JPWO2003086821A1 - 車両用衝撃吸収パッド - Google Patents

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Abstract

本発明は、車両衝突時に乗員の下股部を保護するための車両用衝撃吸収パッドに関する。本発明による車両用衝撃吸収パッドは、トーボード面に装着され、乗員の足が載置される車両用衝撃吸収パッドであって、上記乗員の足が載置される側に、衝突時の車両の変形過程におけるエネルギ吸収荷重の異なる境界領域の衝撃力を吸収するために設けられた第1の衝撃吸収部と、上記トーボード面側に、上記エネルギ吸収荷重の高い領域の衝撃を吸収する第2の衝撃吸収部と、を含む。

Description

技術分野
本発明は、車両衝突時に乗員の下股部を保護するための車両用衝撃吸収パッドに係り、より詳細には、衝撃吸収特性が多段化された車両用衝撃吸収パッドに関する。
背景技術
車両衝突時に乗員の下股部を保護するための構造に関して、例えば特開2000−103367号公報や特開2000−326870号公報において、車両の構造自体に所望の衝撃吸収特性を付与する発明が開示されている。また、特開平5−330341号公報や特公平6−17097号公報において、エネルギを吸収する発泡材を車両室内足元部に配置することによって、乗員の下股部を保護する発明が開示されている。
しかしながら、車両自体に衝撃を緩衝する機能を持たせることは、車体構造の設計変更を伴うものであり、更に当該緩衝機能のための素材や部品を必要とする場合もあり、コストが嵩んでしまうことが予測される。
また、発泡体等の衝撃吸収材を使用する場合、衝撃吸収特性が一定であるため、衝突時の車両の変形過程においてその衝撃力の大きさが変化する荷重をより効果的に吸収することができない。
即ち、衝突時の車両の変形過程におけるエネルギ吸収荷重は、フロントサイドメンバの前部より後部で高く設定され、または、そのフロントサイドメンバの後端部にダッシュパネルロアのトーボード面に沿って車体下方後側に向けて延設された傾斜部で高く設定される。
そのため、車体に対する減速度は、後部或いは傾斜部でのエネルギ吸収荷重が高くなる方向に変化する境界領域で短時間に急に高くなる。その後、後部或いは傾斜部が、設定されたエネルギ吸収荷重で変形してエネルギ吸収されることになる。
この場合、後部或いは傾斜部の変形による高いエネルギ吸収荷重で衝突後の車両を停止させる。このとき、乗員の下股部に対する衝撃を発泡体等の衝撃吸収材で低減することができるが、この低減と、車体のエネルギ吸収荷重が変化する境界領域での短時間に急に高くなる乗員の下股部に対する衝撃力の低減との両立が難しい。
この境界領域での衝撃力を低減するためには、車体側でのエネルギ吸収荷重差を小さくして滑らかなエネルギ吸収荷重特性が得られるようにすることが考えられるが、この場合、車体溝造の製作コスト等が増大してしまう。
発明の開示
本発明は、車体構造を大幅に変更することなく、乗員の下股部が受ける多様な衝撃をより効果的に低減することができる車両用衝撃吸収パッドを提供することを総括的な目的としている。
本発明のより詳細な目的は、乗員の下股部が受ける多様な衝撃に応じて多段化された衝撃吸収特性を備え、乗員の下股部が受ける衝撃をより効果的に低減することができる車両用衝撃吸収パッドを提供することを目的とする。
この目的を達成するため、本発明に係る車両用衝撃吸収パッドは、トーボード面に装着され、乗員の足が載置される車両用衝撃吸収パッドであって、上記乗員の足が載置される側に、衝突時の車両の変形過程におけるエネルギ吸収荷重の異なる境界領域の衝撃力を吸収するために設けられた第1の衝撃吸収部と、上記トーボード面側に、上記エネルギ吸収荷重の高い領域の衝撃を吸収する第2の衝撃吸収部とを含む。
このような車両用衝撃吸収パッドによれば、衝撃吸収特性の異なる2層の衝撃吸収部を有するので、車両変形過程において発生する乗員の下股部への異なる衝撃力をそれぞれ効果的に低減することができる。即ち、車両のエネルギ吸収荷重の異なる境界領域での短時間に急に高くなる衝撃は、第1の衝撃吸収部が変形し、乗員の下股部に対する瞬間的に高くなる衝撃を低減し、その後、車両のエネルギ吸収荷重の高い変形時の衝撃は、第2の衝撃吸収部が変形し、乗員の下股部に対する衝撃を低減することができる。特に、第1の衝撃吸収部は、乗員の足が載置される側に設けられるので、車両のエネルギ吸収荷重の異なる境界領域における瞬間的に高くなる衝撃力に追従するように衝撃吸収特性を容易に調整することができる。
