JPWO2002072706A1 - 硬化性含フッ素ポリマーを含んでなる光学材料 - Google Patents

硬化性含フッ素ポリマーを含んでなる光学材料 Download PDF

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Abstract

可視光から近赤外領域での透明性を維持しながら、希土類金属イオンと安定な構造を形成した好適な光学材料を得ること。該光学材料は、(I)含フッ素プレポリマーと(II)希土類金属イオンおよび/または希土類金属元素を含む化合物とからなる組成物であって、含フッ素プレポリマー(I)が、(1)フッ素含有率が25%以上の非晶性ポリマーで、かつ(2)ポリマーの側鎖中および/またはポリマー主鎖末端に硬化性の部位を有する硬化性含フッ素ポリマーを含むフッ素樹脂組成物を硬化して得られる。

Description

技術分野
本発明は、硬化性含フッ素プレポリマーを含んでなる光学材料に関する。詳しくは光学材料として有用な組成物および光通信分野において用いられる光増幅技術や発光現象を利用する分野に好適な材料に関する。
背景技術
光ファイバ網を用いた光通信システムは、大容量かつ高速のデータ伝送を可能にする。光ファイバとしては一般的には、石英系光ファイバが用いられている。しかし、近年、プラスチック光ファイバ(POF:Plastics Optical Fiber)において、広帯域(100m伝送で400Mbps)、低損失なGI(Graded Index)型と呼ばれるPOFが開発され、今後、各家庭内での光ネットワークの構築も考えられている。それぞれのファイバでは伝送に用いられている光の波長帯域が異なり、石英系では主に1300nm帯域および1500nm帯域が、プラスチック(アクリル)では650nm帯域が主として用いられている。
ところで、光ファイバが石英系、プラスチック系いずれのものであっても、光通信システムでは、伝播、分岐、接続、スイッチングの際に生ずる損失が原因で、光信号の減衰が生じる。光信号の減衰は、長距離伝送を行う場合に特に問題となる。そこで、光信号の減衰を補償するため、光増幅器が必要になる。
石英系光ファイバ網を用いた光通信システム用の光増幅器としては、例えば文献(「Erドープ光ファイバによる光増幅とその応用」、中沢正隆、応用物理第59巻、第9号、pp.1175−1192(1990))に開示されている、いわゆるファイバ型光増幅器がある。これは、エルビウム(Er)陽イオン原子中の電子の可視〜近赤外領域の光線による励起と、約1500nm帯域の波長の蛍光発生現象を応用したものである。
一方、発光体としては、希土類金属イオンを含有させた無機のガラスやレーザー光線用電子デバイスなどに実用化されている。しかし、製造が難しく加工も困難であるため、用途が限られているのが現状である。また、ポリマー組成物に関しては特開昭64−26583号公報に提案がなされているが、発光強度が低い。
しかし、Erドープ光ファイバによる光増幅器(EDFA)は30dB(1000倍)の利得を得るために20〜30メートルの長さの増幅用光ファイバが必要である。その理由は、例えば1550nm帯域用のファイバ型光増幅器はエルビウムイオン(Er3+)を石英系ファイバにドープしたものであるが、ドープ量を多くするとドープイオン同士の会合によるクラスターが形成され、増幅作用が低下してしまうからである。そのため、ドープ量を10〜1000ppmと希薄にした上で、ファイバ長を長くすることで増幅作用を得るようにしている。このように、ファイバ型光増幅器(ガラス系)では、光増幅器の作用長を短縮するには限界がある。すなわち、光増幅器の小型化、低価格化を図るにも限界がある。
また、ベース材料が無機ガラス材料であるため、靱性や成形加工性は必ずしも満足できるものではなかった。
さらに、ファイバ型光増幅器(ガラス系)の場合、平面型の光増幅器を実現することが難しい。これは、光増幅器と他の光素子とにより光集積回路を構築する場合などに弊害になる。
発光体としての無機系デバイスでも、製造が難しく加工も困難であるため、用途が限られている。
一方、有機高分子材料への希土類元素陽イオンの添加も検討されている。例えば、特開平5−86189号公報には、有機基を有するクロロシラン類と希土類元素の塩化物を原料として得られる希土類金属イオンが、高分子鎖中に取り込まれたポリシロキサンが開示されている。また、特開平5−88026号公報には、希土類金属イオンのアセチルアセトン錯体のような有機溶媒への溶解性や耐酸化性に優れた錯体を、ポリアクリレートやポリシロキサン中に含む材料が開示されている。さらに、高分子学会予稿集,Vol.43(1),29(1994)には、アクリル酸やメタクリル酸のような重合性有機酸の希土類元素陽イオン塩を合成し、かかる希土類陽イオン担持モノマーを重合または共重合させ、陽イオン濃度を10重量%程度まで高めることができる材料が報告されている。これらの方法により、成形加工性に優れる有機高分子材料に対して希土類元素陽イオンを高濃度で添加することができる。しかし、合成法が煩雑であり、産業上の応用において経済的制約となり得ること、および使用される樹脂が比較的耐熱性の低い樹脂に限られているといった欠点がある。
また、希土類金属イオンの樹脂中への分散性を高めるためには、アクリル系樹脂を構成するポリマーの構造中に高い割合でカルボン酸基を含有させることが必要であるが、このようなアクリル系樹脂は吸水性が大きいものとなるため、実用上、水分の存在を嫌う光学材料として用いることができない。
また、耐熱性も充分ではなく、光増幅型素子の製造工程中、あるいは使用環境下において、増幅特性の低下を生じていた。
さらに光源の波長として1300nm帯域および1500nm帯域のものが使用される場合は、有機材料中の炭素−水素および酸素−水素結合がこの領域に吸収をもつため、光の透過性が低下するという本質的な欠点をかかえていた。そこで従来より、かかる水素原子を重水素(D)置換したり、フッ素置換をする検討がなされてきた。その結果、透明性はある程度改善できるが、重水素置換の場合では材料のもつ吸水性は変わらず、またフッ素置換の場合、透明性に効果をもたらす程度置換した場合、希土類金属イオンの分散性が著しく低下したり、溶剤溶解性が低下するなどの欠点を有している。また、フッ素置換では、ガラス転移点は向上せず、耐熱性の問題は解決されない。また、こうした発光現象を利用した発光体への応用に関しても、使用するポリマーの耐光性などに問題がある。
