JPWO2003095144A1 - ラップ装置及びラップ加工方法 - Google Patents
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Abstract
ラップ盤(4)、ラップ盤(4)の表面に砥粒スラリ(11)を供給するスラリ供給装置(10)、研磨対象物(6)をラップ盤(4)の表面に砥粒スラリ(11)を介して接触させながら保持する研磨対象物保持具(22b)、および前記ラップ盤(4)及び/又は研磨対象物保持具(22b)に付設された直動駆動装置(101a,101b)を含み、前記ラップ盤(4)及び/又は研磨対象物保持具(22b)に、ラップ盤(4)の表面に垂直な方向に振動する超音波振動を与える超音波振動付与手段(12)が付設され、そしてこの超音波振動付与手段(12)に電気エネルギーの供給手段(14)が備えられていることを特徴とするラップ装置を用いることにより、砥粒の使用量が低減され、そして同じサイズの砥粒を含むスラリを用いた場合に、従来よりも精度が高い研磨を実現することができる。
Description
[技術分野]
本発明は、高精度の研磨加工に用いられるラップ装置及びラップ加工方法に関する。
[背景技術]
半導体メモリに代表される集積回路の集積密度が高くなるにつれ、集積回路の形成に用いられる基板表面の高低差、あるいは集積回路を構成する薄膜素子や薄膜配線などの高低差を小さくするための平坦化技術が必要となっている。高低差が大きいと、集積回路の製造工程で行なわれるパターニングの精度が低下して、集積回路の集積密度を高くすることが難しくなるからである。ラップ装置は、集積回路の形成に用いられる基板など、研磨対象物の表面を高精度に研磨する装置である。
図1は、従来のラップ装置の構成例を示す正面図であり、図2は、図1のラップ装置の平面図である。図1と図2に示すラップ装置は、モータ1の回転軸2に、支持具3を介して固定されたラップ盤4、ラップ盤4の表面に砥粒スラリ11を供給するスラリ供給装置10、そして研磨対象物6をラップ盤4の表面に砥粒スラリを介して接触させながら回転可能に保持する円盤状の研磨対象物保持具5などから構成されている。
研磨対象物6は、ワックスなどを用いて、円盤状の研磨対象物保持具5に保持(仮固定)される。円盤状の研磨対象物保持具5は、その側面にて一対のローラ7a、7bにより支持されている。ローラ7a、7bのそれぞれは、基台(図示は略する)に立設された支柱9の上端に備えられたローラ支持部材8により、回転自在に支持されている。円盤状の研磨対象物保持具5は、ラップ盤4の回転に伴い、一対のローラ7a、7bに支持された状態で回転する。
ラップ盤4の表面には、スラリ供給手段10から砥粒を含むスラリ14が滴下される。砥粒スラリ11は、ラップ盤4の回転に伴って研磨対象物6の側に移動され、ラップ盤と研磨対象物との間に供給される。
ラップ盤4は、砥粒スラリ11に含まれる砥粒を、ラップ盤4と研磨対象物6との間に一時的に保持する働きをする。ラップ盤4は、砥粒よりも柔らかい金属材料(例、錫)などから構成される。例えば、錫製のラップ盤は、その表面が砥粒が押し付けられることにより極僅かに凹み、砥粒を一時的に保持する。同様に砥粒を一時的に保持するために、ラップ盤を、発泡樹脂もしくは不織布から形成することも知られている。
ラップ盤4と研磨対象物6とのそれぞれが、これらの間に砥粒を含むスラリが供給された状態で回転すると、研磨対象物の表面が研磨される。このような砥粒スラリを用いた研磨加工は、ラップ加工と呼ばれている。
砥粒スラリの種類は、研磨対象物の種類によって適宜選定される。砥粒スラリに含まれる砥粒としては、アルミナ粒子、シリカ粒子、酸化鉄粒子、酸化クロム粒子、あるいはダイヤモンド粒子などが用いられる。砥粒スラリの溶媒としては、水もしくは油などが用いられる。砥粒スラリの溶媒として、酸性あるいはアルカリ性の溶媒を用いて、研磨対象物の表面を化学的に浸食させ、砥粒による研磨を補助することも知られている。
従来のラップ装置の研磨精度は、装置の構成や、砥粒スラリの溶媒の種類によっても異なるが、主としてスラリに含まれる砥粒のサイズにより定まる。これは、研磨対象物をサンドペーパにより研磨する場合に、サンドペーパの粗さによって研磨の精度が定まることと同様である。
このようなラップ装置とは別に、超音波を利用して加工対象物を穴あけ、あるいは切削する加工方法が知られている。この加工方法においては、加工対象物の表面に、砥粒を含む溶液を介して、加工対象物の表面に垂直な方向に超音波振動する工具が押し付けられる。工具の超音波振動のエネルギーは砥粒に付与される。加工対象物は、砥粒の衝突による表面の破砕が続けられて、穴あけ、あるいは切削される。また、加工対象物の表面に、砥粒を含む溶液を介して、加工対象物の表面に平行な方向に超音波振動する工具を押しつけて、加工対象物の表面を研磨する加工方法も知られている。このように、加工対象物の表面に、砥粒を含む溶液を介して超音波振動する工具を押し付けて、加工対象物の穴あけ、切削、あるいは研磨などを行なう加工方法は、一般に、超音波砥粒加工方法と呼ばれている。超音波砥粒加工方法においても、加工後の加工対象物の表面の粗さは、主として砥粒のサイズにより定まることが知られている。
上記のように、従来のラップ装置の研磨精度は、主として砥粒スラリに含まれる砥粒のサイズにより定まる。すなわち、研磨の精度を高くするためには、より小さなサイズの砥粒を用いる必要がある。通常、砥粒は、そのサイズが小さくなるほど高価であり、研磨の精度を高くするほど、研磨加工に要する費用が高くなる。
その上、従来のラップ装置では、ラップ盤表面のラップ盤の回転中心近傍においては、研磨対象物の研磨は行われていないという問題がある。これは、前記の回転中心近傍においては、ラップ盤の表面の移動速度が低い、すなわち研磨の速度が低いからである。従来のラップ装置においては、ラップ盤表面のラップ盤の回転中心近傍、すなわち、ラップ盤表面の研磨に用いられない領域にまで砥粒スラリを供給する必要がある。このような領域にまで、研磨に用いられない砥粒スラリを供給することは、従来のラップ装置の砥粒スラリの使用量が多い原因の一つである。砥粒スラリの使用量が多いと、同様に研磨加工に要する費用が高くなる。
本発明の目的は、砥粒スラリの使用量を低減することができ、そして同じサイズの砥粒を含むスラリを用いた場合に、従来よりも精度が高い研磨を実現することができるラップ装置を提供することにある。
[発明の開示]
本発明は、ラップ盤、ラップ盤の表面に砥粒スラリを供給するスラリ供給装置、研磨対象物を前記ラップ盤の表面に砥粒スラリを介して接触させながら保持する研磨対象物保持具、および前記ラップ盤及び/又は研磨対象物保持具に付設され、ラップ盤及び/又は研磨対象物保持具をラップ盤の表面に沿った方向に一次元的に移動させる直動駆動装置を含み、前記ラップ盤及び/又は研磨対象物保持具に、ラップ盤の表面に垂直な方向に振動する超音波振動を与える超音波振動付与手段が付設され、そしてこの超音波振動付与手段に電気エネルギーの供給手段が備えられていることを特徴とするラップ装置にある。
本発明のラップ装置の好ましい態様は、下記の通りである。
(1)ラップ盤および研磨対象物保持具のそれぞれに直動駆動装置が付設され、前記ラップ盤の移動方向と研磨対象物保持具の移動方向とが互いに直交する。
(2)上記(1)のラップ装置の研磨対象物保持具のみに、上記のラップ盤表面に垂直な方向に振動する超音波振動を与える超音波振動付与手段が付設されている。
(3)上記(2)のラップ装置の超音波振動付与手段に、ラップ盤の表面に平行な方向に振動する超音波振動を与える別の超音波振動付与手段が付設され、この超音波振動付与手段にも電気エネルギーの供給手段が備えられている。
(4)研磨対象物保持具に直動駆動装置が付設され、そしてラップ盤に、該ラップ盤をその表面に垂直な方向を中心軸として回転させる回転駆動装置が付設されている。