尚、上記車両用衝撃吸収パッドでは、第1の衝撃吸収部に対して第2の衝撃吸収部は、トーボード面に垂直をなす軸方向の単位圧縮荷重に対する該軸方向の変形量が第1の衝撃吸収層よりも小さい、という特性を有することになる。
また、上記車両用衝撃吸収パッドにおいて、上記第1の衝撃吸収部が、圧縮変形時の面剛性が低くなるように、乗員の足の載置可能な領域の面内で分断されており、単位面積当たりのエネルギ吸収荷重が上記第2の衝撃吸収部より小さく設定された場合には、衝撃吸収特性が異なる衝撃吸収部を形成することができる。即ち、第1の衝撃吸収部は、第2の衝撃吸収部とは異なる車両のエネルギ吸収荷重の境界領域において生じる短時間の急な高い衝撃力を、面剛性の影響を少なくして圧縮変形の追従性良く衝撃吸収できるので、乗員の下股部に対する各々の衝撃を効果的に吸収することができる。
また、上記車両用衝撃吸収パッドにおいて、上記第1の衝撃吸収部が、上記第2の衝撃吸収部の上面に、乗員の足が載置可能な領域全体にわたり、複数の突起形状として配設された場合には、乗員の下股部に対する各々の衝撃を効果的に吸収することができ、しかもかかる衝撃吸収特性を持たせるための各突起形状の圧縮荷重特性の調整が容易である。
また、上記車両用衝撃吸収パッドにおいて、上記第1の衝撃吸収部及び上記第2の衝撃吸収部が、発泡体から構成され、該発泡体の積層、接着による貼り合せ、一体発泡成形のいずれかによって構成された場合には、乗員の下股部に対する各々の衝撃を簡単な構成で効果的に吸収することができる。特に、一体発泡成形によれば、他の構成に比し、車両用衝撃吸収パッドを成形金型で一体成形でき、上述したような衝撃吸収特性を有した成形品を低コストで量産化できるようになる。
更に、上記車両用衝撃吸収がスチレン改良ポリエチレン樹脂の発泡成形品である場合には、寸法安定性及び形状保持性に優れ、衝撃吸収量が大きく、更には、こすれによる磨耗粉や異音が発生しがたいという、スチレン改良ポリエチレン樹脂特有の特性に起因した有利な効果を得ることができる。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明の好ましい実施例を図面を参照して説明する。
図1Aは、本発明による衝撃吸収パッドの装着状態を車両側面から視た概略的な断面図であり、図1Bは、衝撃吸収パッド10の装着状態をより詳細に示す斜視図である。衝撃吸収パッド10は、車両のフロアパネル11の前端(図1A中、X方向を前とする)から斜め前方に立ち上がるトーボード12に装着される。このトーボード12は、図1Aに示すように、乗員の足70を載せるための傾斜した領域(以下、この領域を「足載せ領域」と称する)を画成する。一般的には、衝撃吸収パッド10は、このトーボード12の上記足載せ領域内に載置され、トーボード12にクリップ等により固定される。また、この衝撃吸収パッド10は、一般的には、フロアカーペット13で覆われており、このフロアカーペット13上に乗員の足70が載せられることになる。
図2は、本発明による衝撃吸収パッド10を示す概略図であり、図2Aは、上面図であり、図2Bは、図2AのラインS−Sによる断面図である。尚、図2の衝撃吸収パッド10は、図1Bに示す衝撃吸収パッド10の外形と異なる外形で示されている。
本発明の衝撃吸収パッド10は、図2Bに示すように、乗員の足70が載せられる側に第1の衝撃吸収層20を有し、トーボード12側に第2の衝撃吸収層30を有する。これらの各層20,30は、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン改良ポリエチレン樹脂等のような合成樹脂発泡体、若しくは、ウレタンやゴム系の軟質な材料から一体成形されてよい。
但し、衝撃吸収パッド10は、好ましくは、上述の材料のうちのスチレン改良ポリエチレン樹脂から形成される。スチレン改良ポリエチレン樹脂は、ポリエチレン系樹脂粒子にスチレン系単量体を含浸重合させることにより得られる。スチレン改良ポリエチレン樹脂は、好ましくは、スチレン成分を40〜90重量%の割合で含み、より好ましくはスチレン成分を50〜85重量%の割合で含み、最も好ましくは、スチレン成分を55〜75重量%の割合で含む。
