JPWO2004041458A1 - 液圧バルジ加工用異形素管、並びにこれを用いる液圧バルジ加工装置、液圧バルジ加工方法、および液圧バルジ加工品 - Google Patents
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Abstract
Description
さらに、加工後のスプリングバックが少なく、製品の寸法精度が良好である(形状凍結性が良好である)。このため、製品寸法の手直しの工程を必要とせず、工程の省略が図れる。
液圧バルジ加工は、上述の優れた特長が評価され、最近では、特に自動車用部品の製造方法として採用されるようになっている。
通常、液圧バルジ加工によって管を成形加工する場合には、長手方向に均一な円断面を有するストレートな管(以下、「ストレート素管」という)を素材として用い、当該素材に「予成形」として曲げ加工および押し潰し加工を施した後、加工工程の最終工程として液圧バルジ加工が施される。このような一連の加工工程を経ることによって、ストレート素管から所定の形状に加工された液圧バルジ加工品を製造できる。
図1は、従来のストレート素管を用いて製品を得る液圧バルジ加工の加工工程のうち最終工程を説明する図である。同図で示すように、最終工程となる液圧バルジ加工では、上下の金型1、2内にセットされたストレート素管P1の中に注入孔3を通じて加工液を注入し、内圧を負荷する。さらに、内圧負荷に加えて、シール工具を兼ねた軸押し工具4、5によって、両管端から軸方向に素管P1を押し込む(以下、「軸押し」という)。
液圧バルジ加工では、内圧を負荷することおよび軸押しすることを組み合わせて、種々の断面形状を有する製品P2を製造する。なお、シール工具を兼ねた軸押し工具4、5は、図示しない油圧シリンダに接続されており、液圧バルジ加工中においては、その軸方向位置および軸押し力が制御されている。
液圧バルジ加工における、管端から軸方向への軸押しは、素管の膨出時のメタルフローを促進させ、素管の拡管限界を向上させる効果がある。このため、液圧バルジ加工では、管端から軸方向への軸押しは、極めて重要な加工工程である。
具体的には、液圧バルジ加工において、軸押しを実施することなく内圧負荷のみで加工を行うと、ストレート素管P1は膨出にともなって板厚が著しく減少する。このため、ストレート素管P1は、液圧バルジ加工の途中で破断に至る。つまり、ストレート素管P1の成形可能な範囲(拡管限界)が制限されることになる。
さらに、液圧バルジ加工には、素管形状に起因する問題がある。前述の通り、当該加工の特長の一つとして、軸方向に断面形状の異なる複雑な加工形状を得ることができるとしても、得ることができる加工形状に制限がある。
例えば、周長増加率(拡管率)={(当該部位の加工品の外周長/素管の円周長)−1}×100%と定義した場合に、加工品に要求される形状特性や使用する素管条件(材質、板厚)にもよるが、軸押しが有効な管端部領域を除いて、周長増加率(拡管率)は高々25%程度である。
この限界の周長増加率(拡管率)を超えて、液圧バルジ加工を施すことができない。このような周長増加率(拡管率)の制約条件のもとで、加工品の形状設計の自由度を上げ、より複雑な断面形状を有する加工品を得るためには、素管形状に工夫を施す必要がある。
この問題に対応するため、ストレート素管に代えて略円錐状の素管(以下、「テーパ素管」という)を用いることが提案されている。すなわち、テーパ素管を用いることによって、ストレート素管での成形が困難な部品、例えば、軸方向に沿って大きく周長が変化する部品に対しても、加工に伴う周長増加率を低く抑えることができ、所定の加工形状を形成できるとしている(例えば、特開2001−321842号公報、第1頁、図2参照)。
しかしながら、軸方向に断面形状が変化するテーパ素管を用いて液圧バルジ加工を行う場合に、前記図1に示すストレート素管用の軸押し工具を使用した場合には、テーパ素管に軸押しを施すことが困難である。
図2は、従来のストレート素管用軸押し工具でテーパ素管への軸押しを行った場合に生じる問題を説明する図である。同図に示すように、大径側ではテーパ素管TP1への軸押し自体ができず、また、小径側ではテーパ素管TP1への軸押しを行うことができるが、軸押しに伴い、軸押し工具4が上下の金型1、2の内部へ進入するにつれて、軸押し工具4側のテーパ素管TP1の内外面の拘束が不十分となり、シール漏れが発生するようになる。
