JPWO2003000683A1 - ピロール−イミダゾールポリアミドの固相合成法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、近年の活発な研究により、配列特異的にDNAと結合させることが出来ることが明らかとなり、遺伝子発現の制御等に有用な化合物として注目されているピロール−イミダゾールポリアミドの新規な合成法に関する。
背景技術
近年の活発なゲノム解析研究により、約30億のデオキシリボ核酸(DNA)の連なりから構成されているヒトゲノムの解明はほぼ終了した。今や時代は遺伝情報の元となる遺伝子の発見と解明、更には個人の体質の差を左右する遺伝子の一塩基変異多型(SNPs)の解明へと移ってきている.この研究の中で様々な遺伝子や遺伝情報が明らかとなっており、それらの遺伝情報を特異的に制御する化合物を合成することは、新時代の創薬技術として有用な手法であると考えられる。
本発明者らは、DNAのAT塩基対に富む部位に選択的に結合することが知られている抗生物質ディスタマイシンに着目し研究を続けてきているが、その一環として、ディスタマイシンの構成単位であるピロールアミドとその誘導体であるイミダゾールアミドとを組み合わせたシステマティックなディスタマイシン誘導体の合成を行い、得られた化合物の生化学的な検討を行っている。そして、その結果として、本発明者らは、これらの化合物はDNAのある特定部位に対して選択的に結合できる化合物であり、その選択性はピロールアミド(Py)とイミダゾールアミド(Im)の順序により決定できることを明らかにした。
更に本発明者らは、合成したピロール−イミダゾールポリアミドを用いて既存の癌細胞に対する細胞毒性試験を行うシステマティックなスクリーニング法を見出した。この手法は、ヒトゲノム計画の中で明らかにされるであろう、ある特定の癌細胞に特有のDNA配列を標的とする化合物群の一斉簡易スクリーニング法である。構成単位であるピロール−イミダゾールアミドが8アミド存在する場合、その組み合わせは256種類に及ぶ.それらの化合物を同時にスクリーニングすることで、システマティックに細胞毒性を有する化合物を選択できる。無数の組み合わせのDNA選択的化合物ピロール−イミダゾールポリアミドから、その標的遺伝子に合わせて唯一の有用物質を導き出すことが出来得るようになる画期的なシステムであり、この発明に対して本発明者らは既に特許出願を行なっている(特開2001−136974号公報)。
ピロール−イミダゾールポリアミドの合成は、これまで液相法により行っていたが、この方法は他種類の合成に不向きであった。
一方、ピロール−イミダゾールポリアミドの固相合成法は米国カリフォルニア工科大学のダーバン教授によりt−BOC法が開発されているが(J.Am.Chem.Soc.,1996,118,6141−6146)、反応条件が厳しいため長鎖ピロール−イミダゾールポリアミドの合成は困難であり、また、応用性にも乏しい。更に市販の蛋白(ペプチド)合成機を利用した合成法ではないため蛋白質(ペプチド)の導入も容易ではない。また、末端にカルボキシル基を有するポリアミドの合成が難しく、末端をカルボン酸残基として固相から切り出す効率も悪いため、得られた長鎖ピロール−イミダゾールポリアミドを直接修飾して新たな反応性を持たせることも困難である。
また、スペインのマスカレナス教授や米国カリフォルニア大学ブルース教授によりポリピロールのFmoc合成法も報告されているが(Tetrahedron Lett.,1999,40,3621−3624;J.Am.Chem.Soc.,2001,123,2469−2477)、イミダゾールアミドを導入できていないためDNAの配列を正確に識別することができない。
発明の開示
本発明は、上記した如き状況に鑑みなされたもので、より長いピロール−イミダゾールポリアミドを簡便に合成することが出来、蛋白質(ペプチド)の導入も容易なピロール−イミダゾールポリアミドの製造法であって、固相担体から切り出すことが可能なカルボン酸残基を末端に有し、種々の官能基を直接導入することが可能で、DNAの配列を正確に識別することができるピロール−イミダゾールポリアミドを効率よく製造することが出来る該ポリアミドの製造法を提供することを目的とする。
本発明は、ペプチド合成機を使用し、固相Fmoc法による自動合成法により合成することを特徴とする、ピロール−イミダゾールポリアミドの合成法の発明である。
また、本発明は、末端にカルボキシル基を有するピロール−イミダゾールポリアミドの発明である。
更に、本発明は、上記ピロール−イミダゾールポリアミドの末端のカルボキシル基にDNAアルキル化剤を導入してなるピロール−イミダゾールポリアミドの発明である。
更にまた、本発明は、DNAアルキル化剤を導入した上記ピロール−イミダゾールポリアミドを用いることを特徴とする、配列特異的DNAアルキル化方法の発明である。
また、本発明は、末端にカルボキシル基を有するFITC(フルオレセインイソチオシアネート)−ピロール−イミダゾールポリアミドコンジュゲートの発明である。
即ち、本発明者らは、より長いピロール−イミダゾールポリアミドを簡便に合成する手法として固相Fmoc法(Fmoc=9−フルオレニルメトキシカルボニル)による自動合成法を開発した。無数の組み合わせのピロール−イミダゾールポリアミドを固相Fmoc法によるコンビナトリアル自動合成手法と、上で述べた本発明者らが開発したスクリーニング法を組み合わせることにより、生理活性をもつピロール−イミダゾールポリアミドを素早く選択することが出来る。また、本発明の方法によれば末端をカルボン酸残基として固相担体から切り出すことが可能なため、様々な官能基をピロール−イミダゾールポリアミドに導入することが可能である。例えば、DNAに対してアルキル化能をもつデュオカルマイシン、ピロロベンゾジアゼピン、ブレオマイシン、エンジイン化合物、ナイトロジェンマスタード、またそれらの誘導体を導入することが可能である。また、この手法は市販の蛋白(ペプチド)合成機を利用した自動合成であるため、天然に存在する蛋白質とピロール−イミダゾールポリアミドとのコンジュゲート、更には非天然蛋白質とのコンジュゲートの合成をも自動合成法で可能とする合成手法なのである。更にまた、Fmoc法はt−BOC法に比べて反応条件が緩和なため、蛋白質以外の有機化合物の中でも酸性条件で不安定な官能基を持つ化合物の導入も可能であり、その応用は幅広い。例えば、ピロール−イミダゾールポリアミドとDNAやRNAとのコンジュゲート、それらの誘導体とのコンジュゲートを自動合成することも可能である。