(5)上記(4)のラップ盤および研磨対象物保持具のそれぞれに、上記のラップ盤表面に垂直な方向に振動する超音波振動を与える超音波振動付与手段が付設されている。
(6)超音波振動付与手段の電気エネルギー供給手段に、電気エネルギーの電圧値もしくは周波数値を調節する機構が備えられている。
本発明はまた、上記のラップ装置を用い、ラップ盤表面で研磨されている研磨対象物の研磨の進行に応じて超音波振動付与手段に与える電気エネルギーの電圧値もしくは周波数値を調節することを特徴とするラップ加工方法にもある。
[発明の詳細な説明]
本発明を、添付の図面を用いて説明する。図3は、本発明に従うラップ装置の構成例を示す斜視図である。図3のラップ装置は、ラップ盤4、ラップ盤4の表面に砥粒スラリ11を供給するスラリ供給装置10a、10b、10c、研磨対象物6をラップ盤4の表面に砥粒スラリを介して接触させながら保持する研磨対象物保持具22b、およびラップ盤4および研磨対象物保持具22bに付設され、ラップ盤4および研磨対象物保持具22bをラップ盤4の表面に沿った方向に一次元的に移動させる直動駆動装置101a、101bなどから構成されている。そして図3のラップ装置の研磨対象物保持具22bには、ラップ盤の表面に垂直な方向に振動する超音波振動を与える超音波振動付与手段12が付設され、そして超音波振動付与手段12には、電気エネルギーの供給手段14が備えられている。
ラップ盤4は、二本のリニアガイド17a、17bを介して、基台20に接合されている。この二本のリニアガイド17a、17bにより、ラップ盤4は、その表面に沿った一次元方向(リニアガイドの長さ方向)に移動可能とされている。
スラリ供給装置10a、10b、10cのそれぞれは、図示しない固定具により、例えば、ラップ盤4の端部に固定される。図3において、スラリ供給装置に接続される配管やポンプなどの記載は省略した。
直動駆動装置101aは、回転駆動装置1a、および回転駆動装置1aの回転軸に接続されたボールねじから構成されている。ボールねじは、ねじ軸15aとナット16aとから構成されている。ボールねじは、回転駆動装置1aの回転軸の回転運動を、ねじ軸15aの長さ方向に沿ったナット16aの直線運動に変換する。回転駆動装置1aは、図示しない固定具により基台20に固定されている。回転駆動装置1aとしては、例えば、ステッピングモータが用いられる。ラップ盤4に付設された直動駆動装置101aは、ラップ盤4を、ラップ盤4の表面に沿った方向に一次元的に移動させる。
直動駆動装置101bの構成は、直動駆動装置101aと同様である。回転駆動装置1bは、図示しない固定具により基台20に固定されている。研磨対象物保持具22bに、超音波振動付与手段12を介して付設された直動駆動装置101bは、研磨対象物保持具22bを、ラップ盤4の表面に沿った方向に一次元的に移動させる。
直動駆動装置は、ラップ盤及び研磨対象物保持具のうちの少なくとも一つに付設されていればよい。直動駆動装置により、ラップ盤及び研磨対象物保持具のうちの少なくとも一つを一次元的に移動させることにより、ラップ盤の表面の全体を研磨に用いることができる。すなわち、本発明のラップ装置においては、ラップ盤の表面全体を研磨に用いることができるために、ラップ盤の表面の面積を小さく設定することができる。従って、研磨加工(ラップ加工)のために供給するスラリの量を低減することができる。
図3に示すように、直動駆動装置は、ラップ盤4および研磨対象物保持具22bのそれぞれに付設されていることが好ましい。さらに、ラップ盤4の移動方向と研磨対象物保持具22bの移動方向は、互いに直交することが好ましい。このように、直動駆動装置をラップ盤4および研磨対象物保持具22bのそれぞれに付設することにより、従来のようにラップ盤の下側に回転駆動装置を付設する必要がなくなり、ラップ装置の高さを小さくすることができる。すなわち、図3のラップ装置は、前記のようにラップ盤の表面の面積を小さく設定することができ、そして装置の高さも小さいために、小型化が可能である。
超音波振動付与手段12としては、円盤状の圧電セラミック23eの各々の面に電極板24g、24hが付設された構成の圧電振動子、支持板25、および円盤状の圧電セラミック23fの各々の面に電極板24i、24jが付設された構成の圧電振動子を、上側金属部材22aと下側金属部材(前記の研磨対象物22b)とで挟んだ状態でボルト締めして構成されるランジュバン型振動子が用いられている。
圧電セラミック23e、23fのそれぞれは、その厚み方向に分極されている。各々の圧電セラミックと、その両面に付設されている電極板とにより、縦振動モードの圧電振動子が構成されている。これらの縦振動モードの圧電振動子が、ラップ盤の表面に垂直な方向に振動する超音波を付与する超音波振動付与手段として機能する。
圧電セラミック23e、23fのそれぞれは、例えば、ジルコン酸チタン酸鉛系のセラミック材料から形成される。電極板24g、24h、24jのそれぞれは、例えば、リン青銅から形成される。上側金属部材22a、支持板25、および下側金属部材のそれぞれは、例えば、アルミニウムなどの金属材料から形成される。
電気エネルギー供給手段14としては、例えば、交流電源が用いられる。電気エネルギー供給手段14により、各々の圧電振動子の電極板に交流電圧が供給されると、圧電セラミック23e、23fのそれぞれは、その面に垂直な方向、すなわちラップ盤4の表面に垂直な方向に振動する超音波振動を発生する。これにより、超音波振動付与手段12は、ラップ盤4に垂直な方向に振動する超音波振動を、研磨対象物保持具22bに付与する。
超音波振動付与手段は、ラップ盤および研磨対象物保持具のうちの少なくとも一つに付設されていればよい。超音波振動付与手段の例としては、電歪振動子及び磁歪振動子が挙げられる。電歪振動子の例としては、圧電セラミックの各々の面に電極が付設された構成の圧電振動子、および前記ランジュバン型振動子が挙げられる。磁歪振動子の例としては、金属磁歪振動子、およびフェライト振動子が挙げられる。超音波振動付与手段としては、その構成が簡単であることから電歪振動子を用いることが好ましい。超音波振動付与手段は、ラップ盤(もしくは研磨対象物保持具)に効率良く超音波を伝えるために、グリースやワセリンなどの接触媒質を介してラップ盤(もしくは研磨対象物保持具)に付設することが好ましい。
次に、図3のラップ装置を用いて、研磨対象物を研磨する手順について説明する。まず研磨対象物6を、ワックスなどを用いて、研磨対象物保持具22bに保持(仮固定)する。そして直動駆動装置101a、101bの各々の回転駆動装置1a、1bを駆動させて、ラップ盤4及び研磨対象物保持具22bのそれぞれを、ラップ盤4の表面に沿った方向に一次元的に移動(往復運動)させる。同時に、スラリ供給装置10a、10b、10cのそれぞれから、ラップ盤4の表面に砥粒スラリ11を供給する。そして同時に、超音波振動付与手段12の各々の圧電振動子に、電気エネルギー付与手段14を用いて交流電圧(電気エネルギー)を供給することにより、研磨対象物保持具22bに、ラップ盤の表面に垂直な方向に振動する超音波振動を付与する。
ラップ盤4と研磨対象物保持具22bの移動に伴い、砥粒スラリ11は、研磨対象物6とラップ盤4との間に供給される。ラップ盤4と、研磨対象物保持具22bに保持された研磨対象物6とが、砥粒スラリを介して一次元的に移動することにより、研磨対象物6の表面が研磨される。この研磨加工において、研磨対象物保持具22bに付与された、ラップ盤4の表面に垂直な方向に振動する超音波振動によって、研磨対象物6の表面が高い精度で研磨される。
次に、図3のラップ装置を用いた研磨加工(ラップ加工)と、超音波振動付与手段12により研磨対象物保持具22bに付与される超音波振動との関係について説明する。図4は、図3のラップ装置による研磨加工について説明する断面図である。図4においては、研磨対象物6の表面がスラリの砥粒により研磨されている状態を説明するために、砥粒21を実際よりも大きなサイズで記載する。また、砥粒スラリの溶媒は、記載を省略する。
