JPWO2002094953A1 - 貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液及びその製造方法並びにコーティング用組成物 - Google Patents
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Abstract
高濃度で充分な着色性を有しゾル−ゲル法に好適に使用することができる貴金属又は銅のコロイド粒子及び高分子量顔料分散剤を含むアルコール溶液であって、アルコールの炭素数は1〜4であり、高分子量顔料分散剤は下記式(1)若しくは(2)を満たすものであることを特徴とする。(1)A≧3mlかつ3ml≦B≦40ml(2)0.25≦A/B≦4.5(式中、A及びBは、高分子量顔料分散剤0.5gをアセトン10mlに溶解したアセトン溶液に水又はヘキサンを添加する場合アセトン溶液が白濁するまでの水及びヘキサンの添加量である。)
Description
技術分野
本発明は、ゾル−ゲル法に好適に使用することができる貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液及びそれの製造方法、溶液調整方法並びにそれを用いたコーティング用組成物、これを用いた無機被膜及び無機被膜形成方法に関する。
背景技術
貴金属や銅のコロイドは、化学的に非常に安定であり、各コロイド特有の色を発色する。例えば、金コロイドは、粒径に応じて、青、青紫、赤紫等の色を示す。この特性を活かして、従来より、ベネチアガラスやステンドグラス等の着色に利用されている。このような貴金属コロイドによる発色は、粒径が数nm〜数十nm程度のいわゆるナノ粒子において見られるものであり、着色材としては、粒径分布が狭いコロイドであることが有利である。
特開平11−80647号公報には、着色性の高い貴金属又は銅のコロイド粒子として、貴金属又は銅のコロイド粒子及び高分子量顔料分散剤を含むことを特徴とする貴金属又は銅のコロイド溶液が開示されている。しかし、このものは光学材料としての使用を意図していないため、そのために必要な彩度が得られない場合があった。
一方、ゾル−ゲル法という、ガラスやセラミックスの作製法が、古くから知られている。ゾル−ゲル法は、通常、金属アルコキシドにアルコール、加水分解に必要な水、触媒としての酸又は塩基を添加し、縮重合させて、生成する金属酸化物の粒子がコロイド状に分散したゾルとし、これを更にゲル化する際にコーティング膜状等に加工し、加熱によって酸化物の固体を得るものである。ゾル−ゲル法は、このように溶液から薄膜のゲルやガラスを得られる簡便性のほか、この方法により得られる薄膜は、ガラス基板との良好な接着性、得られる薄膜の均一性を有し、また、基板の耐熱性、耐食性、耐薬品性、機械的強度等の化学的・物理的特性を向上する等の利点を有する。近年は、得られるコーティング膜に、調光・着色等の光学的機能や電気的機能等の機能特性を付与することも行われている。
このゾル−ゲル法に用いられる金属アルコキシド溶液に、先の貴金属又は銅のコロイド溶液を多量に添加した場合、水に不溶な有機溶媒を分散媒とするものでは混合が十分なされず、目的とするコーティング剤を得ることができない。一方、水を分散媒とするものでは水濃度が高くなりすぎて、金属アルコキシドの加水分解が必要以上に促進され、コーティング剤の安定性が低下する。
発明の要約
本発明は、上記に鑑み、高濃度で、充分な着色性を有し、ゾル−ゲル法に好適に使用することができる貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液、及び、その製造方法、溶液調整方法、並びに、この貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液、又は、貴金属又は銅のコロイドの溶液を用いてなるコーティング用組成物並びにこれを用いた無機被膜及び無機被膜形成方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、貴金属又は銅のコロイドの分散媒として炭素数1〜4のアルコールを使用し、かつ、貴金属又は銅のコロイド粒子の保護コロイドとして上記アルコールとの親和性を考慮した特定の高分子量顔料分散剤を選択することにより、高濃度で、上記コロイド粒子の粒径分布が狭い貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液が得られ、ゾル−ゲル法に好適に利用できることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、貴金属又は銅のコロイド粒子及び高分子量顔料分散剤を含む貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液であって、上記アルコールの炭素数は、1〜4であり、上記高分子量顔料分散剤は、下記式(1)若しくは(2)を満たすものであることを特徴とする貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液である。
(1)A≧3mlかつ3ml≦B≦40ml
(2)0.25≦A/B≦4.5
〔式中、A及びBはそれぞれ、上記高分子量顔料分散剤0.5gをアセトン10mlに溶解したアセトン溶液に水又はヘキサンをそれぞれ添加する場合における、上記アセトン溶液が白濁するまでの上記水の添加量(ml)、及び、上記アセトン溶液が白濁するまでの上記ヘキサンの添加量(ml)である。〕
上記アルコールは、炭素数2〜4のモノアルコールであることが好ましく、また、上記式(1)は、下記式(1′)であることが好ましい。
(1′)A≧10mlかつ4ml≦B≦20ml
本発明は、更に、貴金属又は銅の化合物を、炭素数1〜4のアルコールに溶解し、高分子量顔料分散剤を加えた後、貴金属又は銅に還元する貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液の製造方法であり、上記高分子量顔料分散剤は、下記式(1)若しくは(2)を満たすものであることを特徴とする貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液の製造方法である。
(1)A≧3mlかつ3ml≦B≦40ml
(2)0.25≦A/B≦4.5
〔式中、A及びBはそれぞれ、上記高分子量顔料分散剤0.5gをアセトン10mlに溶解したアセトン溶液に水又はヘキサンをそれぞれ添加する場合における、上記アセトン溶液が白濁するまでの上記水の添加量(ml)、及び、上記アセトン溶液が白濁するまでの上記ヘキサンの添加量(ml)である。〕
本発明は、また、この方法で得られる貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液でもある。
本発明は、上記製造方法で得られる貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液を濃縮した後、上記濃縮して得られた溶液に上記アルコールと異なる溶剤を加えて希釈することを特徴とする貴金属又は銅のコロイドの溶液調整方法である。
本発明は、また、この調整方法で得られる貴金属又は銅のコロイドの溶液でもある。
本発明は、上記貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液と金属アルコキシドとからなるコーティング用組成物でもある。
本発明は、上記貴金属又は銅のコロイドの溶液と金属アルコキシドとからなるコーティング用組成物でもある。
本発明は、また、上記コーティング用組成物を用いて得られる無機被膜である。
本発明は、更に、上記コーティング用組成物を用いて基材上に無機被膜を形成することを特徴とする無機被膜形成方法である。
発明の詳細な開示
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液は、貴金属又は銅のコロイド粒子及び高分子量顔料分散剤を含み、炭素数1〜4のアルコールを分散媒としている。上記アルコールの炭素数が1〜4である場合には、貴金属又は銅のコロイド粒子を高濃度かつ高い安定性で分散することができるのみならず、光学材料として使用する場合に、従来よりも高い彩度を実現できるとともに、本発明の貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液をゾル−ゲル法において多量使用することができる。
上記炭素数が5以上である場合には、上記アルコールを溶媒とする貴金属又は銅のコロイド溶液は、ゾル−ゲル法に用いる金属アルコキシド溶液との相溶性が不充分となり、コーティング用組成物を得ることができないおそれがある。
本発明で使用するアルコールとしては、炭素数1〜4のものであれば特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のモノアルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のアルキレングリコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル等を挙げることができる。
本発明の貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液をゾル−ゲル法において使用する場合、蒸発性を考慮すると、炭素数2〜4のものが好ましく、また金属アルコキシド間の架橋が進行しないことを考慮すると、モノアルコールが好ましい。上記ゾル−ゲル法の金属アルコキシドとしてはエチルシリケートが好適に使用されることから、上記アルコールはエタノールであることがより好ましい。なお、上記アルコールは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、このゾル−ゲル法での多量の使用を考慮すると、貴金属又は銅のコロイドの分散媒は、上記アルコールのみからなるものを使用することが好ましい。ただし、アルコール単独では原材料の溶解性が不充分である場合には、ゾル−ゲル法に使用される金属アルコキシド溶液に添加した際にその安定性を阻害しない範囲内で、上記アルコールに少量の水を加えてもよい。
本発明において、上記貴金属又は銅のコロイド粒子は、貴金属又は銅の化合物から形成される。
上記貴金属としては特に限定されず、例えば、金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金等を挙げることができる。なかでも、金、銀、白金、パラジウムが好ましい。
上記貴金属又は銅の化合物としては、上記炭素数1〜4のアルコールに溶解するものが好ましく、例えば、テトラクロロ金(III)酸四水和物、過塩素酸銀、ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物、塩化パラジウム(II)二水和物、三塩化ロジウム(III)三水和物、塩化銅(II)二水和物、酢酸銅(II)一水和物等を挙げることができる。テトラクロロ金(III)酸カリウム二水和物や硫酸銅(II)等のように、少量の水を添加した炭素数1〜4のアルコールに溶解するものも使用することができる。これらは、1種又は2種以上を使用することができる。
本発明において、上記高分子量顔料分散剤は、高分子量重合体に顔料表面に対する親和性の高い官能基が導入されている両親媒性の共重合体である。このものは、塗料用樹脂組成物等に対して充分な相溶性を有することから、有機顔料又は無機顔料の分散剤として好適であり、通常は、顔料ペーストの製造時に顔料分散剤として使用されているものである。
本発明においては、上記高分子量顔料分散剤は、貴金属又は銅のコロイド粒子が生成する際の保護コロイドとして機能し、その使用により、非常に高濃度の貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液が得られる。
上記高分子量顔料分散剤は、下記式(1)又は(2)を満たすものである。
(1)A≧3mlかつ3ml≦B≦40ml
(2)0.25≦A/B≦4.5
〔式中、A及びBはそれぞれ、上記高分子量顔料分散剤0.5gをアセトン10mlに溶解したアセトン溶液に水又はヘキサンをそれぞれ添加する場合における、上記アセトン溶液が白濁するまでの上記水の添加量(ml)、及び、上記アセトン溶液が白濁するまでの上記ヘキサンの添加量(ml)である。〕