ここで、スチレン改良ポリエチレン樹脂による発泡成形品は、スチレン改良ポリエチレン樹脂の一般的な特性に起因して、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂の発泡成形品に比して、寸法安定性及び形状保持性に優れている。また、同一の発泡率の成形品で比較した場合、スチレン改良ポリエチレン樹脂の発泡成形品は衝撃吸収量が大きい。更に、スチレン改良ポリエチレン樹脂の発泡成形品は、ポリスチレン系樹脂の発泡成形品とは異なり、脆くないため割れ難く、また、こすれによる磨耗粉や異音が発生しがたい性質を有する。
従って、上述のような特性を有するスチレン改良ポリエチレン樹脂は、限られた厚さや大きさで効果的な衝撃吸収特性を発揮する必要があり且つ室内に配設され乗員の足が載置される衝撃吸収パッド10の材料として好適である。
衝撃吸収パッド10の第1の衝撃吸収層20は、第2の衝撃吸収層30から突出形成された複数の突起24から構成される。これらの複数の突起24は、上記足載せ領域に対応する領域内に形成され、好ましくは、上記足載せ領域に対応する領域の略全体にわたり形成される。これらの複数の突起24は、例えば図2Aに示すように、上面視で十字状の溝を形成するような碁盤目状に配列され、更に、等間隔を置いて規則的に配列されてよい。或いは、これらの複数の突起24は、縦・横方向に千鳥掛け状に互いにずらしてもよい。
また、これらの複数の突起24は、正方形や長方形や円形や楕円形等のような多様な外形であってよい。また、各突起24は、その突出方向に一定の断面を有していなくてもよい。更に、各突起24の先端は、乗員の足裏に面若しくは点で押圧されるように構成されてよい。
また、これらの複数の突起24の各外形の寸法は、乗員の足裏を複数の突起24で支持するように決定され、乗員の足裏に対応する複数の突起24の総面積は、一般的な乗員の足70の面積の30%から60%の面積を占めてよく、各突起24の面積は、200mmから600mm程度であってよい。また、突起24は、局所的に高低差を有してよく、更には、各突起24は他の突起24とは異なる高さを有してもよい。
但し、衝撃吸収パッド10の衝撃吸収特性は、衝撃吸収パッド10の材質や各衝撃吸収層20,30の厚み等の種々の要因に依存するものであるので、本発明は、特に上述した値等に限定されるものでなく、次に説明するような衝撃吸収特性を有する衝撃吸収パッド10であれば上述したような形状や配置や外形や寸法等の如何にかかわらず本発明の範囲内であることは理解されるべきである。
図3は、本発明による衝撃吸収パッド10の衝撃吸収特性を説明するための図であり、本発明による衝撃吸収パッド10の荷重−歪み曲線が示されている。図3には、対照として、別の衝撃吸収パッドの荷重−歪み曲線が併せて示されている。即ち、本発明による衝撃吸収パッド10と同一の材料から形成されているが、複数の突起24が形成されていない衝撃吸収パッド(以下、これを「比較品1」という)の荷重−歪み曲線が、破線で示されており、本発明による衝撃吸収パッド10よりも軟質な材料から形成され、複数の突起24が形成されていない衝撃吸収パッド(以下、これを「比較品2」という)の荷重−歪み曲線が、2点鎖線で示されている。尚、これらの荷重−歪み曲線は、各衝撃吸収パッドの同一形状の試験片を用いて所定の治具により測定されており、トーボード12に垂直な軸方向(図1A中、方向Zにより指示)の圧縮荷重に対する歪み特性を示すものである。
図3に示すように、本発明による衝撃吸収パッド10の荷重−歪み曲線(実線)は、所定の歪みεから荷重−歪み特性が大きく変化している。これは、本発明による衝撃吸収パッド10が、所定の歪みεから衝撃吸収特性が大きく変化する、多段階化(本例では2段化)された衝撃吸収特性を有していることを意味する。即ち、本発明による衝撃吸収パッド10は、第1の衝撃吸収層20の変形が開始すると、比較品2に相当する衝撃吸収特性を示し、第1の衝撃吸収層20の変形が終了し第2の衝撃吸収層30の変形が開始すると、比較品1に相当する衝撃吸収特性を示す。他言すると、第1の衝撃吸収層20は、比較品1と同一の材料から形成されているものの、複数の突起24によって、比較的軟質な材料からなる比較品2と同等の衝撃吸収特性を有することになる。