先に述べた如く、従来の方法は、例えば液相法は他種類の合成に不向きであり、また、t−BOC法は、反応条件がFmoc法に比べて厳しいため長鎖ピロール−イミダゾールポリアミドの合成は困難であり、また、応用性にも乏しい、更には市販の蛋白合成機を利用した合成ではないため蛋白質の導入も容易ではない、また、末端をカルボン酸残基として固相から切り出すのが難しいため、得られた長鎖ピロール−イミダゾールポリアミドを直接修飾して新たな反応性を持たせることも困難である等の問題点を有しており、更に、ポリピロールのFmoc合成法も、イミダゾールアミドを導入できていないためDNAの配列を正確に識別することができない等、何れも問題点を有しているが、本発明者らが開発した手法はこれらの問題点を全て解決した画期的な手法である。
発明を実施するための最良の形態
本発明の合成法によれば、末端にカルボキシル基を有するピロール−イミダゾールポリアミドを簡便に且つ効率的に合成することが出来る。
末端にカルボキシル基を有するピロール−イミダゾールポリアミドの具体例としては、例えば、末端にβ−アラニン残基を有するピロール−イミダゾールポリアミドや末端にγ−アミノ酪酸残基を有するピロール−イミダゾールポリアミド等が挙げられる。
末端にβ−アラニン残基を有するピロール−イミダゾールポリアミド或いは末端にγ−アミノ酪酸残基を有するピロール−イミダゾールポリアミドは、例えば、Fmocでアミノ基を保護したアミノピロールカルボン酸類と、Fmocでアミノ基を保護したアミノイミダゾールカルボン酸類と、Fmocでアミノ基を保護したβ−アラニン又はFmocでアミノ基を保護したγ−アミノ酪酸を担持した固相担体を用い、ペプチド合成機を使用して固相Fmoc法による自動合成法により合成することが出来る。
アミノピロールカルボン酸類の具体例としては、例えば、4−アミノ−2−ピロールカルボン酸、4−アミノ−1−メチル−2−ピロールカルボン酸、4−アミノ−1−エチル−2−ピロールカルボン酸、4−アミノ−1−プロピル−2−ピロールカルボン酸、4−アミノ−1−ブチル−2−ピロールカルボン酸等が挙げられ、アミノイミダゾールカルボン酸類の具体例としては、例えば、4−アミノ−2−イミダゾールカルボン酸、4−アミノ−1−メチル−2−イミダゾールカルボン酸、4−アミノ−1−エチル−2−イミダゾールカルボン酸、4−アミノ−1−プロピル−2−イミダゾールカルボン酸、4−アミノ−1−ブチル−2−イミダゾールカルボン酸等が挙げられる。
Fmocでアミノ基を保護したアミノピロールカルボン酸類及びFmocでアミノ基を保護したアミノイミダゾールカルボン酸類の合成法をN−メチルピロール又はN−メチルイミダゾールを出発原料として用いた場合を例にして反応スキームで示すと以下の如くなる。なお、参考までに、Fmocでアミノ基を保護したγ−アミノ酪酸の合成法の反応スキームも以下に併せて示す。
なお、上記合成法の詳細については後記実施例の記載参照。
本発明におけるペプチド合成機での固相合成法は、通常、HATU[O−(7−アゾベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート]/DIEA(N,N−ジイソプロピルエチルアミン)系で行われる。
ペプチド合成機としては、例えば、Continuous Flow法を採用したApplied Biosystems社のペプチド合成機Pioneer等が用いられる。
本発明に係るピロール−イミダゾールポリアミドの固相合成法を反応スキームで示すと以下の如くなる。
i)20%ピペリジン/DMF溶液、ii)モノマーユニット、HATU/DIEA iii)20%ピペリジン/DMF溶液、iv)モノマーユニット、HATU/DIEA v)20%ピペリジン/DMF溶液、vi)5%無水酢酸、5%ピリジン/DMF液 vii)取り出し、減圧乾燥、viii)95%TFA(トリフルオロ酢酸),2.5%TIS(トリイソプロピルシラン),2.5%水。
なお、上記合成法の詳細については後記実施例の記載参照。
本発明の方法によれば末端をカルボン酸残基として固相担体から切り出すことが可能なため、様々な官能基をピロール−イミダゾールポリアミドに導入することが可能であるが、例えばDNAアルキル化剤を導入する場合を例にして記すと以下の如くなる。
即ち、固相担体から切り出したカルボン酸末端に対して、例えば、DNAアルキル化剤のDU−86(2−メチル−3−メトキシカルボニル−A環ピロール−DUMA)の活性中心であるA環部(Du86)を導入する場合、先ず、カルボン酸末端を有するピロール−イミダゾールポリアミドを例えばDMF等の溶媒に溶解し、この溶液に室温下、カルボニルジイミダゾール(CDI)を加え、同温で一晩撹拌した後、溶媒を減圧下留去し、残査をジエチルエーテル等で適宜洗浄し、イミダゾールエステル体を得る。
Du86をDMF等の溶媒に溶解し、この溶液に冷却下(例えば−15℃)、水素化ナトリウムを加え、30分程度撹拌した後、この溶液に、上で得られたイミダゾールエステルのDMF溶液を滴下し、同温度で一晩撹拌する。これにリン酸ナトリウムバッファー(pH6.86)等を加えてpHを調整した後、減圧下溶媒を留去し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー及びHPLC等による精製を行ない、カップリング体(DNAアルキル化剤を導入したピロール−イミダゾールポリアミド)を得る。
かくして得られた、DNAアルキル化剤を導入したピロール−イミダゾールポリアミドを用いることにより、配列特異的DNAアルキル化が可能となる。
なお、上記合成法の詳細については後記実施例の記載参照。
FITC(フルオレセインイソチオシアネート)は古くから抗体の蛍光標識試薬として知られている。今回本発明者らが開発したFmoc法によるピロール−イミダゾールポリアミド合成の発展として、FITCをピロール−イミダゾールポリアミドに導入してコンジュゲートを合成することも可能である。得られてくるコンジュゲートは、特定のDNA配列を認識出来る蛍光標識試薬として用いることが出来、がんを含めた遺伝病に関係するDNA配列を容易に識別出来る。これは、ピロール−イミダゾールポリアミドを用いた治療を行なう前段階に利用出来るだけでなく、診断薬としての利用も可能である。
