。
触媒は、マトリックス、還元剤、及び還元剤によって触媒材料へと還元される前駆体化合物を含む混合物(例えば、流動媒体等)中において調製することができる。前駆体化合物は白金錯体等の金属複合体であってもよい。前駆体の還元によって触媒材料のナノ構造体(例えば、樹枝状ナノ構造体)が形成され得る。ナノスケールの樹枝状構造は複数のナノスケールの分岐した突起(すなわち、枝部分)を有する。また、調製混合物は、場合により光触媒を含んでもよく、また、エネルギー源(例えば、光、熱、又はレーザー放射等)を使用して最初にナノ粒子を形成しそれを通じてナノ構造体の種晶を形成してもよい。
光触媒は小胞を含む混合流体によって分散させてもよく、光触媒被覆材料は還元剤及び金属化合物と混合される。光触媒は、光触媒及びマトリックスを共通の溶媒に溶解(又は懸濁)させ、次いで(場合により)その溶媒を蒸発させ除去することによって、マトリックス上に分散させてもよい。
触媒材料のナノ構造体は、化合物を形成するミセル構造を含有する流動媒体(例えば、マトリックスとして小胞を含有する流体等)内で形成してもよい。ミセル構造体としては、ミセル、小胞、及び/又はリポソームが挙げられる。小胞は、単層、二重層、又は多重ラメラ小胞であってもよく、後者の構造体はリポソームと呼ばれる場合もある。ナノ構造体は、流動媒体中で調製される際にマトリックスの影響により方向性を持って成長し得る。流動媒体内の十分に分散された多量の光触媒によって誘発された種晶(又は他の方法で導入された種晶)の存在により、粒径及びナノ構造の均一性が向上する。また、例えばマトリックス又は光触媒等の任意の所望されない有機化合物は、PEM燃料電池の触媒として使用する前にナノ構造体から分離することが可能である。
マトリックスは、有機化合物、高分子、有機金属化合物、金属構造体(例えば、シート、メッシュ、ナノ粒子等)、他の材料、又はそれらの組み合わせを含有してもよい。このマトリックスは、流動媒体中に有機化合物又は高分子のミセル構造体(例えば、ミセル、小胞、リポソーム等)を含有してもよい。また、マトリックスはナノ構造体を成長させるための表面を提供し得る。それは、2つの流体の間の界面、又はミセル構造の壁であってもよく、デンドリマー形成を引き起こし得るものである。ナノ構造体は、例えばラメラ構造とそれを囲む水溶性媒体との間の界面のような流動媒体の異なる成分の間の界面、又は任意の2つの流動媒体の間の界面近傍で形成してもよい。
本発明の実施例において、マトリックスは、1,2−ジオクタデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC、99%)の小胞を含有してもよく、また、他の界面活性剤、脂質、又は他の化合物を用いてもよい。光触媒は金属ポルフィリンのような有機金属化合物であってもよい。金属触媒の例としては、Sn(IV)オクトエチルポルフィリンジクロライドが挙げられるが、これに限定されるものではない。還元剤(電子供与体)は、例えば、アスコルビン酸(同様に、アスコルビン酸ナトリウム等の任意のアスコルビン酸塩)、又はヒドロキノリンであってもよい。本発明は、これらの例に限定されるものではなく、別のマトリックスとして、光触媒、及び/又は還元剤を使用してもよい。
略円板形状のナノ構造シートは、多重ラメラリポソームを含む流動媒体中において成長し、そのナノ構造の成長は明らかにリポソームを鋳型としている。また、略球状のナノ構造体は単ラメラリポソームを含む流動媒体において成長する。
触媒を作製する方法は、光触媒、還元剤、金属化合物、マトリックスを含む混合物を提供する工程、及び金属化合物の還元によって金属ナノ粒子を形成するためにその混合物に光を照射する工程を包む。そして、この金属ナノ粒子は、残存する金属化合物の還元によってナノ構造体が樹枝状に成長するための種晶としての役割を果たす。マトリックスは、例えば、ミセル構造体を含む流動媒体等の樹枝状の成長を促進するように選択してもよい。
ナノ構造を有する触媒を調製するための他の方法の例は、金属化合物の還元によってマトリックス上で金属ナノ粒子を形成するために、還元剤、金属化合物、及びマトリックスを含む混合物を提供する工程を包む。この調製混合物は少なくとも1種の金属化合物(例えば、白金化合物、コバルト化合物、パラジウム化合物、他の遷移金属化合物、又はそれらの組み合わせ等)を含む。白金合金粒子等の合金粒子を形成するために金属化合物の混合物を用いてもよい。この触媒は、樹枝状ナノ構造体、ナノ粒子、又は他の粒子等の金属粒子を含んでもよいし、又はそれらから形成されてもよい。使用されるマトリックスは、多成分系であってもよく、並びに黒鉛状炭素のような電子伝導性材料を含んでもよい。
いくつかの実施例において、触媒材料の樹枝状構造体は、粒子上、あるいは触媒材料又は他の材料(例えば、他の金属等)の他の構造体上において成長させてもよい。例えば、小胞のマトリックスを使用して、ナノ粒子の種晶上で樹枝状ナノ構造体を成長させてもよい。デンドリマーを成長させる他の方法(例えば、電気分解、あるいは金属の徐冷及び又は結晶化等)を使用してもよい。樹枝状構造体は支持材料として使用される電子電導性材料上に成長させてもよい。
本発明による触媒としては、白金含有デンドリマー(例えば、白金−コバルト合金等の白金合金デンドリマー)が挙げられる。例えば、他の遷移金属との合金化によって、必要とされる量の白金を還元し得る。