図3は、従来のテーパ素管を用いた液圧バルジ加工工程を説明する図であり、同(a)は加工前の状態を、(b)は内圧負荷加前の状態を、(c)は加工終了時の状態を示している。
従来のテーパ素管TP1を用いた液圧バルジ加工では、図3に示すように、先端部がテーパ状の軸押し工具6、7を使用するが、軸押しを実施することができないため、内圧負荷のみで液圧バルジ加工を完了させるのが一般的である。なお、図3中のTP2は管端部を成形した後のテーパ素管、TP3は液圧バルジ加工後の製品(液圧バルジ加工品)を示す。
図3に示す加工工程では、テーパ素管TP2の軸押しを実施できないので、前述の通り、液圧バルジ加工の段階で破断を生じない程度の限られた成形範囲でしか加工できない。したがって、液圧バルジ加工おいてテーパ素管を用いることの効果が十分に発揮されないのが実情である。
このため、テーパ素管を用いて液圧バルジ加工を行う場合に、素管への内圧負荷に加えて、管端からの軸方向への軸押しを可能にする技術開発が望まれている。
従来のテーパ素管に液圧バルジ加工を施した場合に、軸押しが困難であるとの問題とは別に、液圧バルジ加工品を他の部材と接合する場合の問題もある。
図4は、長方形断面を持つ液圧バルジ加工品を接合する場合の問題を説明する図である。同(a)は従来の液圧バルジ加工品の形状を示し、(b)は本発明の液圧バルジ加工品の形状を示しており、それぞれの加工品の軸方向に対して管端部の傾きを示している。(c)は、前記(a)および(b)の液圧バルジ加工品の断面形状を示している。
従来のテーパ素管を素材として液圧バルジ加工した製品PT3は、図4(a)に示すように、管端部が斜めにθだけ傾いている。このため、他の部材との溶接、接合の際に、精度が確保できないため、他の部材との接合等は容易ではない。
さらに、管端を他部品に差し込んで結合する、差し込み結合の際に、同様に精度が確保できないため、位置決めが困難になる。そのため、液圧バルジ加工後で液圧バルジ加工品の端部を切り落とす等の仕上加工を必要とする。
上記した目的を達成するため、本発明の液圧バルジ加工用異形素管は、液圧バルジ加工に供される異形素管であって、軸方向の一方から他方にかけて外径が漸次増加または減少する周長を有し、少なくとも一方端側に平行部を形成することにしている。
本発明の液圧バルジ加工用異形素管では、前記平行部の長さは、液圧バルジ加工で施される軸押し量と加工時のシールに必要な長さとの合計長さ以上にするのが望ましい。
さらに、矩形断面、または多角形状断面を有する液圧バルジ加工品の製造に供される異形素管にあっては、前記平行部におけるコーナ部の曲率半径Rを、管端部の軸方向距離に対応する異形素管の周長差の変化に対応して変化させるのが望ましい。
そして、このような構成からなる本発明の異形素管を、上下の両金型本体の少なくとも一方の端側内面と、この端側内面に対応する軸押し工具の外面にそれぞれ平行部を設けて、本発明の液圧バルジ加工装置の金型内にセットすれば、内圧負荷および軸押しを組み合わせることが可能になる。
これにより、液圧バルジ加工において、従来以上に大きな拡管率を得ることが可能になり、また、他の部品との接合も容易に行なえるようになる。
図2は、従来のストレート素管用の軸押し工具を用いて、従来のテーパ素管の軸押しを行った場合に生じる問題を説明する図である。
図3は、従来のテーパ素管を用いた液圧バルジ加工工程を説明する図であり、(a)は加工前の状態を、(b)は内圧負荷加前の状態を、(c)は加工終了時の状態を示している。
図4は、長方形断面を持つ液圧バルジ加工品を接合する場合の問題を説明する図であり、(a)は従来のテーパ素管を用いた液圧バルジ加工品の形状、(b)は本発明の液圧バルジ加工品の形状を示し、(c)は、これらの断面形状を示している。
図5は、本発明の液圧バルジ加工用異形素管を構成するテーパ管の形状例を示す断面図である。
図6は、本発明の異形素管の全体構成を例示する図であり、(a)は円断面を有するテーパ部の両端に円断面を有する平行部を形成した例であり、(b)は長方形断面を有するテーパ部の両端に長方形断面を有する平行部を設けた例を示している。
図7は、本発明の他の異形素管の全体構成を例示する図であり、大径側の平行部と中央のテーパ部との間に移行部を有した例を示している。
