JP6009793B2 - 車両用フロア構造 - Google Patents
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Description
このような乗員脚部の保護に関する従来技術として、例えば特許文献1には、トーボード部に第1、第2の衝撃吸収体を積層して配置するとともに、これらの間に間隔を設けることが記載されている。また、第1、第2の衝撃吸収体の間に、車両前後方向に伸びたリブを設けて、このリブによって第1、第2の衝撃吸収体の間に間隔を設けることが記載されている。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、衝突時における乗員脚部の傷害を軽減した車両用フロア構造を提供することである。
請求項1に係る発明は、車室床面を構成するフロアパネルと、前記フロアパネルの前端部から前側上方へ張り出して形成されたトーボードと、前記トーボードの車幅方向における一方の端部に配置され車室内側へ張り出して形成された張出部と、前記トーボードの車室内側に配置され衝突時における乗員下肢の移動を規制する下肢移動規制手段とを備える車両用フロア構造であって、前記下肢移動規制手段は、上下方向に配列されかつ車幅方向において前記張出部から離れた側が上方となるよう水平方向に対して傾斜しかつ車幅方向において前記張出部から離れた側が前方となるよう車幅方向に対して傾斜して延在し、衝突時に乗員の踵部が引掛る複数のリブを有することを特徴とする車両用フロア構造である。
これによれば、衝突時に乗員の踵部が各リブの下部に引っ掛かることによって、足部がトーボードの斜面に沿って駆け上がることを防止できる。
また、リブは張出部から離れた側が上方となるように傾斜しているため、乗員足部が張出部から遠ざかる方向に誘導され、張出部に足部が乗り上げて足首の曲げ、捩じり等が生じることを防止し、傷害を軽減することができる。
これによれば、衝突時に下肢移動規制手段が圧壊することによって、エネルギを吸収し、乗員下肢の傷害をより軽減することができる。
請求項4に係る発明は、前記複数のリブの少なくとも一部は、前記足裏対向面部の上端部近傍の領域を、該足裏対向面部に対して斜めにカットした形状としたことを特徴とする請求項3に記載の車両用フロア構造である。
これらの各発明によれば、乗員の踵部が上段のリブの足裏対向面部の下部に引っ掛かりやすくなり、上述した効果をより確実に得ることができる。
請求項6に係る発明は、前記張出部は、車両の車幅方向中央部に設けられ車室内側に張り出したフロアトンネルの一部であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の車両用フロア構造である。
実施例1の車両用フロア構造は、例えば乗用車等の自動車の助手席乗員足元に設けられるものである。
以下、助手席が右側に設けられる左ハンドル車を例にとって説明するが、右ハンドル車の場合、各実施例の構成を左右反転させればよい。
図1は、実施例1の車両用フロア構造を車両後方側かつ車幅方向外側から見た斜視図である。
図2は、図1の車両用フロア構造に乗員の右足が載せられた状態を車両後方側かつ車幅方向内側から見た斜視図である。
図3は、図1の車両用フロア構造を車両後方側から見た図である。
図4は、図1の車両用フロア構造を車両上方から見た図である。
図5は、図1のV−V部矢視断面図である。
フロアパネル10は、車室の床面部を構成する面部であって、水平面にほぼ沿って配置されている。
トーボード20は、フロアパネル10の前端部から前側上方に張り出して形成された斜面部である。
トーボード20の車幅方向外側の領域には、車室内側に凸曲面状に張り出したホイルハウス21が形成されている。このホイルハウス21は、前輪を収容する空間部の後端部における車室との隔壁部分を構成するものである。
フロアトンネル30は、フロアパネル10の車幅方向中央部を車室内側に張り出させて形成した部分である。
フロアトンネル30の内部には、図示しないトランスミッション、プロペラシャフト、エキゾーストパイプ等が収容される。
インストルメントパネル40は、トーボード20の上方に設けられた内装部材であって、計器類、空調装置、オーディオビジュアル装置、助手席用エアバッグ装置などを収容するものである。
下肢移動規制手段100は、トーボード20の車室内側における助手席乗員の右脚部LR(ホイルハウス21側の脚部)の足部Fと対向する箇所に配置されている。
下肢移動規制手段100は、第1リブ110、第2リブ120、第3リブ130、第4リブ140、第5リブ150、外側部160、内側部170等を有して構成されている。