本発明においては、式(1)を満たさない場合であっても式(2)を満たす場合には、上記高分子量顔料分散剤として使用することができる。上記A及び上記Bが式(1)又は(2)のどちらにも含まれないと、上記高分子量顔料分散剤が貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液の分散媒である炭素数1〜4のアルコールに十分に溶解しないものである結果、貴金属又は銅のコロイド粒子を得ることができない。
ここで上記式(1)は、下記式(1′)であることが好ましい。
(1′)A≧10mlかつ4ml≦B≦20ml
上記式(1)又は式(2)を満たす高分子量顔料分散剤を用いることにより、貴金属又は銅のコロイド粒子を安定に且つ高濃度に分散させることができる。また、貴金属又は銅のコロイド粒子のアルコール溶液の吸光曲線がこれまでのものに比べてシャープになるため、光学特性に優れた材料として利用可能である。
本発明において使用する高分子量顔料分散剤の数平均分子量は、1000〜100万であることが好ましい。1000未満であると、分散安定性が充分ではなく、100万を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となり、また、コロイド粒子の粒度分布が広くなり、彩度が低下する。より好ましくは、2000〜50万であり、更に好ましくは、4000〜50万である。
上記高分子量顔料分散剤は、顔料親和性基及び溶媒和部分を含む構造を有する樹脂であり、例えば、特開平11−80647号公報に例示したものを挙げることができる。
上記高分子量顔料分散剤としては、市販されているものを使用することもできる。上記市販品としては、例えば、ソルスパース27000、ソルスパース41090(以上、アビシア社製)、ディスパービック180、ディスパービック181、ディスパービック190、ディスパービック191、ディスパービック192(以上、ビックケミー社製)、ポリマー450、ポリマー451、ポリマー452、ポリマー453、EFKA−1501、EFKA−1502、EFKA−4540、EFKA−4550(以上、EFKAケミカル社製)、フローレンTG−720W、フローレン−730W、フローレン−740W、フローレン−745W、(以上、共栄社化学社製)、アジスパーPW911、アジスパーPB821(以上、味の素社製)、ジョンクリル678、ジョンクリル679、ジョンクリル62(以上、ジョンソンポリマー社製)等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記高分子量顔料分散剤の含有量は、上記貴金属又は銅100重量部に対して30〜1000重量部が好ましい。30重量部未満であると、上記貴金属又は銅のコロイド粒子の分散性が不充分であり、1000重量部を超えると、上記貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液をゾル−ゲル法に利用する場合に、得られる薄膜の物性が劣る場合がある。より好ましくは、40〜650重量部である。
本発明の貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液は、上記炭素数1〜4のアルコールを溶媒とするオルガノゾルであり、貴金属又は銅の濃度は10mmol/l以上とすることができる。10mmol/l未満であると、高濃度のコロイドのアルコール溶液を得ることができない。より好ましくは、50mmol/l以上である。
本発明の貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液において、コロイド粒子の平均粒径は、5〜50nmであることが好ましい。5nm未満であると、着色力が弱く、50nmを超えると、彩度が低くなる。
本発明の貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液において、コロイド粒子と高分子分散剤とからなる固形分は、任意に設定でき、例えば、1〜50重量%とすることができる。また、上記固形分中の金属濃度は、約10重量%以上であることが好ましい。これ未満では、金属の含有率が低すぎて目的とする効果が得られない。上限は特に規定されないが、例えば、98重量%以下とすることができる。
本発明の貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液は、上記の貴金属又は銅の化合物を、炭素数1〜4のアルコールに溶解し、高分子量顔料分散剤の存在下で貴金属又は銅に還元する方法によって得ることができる。
上記還元の方法としては特に限定されず、例えば、還元性化合物を添加して化学的に還元する方法、高圧水銀灯を用いて光照射する方法等を挙げることができる。化学的に還元する方法における化合物の添加は、上記高分子顔料分散剤の添加後に行われてもよく、また先に高分子顔料分散剤と上記化合物とを混合しておき、この混合物を貴金属または銅の化合物の溶液に加える形態をとってもよい。
上記還元性化合物としては、アルコール可溶性のものが好ましく、例えば、従来より還元剤として使用されている水素化ホウ素ナトリウム等のアルカリ金属水素化ホウ素塩;ヒドラジン化合物;ヒドロキシルアミン化合物;亜二チオン酸塩;スルホキシル酸塩誘導体;ホルムアルデヒド;蟻酸又はその塩、クエン酸又はその塩、コハク酸又はその塩、酒石酸又はその塩、L−アスコルビン酸又はその塩等の炭素数1〜6の有機酸又はその塩等を使用することができる。また、本発明においては、上記従来からの還元剤のほかに、アミンを使用することができる。これらは、1種又は2種以上を使用することができる。
上記アミンは、通常は還元剤として使用されないものであるが、上記貴金属又は銅の化合物の溶液にアミンを添加して攪拌、混合することによって、貴金属イオンや銅イオン等が常温付近で貴金属、銅に還元される。上記アミンを使用することにより、危険性や有害性の高い還元剤を使用する必要がなく、加熱や特別な光照射装置を使用することなしに、5〜100℃程度、好ましくは20〜80℃程度の反応温度で、貴金属又は銅の化合物を還元することができる。
上記アミンとしては特に限定されず、例えば、特開平11−80647号公報に例示されているものを使用することができ、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族アミン;ピペリジン、N−メチルピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、モルホリン、これらの誘導体等の脂環式アミン;アニリン、トルイジン、アニシジン、フェネチジン、これらの誘導体等の芳香族アミン;ベンジルアミン、フェネチルアミン、キシリレンジアミン、これらの誘導体等のアラルキルアミン等を挙げることができる。また、上記アミンとして、例えば、メチルアミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、トリエタノールアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、プロパノールアミン、2−(3−アミノプロピルアミノ)エタノール、ブタノールアミン、ヘキサノールアミン、ジメチルアミノプロパノール等のアルカノールアミンも挙げることができる。これらのうち、アルカノールアミンが好ましく、2−ジメチルアミノエタノールがより好ましい。
上記アミンの添加量は、上記貴金属又は銅の化合物1molに対して1〜50molが好ましい。1mol未満であると、還元が充分に行われず、50molを超えると、生成したコロイド粒子の対凝集安定性が低下する。より好ましくは、2〜8molである。
また、上記還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを使用する場合、上記水素化ホウ素ナトリウムは、高価であり、取り扱いにも留意しなければならないが、常温で還元することができるので、加熱や特別な光照射装置を用意する必要がない。上記水素化ホウ素ナトリウムの添加量は、上記貴金属又は銅の化合物1molに対して1〜50molが好ましく、より好ましくは、1.5〜10molである。
上記還元剤としてクエン酸又はその塩を使用する場合、アルコールの存在下で加熱還流することによって貴金属イオンや銅イオン等を還元することができる。上記クエン酸又はその塩は、非常に安価であり、入手が容易である利点がある。上記クエン酸又はその塩としては、クエン酸ナトリウムが好ましい。なお、クエン酸ナトリウムを使用する場合、硫酸鉄(II)とを併用すると還元作用が向上するのでより温和な条件で還元反応を進行させることができる。ただし、クエン酸ナトリウムと硫酸鉄(II)を混合させるとき、クエン酸と鉄(II)イオンの化学論量を合わせると不溶性のクエン酸鉄(II)が生成し、沈降するといった不具合が生じる。このために、クエン酸ナトリウムの量が過剰となるように硫酸鉄(II)を添加する必要がある。また、硫酸鉄(II)は、クエン酸以外にも、例えば、スルホキシル酸塩誘導体と併用することによっても還元作用を向上できる。
更に、クエン酸、酒石酸等と上記アミンとの塩も、酸とアミンとの双方が還元性を有することとなるので好ましい。
上記クエン酸又はその塩の添加量は、上記貴金属又は銅の化合物1molに対して1〜50molが好ましい。1mol未満であると、還元が充分に行われず、50molを超えると、対凝集安定性が低下する。より好ましくは、1.5〜10molである。
本発明の貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液の製造方法は、上記貴金属又は銅の化合物を炭素数1〜4のアルコールを含有する溶媒に溶解して溶液とし、高分子量顔料分散剤を加えた後、貴金属又は銅に還元するといった少ない工程で簡便に行うことができ、しかも、彩度が高く、従来の貴金属のコロイド溶液と比較して10倍以上高濃度の貴金属又は銅のコロイド溶液を製造することができる。特に、アルカノールアミンを使用することにより、20〜80℃程度の温和な条件で簡便に製造することができる。本発明の貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液の製造方法において使用する高分子量顔料分散剤は、上述の貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液のところで説明したものである。
上記還元後の溶液は、上記金属コロイド粒子及び上記高分子顔料分散剤のほかに、貴金属又は銅のコロイド溶液の原料に由来する塩化物イオン等の雑イオン、還元で生じた塩や、場合によりアミンを含むものであり、これらの雑イオン、塩やアミンは、得られる貴金属又は銅のコロイド溶液の安定性に悪影響を及ぼすおそれがあるので、除去しておくことが望ましい。これらの成分の除去には、電気透析、遠心分離、限外濾過の方法が用いられるが、後述するように、遠心分離及び限外濾過の方法を用いた場合、濃縮が行われるので好ましい。
本発明の貴金属又は銅のコロイドの溶液調整方法は、先に得られた貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液を濃縮した後、濃縮して得られた溶液に上記アルコールと異なる溶剤を加えて希釈することを特徴とするものである。上記濃縮の方法としては種々の方法があるが、先の雑イオン、塩やアミンの除去を同時に行えることから、遠心分離及び限外濾過が好ましい。濃縮を行った後の希釈には先のアルコールとは異なる溶剤を用い、さらにこの濃縮および希釈を繰り返して行うことによって、実質的に溶剤を置換することができる。上記異なる溶剤としては、作業性や取り扱い易さの点から、水が好ましい。このようにして得られる貴金属又は銅のコロイドの水溶液は、溶剤として水を用いて製造したものに比べて、吸光曲線がシャープである。
本発明の貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液、及び、上記溶液調整方法により得られる貴金属又は銅のコロイドの溶液は、ゾル−ゲル法に好適に使用することができる。
ゾル−ゲル法は、一般には、金属アルコキシドに、アルコール、加水分解に必要な水、及び、触媒としての酸又は塩基を添加し、室温〜80℃で攪拌し、加水分解、縮重合させるものである。これらの反応により容易に金属酸化物の粒子がコロイド状に分散したゾルが得られる。このゾルをゲルへ状態変化したものを膜状にする場合には、このゾル溶液をコーティング用組成物とすることができる。上記ゾル溶液を用いて、ディップ法やスピンコート法等により、基材上にゾル膜を形成させることができる。上記コーティングされたゾル膜を室温で乾燥した後、適当な温度で加熱することにより、無機被膜であるゲル薄膜又はガラス薄膜が得られる。