どのような方法においても、マトリックス材料及び他の所望されない化合物は触媒として使用される前に除去することができる。光放射としては、可視光及び/又はUV光、レーザー光、二重タングステン光等への曝露が挙げられる。
本発明の実施形態は、化学的及び/又は光触媒還元による還元を伴う方法によって合成された白金及び白金ベースの金属材料の触媒用途を包含する。
白金の物理的形態の操作によって白金触媒の活性及び耐久性が改善された。従来の白金触媒は、カーボン等の導電性基板上に担持されているかどうかに関わらず、通常、2〜10nmナノ粒子の形態である。これらの粒子は、熱力学的に不安定であり、溶解、シンタリング(半融)、凝集する傾向にある。高表面積、高安定性、及び高活性を有し、燃料電池条件下において溶解及び構造再編成する傾向のない成長した白金ナノ構造体を作製するための手法を開発した。白金触媒の新規の形態では、燃料電池条件において優れた結果が得られた。
白金ナノシートは、略円形の平坦なシートとして単ラメラリポソーム及び多重層小胞上において成長させた。また、複雑に相互接続したシートの白金ナノ粒子も凝集したリポソームの表面に従って成長させた。実験結果は、白金樹枝状シートがPEM燃料電池条件下において従来の白金触媒よりも非常に高い触媒活性及び耐久性を有することを示した。
円形平面ナノシートを使用して調製された膜・電極接合体並びに泡状ナノ粒子から形成された膜・電極接合体の性能特性を測定し、電気活性表面積、燃料電池分極曲線性能、及び燃料電池条件下での耐久性について、市販されている白金黒と比較した。
ナノ構造の白金触媒の初期分極曲線性能は、白金黒よりわずかに低いが、燃料電池作動中の耐久性は市販されている材料よりかなり向上していた。0.5Vでの75時間の定電位寿命試験の間、白金黒の性能は47%低下したが、白金シートの性能低下は33%のみであった。より重要なことに、耐久性試験での白金泡状ナノ粒子の性能は同じ時間枠においてわずかに向上した。性能におけるこの違いは、触媒がエージングされ、それによって電気化学的な活性表面積が変化したためと考えられる。電子顕微鏡法及びX線回折スペクトル法により、耐久性の改善が白金ナノシート及び泡状ナノ粒子の新規の樹枝状構造に起因することを確認した。
参照として本明細書中に援用されるソン(Song)ほか,(J.Am.Chem.Soc.2004,126,635−645)は、白金ナノ構造体(例えば、厚さが2nm、枝部分幅が約3nm、及び枝部分間隔が1〜2nmの樹枝状シートで構成された樹枝状ナノ構造体)の調製方法について記載している。これらは本発明の実施形態において使用され得る。
本発明による燃料電池に使用するナノ構造体は、水溶性媒体等の流動媒体中において、金属化合物(例えば、金属塩)を還元して調製してもよい。流動媒体中に金属化合物と一緒に大きな単ラメラリポソームが含まれる場合、それによって樹枝状ナノ構造のシートが調製され得る。白金ナノ粒子(例えば、1〜5nmの直径範囲の粒子)により種晶を形成することで、より均一な直径のナノデンドライトが得られる。あるいは、例えば、金属ナノ粒子の光触媒形成によるin−situでの種晶形成を用いることも可能である。
実施例1:樹枝状白金ナノシート
多重ラメラリポソーム(小胞)は、DSPC(1,2−ジオクタデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン)(79mg)を100mLのアスコルビン酸溶液(150mM)に加え、超音波洗浄器FS14H(ペンシルバニア州、ピッツバーグ)を使用して2分間の軽度超音波処理に付すことより調製した。この手順により、DSPCの最終濃度は1mMとなる。小胞の平均直径は、Beckman Coulter N5サブミクロン粒径分析器を使用した動的光散乱法によって測定したところ、400nmであった。直径30〜500nmの円形樹枝状白金ナノシートを、鋳型としてアスコルビン酸溶液(150mM)中の多重ラメラDSPC小胞を使用して調製した。樹枝状ナノシートを調製するために、アスコルビン酸(150mM)中における多重ラメラDSPCリポソーム(1mM DSPC)の懸濁液100mLを、ガラス反応器中でエージングした白金錯体(20mM)100mLと混合した。この反応混合物を周辺条件下に少なくとも100分間放置して白金還元を確実に完了させてから、試料を採取して電子顕微鏡によって撮影した。
図1A〜1Bはそれぞれ樹枝状白金ナノシート及び市販の白金黒の一般的なTEM像を示している。この円形白金ナノシート(図1A)は、厚さが2nm、直径は最大500nmであった。通常、それらは小角結晶粒界によって分離された略同じ結晶学的配向のわずかの巨大ドメインのみを有する単結晶又は多結晶である。また、通常、原子フリンジにおける小さな曲がりもTEM像において幾分観察される。図1Bは5〜6nm粒子で構成された比較用の白金黒を示している。
実施例2:樹枝状白金ナノ粒子