合成は先に示したピロール−イミダゾールポリアミドの固相合成法と同じ手法、即ち、Continuous Flow法を採用したApplied Biosystemsのペプチド合成機Pioneer等を用いて固相Fmoc法による自動合成法により合成することが出来る。
なお、上記合成法の詳細については後記実施例の記載参照。
実施例
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
実施例1 モノマーユニットの合成(上記[化1]の反応スキーム参照)
固相合成に用いるモノマーユニット11、12及び14は次に示した方法により合成した。また、β−アラニンのFmoc保護体は市販されているものを用いた。
なお、反応及び精製に用いた試薬、溶媒は市販のものを用いた。1H−NMRは日本電子JNM−A500を使用した。
試薬の略号は以下のように用いた。ジメチルホルムアミド(DMF)、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA),トリイソプロピルシラン(TIS)、トリフルオロ酢酸(TFA)、カルボニルジイミダゾール(CDI)、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)。
(1)1−メチル−2−トリクロロアセチルピロール(3)の合成
トリクロロアセチルクロリド(200.0g,1.10mol)の塩化メチレン(600ml)溶液中に1(90.3g,1.10mol)の塩化メチレン(200ml)溶液を3時間かけて滴下した。この際に、窒素ガスを溶液中に噴霧し、反応の際に発生する塩化水素を除去した。一晩撹拌した後、溶媒を減圧下留去した。残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、酢酸エチル−ヘキサン(1:10,v/v)溶出部よりトリクロロアセチル体3(189.7g,76%)を得た。
1H−NMR(CDCl3)δ:3.95(3H,s),6.20(1H,s),6.95(1H,s),7.48(1H,s);13C−NMR(CDCl3)δ:38.5,96.3,108.9,121.8,124.0,133.6,172.9;IR(KBr)ν:1657,1404,1363,1334,1102,1069,845,808,745,690cm−1。
(2)1−メチル−4−ニトロ−2−トリクロロアセチルピロール(5)の合成
3(45.2g,0.200mol)の無水酢酸(200ml)溶液を−40℃に冷却し、同温下発煙硝酸(18.5ml,0.360mol)を滴下した。室温で2時間撹拌した後、イソプロパノールを加え、析出した固体をろ取し、ニトロ体5(27.2g)を得た。更にろ液を減圧下留去し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、酢酸エチル−ヘキサン(1:10,v/v)溶出部より更に5(10.7g)を得た。(総収率70%)
1H−NMR(CDCl3)δ:4.06(3H,s),7.72(1H,s),7.93(1H,s);13C−NMR(CDCl3)δ:39.7,94.8,117.5,121.4,130.2,135.3,173.6;IR(KBr)ν:1698,1406,1325,1226,1185,1112,998,857,810,752,716,683cm−1。
(3)1−メチル−4−ニトロ−2−トリクロロアセチルイミダゾール(6)の合成
トリクロロアセチルクロリド(36.3g,0.20mol)の塩化メチレン(120ml)溶液中に2(16.4g,0.20mol)の塩化メチレン(80ml)溶液を2時間かけて滴下した。4時間撹拌した後、氷冷下トリエチルアミン(20.2g,0.20mol)を滴下した。溶媒を減圧下留去した後、残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、酢酸エチル−ヘキサン(1:1,v/v)溶出部よりトリクロロアセチル体4(23.2g,51%)を得た。
1H−NMR(CDCl3)δ:4.03(3H,s),7.14(1H,s),7.32(1H,s);13C−NMR(CDCl3)δ:37.1,94.8,128.5,130.5,136.1,172.3;IR(KBr)ν:1657,1518,1466,1408,1352,1313,1278,810,779cm−1。
無水酢酸(200ml)溶液を氷冷し、同温下発煙硝酸(18.5ml,0.360mol)を滴下した。更に同温下で濃硫酸(0.5ml)を加え、同温で4(34.0g,0.150mol)を少量づつ2時間かけて加えた後、室温で一晩撹拌した。溶媒を減圧下留去し、得られた残査をクロロホルムで洗浄して6(16.0g)を得た。同様の操作を二度繰り返して更に6(8.6g)を得た。(総収率60%)
1H−NMR(CDCl3)δ:4.10(3H,s),7.90(1H,s);13C−NMR(CDCl3)δ:38.2,93.5,126.0,133.6,145.8,172.8;IR(KBr)ν:1709,1541,1514,1491,1464,1344,1317,1135,1023,1000,816,743,638cm−1。
(4)メチル 4−ニトロ−1−メチルピロール−2−カルボン酸エステル(7)の合成
5(32.4g,0.12mol)のメタノール(140ml)溶液中にDMAP(0.50g,4.55mmol)を加えた、40分撹拌した。その後沈殿をろ別し、メタノールで洗浄し7(18.9g)を得た。ろ液は溶媒を減圧下留去した後、同様の操作を繰り返し、更に7(2.3g)を得た。(総収率97%)
1H−NMR(CDCl3)δ:3.84(3H,s),3.97(3H,s),7.39(1H,d,J=2.0Hz),7.57(1H,d,J=2.0Hz);IR(KBr)ν:1711,1541,1510,1425,1315,1257,1195,1118,1089,752cm−1。
(5)メチル 4−ニトロ−1−メチルイミダゾール−2−カルボン酸エステル(8)の合成
6(70.0g,256mmol)のメタノール(500ml)溶液中にをにDMAP(0.500g,4.55mmol)を加えた後、2時間撹拌した。その後沈殿をろ別し、ジエチルエーテルで洗浄し8を得た。ろ液は減圧下留去した後、同様の操作を2回繰り返し、8(46.0g,97%)を得た。
1H−NMR(CDCl3)δ:3.96(3H,s),4.10(3H,s),7.82(1H,s);13C−NMR(CDCl3)δ:37.0,52.8,124.2,134.6,145.8,158.4;IR(KBr)ν:1729,1643,1497,1460,1377,1350,1313,1265,1147,1129,998,845,814,656cm−1。