このように光増幅材料や発光材料の分野における問題がすべて解決されたわけではなく、上記の問題を解決できる新規な光増幅材料および発光材料が望まれている。
発明の開示
本発明者らは、かかる目的を達成すべく鋭意研究を行った結果、特定の硬化性含フッ素ポリマーと希土類元素を組み合わせてなるフッ素樹脂組成物を用いることによって、上記の目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、優れた光学材料、特に光増幅材料および発光材料を与えるフッ素樹脂組成物を提供する。
本発明の第1は、フッ素含有率が25重量%以上の非晶性ポリマーであってかつ、ポリマー側鎖中および/または主鎖末端に硬化性の部位を有する含フッ素プレポリマー(I)と、希土類金属イオンおよび/または希土類金属を含む化合物(II)からなるフッ素樹脂組成物、さらには光増幅材料または発光材料に用いるフッ素樹脂組成物に関する。このものはフッ素含有量の多い硬化性のフッ素樹脂組成物であり、光学材料として有用である。
ここで、「ポリマー側鎖中」とは、ポリマーの側鎖の末端でも側鎖の途中でも、その両者でもよいことをいう。
本発明のフッ素樹脂組成物を硬化して得られる光増幅材料および発光材料は、フッ素含有量が高い硬化体であるため、増幅率および発光強度が大きい。また、耐光性や耐熱性をも併せもっているものである。さらには、屈折率が低いので発光体としての特性も向上している。
この含フッ素プレポリマー(I)は、1290〜1320nmの波長範囲および/または1530〜1570nmの波長範囲および/または600〜900nmの波長範囲での吸光度係数の最大値が1cm−1以下である含フッ素プレポリマーがより好ましい。
含フッ素プレポリマー(I)の硬化性部位は、炭素−炭素二重結合であることが好ましい。また、炭素−炭素二重結合はポリマー側鎖末端に有するものが好ましく例示できる。
硬化性部位を構成する炭素−炭素二重結合は、ラジカル反応性を有するエチレン性炭素−炭素二重結合であっても、カチオン反応性を有するエチレン性炭素−炭素二重結合であってもよい。
含フッ素プレポリマー(I)としては、硬化性部位を有する含フッ素エチレン性単量体の繰り返し単位を含む重合体が例示できる。
特に好ましい含フッ素プレポリマー(I)としては、式(1):
Figure 2002072706
[式中、構造単位Mは式(M):
Figure 2002072706
(式中、XおよびXは同じかまたは異なり、HまたはF;XはH、F、CHまたはCF;XおよびXは同じかまたは異なり、H、FまたはCF;Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にY(Yは末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基)が1〜3個結合している有機基;aは0〜3の整数;bおよびcは同じかまたは異なり、0または1)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位、構造単位Aは該構造単位Mを与える含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位である]で示され、構造単位Mを0.1〜100モル%および構造単位Aを0〜99.9モル%含み、数平均分子量が500〜1000000であるポリマーがあげられる。
本発明の第2は、前記第1の本発明のフッ素樹脂組成物を硬化して得られる光増幅材料および該材料を用いて形成されたコア部を有する光増幅型素子に関する。
本発明の第3は、前記第1の本発明のフッ素樹脂組成物を硬化して得られる発光材料および該材料を全部または一部に用いて形成された発光素子に関する。
発明を実施するための最良の形態
本発明に用いる含フッ素プレポリマー(I)として好適なポリマーは、前記のとおり式(1):
Figure 2002072706
[式中、構造単位Mは式(M):
Figure 2002072706
(式中、XおよびXは同じかまたは異なり、HまたはF;XはH、F、CHまたはCF;XおよびXは同じかまたは異なり、H、FまたはCF;Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にY(Yは末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基)が1〜3個結合している有機基;aは0〜3の整数;bおよびcは同じかまたは異なり、0または1)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位、構造単位Aは該構造単位Mを与える含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位である]で示され、構造単位Mを0.1〜100モル%および構造単位Aを0〜99.9モル%含み、数平均分子量が500〜1000000である含フッ素ポリマーである。
つまり、ポリマー側鎖中および/またはポリマー主鎖末端に反応により硬化可能なエチレン性炭素−炭素二重結合を与える含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位Mのホモポリマー、またはその構造単位Mを必須成分として有する共重合体である。
構造単位MのRfにおいて、Yの少なくとも1個はRfの末端に結合していることが好ましい。
本発明で用いる含フッ素プレポリマー(I)における構造単位Mは、なかでも式(M1):
Figure 2002072706