単ラメラリポソームは押出し法で調製した。要するに、50mLのDSPC(1.0mM)及び1.0−mMコレステロール原液を、ガラス管中で混合し、真空下でクロロホルムを除去して、ガラス壁に脂質薄膜を形成させた。一晩乾燥した後、ナノピュア水100mLを加え、その混合物を水浴にて65℃で1時間加熱した。次いで、その試料をボルテックスして多重ラメラ小胞の形成を促進させた。最後に、この混合物を200nmの多孔性ポリカーボネートフィルターを通して押出し、この押出し工程を合計10回繰り返した。動的光散乱法によって測定した単ラメラリポソームの平均直径は140〜170nmであった。泡状白金ナノ粒子は、水中で調製した単ラメラリポソームの懸濁液100mLをガラス反応器に入れ、次いでエージングした白金錯体(20mM)100mL及び固体アスコルビン酸2.64gを加えて合成した。混合直後、濁しているリポソーム懸濁液が凝集する。アスコルビン酸を完全に溶解させるため、この反応混合物の入ったガラス反応器を旋回攪拌し、周辺環境下に少なくとも100分間放置してから、撮影するために試料を採取した。
図2A〜2Bは、MEAの調製に使用した樹枝状泡状白金ナノ粒子のHAADF−STEM像を示している。これらの顕著なナノ構造体は凝集した単ラメラリポソームを鋳型として白金樹枝状シートを成長させることにより合成した。すなわち、この白金樹枝状シートは使用したリポソームの球形に対応している。それらは、リポソーム内において種晶粒子を生成させることによって形成され、次いでこの粒子は、白金錯体が消耗するまでアスコルビン酸の酸化によりリポソームの二重層に従って等方的に成長する。
種晶形成は、ナノ粒子の添加、又はin−situでのナノ粒子の成長によって達成され得る。in−situで白金錯体を光触媒還元してナノ粒子を得るために、スズ(IV)ポルフィリンを使用してもよい。例えば白金の還元等によって種晶の数をポルフィリンのモル比まで増加させるか、あるいは光照射の時間を長くすると、生成されるナノ粒子の平均粒径は小さくなる。粒径を約5nm〜約100nmまで実験的に制御した。燃料電池の用途には約1nm〜約500nmの範囲の粒径が使用され得る。
また、ナノ粒子は、界面活性剤で形成したミセル水溶液中で金属化合物(例えば、白金錯体等)の還元により調製してもよい。使用され得る界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)及びポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(Brij−35)が挙げられるが、他の界面活性剤も使用してよい。また、アスコルビン酸以外の電子供与体(還元剤)も使用してよい。種晶を使用しない場合、ナノ粒子は、より広い範囲の粒径、例えば、5〜100nmの範囲の粒径を有するが、そのような材料も触媒として使用してよい。
実施例3:樹脂上白金なのシートのPEM燃料電池性能
樹枝状白金ナノシートは、反応混合物50mLのバッチ処理法により精製した。バッチは、最初に、IEC CENTRA(登録商標)MP4R Centrifuge(コロラド州、ゴールデン)を使用して3500rpmで少なくとも5分間遠心分離に付した。次いで、上澄みを除去し、黒い沈殿物に、ある特定の量の蒸留水を加え、それを30分間の軽度超音波処理によって再懸濁させた。遠心分離/再懸濁の手順をさらに5回繰り返して、可能な限り、界面活性剤、塩、及び他の不純物を除去した。得られた黒いスラリーは、75℃のオーブンで12時間乾燥した後、表面領域及び電極触媒の研究に使用した。
全ての燃料電池実験は、Fuel Cell Technologies(ニューメキシコ州、アルブケルク)の5cm2電池ハードウェア及び燃料電池試験ステーションを使用して行った。使用した流動場は、並行流アノード及びカソード型の単一流路サーペンタインであった。試験は電池温度80℃で実施した。ガスは、アノードに対してH2を標準200cm3/分、カソードに対しては80℃の露点で空気を標準500cm3/分の一定流量で供給した。アノード及びカソードの両方の出口圧力は20psigに維持した。MEAは、記載されたように、7mgPt/cm2又は2mgPt/cm2の充填量にて標準薄膜電極のNafion 112膜を使用して作製した。アノード及びカソードの両方の触媒層は同一であり、Nafion充填量は、各場合において10重量%であった。使用した市販の白金黒触媒は、HiSPEC 1000(Johnson−Matthey)であり、使用したガス拡散層は一体化微孔層(250μm)を備えたカーボンペーパーであった。全てのMEAは、この明細書に記載されたデータを記録する前に、上記の条件で少なくとも3.5時間0.5V定電位印可下でブレークイン処理を行った。
図3は、樹枝状白金ナノ粒子(曲線1)、ナノシート(曲線2)、及び白金黒(曲線3)を使用して、7mgPt/cm2の充填量にて作製したMEAの0.5Vの定電位による75時間の定電位耐久性試験中における電流密度の寿命曲線を示している。白金ナノ粒子を使用したMEAは、最初の8時間の電流密度は最も低いが、触媒は最も高い安定性を示している。白金ナノ粒子の初期の低い電流密度は、燃料電池条件下で前処理が必要なことを示唆している。一方、白金ナノシート(曲線2)は、寿命試験の開始時点において、白金黒で作製されたMEAよりわずかに低い電流密度を有している。さらに重要なことに、75時間の実験において、白金黒MEAの電流密度が43%減少しているのに対し(1.25A/cm2から0.71A/cm2へ)、白金ナノシートの減少は19%のみであった(1.2A/cm2から0.97A/cm2へ)。寿命試験の終了時には、白金ナノシートは白金黒MEAよりも高い電流密度を維持していた。ナノ構造体の性能は、耐久性のある白金燃料電池触媒を得るための方法として非常に有望な結果であった。換言すれば、この結果は、白金の触媒活性及び耐久性がその物理的形態を操作することによって改良され得るということを示唆している。