(6)1−メチル−4−アミノピロール−2−カルボン酸メチルエステル塩酸塩(9)の合成
7(15.3g,83.0mmol)をメタノールとジクロロメタン(150ml,1:2,v/v)混合溶媒に溶解し、10%パラジウム炭素(3g)を加え懸濁させ、水素雰囲気下で2日間撹拌した。その後、セライトに通してろ過してパラジウム炭素を除去し、ろ液に10%塩酸を加えた。生じた沈殿をろ別し、9(4.71g)を得た。更にろ液を減圧下留去した後、酢酸エチル−メタノールで再結晶を行い9(6.86g)を得た。(総収量 11.6g,73%)
1H−NMR(DMSO−d6)δ:3.74(3H,s),3.85(3H,s),6.80(1H,s),7.25(1H,s),10.07(3H,br);ESI MS:m/e calcd for C7H10N2O2(M−HCl+H)154.1,found 154.1。
(7)1−メチル−4−アミノイミダゾール−2−カルボン酸メチルエステル塩酸塩(10)の合成
8(20.0g,108mmol)のジクロロメタン(300ml)溶液に10%パラジウム炭素(5g)を加え懸濁させ、水素雰囲気下で1日間撹拌した。その後セライトに通してろ過してパラジウム炭素を除去し、ろ液に10%塩酸を加え酸性にした。沈殿物をろ取し、10(19.8g,96%)を得た。
1H−NMR(DMSO−d6)δ:3.83(3H,s),3.93(3H,s),7.37(1H,s),9.96(3H,br.s);ESI MS:m/e calcd for C6H9N3O2(M−HCl+H)156.1,found 156.1。
(8)4−[(9−フルオレニルメトキシカルボニル)アミノ]−1−メチル−2−ピロールカルボン酸(11)の合成
9(10.9g,57.2mmol)を蒸留水(80ml)に溶解させ、水酸化ナトリウム(9.2g)を加えた。一晩撹拌した後、1N塩酸で中和し、減圧下留去した。残査を水とエチレングリコールジメチルエーテルの混合溶媒(100ml,1:1,v/v)に溶解し、次の反応に用いた。この溶液に、炭酸ナトリウム(5.3g)を溶解させた後、9−フルオレニルメチルクロロホーメート(17.8g,68.6mmol)加えた。一晩撹拌した後、沈殿をろ別し、11(12.3g,34.1mmol)を得た。更にろ液を1M炭酸ナトリウム水溶液とジエチルエーテルの混合溶液(1:1,v/v)に加えた。沈殿はろ別し、更に11(3.4g)を得た。水層は10%塩酸で酸性にした後、酢酸エチルで抽出した。その有機層を減圧下留去し、ヘキサン−ジオキサンで再結晶し、11(1.6g)を得た。(総収量 17.3g,84%)
1H−NMR(DMSO−d6)δ:3.77(3H,s),4.27(1H,t,J=6.0Hz),4.43(2H,d,J=6.0Hz),6.60(1H,s),7.02(1H,s),7.32(2H,t,J=7.5Hz),7.41(2H,t,J=7.5Hz),7.70(2H,d,J=7.5Hz),7.89(2H,d,J=7.5Hz),9.40(1H,s);13C−NMR(DMSO−d6)δ:36.1,46.7,65.4,107.6,118.8,119.9,120.1,122.4,125.0,127.1,127.6,140.8,143.8,153.3,161.8。
(9)4−[(9−フルオレニルメトキシカルボニル)アミノ]−1−メチル−2−イミダゾールカルボン酸(12)の合成
10(8.24g,41.9mmol)を蒸留水(60ml)に溶解させ、水酸化ナトリウム(4.2g)を加えた。一晩撹拌した後、1N塩酸で中和し、減圧下留去した。残査を水とエチレングリコールジメチルエーテルの混合溶媒(200ml,1:1,v/v)に溶解し、次の反応に用いた。この溶液に、炭酸水素ナトリウム(14.1g)を溶解させた後、9−フルオレニルメチルスクシンイミジルカルボナート(16.9g,50.1mmol)を加えた。一晩撹拌した後、沈殿をろ別し、12(10.8g,29.7mmol)を得た。更にろ液を10%塩酸で酸性にした後、生じた沈殿をろ別し、その沈殿を酢酸エチルで洗浄して12(1.2g,3.30mmol)を得た。(総収量 12.0g,79%)
1H−NMR(DMSO−d6)δ:3.87(3H,s),4.27(1H,t,J=6.0Hz),4.51(2H,d,J=6.0Hz),6.80(1H,s),7.32(2H,t,J=7.5Hz),7.41(2H,t,J=7.5Hz),7.70(2H,d,J=7.5Hz),7.89(2H,d,J=7.5Hz),9.50(1H,s);13C−NMR(DMSO−d6)δ:35.4,46.5,66.1,113.4,120.1,125.4,127.1,127.7,132.04,137.4,140.7,143.7,153.3,159.9;MSスペクトルはメチルエステルに変換して測定した。HRMS(EI+):m/e calcd for C21H19N3O4(M)as methyl ester 377.1376,found 377.1380。
(10)4−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)アミノ酪酸(14)の合成
13(5.0g,48.5mmol)を、水とエチレングリコールジメチルエーテルの混合溶媒(200ml,1:1,v/v)に溶解させた後、9−フルオレニルメチルスクシンイミジルカルボナート(16.4g,48.6mmol)を加えた。更に炭酸ナトリウム(10g,94.4mmol)を加え、一晩撹拌した。生じた沈殿をろ別し、14(10.3g)を得た。更にろ液を1N塩酸で酸性にした後、生じた沈殿をろ別し、14(4.4g)を得た。(総収量 14.7g,94%)
1H−NMR(DMSO−d6)δ:1.61(2H,t,J=7.0Hz),2.19(2H,t,J=7.0Hz),2.98,(2H,dd,J=13.0,6.0Hz),4.20(1H,t,J=6.5Hz),4.28(2H,d,J=6.5Hz),7.32(2H,t,J=7.5Hz),7.40(2H,t,J=7.5Hz),7.67(2H,d,J=7.5Hz),7.87(2H,d,J=7.5Hz),11.0(1H,br.s);MSスペクトルはメチルエステルに変換して測定した。HRMS(EI+):m/e calcd for C19H19NO4 as methyl ester 339.1471,found 339.1475。