図4(A)は、研磨対象物保持具22bに超音波振動が付与されていない場合に、砥粒21によって研磨対象物6の表面が研磨されている状態を示している。ラップ盤4と、研磨対象物保持具22bに保持された研磨対象物6とのそれぞれは、各々の表面に砥粒21の一部が押し込まれた状態で、ラップ盤4の表面に沿って一次元的に移動(往復運動)している。このため、研磨対象物6の表面が、砥粒21によって研磨される。研磨対象物保持具22bに超音波振動が付与されていないために、研磨後の研磨対象物6の表面の精度は、従来のラップ装置を用いて研磨した場合と同程度の精度を示す。
図5(B)は、研磨対象物保持具22bに超音波振動が付与されている場合に、砥粒21によって研磨対象物6の表面が研磨されている状態を示している。研磨対象物保持具22bは、超音波振動が付与されているために、ラップ盤4の表面に垂直な方向に超音波振動する。この超音波振動は研磨対象物6に伝わり、研磨対象物もラップ盤4の表面に垂直な方向に超音波振動する。このように研磨対象物6が超音波振動すると、研磨対象物6の表面から発せれらた超音波の音圧によって、ラップ盤4と研磨対象物6との間隔が極僅かに広がると推測される。図5(B)に示すように、ラップ盤4と研磨対象物6との間隔が極僅かに広がると、研磨対象物6と砥粒21との接触面積は、図5(A)の場合よりも小さくなる。このため、超音波振動の付与によって、研磨対象物6を、砥粒21よりも小さなサイズの砥粒によって研磨した場合と同様に、高い精度で研磨することができる。
図5(C)は、研磨対象物保持具22bに、図5(B)で付与した超音波振動よりも大きな超音波振動が付与されている場合に、砥粒21によって研磨対象物6の表面が研磨されている状態を示している。研磨対象物保持具22bに、より大きな超音波振動が付与されているために、ラップ盤4と研磨対象物6との間隔がさらに広がって、研磨対象物6と砥粒21との接触面積は、図5(B)の場合よりも小さくなる。従って、研磨対象物6を、さらに高い精度で研磨することができる。
このように、本発明のラップ装置は、同じサイズの砥粒が含まれるスラリを用いた場合に、従来のラップ装置の場合よりも精度が高い研磨を実現することができる。即ち、研磨対象物の表面を所定の精度で研磨する場合に、従来のラップ装置よりも大きなサイズの砥粒を用いることができる。前述のように、砥粒は、そのサイズが小さくなるほど高価となる。従って、本発明のラップ装置を用いることにより、研磨加工に要する費用を低減することができる。
また、従来のラップ装置を用いた研磨加工においては、研磨の途中で砥粒スラリの溶媒が乾燥した場合に研磨対象物表面にスクラッチが発生し易い問題があった。本発明のラップ装置を用いた研磨加工においては、研磨対象物保持具に超音波振動を付与することによって、研磨対象物と砥粒との接触面積、すなわち互いの摩擦が低減されている。従って、研磨の途中で砥粒スラリの溶媒が乾燥した場合の研磨対象物表面のスクラッチの発生を低減することもできる。
また、前記のように、従来のラップ装置の研磨加工の精度は、主として砥粒スラリのサイズにより定まる。このため、従来のラップ装置を用いて、研磨対象物の表面を、粗研磨、そして仕上げ研磨するような場合には、砥粒スラリの交換が必要であった。本発明のラップ装置は、研磨対象物保持具(もしくはラップ盤)に超音波振動を付与しないで研磨した場合と、超音波を付与して研磨した場合とで、研磨対象物を異なる精度で研磨することができる。このような特徴を生かして、まず、研磨対象物保持具に超音波振動を付与しないで研磨対象物を粗研磨し、次いで研磨対象物保持具に超音波振動を付与することにより、用いる砥粒スラリを交換することなく、この研磨対象物を仕上げ研磨することができる。
本発明のラップ装置の超音波振動付与手段に備えられた電気エネルギー供給手段14には、超音波振動付与手段12に供給する電気エネルギーの電圧値もしくは周波数値を調節する機構が備えられていることが好ましい。
超音波振動付与手段12に供給する電気エネルギーの電圧値もしくは周波数値を調節することにより、超音波振動付与手段の発生する超音波振動の大きさ、すなわち研磨の精度を調節することができる。なお、超音波振動付与手段は、供給された電気エネルギー(例、交流電圧)の周波数値が、超音波振動付与手段の共振周波数値と一致するときに最も大きな超音波振動を発生し、周波数値が共振周波数値より高い値又は低い値であるときには、前記よりも小さな超音波振動を発生する。従って、電気エネルギーの周波数値を調節することによっても、研磨の精度を調節することができる。
そして、このような電気エネルギー供給手段が備えられたラップ装置を用いて、ラップ盤表面で研磨されている研磨対象物の研磨の進行に応じて超音波振動付与手段に与える電気エネルギーの電圧値もしくは周波数を調節しながら、研磨対象物を研磨することが好ましい。すなわち、粗加工の段階では、ラップ盤に超音波振動を付与せずに研磨対象物を研磨し、研磨の進行に応じて、次第に大きな超音波振動を付与して研磨対象物をより高い精度で研磨していくことにより、研磨対象物を効率良く研磨することができる。
研磨の進行具合は、例えば、研磨中のラップ盤と研磨対象物との摩擦の大きさから検出することができる。図3のラップ装置の超音波振動子の支持板25と直動駆動装置101bとの間には、前記摩擦の大きさを検出するための応力センサ18、そして応力センサの出力する電気信号を応力値(前記の摩擦の大きさに対応する)に変換する応力測定装置19が備えられている。
図5は、本発明に従うラップ装置の別の構成例を示す斜視図であ。そして図6は、図5のラップ装置の超音波振動付与手段の構成を説明する図である。図5のラップ装置の構成は、その超音波振動付与手段12の構成がことなること以外は、図3のラップ装置と同様である。
図6(A)に示すように、超音波振動付与手段は、電極板24a、圧電セラミック23a、電極板24b、圧電セラミック23b、電極板24c、支持板25、電極板24d、圧電セラミック23c、電極板24e、圧電セラミック23d、および電極板24fを、上側金属部材22aと下側金属部材(前記の研磨対象物保持具22b)とで挟んだ状態でボルト締めして構成されるランジュバン型振動子が用いられている。
図6(C)は、圧電セラミック23c、23dの各々の構成と、その分極方向を示している。圧電セラミック23c、23dの各々には、円盤状の圧電セラミックが用いられている。図6(C)に記入した矢印は、圧電セラミックの分極方向を示している。圧電セラミック23c、23dのそれぞれと、その両面に付設された電極板とにより、縦振動モードの圧電振動子が構成されている。これらの縦振動モードの圧電振動子が、ラップ盤の表面に垂直な方向に振動する超音波を付与する超音波振動付与手段として機能する。そしてこれらの圧電振動子には、電気エネルギー供給手段(図5:14a)として、交流電源が備えられている。
圧電セラミック23c、23dのそれぞれは、その両面に付設された電極板を介して交流電圧(電気エネルギー)が供給されると、その厚み方向に振動する。従って、圧電セラミック23c、23dが振動することにより、超音波振動付与手段12は、ラップ盤表面に垂直な方向に振動する超音波振動を発生し、この超音波振動を研磨対象物保持具22bに付与する。この超音波振動の付与により、研磨対象物保持具22bが、ラップ盤4の表面に垂直な方向に超音波振動すると、研磨対象物6の表面が高い精度で研磨される。