(式中、XおよびXは同じかまたは異なり、HまたはF;XはH、F、CHまたはCF;XおよびXは同じかまたは異なり、H、FまたはCF;Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にY(Yは末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基)が1〜3個結合している有機基;aは0〜3の整数;cは0または1)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位M1が好ましい。
この構造単位M1を含む含フッ素プレポリマーは、特に近赤外領域での透明性(以下、「近赤外透明性」という)が高く、構造単位M1のホモポリマーに限らず、構造単位M1を増やした組成の共重合体においても近赤外透明性を高くすることができ、好ましいものである。
さらに構造単位M1のより好ましい具体例の1つは式(M2):
Figure 2002072706
(式中、Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にY(Yは末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基)が1〜3個結合している有機基)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位M2である。
この構造単位M2はエチレン性炭素−炭素二重結合を末端に有する含フッ素アリルエーテルの構造単位であり、近赤外透明性を高くできるだけでなく、重合性が良好であり、特にホモ重合性および他の含フッ素エチレン系単量体との共重合性が良好であるため好ましい。
また、構造単位M1の別の好ましい具体例は式(M3):
Figure 2002072706
(式中、Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にY(Yは末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基)が1〜3個結合している有機基)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位M3である。
この構造単位M3はエチレン性炭素−炭素二重結合を末端に有する含フッ素ビニルエーテルの構造単位であり、近赤外透明性を高くでき、また他の含フッ素エチレン系単量体との共重合性が良好である点で好ましい。
本発明で使用する式(1)の含フッ素プレポリマー(I)において構造単位M、M1、M2およびM3に含まれるYは、前記のとおり、末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基である。
このY中の炭素−炭素二重結合は重縮合反応などを起こす能力を有し、硬化(架橋)体を与えることができるものである。詳しくは、たとえばラジカルやカチオンの接触によって、含フッ素プレポリマー(I)分子間で、または含フッ素プレポリマー(I)と必要に応じて加えられる硬化(架橋)剤との間で重合反応や縮合反応を起こし、硬化(架橋)物を与えることができるものである。
好ましいYの第1としては、
Figure 2002072706
(式中、Yは末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜5のアルケニル基または含フッ素アルケニル基;dおよびeは同じかまたは異なり、0または1)である。
好ましいYとしては、
Figure 2002072706
(式中、XはH、F、CHまたはCF;XおよびXは同じかまたは異なり、HまたはF)であり、この基はラジカルやカチオンの接触による硬化反応性が高く、好ましいものである。
好ましいYの具体例としては、
Figure 2002072706
などがあげられる。
またより好ましいYとしては、
Figure 2002072706
(式中、XはH、F、CHまたはCF;XおよびXは同じかまたは異なり、HまたはF)があげられ、この基は特にラジカルの接触による硬化反応性がより高い点で好ましく、光硬化などにより容易に硬化物を得ることができる点で好ましい。
上記のより好ましいYの具体例としては、
Figure 2002072706
などがあげられる。
その他の好ましいYの具体例としては、
Figure 2002072706
Figure 2002072706
などがあげられる。
のなかでも、−O(C=O)CF=CHの構造を有するものが近赤外透明性を高くでき、さらに硬化(架橋)反応性が特に高く、効率よく硬化物を得ることができる点で好ましい。
なお、前述の側鎖中に炭素−炭素二重結合を有する有機基Yは、ポリマー主鎖末端に導入してもよい。
本発明で用いる含フッ素プレポリマー(I)において、構造単位M、M1、M2およびM3に含まれる−Rf−(前記−RfからYを除いた基)は、炭素数1〜40の含フッ素アルキレン基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。このRf基は含まれる炭素原子にフッ素原子が結合していればよく、一般に、炭素原子にフッ素原子と水素原子または塩素原子が結合した含フッ素アルキレン基、エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基であるが、フッ素原子をより多く含有する(フッ素含有率が高い)ものが好ましく、より好ましくはパーフルオロアルキレン基またはエーテル結合を有するパーフルオロアルキレン基である。含フッ素プレポリマー(I)中のフッ素含有率は25重量%以上、好ましくは40重量%以上である。これらによって、含フッ素プレポリマー(I)の近赤外透明性を高くすることが可能となり、特に硬化物の耐熱性や弾性率を高くする目的で硬化度(架橋密度)を高くしても近赤外透明性を高く維持できるため好ましい。