図8は、大径側端部に平行部を有する本発明に係る異形素管を製造する方法について説明する図であり、(a)は全体斜視図であり、(b)は展開図であり、(c)は(b)に示した展開図に近い台形形状を示す図である。
図9は、本発明の異形素管の他の実施例とそれらに用いられる軸押し工具を示す図であり、(a)は全体斜視図を、(b)は小径側の拡大図を、(c)はそれらに用いられる小径側のシール工具を兼ねた軸押し工具の拡大図である。
図10は、液圧バルジ加工品の小径側が矩形断面を有する場合に用いられる本発明の異形素管の端面形状を示す図であり、(a)は小径側端部より軸方向にδL+L0だけ離れた位置の断面図、(c)は管端部の断面図、(b)はそれらの中間位置での断面図である。
図11は、液圧バルジ加工品の大径側が矩形断面を有する場合に用いる本発明の異形素管の端面形状示す図であり、(a)は大径側端部より軸方向にδL’+L0’だけ離れた位置の断面図、(c)は管端部の断面図、(b)はそれらの中間位置での断面図である。
図12は、液圧バルジ加工品が台形断面を有する場合にその断面形状を例示する図である。
図13は、液圧バルジ加工品がL字型の断面を有する場合にその断面形状を例示する図である。
図14は、本発明方法の第1の実施例を説明する図であり、異形素管の管端部の平行部を、液圧バルジ加工に先立って形成する場合を示している。(a)はテーパ管の金型本体へのセッティング状態を示した断面図であり、(b)は液圧バルジ加工前に平行部を形成した状態を示した断面図であり、(c)は液圧バルジ加工終了後の状態を示した断面図である。
図15は、小径側の上金型本体、シール工具を兼ねた軸押し工具および異形素管端部の関係を示す図であり、(a)〜(c)は前記図14(a)〜(c)に相当する図である。
図16は、大径側の上金型本体、シール工具を兼ねた軸押し工具および異形素管端部の関係を示す図であり、(a)〜(c)は前記図14(a)〜(c)に相当する図である。
図17は、本発明方法の第2の実施例を説明する図であり、異形素管の管端部の平行部を金型本体へのセッティング前に、予め形成してある場合を示している。(a)は異形素管の金型本体へのセッティング状態を示した断面図であり、(b)は液圧バルジ加工前の状態を示した断面図であり、(c)は液圧バルジ加工終了後の状態を示した断面図である。
図18は、本発明方法の第3の実施例を説明する図であり、異形素管の管端部の平行部を金型本体へのセッティング前に、予め形成してある場合の他の例を示している。(a)〜(c)は前記図17の場合と同じである。
図19は、本発明方法の第4の実施例を示す説明図であり、大径側の平行部の内側のキャビティが大径端を基準にして軸方向に単調に増加する構成例を示している。(a)〜(c)は前記図17の場合と同じである。
図20は、本発明の液圧バルジ加工装置の構成部材であるシール工具を兼ねた軸押し工具の構成例を示す図である。
本発明の液圧バルジ加工用異形素管では、前記平行部11a、11bの長さは、液圧バルジ加工での軸押し量とシールに必要な長さの合計長さ以上にするのが望ましい。
図6は、本発明の異形素管の全体構成を例示する図であり、同(a)は円断面を有するテーパ部の両端に円断面を有する平行部を形成した例であり、(b)は長方形断面を有するテーパ部の両端に長方形断面を有する平行部を設けた例を示している。
前記図5(a)に示す実施例を図6(a)(b)を用いて、さらに詳細に説明する。図6(a)は最も基本的な形態を示すもので、円断面を有するテーパ部の両端に円断面を有する平行部11a、11bを形成したものである。
また、図6(b)は長方形断面を有するテーパ部の両端に長方形断面を有する平行部11a、11bを設けたものである。この図6(b)に示す例では、平行部11a、11bは全長に亘り小径側11aでは後述する図10(a)に示す断面、および大径側11bでは後述する図11(c)に示す断面を有している。
図7は、本発明の他の異形素管の全体構成を例示する図であり、前記図6の構成に比べ、大径側の平行部と中央のテーパ部との間に移行部を有した異形素管の構成例を示している。
次に、前記図5(b)に示す実施例の詳細を図7(a)(b)を用いて説明する。図7(a)は、円断面を有するテーパ部の両端に円断面を有する平行部11a、11bを形成したものであり、大径側の平行部11bと中央のテーパ部との間に移行部11cを有している。