下肢移動規制手段100は、例えば樹脂系材料を用いたインジェクション成形によって一体に形成されている。
下肢移動規制手段100は、衝突時に乗員の足裏から受ける圧縮荷重によって圧壊し、エネルギを吸収するようになっている。
第1リブ110、第2リブ120、第3リブ130、第4リブ140、第5リブ150は、それぞれ車幅方向内側(ホイルハウス21から離れた側)の端部が、車幅方向外側(ホイルハウス21側)に対して高くなるように、水平方向に対して傾斜して配置されている。
また、第1リブ110、第2リブ120、第3リブ130、第4リブ140、第5リブ150は、中央部に対して両端部の領域は傾斜が減少するように湾曲し、全体として緩やかなS字状に形成されている。
第1リブ110、第2リブ120、第3リブ130、第4リブ140、第5リブ150は、長手方向と直交する平面で切ってみた横断面形状が実質的に矩形状に形成されるとともに、乗員の足裏と対向する足裏対向面部111,121,131,141,151と反対側の面部がトーボード20に固定されている。
各足裏対向面部111〜151は、乗員の足裏からの荷重を受け止める実質的に平面状の部分であって、同一平面にほぼ沿って配置されている。
また、第2リブ120、第3リブ130、第4リブ140、第5リブ150においては、足裏対向面部121,131,141,151の上端部近傍の領域に、コーナ面取り状に、水平面にほぼ沿ってカットされた形状であるコーナ部がそれぞれ形成されている。
これらのコーナ部122,132,142,152を形成したことによって、第2リブ120、第3リブ130、第4リブ140、第5リブ150の上端部の高さは、一つ上段のリブの足裏対向面部111,121,131,141の下端部よりも低くなっている。
外側部160は、ホイルハウス21の車幅方向内側の端部に隣接して配置されている。
内側部170は、第1リブ110、第2リブ120、第3リブ130、第4リブ140、第5リブ150の車幅方向内側(フロアトンネル30側)の端部を上下方向に連結する部分である。
内側部170は、通常時における乗員右足の足部Fよりも車幅方向内側に配置されている。
ここで、第1リブ110、第2リブ120、第3リブ130は、それぞれ一つ下段のリブよりも短く形成されるとともに、車幅方向内側の端部は全てのリブが上下方向にほぼ一列に整列して配置されることから、外側部160の第3リブ130よりも上方の部分は、上部が下部に対して車幅方向内側となるように斜めに配置されている。
なお、以下説明する比較例、実施例2,3において、従前の実施例と実質的に同様の箇所については同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
比較例の車両用フロア構造は、実施例1の車両用フロア構造から、下肢移動規制手段100を省略したものである。
図6において、実施例1の場合の乗員左脚部LL、右脚部LR、右足の足部F、爪先T等を実線で示し、比較例の場合を破線で示す。
図6に示すように、実施例1においては、右足の足部Fのトーボード20に沿った駆け上がりを抑制し、爪先Tの位置が比較例に対して下方かつ後方に位置していることがわかる。
また、比較例においては、爪先T側の足裏がホイルハウス21に乗り上がり、足部Fと脚部LRとが横方向に曲げられていることがわかる。
比較例においては、上述したようなホイルハウス21への足部Fの乗り上がりにより、衝突後に足首の曲げモーメントが瞬時にきわめて大きくなるピークが存在することがわかる。
実施例1においては、乗員の踵部Hが各リブ110〜150に引っ掛かって駆け上がりが防止されるとともに、各リブの傾斜によりホイルハウス21から逃げる方向に誘導されることから、爪先Tがホイルハウス21に乗り上げることが防止され、このような足首の曲げが防止されて乗員下肢の傷害値が改善される。
(1)衝突時に乗員の踵部Hが各リブ110〜150の足裏対向面部111〜151の下部に引っ掛かることによって、足部Fがトーボード20の斜面に沿って駆け上がることを防止できる。
また、各リブ110〜150は、ホイルハウス21から離れた側が上方となるように傾斜しているため、乗員の足部Fがホイルハウス21から遠ざかる方向(図3に示す矢印方向)に誘導され、ホイルハウス21に足部Fが乗り上げて足首の曲げ、捩じり等が生じることを防止し、傷害を軽減することができる。
(2)衝突時に下肢移動規制手段100が圧壊することによって、エネルギを吸収し、乗員下肢の傷害をより軽減することができる。