−Rf−基の炭素数は大きすぎると、含フッ素アルキレン基の場合は溶剤への溶解性を低下させたり透明性が低下することがあり、またエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基の場合はポリマー自身やその硬化物の硬度や機械特性を低下させることがあるため好ましくない。含フッ素アルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10である。エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は好ましくは2〜30、より好ましくは2〜20である。
Rfの好ましい具体例としては、
Figure 2002072706
(以上、1:1〜10、m:1〜10、n:0〜5)
Figure 2002072706
または
Figure 2002072706
(以上、X、X12はFまたはCF;X10、X11はHまたはF;o+p+qは1〜30;rは0または1;s、tは0または1)
などがあげられる。
前述のとおり、本発明で用いる含フッ素プレポリマー(I)を構成する構造単位Mは構造単位M1が好ましく、構造単位M1としてはさらに構造単位M2または構造単位M3が好ましい。そこで、つぎに構造単位M2および構造単位M3の具体例について述べる。
構造単位M2を構成する単量体として好ましい具体例としては、
Figure 2002072706
(以上、nは1〜30の整数;Yは前記と同じ)
があげられる。
より詳しくは、
Figure 2002072706
(以上、Rf、Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基;nは0〜30の整数;XはH、CH、FまたはCF
などがあげられる。
構造単位M3を構成する単量体として好ましい具体例としては、
Figure 2002072706
(以上、Y1は前記と同じ;nは1〜30の整数)
などがあげられる。
さらに詳しくは、
Figure 2002072706
Figure 2002072706
(以上、Rf、Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基;mは0〜30の整数;nは1〜3の整数;XはH、CH、FまたはCF
などがあげられる。
これらの構造単位M2およびM3以外に、含フッ素プレポリマー(I)の構造単位Mを構成する単量体の好ましい具体例としては、たとえば、
Figure 2002072706
Figure 2002072706
(以上、YおよびRfは前述の例と同じ)
などがあげられる。
より具体的には、
Figure 2002072706
(以上、Yは前記と同じ)
などがあげられる。
本発明で用いる含フッ素プレポリマー(I)において、構造単位Aは任意成分であり、構造単位M、M1、M2またはM3と共重合し得る単量体であれば特に限定されず、目的とする含フッ素プレポリマー(I)やその硬化物の用途、要求特性などに応じて適宜選択すればよい。
構造単位Aとしては、たとえばつぎの構造単位が例示できる。
▲1▼官能基を有する含フッ素エチレン性単量体から誘導される構造単位
この構造単位▲1▼は、含フッ素プレポリマー(I)およびその硬化物の近赤外透明性を高く維持しながら、基材への密着性や溶剤、特に汎用溶剤への溶解性を付与できる点で好ましく、そのほかYが関与する以外の架橋性などの機能を付与できる点で好ましい。
官能基を有する好ましい含フッ素エチレン性単量体の構造単位▲1▼は、式(3):
Figure 2002072706
(式中、X11、X12およびX13は同じかまたは異なりHまたはF;X14はH、F、CF;hは0〜2の整数;iは0または1;Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキレン基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基;Zは−OH、−CHOH、−COOH、カルボン酸誘導体、−SOH、スルホン酸誘導体、エポキシ基およびシアノ基よりなる群から選ばれる官能基)で示される構造単位であり、なかでも、
Figure 2002072706
(式中、RfおよびZは前記と同じ)から誘導される構造単位が好ましい。
より具体的には、
Figure 2002072706
Figure 2002072706
(以上、Zは前記と同じ)などの含フッ素エチレン性単量体から誘導される構造単位が好ましくあげられる。
また、
Figure 2002072706
(式中、RfおよびZは前記と同じ)から誘導される構造単位も好ましく例示でき、より具体的には、
Figure 2002072706
(以上、Zは前記と同じ)などの単量体から誘導される構造単位があげられる。
その他、官能基含有含フッ素エチレン性単量体としては、
Figure 2002072706
(以上、−Rf−は前記の−Rf−と同じ;Zは前記と同じ)
などがあげられ、より具体的には、
Figure 2002072706
(以上、Zは前記と同じ)などがあげられる。
ただし、−OH基、−COOH基、−SOH基を有する単量体を用いる場合は、近赤外透明性を低下させない範囲の量であることが好ましい。
▲2▼官能基を含まない含フッ素エチレン性単量体から誘導される構造単位
この構造単位▲2▼は含フッ素プレポリマー(I)またはその硬化物の近赤外透明性をより一層高く維持できる点で、またさらに高透明性化することができる点で好ましい。また単量体を選択することでポリマーの機械的特性やガラス転移温度などを調整でき、特に構造単位Mと共重合してガラス転移点を高くすることができ、好ましいものである。
この含フッ素エチレン性単量体の構造単位▲2▼としては、式(4):
Figure 2002072706
(式中、X15、X16およびX18は同じかまたは異なりHまたはF;X17はH、FまたはCF;h1、i1およびjは0または1;ZはH、FまたはCl;Rfは炭素数1〜20の含フッ素アルキレン基または炭素数2〜100のエーテル結合を含む含フッ素アルキレン基)で示されるものが好ましい。
具体例としては、
Figure 2002072706
などの単量体から誘導される構造単位が好ましくあげられる。
▲3▼フッ素を有する脂肪族環状の構造単位