図4は、7mg/cm2の充填量の白金ナノシート及び白金黒で調製したMEAに対する75時間定電位試験の試験前と試験後における分極曲線を示している(白金ナノシート:0時間(◆)及び75時間(◇)、白金黒:0時間(▲)及び75時間(△))。75時間定電位試験での性能の変化は、試験の最初と最後の分極曲線において非常に顕著である。図4において、白金黒及び白金シートの分極曲線は、初期の0時間では略等しいが、75時間後では、白金黒の方が白金ナノシートよりも大きく低下している。各場合において、このような短期間の耐久性試験で劣化が生じる原因の1つは、支持されていない場合での触媒特性に起因する(触媒のカーボンブラック支持体がない)。
実施例4:樹枝状白金ナノ粒子のPEM燃料電池性能
白金試料に対する前処理と燃料電池実験の詳細は、実施例3での記載と同じである。図2のTEM像に示された樹枝状泡状白金ナノ粒子について、燃料電池触媒として調査した。
図5は、白金ナノ粒子及び白金黒を用いて作製されたMEAの0.5定電位での短期間耐久試験を示している。少ない白金の充填量(2mgPt/cm2)では、これらの新規白金ナノ粒子は0.5Vの75時間定電位試験において優れた安定性を示している。樹枝状白金ナノ粒子を用いて作製されたMEAの初期性能は、白金黒より低いが、白金のこれら2つの形態の75時間定電位試験の過程における低下ほど顕著ではなかった。白金ナノ粒子を使用した改良は従来の白金黒の使用より実に顕著であった。
実施例5:白金ナノ組織の調査
サイクリックボルタンメトリー(CV)データは、燃料電池試験ハードウェアにおいてPAR 273Aポテンシオスタットを使用して取得した。CV実験は、25℃において、アノードとカソードにそれぞれ相対湿度100%の水素と窒素を供給して実施した。アノードは動的水素参照電極(DHE)として機能し、カソードは作用電極として機能した。CV曲線を得るために、カソードの電位を50mV/秒にてDHEに対して0.1Vから1.0Vまで掃引した。CVの掃引を連続して3回行い、その3番目の曲線を分析に使用した。CV曲線は、白金のECAを決定するためにシュミット(Schmidt)ほか(J.Electrochem.Soc.1996,145,2354−2358)の手順に従って、統合した。
図6A〜6Bは、白金ナノシート(図6A)及び白金黒(図6B)の初期(0時間)及び最後(75時間)のサイクリックボルタモグラム(CV)を示している。実線の曲線は、0時間のCVを表し、破線は75時間後のCVを表している。図6bの白金ナノシートのCV曲線から、ECAが6.4m2Pt/gから4.1m2Pt/gへと低下していることが算出される。それに対し、白金黒のECAでは、図6bのCV曲線から、5.9m2Pt/gから3.4m2Pt/gへと低下していることが算出される。試験中の各試料のECAにおける低下の割合は、白金黒(41%)の方が白金ナノシート(36%)よりわずかに大きいだけであるが、75時間の試験の最後ではかなり違っており、そのことが、ナノシートで観察された高い電流密度の上昇を引き起こすはずである。したがって、ECAの変化は耐久性能と電子顕微鏡データの両方と一致している。
図7は、燃料電池試験前の、白金ナノシート(実線)及び白金黒(破線)に対するCVの特徴の比較を示している。白金シートは、白金黒触媒に比べ、「バルク状」の白金の特徴を示すことが明らかとなった。特に、DHEに対して0.4V未満での初期のCV曲線の特徴は白金ナノシートにおいてよりいっそう独特であり、このことは多結晶白金材料であることを示している。この興味深い特徴も白金ナノシートの安定性向上を部分的に説明し得るものであり、また、白金ナノシートが白金黒より優れた固有の電気触媒活性を有していることを示し得る。
図8は、2mgPt/cm2のMEAでの初期CV曲線(白金ナノ粒子の75時間エージングの前(灰色線)及びエージング後(短破線))、円形白金ナノシートのエージング前(長破線)、及びエージング前の白金黒(実線))を示している。MEA試験中における白金ナノ粒子のブレークイン及び初期性能は、白金ナノシート及び白金黒とは著しく異なっていることがわかった。白金ナノ粒子におけるECAの最初の測定では、実際には、DHE(灰色線)に対して0.4V未満において、分解された水素の吸蔵/放出の特徴は見られなかった。75時間の定電位試験後、CV(短破線)は予想された明確な白金の特徴を示しており、ECAはまだ非常に高く、9.0m2Pt/gであった。ECAのこの値は、他の2つのナノ材料(実線および長破線)のMEAよりさらに優れている。泡状白金ナノ粒子の非常に高いECAは、電極の三次元構造がこのナノ構造の白金触媒の利点を最大限に引き出すように最適化できるなら、格段に高い電流密度の電極を作製できる可能性のあることを示し得るものである。