本発明のコーティング用組成物は、上記貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液と金属アルコキシドからなるものである。本発明のもう一つのコーティング用組成物は、上記貴金属又は銅のコロイドの溶液と金属アルコキシドからなるものである。
上記金属アルコキシドとしては、ゾル−ゲル法に通常用いられるものを使用することができ、例えば、M(OR)n(Mは金属原子、Rはアルキル基、nは金属の酸価数を表す。)で表されるものを挙げることができる。
上記金属アルコキシドとしてはSi(OR)4が一般的であるが、この他に金属原子Mとして、Zn、Zr、Ti、Al、Fe、Co、Niのものを目的に応じて用いることができる。また、上記金属アルコキシドにおけるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ等の炭素数1〜5のアルコキシ基等を挙げることができる。これらのうち、良好な反応性を有する点で、エトキシ基がより好ましい。
上記金属アルコキシドとしては、取り扱いが容易である点で、テトラエトキシシランが特に好ましい。
上記金属アルコキシド溶液の溶媒は、アルコール及び水からなるものが挙げられる。水1モルに対するアルコールのモル数は、目的とする薄膜の性質に応じて、選択することができるが、通常、1〜30であることが好ましい。上記水1モルに対するアルコールのモル数が、1未満では、金属アルコキシドの加水分解が進みすぎて、安定性に欠け、25を超えると、金属アルコキシドの加水分解が不充分となり、あまり実用的ではない。上記水1モルに対するアルコールのモル数は、より好ましくは、10〜25である。
上記金属アルコキシド溶液のアルコールとしては特に限定されず、例えば、本発明の貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液に含まれるアルコールとして例示したものおよび炭素数5のアルコールを用いることができる。
上記金属アルコキシド溶液には、触媒として酸又は塩基を含むことができるが、無機被膜を作製する場合には、酸を含むことが好ましい。上記酸としては特に限定されず、例えば、塩酸や硝酸を挙げることができる。
上記金属アルコキシド溶液は、更に、必要に応じ、乾燥抑制剤、上記貴金属又は銅以外の有色の遷移金属化合物、シランカップリング剤、有機色素等の添加剤を含むものであってもよい。上記乾燥抑制剤としては特に限定されず、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等を挙げることができる。
本発明のコーティング用組成物は、貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液、又は、貴金属又は銅のコロイドの溶液を上記金属アルコキシド溶液に添加して攪拌されることにより得られる。上記添加する割合としては、上記金属アルコキシド溶液に上記貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液、又は、貴金属又は銅のコロイドの溶液を加えた状態での貴金属又は銅のコロイド粒子の濃度が、0.01〜70重量%となるように添加することが好ましい。有機溶媒を分散媒とするものに対しての添加や水を分散媒とするもので安定性に問題がある場合には、貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液を用いることが好ましい。0.01重量%未満では、添加効果が十分に得られず、70重量%を超えると、コーティング用組成物の安定性が悪くなる場合がある。なお、後述するように本発明のコーティング用組成物を用いて得られる無機被膜に金属光沢を得たい場合には、そうでない場合に比べて、貴金属又は銅のコロイド粒子の濃度は高くなる傾向がある。
上記ゾル−ゲル法に使用されるコーティング用組成物を塗布する基材としては特に限定されず、例えば、アルミニウム、ステンレス等の金属、ガラス、プラスチック等を挙げることができ、これらは、その片面及び/又は両面に表面加工を施したものであってもよい。
上記塗布方法としては、上述のディップ法やスピンコート法等の方法のほか、基材がアルミニウム等の金属である場合には、電気泳動を利用することもできる。このようにして得られた膜を焼成することにより、無機被膜が得られる。上記焼成は、好ましくは100〜500℃で行うことができる。上記焼成は、好ましくは5〜120分間行うことができる。
本発明の貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液、又は、貴金属又は銅のコロイドの溶液を含むコーティング用組成物を使用してゾル−ゲル法により製膜することにより得られる無機被膜は、金属の含有濃度が高いものは金属光沢を有することができる。ここでいう金属光沢とは、ハーフミラーと呼ばれる状態を含んでいる。この金属光沢を有するものは、電磁波シールドとしても利用できる他に、意匠材料として使用することができる。一方、濃色かつ彩度の高い無機被膜は、光学材料、例えば、耐熱性光学フィルターや非線形光学材料といった光学材料や高耐熱・高耐久性の色材として利用できる。また、この他抗菌材や触媒等に用いることも可能である。
上記無機被膜の膜厚は、使用する用途に応じて選択することができるが、光学材料とする場合には、乾燥膜厚として0.05〜10μmであることが好ましい。上記膜厚が、0.05μm未満では、着色力や電磁波遮蔽力に欠ける場合があり、10μmを超えると、加熱による剥離やクラックが生じやすい。上記膜厚は、好ましくは0.1〜5μmである。
以上の方法により製造される光学材料としての無機被膜は、上述した貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液、又は、貴金属又は銅のコロイドの溶液を着色剤として用いているので、得られる薄膜に鮮やかな色が付与されており、付与された色は化学的に安定であるので、退色しない。上記光学材料としては特に限定されず、例えば、テレビのブラウン管表面の着色コーティング等の光学フィルター等を挙げることができる。
本発明の貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液、又は、貴金属又は銅のコロイドの溶液は、ゾル−ゲル法に使用する金属アルコキシド溶液に添加することが可能であり、安定なコーティング用組成物を得ることができる。また、本発明の貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液、又は、貴金属又は銅のコロイドの溶液は、吸光曲線がこれまでのものに比べてシャープになるため、特に光学材料として使用する場合に、従来よりも高い彩度を実現することができる。
本発明において、吸光曲線がこれまでのものに比べてシャープになる理由は明確ではないが、以下のことが考えられる。
特開平11−80647号公報等の記載の従来の貴金属又は銅のコロイド水溶液は、高分子量顔料分散剤の分子同士の間に相互作用が働くため、各分散剤分子同士が絡み合い、分散対象物である個々のコロイド粒子に配位して保護コロイドとして機能する効率があまり高くない結果、上記コロイド粒子を一様に細かく分散して粒径分布を狭くすることに一定の限界があるものと思われる。
しかしながら、本発明の貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液、又は、貴金属又は銅のコロイドの溶液においては、製造する過程においてアルコールが使用されているため、高分子量顔料分散剤の分子相互間の作用が小さく、各分散剤分子の自由度が高まって運動率が増し、分散対象物である貴金属又は銅の各コロイド粒子に配位しやすくなって、各コロイド粒子の粒径が小さい状態で保護コロイドとして作用するため、粒径分布が狭くなり、その結果として吸光曲線がシャープになるものと考えられる。また、本発明の貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液を製造する際に、これまでに比べ反応温度を高くすることができるが、これもまた、粒径分布を狭いものとすることができる一因と考えられる。
発明を実施するための最良の形態
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
参考例 高分子量顔料分散剤の選択
高分子量顔料分散剤として、ディスパービック190、ディスパービック191、ディスパービック192及びディスパービック184(以上、ビックケミー社製)、EFKA−4550及びEFKA−4540(以上、EFKAケミカル社製)並びにソルスパース24000及びソルスパース28000(以上、アビシア社製)をそれぞれ0.5gを容器に取り、これらにアセトン10mlを加えて撹拌し、高分子顔料分散剤を溶解した。これに撹拌しながらビュレットを用いて水を1滴〜数滴ずつ滴下し、白濁した時点の滴下量Aを記録した。これとは別に上記水に代えてヘキサンを使用し、白濁した時点のヘキサン滴下量Bを求めた。
検討は、まず式(1)について行い、評価が下記の基準により×であったものについて式(2)を検討した。式(1)については、以下のように評価した。
◎:式(1′)を満たす場合。
○:式(1′)を満たさないが、式(1)を満たす場合。
×:式(1)を満たさない場合。
式(2)については、以下のように評価した。
○:式(2)を満たす場合。
×:式(2)を満たさない場合。
なお、白濁しない場合の滴下量は50mlで計算した。結果を表1に示す。
表1の結果から、ディスパービック190、ディスパービック191、ディスパービック192、EFKA−4550、EFKA−4540が適合しているといえる。この中では、ディスパービック190、ディスパービック191が、より好ましいものであった。
実施例1 金コロイドのエタノール溶液の調製
テトラクロロ金(III)酸四水和物(HAuCl4・4H2O)12gをエタノール230gを入れた反応容器にとり、撹拌して溶解した。さらに高分子顔料分散剤として、ビックケミー社製のディスパービック191を9gを加え、撹拌した。高分子顔料分散剤が溶解した後、液温が50℃になるまでウォーターバスを用いて加熱した。撹拌しながら2−ジメチルアミノエタノール13gを瞬時に添加した。添加後、液温を50℃に保ちながら2時間撹拌を行い、鮮やかで濃厚な赤色を呈する金コロイドのエタノール溶液を得た。得られた金コロイドのエタノール溶液を旭化成社製の限外濾過ペンシル型モジュールAHP−0013を用いて、残留イオンを濾過で除き、得られた濾液にエタノールを添加してさらに濾過を行うといった工程を繰り返し行い、残留イオン成分の除去された、金コロイド粒子と高分子顔料分散剤とからなる固形分20重量%の金コロイドのエタノール溶液37gを得た。TG−DTA(セイコーインストゥルメント社製)測定の結果、固形分中の金粒子の含有率は70重量%であった。
実施例2 金コロイドのエタノール溶液の調製
高分子顔料分散剤としてEFKAケミカル社製のEFKA−4550を20g、ジメチルアミノエタノールを14g及びエタノールを200g、それぞれ反応容器にとり、撹拌して、高分子顔料分散剤を完全に溶解させた。一方、テトラクロロ金(III)酸四水和物(HAuCl4・4H2O)12gをエタノール100mlに溶解した。高分子顔料分散剤のエタノール溶液を撹拌しながら、これにテトラクロロ金(III)酸四水和物のエタノール溶液を瞬時に加えた。そのまま室温で1時間撹拌を続け、鮮やかで濃厚な赤色を呈する金コロイドのエタノール溶液を得た。得られた金コロイドのエタノール溶液を旭化成社製の限外濾過ペンシル型モジュールAHP−0013を用いて、残留イオンを濾過で除き、得られた濾液にエタノールを添加してさらに濾過を行うといった工程を繰り返し行い、残留イオン成分の除去された、金コロイド粒子と高分子顔料分散剤とからなる固形分22重量%の金コロイドのエタノール溶液37gを得た。
TG−DTA測定の結果から、この固形分中の金の含有率は65重量%であることが確認された。
実施例3 金コロイドのエタノール溶液
高分子顔料分散剤としてEFKAケミカル社製のEFKA−4550の代わりにEFKAケミカル社製のEFKA−4540を20g用いる以外は実施例2に従って、金コロイド粒子と高分子顔料分散剤とからなる固形分22重量%の鮮やかで濃厚な赤色を呈する金コロイドのエタノール溶液37gを得た。TG−DTA測定の結果、固形分中の金粒子の含有率は65重量%であった。
実施例4 銀コロイドのメタノール溶液