この構造単位▲3▼を導入すると、透明性を高くでき、また、より近赤外透明性を高めることが可能となり、さらに高ガラス転移温度の含フッ素プレポリマー(I)が得られ、硬化物にさらなる高硬度化が期待できる点で好ましい。
含フッ素脂肪族環状の構造単位▲3▼としては式(5):
Figure 2002072706
(式中、X19、X20、X23、X24、X25およびX26は同じかまたは異なりHまたはF;X21およびX22は同じかまたは異なりH、F、ClまたはCF;Rfは炭素数1〜10の含フッ素アルキレン基または炭素数2〜10のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基;n2は0〜3の整数;n1、n3、n4およびn5は同じかまたは異なり0または1の整数)で示されるものが好ましい。
たとえば、
Figure 2002072706
(式中、Rf、X21およびX22は前記と同じ)で示される構造単位があげられる。
具体的には、
Figure 2002072706
Figure 2002072706
(式中、X19、X20、X23およびX24は前記と同じ)などがあげられる。
そのほかの含フッ素脂肪族環状構造単位としては、たとえば
Figure 2002072706
などがあげられる。
▲4▼フッ素を含まないエチレン性単量体から誘導される構造単位
近赤外透明性を悪化させない範囲でフッ素を含まないエチレン性単量体から誘導される構造単位▲4▼を導入してもよい。
構造単位▲4▼を導入することによって、汎用溶剤への溶解性が向上したり、添加剤、たとえば光触媒や必要に応じて添加する硬化剤との相溶性を改善できる。
非フッ素系エチレン性単量体の具体例としては、
αオレフィン類:
エチレン、プロピレン、ブテン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなど
ビニルエーテル系またはビニルエステル系単量体:
Figure 2002072706
アリル系単量体:
Figure 2002072706
アリルエーテル系単量体:
Figure 2002072706
アクリル系またはメタクリル系単量体:
アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類のほか、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸エステル類などなどがあげられる。
これらの非フッ素系エチレン性単量体の水素原子を重水素原子に一部または全部置換したものは透明性の点でより好ましい。
▲5▼脂環式単量体から誘導される構造単位
構造単位Mの共重合成分として、より好ましくは構造単位Mと前述の含フッ素エチレン性単量体または非フッ素エチレン性単量体(前述の▲3▼、▲4▼)の構造単位に加えて、第3成分として脂環式単量体構造単位▲5▼を導入してもよく、それによって高ガラス転移温度化や高硬度化が図られる。
脂環式単量体▲5▼の具体例としては、
Figure 2002072706
(mは0〜3の整数;A、B、CおよびDは同じかまたは異なり、H、F、Cl、COOH、CHOHまたは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基など)で示されるノルボルネン誘導体、
Figure 2002072706
などの脂環式単量体や、これらに置換基を導入した誘導体などがあげられる。
本発明で用いる含フッ素プレポリマー(I)において、構造単位M(M1、M2、M3)と構造単位Aの組合せや組成比率は、構造単位Mと構造単位Aの組合せが非晶性となり得る組合せの範囲、およびフッ素含有率が25重量%以上の範囲で、上記の例示から、目的とする用途、物性(特にガラス転移温度、硬度など)、機能(透明性、近赤外透明性)などによって種々選択できる。
含フッ素プレポリマー(I)は、構造単位M(M1、M2、M3)を必須成分として含むものであり、構造単位M自体で近赤外透明性を高く維持し、透明性を付与する機能と硬化により硬化物に硬さ、耐熱性、耐摩耗性、耐擦傷性、耐溶剤性を付与できる機能を併せもつという特徴を有している。また、構造単位Mの含有量を調整することで屈折率の制御が可能であるという特徴をも有している。したがって含フッ素プレポリマー(I)は、構造単位Mを多く含む組成、極端には構造単位Mのみ(100モル%)からなる重合体であっても近赤外透明性を高く維持できる。さらに同時に硬化(架橋)密度の高い硬化物が得られ、高硬度、耐摩耗性、耐擦傷性、耐熱性に優れた被膜が得られる。
またさらに、含フッ素プレポリマー(I)の構造単位Mと構造単位Aとからなる共重合体の場合、構造単位Aを前述の例示から選択することによって、さらに高硬度で、ガラス転移温度が高く近赤外透明性の高い硬化物を与えるプレポリマーとすることができる。
含フッ素プレポリマー(I)の構造単位Mと構造単位Aとの共重合体の場合、構造単位Mの含有量は、含フッ素プレポリマー(I)を構成する全構造単位に対し0.1モル%以上であればよいが、硬化(架橋)により高硬度で耐摩耗性、耐擦傷性に優れ、耐薬品性、耐溶剤性に優れた硬化物を得るためには2.0モル%以上、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上とすることが好ましい。
特に耐熱性、透明性、低吸水性に優れた硬化被膜の形成が必要な光学材料の用途においては、10モル%以上、好ましくは20モル%以上、さらには50モル%以上含有することが好ましい。上限は100モル%未満である。
本発明で用いる硬化性含フッ素プレポリマー(I)は、構成単位Mの比率を増やしても(硬化部位を増やしても)透明性は低下しないため、特に近赤外領域における光増幅材料用途、および可視光から近赤外線領域における発光材料用途において好ましい特性を有している。
またさらに硬化性含フッ素プレポリマー(I)は、光通信用用途における光増幅材料および可視光から近赤外線領域における発光材料など高い透明性を必要とする場合、構造単位Mと構造単位Aの組合せが非晶性となり得る組合せと組成を有することが重要である。ここで、非晶性とはDSC分析において、昇温速度10℃/minの条件で測定(ASTM D3418−99)した際に実質的に融解に基づく吸熱ピークが観測されないか、もしくは融解熱量が1J/g以下である性質を示す。