実施例2 ピロール−イミダゾールポリアミドの固相合成(上記[化2]の反応スキーム参照)
実施例1で得られた化合物11,12,14並びに市販品のβ−アラニンFmoc保護体を用いて、各種ピロール−イミダゾールポリアミドの合成を行った。合成プロトコールを表1に示す。
固相合成はContinuous Flow法を採用したApplied Biosystems社のペプチド合成機Pioneerを用いて行った。固相担体はFmoc−β−アラニンがプレロードされた市販のWang resinを用いた。また、HATU、DIEA及びモノマーユニットは、固相担体の活性末端に対して4当量用いた。合成前に固相担体をDMFに30分膨潤させた後、Pioneerの合成カラムに詰めた。合成はまず、担体にプレロードされているβ−アラニンのFmoc基を、20%ピペリジンのDMF溶液で5分間処理することにより脱保護した。その後、担体を4メタノールで50秒間洗浄し、導入したいモノマーユニット、HATU及びDIEAをカラムに通し、60分間サイクルさせた後、メタノールで再度40秒間洗浄した。この脱保護、伸長というサイクルを一サイクルとして、モノマーユニットを目的とするポリアミドの配列通りに順に縮合させた。その後、脱保護を同様に行った後、5%無水酢酸、5%ピリジンのDMF溶液でアセチル化を行った。反応終了後、固相担体をカラムから取り出し、減圧乾燥を行った後、50mlのナスフラスコ中に移し、95%TFA、2.5%TIS、2.5%水を5ml加えて30分間撹拌し、担体から切り出しを行った。精製は0.1%TFA水溶液とアセトニトリルを用いたHPLCにより行った。
得られたピロール−イミダゾールポリアミドの構造式と収率及び各種スペクトルデータ等を以下に示す。
なお、以下の記載において、Imは1−メチル−4−アミノイミダゾール−2−カルボン酸残基を、Pyは1−メチル−4−アミノピロール−2−カルボン酸残基を、Acはアセチル基を、γ−butylはγ−アミノ酪酸残基を、β−ala−COOHはβ−アラニンをそれぞれ表す。
Ac−Im−Py−β−ala−COOH:収率19%;1H NMR(CD3OD)δ:2.15(3H,s),2.63(2H,t,J=6.5Hz),3.60(2H,t,J=6.5Hz),3.90(3H,s),4.04(3H,s),6.71(1H,d,J=1.5Hz),7.24(1H,d,J=1.5Hz),7.35(1H,s),4つのプロトン(3 NHs and 1 COOH)はCD3ODに変えたことにより検出されなかった。;ESI MS m/e calcd for C16H21O5N6(M+H)377.2,found 377.2。
Ac−Py−Py−Py−β−ala−COOH:収率18%;1H NMR(CD3OD)δ:2.07(3H,s),2.60(2H,t,J=7.0Hz),3.55(2H,t,J=7.0Hz),3.87(3H,s),3.89(3H,s),3.90(3H,s),6.76(1H,s),6.82(1H,s),6.91(1H,s),7.11(3H,s),7.18(2H,s),5つのプロトン(4 NHs and 1 COOH)はCD3ODに変えたことにより検出されなかった。;ESI MS m/e calcd for C23H28O5N7(M+H)498.2,found 498.3。
Im−Im−β−ala−Py−Py−β−ala−COOH:収率31%;1H NMR(CD3OD)δ:2.59(2H,t,J=7.0Hz),2.62(2H,t,J=7.0Hz),3.54(2H,t,J=7.0Hz),3.67(2H,t,J=7.0Hz),3.83(3H,s),3.86(3H,s),4.01(3H,s),4.11(3H,s),6.74(1H,d,J=2.0Hz),6.79(1H,d,J=2.0Hz),7.13(1H,d,J=2.0Hz),7.14(1H,d,J=2.0Hz),7.51(1H,s),7.54(1H,s),7.62(1H,s),6つのプロトン(5 NHs and 1 COOH)はCD3ODに変えたことにより検出されなかった。;ESI MS m/e calcd for C29H34O7N11(M+H)636.3,found 636.3。
Ac−Py−Py−Py−β−ala−Py−Py−Py−β−ala−COOH:収率18%;1H NMR(CD3OD)δ:2.06(3H,s),2.59(2H,t,J=7.0Hz),2.62(2H,t,J=7.0Hz),3.55(2H,t,J=7.0Hz),3.63(2H,t,J=7.0Hz),3.85(3H,s),3.86(6H,s),3.87(3H,s),3.88(3H,s),3.89(3H,s),6.75(1H,d,J=2.0Hz),6.76(1H,d,J=2.0Hz),6.81(1H,d,J=2.0Hz),6.83(1H,d,J=2.0Hz),6.88(1H,d,J=2.0Hz),6.89(1H,d,J=2.0Hz),7.11(1H,d,J=2.0Hz),7.14−7.16(4H,m),7.17(1H,d,J=2.0Hz),9つのプロトン(8 NHs and 1 COOH)はCD3ODに変えたことにより検出されなかった。;ESI MS m/e calcd for C44H51O10N14(M+H)935.4,found 935.4。
Ac−Im−Py−Py−γ−butyl−Py−Py−β−ala−COOH:収率18%;1H NMR(CD3OD)δ:1.78(2H,t,J=7.5Hz),2.01(3H,s),2.27(2H,t,J=7.5Hz),3.21(2H,dd,J=7.5,12.5Hz),3.79(3H,s),3.80(3H,s),3.82(3H,s),3.83(3H,s),3.84(3H,s),3.94(3H,s),6.84(1H,d,J=1.5),6.86(1H,d,J=1.5),6.89(1H,d,J=1.5),7.02(1H,d,J=1.5),7.12(1H,d,J=1.5),7.16−7.17(3H,m),7.22(1H,d,J=1.5),7.26(1H,d,J=1.5),7.41(1H,s),7.99(1H,t,J=6.5),8.03(1H,t,J=6.5),9.81(1H,s),9.87(1H,s),9.88(2H,s),9.93(1H,s),10.21(1H,s),3つのプロトン(N−CH2−CH2−COO,and COOH)は検出されなかった。(重なったため);ESI MS m/e calcd for C38H48O13N9(M+H)828.3,found 82 8.3。