高角度散乱暗視野(HAADF)走査TEM(200keV JEOL 2010F)を使用して、燃料電池試験後のMEAの断面を研究した。Electron Microscopy Sciences社(ペンシルバニア州、ハットフィールド)から入手したEpo−fix埋設樹脂A(1232−R)及びB(1232−H)を15:2の容積比で混合し、先端部が1×1mm面のポリエチレン円錐底カプセル(EMS社、ペンシルバニア州、ハットフィールド)に移した。ガス拡散層(GDL)用バッキングカーボンペーパーを有さない新鮮なMEA及びエージングしたMEAを小片に切断し、カプセルの樹脂混合物に加えた。そして、このカプセルをオーブンにて70℃で8時間硬化処理した。この間にMEA試料の小片は円錐の下部に沈み、樹脂が硬化した。プラスチック製カプセルを剥ぎ取り、MEA試料を含む硬化した樹脂チップを切り取って形を整えた。ダイヤモンド・ナイフ(Dupont社、ネバダ州、カーソンシティ)を備えた超ミクロトーム器具(MT XL、RMC Products社、アリゾナ州、ツーソン)を使用し、切断速度4mm/秒にてMEA試料の小片を含む固体樹脂を50nm厚にスライスした。撮影のため、このスライスした小片を標準の細孔性炭素被覆銅TEMグリッド上に集めた。
図9A〜9Dは、75時間燃料電池試験後のMEAの断面HAADF−STEM像を示しており、短期間耐久試験中に白金ナノシート及び白金黒がシンタリングしたことが確認できる。元は5〜6nmの粒子であった白金黒のほとんどが、粒径10〜30nmの範囲の大きな粒子へと成長している(図9C〜9D)。対照的に、樹枝状白金ナノシートで作製されたMEAは、シート状モルフォロジーを維持しているが(図9A)、シンタリングにより部分的に樹枝状晶の枝部分の間の空間にナノシートを貫通する多くの2〜5nmの細孔が形成されていた(図9B)。図9A及び9Cの暗い領域は、MEAの白金(明るい領域)に隣接した膜である。
これより、燃料電池用途のための改良型触媒は、貫通した複数の細孔を有する多孔質シートを含み、この細孔は約1nm〜10nmの範囲の孔径、さらに詳細には2nm〜5nmの範囲の孔径を有している。この多孔質シートは、多数の樹枝状ナノ構造体を含んでいてもよく、また、部分的に融着した(例えば、シンタリング)金属デンドリマーを含んでもよい。
図10A〜10Bは、白金ナノ粒子を使用して作製したMEAの低倍率及び高倍率での断面STEM像を示している。各画像の右側の暗い領域は膜であり、MEAに対する白金充填量は2mg/cm2であった。これらの画像は500時間のエージング期間の後に撮影したものである。図2の画像と比較して、白金ナノ粒子の肉眼的特徴は500時間の試験においても変化していないことが明らかである。しかしながら、依然として、白金ナノシートから作製されたMEAで観察された(図9B)のと同様に、デンドライトの枝部分の融着が幾分発生している可能性がある。
更なる調製の詳細:樹枝状白金ナノシート
テトラクロロ白金酸カリウム(K2PtCl4;99.99%)、L−アスコルビン酸(AA)(99+%)、1,2−ジオクタデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC、99%)、及びコレステロール(99+%)は、市販されている最も純度の高いものであり、Sigma−Aldrich社(ミズーリ州、セントルイス)から入手したまま使用した。全ての水溶液は、Barnstead Nanopure浄水システム(オハイオ州、チェスターランド)による超純水を使用して調製した。
白金(II)錯体(20mM)の原液は、K2PtCl4を水に溶かして調製し、使用前に少なくとも24時間エージングを行った。エージングにより、錯体の不均化が生じて、42%のPt(H2O)2Cl2と53%のPt(H2O)Cl3 -と5%のPtCl4との平衡混合物となる。アスコルビン酸原液(150mM)は、空気中で徐々に酸化するため各反応の前に新たに調製した。
多重ラメラリポソーム(小胞)は、DSPC(1,2−ジオクタデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン)(79mg)をアスコルビン酸溶液(150mM)100mLに加え、その混合物を室温にて超音波洗浄器FS14H(ペンシルバニア州、ピッツバーグ)を使用して軽度超音波処理を2分間施して調製した。この手順によるDSPCの最終濃度は1mMである。これによって得られる小胞の平均粒径は、Beckman Coulter N5サブミクロン粒径分析器を使用して動的光散乱法によって測定したところ、400nmであった。
直径30〜50nmの円形樹枝状白金ナノシートは、鋳型として、アスコルビン酸溶液(150mM)中で多重ラメラDSPC小胞を使用して調製した。樹枝状ナノシートを調製するために、ガラス反応容器中でアスコルビン酸(150mM)中における多重ラメラDSPCリポソーム(1mMDSPC)の懸濁液100mLをエージングした白金錯体(20mM)100mLと混合した。この反応混合物を、少なくとも100分間周辺条件下に放置し、確実に白金還元を完了させた後、電子顕微鏡による写真撮影のために試料を採取した。
更なる調製の詳細:樹枝状白金ナノ粒子
テトラクロロ白金酸カリウム(K2PtCl4;99.99%)、L−アスコルビン酸(AA)(99+%)、1,2−ジオクタデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC、99%)、及びコレステロール(99+%)は、市販されている最も純度の高いものであり、Sigma−Aldrich社(ミズーリ州、セントルイス)から入手したまま使用した。全ての水溶液は、Barnstead Nanopure浄水システム(オハイオ州、チェスターランド)による超純水を使用して調製した。