過塩素酸銀11gを反応容器に取り、これに高分子顔料分散剤としてビックケミー社製のディスパービック192 10gとメタノール300gを取り、樹脂成分が溶解するまで撹拌した。この樹脂成分の溶解した水溶液を先の過塩素酸銀水溶液に加え、液温が50℃になるようにウォーターバスを用いて加熱した。ここに、撹拌しながら2−ジメチルアミノエタノール24gを瞬時に添加した。2−ジメチルアミノエタノール添加後、さらに50℃で6時間撹拌し、その後50℃で一晩静置した。次に旭化成社製の限外濾過ペンシル型モジュールAHP−0013を用いて、残留イオンを濾過で除き、得られた濾液にメタノールを添加してさらに濾過を行うといった工程を繰り返し行い、残留イオン成分の除去された、銀コロイド粒子と高分子顔料分散剤とからなる固形分40重量%の鮮やかで濃厚な黄色を呈する銀コロイドのメタノール溶液20gを得た。TG−DTA測定の結果、固形分中の銀粒子の含有率は53重量%であった。
実施例5 銀コロイドのエタノール溶液
過塩素酸銀11gを反応容器に取り、これに高分子顔料分散剤としてビックケミー社製のディスパービック190を20g及びエタノールを300gとり、樹脂成分が溶解するまで撹拌した。この樹脂成分の溶解した水溶液を先の過塩素酸銀水溶液に加え、液温が50℃になるようにウォーターバスを用いて加熱した。ここに、撹拌しながら2−ジメチルアミノエタノール24gを瞬時に添加した。2−ジメチルアミノエタノール添加後、さらに50℃で6時間撹拌し、その後50℃で一晩静置した。次に旭化成社製の限外濾過ペンシル型モジュールAHP−0013を用いて、残留イオンを濾過で除き、得られた濾液にエタノールを添加してさらに濾過を行うといった工程を繰り返し行い、残留イオン成分の除去された、銀コロイド粒子と高分子顔料分散剤とからなる固形分40重量%の鮮やかで濃厚な黄色を呈する銀コロイドのエタノール溶液20gを得た。TG−DTA測定の結果、固形分中の銀粒子の含有率は55重量%であった。
実施例6 パラジウムコロイドのエタノール溶液の調製
塩化パラジウム(II)二水和物14.5gを、エタノール300gとともに容器にとり、撹拌して溶解した。さらに高分子顔料分散剤として、ビックケミー社製のディスパービック190を22g加え、高分子顔料分散剤が溶解するまで撹拌した。別の容器にクエン酸36g、2−ジメチルアミノエタノール23gとエタノール100gとを取り、クエン酸が溶解するまで撹拌した。このエタノール溶液を塩化パラジウム溶液に撹拌しながら瞬時に加え、室温で2時間撹拌し、パラジウムコロイド水溶液を得た。こうして得られたパラジウムコロイドのエタノール溶液を旭化成社製の限外濾過ペンシル型モジュールAHP−0013を用いて、残留イオンを濾過で除き、得られた濾液にエタノールを添加してさらに濾過を行うといった工程を繰り返し行い、残留イオン成分の除去された、パラジウムコロイド粒子と高分子顔料分散剤とからなる固形分40重量%の濃厚な褐色のパラジウムコロイドのエタノール溶液30gを得た。TG−DTA測定の結果、固形分中のパラジウム粒子の含有率は58重量%であった。
比較例1 金コロイドのエタノール溶液
高分子量顔料分散剤としてビックケミー社製のディスパービック184を18g用いる以外には実施例1に従って金コロイドのエタノール溶液の調製を試みた。しかし、金粒子とディスパービック184とからなる塊状の沈殿物が生じ、金コロイドのエタノール溶液は得られなかった。
比較例2 銀コロイドのエタノール溶液
高分子量顔料分散剤としてアビシア社製のソルスパース24000 10gを用いる以外には実施例5に従って銀コロイドのエタノール溶液の調製を試みた。しかし、銀粒子とソルスパース24000とからなる塊状の沈殿物が生じ、銀コロイドのエタノール溶液は得られなかった。
比較例3 銀コロイドのエタノール溶液
高分子量顔料分散剤としてアビシア社製のソルスパース28000 10gを用いる以外には実施例5に従って銀コロイドのエタノール溶液の調製を試みた。しかし、銀粒子とソルスパース28000とからなる塊状の沈殿物が生じ、銀コロイドのエタノール溶液は得られなかった。
製造例 金コロイドのトルエン溶液の調製
テトラクロロ金(III)酸四水和物(HAuCl4・4H2O)12gを、水40gとともに反応容器にとり、撹拌して溶解した。一方、別の容器に高分子顔料分散剤としてアビシア社製のソルスパース28000を4g及びアセトンを60gとり、撹拌して高分子顔料分散剤を溶解した。この高分子顔料分散剤溶液を、テトラクロロ金(III)酸水溶液の入った反応容器に加えて、撹拌しながら2−ジメチルアミノエタノール13.0gを瞬時に加えた。その後、さらに室温で1時間撹拌を行った後、アセトンを乾燥・除去した。アセトン量の減少に伴い、高分子顔料分散剤に保護された金コロイドが析出し、沈殿した。上澄みの水層をデカンテーションして除去し、さらに蒸留水で金コロイドを洗浄した後、完全に乾燥させて金の非極性溶媒可溶性固体ゾル8gを得た。TG−DTA測定の結果、固形分中の金粒子の含有率は70重量%であった。
得られた金の固体ゾル8gを容器に取り、これにトルエン12gを加えて撹拌して金固体ゾルを溶解したところ、濃厚な赤色を呈する金コロイドのトルエン溶液を得た。
実施例7 吸光度の測定
実施例1で得られた金コロイドのエタノール溶液をさらにエタノールで大希釈し、底面が1cm×1cmのガラスセルに移し、大塚電子社製の分光光度計MCPD−3000により380nm〜780nmの範囲の吸光度を測定したところ530nmの波長にて極大を有する金コロイドのプラズモンに由来する吸収を観察できた。吸収ピークの極大の部分の吸光度が1.5となるように金コロイドの濃度を調製した吸光曲線を図1に示した。
比較例4 吸光度の測定
製造例で得られた金コロイドのトルエン溶液をさらにトルエンで大希釈し、実施例7と同様に吸光度を測定したところ535nm近傍に極大を有する金コロイドのプラズモンに由来する吸収を観察できた。吸収ピークの極大の部分の吸光度が1.5となるように金コロイドの濃度を調製した吸光曲線を図1に示した。
実施例8 ゾル−ゲル法に使用するコーティング用組成物の調製
テトラエトキシシラン7.0重量%、硝酸1.3重量%、水1.5重量%、イソプロパノール89.7重量%を混合し、攪拌してテトラエトキシシラン溶液を得た。上記テトラエトキシシラン溶液に、実施例1で得られた金コロイドのエタノール溶液を0.5重量%加えて攪拌し、コーティング用組成物を調製した。このコーティング用組成物は、室温下で24時間安定であった。
実施例9〜12 ゾル−ゲル法に使用するコーティング用組成物の調製
実施例8において、実施例1で得られた金コロイドのエタノール溶液の代わりに、実施例2〜5のアルコール溶液をそれぞれ用いた以外は同様の手順でコーティング用組成物をそれぞれ調製した。これらのコーティング用組成物は、いずれも室温下で24時間安定であった。
比較例5 ゾル−ゲル法に使用するコーティング用組成物の調製
実施例8において、実施例1で得られた金コロイドのエタノール溶液の代わりに、製造例で得られた金コロイドのトルエン溶液を用いた以外は同様の手順でコーティング用組成物を調製しようとしたが、うまく混合せず、コーティング用組成物を得ることができなかった。
実施例13 ゾル−ゲル法による着色ガラスゲル膜の調製
実施例8で得られたコーティング用組成物をスピンコーティング法によりガラス板状に塗布した後、150℃で20分間焼成を行い、膜厚が0.2μmの着色ガラスゲル膜をガラス基板上に形成した。
上記着色ガラスゲル膜は、透明で赤く着色されていた。この着色ガラスゲル膜の耐水性の評価として洗剤によるこすり試験を行ったが、脱色は認められなかった。またJIS K 5400に準じて、着色ガラスゲル膜の鉛筆硬度を測定したところ8Hとなり、充分な硬度が得られた。
実施例14 ゾル−ゲル法による着色ガラスゲル膜の調製
実施例11で得られたコーティング用組成物をスピンコーティング法によりガラス板状に塗布した後、150℃で20分間焼成を行い、膜厚が0.2μmの着色ガラスゲル膜をガラス基板上に形成した。
この着色ガラスゲル膜は透明で黄色に着色されていた。この着色ガラスゲル膜の耐水性の評価として洗剤によるこすり試験を行ったが、脱色は認められなかった。またJIS K 5400に準じて、着色ガラスゲル膜の鉛筆硬度を測定したところ8Hとなり、充分な硬度が得られた。
実施例15 金コロイドの水溶液の調製
実施例1で得られた、限外濾過を行う前の金コロイドのエタノール溶液を旭化成社製の限外濾過ペンシル型モジュールAHP−0013を用いて、残留イオンを濾過で除き、得られた濾液に水を添加してさらに濾過を行うといった工程を繰り返した。この操作を繰り返し行うことにより、残留イオン成分の除去を行うと共に溶媒をエタノールから水への置換を行い、金コロイド粒子と高分子顔料分散剤とからなる固形分25重量%の金コロイドの水溶液37gを得た。TG−DTA測定の結果、固形分中の金粒子の含有率は56重量%であった。
実施例7と同様にして分光光度計により吸光度を測定したところ、実施例1で得られた金コロイドのエタノール溶液と同等のシャープさを有する吸光曲線が得られた。
実施例1〜6において所定の高分子量顔料分散剤を使用した場合には、金属コロイドのアルコール溶液が得られた。実施例8〜12の結果より、これらの金属コロイドのアルコール溶液は、ゾル−ゲル法に使用するコーティング用組成物中に加えても問題なく混合でき、安定な状態を示した。また、実施例13及び14の結果より、優れた着色性を有するとともに、耐水性及び塗膜硬度に優れたコーティングゲル膜を得ることができた。
一方、比較例1〜3において、上記所定の高分子量顔料分散剤以外の高分子量顔料分散剤を使用した場合には、金属コロイドのアルコール溶液は得られなかった。製造例により調製した金コロイドのトルエン溶液は、比較例5の結果より、ゾル−ゲル法に使用するコーティング用組成物に使用することには適さなかった。
実施例7及び比較例4における図1の結果から、製造例の金コロイドのトルエン溶液由来の吸光曲線に比べて、実施例1の金コロイドのエタノール溶液由来の吸光曲線はよりシャープであり、特に長波長側においてシャープなものが得られたので、金コロイド粒子の粒径分布が狭いことがわかった。
また、実施例15で溶剤をアルコールから水に置換しても、粒径分布の特性が維持されることが確認できた。
産業上の利用可能性
本発明の貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液、及び、本発明の溶液調整方法により得られる貴金属又は銅のコロイドの溶液は、上述の構成を有するので、貴金属又は銅のコロイド粒子を高濃度に含有することができるともに、吸光曲線がこれまでのものに比べてシャープになるため、優れた着色性をも有することができる。更に、ゾル−ゲル法に好適に使用することができるので、ゾル−ゲル法により得られる無機被膜は、耐熱性に優れた光学フィルターや非線形光学材料といった光学材料、色材、抗菌材、触媒、電磁波シールド等に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、金コロイドのアルコール溶液における金コロイド粒子の粒径分布を示す吸光度曲線である。実線は、製造例で得られた金コロイドのトルエン溶液、破線は、実施例1で得られた金コロイドのエタノール溶液について測定したものである。横軸は波長(nm)、縦軸は吸光度を表す。
本発明は、ゾル−ゲル法に好適に使用することができる貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液及びそれの製造方法、溶液調整方法並びにそれを用いたコーティング用組成物、これを用いた無機被膜及び無機被膜形成方法に関する。
背景技術
貴金属や銅のコロイドは、化学的に非常に安定であり、各コロイド特有の色を発色する。例えば、金コロイドは、粒径に応じて、青、青紫、赤紫等の色を示す。この特性を活かして、従来より、ベネチアガラスやステンドグラス等の着色に利用されている。このような貴金属コロイドによる発色は、粒径が数nm〜数十nm程度のいわゆるナノ粒子において見られるものであり、着色材としては、粒径分布が狭いコロイドであることが有利である。
特開平11−80647号公報には、着色性の高い貴金属又は銅のコロイド粒子として、貴金属又は銅のコロイド粒子及び高分子量顔料分散剤を含むことを特徴とする貴金属又は銅のコロイド溶液が開示されている。しかし、このものは光学材料としての使用を意図していないため、そのために必要な彩度が得られない場合があった。