Ac−Im−Py−Py−γ−butyl−Py−Py−Py−β−ala−COOH:収率10%;1H NMR(DMSO−d6)δ:1.78(2H,t,J=7.5Hz),2.01(3H,s),2.27(2H,t,J=7.5Hz),3.21(2H,dd,J=12.5,7.5Hz),3.79(3H,s),3.80(6H,s),3.82(3H,s),3.83(3H,s),3.85(3H,s),3.94(3H,s),6.84(1H,d,J=2.0Hz),6.86(1H,d,J=2.0Hz),6.89(1H,d,J=2.0Hz),7.02(1H,d,J=2.0Hz),7.12(1H,d,J=2.0Hz),7.16−7.17(2H,m),7.22(1H,d,J=2.0Hz),7.26(1H,d,J=2.0Hz),7.99(1H,t,J=6.0Hz),8.03(1H,t,J=6.0Hz),9.81(1H,s),9.87(2H,s),9.88(2H,s),9.93(1H,s),10.21(1H,s),4つのプロトン(N−CH 2−CH 2−COO)はDMSO溶媒のピークの一つがオーバーラップするため確認できない。;ESI MS m/e calcd for C44H53O10N15(M+H)950.4,found 950.3。
実施例3 ピロール−イミダゾールポリアミドのカルボン酸末端へのDNAアルキル化剤の導入
DNAアルキル化剤であるDU−86の構造式及びDU−86の活性中心であるA環部(Du86)の構造式を以下に示す。
固相担体から切り出したカルボン酸末端に対して、DNAアルキル化剤であるDU−86の活性中心であるA環部(Du86)15を導入した。操作手順は以下の通りである。
実施例2で得られた、カルボン酸末端を有するピロール−イミダゾールポリアミド(0.05mmol)のDMF(1.5mL)溶液に室温下、カルボニルジイミダゾール(CDI、24.3mg,0.15mmol)を加え、同温で一晩撹拌した。溶媒を減圧下留去し、残査をジエチルエーテルで2回洗浄し、イミダゾールエステル体(30−70%)を得た。
15(6.2mg,0.024mmol)のDMF(2mL)溶液を−15℃に冷却し、60%水素化ナトリウム(2.0mg,0.05mmol)を加え、同温下30分撹拌した。その溶液に、上で得られたイミダゾールエステル(0.024mmol)のDMF(1.5mL)溶液を滴下し、同温度で一晩撹拌した。リン酸ナトリウムバッファー(pH6.86)を加えた後、減圧下溶媒を留去した。得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、更に、HPLCによる精製を行ない、カップリング体(20−50%)を得た。
得られたイミダゾールエステル体及びカップリング体の構造式と得量、収率及び各種スペクトルデータ等を以下に示す。
なお、以下の記載において、Im’はイミダゾリル基を表し、β−ala−COはβ−アラニン残基を表し、Ac,Im,Py及びγ−butylは前記と同じ。
Ac−Im−Py−β−ala−CO−Im’:5.6mg(45%);1H NMR(DMSO−d6)δ:2.01(3H,s),3.78(3H,s),3.92(3H,s),6.93(1H,d,J=1.5Hz),7.06(1H,s),7.21(1H,d,J=1.5Hz),7.40(1H,s),7.72(1H,s),8.14(1H,t,J=5.5Hz),8.42(1H,s),9.92(1H,s),10.23(1H,s),4つのプロトン(N−CH 2−CH 2−COO)はDMSO溶媒のピークがオーバーラップするため確認できない。;ESI MS m/e calcd for C19H23O4N8(M+H)427.2,found 427.2。
Ac−Im−Py−β−ala−CO−Du86:0.56mg(9%);1H NMR(DMSO−d6)δ:1.28(1H,s),2.01(3H,s),2.09(1H,s),2.45(3H,s),3.38−3.44(2H,m),3.70−3.75(1H,m),3.71(3H,s),3.80(3H,s),3.92(3H,s),4.08(2H,s),6.93(2H,s),7.22(1H,s),7.40(1H,s),8.03(1H,t,J=5.5Hz),9.89(1H,s),10.22(1H,s),12.35(1H,s),2つのプロトン(N−CH2−CH 2−COO)はDMSO溶媒のピークの一つがオーバーラップするため確認できない。;ESI MS m/e calcd for C30H33O7N8(M+H)617.2,found 617.3。
Im−Im−β−ala−Py−Py−β−ala−CO−Im’:6.3mg(74%);1H NMR(DMSO−d6)δ:3.49(2H,q,J=6.5Hz),3.53(2H,q,J=6.5Hz),3.78(3H,s),3.83(3H,s),3.96(3H,s),4.00(3H,s),6.83(1H,s),6.85(1H,s),7.05(1H,s),7.06(1H,s),7.15(2H,s),7.46(1H,s),7.71(1H,s),8.09(1H,s),8.23(1H,s),8.42(1H,s),8.61(1H,s),9.75(1H,s),9.84(1H,s),9.89(1H,s),4つのプロトン(2 of N−CH2−CH 2s)はDMSO溶媒のピークの一つがオーバーラップするため確認できない。
Im−Im−β−ala−Py−Py−β−ala−CO−Du86:0.10mg(3%);1H NMR(CD3OD)δ:1.04−1.06(1H,m),2.08−2.12(1H,m),2.50(3H,s),2.58−2.66(4H,m),3.56(2H,m),3.67(2H,m),3.70−3.75(1H,m),3.77(3H,s),3.84(3H,s),3.87(3H,s),4.01(3H,s),4.02−4.05(2H,m),4.05(3H,s),6.74(1H,s),6.81(1H,s),7.05(1H,s),7.14(2H,s),7.25(1H,s),7.47(1H,s),7.88(1H,s),6つのプロトン(6 NHs)はCD3ODに変えたことにより検出されなかった。;ESI MS m/e calcd for C42H46O9N13(M+H)876.3,found 876.4。