(3)第2リブ120〜第5リブ150の上部に、斜めにカットされたコーナ部122〜152を形成し、上段のリブの足裏対向面部の下端部を超えない高さとすることによって、踵部Hがリブから上方へ滑り上がったときに、一つ上段のリブに引っ掛かりやすく、上述した効果をより確実に得ることができる。
図8は、実施例2の車両用フロア構造を示す図であって、図8(a)は車両後方側の車幅方向外側から見た斜視図であり、図8(b)は、図8(a)のb−b部矢視断面図である(後述する図9において同様)。
実施例2の下肢移動規制手段200は、第1リブ110、第2リブ120、第3リブ130、第4リブ140、第5リブ150を、実施例1のように湾曲させずにストレートに形成したものである。
以上説明した実施例2においても、上述した実施例1の効果と実質的に同様の効果を得ることができる。
図9は、実施例3の車両用フロア構造を示す図である。
実施例3の下肢移動規制手段300は、実施例1、実施例2の第1〜第5リブ110〜150に代えて、車両前後方向にほぼ沿って配置された面部と、上下方向にほぼ沿って配置された面部とが上下方向に順次配列された階段状の段部310を備えている。
この段部310を構成する各段は、実施例1の各リブと同様に、車幅方向内側が高くなるように傾斜しかつ湾曲して形成されている。
以上説明した実施例3においても、上述した実施例1の効果と実質的に同様の効果を得ることができる。
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
例えば、下肢移動規制手段の形状、構造、材質、製法等は、上述した各実施例のものに限らず、適宜変更することが可能である。
また、各実施例においては、衝突時に車幅方向外側の足部のホイルハウスへの乗り上げを防止するものであったが、本発明は、車幅方向内側の足部のフロアトンネルへの乗り上げを防止するためにも用いることができる。
21 ホイルハウス 30 フロアトンネル
40 インストルメントパネル 100 下肢移動規制手段
110 第1リブ 111 足裏対向面部
120 第2リブ 121 足裏対向面部
122 コーナ部 130 第3リブ
131 足裏対向面部 132 コーナ部
140 第4リブ 141 足裏対向面部
142 コーナ部 150 第5リブ
151 足裏対向面部 152 コーナ部
200 下肢移動規制手段 300 下肢移動規制手段
310 段部
LL 左脚部 LR 右脚部
F 足部 T 爪先
H 踵部
Claims (6)
- 車室床面を構成するフロアパネルと、
前記フロアパネルの前端部から前側上方へ張り出して形成されたトーボードと、
前記トーボードの車幅方向における一方の端部に配置され車室内側へ張り出して形成された張出部と、
前記トーボードの車室内側に配置され衝突時における乗員下肢の移動を規制する下肢移動規制手段と
を備える車両用フロア構造であって、
前記下肢移動規制手段は、上下方向に配列されかつ車幅方向において前記張出部から離れた側が上方となるよう水平方向に対して傾斜しかつ車幅方向において前記張出部から離れた側が前方となるよう車幅方向に対して傾斜して延在し、衝突時に乗員の踵部が引掛る複数のリブを有すること
を特徴とする車両用フロア構造。 - 前記下肢移動規制手段は、衝突時に乗員足部から受ける圧縮荷重により変形する衝撃吸収材によって形成されること
を特徴とする請求項1に記載の車両用フロア構造。 - 前記複数のリブは、乗員の足裏と対向する足裏対向面部をそれぞれ有し、少なくとも一部のリブの前記足裏対向面部の上端部を、該リブの上段に位置するリブの前記足裏対向面部の下端部よりも低い位置に配置したこと
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用フロア構造。 - 前記複数のリブの少なくとも一部は、前記足裏対向面部の上端部近傍の領域を、該足裏対向面部に対して斜めにカットした形状としたこと
を特徴とする請求項3に記載の車両用フロア構造。 - 前記張出部は、前輪が収容されるホイルハウスの後端部に設けられること
を特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の車両用フロア構造。 - 前記張出部は、車両の車幅方向中央部に設けられ車室内側に張り出したフロアトンネルの一部であること
を特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の車両用フロア構造。
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