図6(B)は、圧電セラミック23a、23bの各々の構成と、その分極方向を示している。圧電セラミック23a、23bの各々には、四個の圧電セラミックがエポキシ樹脂で互いに接合された構成の円盤状の圧電セラミックが用いられている。図6(B)に記入した矢印は、圧電セラミックの分極方向を示している。圧電セラミック23a、23bのそれぞれと、その両面に付設された電極板とにより、ねじれ振動モードの圧電振動子が構成されている。これらのねじれ振動モードの圧電振動子が、ラップ盤の表面に平行な方向に振動する超音波を付与する超音波振動付与手段として機能する。そしてこれらの圧電振動子には、電気エネルギー供給手段(図5:14b)として、交流電源が備えられている。
圧電セラミック23a、23bのそれぞれは、その両面に付設された電極板を介して交流電圧が供給されると、その周方向に沿って振動する。従って、圧電セラミック23a、23bが振動することにより、超音波振動付与手段12はラップ盤4の表面に平行な方向に振動する超音波振動を発生し、この超音波振動を研磨対処物保持具22bに付与する。この超音波振動の付与により、研磨対象物保持具22bが、ラップ盤4の表面に平行な方向に超音波振動すると、研磨対象物6の表面が高い速度で研磨される。このように、超音波振動付与手段12には、ラップ盤4の表面に平行な方向に振動する別の超音波振動付与手段(上記のねじれ振動モードの圧電振動子)が付設されていることも好ましい。
また、ラップ盤の表面に水平な方向に振動する超音波振動付与手段としては、上記のねじれ振動モードの圧電振動子の他に、例えば、曲げ振動モードの圧電振動子、あるいはすべり振動モードの圧電振動子を用いることができる。
図7は、本発明に従うラップ装置のさらに別の構成例を示す図である。図7のラップ装置のラップ盤4には、ラップ盤4をその表面に垂直な方向を中心軸として回転させる回転駆動装置1aが付設されている。ラップ盤4は、回転駆動装置の回転軸2に接続されている。図7のラップ装置の場合、回転駆動装置1aとしては、ACサーボモータが用いられている。
図7のラップ装置の直動駆動装置101bは、回転駆動装置1b、回転駆動装置1bの回転軸に接続されたボールねじから構成されている。ボールねじは、ねじ軸15bとナット16bとから構成されている。ボールねじのナット16bは、超音波振動付与手段12の支持板25に接続されている。回転駆動装置1bは、回転駆動装置1aが設置されている基台に立設された支柱に固定されている(図示は略する)。図7のラップ装置の場合、回転駆動装置1bとしては、ステッピングモータが用いられている。研磨対象物保持具5に超音波振動付与手段12を介して付設された直動駆動装置101bは、研磨対象物保持具5を、ラップ盤4の表面に沿った方向に一次元的に移動させる。
図7のラップ装置のように、研磨対象物保持具5のみをラップ盤の表面に沿った方向に一次元的に移動させることによっても、これまで研磨に用いられていなかった、ラップ盤の表面のラップ盤の回転中心近傍を研磨に用いることができる。すなわち、ラップ盤の表面全体を研磨に用いることができるために、ラップ盤の表面の面積(ラップ盤の直径)を小さく設定することができる。従って、ラップ盤の表面に供給するスラリの量を低減することができる。
図7のラップ装置の研磨対象物保持具5には、ラップ盤の表面に垂直な方向に振動する超音波振動を付与する超音波振動付与手段12が付設されている。超音波振動付与手段12には、電気エネルギー供給手段14bが備えられている。同様に、ラップ盤4には、ラップ盤の表面に垂直な方向に振動する超音波振動を付与する超音波振動付与手段12a、12bが付設されている。そして超音波振動付与手段12a、12bには、電気エネルギー供給手段14aが備えられている。超音波振動付与手段12a、12bのそれぞれと、電気エネルギー供給手段14aとは、スリップリング13を介して電気的に接続されている。本発明のラップ装置においては、図7に示すように、ラップ盤及び研磨対象物保持具のそれぞれに超音波振動付与手段を付設することもできる。
図8は、本発明に従うラップ装置のさらに別の構成例を示す図である。図8のラップ装置の構成は、研磨対象物保持具5の側面に超音波振動付与手段12cが付設され、そして研磨対象物保持具5に、前記超音波振動付与手段12cを介して直動駆動装置101bが付設されていること以外は、図7のラップ装置と同様である。直動駆動装置101bとしては、リニアモータが用いられている。直動駆動装置101bは、回転駆動装置1aが設置されている基台に立設された支柱に固定されている(図示は略する)。
超音波振動付与手段12cは、前記と同様に、支持板25及び支持板25の各々の面に配置された超音波振動子とを、上側金属部材22aと下側金属部材22cとで挟んだ状態でボルト締めして構成されるランジュバン型振動子が用いられている。超音波振動付与手段12cの支持板25には、支柱25bを介して別の支持板25cが固定されている。直動駆動装置101bは、前記支持板25cを介して、超音波振動付与手段12cに接続されている。
図8のラップ装置において、超音波振動付与手段12a、12bの各々が、ラップ盤4に、ラップ盤の表面に垂直な方向に振動する超音波振動を付与する。この超音波振動の付与により、ラップ盤4が、その表面に垂直な方向に超音波振動すると、研磨対象物6の表面が高い精度で研磨される。そして超音波振動付与手段12cが、研磨対象物保持具5に、ラップ盤の表面に平行な方向に振動する超音波振動を付与する。この超音波振動の付与により、研磨対象物保持具5が、ラップ盤4の表面に平行な方向に超音波振動すると、研磨対象物6の表面が高い速度で研磨される。
図8のラップ装置の超音波振動付与手段12cの構成は、図7の超音波振動付与手段12と同様である。すなわち、超音波振動付与手段12cが備える超音波振動子としては、縦振動モードの圧電振動子が用いられている。図8に示すように、縦振動モードの圧電振動子を備えた超音波振動付与手段12cは、研磨対象物保持具5に、ラップ盤の表面に平行な方向に振動する超音波振動を付与する。このように、ラップ盤の表面に平行な方向に振動する超音波振動を付与する超音波振動付与手段としては、縦振動モードの圧電振動子を用いることもできる。
[産業上の利用可能性]
本発明のラップ装置は、超音波振動を利用することにより、同じサイズの砥粒を含むスラリを用いた場合に、従来の装置よりも精度が高い研磨を実現することができる。従って、研磨対象物の表面を所定の精度で研磨する場合、本発明のラップ装置は、従来の装置の場合よりも大きなサイズの砥粒を含むスラリ(より安価な砥粒スラリ)を用いた研磨を可能とする。さらに本発明のラップ装置においては、ラップ盤の表面全体が研磨に用いられるために、ラップ盤表面の面積を小さく設定することができる。このため、ラップ装置のラップ盤表面に供給する砥粒スラリの使用量を低減することができる。従って、本発明のラップ装置を用いることにより、研磨加工に必要な費用を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、従来のラップ装置の構成例を示す正面図である。
図2は、図1のラップ装置の平面図である。
図3は、本発明に従うラップ装置の構成例を示す斜視図である。
図4は、図3のラップ装置を用いた研磨加工について説明する断面図である。
図5は、本発明に従うラップ装置の別の構成例を示す斜視図である。
図6は、図5のラップ装置の超音波振動付与手段の構成を説明する図である。
図7は、本発明に従うラップ装置のさらに別の構成例を示す図である。
図8は、本発明に従うラップ装置のさらに別の構成例を示す図である。
本発明は、高精度の研磨加工に用いられるラップ装置及びラップ加工方法に関する。
[背景技術]
半導体メモリに代表される集積回路の集積密度が高くなるにつれ、集積回路の形成に用いられる基板表面の高低差、あるいは集積回路を構成する薄膜素子や薄膜配線などの高低差を小さくするための平坦化技術が必要となっている。高低差が大きいと、集積回路の製造工程で行なわれるパターニングの精度が低下して、集積回路の集積密度を高くすることが難しくなるからである。ラップ装置は、集積回路の形成に用いられる基板など、研磨対象物の表面を高精度に研磨する装置である。