白金(II)錯体(20mM)の原液は、K2PtCl4を水に溶かして調製し、使用前に少なくとも24時間エージングを行った。エージングにより、錯体の不均化が生じて、42%のPt(H2O)2Cl2と53%のPt(H2O)Cl3 -と5%のPtCl4との平衡混合物となる。
アスコルビン酸原液(150mM)は、空気中で徐々に酸化するため、各反応の前に新たに調製した。単ラメラリポソームを調製するために、DSPC(1.0mM)50mL及び1.0−mMコレステロール原液をガラス管中で混合し、真空下でクロロホルムを除去して、ガラス壁に脂質薄膜を形成させた。一晩乾燥した後、ナノピュア水100mLを加え、その混合物を水浴にて65℃で1時間加熱した。次いで、その試料をボルテックスして多重ラメラ小胞の形成を促進した。最後に、この混合物を、200nmの多孔性ポリカーボネートフィルターを通して押出し、この押出し工程を合計10回繰り返した。動的光散乱法によって測定した単ラメラリポソームの平均直径は140〜170nmであった。
泡状白金ナノ粒子は、水中で調製した単ラメラリポソームの懸濁液100mLをガラス反応器に入れ、次いでエージングした白金錯体(20mM)100mL及び固体アスコルビン酸2.64gを加えて合成した。混合直後、濁しているリポソーム懸濁液が凝集するように見える。アスコルビン酸を完全に溶解させるため、この反応混合物の入ったガラス反応器を旋回攪拌し、周辺条件下に少なくとも100分間放置してから、撮影のために試料を採取した。
ナノ構造体は、1つ以上の金属を使用して作製してもよく、白金、白金合金(例えば、白金−コバルト、白金−ルテニウム、又は他の合金)、又は他の触媒材料(例えば、遷移金属又はその合金)を含んでもよい。
燃料電池への用途
水素燃料電池では、アノードにおいて水素がプロトンと電子に変換され、カソードではプロトン、電子、及び酸素から水が形成される。電極は、炭素ベースの材料(例えば、グラファイト等)等の電子導電性材料を含むが、その電子導電性材料上に触媒が担持されてもよい。例えば、触媒層は、電気伝導性シート(例えば、グラファイトシート、炭素布、又は同様のもの)の粗面と電解質との間に配置されてもよい。他の実施例において、電極は、電子伝導性材料及びプロトン伝導性材料の両方を含んでもよく、触媒は電子伝導性材料及びプロトン伝導性材料の両方の近傍にあることが好ましい。触媒は、アノードでは水素のプロトン及び電子への変換を促進し、カソードでは水の形成を促進する。アノード及びカソードに使用される触媒は、同一でもよく、各電極に対し、触媒デンドリマー(例えば、白金のデンドリマー又は白金合金のデンドリマー)を含んでもよい。しかしながら、本発明の実施形態は、様々な触媒(従って、樹枝状材料)をアノード及びカソードにおいて使用する燃料電池を包む。
PEM燃料電池のための膜・電極接合体(MEA)は、負極(アノード)、正極(カソード)、及びアノードとカソードとの間に設けられた高分子電解質膜(PEM)を有する。電極はそれぞれ、例えば、膜電解質の近傍の触媒層等に触媒を含む。電極は、バッキングとして、例えば、炭素布のような電気伝導性材料を含むガス拡散層を有してもよい(膜電極と反対側に)。各電極は、関連する集電体を有してもよい。
これにより、燃料電池のための改良された電極は白金等の触媒活性材料の樹枝状ナノ構造体を含む。
図11は、アノード10、PEM12、カソード14、及びアノードとPEMの間の界面に隣接して配置された触媒層16を有するMEA構成を示している。触媒層は金属樹枝状ナノ構造体を含む。あるいは、又はさらに、カソード−PEM界面の近傍の触媒層が金属樹枝状ナノ構造体を含む触媒層を包含してもよい。
これにより、本発明の実施例による燃料電池は、第1電極、第2電極、及び第1電極と第2電極の間に設けられた高分子電解質膜(PEM)を有し、第1電極は電子伝導性材料及び触媒を含み、この触媒は、例えば多分岐の枝部分を有する金属デンドリマー等の樹枝状構造体を含む。
デンドリマーは、燃料電池の作動中の触媒活性のために選択されたデンドリマー材料を含む。水素燃料電池における触媒活性には、アノードにおいて水素をプロトン及び電子へ解離させること、又はカソードにおいて酸素、プロトン、及び電子から水を生成することが含まれる。第1電極は、アノード又はカソードであってもよい。アノードとカソードの両方はデンドリマーを含んでもよく、この2つの電極におけるこのデンドリマー材料は同一でも異なっていてもよい。燃料電池又はMEAにおいて、一方(アノード又はカソード)又は両方(アノード又はカソード)の電極は本明細書に記載されたデンドリマーを含んでもよい。例えば、第1電極が第1のデンドリマー材料から形成されたデンドリマーを含み、かつ第2電極が第2のデンドリマー材料から形成されたデンドリマーを含んでもよい。第1と第2のデンドリマー材料は同一でも異なっていてもよい。このデンドリマーは流動媒体中において調製してもよく、デンドリマーの成長は、流動媒体内において小胞等の構造体を鋳型としている。また、当技術分野では周知であるように、燃料電池は燃料供給システムを備える。アノードへの供給される燃料は水素又は任意の他の水素含有材料(例えば、メタノール)であってもよい。カソードへ供給されるのは、酸素又は他の酸素含有ガス(例えば、空気)であってもよい。また、本発明による触媒は、固体電解質型燃料電池、溶融炭酸塩燃料電池、リン酸燃料電池、及び、プロトンではなくカチオンを使用する燃料電池(例えば、アルカリ燃料電池)等の他の電気化学装置に使用され得る。