本発明の発明者は、このような多段化された衝撃吸収特性を有した衝撃吸収パッド10の効果を確認するため、衝撃吸収パッド10を装着した実車の衝突試験を実施し、次のような結果を得た。
図4は、実車衝突試験により得られたダミー下股部の荷重データを時系列で表わした図である。尚、図4において、時刻t=0は、車両前端がバリア(障壁)に衝突した瞬間の時刻である。また、図4には、対照として、上記比較品1の測定データ(点線)及び比較品2の測定データ(2点鎖線)も併せて示されている。以下、図4に示す試験結果について、衝突時の車両変形過程を概略的に示す図5、及び図3を参照して説明する。
時刻t=0で衝突が開始すると、エンジンルーム部40(図1A参照)が変形し始める。次いで、エンジンルーム部40の変形が徐々に進行していくと、ダミー下股部への荷重が増加し始めていき、エンジンルーム部40が略潰れ切った時刻t=t1で、ダミー下股部への荷重が最初のピーク値(この衝突段階を、「1次衝撃」と称する)に達する。
この1次衝撃は、図4に示すように、衝撃の発生から終了までの時間が後述する2次衝撃よりも短い瞬間的な衝撃であり、従って、1次衝撃時に吸収すべきエネルギは、2次衝撃時に吸収すべきエネルギよりも小さい。
1次衝撃時のダミー下股部の荷重を比較すると、比較品1を装着した場合の荷重が、本発明による衝撃吸収パッド10及び比較品2を装着した場合の荷重よりも、大きな値となっていることがわかる。この結果を、図3を参照して考察するに、比較品1は、1次衝撃時に歪みεa1の変形を呈するのに対して、本発明による衝撃吸収パッド10及び比較品2は、1次衝撃時に歪みεb1の変形を呈することになるが、このときの比較品1の荷重Fa1が、本発明による衝撃吸収パッド10及び比較品2の荷重Fb1よりも、大きいことから理解できる。一方、衝撃吸収パッド10及び比較品2を装着した場合のダミー下股部の荷重は、略同一であるが、これは、1次衝撃時における衝撃吸収パッドの変形量が略同一であることに基づく。
従って、比較品1が、1次衝撃時に発生する瞬間的な衝撃力に変形が追従することができず、大きな荷重が下股部に伝達されてしまうの対して、本発明による衝撃吸収パッド10の第1の衝撃吸収層20は、1次衝撃時に発生する瞬間的な衝撃力に追従して変形することができ、乗員の下股部への荷重が効果的に低減されている。
次いで、エンジンルーム部40の変形が終了すると、図5Bに示すように、トーボード12が、車両後方に向かって突き上がってくる。即ち、トーボード12は、ダミーの足裏を押し上げるように、変形し始める。これと同時に、エンジンルーム部40の変形の終了により車両全体の前方への移動量が減少して、ダミーは、慣性力により前方に移動していく。即ち、ダミーは、トーボード12を足裏で押し付けるように、移動していく。これら双方の作用より、ダミー下股部の荷重が、徐々に増加し、時刻t=t2で、再びピーク値(この衝突段階を、「2次衝撃」と称する)に達する。
この2次衝撃は、衝撃の発生から終了までの時間が上述した1次衝撃に比して長く、従って、2次衝撃時に吸収すべきエネルギは、1次衝撃時に吸収すべきエネルギよりも大幅に大きくなる。
2次衝撃時のダミー下股部の荷重を比較すると、比較品2を装着した場合の荷重が、本発明による衝撃吸収パッド10及び比較品1を装着した場合の荷重よりも、大きな値となっていることがわかる。この結果を、図3を参照して考察するに、比較品2は、同一の変形量に対するエネルギ吸収量が最も小さいゆえに、2次衝撃時に吸収すべき衝撃エネルギを吸収しきれずに、時刻t=t2には既に変形しきった状態(図3中のεmax付近まで変形した状態)となっていることから理解できる。つまり、比較品2は、時刻t=t2までに、これ以上変形できない状態(いわゆる底づき状態)となり、時刻t=t2では、ダミーの足裏は、実質的に、剛体と接触している状態となる。
一方、衝撃吸収パッド10及び比較品1を装着した場合のダミー下股部の荷重は、略同一である。この結果を、図3を参照して考察するに、比較品1は、2次衝撃時に歪みεa2の変形を呈するのに対して、本発明による衝撃吸収パッド10は、2次衝撃時に歪みεb2の変形を呈することになるが、このときの比較品1の荷重Fa2が、本発明による衝撃吸収パッド10の荷重Fb2と略同一であることから理解できる。