一方、ゾル−ゲル法という、ガラスやセラミックスの作製法が、古くから知られている。ゾル−ゲル法は、通常、金属アルコキシドにアルコール、加水分解に必要な水、触媒としての酸又は塩基を添加し、縮重合させて、生成する金属酸化物の粒子がコロイド状に分散したゾルとし、これを更にゲル化する際にコーティング膜状等に加工し、加熱によって酸化物の固体を得るものである。ゾル−ゲル法は、このように溶液から薄膜のゲルやガラスを得られる簡便性のほか、この方法により得られる薄膜は、ガラス基板との良好な接着性、得られる薄膜の均一性を有し、また、基板の耐熱性、耐食性、耐薬品性、機械的強度等の化学的・物理的特性を向上する等の利点を有する。近年は、得られるコーティング膜に、調光・着色等の光学的機能や電気的機能等の機能特性を付与することも行われている。
このゾル−ゲル法に用いられる金属アルコキシド溶液に、先の貴金属又は銅のコロイド溶液を多量に添加した場合、水に不溶な有機溶媒を分散媒とするものでは混合が十分なされず、目的とするコーティング剤を得ることができない。一方、水を分散媒とするものでは水濃度が高くなりすぎて、金属アルコキシドの加水分解が必要以上に促進され、コーティング剤の安定性が低下する。
発明の要約
本発明は、上記に鑑み、高濃度で、充分な着色性を有し、ゾル−ゲル法に好適に使用することができる貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液、及び、その製造方法、溶液調整方法、並びに、この貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液、又は、貴金属又は銅のコロイドの溶液を用いてなるコーティング用組成物並びにこれを用いた無機被膜及び無機被膜形成方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、貴金属又は銅のコロイドの分散媒として炭素数1〜4のアルコールを使用し、かつ、貴金属又は銅のコロイド粒子の保護コロイドとして上記アルコールとの親和性を考慮した特定の高分子量顔料分散剤を選択することにより、高濃度で、上記コロイド粒子の粒径分布が狭い貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液が得られ、ゾル−ゲル法に好適に利用できることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、貴金属又は銅のコロイド粒子及び高分子量顔料分散剤を含む貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液であって、上記アルコールの炭素数は、1〜4であり、上記高分子量顔料分散剤は、下記式(1)若しくは(2)を満たすものであることを特徴とする貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液である。
(1)A≧3mlかつ3ml≦B≦40ml
(2)0.25≦A/B≦4.5
〔式中、A及びBはそれぞれ、上記高分子量顔料分散剤0.5gをアセトン10mlに溶解したアセトン溶液に水又はヘキサンをそれぞれ添加する場合における、上記アセトン溶液が白濁するまでの上記水の添加量(ml)、及び、上記アセトン溶液が白濁するまでの上記ヘキサンの添加量(ml)である。〕
上記アルコールは、炭素数2〜4のモノアルコールであることが好ましく、また、上記式(1)は、下記式(1′)であることが好ましい。
(1′)A≧10mlかつ4ml≦B≦20ml
本発明は、更に、貴金属又は銅の化合物を、炭素数1〜4のアルコールに溶解し、高分子量顔料分散剤を加えた後、貴金属又は銅に還元する貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液の製造方法であり、上記高分子量顔料分散剤は、下記式(1)若しくは(2)を満たすものであることを特徴とする貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液の製造方法である。
(1)A≧3mlかつ3ml≦B≦40ml
(2)0.25≦A/B≦4.5
〔式中、A及びBはそれぞれ、上記高分子量顔料分散剤0.5gをアセトン10mlに溶解したアセトン溶液に水又はヘキサンをそれぞれ添加する場合における、上記アセトン溶液が白濁するまでの上記水の添加量(ml)、及び、上記アセトン溶液が白濁するまでの上記ヘキサンの添加量(ml)である。〕
本発明は、また、この方法で得られる貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液でもある。
本発明は、上記製造方法で得られる貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液を濃縮した後、上記濃縮して得られた溶液に上記アルコールと異なる溶剤を加えて希釈することを特徴とする貴金属又は銅のコロイドの溶液調整方法である。
本発明は、また、この調整方法で得られる貴金属又は銅のコロイドの溶液でもある。
本発明は、上記貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液と金属アルコキシドとからなるコーティング用組成物でもある。
本発明は、上記貴金属又は銅のコロイドの溶液と金属アルコキシドとからなるコーティング用組成物でもある。
本発明は、また、上記コーティング用組成物を用いて得られる無機被膜である。
本発明は、更に、上記コーティング用組成物を用いて基材上に無機被膜を形成することを特徴とする無機被膜形成方法である。
発明の詳細な開示
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液は、貴金属又は銅のコロイド粒子及び高分子量顔料分散剤を含み、炭素数1〜4のアルコールを分散媒としている。上記アルコールの炭素数が1〜4である場合には、貴金属又は銅のコロイド粒子を高濃度かつ高い安定性で分散することができるのみならず、光学材料として使用する場合に、従来よりも高い彩度を実現できるとともに、本発明の貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液をゾル−ゲル法において多量使用することができる。
上記炭素数が5以上である場合には、上記アルコールを溶媒とする貴金属又は銅のコロイド溶液は、ゾル−ゲル法に用いる金属アルコキシド溶液との相溶性が不充分となり、コーティング用組成物を得ることができないおそれがある。
本発明で使用するアルコールとしては、炭素数1〜4のものであれば特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のモノアルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のアルキレングリコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル等を挙げることができる。
本発明の貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液をゾル−ゲル法において使用する場合、蒸発性を考慮すると、炭素数2〜4のものが好ましく、また金属アルコキシド間の架橋が進行しないことを考慮すると、モノアルコールが好ましい。上記ゾル−ゲル法の金属アルコキシドとしてはエチルシリケートが好適に使用されることから、上記アルコールはエタノールであることがより好ましい。なお、上記アルコールは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、このゾル−ゲル法での多量の使用を考慮すると、貴金属又は銅のコロイドの分散媒は、上記アルコールのみからなるものを使用することが好ましい。ただし、アルコール単独では原材料の溶解性が不充分である場合には、ゾル−ゲル法に使用される金属アルコキシド溶液に添加した際にその安定性を阻害しない範囲内で、上記アルコールに少量の水を加えてもよい。
本発明において、上記貴金属又は銅のコロイド粒子は、貴金属又は銅の化合物から形成される。
上記貴金属としては特に限定されず、例えば、金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金等を挙げることができる。なかでも、金、銀、白金、パラジウムが好ましい。
上記貴金属又は銅の化合物としては、上記炭素数1〜4のアルコールに溶解するものが好ましく、例えば、テトラクロロ金(III)酸四水和物、過塩素酸銀、ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物、塩化パラジウム(II)二水和物、三塩化ロジウム(III)三水和物、塩化銅(II)二水和物、酢酸銅(II)一水和物等を挙げることができる。テトラクロロ金(III)酸カリウム二水和物や硫酸銅(II)等のように、少量の水を添加した炭素数1〜4のアルコールに溶解するものも使用することができる。これらは、1種又は2種以上を使用することができる。
本発明において、上記高分子量顔料分散剤は、高分子量重合体に顔料表面に対する親和性の高い官能基が導入されている両親媒性の共重合体である。このものは、塗料用樹脂組成物等に対して充分な相溶性を有することから、有機顔料又は無機顔料の分散剤として好適であり、通常は、顔料ペーストの製造時に顔料分散剤として使用されているものである。
本発明においては、上記高分子量顔料分散剤は、貴金属又は銅のコロイド粒子が生成する際の保護コロイドとして機能し、その使用により、非常に高濃度の貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液が得られる。
上記高分子量顔料分散剤は、下記式(1)又は(2)を満たすものである。
(1)A≧3mlかつ3ml≦B≦40ml
(2)0.25≦A/B≦4.5
〔式中、A及びBはそれぞれ、上記高分子量顔料分散剤0.5gをアセトン10mlに溶解したアセトン溶液に水又はヘキサンをそれぞれ添加する場合における、上記アセトン溶液が白濁するまでの上記水の添加量(ml)、及び、上記アセトン溶液が白濁するまでの上記ヘキサンの添加量(ml)である。〕
本発明においては、式(1)を満たさない場合であっても式(2)を満たす場合には、上記高分子量顔料分散剤として使用することができる。上記A及び上記Bが式(1)又は(2)のどちらにも含まれないと、上記高分子量顔料分散剤が貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液の分散媒である炭素数1〜4のアルコールに十分に溶解しないものである結果、貴金属又は銅のコロイド粒子を得ることができない。
ここで上記式(1)は、下記式(1′)であることが好ましい。
(1′)A≧10mlかつ4ml≦B≦20ml
上記式(1)又は式(2)を満たす高分子量顔料分散剤を用いることにより、貴金属又は銅のコロイド粒子を安定に且つ高濃度に分散させることができる。また、貴金属又は銅のコロイド粒子のアルコール溶液の吸光曲線がこれまでのものに比べてシャープになるため、光学特性に優れた材料として利用可能である。
本発明において使用する高分子量顔料分散剤の数平均分子量は、1000〜100万であることが好ましい。1000未満であると、分散安定性が充分ではなく、100万を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となり、また、コロイド粒子の粒度分布が広くなり、彩度が低下する。より好ましくは、2000〜50万であり、更に好ましくは、4000〜50万である。
上記高分子量顔料分散剤は、顔料親和性基及び溶媒和部分を含む構造を有する樹脂であり、例えば、特開平11−80647号公報に例示したものを挙げることができる。
上記高分子量顔料分散剤としては、市販されているものを使用することもできる。上記市販品としては、例えば、ソルスパース27000、ソルスパース41090(以上、アビシア社製)、ディスパービック180、ディスパービック181、ディスパービック190、ディスパービック191、ディスパービック192(以上、ビックケミー社製)、ポリマー450、ポリマー451、ポリマー452、ポリマー453、EFKA−1501、EFKA−1502、EFKA−4540、EFKA−4550(以上、EFKAケミカル社製)、フローレンTG−720W、フローレン−730W、フローレン−740W、フローレン−745W、(以上、共栄社化学社製)、アジスパーPW911、アジスパーPB821(以上、味の素社製)、ジョンクリル678、ジョンクリル679、ジョンクリル62(以上、ジョンソンポリマー社製)等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記高分子量顔料分散剤の含有量は、上記貴金属又は銅100重量部に対して30〜1000重量部が好ましい。30重量部未満であると、上記貴金属又は銅のコロイド粒子の分散性が不充分であり、1000重量部を超えると、上記貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液をゾル−ゲル法に利用する場合に、得られる薄膜の物性が劣る場合がある。より好ましくは、40〜650重量部である。