樹枝状ナノ構造体は、1つ以上の金属を使用して調製してもよく、白金、白金合金(例えば、白金−コバルト、白金−ルテニウム、又は他の合金等)、あるいは遷移金属やその合金等のような他の触媒材料を含んでもよい。燃料電池のための電極の調製方法は、樹枝状ナノ構造体を調製する工程、及び樹枝状ナノ構造体を電子伝導性材料に分散させる工程を包む。
膜・電極接合体
本発明による膜・電極接合体(MEA)は、第1電極、第2電極、及び第1電極と第2電極の間に配置されたイオン伝導膜を有し、この第1電極は、膜・電極接合体の作動中において触媒作用を提供するデンドリマーを含む。
PEM水素燃料電池の膜としては、好ましくは低電子伝導性を有するプロトン伝導性高分子膜が挙げられる。NAFIONベースの膜等の多くのプロトン伝導性膜が当技術分野において公知であり、本発明の実施形態ではそれらを使用してもよい。また、本発明による燃料電池は、非PEM燃料電池(例えば、他の固体電解質燃料電池、及び液体電解質燃料電池)も包み得る。他の処理がなければ、触媒の安定性向上は他のタイプの燃料電池に適用可能である。
いくつかの実施例では、電子伝導性材料が触媒材料と同様のものであってもよい(例えば、金属シート又は金属メッシュ上に形成されたデンドリマー等)。
触媒の組成
デンドリマー触媒に使用された触媒材料は、白金含有金属(例えば、白金金属、白金合金(例えば、白金−コバルト合金、又は白金とSn、Fe、Co、Cr、Ni、Nb、V、Mo、Mn、Pd、Ru、Zr、Ir、Rh、及びVの1つ以上との合金)、他の遷移金属、及びそれらの合金等)、他の金属、及び他の触媒活性材料を含んでもよい。水素燃料電池のためのデンドリマー材料の好ましい例は、白金又は白金合金である。他の金属、例えばニッケル−コバルト合金等、を使用してもよい。触媒は、例えば合金として、Pt、Sn、Fe、Co、Cr、Ni、Nb、V、Mo、Mn、Pd、Ru、Zr、Ir、Rh、及びVの金属の群から選択された1つ以上の金属を含んでもよい。触媒は、任意の触媒活性材料を含んでもよい。代表的な好適な例では、金属粒子は、白金と、Fe、Co、Pd、及びNiから成る群から選択された少なくとも1種の金属との合金を含んでもよい。
触媒の安定性向上は、物理的形態に関連していると思われ、他の金属デンドリマー触媒も、従来のナノ粒子触媒に対して同様の向上を示すであろうことが示唆される。
いくつかの実施例では、電子伝導性材料が、触媒材料と同様のものであってもよい(例えば、金属シート又は金属メッシュ上に形成されたデンドリマー等)。
デンドリマーの形態
デンドリマーは、例えば1〜50nmの範囲の円板厚、より詳細には1〜10nmの範囲の円板厚を有するような、略円板形状で形成してもよい。円板直径は、円板厚より大きく、一般的に1nm〜1000nmの範囲、詳細には1nm〜500nmの範囲、より詳細には30nm〜500nmの範囲であり得る。デンドリマーは、一般に1〜1000nmの範囲、より詳細には1〜500nmの範囲の直径の球状であってもよい。本発明の実施例において、金属デンドリマーの少なくとも一部が単結晶構造を有してもよい。
調製方法の更なる説明
触媒は、金属前駆体、還元剤、光触媒、及びマトリックス材料を含む混合物を提供することによって調製してもよい。混合物に光照射すると、金属前駆体の還元反応によってナノ構造の触媒材料が形成される。光触媒は、金属前駆体及び酸化還元剤と混合する前、すなわち金属前駆体を触媒材料へと還元する前に、マトリックス材料上(又はマトリックス中)に分散してもよい。光触媒は、マトリックス材料と共通の溶媒に溶解又は懸濁させて、マトリックス材料の表面に分散してもよい。
金属前駆体混合物の例は、少なくとも1つの金属化合物、例えば白金化合物、鉄化合物、コバルト化合物、またはそれらの組み合わせを含む。そして、金属化合物の混合物を使用して、白金合金粒子(例えば、白金−鉄合金化合物又は白金−コバルト合金化合物)等の白金合金粒子を含む合金粒子を形成してもよい。
金属前駆体は、光触媒作用によって還元される金属化合物であり、Pt、Sn、Fe、Co、Cr、Ni、Nb、V、Mo、Mn、Pd、Ru、Zr、Ir、Rh、又はVの金属原子の1つ以上を含んでもよい。合金粒子は、対応する金属前駆体の混合物を使用して形成してもよい。例えば、コバルト化合物および白金化合物は、両方が触媒作用により還元されて白金−コバルト合金粒子を形成し得る。そして、その合金組成は金属前駆体化合物の比率によって制御される。
マトリックス材料は小胞又は他の材料を含んでもよい。触媒材料はマトリックス材料上又はマトリックス材料内の近傍で還元されて形成されてもよい。また、光触媒及び光照射は省いてもよい。触媒は前駆体の還元によって形成してもよく、その還元剤はアスコルビン酸ナトリウム又はヒドロキノンを含んでもよい。他の還元剤を使用してもよく、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
場合により光触媒を使用してもよい。光触媒の例としては金属ポルフィリン及び他の有機金属材料が挙げられる。光触媒の例はSn(IV)オクタエチルポルフィリンジクロライドである。光触媒の例としては、可視光又はUV光への曝露によって、長寿命の三重項状態が得られる材料、及び還元剤との還元反応によってラジカルアニオンが得られる材料が挙げられる。