以上の試験結果から、本発明による衝撃吸収パッド10は、1次衝撃時及び2次衝撃時の双方において、ダミー下股部への荷重が最も低い値となっており、乗員の下股部を最も効果的に保護しているといえる。これは、本発明による衝撃吸収パッド10は、瞬間的な荷重が発生する1次衝撃に対しては、変形しやすく単位面積当たり(突起24が無い部分を含む第1の衝撃吸収層20の面積における単位面積当たり)のエネルギ吸収量の小さい第1の衝撃吸収層20により乗員の下股部を保護し、足元のパネルの突き上げが起因する故に比較的長い時間にわたる荷重が発生する2次衝撃に対しては、単位面積当たりのエネルギ吸収量の大きい第2の衝撃吸収層30により乗員の下股部を保護していることに基づく。従って、本発明による衝撃吸収パッド10によると、車両衝突時に段階的に発生する一次衝撃及び2次衝撃に対応して段階的に変化する衝撃吸収特性を備えているので、乗員の下股部を効果的に保護することが可能となる。
尚、衝撃吸収パッド10の第1の衝撃吸収層20に関しては、第1の衝撃吸収層20のみにより1次衝撃時のエネルギを吸収できるように、第1の衝撃吸収層20の厚さや突起24の数や配置等が決定され、第2の衝撃吸収層30に関しては、2次衝撃時に変形し切ってしまうことがないように(弾性限に達しないように)、第2の衝撃吸収層30の厚さや面積等が決定される。尚、衝撃吸収パッド10の全体の厚さは、室内空間確保の観点から制約を受けることに注意されたい。
上記試験に用いた衝撃吸収パッド10は、約30mmの厚さを有し、第1の衝撃吸収層20の厚さは、約10mmであり、複数の突起24の端面の総面積は、衝撃吸収パッド10の全面積に対して約55%であった。この衝撃吸収パッド10は、1次衝撃の間、比較品2に相当する衝撃吸収特性を示し、2次衝撃が開始すると(図4中、時刻t=t3)、衝撃吸収特性が変化する歪みεに達し、2次衝撃時の間、変形し切ることなく比較品1に相当する衝撃吸収特性を示すという、所望の衝撃吸収特性を示した。但し、これらの設計事項は、1次衝撃及び2次衝撃時に吸収すべきエネルギ量等に依存し、従って車両の構造に依存するものである。衝撃吸収パッド10の衝撃吸収特性は、上述のような所望の衝撃吸収特性となるように、車両ごとに実車衝突試験や解析等に基づいて調整されてよい。
ここで、本発明による衝撃吸収パッド10は、上述したように離散的に形成された複数の突起24を有し、更に、乗員の足70が載せられる側に第1の衝撃吸収層20を有しているので、上述のような所望の衝撃吸収特性を実現するための調整が容易であると共に、通常使用時における不都合が回避される。
これに対して、図6A及び図6Bを参照するに、縦横する突条93を備えた衝撃吸収パッド90が示されている。この衝撃吸収パッド90の第1の衝撃吸収層91は、足載せ領域面内で分断された各突起24を有した本発明の第1の衝撃吸収層20に比して、面剛性が高い構造であり、所望の衝撃吸収特性を実現するための調整が複雑である。すなわち、突条93の実際に足裏に当接する部分の変形に伴い、突条93の実際には足裏に当接しない別の部分の変形が引き起こされることになるので、かかる変形特性を考慮して衝撃吸収特性の調整を行う必要が生じるが、かかる面剛性が高い構造では、上述の1次衝突のような瞬間的な衝撃に対して追従性よく変形することができないという不都合が生じる。
同様に、図示を省略するが、乗員の足70が載せられる側に代わって、トーボード12側に第1の衝撃吸収層20を備えた衝撃吸収パッド95は、複数の突起24のすべてがトーボード12に当接するので、所望の衝撃吸収特性を実現するための調整が複雑である。即ち、衝撃吸収パッド95への足裏からの押圧は、複数の突起24の略すべての変形を引き起こし、しかも各々の変形量は必ずしも均一でないと予測されるので、上述のような所望の衝撃吸収特性を実現するための調整が非常に困難となる。また、このような調整を行うことにより所望の衝撃吸収特性を実現した場合であっても、単位突起当たりの圧縮荷重が小さくなるので、乗員が足70で力強く押すと突起が潰れ、或いは、乗員が足70を通常的に載置するだけで突起24が潰れてしまうことが予測される。かかる場合には、衝撃吸収パッド95は、突起24が潰れてしまっている故に、衝突時にその機能を十分に果たさないことになる。また、このような衝撃吸収パッド95は、経年変化により、衝撃吸収特性が低下し易く耐久性が良好でない。