本発明の貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液は、上記炭素数1〜4のアルコールを溶媒とするオルガノゾルであり、貴金属又は銅の濃度は10mmol/l以上とすることができる。10mmol/l未満であると、高濃度のコロイドのアルコール溶液を得ることができない。より好ましくは、50mmol/l以上である。
本発明の貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液において、コロイド粒子の平均粒径は、5〜50nmであることが好ましい。5nm未満であると、着色力が弱く、50nmを超えると、彩度が低くなる。
本発明の貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液において、コロイド粒子と高分子分散剤とからなる固形分は、任意に設定でき、例えば、1〜50重量%とすることができる。また、上記固形分中の金属濃度は、約10重量%以上であることが好ましい。これ未満では、金属の含有率が低すぎて目的とする効果が得られない。上限は特に規定されないが、例えば、98重量%以下とすることができる。
本発明の貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液は、上記の貴金属又は銅の化合物を、炭素数1〜4のアルコールに溶解し、高分子量顔料分散剤の存在下で貴金属又は銅に還元する方法によって得ることができる。
上記還元の方法としては特に限定されず、例えば、還元性化合物を添加して化学的に還元する方法、高圧水銀灯を用いて光照射する方法等を挙げることができる。化学的に還元する方法における化合物の添加は、上記高分子顔料分散剤の添加後に行われてもよく、また先に高分子顔料分散剤と上記化合物とを混合しておき、この混合物を貴金属または銅の化合物の溶液に加える形態をとってもよい。
上記還元性化合物としては、アルコール可溶性のものが好ましく、例えば、従来より還元剤として使用されている水素化ホウ素ナトリウム等のアルカリ金属水素化ホウ素塩;ヒドラジン化合物;ヒドロキシルアミン化合物;亜二チオン酸塩;スルホキシル酸塩誘導体;ホルムアルデヒド;蟻酸又はその塩、クエン酸又はその塩、コハク酸又はその塩、酒石酸又はその塩、L−アスコルビン酸又はその塩等の炭素数1〜6の有機酸又はその塩等を使用することができる。また、本発明においては、上記従来からの還元剤のほかに、アミンを使用することができる。これらは、1種又は2種以上を使用することができる。
上記アミンは、通常は還元剤として使用されないものであるが、上記貴金属又は銅の化合物の溶液にアミンを添加して攪拌、混合することによって、貴金属イオンや銅イオン等が常温付近で貴金属、銅に還元される。上記アミンを使用することにより、危険性や有害性の高い還元剤を使用する必要がなく、加熱や特別な光照射装置を使用することなしに、5〜100℃程度、好ましくは20〜80℃程度の反応温度で、貴金属又は銅の化合物を還元することができる。
上記アミンとしては特に限定されず、例えば、特開平11−80647号公報に例示されているものを使用することができ、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族アミン;ピペリジン、N−メチルピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、モルホリン、これらの誘導体等の脂環式アミン;アニリン、トルイジン、アニシジン、フェネチジン、これらの誘導体等の芳香族アミン;ベンジルアミン、フェネチルアミン、キシリレンジアミン、これらの誘導体等のアラルキルアミン等を挙げることができる。また、上記アミンとして、例えば、メチルアミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、トリエタノールアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、プロパノールアミン、2−(3−アミノプロピルアミノ)エタノール、ブタノールアミン、ヘキサノールアミン、ジメチルアミノプロパノール等のアルカノールアミンも挙げることができる。これらのうち、アルカノールアミンが好ましく、2−ジメチルアミノエタノールがより好ましい。
上記アミンの添加量は、上記貴金属又は銅の化合物1molに対して1〜50molが好ましい。1mol未満であると、還元が充分に行われず、50molを超えると、生成したコロイド粒子の対凝集安定性が低下する。より好ましくは、2〜8molである。
また、上記還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを使用する場合、上記水素化ホウ素ナトリウムは、高価であり、取り扱いにも留意しなければならないが、常温で還元することができるので、加熱や特別な光照射装置を用意する必要がない。上記水素化ホウ素ナトリウムの添加量は、上記貴金属又は銅の化合物1molに対して1〜50molが好ましく、より好ましくは、1.5〜10molである。
上記還元剤としてクエン酸又はその塩を使用する場合、アルコールの存在下で加熱還流することによって貴金属イオンや銅イオン等を還元することができる。上記クエン酸又はその塩は、非常に安価であり、入手が容易である利点がある。上記クエン酸又はその塩としては、クエン酸ナトリウムが好ましい。なお、クエン酸ナトリウムを使用する場合、硫酸鉄(II)とを併用すると還元作用が向上するのでより温和な条件で還元反応を進行させることができる。ただし、クエン酸ナトリウムと硫酸鉄(II)を混合させるとき、クエン酸と鉄(II)イオンの化学論量を合わせると不溶性のクエン酸鉄(II)が生成し、沈降するといった不具合が生じる。このために、クエン酸ナトリウムの量が過剰となるように硫酸鉄(II)を添加する必要がある。また、硫酸鉄(II)は、クエン酸以外にも、例えば、スルホキシル酸塩誘導体と併用することによっても還元作用を向上できる。
更に、クエン酸、酒石酸等と上記アミンとの塩も、酸とアミンとの双方が還元性を有することとなるので好ましい。
上記クエン酸又はその塩の添加量は、上記貴金属又は銅の化合物1molに対して1〜50molが好ましい。1mol未満であると、還元が充分に行われず、50molを超えると、対凝集安定性が低下する。より好ましくは、1.5〜10molである。
本発明の貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液の製造方法は、上記貴金属又は銅の化合物を炭素数1〜4のアルコールを含有する溶媒に溶解して溶液とし、高分子量顔料分散剤を加えた後、貴金属又は銅に還元するといった少ない工程で簡便に行うことができ、しかも、彩度が高く、従来の貴金属のコロイド溶液と比較して10倍以上高濃度の貴金属又は銅のコロイド溶液を製造することができる。特に、アルカノールアミンを使用することにより、20〜80℃程度の温和な条件で簡便に製造することができる。本発明の貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液の製造方法において使用する高分子量顔料分散剤は、上述の貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液のところで説明したものである。
上記還元後の溶液は、上記金属コロイド粒子及び上記高分子顔料分散剤のほかに、貴金属又は銅のコロイド溶液の原料に由来する塩化物イオン等の雑イオン、還元で生じた塩や、場合によりアミンを含むものであり、これらの雑イオン、塩やアミンは、得られる貴金属又は銅のコロイド溶液の安定性に悪影響を及ぼすおそれがあるので、除去しておくことが望ましい。これらの成分の除去には、電気透析、遠心分離、限外濾過の方法が用いられるが、後述するように、遠心分離及び限外濾過の方法を用いた場合、濃縮が行われるので好ましい。
本発明の貴金属又は銅のコロイドの溶液調整方法は、先に得られた貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液を濃縮した後、濃縮して得られた溶液に上記アルコールと異なる溶剤を加えて希釈することを特徴とするものである。上記濃縮の方法としては種々の方法があるが、先の雑イオン、塩やアミンの除去を同時に行えることから、遠心分離及び限外濾過が好ましい。濃縮を行った後の希釈には先のアルコールとは異なる溶剤を用い、さらにこの濃縮および希釈を繰り返して行うことによって、実質的に溶剤を置換することができる。上記異なる溶剤としては、作業性や取り扱い易さの点から、水が好ましい。このようにして得られる貴金属又は銅のコロイドの水溶液は、溶剤として水を用いて製造したものに比べて、吸光曲線がシャープである。
本発明の貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液、及び、上記溶液調整方法により得られる貴金属又は銅のコロイドの溶液は、ゾル−ゲル法に好適に使用することができる。
ゾル−ゲル法は、一般には、金属アルコキシドに、アルコール、加水分解に必要な水、及び、触媒としての酸又は塩基を添加し、室温〜80℃で攪拌し、加水分解、縮重合させるものである。これらの反応により容易に金属酸化物の粒子がコロイド状に分散したゾルが得られる。このゾルをゲルへ状態変化したものを膜状にする場合には、このゾル溶液をコーティング用組成物とすることができる。上記ゾル溶液を用いて、ディップ法やスピンコート法等により、基材上にゾル膜を形成させることができる。上記コーティングされたゾル膜を室温で乾燥した後、適当な温度で加熱することにより、無機被膜であるゲル薄膜又はガラス薄膜が得られる。
本発明のコーティング用組成物は、上記貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液と金属アルコキシドからなるものである。本発明のもう一つのコーティング用組成物は、上記貴金属又は銅のコロイドの溶液と金属アルコキシドからなるものである。
上記金属アルコキシドとしては、ゾル−ゲル法に通常用いられるものを使用することができ、例えば、M(OR)n(Mは金属原子、Rはアルキル基、nは金属の酸価数を表す。)で表されるものを挙げることができる。
上記金属アルコキシドとしてはSi(OR)4が一般的であるが、この他に金属原子Mとして、Zn、Zr、Ti、Al、Fe、Co、Niのものを目的に応じて用いることができる。また、上記金属アルコキシドにおけるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ等の炭素数1〜5のアルコキシ基等を挙げることができる。これらのうち、良好な反応性を有する点で、エトキシ基がより好ましい。
上記金属アルコキシドとしては、取り扱いが容易である点で、テトラエトキシシランが特に好ましい。
上記金属アルコキシド溶液の溶媒は、アルコール及び水からなるものが挙げられる。水1モルに対するアルコールのモル数は、目的とする薄膜の性質に応じて、選択することができるが、通常、1〜30であることが好ましい。上記水1モルに対するアルコールのモル数が、1未満では、金属アルコキシドの加水分解が進みすぎて、安定性に欠け、25を超えると、金属アルコキシドの加水分解が不充分となり、あまり実用的ではない。上記水1モルに対するアルコールのモル数は、より好ましくは、10〜25である。
上記金属アルコキシド溶液のアルコールとしては特に限定されず、例えば、本発明の貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液に含まれるアルコールとして例示したものおよび炭素数5のアルコールを用いることができる。
上記金属アルコキシド溶液には、触媒として酸又は塩基を含むことができるが、無機被膜を作製する場合には、酸を含むことが好ましい。上記酸としては特に限定されず、例えば、塩酸や硝酸を挙げることができる。