また、硬化性含フッ素プレポリマー(I)のフッ素含有率は25重量%以上が好ましい。
フッ素含有率が低いと、近赤外領域での透明性が低下する。また、フッ素含有率が低いと吸水性も高くなり、光通信用などの光学材料としては実質的には使用できなくなる。光増幅材料および発光材料用途としては、最も好ましいフッ素含有率は40重量%以上である。フッ素含有率の上限は含フッ素プレポリマー(I)の組成によって異なるが、水素原子が全てフッ素原子に置き換わったときのフッ素含有率であり、75重量%程度である。
本発明で用いる硬化性含フッ素プレポリマー(I)は、増幅の対象となる特定の通信帯域(1290〜1320nmまたは1530〜1570nmまたは600〜900nm)における吸光度係数の最大値が1cm−1以下のものが好ましい。これより高い吸光度係数を示すものは光通信に用いる光増幅材料としては適さない。
含フッ素プレポリマー(I)の分子量は、たとえば数平均分子量において500〜1000000の範囲から選択できるが、好ましくは1000〜500000、特に2000〜200000の範囲から選ばれるものが好ましい。
分子量が低すぎると、硬化後であっても機械的物性が不充分となりやすく、特に硬化物や硬化膜が脆く強度不足となりやすい。分子量が高すぎると、溶剤溶解性が悪くなったり、特に薄膜形成時に成膜性やレベリング性が悪くなりやすく、また含フッ素プレポリマーの貯蔵安定性も不安定となりやすい。光学用途としては、最も好ましくは数平均分子量が5000から100000の範囲から選ばれるものである。
含フッ素プレポリマー(I)は、含フッ素プレポリマー自体(硬化前)の1290〜1320nmの波長範囲および/または1530〜1570nmの波長範囲および/または600〜900nmの波長範囲で吸光度係数の最大値が1cm−1以下であることが好ましく、さらには0.5cm−1以下、特には0.1cm−1以下であることが好ましい。さらに屈折率としてndで1.3〜1.7の範囲のものが好ましい。この調整は、構造単位Mの種類、含有率、必要に応じて用いられる構造単位Aの種類を種々決定することによって可能である。これらの調整によって、光学素子の形成の際にクラッドの選択が容易となる。
またさらに含フッ素プレポリマーでは、汎用溶剤に可溶であることが好ましく、たとえばケトン系溶剤、酢酸エステル系溶剤、アルコール系溶剤、芳香族系溶剤の少なくとも1種に可溶または上記汎用溶剤を少なくとも1種含む混合溶剤に可溶であることが好ましい。
汎用溶剤に可溶であることは、特に、光学素子を形成するプロセスにおいて3μm程度の薄膜形成が必要な際、成膜性、均質性に優れるため好ましく、光学素子の形成における生産性の面でも有利である。
本発明で用いる含フッ素プレポリマー(I)を得るためには、一般には、
▲1▼Yを有する単量体を予め合成し、重合して得る方法
▲2▼一旦、他の官能基を有する重合体を合成し、その重合体に高分子反応により官能基変換し、官能基Yを導入する方法
のいずれの方法も採用できる。
ただし▲1▼の方法では、側鎖末端の炭素−炭素二重結合を反応(硬化)させずに側鎖に炭素−炭素二重結合を有する含フッ素プレポリマー(I)を得るためには、(共)重合性のモノマー中の2種の二重結合(主鎖となる二重結合と側鎖となる二重結合)の反応性を変えることにより、一方の二重結合のみ重合に関与させる必要があり、かかる方法では、側鎖に二重結合を有する含フッ素プレポリマーを得る重合条件の選択が難しいこと、また、得られる含フッ素プレポリマー中の側鎖の二重結合自体の硬化反応性をあまり高くしにくいので、▲2▼の方法が好ましい。
▲2▼の方法は、硬化反応させずに本発明の含フッ素プレポリマーを得るのが容易であり、また、硬化反応性の高い炭素−炭素二重結合も側鎖に導入できる点で好ましい方法である。
▲2▼の方法のなかでも、後述するように、たとえば一旦ヒドロキシル基またはヒドロキシル基を有する有機基Yを有する含フッ素単量体の構造単位Nと、必要に応じてNと共重合可能な単量体の構造単位Bからなる含フッ素重合体を合成したのち、不飽和カルボン酸またはその誘導体を反応させて、炭素−炭素二重結合をポリマーの側鎖中および/またはポリマー主鎖末端、好ましくは側鎖末端に導入する方法が好ましく採用できる。
以下にその詳細を例示する。
まず、式(2):
Figure 2002072706
[式中、構造単位Nは式(N):
Figure 2002072706
(式中、XおよびXは同じかまたは異なり、HまたはF;XはH、F、CHまたはCF;XおよびXは同じかまたは異なり、H、FまたはCF;Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にY(Yはヒドロキシル基またはヒドロキシル基を有する炭素数1〜10の1価の有機基)が1〜3個結合している有機基;aは0〜3の整数;bおよびcは同じかまたは異なり、0または1)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来するヒドロキシル基含有構造単位、構造単位Bは該構造単位Nを与えるヒドロキシル基含有含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位である]で示され、構造単位Nを0.1〜100モル%および構造単位Bを0〜99.9モル%含むヒドロキシル基含有含フッ素重合体(IV)と、不飽和カルボン酸またはその誘導体をエステル化反応させて、含フッ素プレポリマー(I)を製造する。
この含フッ素プレポリマー(I)の製造法において、式(2)に示した前駆体のヒドロキシル基含有含フッ素重合体(IV)において、構造単位Nは具体例としては、前に述べた含フッ素プレポリマー(I)の構造単位Mの具体例のそれぞれに対応する、炭素−炭素二重結合を含む部位YをOH基を含む部位Yに置き換えた構造のものがそれぞれ好ましく利用でき、構造単位Bは、前述の構造単位Aと同様のものが好ましく利用できる。