図1は、従来のラップ装置の構成例を示す正面図であり、図2は、図1のラップ装置の平面図である。図1と図2に示すラップ装置は、モータ1の回転軸2に、支持具3を介して固定されたラップ盤4、ラップ盤4の表面に砥粒スラリ11を供給するスラリ供給装置10、そして研磨対象物6をラップ盤4の表面に砥粒スラリを介して接触させながら回転可能に保持する円盤状の研磨対象物保持具5などから構成されている。
研磨対象物6は、ワックスなどを用いて、円盤状の研磨対象物保持具5に保持(仮固定)される。円盤状の研磨対象物保持具5は、その側面にて一対のローラ7a、7bにより支持されている。ローラ7a、7bのそれぞれは、基台(図示は略する)に立設された支柱9の上端に備えられたローラ支持部材8により、回転自在に支持されている。円盤状の研磨対象物保持具5は、ラップ盤4の回転に伴い、一対のローラ7a、7bに支持された状態で回転する。
ラップ盤4の表面には、スラリ供給手段10から砥粒を含むスラリ14が滴下される。砥粒スラリ11は、ラップ盤4の回転に伴って研磨対象物6の側に移動され、ラップ盤と研磨対象物との間に供給される。
ラップ盤4は、砥粒スラリ11に含まれる砥粒を、ラップ盤4と研磨対象物6との間に一時的に保持する働きをする。ラップ盤4は、砥粒よりも柔らかい金属材料(例、錫)などから構成される。例えば、錫製のラップ盤は、その表面が砥粒が押し付けられることにより極僅かに凹み、砥粒を一時的に保持する。同様に砥粒を一時的に保持するために、ラップ盤を、発泡樹脂もしくは不織布から形成することも知られている。
ラップ盤4と研磨対象物6とのそれぞれが、これらの間に砥粒を含むスラリが供給された状態で回転すると、研磨対象物の表面が研磨される。このような砥粒スラリを用いた研磨加工は、ラップ加工と呼ばれている。
砥粒スラリの種類は、研磨対象物の種類によって適宜選定される。砥粒スラリに含まれる砥粒としては、アルミナ粒子、シリカ粒子、酸化鉄粒子、酸化クロム粒子、あるいはダイヤモンド粒子などが用いられる。砥粒スラリの溶媒としては、水もしくは油などが用いられる。砥粒スラリの溶媒として、酸性あるいはアルカリ性の溶媒を用いて、研磨対象物の表面を化学的に浸食させ、砥粒による研磨を補助することも知られている。
従来のラップ装置の研磨精度は、装置の構成や、砥粒スラリの溶媒の種類によっても異なるが、主としてスラリに含まれる砥粒のサイズにより定まる。これは、研磨対象物をサンドペーパにより研磨する場合に、サンドペーパの粗さによって研磨の精度が定まることと同様である。
このようなラップ装置とは別に、超音波を利用して加工対象物を穴あけ、あるいは切削する加工方法が知られている。この加工方法においては、加工対象物の表面に、砥粒を含む溶液を介して、加工対象物の表面に垂直な方向に超音波振動する工具が押し付けられる。工具の超音波振動のエネルギーは砥粒に付与される。加工対象物は、砥粒の衝突による表面の破砕が続けられて、穴あけ、あるいは切削される。また、加工対象物の表面に、砥粒を含む溶液を介して、加工対象物の表面に平行な方向に超音波振動する工具を押しつけて、加工対象物の表面を研磨する加工方法も知られている。このように、加工対象物の表面に、砥粒を含む溶液を介して超音波振動する工具を押し付けて、加工対象物の穴あけ、切削、あるいは研磨などを行なう加工方法は、一般に、超音波砥粒加工方法と呼ばれている。超音波砥粒加工方法においても、加工後の加工対象物の表面の粗さは、主として砥粒のサイズにより定まることが知られている。
上記のように、従来のラップ装置の研磨精度は、主として砥粒スラリに含まれる砥粒のサイズにより定まる。すなわち、研磨の精度を高くするためには、より小さなサイズの砥粒を用いる必要がある。通常、砥粒は、そのサイズが小さくなるほど高価であり、研磨の精度を高くするほど、研磨加工に要する費用が高くなる。
その上、従来のラップ装置では、ラップ盤表面のラップ盤の回転中心近傍においては、研磨対象物の研磨は行われていないという問題がある。これは、前記の回転中心近傍においては、ラップ盤の表面の移動速度が低い、すなわち研磨の速度が低いからである。従来のラップ装置においては、ラップ盤表面のラップ盤の回転中心近傍、すなわち、ラップ盤表面の研磨に用いられない領域にまで砥粒スラリを供給する必要がある。このような領域にまで、研磨に用いられない砥粒スラリを供給することは、従来のラップ装置の砥粒スラリの使用量が多い原因の一つである。砥粒スラリの使用量が多いと、同様に研磨加工に要する費用が高くなる。
本発明の目的は、砥粒スラリの使用量を低減することができ、そして同じサイズの砥粒を含むスラリを用いた場合に、従来よりも精度が高い研磨を実現することができるラップ装置を提供することにある。
[発明の開示]
本発明は、ラップ盤、ラップ盤の表面に砥粒スラリを供給するスラリ供給装置、研磨対象物を前記ラップ盤の表面に砥粒スラリを介して接触させながら保持する研磨対象物保持具、および前記ラップ盤及び/又は研磨対象物保持具に付設され、ラップ盤及び/又は研磨対象物保持具をラップ盤の表面に沿った方向に一次元的に移動させる直動駆動装置を含み、前記ラップ盤及び/又は研磨対象物保持具に、ラップ盤の表面に垂直な方向に振動する超音波振動を与える超音波振動付与手段が付設され、そしてこの超音波振動付与手段に電気エネルギーの供給手段が備えられていることを特徴とするラップ装置にある。
本発明のラップ装置の好ましい態様は、下記の通りである。
(1)ラップ盤および研磨対象物保持具のそれぞれに直動駆動装置が付設され、前記ラップ盤の移動方向と研磨対象物保持具の移動方向とが互いに直交する。
(2)上記(1)のラップ装置の研磨対象物保持具のみに、上記のラップ盤表面に垂直な方向に振動する超音波振動を与える超音波振動付与手段が付設されている。
(3)上記(2)のラップ装置の超音波振動付与手段に、ラップ盤の表面に平行な方向に振動する超音波振動を与える別の超音波振動付与手段が付設され、この超音波振動付与手段にも電気エネルギーの供給手段が備えられている。
(4)研磨対象物保持具に直動駆動装置が付設され、そしてラップ盤に、該ラップ盤をその表面に垂直な方向を中心軸として回転させる回転駆動装置が付設されている。
(5)上記(4)のラップ盤および研磨対象物保持具のそれぞれに、上記のラップ盤表面に垂直な方向に振動する超音波振動を与える超音波振動付与手段が付設されている。
(6)超音波振動付与手段の電気エネルギー供給手段に、電気エネルギーの電圧値もしくは周波数値を調節する機構が備えられている。
本発明はまた、上記のラップ装置を用い、ラップ盤表面で研磨されている研磨対象物の研磨の進行に応じて超音波振動付与手段に与える電気エネルギーの電圧値もしくは周波数値を調節することを特徴とするラップ加工方法にもある。
[発明の詳細な説明]
本発明を、添付の図面を用いて説明する。図3は、本発明に従うラップ装置の構成例を示す斜視図である。図3のラップ装置は、ラップ盤4、ラップ盤4の表面に砥粒スラリ11を供給するスラリ供給装置10a、10b、10c、研磨対象物6をラップ盤4の表面に砥粒スラリを介して接触させながら保持する研磨対象物保持具22b、およびラップ盤4および研磨対象物保持具22bに付設され、ラップ盤4および研磨対象物保持具22bをラップ盤4の表面に沿った方向に一次元的に移動させる直動駆動装置101a、101bなどから構成されている。そして図3のラップ装置の研磨対象物保持具22bには、ラップ盤の表面に垂直な方向に振動する超音波振動を与える超音波振動付与手段12が付設され、そして超音波振動付与手段12には、電気エネルギーの供給手段14が備えられている。
ラップ盤4は、二本のリニアガイド17a、17bを介して、基台20に接合されている。この二本のリニアガイド17a、17bにより、ラップ盤4は、その表面に沿った一次元方向(リニアガイドの長さ方向)に移動可能とされている。