どのような調製方法を用いるにしても、触媒として使用する前にマトリックス材料又は他の不要成分を除去することができる。
支持材料(例えば、電子伝導性材料等)は、調製に使用される混合物中に含まれてもよく、又は後で触媒と支持材料を組み合わせてもよい。1つの手法において、光触媒を支持材料表面に分散し、次いでその光触媒被覆支持材料を還元剤及び金属化合物と混合して混合物とする。光触媒は、光触媒及び支持材料を共通の溶媒に溶解(又は懸濁)させ、次いでその溶媒を蒸発させ留去することによって、支持材料の表面上に分散させてもよい。また、マトリックス材料は支持材料を包み得る。
本発明は上記の例示的な実施例に制限されるものではない。実施例は本発明の範囲を制限するためのものではいない。本明細書に記載された方法、装置、構成物等は模範例であって本発明の範囲の制限するためのものではない。当業者であればそれに対する変更及び他の用途を思いつくであろう。本発明の範囲は特許請求の範囲によって定められる。
以上をもって本発明の説明とし、特許請求するものである。
MEAの調製に使用した樹枝状白金ナノシート及び市販の白金黒のTEM像を示す。 MEAの調製に使用した樹枝状白金泡状ナノ粒子のHAADF−STEM像を示す。 7mgPt/cm2の充填量の樹枝状ナノ粒子(曲線1)、ナノシート(曲線2)、白金黒(曲線3)に対する0.5V定電位での短期的な耐久性試験を示す。 7mg/cm2の充填量の白金ナノシート及び白金黒で調製したMEAに対する75時間定電位試験の試験前後における分極曲線を示す(白金ナノシート:0時間(◆)及び75時間(◇)、白金黒:0時間(▲)及び75時間(△))。 白金ナノ粒子及び白金黒で作製したMEAに対する0.5V定電位での短期的な耐久性試験を示す。 白金黒及び白金ナノシートのサイクリックボルタモグラムを示す(実線:0時間、破線:75時間)。 燃料電池試験前の白金シート(実線)及び白金黒(破線)のCV特性の比較を示す。 2mgPt/cm2の充填量のMEAに対するサイクリックボルタモグラムを示す(白金ナノ粒子:75時間エージング前(灰色線)及び経過後(短破線)、円形白金ナノシート:75時間エージング前(長破線)、及び白金黒:エージング前(実線))。 75時間の燃料電池試験後の断面HAADF−STEM像を示す。ここで、図9A及び9Bは樹枝状白金ナノシートの画像であり、図9C及び9Dは白金黒の画像である。 白金ナノ粒子で作製したMEAによる500時間燃料電池試験後の断面HAADF−STEM像を示す。 本発明の実施形態による触媒を使用したMEAを示す。

Claims (14)

  1. 第1電極と、
    第2電極と、
    前記第1電極及び前記第2電極の間に配置されたイオン伝導膜とを含む膜・電極接合体(MEA)であって、
    前記第1電極が、炭素材料を含み、前記膜・電極接合体の作動中に触媒として機能する、白金で構成された樹枝状金属ナノ構造体を含有し、
    前記樹枝状金属ナノ構造体は、互いに部分的に融着した、細孔を有する30nm〜500nmの直径及び1nm〜10nmの厚みを有する円板形状の樹枝状金属ナノシートからなる触媒多孔性シートであり、
    前記樹枝状金属ナノシートの少なくとも一部が前記第1電極の前記炭素材料上に直接設けられている膜・電極接合体。
  2. 前記樹枝状金属ナノシートの少なくとも一部が前記炭素材料上に担持されている請求項に記載の膜・電極接合体。
  3. 前記炭素材料が黒鉛状炭素である請求項に記載の膜・電極接合体。
  4. 前記イオン伝導膜が高分子電解質膜である請求項1からのいずれか一項に記載の膜・電極接合体。
  5. 前記細孔の直径が、1nm〜10nmの範囲内である請求項1からのいずれか一項に記載の膜・電極接合体。
  6. 請求項1からのいずれか一項に記載の膜・電極接合体を含む燃料電池。
  7. 第1電極と、
    第2電極と、
    前記第1電極及び前記第2電極の間に配置された電解質とを含む燃料電池であって、
    前記第1電極が炭素材料及び触媒を含み、当該触媒が白金で構成された樹枝状金属ナノ構造体を含有し、
    前記樹枝状金属ナノ構造体は、互いに部分的に融着した、細孔を有する30nm〜500nmの直径及び1nm〜10nmの厚みを有する円板形状の樹枝状金属ナノシートからなる触媒多孔性シートであり、
    前記樹枝状金属ナノシートの少なくとも一部が前記第1電極の前記炭素材料上に直接設けられている燃料電池。
  8. 前記細孔の直径が、1nm〜10nmの範囲内である請求項に記載の燃料電池。
  9. 前記細孔の直径が、2nm〜5nmの範囲内である請求項に記載の燃料電池。
  10. 前記白金で構成された樹枝状金属ナノ構造体の少なくとも一部が単結晶構造を有する請求項からのいずれか一項に記載の燃料電池。
  11. 前記樹枝状金属ナノシートの少なくとも一部が前記炭素材料上に担持されている請求項から10のいずれか一項に記載の燃料電池。
  12. 前記炭素材料が黒鉛状炭素である請求項から11のいずれか一項に記載の燃料電池。
  13. 前記電解質がイオン伝導膜である請求項から12のいずれか一項に記載の燃料電池。
  14. 前記イオン伝導膜が高分子電解質膜である請求項13に記載の燃料電池。
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