一方、離散的な突起24の配列を有した本発明による衝撃吸収パッド10は、実際に足裏を支持している突起24のみが変形する構造であるので、通常使用時に変形しないような単位突起当たりの圧縮荷重を設定しつつ、簡単な調整により所望の衝撃吸収特性を実現することができる。
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
例えば、上述した実施例においては、本発明による衝撃吸収パッド10は、一体成形されて第1の衝撃吸収層20及び第2の衝撃吸収層30を有していたが、例えば異なる材料から形成された各衝撃吸収層を貼り合せることにより構成されてもよい。
その他、本発明による衝撃吸収パッド10は、密度の異なる同種の合成樹脂発泡体を貼り合せたり、異種の合成樹脂発泡体を貼り合せたりしてもよく、また、発泡倍率の異なる同種又は異種の合成樹脂発泡ビーズを成形金型で一体に成形した成形品でもよい。また、上述した実施例においては、2段に多段化された衝撃吸収特性について言及されたが、衝撃吸収パッド10に更なる衝撃吸収層を形成することより3段以上に多段化された衝撃吸収特性を実現することも可能である。
【図面の簡単な説明】
本発明の他の目的、特徴及び利点は添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明を読むことにより一層明瞭となるであろう。
図1Aは、本発明による衝撃吸収パッド10の装着状態を示す断面図である。
図1Bは、衝撃吸収パッド10の装着状態をより詳細に示す斜視図である。
図2Aは、本発明による衝撃吸収パッド10の上面図である。
図2Bは、図2AのラインS−Sに沿って切断された際の衝撃吸収パッド10の断面図である。
図3は、本発明による衝撃吸収パッド10の衝撃吸収特性を示す試験結果である。
図4は、実車衝突試験のダミー下股部の荷重データを時系列で表わした図である。
図5Aは、一次衝撃発生時の車両変形状態を概略的に示す図である。
図5Bは、二次衝撃発生時の車両変形状態を概略的に示す図である。
図6Aは、本発明の衝撃吸収パッド10の対照として示す衝撃吸収パッド90の上面図である。
図6Bは、図6AのラインS−Sに沿って切断された際の衝撃吸収パッド90の断面図である。

Claims (6)

  1. トーボード面に装着され、乗員の足が載置される車両用衝撃吸収パッドであって、
    上記乗員の足が載置される側に、衝突時の車両の変形過程におけるエネルギ吸収荷重の異なる境界領域の衝撃力を吸収するために設けられた第1の衝撃吸収部と、
    上記トーボード面側に、上記エネルギ吸収荷重の高い領域の衝撃を吸収する第2の衝撃吸収部と、を含むことを特徴とする、車両用衝撃吸収パッド。
  2. 上記第1の衝撃吸収部は、圧縮変形時の面剛性が低くなるように、乗員の足の載置可能な領域の面内で分断されており、単位面積当たりのエネルギ吸収荷重が上記第2の衝撃吸収部より小さく設定されている、請求項1記載の車両用衝撃吸収パッド。
  3. 上記第1の衝撃吸収部は、上記第2の衝撃吸収部の上面に、乗員の足が載置可能な領域全体にわたり、複数の突起形状として配設された、請求項1記載の車両用衝撃吸収パッド。
  4. 上記第1の衝撃吸収部及び上記第2の衝撃吸収部は、発泡体から構成され、該発泡体の積層、接着による貼り合せ、一体発泡成形のいずれかによって構成された、請求項1乃至3のうちいずれか1項の車両用衝撃吸収パッド。
  5. スチレン改良ポリエチレン樹脂の発泡成形品である、請求項1乃至3のうちいずれか1項の車両用衝撃吸収パッド。
  6. トーボード面に装着され、乗員の足が載置される車両用衝撃吸収パッドであって、
    樹脂の発泡成形品であり、上記乗員の足が載置される側に、互いに離間した複数の突起を備えることを特徴とする、車両用衝撃吸収パッド。
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