上記金属アルコキシド溶液は、更に、必要に応じ、乾燥抑制剤、上記貴金属又は銅以外の有色の遷移金属化合物、シランカップリング剤、有機色素等の添加剤を含むものであってもよい。上記乾燥抑制剤としては特に限定されず、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等を挙げることができる。
本発明のコーティング用組成物は、貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液、又は、貴金属又は銅のコロイドの溶液を上記金属アルコキシド溶液に添加して攪拌されることにより得られる。上記添加する割合としては、上記金属アルコキシド溶液に上記貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液、又は、貴金属又は銅のコロイドの溶液を加えた状態での貴金属又は銅のコロイド粒子の濃度が、0.01〜70重量%となるように添加することが好ましい。有機溶媒を分散媒とするものに対しての添加や水を分散媒とするもので安定性に問題がある場合には、貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液を用いることが好ましい。0.01重量%未満では、添加効果が十分に得られず、70重量%を超えると、コーティング用組成物の安定性が悪くなる場合がある。なお、後述するように本発明のコーティング用組成物を用いて得られる無機被膜に金属光沢を得たい場合には、そうでない場合に比べて、貴金属又は銅のコロイド粒子の濃度は高くなる傾向がある。
上記ゾル−ゲル法に使用されるコーティング用組成物を塗布する基材としては特に限定されず、例えば、アルミニウム、ステンレス等の金属、ガラス、プラスチック等を挙げることができ、これらは、その片面及び/又は両面に表面加工を施したものであってもよい。
上記塗布方法としては、上述のディップ法やスピンコート法等の方法のほか、基材がアルミニウム等の金属である場合には、電気泳動を利用することもできる。このようにして得られた膜を焼成することにより、無機被膜が得られる。上記焼成は、好ましくは100〜500℃で行うことができる。上記焼成は、好ましくは5〜120分間行うことができる。
本発明の貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液、又は、貴金属又は銅のコロイドの溶液を含むコーティング用組成物を使用してゾル−ゲル法により製膜することにより得られる無機被膜は、金属の含有濃度が高いものは金属光沢を有することができる。ここでいう金属光沢とは、ハーフミラーと呼ばれる状態を含んでいる。この金属光沢を有するものは、電磁波シールドとしても利用できる他に、意匠材料として使用することができる。一方、濃色かつ彩度の高い無機被膜は、光学材料、例えば、耐熱性光学フィルターや非線形光学材料といった光学材料や高耐熱・高耐久性の色材として利用できる。また、この他抗菌材や触媒等に用いることも可能である。
上記無機被膜の膜厚は、使用する用途に応じて選択することができるが、光学材料とする場合には、乾燥膜厚として0.05〜10μmであることが好ましい。上記膜厚が、0.05μm未満では、着色力や電磁波遮蔽力に欠ける場合があり、10μmを超えると、加熱による剥離やクラックが生じやすい。上記膜厚は、好ましくは0.1〜5μmである。
以上の方法により製造される光学材料としての無機被膜は、上述した貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液、又は、貴金属又は銅のコロイドの溶液を着色剤として用いているので、得られる薄膜に鮮やかな色が付与されており、付与された色は化学的に安定であるので、退色しない。上記光学材料としては特に限定されず、例えば、テレビのブラウン管表面の着色コーティング等の光学フィルター等を挙げることができる。
本発明の貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液、又は、貴金属又は銅のコロイドの溶液は、ゾル−ゲル法に使用する金属アルコキシド溶液に添加することが可能であり、安定なコーティング用組成物を得ることができる。また、本発明の貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液、又は、貴金属又は銅のコロイドの溶液は、吸光曲線がこれまでのものに比べてシャープになるため、特に光学材料として使用する場合に、従来よりも高い彩度を実現することができる。
本発明において、吸光曲線がこれまでのものに比べてシャープになる理由は明確ではないが、以下のことが考えられる。
特開平11−80647号公報等の記載の従来の貴金属又は銅のコロイド水溶液は、高分子量顔料分散剤の分子同士の間に相互作用が働くため、各分散剤分子同士が絡み合い、分散対象物である個々のコロイド粒子に配位して保護コロイドとして機能する効率があまり高くない結果、上記コロイド粒子を一様に細かく分散して粒径分布を狭くすることに一定の限界があるものと思われる。
しかしながら、本発明の貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液、又は、貴金属又は銅のコロイドの溶液においては、製造する過程においてアルコールが使用されているため、高分子量顔料分散剤の分子相互間の作用が小さく、各分散剤分子の自由度が高まって運動率が増し、分散対象物である貴金属又は銅の各コロイド粒子に配位しやすくなって、各コロイド粒子の粒径が小さい状態で保護コロイドとして作用するため、粒径分布が狭くなり、その結果として吸光曲線がシャープになるものと考えられる。また、本発明の貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液を製造する際に、これまでに比べ反応温度を高くすることができるが、これもまた、粒径分布を狭いものとすることができる一因と考えられる。
発明を実施するための最良の形態
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
参考例 高分子量顔料分散剤の選択
高分子量顔料分散剤として、ディスパービック190、ディスパービック191、ディスパービック192及びディスパービック184(以上、ビックケミー社製)、EFKA−4550及びEFKA−4540(以上、EFKAケミカル社製)並びにソルスパース24000及びソルスパース28000(以上、アビシア社製)をそれぞれ0.5gを容器に取り、これらにアセトン10mlを加えて撹拌し、高分子顔料分散剤を溶解した。これに撹拌しながらビュレットを用いて水を1滴〜数滴ずつ滴下し、白濁した時点の滴下量Aを記録した。これとは別に上記水に代えてヘキサンを使用し、白濁した時点のヘキサン滴下量Bを求めた。
検討は、まず式(1)について行い、評価が下記の基準により×であったものについて式(2)を検討した。式(1)については、以下のように評価した。
◎:式(1′)を満たす場合。
○:式(1′)を満たさないが、式(1)を満たす場合。
×:式(1)を満たさない場合。
式(2)については、以下のように評価した。
○:式(2)を満たす場合。
×:式(2)を満たさない場合。
なお、白濁しない場合の滴下量は50mlで計算した。結果を表1に示す。
表1の結果から、ディスパービック190、ディスパービック191、ディスパービック192、EFKA−4550、EFKA−4540が適合しているといえる。この中では、ディスパービック190、ディスパービック191が、より好ましいものであった。
実施例1 金コロイドのエタノール溶液の調製
テトラクロロ金(III)酸四水和物(HAuCl4・4H2O)12gをエタノール230gを入れた反応容器にとり、撹拌して溶解した。さらに高分子顔料分散剤として、ビックケミー社製のディスパービック191を9gを加え、撹拌した。高分子顔料分散剤が溶解した後、液温が50℃になるまでウォーターバスを用いて加熱した。撹拌しながら2−ジメチルアミノエタノール13gを瞬時に添加した。添加後、液温を50℃に保ちながら2時間撹拌を行い、鮮やかで濃厚な赤色を呈する金コロイドのエタノール溶液を得た。得られた金コロイドのエタノール溶液を旭化成社製の限外濾過ペンシル型モジュールAHP−0013を用いて、残留イオンを濾過で除き、得られた濾液にエタノールを添加してさらに濾過を行うといった工程を繰り返し行い、残留イオン成分の除去された、金コロイド粒子と高分子顔料分散剤とからなる固形分20重量%の金コロイドのエタノール溶液37gを得た。TG−DTA(セイコーインストゥルメント社製)測定の結果、固形分中の金粒子の含有率は70重量%であった。
実施例2 金コロイドのエタノール溶液の調製
高分子顔料分散剤としてEFKAケミカル社製のEFKA−4550を20g、ジメチルアミノエタノールを14g及びエタノールを200g、それぞれ反応容器にとり、撹拌して、高分子顔料分散剤を完全に溶解させた。一方、テトラクロロ金(III)酸四水和物(HAuCl4・4H2O)12gをエタノール100mlに溶解した。高分子顔料分散剤のエタノール溶液を撹拌しながら、これにテトラクロロ金(III)酸四水和物のエタノール溶液を瞬時に加えた。そのまま室温で1時間撹拌を続け、鮮やかで濃厚な赤色を呈する金コロイドのエタノール溶液を得た。得られた金コロイドのエタノール溶液を旭化成社製の限外濾過ペンシル型モジュールAHP−0013を用いて、残留イオンを濾過で除き、得られた濾液にエタノールを添加してさらに濾過を行うといった工程を繰り返し行い、残留イオン成分の除去された、金コロイド粒子と高分子顔料分散剤とからなる固形分22重量%の金コロイドのエタノール溶液37gを得た。
TG−DTA測定の結果から、この固形分中の金の含有率は65重量%であることが確認された。
実施例3 金コロイドのエタノール溶液
高分子顔料分散剤としてEFKAケミカル社製のEFKA−4550の代わりにEFKAケミカル社製のEFKA−4540を20g用いる以外は実施例2に従って、金コロイド粒子と高分子顔料分散剤とからなる固形分22重量%の鮮やかで濃厚な赤色を呈する金コロイドのエタノール溶液37gを得た。TG−DTA測定の結果、固形分中の金粒子の含有率は65重量%であった。
実施例4 銀コロイドのメタノール溶液
過塩素酸銀11gを反応容器に取り、これに高分子顔料分散剤としてビックケミー社製のディスパービック192 10gとメタノール300gを取り、樹脂成分が溶解するまで撹拌した。この樹脂成分の溶解した水溶液を先の過塩素酸銀水溶液に加え、液温が50℃になるようにウォーターバスを用いて加熱した。ここに、撹拌しながら2−ジメチルアミノエタノール24gを瞬時に添加した。2−ジメチルアミノエタノール添加後、さらに50℃で6時間撹拌し、その後50℃で一晩静置した。次に旭化成社製の限外濾過ペンシル型モジュールAHP−0013を用いて、残留イオンを濾過で除き、得られた濾液にメタノールを添加してさらに濾過を行うといった工程を繰り返し行い、残留イオン成分の除去された、銀コロイド粒子と高分子顔料分散剤とからなる固形分40重量%の鮮やかで濃厚な黄色を呈する銀コロイドのメタノール溶液20gを得た。TG−DTA測定の結果、固形分中の銀粒子の含有率は53重量%であった。
実施例5 銀コロイドのエタノール溶液
過塩素酸銀11gを反応容器に取り、これに高分子顔料分散剤としてビックケミー社製のディスパービック190を20g及びエタノールを300gとり、樹脂成分が溶解するまで撹拌した。この樹脂成分の溶解した水溶液を先の過塩素酸銀水溶液に加え、液温が50℃になるようにウォーターバスを用いて加熱した。ここに、撹拌しながら2−ジメチルアミノエタノール24gを瞬時に添加した。2−ジメチルアミノエタノール添加後、さらに50℃で6時間撹拌し、その後50℃で一晩静置した。次に旭化成社製の限外濾過ペンシル型モジュールAHP−0013を用いて、残留イオンを濾過で除き、得られた濾液にエタノールを添加してさらに濾過を行うといった工程を繰り返し行い、残留イオン成分の除去された、銀コロイド粒子と高分子顔料分散剤とからなる固形分40重量%の鮮やかで濃厚な黄色を呈する銀コロイドのエタノール溶液20gを得た。TG−DTA測定の結果、固形分中の銀粒子の含有率は55重量%であった。
実施例6 パラジウムコロイドのエタノール溶液の調製