ヒドロキシル基含有含フッ素重合体(IV)と反応させる不飽和カルボン酸またはその誘導体としては、末端に炭素−炭素二重結合を有するカルボン酸またはその誘導体であればよいが、なかでもα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体が好ましい。
たとえば、
Figure 2002072706
(式中、RはH、CH、F、CFまたはCl)で示されるカルボン酸またはこれらの無水物、または
Figure 2002072706
(式中、Rは前記と同じ、XはClまたはF)で示される酸ハライドのほか、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステルなどがあげられる。
なかでも不飽和カルボン酸ハライドを採用するときは反応を室温で行なうことができ、生成ポリマーのゲル化を防止することができるため好ましい。
具体的には、
Figure 2002072706
が特に好ましいものである。
ヒドロキシル基含有含フッ素重合体(IV)にα,β−不飽和カルボン酸ハライドを反応させる方法は特に限定されるものではないが、通常、ヒドロキシル基含有含フッ素重合体(IV)を溶剤に溶解し、それにα,β−不飽和カルボン酸ハライドを−20℃〜40℃程度の温度で撹拌混合し、反応させればよい。
この反応においては、反応によってHClやHFが副生するがこれらを捕捉する目的で適当な塩基を加えることが望ましい。塩基としては、ピリジン、N,N−ジメチルアニリン、テトラメチル尿素、トリエチルアミンなどの3級アミン;金属マグネシウムなどがあげられる。また、反応の際に原料のα,β−不飽和カルボン酸や得られた含フッ素プレポリマー中の炭素−炭素二重結合が重合反応を起こすことを禁止するための禁止剤を共存させてもよい。
禁止剤としては、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテルなどがあげられる。
不飽和カルボン酸またはその誘導体を反応させる前のヒドロキシル基含有含フッ素重合体(IV)は、それぞれ構成単位に相当するヒドロキシル基を有するエチレン性単量体N、使用する場合共重合成分となる単量体Bを公知の方法で(共)重合することで得られる。重合方法はラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法などが利用できる。なかでもヒドロキシル基含有重合体(IV)を得るために例示した各単量体はラジカル重合性が良好である点、さらには得られる重合体の組成や分子量などの品質のコントロールがしやすい点、工業化しやすい点から、ラジカル重合法が好ましく用いられる。
ラジカル重合を開始するには、ラジカル的に進行するものであれば手段は何ら制限されないが、たとえば有機または無機ラジカル重合開始剤、熱、光、あるいは電離放射線などによって開始される。重合の形態も溶液重合、バルク重合、懸濁重合、乳化重合などを用いることができる。また、分子量は重合に用いるモノマーの濃度、重合開始剤の濃度、連鎖移動剤の濃度、温度などによって制御される。共重合体組成は仕込み単量体のモノマー組成により制御可能である。
本発明のフッ素樹脂組成物におけるもう一方の成分である希土類金属イオンおよび/または希土類金属含有化合物(II)(以下、単に「希土類金属元素」という)は、樹脂組成物に光機能性、すなわち光増幅作用および発光作用を付与する機能を果たすために配合される。
本発明においては、硬化性含フッ素プレポリマー(I)に希土類金属元素(II)を含有させる。希土類金属元素(II)は、フッ素樹脂組成物に光増幅作用を付与する機能を果たす。本発明に用いられる希土類金属元素は、周期律表の3A族に含まれるスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、およびランタノイドとして総称される以下の元素、すなわちランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジウム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)のいずれかを表す。本発明のフッ素樹脂組成物は、最終的には希土類金属元素を含むが、希土類金属元素は単独でも、複数種混合してもよい。
希土類金属元素は、通常、ハロゲン化物や塩もしくは錯体といった化合物の形態で配合される。具体的には、塩化物、臭化物、ヨウ化物などのハロゲン化物;硝酸塩、過塩素酸塩、臭素酸塩、酢酸塩、硫酸塩、リン酸塩などの塩が硬化性含フッ素プレポリマー(I)への分散性の点で好適である。また、複硝酸塩、複硫酸塩、キレート化物、錯体も使用可能である。たとえばスルホンアミド類、スルホンイミド類、β−ジケトン類、スルホン酸類、リン酸類などがあげられる。なかでもそれらの含フッ素化合物が好ましい。
本発明に好適な希土類金属含有化合物としては、塩化プラセオジウム、臭化プラセオジウム、ヨウ化プラセオジウム、硝酸プラセオジウム、過塩素酸プラセオジウム、臭素酸プラセオジウム、酢酸プラセオジウム、硫酸プラセオジウム、リン酸プラセオジウム等のプラセオジウム化合物;塩化ネオジウム、臭化ネオジウム、ヨウ化ネオジウム、硝酸ネオジウム、過塩素酸ネオジウム、臭素酸ネオジウム、酢酸ネオジウム、硫酸ネオジウム、リン酸ネオジウム等のネオジウム化合物;塩化ユーロピウム、臭化ユーロピウム、ヨウ化ユーロピウム、硝酸ユーロピウム、過塩素酸ユーロピウム、臭素酸ユーロピウム、酢酸ユーロピウム、硫酸ユーロピウム、リン酸ユーロピウム等のユーロピウム化合物;塩化ジスプロシウム、臭化ジスプロシウム、ヨウ化ジスプロシウム、硝酸ジスプロシウム、過塩素酸ジスプロシウム、臭素酸ジスプロシウム、酢酸ジスプロシウム、硫酸ジスプロシウム、リン酸ジスプロシウム等のジスプロシウム塩化合物;塩化エルビウム、臭化エルビウム、ヨウ化エルビウム、硝酸エルビウム、過塩素酸エルビウム、臭素酸エルビウム、酢酸エルビウム、硫酸エルビウム、リン酸エルビウム等のエルビウム化合物等をあげることができる。