スラリ供給装置10a、10b、10cのそれぞれは、図示しない固定具により、例えば、ラップ盤4の端部に固定される。図3において、スラリ供給装置に接続される配管やポンプなどの記載は省略した。
直動駆動装置101aは、回転駆動装置1a、および回転駆動装置1aの回転軸に接続されたボールねじから構成されている。ボールねじは、ねじ軸15aとナット16aとから構成されている。ボールねじは、回転駆動装置1aの回転軸の回転運動を、ねじ軸15aの長さ方向に沿ったナット16aの直線運動に変換する。回転駆動装置1aは、図示しない固定具により基台20に固定されている。回転駆動装置1aとしては、例えば、ステッピングモータが用いられる。ラップ盤4に付設された直動駆動装置101aは、ラップ盤4を、ラップ盤4の表面に沿った方向に一次元的に移動させる。
直動駆動装置101bの構成は、直動駆動装置101aと同様である。回転駆動装置1bは、図示しない固定具により基台20に固定されている。研磨対象物保持具22bに、超音波振動付与手段12を介して付設された直動駆動装置101bは、研磨対象物保持具22bを、ラップ盤4の表面に沿った方向に一次元的に移動させる。
直動駆動装置は、ラップ盤及び研磨対象物保持具のうちの少なくとも一つに付設されていればよい。直動駆動装置により、ラップ盤及び研磨対象物保持具のうちの少なくとも一つを一次元的に移動させることにより、ラップ盤の表面の全体を研磨に用いることができる。すなわち、本発明のラップ装置においては、ラップ盤の表面全体を研磨に用いることができるために、ラップ盤の表面の面積を小さく設定することができる。従って、研磨加工(ラップ加工)のために供給するスラリの量を低減することができる。
図3に示すように、直動駆動装置は、ラップ盤4および研磨対象物保持具22bのそれぞれに付設されていることが好ましい。さらに、ラップ盤4の移動方向と研磨対象物保持具22bの移動方向は、互いに直交することが好ましい。このように、直動駆動装置をラップ盤4および研磨対象物保持具22bのそれぞれに付設することにより、従来のようにラップ盤の下側に回転駆動装置を付設する必要がなくなり、ラップ装置の高さを小さくすることができる。すなわち、図3のラップ装置は、前記のようにラップ盤の表面の面積を小さく設定することができ、そして装置の高さも小さいために、小型化が可能である。
超音波振動付与手段12としては、円盤状の圧電セラミック23eの各々の面に電極板24g、24hが付設された構成の圧電振動子、支持板25、および円盤状の圧電セラミック23fの各々の面に電極板24i、24jが付設された構成の圧電振動子を、上側金属部材22aと下側金属部材(前記の研磨対象物22b)とで挟んだ状態でボルト締めして構成されるランジュバン型振動子が用いられている。
圧電セラミック23e、23fのそれぞれは、その厚み方向に分極されている。各々の圧電セラミックと、その両面に付設されている電極板とにより、縦振動モードの圧電振動子が構成されている。これらの縦振動モードの圧電振動子が、ラップ盤の表面に垂直な方向に振動する超音波を付与する超音波振動付与手段として機能する。
圧電セラミック23e、23fのそれぞれは、例えば、ジルコン酸チタン酸鉛系のセラミック材料から形成される。電極板24g、24h、24jのそれぞれは、例えば、リン青銅から形成される。上側金属部材22a、支持板25、および下側金属部材のそれぞれは、例えば、アルミニウムなどの金属材料から形成される。
電気エネルギー供給手段14としては、例えば、交流電源が用いられる。電気エネルギー供給手段14により、各々の圧電振動子の電極板に交流電圧が供給されると、圧電セラミック23e、23fのそれぞれは、その面に垂直な方向、すなわちラップ盤4の表面に垂直な方向に振動する超音波振動を発生する。これにより、超音波振動付与手段12は、ラップ盤4に垂直な方向に振動する超音波振動を、研磨対象物保持具22bに付与する。
超音波振動付与手段は、ラップ盤および研磨対象物保持具のうちの少なくとも一つに付設されていればよい。超音波振動付与手段の例としては、電歪振動子及び磁歪振動子が挙げられる。電歪振動子の例としては、圧電セラミックの各々の面に電極が付設された構成の圧電振動子、および前記ランジュバン型振動子が挙げられる。磁歪振動子の例としては、金属磁歪振動子、およびフェライト振動子が挙げられる。超音波振動付与手段としては、その構成が簡単であることから電歪振動子を用いることが好ましい。超音波振動付与手段は、ラップ盤(もしくは研磨対象物保持具)に効率良く超音波を伝えるために、グリースやワセリンなどの接触媒質を介してラップ盤(もしくは研磨対象物保持具)に付設することが好ましい。
次に、図3のラップ装置を用いて、研磨対象物を研磨する手順について説明する。まず研磨対象物6を、ワックスなどを用いて、研磨対象物保持具22bに保持(仮固定)する。そして直動駆動装置101a、101bの各々の回転駆動装置1a、1bを駆動させて、ラップ盤4及び研磨対象物保持具22bのそれぞれを、ラップ盤4の表面に沿った方向に一次元的に移動(往復運動)させる。同時に、スラリ供給装置10a、10b、10cのそれぞれから、ラップ盤4の表面に砥粒スラリ11を供給する。そして同時に、超音波振動付与手段12の各々の圧電振動子に、電気エネルギー付与手段14を用いて交流電圧(電気エネルギー)を供給することにより、研磨対象物保持具22bに、ラップ盤の表面に垂直な方向に振動する超音波振動を付与する。
ラップ盤4と研磨対象物保持具22bの移動に伴い、砥粒スラリ11は、研磨対象物6とラップ盤4との間に供給される。ラップ盤4と、研磨対象物保持具22bに保持された研磨対象物6とが、砥粒スラリを介して一次元的に移動することにより、研磨対象物6の表面が研磨される。この研磨加工において、研磨対象物保持具22bに付与された、ラップ盤4の表面に垂直な方向に振動する超音波振動によって、研磨対象物6の表面が高い精度で研磨される。
次に、図3のラップ装置を用いた研磨加工(ラップ加工)と、超音波振動付与手段12により研磨対象物保持具22bに付与される超音波振動との関係について説明する。図4は、図3のラップ装置による研磨加工について説明する断面図である。図4においては、研磨対象物6の表面がスラリの砥粒により研磨されている状態を説明するために、砥粒21を実際よりも大きなサイズで記載する。また、砥粒スラリの溶媒は、記載を省略する。
図4(A)は、研磨対象物保持具22bに超音波振動が付与されていない場合に、砥粒21によって研磨対象物6の表面が研磨されている状態を示している。ラップ盤4と、研磨対象物保持具22bに保持された研磨対象物6とのそれぞれは、各々の表面に砥粒21の一部が押し込まれた状態で、ラップ盤4の表面に沿って一次元的に移動(往復運動)している。このため、研磨対象物6の表面が、砥粒21によって研磨される。研磨対象物保持具22bに超音波振動が付与されていないために、研磨後の研磨対象物6の表面の精度は、従来のラップ装置を用いて研磨した場合と同程度の精度を示す。
図5(B)は、研磨対象物保持具22bに超音波振動が付与されている場合に、砥粒21によって研磨対象物6の表面が研磨されている状態を示している。研磨対象物保持具22bは、超音波振動が付与されているために、ラップ盤4の表面に垂直な方向に超音波振動する。この超音波振動は研磨対象物6に伝わり、研磨対象物もラップ盤4の表面に垂直な方向に超音波振動する。このように研磨対象物6が超音波振動すると、研磨対象物6の表面から発せれらた超音波の音圧によって、ラップ盤4と研磨対象物6との間隔が極僅かに広がると推測される。図5(B)に示すように、ラップ盤4と研磨対象物6との間隔が極僅かに広がると、研磨対象物6と砥粒21との接触面積は、図5(A)の場合よりも小さくなる。このため、超音波振動の付与によって、研磨対象物6を、砥粒21よりも小さなサイズの砥粒によって研磨した場合と同様に、高い精度で研磨することができる。