塩化パラジウム(II)二水和物14.5gを、エタノール300gとともに容器にとり、撹拌して溶解した。さらに高分子顔料分散剤として、ビックケミー社製のディスパービック190を22g加え、高分子顔料分散剤が溶解するまで撹拌した。別の容器にクエン酸36g、2−ジメチルアミノエタノール23gとエタノール100gとを取り、クエン酸が溶解するまで撹拌した。このエタノール溶液を塩化パラジウム溶液に撹拌しながら瞬時に加え、室温で2時間撹拌し、パラジウムコロイド水溶液を得た。こうして得られたパラジウムコロイドのエタノール溶液を旭化成社製の限外濾過ペンシル型モジュールAHP−0013を用いて、残留イオンを濾過で除き、得られた濾液にエタノールを添加してさらに濾過を行うといった工程を繰り返し行い、残留イオン成分の除去された、パラジウムコロイド粒子と高分子顔料分散剤とからなる固形分40重量%の濃厚な褐色のパラジウムコロイドのエタノール溶液30gを得た。TG−DTA測定の結果、固形分中のパラジウム粒子の含有率は58重量%であった。
比較例1 金コロイドのエタノール溶液
高分子量顔料分散剤としてビックケミー社製のディスパービック184を18g用いる以外には実施例1に従って金コロイドのエタノール溶液の調製を試みた。しかし、金粒子とディスパービック184とからなる塊状の沈殿物が生じ、金コロイドのエタノール溶液は得られなかった。
比較例2 銀コロイドのエタノール溶液
高分子量顔料分散剤としてアビシア社製のソルスパース24000 10gを用いる以外には実施例5に従って銀コロイドのエタノール溶液の調製を試みた。しかし、銀粒子とソルスパース24000とからなる塊状の沈殿物が生じ、銀コロイドのエタノール溶液は得られなかった。
比較例3 銀コロイドのエタノール溶液
高分子量顔料分散剤としてアビシア社製のソルスパース28000 10gを用いる以外には実施例5に従って銀コロイドのエタノール溶液の調製を試みた。しかし、銀粒子とソルスパース28000とからなる塊状の沈殿物が生じ、銀コロイドのエタノール溶液は得られなかった。
製造例 金コロイドのトルエン溶液の調製
テトラクロロ金(III)酸四水和物(HAuCl4・4H2O)12gを、水40gとともに反応容器にとり、撹拌して溶解した。一方、別の容器に高分子顔料分散剤としてアビシア社製のソルスパース28000を4g及びアセトンを60gとり、撹拌して高分子顔料分散剤を溶解した。この高分子顔料分散剤溶液を、テトラクロロ金(III)酸水溶液の入った反応容器に加えて、撹拌しながら2−ジメチルアミノエタノール13.0gを瞬時に加えた。その後、さらに室温で1時間撹拌を行った後、アセトンを乾燥・除去した。アセトン量の減少に伴い、高分子顔料分散剤に保護された金コロイドが析出し、沈殿した。上澄みの水層をデカンテーションして除去し、さらに蒸留水で金コロイドを洗浄した後、完全に乾燥させて金の非極性溶媒可溶性固体ゾル8gを得た。TG−DTA測定の結果、固形分中の金粒子の含有率は70重量%であった。
得られた金の固体ゾル8gを容器に取り、これにトルエン12gを加えて撹拌して金固体ゾルを溶解したところ、濃厚な赤色を呈する金コロイドのトルエン溶液を得た。
実施例7 吸光度の測定
実施例1で得られた金コロイドのエタノール溶液をさらにエタノールで大希釈し、底面が1cm×1cmのガラスセルに移し、大塚電子社製の分光光度計MCPD−3000により380nm〜780nmの範囲の吸光度を測定したところ530nmの波長にて極大を有する金コロイドのプラズモンに由来する吸収を観察できた。吸収ピークの極大の部分の吸光度が1.5となるように金コロイドの濃度を調製した吸光曲線を図1に示した。
比較例4 吸光度の測定
製造例で得られた金コロイドのトルエン溶液をさらにトルエンで大希釈し、実施例7と同様に吸光度を測定したところ535nm近傍に極大を有する金コロイドのプラズモンに由来する吸収を観察できた。吸収ピークの極大の部分の吸光度が1.5となるように金コロイドの濃度を調製した吸光曲線を図1に示した。
実施例8 ゾル−ゲル法に使用するコーティング用組成物の調製
テトラエトキシシラン7.0重量%、硝酸1.3重量%、水1.5重量%、イソプロパノール89.7重量%を混合し、攪拌してテトラエトキシシラン溶液を得た。上記テトラエトキシシラン溶液に、実施例1で得られた金コロイドのエタノール溶液を0.5重量%加えて攪拌し、コーティング用組成物を調製した。このコーティング用組成物は、室温下で24時間安定であった。
実施例9〜12 ゾル−ゲル法に使用するコーティング用組成物の調製
実施例8において、実施例1で得られた金コロイドのエタノール溶液の代わりに、実施例2〜5のアルコール溶液をそれぞれ用いた以外は同様の手順でコーティング用組成物をそれぞれ調製した。これらのコーティング用組成物は、いずれも室温下で24時間安定であった。
比較例5 ゾル−ゲル法に使用するコーティング用組成物の調製
実施例8において、実施例1で得られた金コロイドのエタノール溶液の代わりに、製造例で得られた金コロイドのトルエン溶液を用いた以外は同様の手順でコーティング用組成物を調製しようとしたが、うまく混合せず、コーティング用組成物を得ることができなかった。
実施例13 ゾル−ゲル法による着色ガラスゲル膜の調製
実施例8で得られたコーティング用組成物をスピンコーティング法によりガラス板状に塗布した後、150℃で20分間焼成を行い、膜厚が0.2μmの着色ガラスゲル膜をガラス基板上に形成した。
上記着色ガラスゲル膜は、透明で赤く着色されていた。この着色ガラスゲル膜の耐水性の評価として洗剤によるこすり試験を行ったが、脱色は認められなかった。またJIS K 5400に準じて、着色ガラスゲル膜の鉛筆硬度を測定したところ8Hとなり、充分な硬度が得られた。
実施例14 ゾル−ゲル法による着色ガラスゲル膜の調製
実施例11で得られたコーティング用組成物をスピンコーティング法によりガラス板状に塗布した後、150℃で20分間焼成を行い、膜厚が0.2μmの着色ガラスゲル膜をガラス基板上に形成した。
この着色ガラスゲル膜は透明で黄色に着色されていた。この着色ガラスゲル膜の耐水性の評価として洗剤によるこすり試験を行ったが、脱色は認められなかった。またJIS K 5400に準じて、着色ガラスゲル膜の鉛筆硬度を測定したところ8Hとなり、充分な硬度が得られた。
実施例15 金コロイドの水溶液の調製
実施例1で得られた、限外濾過を行う前の金コロイドのエタノール溶液を旭化成社製の限外濾過ペンシル型モジュールAHP−0013を用いて、残留イオンを濾過で除き、得られた濾液に水を添加してさらに濾過を行うといった工程を繰り返した。この操作を繰り返し行うことにより、残留イオン成分の除去を行うと共に溶媒をエタノールから水への置換を行い、金コロイド粒子と高分子顔料分散剤とからなる固形分25重量%の金コロイドの水溶液37gを得た。TG−DTA測定の結果、固形分中の金粒子の含有率は56重量%であった。
実施例7と同様にして分光光度計により吸光度を測定したところ、実施例1で得られた金コロイドのエタノール溶液と同等のシャープさを有する吸光曲線が得られた。
実施例1〜6において所定の高分子量顔料分散剤を使用した場合には、金属コロイドのアルコール溶液が得られた。実施例8〜12の結果より、これらの金属コロイドのアルコール溶液は、ゾル−ゲル法に使用するコーティング用組成物中に加えても問題なく混合でき、安定な状態を示した。また、実施例13及び14の結果より、優れた着色性を有するとともに、耐水性及び塗膜硬度に優れたコーティングゲル膜を得ることができた。
一方、比較例1〜3において、上記所定の高分子量顔料分散剤以外の高分子量顔料分散剤を使用した場合には、金属コロイドのアルコール溶液は得られなかった。製造例により調製した金コロイドのトルエン溶液は、比較例5の結果より、ゾル−ゲル法に使用するコーティング用組成物に使用することには適さなかった。
実施例7及び比較例4における図1の結果から、製造例の金コロイドのトルエン溶液由来の吸光曲線に比べて、実施例1の金コロイドのエタノール溶液由来の吸光曲線はよりシャープであり、特に長波長側においてシャープなものが得られたので、金コロイド粒子の粒径分布が狭いことがわかった。
また、実施例15で溶剤をアルコールから水に置換しても、粒径分布の特性が維持されることが確認できた。
産業上の利用可能性
本発明の貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液、及び、本発明の溶液調整方法により得られる貴金属又は銅のコロイドの溶液は、上述の構成を有するので、貴金属又は銅のコロイド粒子を高濃度に含有することができるともに、吸光曲線がこれまでのものに比べてシャープになるため、優れた着色性をも有することができる。更に、ゾル−ゲル法に好適に使用することができるので、ゾル−ゲル法により得られる無機被膜は、耐熱性に優れた光学フィルターや非線形光学材料といった光学材料、色材、抗菌材、触媒、電磁波シールド等に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、金コロイドのアルコール溶液における金コロイド粒子の粒径分布を示す吸光度曲線である。実線は、製造例で得られた金コロイドのトルエン溶液、破線は、実施例1で得られた金コロイドのエタノール溶液について測定したものである。横軸は波長(nm)、縦軸は吸光度を表す。
Claims (12)
- 貴金属又は銅のコロイド粒子及び高分子量顔料分散剤を含む貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液であって、前記アルコールの炭素数は、1〜4であり、前記高分子量顔料分散剤は、下記式(1)若しくは(2)を満たすものであることを特徴とする貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液。
(1)A≧3mlかつ3ml≦B≦40ml
(2)0.25≦A/B≦4.5
〔式中、A及びBはそれぞれ、前記高分子量顔料分散剤0.5gをアセトン10mlに溶解したアセトン溶液に水又はヘキサンをそれぞれ添加する場合における、前記アセトン溶液が白濁するまでの前記水の添加量(ml)、及び、前記アセトン溶液が白濁するまでの前記ヘキサンの添加量(ml)である。〕 - アルコールは、炭素数2〜4のモノアルコールである請求の範囲第1項記載の貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液。
- 式(1)は、下記式(1′)である請求の範囲第1又は2項記載の貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液。
(1′)A≧10mlかつ4ml≦B≦20ml - 貴金属又は銅の化合物を、炭素数1〜4のアルコールに溶解し、高分子量顔料分散剤の存在下で貴金属又は銅に還元する貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液の製造方法であり、前記高分子量顔料分散剤は、下記式(1)若しくは(2)を満たすものであることを特徴とする貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液の製造方法。
(1)A≧3mlかつ3ml≦B≦40ml
(2)0.25≦A/B≦4.5
〔式中、A及びBはそれぞれ、前記高分子量顔料分散剤0.5gをアセトン10mlに溶解したアセトン溶液に水又はヘキサンをそれぞれ添加する場合における、前記アセトン溶液が白濁するまでの前記水の添加量(ml)、及び、前記アセトン溶液が白濁するまでの前記ヘキサンの添加量(ml)である。〕 - 請求の範囲第4項記載の製造方法で得られる貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液。
- 請求の範囲第4項記載の製造方法で得られる貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液を濃縮した後、前記濃縮して得られた溶液に前記アルコールと異なる溶剤を加えて希釈することを特徴とする貴金属又は銅のコロイドの溶液調整方法。
- 異なる溶剤が水である請求の範囲第6項記載の貴金属又は銅のコロイドの溶液調整方法。
- 請求の範囲第6又は7項記載の溶液調整方法で得られる貴金属又は銅のコロイドの溶液。
- 請求の範囲第1、2、3又は5項記載の貴金属又は銅のコロイドのアルコール溶液と金属アルコキシドとからなるコーティング用組成物。
- 請求の範囲第8項記載の貴金属又は銅のコロイドの溶液と金属アルコキシドとからなるコーティング用組成物。
- 請求の範囲第9又は10項記載のコーティング用組成物を用いて得られる無機被膜。
- 請求の範囲第9又は10項記載のコーティング用組成物を用いて基材上に無機被膜を形成することを特徴とする無機被膜形成方法。
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