Ac−Im−Py−Py−γ−butyl−Py−Py−β−ala−CO−Im’:22.5mg(68%);1H NMR(DMSO−d6)δ:1.72−1.78(2H,m),2.01(3H,s),2.23−2.29(2H,m),3.50−3.56(2H,m),3.77(3H,s),3.80(3H,s),3.81(3H,s),3.84(3H,s),3.94(3H,s),6.82(2H,s),6.89(1H,s),7.03(1H,s),7.06(1H,s),7.12(1H,s),7.16(1H,s),7.26(1H,s),7.41(1H,s),7.68(1H,s),7.71(1H,s),8.00−8.04(1H,m),8.04−8.10(1H,m),8.42(1H,s),9.80(1H,s),9.82(1H,s),9.87(1H,s),9.93(1H,s),10.21(1H,s),4つのプロトン(N−CH2−CH 2 and N−CH 2−CH2)はDMSO溶媒のピークの一つがオーバーラップするため確認できない。
Ac−Im−Py−Py−γ−butyl−Py−Py−β−ala−CO−Du86:0.70mg(HPLC精製後7%);1H NMR(DMSO−d6)δ:1.04−1.06(1H,m),2.08−2.12(1H,m),2.58−2.66(4H,m),3.56(2H,m),3.67(2H,m),3.77(3H,s),3.84(3H,s),3.87(3H,s),4.01(3H,s),4.02−4.05(2H,m),4.05(3H,s),6.74(1H,s),6.81(1H,s),7.05(1H,s),7.14(1H,s),7.47(1H,s),7.88(1H,s),6つのプロトン(N−CH 2−CH 2 and N−CH 2−CH2−CH2)はCD3ODに変えたことにより検出されなかった。;ESI MS m/e calcd for C52H58O11N15(M+H)1068.3,found 1068.4。
実施例4 DNAアルキル化剤を導入したピロール−イミダゾールポリアミドによる配列特異的DNAアルキル化
(1)上で合成したAc−Im−Py−β−ala−CO−Du86を用いてDNAアルキル化実験を行なった。その結果を第1図に示す。
第1図から明らかなように、本化合物は、5’−TAAA−3’を認識して、3’−末端のアデニンをアルキル化していることが分かった。
(2)また同様の実験をIm−Im−β−ala−Py−Py−β−ala−CO−Du86を用いて行なった。その結果を第2図に示す。この場合、2つのイミダゾール部がDNA中のグアニンを認識し、配列特異的なDNAアルキル化が起こることが明らかとなった。即ち、本化合物は5’−GGAGAAA−3’を認識して、3’−末端のアデニンをアルキル化していることが明らかとなった。
これらの結果からも、本発明者らが開発したピロール−イミダゾールポリアミドのFmoc法による自動合成法を用いることで、DNAを配列選択的にアルキル化する化合物が容易に得られることが明らかとなった。この技術により、がん細胞種特有のDNAをターゲットとする薬物の開発、即ち、副作用のない抗がん剤の開発の進展が大いに期待される。
(3)次に、同様の実験をAc−Im−Py−Py−γ−butyl−Py−Py−β−ala−Du86を用いて行った。この化合物は、ピロール−イミダゾールポリアミド部位が自らヘアピン構造を取り、一分子でDNAの2本鎖の両側を認識できうる。ヘアピン化合物はDNAに結合する際にPy−PyペアがATまたはTAをIm−PyペアがGCをPy−ImペアがCGを選択的に認識して結合するというダーバン則に従うことが知られているが、この化合物はβ−アラニンペア−Imという新たな分子認識の組み合わせを含んでいるので、新たな分子認識ルールの発見の可能性があり、DNAアルキル化実験を行なって確認した。その結果を第3図に示す(DNA:pUC18III 70nM、試薬濃度:10nM〜500nM,5サンプル、反応条件:リン酸ナトリウム緩衝液(1.46mM)37℃,8時間)。
第3図から明らかなように、この化合物の場合はヘアピン構造を取りながら一つの規則に従ってDNAをアルキル化していることが分かった。即ち、γ−butylヘアピンカーブ部位はATに、Py−PyペアがATまたはTAを認識し、Du86がAまたはGをアルキル化した。この際に、新たな分子認識ペアであるβ−アラニンペア−Imペアは、選択的にCGペアを認識し、配列特異的なアルキル化に重大な寄与をしていることが明らかとなった。この発見は今まで報告のない新たな発見である。
この結果、Ac−Im−Py−Py−γ−butyl−Py−Py−β−ala−Du86は5’−(A/T)(A/T)(A/T)C(A/G)−3’部位を認識し、3’−末端のアデニンを選択的にアルキル化していると分かった。先にも述べたように、末端がβ−アラニンカルボン酸基を持つピロール−イミダゾールポリアミドの合成は本発明者らが今回発見したペプチド合成機を用いる手法により容易に調製できる。この発見により、本発明の合成手法は、新たなDNA認識性化合物の合成に寄与するところが極めて大なる発明であるということが明らかとなった。
実施例5 FITC−ピロール−イミダゾールポリアミドコンジュゲートの固相合成
合成は先に示したピロール−イミダゾールポリアミドの固相合成法と同じ手法、即ち、Continuous Flow法を採用したApplied Biosystemsのペプチド合成機Pioneerを用いて行った。固相担体はFmoc−β−アラニンがプレロードされた市販のWang resinを用いた。また、HATU、DIEA、FITC及びモノマーユニットは、固相担体の活性末端に対して4当量用いた。反応終了後、固相担体をカラムから取り出し、減圧乾燥を行った後、50mlのナスフラスコ中に移し、95%TFA、2.5%TIS、2.5% 水を5ml加えて30分撹拌し、担体から切り出しを行った。精製は、0.1%TFA水溶液とアセトニトリルを用いたHPLCにより行った。
得られたFITC−ピロール−イミダゾールポリアミドコンジュゲートの構造式と収率及び各種スペクトルデータ等を以下に示す。