また、図7(b)は、長方形断面を有するテーパ部の両端に長方形断面を有する平行部11a、11bを設けたものであり、大径側の平行部11bと中央のテーパ部との間に前記と同様に移行部11cを有している。
前記図6(b)や図7(b)では、両端部に形成した平行部11a、11bの形状が単に長方形断面を有するものを示したが、平行部11a、11bの形状は、後述する図12に示すような台形の断面形状や、後述する図13に示すようなL字型の断面形状、または、図示していない多角形の断面形状などであってもよい。
この場合に、液圧バルジ加工後の最終端面形状が製品の端面形状と一致するように設計していれば、材料歩留りが向上することになり、好適である。
また、図6(b)や図7(b)においては中央のテーパ部も長方形断面としたものを示しているが、中央部は特に長方形断面である理由はなく、図6(a)や図7(a)のような円断面でもあってもよく、液圧バルジ加工の金型に挿入できるように曲げ加工や上下左右からの押し潰し加工を行ったものでもよい。
図8は、大径側端部に平行部を有する本発明に係る異形素管を製造する方法について説明する図であり、同(a)は全体斜視図であり、(b)は展開図、(c)は(b)に示した展開図に近い台形形状を示す図である。
図8(a)に示すような円断面を有するテーパ部の大径側端部に平行部11bを有する本発明に係る異形素管11の製造方法について説明すると、次のようになる。
図8(a)に示す異形素管11は、図8(b)に示した形状の板を単純曲げし、a−bとa’−b’、c−dとc’−d’、b−eとc−e、b’−eとc’−eの端部を接合すれば、図8(a)に示すように、大径側端部に平行部11bを有する異形素管11を得ることができる。
一方、図8(c)には、同(b)を破線で併記するとともに、これに近い台形形状を実線で示している。
実線と破線との比較で明らかなように、図8(c)に実線で示す台形を単純曲げした場合には、b−c−eの領域とb’−c’−e’の領域に肉余りを生じてしまう。すなわち、台形形状を素材とした板巻き工程では、本発明に係る異形素管11のように、端部に平行部11bを有する異形素管の製造は困難である。
最も単純な方法は、図8を用いて説明したように、本発明に係る異形素管11の展開形状を有する板を単純曲げして接合する方法であるが、次に、これ以外の方法で、前述の図6、図7に示す形状の本発明に係る異形素管11を製造する方法について説明する。
前記図6(a)に示す形状の場合は、例えば、「単なるテーパ管」を素材として小径側は内径拡げ加工、大径側は外径絞り加工を行うことによって得ることができる。また、図6(b)に示す形状の場合は、上記に加えて中央の胴長部に押し潰し加工を行うことによって得ることができる。
本発明の説明において、「単なるテーパ管」とは、本発明の異形素管の素材であって、未だ一方端側または両端に平行部を形成していないテーパ管を意味する。
前記図7(a)に示す形状の場合は、例えば、「単なるテーパ管」を素材として小径側、大径側共に内径拡げ加工を行えばよい。また、図7(b)に示す形状の場合は、上記に加えて中央の胴長部に押し潰し加工を行うことによって得ることができる。
図9は、本発明の異形素管の他の実施例とそれらに用いられる軸押し工具を示す図であり、同(a)は全体斜視図を、(b)は小径側の拡大図を、(c)はそれらに用いられる小径側のシール工具を兼ねた軸押し工具の拡大図である。図9に示す実施例では、同(a)に示した態様は長方形断面のテーパ部の両端に長方形断面の平行部11a、11bを形成している。
さらに、図9に示した実施例では、単なるテーパ管に小径側の平行部11aではδL+L0に対応する部分に、大径側の平行部11bではδL’+L0’に対応する部分に、製品と略同一の幅、高さの寸法を有する矩形断面を形成している。
また、コーナ部の曲率半径Rを後述のように決定することで、液圧バルジ加工で金型本体12、13とシール工具を兼ねた軸押し工具14、15により、液圧バルジ加工時の軸押しで座屈などを発生させることなく、極めてスムーズな材料の押し込みが可能になる。
図10は、液圧バルジ加工品の小径側が矩形断面を有する場合に用いられる本発明の異形素管の端面形状を示す図である。同(a)は小径側端部より軸方向にδL+L0だけ離れた位置の断面を、(c)は管端部の断面を、(b)はそれらの中間位置での断面を示している。
すなわち、図10は、本発明の異形素管の小径側の平行部11aの各断面における形状を説明する図であり、(a)から(c)の断面の幅W0と高さH0はほぼ一定である。また、コーナ部の曲率半径Rを予成形により段階的に変化させている。