図5(C)は、研磨対象物保持具22bに、図5(B)で付与した超音波振動よりも大きな超音波振動が付与されている場合に、砥粒21によって研磨対象物6の表面が研磨されている状態を示している。研磨対象物保持具22bに、より大きな超音波振動が付与されているために、ラップ盤4と研磨対象物6との間隔がさらに広がって、研磨対象物6と砥粒21との接触面積は、図5(B)の場合よりも小さくなる。従って、研磨対象物6を、さらに高い精度で研磨することができる。
このように、本発明のラップ装置は、同じサイズの砥粒が含まれるスラリを用いた場合に、従来のラップ装置の場合よりも精度が高い研磨を実現することができる。即ち、研磨対象物の表面を所定の精度で研磨する場合に、従来のラップ装置よりも大きなサイズの砥粒を用いることができる。前述のように、砥粒は、そのサイズが小さくなるほど高価となる。従って、本発明のラップ装置を用いることにより、研磨加工に要する費用を低減することができる。
また、従来のラップ装置を用いた研磨加工においては、研磨の途中で砥粒スラリの溶媒が乾燥した場合に研磨対象物表面にスクラッチが発生し易い問題があった。本発明のラップ装置を用いた研磨加工においては、研磨対象物保持具に超音波振動を付与することによって、研磨対象物と砥粒との接触面積、すなわち互いの摩擦が低減されている。従って、研磨の途中で砥粒スラリの溶媒が乾燥した場合の研磨対象物表面のスクラッチの発生を低減することもできる。
また、前記のように、従来のラップ装置の研磨加工の精度は、主として砥粒スラリのサイズにより定まる。このため、従来のラップ装置を用いて、研磨対象物の表面を、粗研磨、そして仕上げ研磨するような場合には、砥粒スラリの交換が必要であった。本発明のラップ装置は、研磨対象物保持具(もしくはラップ盤)に超音波振動を付与しないで研磨した場合と、超音波を付与して研磨した場合とで、研磨対象物を異なる精度で研磨することができる。このような特徴を生かして、まず、研磨対象物保持具に超音波振動を付与しないで研磨対象物を粗研磨し、次いで研磨対象物保持具に超音波振動を付与することにより、用いる砥粒スラリを交換することなく、この研磨対象物を仕上げ研磨することができる。
本発明のラップ装置の超音波振動付与手段に備えられた電気エネルギー供給手段14には、超音波振動付与手段12に供給する電気エネルギーの電圧値もしくは周波数値を調節する機構が備えられていることが好ましい。
超音波振動付与手段12に供給する電気エネルギーの電圧値もしくは周波数値を調節することにより、超音波振動付与手段の発生する超音波振動の大きさ、すなわち研磨の精度を調節することができる。なお、超音波振動付与手段は、供給された電気エネルギー(例、交流電圧)の周波数値が、超音波振動付与手段の共振周波数値と一致するときに最も大きな超音波振動を発生し、周波数値が共振周波数値より高い値又は低い値であるときには、前記よりも小さな超音波振動を発生する。従って、電気エネルギーの周波数値を調節することによっても、研磨の精度を調節することができる。
そして、このような電気エネルギー供給手段が備えられたラップ装置を用いて、ラップ盤表面で研磨されている研磨対象物の研磨の進行に応じて超音波振動付与手段に与える電気エネルギーの電圧値もしくは周波数を調節しながら、研磨対象物を研磨することが好ましい。すなわち、粗加工の段階では、ラップ盤に超音波振動を付与せずに研磨対象物を研磨し、研磨の進行に応じて、次第に大きな超音波振動を付与して研磨対象物をより高い精度で研磨していくことにより、研磨対象物を効率良く研磨することができる。
研磨の進行具合は、例えば、研磨中のラップ盤と研磨対象物との摩擦の大きさから検出することができる。図3のラップ装置の超音波振動子の支持板25と直動駆動装置101bとの間には、前記摩擦の大きさを検出するための応力センサ18、そして応力センサの出力する電気信号を応力値(前記の摩擦の大きさに対応する)に変換する応力測定装置19が備えられている。
図5は、本発明に従うラップ装置の別の構成例を示す斜視図であ。そして図6は、図5のラップ装置の超音波振動付与手段の構成を説明する図である。図5のラップ装置の構成は、その超音波振動付与手段12の構成がことなること以外は、図3のラップ装置と同様である。
図6(A)に示すように、超音波振動付与手段は、電極板24a、圧電セラミック23a、電極板24b、圧電セラミック23b、電極板24c、支持板25、電極板24d、圧電セラミック23c、電極板24e、圧電セラミック23d、および電極板24fを、上側金属部材22aと下側金属部材(前記の研磨対象物保持具22b)とで挟んだ状態でボルト締めして構成されるランジュバン型振動子が用いられている。
図6(C)は、圧電セラミック23c、23dの各々の構成と、その分極方向を示している。圧電セラミック23c、23dの各々には、円盤状の圧電セラミックが用いられている。図6(C)に記入した矢印は、圧電セラミックの分極方向を示している。圧電セラミック23c、23dのそれぞれと、その両面に付設された電極板とにより、縦振動モードの圧電振動子が構成されている。これらの縦振動モードの圧電振動子が、ラップ盤の表面に垂直な方向に振動する超音波を付与する超音波振動付与手段として機能する。そしてこれらの圧電振動子には、電気エネルギー供給手段(図5:14a)として、交流電源が備えられている。
圧電セラミック23c、23dのそれぞれは、その両面に付設された電極板を介して交流電圧(電気エネルギー)が供給されると、その厚み方向に振動する。従って、圧電セラミック23c、23dが振動することにより、超音波振動付与手段12は、ラップ盤表面に垂直な方向に振動する超音波振動を発生し、この超音波振動を研磨対象物保持具22bに付与する。この超音波振動の付与により、研磨対象物保持具22bが、ラップ盤4の表面に垂直な方向に超音波振動すると、研磨対象物6の表面が高い精度で研磨される。
図6(B)は、圧電セラミック23a、23bの各々の構成と、その分極方向を示している。圧電セラミック23a、23bの各々には、四個の圧電セラミックがエポキシ樹脂で互いに接合された構成の円盤状の圧電セラミックが用いられている。図6(B)に記入した矢印は、圧電セラミックの分極方向を示している。圧電セラミック23a、23bのそれぞれと、その両面に付設された電極板とにより、ねじれ振動モードの圧電振動子が構成されている。これらのねじれ振動モードの圧電振動子が、ラップ盤の表面に平行な方向に振動する超音波を付与する超音波振動付与手段として機能する。そしてこれらの圧電振動子には、電気エネルギー供給手段(図5:14b)として、交流電源が備えられている。
圧電セラミック23a、23bのそれぞれは、その両面に付設された電極板を介して交流電圧が供給されると、その周方向に沿って振動する。従って、圧電セラミック23a、23bが振動することにより、超音波振動付与手段12はラップ盤4の表面に平行な方向に振動する超音波振動を発生し、この超音波振動を研磨対処物保持具22bに付与する。この超音波振動の付与により、研磨対象物保持具22bが、ラップ盤4の表面に平行な方向に超音波振動すると、研磨対象物6の表面が高い速度で研磨される。このように、超音波振動付与手段12には、ラップ盤4の表面に平行な方向に振動する別の超音波振動付与手段(上記のねじれ振動モードの圧電振動子)が付設されていることも好ましい。
また、ラップ盤の表面に水平な方向に振動する超音波振動付与手段としては、上記のねじれ振動モードの圧電振動子の他に、例えば、曲げ振動モードの圧電振動子、あるいはすべり振動モードの圧電振動子を用いることができる。