FITC−Py−−Py−β−ala−COOH:収率14%;1H NMR(DMSO−d6)δ:3.79(3H,s),3.87(3H,s),6.54−6.62(5H,m),6.66(1H,s),6.67(1H,s),6.83(1H,s),6.97(1H,s),7.17(1H,d,J=8.0Hz),7.18(1H,d,J=1.5Hz),7.24(1H,br.s),7.82(1H,dd,J=8.0,1.5Hz),7.80(1H,t,J=6.0Hz),8.21(1H,s),9.82(1H,s),9.85(1H,s),10.09(2H,s),12.20(1H,br.s),4つのプロトン(N−CH 2−CH 2−COO)はDMSO溶媒のピークがオーバーラップするため確認できない。;ESI MS m/e calcd for C36H31O6N9S(M+H)723.2,found 723.2。
産業上の利用可能性
本発明の方法によれば末端をカルボン酸残基として固相担体から切り出すことが可能なため、様々な官能基をピロール−イミダゾールポリアミドに導入することが可能である。例えば、DNAに対してアルキル化能をもつデュオカルマイシン、ピロロベンゾジアゼピン、ブレオマイシン、エンジイン化合物、ナイトロジェンマスタード、またそれらの誘導体を導入することが可能である。即ち、本発明の方法を用いることで、DNAを配列選択的にアルキル化する化合物が容易に得られることが明らかとなった。この技術により、がん細胞種特有のDNAをターゲットとする薬物の開発、即ち、副作用のない抗がん剤の開発の進展が期待できる。また、本発明の方法によれば、天然に存在する蛋白質とピロール−イミダゾールポリアミドとのコンジュゲート、更には非天然蛋白質とのコンジュゲートの合成をも可能とする。更にまた、Fmoc法はt−BOC法に比べて反応条件が緩和なため、蛋白質以外の有機化合物の中でも酸性条件で不安定な官能基を持つ化合物の導入も可能であり、その応用は幅広い。例えば、ピロール−イミダゾールポリアミドとDNAやRNAとのコンジュゲート、それらの誘導体とのコンジュゲートを自動合成することも可能である。
また、FITCをピロール−イミダゾールポリアミドに導入してコンジュゲートを合成することも可能であり、得られてくるコンジュゲートは、特定のDNA配列を認識出来る蛍光標識試薬として用いることが出来、がんを含めた遺伝病に関係するDNA配列を容易に識別出来る。これは、ピロール−イミダゾールポリアミドを用いた治療を行なう前段階に利用出来るだけでなく、診断薬としての利用も可能である。
【図面の簡単な説明】
第1図は、実施例4の(1)のDNAアルキル化実験における、DNAアルキル化剤のDNAに対する反応性を450merのDNAフラグメントを用いてポリアクリルアミドゲル電気泳動法で解析した結果を示す。
第2図は、実施例4の(2)のDNAアルキル化実験における、DNAアルキル化剤のDNAに対する反応性を450merのDNAフラグメントを用いてポリアクリルアミドゲル電気泳動法で解析した結果を示す。
第3図は、実施例4の(3)のDNAアルキル化実験における、DNAアルキル化剤のDNAに対する反応性を450merのDNAフラグメントを用いてポリアクリルアミドゲル電気泳動法で解析した結果を示す。
Claims (15)
- ペプチド合成機を使用し、固相Fmoc法による自動合成法により合成することを特徴とする、ピロール−イミダゾールポリアミドの合成法。
- 末端にカルボキシル基を有するピロール−イミダゾールポリアミドを合成する請求の範囲第1項に記載の合成法。
- 末端にカルボキシル基を有するピロール−イミダゾールポリアミドが、末端にβ−アラニン残基又はγ−アミノ酪酸残基を有するピロール−イミダゾールポリアミドである請求の範囲第2項に記載の合成法。
- Fmocでアミノ基を保護したアミノピロールカルボン酸類と、Fmocでアミノ基を保護したアミノイミダゾールカルボン酸類と、Fmocでアミノ基を保護したβ−アラニン又はFmocでアミノ基を保護したγ−アミノ酪酸を担持した固相担体を用いる請求の範囲第3項に記載の合成法。
- Fmocでアミノ基を保護したアミノピロールカルボン酸類がFmocでアミノ基を保護した4−アミノ−1−メチル−2−ピロールカルボン酸であり、Fmocでアミノ基を保護したアミノイミダゾールカルボン酸類がFmocでアミノ基を保護した4−アミノ−1−メチル−2−イミダゾールカルボン酸である請求の範囲第4項に記載の合成法。
- HATU[O−(7−アゾベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート]/DIEA(N,N−ジイソプロピルエチルアミン)系によるペプチド合成機での固相合成法により合成する請求の範囲第1項〜第5項の何れかに記載の合成法。
- 末端にカルボキシル基を有するピロール−イミダゾールポリアミド。
- 末端にβ−アラニン残基又は末端にγ−アミノ酪酸残基を有する請求の範囲第7項に記載のピロール−イミダゾールポリアミド。
- Fmocでアミノ基を保護したアミノピロールカルボン酸類と、Fmocでアミノ基を保護したアミノイミダゾールカルボン酸類と、Fmocでアミノ基を保護したβ−アラニン又はFmocでアミノ基を保護したγ−アミノ酪酸を担持した固相担体を用い、固相Fmoc法による自動合成法により合成した請求の範囲第8項に記載のピロール−イミダゾールポリアミド。
- Fmocでアミノ基を保護したアミノピロールカルボン酸類がFmocでアミノ基を保護した4−アミノ−1−メチル−2−ピロールカルボン酸であり、Fmocでアミノ基を保護したアミノイミダゾールカルボン酸類がFmocでアミノ基を保護した4−アミノ−1−メチル−2−イミダゾールカルボン酸である請求の範囲第9項に記載のピロール−イミダゾールポリアミド。
- 請求の範囲第7項又は第8項に記載のピロール−イミダゾールポリアミドの末端のカルボキシル基にDNAアルキル化剤を導入してなるピロール−イミダゾールポリアミド。
- DNAアルキル化剤がDU−86(2−メチル−3−メトキシカルボニル−A環ピロール−DUMA)の活性中心であるA環部(Du86)である請求の範囲第11項に記載のピロール−イミダゾールポリアミド。
- DNAアルキル化剤を導入した請求の範囲第11項又は第12項に記載のピロール−イミダゾールポリアミドを用いることを特徴とする、配列特異的DNAアルキル化方法。
- DNAアルキル化剤がDu−86(2−メチル−3−メトキシカルボニル−A環ピロール−DUMA)の活性中心であるA環部(Du86)である請求の範囲第13項に記載の配列特異的DNAアルキル化方法。
- 末端にカルボキシル基を有するFITC(フルオレセインイソチオシアネート)−ピロール−イミダゾールポリアミドコンジュゲート。
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