図10(a)〜(c)に示すように、小径側端部でのコーナ部の曲率半径をR0、小径側端部より軸方向にδL+L0だけ離れた位置のコーナ部の曲率半径をR1、小径側端部より軸方向にXだけ離れた位置のコーナ部の曲率半径をR(x)とすると、これらは下記(1)式の関係になる。
R0≧R(x)≧R1 ・・・ (1)
図10に示す実施例では、各断面における4つのコーナ部の曲率半径を同一にしたが、これらを同一にする必要はなく、コーナ部ごと異なった曲率半径としてもよい。
さらに詳細には、単なるテーパ管の両端部を基準周長とした、管端部からの位置Xにおける周長差δd(x)は、下記(2)により得られる。ただし、D0は小径側外径、D0’は大径側外径、およびLTはテーパ管の長さを示している。
δd(x)=π・(D0’−D0)・X/LT ・・・ (2)
予成形で端部の断面を幅W0、高さH0の矩形に形成する際、上記周長差δd(x)に対応して、図10に示すように、コーナ部の曲率半径R(x)の寸法を軸方向位置で変化させることによって、適正な予成形の形状を決定することができる。
図11は、液圧バルジ加工品の大径側が矩形断面を有する場合に用いられる本発明の異形素管の端面形状示す図である。同(a)は大径側端部より軸方向にδL’+L0’だけ離れた位置の断面図であり、(c)は管端部の断面図であり、(b)はそれらの中間位置での断面図である。
すなわち、図11は、本発明の異形素管の大径側の平行部11bの各断面における形状を説明する図であり、(a)から(c)の断面の幅W0’と高さH0’はほぼ一定である。また、コーナ部の曲率半径R’を予成形により段階的に変化させている。
図11(a)〜(c)に示すように、大径側端部でのコーナ部の曲率半径をR0’、大径側端部より軸方向にδL’+L0’だけ離れた位置のコーナ部の曲率半径をR1’大径側端部より軸方向にXだけ離れた位置のコーナ部の曲率半径をR’(x)とすると、これらは下記(1’)式の関係になる。
R0’≦R’(x)≦R1’ ・・・ (1’)
また、単なるテーパ管の両端部を基準周長とした、端部からの位置Xにおける周長差δd(x)は、下記(2’)により得られる。ただし、D0は小径側外径、D0’は大径側外径、およびLTはテーパ管の長さを示している。
δd(x)=π・(D0’−D0)・X/LT ・・・ (2’)
端部の断面を幅W0’、高さH0’の矩形に形成する際、上記周長差δd(x)に対応して、図11に示すように、コーナ部の曲率半径R’(x)の寸法を軸方向位置で変化させることによって、適正な形状の決定が可能である。
上述の通り、液圧バルジ加工品が矩形断面を有する場合について説明したが、本発明の異形素管はこれに限定されず、矩形の組み合わせ形状や多角形形状でも採用でき、液圧バルジ加工時の極めて安定した軸押しが可能になる。
図12は、液圧バルジ加工品が台形断面を有する場合にその断面形状を例示する図である。図13は、液圧バルジ加工品がL字型断面を有する場合にその断面形状を例示する図である。いずれも、大径側で予成形された断面形状の例であり、(a)は大径側端部より軸方向にδL’+L0’だけ離れた位置の断面図であり、(c)は管端部の断面図であり、(b)はそれらの中間位置での断面図である。
次に、本発明の液圧バルジ加工装置、およびそれを用いた液圧バルジ加工方法を、図面に基づいて説明する。
図14は、本発明方法の第1の実施例を説明する図であり、異形素管の管端部の平行部を、液圧バルジ加工に先立って形成する場合を示している。同(a)はテーパ管の金型本体へのセッティング状態を示した断面図であり、(b)は液圧バルジ加工前に平行部を形成した状態を示した断面図であり、(c)は液圧バルジ加工終了後の状態を示した断面図である。
図15は、小径側の上金型本体、シール工具を兼ねた軸押し工具および異形素管端部の関係を示す図であり、同(a)〜(c)は前記図14(a)〜(c)に相当する図である。
図16は、大径側の上金型本体、シール工具を兼ねた軸押し工具および異形素管端部の関係を示す図であり、同(a)〜(c)は前記図14(a)〜(c)に相当する図である。
図17は、本発明方法の第2の実施例を説明する図であり、異形素管の管端部の平行部を金型本体へのセッティング前に、予め形成してある場合を示している。同(a)は異形素管の金型本体へのセッティング状態を示した断面図であり、(b)は液圧バルジ加工前の状態を示した断面図であり、(c)は液圧バルジ加工終了後の状態を示した断面図である。