図7は、本発明に従うラップ装置のさらに別の構成例を示す図である。図7のラップ装置のラップ盤4には、ラップ盤4をその表面に垂直な方向を中心軸として回転させる回転駆動装置1aが付設されている。ラップ盤4は、回転駆動装置の回転軸2に接続されている。図7のラップ装置の場合、回転駆動装置1aとしては、ACサーボモータが用いられている。
図7のラップ装置の直動駆動装置101bは、回転駆動装置1b、回転駆動装置1bの回転軸に接続されたボールねじから構成されている。ボールねじは、ねじ軸15bとナット16bとから構成されている。ボールねじのナット16bは、超音波振動付与手段12の支持板25に接続されている。回転駆動装置1bは、回転駆動装置1aが設置されている基台に立設された支柱に固定されている(図示は略する)。図7のラップ装置の場合、回転駆動装置1bとしては、ステッピングモータが用いられている。研磨対象物保持具5に超音波振動付与手段12を介して付設された直動駆動装置101bは、研磨対象物保持具5を、ラップ盤4の表面に沿った方向に一次元的に移動させる。
図7のラップ装置のように、研磨対象物保持具5のみをラップ盤の表面に沿った方向に一次元的に移動させることによっても、これまで研磨に用いられていなかった、ラップ盤の表面のラップ盤の回転中心近傍を研磨に用いることができる。すなわち、ラップ盤の表面全体を研磨に用いることができるために、ラップ盤の表面の面積(ラップ盤の直径)を小さく設定することができる。従って、ラップ盤の表面に供給するスラリの量を低減することができる。
図7のラップ装置の研磨対象物保持具5には、ラップ盤の表面に垂直な方向に振動する超音波振動を付与する超音波振動付与手段12が付設されている。超音波振動付与手段12には、電気エネルギー供給手段14bが備えられている。同様に、ラップ盤4には、ラップ盤の表面に垂直な方向に振動する超音波振動を付与する超音波振動付与手段12a、12bが付設されている。そして超音波振動付与手段12a、12bには、電気エネルギー供給手段14aが備えられている。超音波振動付与手段12a、12bのそれぞれと、電気エネルギー供給手段14aとは、スリップリング13を介して電気的に接続されている。本発明のラップ装置においては、図7に示すように、ラップ盤及び研磨対象物保持具のそれぞれに超音波振動付与手段を付設することもできる。
図8は、本発明に従うラップ装置のさらに別の構成例を示す図である。図8のラップ装置の構成は、研磨対象物保持具5の側面に超音波振動付与手段12cが付設され、そして研磨対象物保持具5に、前記超音波振動付与手段12cを介して直動駆動装置101bが付設されていること以外は、図7のラップ装置と同様である。直動駆動装置101bとしては、リニアモータが用いられている。直動駆動装置101bは、回転駆動装置1aが設置されている基台に立設された支柱に固定されている(図示は略する)。
超音波振動付与手段12cは、前記と同様に、支持板25及び支持板25の各々の面に配置された超音波振動子とを、上側金属部材22aと下側金属部材22cとで挟んだ状態でボルト締めして構成されるランジュバン型振動子が用いられている。超音波振動付与手段12cの支持板25には、支柱25bを介して別の支持板25cが固定されている。直動駆動装置101bは、前記支持板25cを介して、超音波振動付与手段12cに接続されている。
図8のラップ装置において、超音波振動付与手段12a、12bの各々が、ラップ盤4に、ラップ盤の表面に垂直な方向に振動する超音波振動を付与する。この超音波振動の付与により、ラップ盤4が、その表面に垂直な方向に超音波振動すると、研磨対象物6の表面が高い精度で研磨される。そして超音波振動付与手段12cが、研磨対象物保持具5に、ラップ盤の表面に平行な方向に振動する超音波振動を付与する。この超音波振動の付与により、研磨対象物保持具5が、ラップ盤4の表面に平行な方向に超音波振動すると、研磨対象物6の表面が高い速度で研磨される。
図8のラップ装置の超音波振動付与手段12cの構成は、図7の超音波振動付与手段12と同様である。すなわち、超音波振動付与手段12cが備える超音波振動子としては、縦振動モードの圧電振動子が用いられている。図8に示すように、縦振動モードの圧電振動子を備えた超音波振動付与手段12cは、研磨対象物保持具5に、ラップ盤の表面に平行な方向に振動する超音波振動を付与する。このように、ラップ盤の表面に平行な方向に振動する超音波振動を付与する超音波振動付与手段としては、縦振動モードの圧電振動子を用いることもできる。
[産業上の利用可能性]
本発明のラップ装置は、超音波振動を利用することにより、同じサイズの砥粒を含むスラリを用いた場合に、従来の装置よりも精度が高い研磨を実現することができる。従って、研磨対象物の表面を所定の精度で研磨する場合、本発明のラップ装置は、従来の装置の場合よりも大きなサイズの砥粒を含むスラリ(より安価な砥粒スラリ)を用いた研磨を可能とする。さらに本発明のラップ装置においては、ラップ盤の表面全体が研磨に用いられるために、ラップ盤表面の面積を小さく設定することができる。このため、ラップ装置のラップ盤表面に供給する砥粒スラリの使用量を低減することができる。従って、本発明のラップ装置を用いることにより、研磨加工に必要な費用を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、従来のラップ装置の構成例を示す正面図である。
図2は、図1のラップ装置の平面図である。
図3は、本発明に従うラップ装置の構成例を示す斜視図である。
図4は、図3のラップ装置を用いた研磨加工について説明する断面図である。
図5は、本発明に従うラップ装置の別の構成例を示す斜視図である。
図6は、図5のラップ装置の超音波振動付与手段の構成を説明する図である。
図7は、本発明に従うラップ装置のさらに別の構成例を示す図である。
図8は、本発明に従うラップ装置のさらに別の構成例を示す図である。
Claims (8)
- ラップ盤、該ラップ盤の表面に砥粒スラリを供給するスラリ供給装置、研磨対象物を該ラップ盤の表面に砥粒スラリを介して接触させながら保持する研磨対象物保持具、および前記ラップ盤及び/又は研磨対象物保持具に付設され、該ラップ盤及び/又は研磨対象物保持具を該ラップ盤の表面に沿った方向に一次元的に移動させる直動駆動装置を含み、前記ラップ盤及び/又は研磨対象物保持具に、該ラップ盤の表面に垂直な方向に振動する超音波振動を与える超音波振動付与手段が付設され、そして該超音波振動付与手段に電気エネルギーの供給手段が備えられていることを特徴とするラップ装置。
- ラップ盤および研磨対象物保持具のそれぞれに直動駆動装置が付設され、該ラップ盤の移動方向と研磨対象物保持具の移動方向とが互いに直交する請求の範囲1に記載のラップ装置。
- 研磨対象物保持具のみに上記の超音波振動付与手段が付設されている請求の範囲2に記載のラップ装置。
- 超音波振動付与手段に、ラップ盤の表面に平行な方向に振動する超音波振動を与える別の超音波振動付与手段が付設され、この超音波振動付与手段にも電気エネルギーの供給手段が備えられている請求の範囲3に記載のラップ装置。
- 研磨対象物保持具に直動駆動装置が付設され、そしてラップ盤に、該ラップ盤をその表面に垂直な方向を中心軸として回転させる回転駆動装置が付設されている請求の範囲1に記載のラップ装置。
- ラップ盤および研磨対象物保持具のそれぞれに上記の超音波振動付与手段が付設されている請求の範囲5に記載のラップ装置。
- 超音波振動付与手段の電気エネルギー供給手段に、電気エネルギーの電圧値もしくは周波数値を調節する機構が備えられている請求の範囲1乃至6のうちのいずれかの項に記載のラップ装置。
- 請求の範囲7に記載されたラップ装置を用い、ラップ盤表面で研磨されている研磨対象物の研磨の進行に応じて超音波振動付与手段に与える電気エネルギーの電圧値もしくは周波数値を調節することを特徴とするラップ加工方法。
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