図18は、本発明方法の第3の実施例を説明する図であり、異形素管の管端部の平行部を金型本体へのセッティング前に、予め形成してある場合の他の例を示している。同(a)は異形素管の金型本体へのセッティング状態を示した断面図であり、(b)は液圧バルジ加工前の状態を示した断面図であり、(c)は液圧バルジ加工終了後の状態を示した断面図である。
本発明の液圧バルジ加工装置は、例えば、図14、図17および図18に示すようなキャビティを形成した上下の金型本体12、13と、両金型本体12、13のそれぞれの端部に先端部を挿入されるシール工具を兼ねた軸押し工具14、15とを備えている。そして、両金型本体12、13と軸押し工具14、15は、両者によって本発明の異形素管11の両端部を挟持し、保持するように構成されている。
さらに、前記軸押し工具のいずれかに加工液の注入孔が設けられ、前記金型本体の少なくとも一方の端側(図14、図17および図18に示した例では小径側および大径側の両端側)内面と、この端面内面に対応する軸押し工具の外面に、それぞれ平行部12a、12b、13a、13b、14a、15aが設けられる。
この軸押し工具14、15の外面の平行部14a、15aは、軸押し時に内面から素管を拘束し、スムーズな変形を可能ならしめる作用を発揮する。
この液圧バルジ加工装置において、小径部側の軸押し量をδL、大径部側の軸押し量をδL’、小径部側のシールに必要な長さをL0、大径部側のシールに必要な長さをL0’とした場合に、両金型本体12、13の少なくとも一方の端側(図14、図17および図18図に示した例では小径側および大径側の両端側)内面に設けられた平行部12a、12b、13a、13bの長さは、小径部側に設けられている場合にδL+L0以上にし、大径部側に設けられている場合にはδL’+L0’以上にするのが望ましい。
同様に、この金型本体12、13に設けられた平行部12a、12b、13a、13bに対応する軸押し工具14、15の平行部14a、15aの長さは、小径部側に設けられる場合にはδL+L0以上にし、大径部側に設けられる場合にはL0’以上にするのが望ましい。
ところで、本発明の液圧バルジ加工装置では、小径側(大径側)のシール工具を兼ねた軸押し工具14(15)の先端部は、異形素皆11の素材となる単なるテーパ管PTまたは異形素管11の小径側端部(大径側端部)に挿入可能でなければならない。これと同時に、平行部14a(15a)は、軸押し完了時における平行部14a(15a)の最先端部分と異形素管11の内面との間に隙間が生じないことが必要である。
このため、例えば、図14に示すように、異形素管11の素材となる単なるテーパ管PTを上下の金型本体12、13にセットした後、管端部に形成する平行部11a、11bを液圧バルジ加工を実施するのに先立って、上下の金型本体12、13内で形成する場合には、シール工具を兼ねた軸押し工具は、下記A、Bの条件を満足する必要がある。
A.小径側のシール工具を兼ねた軸押し工具14(図15参照)
先端の局部的凹部を無視した包絡線の周長SD0は、下記(3)式を満足する。
SD0≦(DO−2t/cosθ)×π ・・・ (3)
但し、D0:小径部の外径
t :異形素管11の肉厚
θ=tan−1{(D0’−D0)/(2・LT)}
LT:テーパ管PTの長さ
D0’:大径部の外径
B.大径側のシール工具を兼ねた軸押し工具15(図16参照)
先端の局部的凹部を無視した包絡線の周長SD0’は、下記(4)式を満足する。
SD0’≦(D0’−2t/cosθ)×π ・・・ (4)
一方、前記図17に示したように、異形素管11の管端部に形成する平行部11a、11bを、上下の金型本体12、13にセットする前に、予め形成してある場合には、シール工具を兼ねた軸押し工具は、下記C、Dの条件を満足する。
C.小径側のシール工具を兼ねた軸押し工具14(図17参照)
先端部の周長SD0は、下記(5)式を満足する。
SD0≦平行部14aの周長SD ・・・ (5)
D.大径側のシール工具を兼ねた軸押し工具15(図17参照)
先端部の周長SD0’は、下記(6)式を満足する。
SD0’≦平行部15aの周長SD’ ・・・ (6)
本発明の液圧バルジ加工装置を用いて、液圧バルジ加工品17を成形する場合には、例えば、本発明の異形素管11の素材である単なるテーパ管PTを、前記図14(a)に示すように、液圧バルジ加工装置の一対の金型本体12、13内にセットする。
次に、液圧バルジ加工に先立ち、シール工具を兼ねた軸押し工具14、15を軸方向に移動させ、金型本体12、13と軸押し工具14、15に挟持されたテーパ管PTの管端、または両端に、図14(b)に示すように、平行部11a、11bを形成し、本発明に係る異形素管11に成形する。
このとき、軸押し工具14、15による異形素管11の軸押しのタイミングを同じにする必要はなく、例えば、軸押し工具15をある程度押し付けた段階で軸押し工具14の押し付けを開始してもよい。したがって、異形素管11が金型本体12、13内で安定する軸押しタイミングを選定すればい。
この場合に、上述の寸法を基準にして金型本体12、13とシール工具を兼ねた軸押し工具14、15の寸法設計を行えば、軸押し工具14、15をテーパ管TPにスムーズに挿入することができる。
前記図14(b)の状態では、図15(b)および図16(b)に示すように、テーパ管PTの両管端には、小径側にL0以上、望ましくはδL+L0以上、大径側にL0’以上の長さの平行部11a、11bが形成され、本発明の異形素管11が得られている。その後、その異形素管11には、加工液のシールが完全に行われる状態で内圧が負荷される。
次いで、加工液の内圧を上昇させつつ、さらに軸押し工具14、15を軸方向に移動せしめ、液圧バルジ加工を施し、前記図14(c)に示すように、本発明方法による液圧バルジ加工品17を形成する。
すなわち、本発明の異形素管11を本発明の液圧バルジ加工装置にセットして行う液圧バルジ加工では、軸押しが可能になる結果、本発明方法による液圧バルジ加工品17にあっては、従来以上に大きな拡管率を得ることができる。
また、液圧バルジ加工品17の端面は、前記図4(b)に示すように、軸心に対して垂直であるので、他の部品、部材との接合溶接も容易に行なえるようになり、差し込み結合の位置決めが可能になる。
図19は、本発明方法の第4の実施例を示す説明図であり、大径側の平行部の内側のキャビティが大径端を基準にして軸方向に単調に増加する構成例を示している。同(a)はテーパ管の金型本体へのセッティング状態を示した断面図であり、(b)は液圧バルジ加工前に平行部を形成した状態を示した断面図であり、(c)は液圧バルジ加工終了後の状態を示した断面図である。
図19に示す実施例は、前記図14、図17および図18に示す実施例と別の形態である。すなわち、両金型本体12、13の両端部に平行部12a、12b、13a、13bを有するのは同様であるが、両金型本体12、13の大径側の平行部12b、13bの内側のキャビティが、前記図14等に示した例のように局部的に狭めることなく、前記平行部12b、13bの内側のキャビティが大径端を基準にして、軸方向に単調に減少している。
図19に示す構成例では、軸押しの抵抗が小さく、メタルフローに対して有利であるため、成形可能な範囲(拡管限界)を拡大させることができる。したがって、本発明の液圧バルジ加工装置にあっては、金型本体12、13のキャビティ形状を図19に示す形状に設計することが望ましい。
一方、自動車部品においては、製品の端部の断面形状が矩形に近いものや矩形の組み合わせ、または多角形等の形状のものなど、複雑な形状が多い。
前述の通り、前記図18は、図9(a)に示す本発明の異形素管11を用いた場合の実施例を示す図であり、それを用いた加工に際し、前記図9(a)に示す異形素管11を金型本体12、13内にセットする。図9(b)に本発明の異形素管11の小径側の拡大図を示している。一方、その小径側平行部11aの断面形状は、前記図10に示すとおりである。
このような断面形状の異形素管11に対し、本発明の一例を示すシール工具を兼ねた軸押し工具14、15を用いて成形を行う。すなわち、図9(c)は小径側のシール工具を兼ねた軸押し工具14を示しているが、幅W0−2t、高さH0−2t、コーナ部の曲率半径はR1の平行部14aを有している。
前記図18(a)の状態から端部に軸押し工具14、15を押し込み、図18(b)の段階で異形素管11の端部の成形が終了し、前記図9(b)に示す異形素管11を得ることができると同時に、内圧が負荷された加工液のシールが完全に行われた状態になっている。
その後、加工液の内圧を上昇させつつ、さらに軸押し工具14、15を軸方向に移動せしめ、液圧バルジ加工を施した本発明方法による液圧バルジ加工品17を得ることができる。
なお、液圧バルジ加工に先立って行う管端の平行部11a、11bの成形を、予成形やそれ以前の段階で行ってもよい。絞り加工、穴拡げ加工、スウエージング加工、スピンニング加工など既存の加工法やその組み合わせによって実施できる。
図20は、本発明の液圧バルジ加工装置の構成部材であるシール工具を兼ねた軸押し工具の構成例を示す図である。同(a)は異形素管11の端面と接する端面14b、15bでシールする場合の構成例、(b)は同じく端面14b、15bに突起14c、15cを付与した構成例、(c)は平行部14a、15aの端面14b、15bとの境界部に段差14d、15dを付与した構成例、(d)は平行部14a、15aにOリング18を付与した構成例をそれぞれ示している。
図20(a)〜(d)に示すいずれの構成例も、前述の(3)〜(6)式に示す平行部14a、15aと先端周長との関係を満足するものである。
上述した実施例は、あくまでも本発明の1つの具体例を示すものであり、金型本体12、13のキャビティの形状も比較的簡単な形状のものを示しているが、当然、通常の自動事部品に代表される3次元の複雑な形状でも良い。
また、上述した実施例では、小径側と大径側の両方から軸押しするものを示しているが、本発明ではどちらか片側に適用し、他方は従来から行われている、例えば、前記図1に示すような軸押しが無い方式を採用してもよい。軸押しの効果は、製品形状によって変化するため、その場合に応じて本発明の適用範囲を決定すればよい。
さらに、上述した実施例では、主として異形素管11の素材として単純なテーパ管形状の場合を記述したが、単純なテーパ管形状を組み合わせて溶接したものや、テーパ管と通常のストレート管を組み合わせた場合にも、両端部それぞれが単純なテーパ管の一部と近似できるため、本発明の異形素管11の素材として適用できる。
Claims (7)
- 液圧バルジ加工に供される異形素管であって、軸方向の一方から他方にかけて外径が漸次増加または減少する周長を有し、少なくとも一方端側に平行部を形成したことを特徴とする液圧バルジ加工用異形素管。
- 前記平行部の長さは、液圧バルジ加工で施される軸押し量と液圧バルジ加工時のシールに必要な長さとの合計長さ以上であることを特徴とする請求項1記載の液圧バルジ加工用異形素管。
- 矩形断面、または多角形状断面を有する液圧バルジ加工品の製造に供される異形素管であって、前記平行部におけるコーナ部の曲率半径Rを、管端部の軸方向距離に対応する異形素管の周長差の変化に対応して変化させることを特徴とする請求項1または2に記載の液圧バルジ加工用異形素管。
- 一対の金型本体と、請求項1〜3のいずれかに記載の異形素管を前記金型本体とで挟んで保持すべく、前記金型本体の両端に先端部が挿入されるシール工具を兼ねた軸押し工具とを備え、
前記軸押し工具のいずれかに加工液の注入孔が設けられ、前記金型本体の少なくとも一方の端側内面と、この端側内面に対応する前記軸押し工具の外面とに、それぞれ平行部が設けられていることを特徴とする液圧バルジ加工装置。 - 請求項4に記載の液圧バルジ加工装置において、小径部側の軸押し量をδL、大径部側の軸押し量をδL’、小径部側のシールに必要な長さをL0、大径部側のシールに必要な長さをL0’とした場合に、
前記金型本体の小径部側に設けられる平行部の長さはδL+L0以上であり、前記金型本体の大径部側に設けられる平行部の長さはδL’+L0’以上であり、かつ、軸押し工具の小径部側に設けられる平行部の長さはδL+L0以上であり、軸押し工具の大径部側に設けられる平行部の長さはL0’以上であることを特徴とする液圧バルジ加工装置。 - 請求項4または5に記載の液圧バルジ加工装置を用い、請求項1〜3のいずれかに記載の異形素管を製造したのち、前記異形素管に内圧負荷と押し込みとを組み合わせた液圧バルジ加工を施したことを特徴とする液圧バルジ加工方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の異形素管を請求項4または5に記載の液圧バルジ加工装置の金型内にセットし、前記異形素管に内圧負荷と押し込みとを組み合わせた液圧バルジ加工を施したことを特徴とするバルジ加工品。
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