また、好適な希土類金属元素を含む錯体としては、たとえばトリス(ジベンゾイルメチド)エルビウム(III)、トリス(ベンゾイルトリフルオロアセトナト)エルビウム(III)、トリス(ヘキサフルオロアセトナト)エルビウム(III)、トリス(ジベンゾイルメチド)エルビウム(III)、トリス(ベンゾイルトリフルオロアセトナト)エルビウム(III)、トリス(ヘキサフルオロアセトナト)エルビウム(III)、トリス(ジベンゾイルメチド)ネオジウム(III)、トリス(ベンゾイルトリフルオロアセトナト)ネオジウム(III)、トリス(ヘキサフルオロアセトナト)ネオジウム(III)等があげられ、また、それらはテトラキス(ヘキサフルオロアセトナト)ネオジウム(III)のようなテトラキス錯体であってもよい。そのほか、Nd[C17SONSO17、Nd[CSONSO、Nd[CSONSO、Nd[CSONSO、Nd[CSONSO17、Nd[C13SONSO13、Nd[CSONSO、Nd[CFSONSOCF、Nd[CSONCOC、Nd[CSONCOCF、Nd[OSC17、Nd[OSCFなどがあげられる。
このうち、光増幅器の用途では、近赤外線の蛍光発生能を有するプラセオジウム塩、ネオジウム塩およびエルビウム塩が特に好適であり、なかでもシリカガラス等の無機ガラスのファイバに好適な信号波長である1300〜1550nm程度の波長の蛍光発生能のあるネオジウム塩、プラセオジウム塩およびエルビウム塩が最も好適である。また、有機高分子材料を光ファイバとして用いる場合に使用される可視波長域である650nm帯域の増幅にはユーロピウム塩が最も好適である。発光体としての用途では、青色発光のツリウム塩、緑色発光のテルビウム塩、赤色発光のユーロピウム塩が好適である。
本発明のフッ素樹脂組成物は、最終的に希土類金属元素として0.001〜25重量%(重量%はイオンとして)含有することが好ましい。使用する含フッ素プレポリマー(I)および希土類金属元素(II)の種類などによって異なるが、希土類金属元素(II)含有量が0.001重量%未満であると目的とする光増幅作用や発光作用等の望ましい性質がほとんど発揮されず、一方、25重量%を超えるとこの希土類金属陽元素の分散性が悪くなることがあり、いずれも好ましくない。光増幅器等の光通信用部品や発光素子としての利用とする場合には、この希土類金属元素の含有量は、蛍光強度の観点から0.01〜20重量%の範囲で選ぶのが好ましく、さらに好ましくは0.1〜15重量%、最も好ましくは0.5〜10重量%である。なお、希土類金属元素の含有量は、約600℃程度の温度の電気炉中で有機成分を燃焼してその灰分を定量するか、または蛍光X線分析等の物理化学的手法等により定量的に測定することができる。
本発明で用いる硬化性含フッ素プレポリマー(I)は、光通信で使用される場合、各通信帯域、すなわち600〜900nm、1290〜1320nm、1530〜1570nmの波長領域の吸光度係数が1cm−1以下である必要がある。この波長領域で吸光度係数が1cm−1を超えると光信号そのものを吸収してしまい、増幅器として作用することができなくなる。なお、希土類金属元素(II)を含有した本発明のフッ素組成物は希土類金属自身が鋭敏な吸収を示すため、その波長では組成物の吸光度係数が1cm−1を超えることがある。すなわち、希土類金属の吸収波長としては、たとえばエルビウムでは980nmや1480nm等、ネオジウムでは820nm等、プラセオジウムでは1017nm等である。可視発光材料として用いる場合は、可視光領域で透明であることが望ましい。
通信光の減衰を回復せしめる役目を果たす光ファイバー増幅器などの光増幅器においては、通信光波長の蛍光を発生する希土類金属を有効に励起せしめる励起光(ポンプ光)を常時通過させ続け、通信光パルスによる誘導放出現象によりこのパルス波形と同一の蛍光を発生せしめ増幅作用とする。したがって、本発明のフッ素樹脂組成物を光増幅器用途として用いる場合には、希土類金属元素(II)由来の励起光における蛍光発生能を有することが必要である。
希土類金属元素(II)を硬化性含フッ素プレポリマー(I)に含有させる方法には、特に制限はない。希土類金属元素を含む化合物(塩または錯体など)を硬化性含フッ素プレポリマー(I)に溶解または分散させるか、あるいは硬化性含フッ素プレポリマー(I)の主鎖またはポリマー末端あるいは側鎖にイオン結合、配位結合、包接によって担持させてよい。
たとえば、(1)構造単位Mを与える炭素−炭素二重結合を有する含フッ素モノマーに希土類金属化合物(塩もしくは錯体など)を添加した後、溶融重合法やアニオン重合法等の公知の合成法で硬化性含フッ素プレポリマー(I)を生成せしめる方法、(2)硬化性含フッ素プレポリマー(I)を溶剤に溶解して調製した溶液に希土類金属化合物(塩もしくは錯体)を添加して混合した後、溶剤を除去する方法、または(3)硬化性含フッ素プレポリマー(I)と希土類金属化合物(塩もしくは錯体など)とを溶融混練する方法、などがあげられる。いずれの場合も、硬化は最終の成形品に加工した後に行なうことが望ましい。
これらの方法のうち、上記(2)の方法が硬化性含フッ素プレポリマー中に希土類金属化合物(塩もしくは錯体など)を均一に分散できる点で最も好適である。特に好適な方法は、前記希土類金属化合物の溶液に硬化性含フッ素プレポリマーを溶解し、得られた均一溶液を昇温して溶媒を留去する方法である。なお、溶媒を留去せず、溶液または分散液の状態の組成物を光学素子形成プロセスにおける溶液の原体として使用してもよい。
本発明の硬化性フッ素樹脂組成物は、含フッ素プレポリマー(I)と希土類金属元素(II)だけでも得られるが、さらに活性エネルギー線硬化開始剤(III)である光ラジカル発生剤(III−1)または光酸発生剤(III−2)を加えて光硬化型の組成物の形態としてもよい。
活性エネルギー線硬化開始剤(III)は、たとえば350nm以下の波長領域の電磁波、つまり紫外線、電子線、X線、γ線などの活性エネルギー線を照射することによって初めてラジカルやカチオン(酸)などを発生し、含フッ素プレポリマーの炭素−炭素二重結合の硬化(架橋反応)を開始させる触媒として働くものであり、通常、紫外線でラジカルやカチオン(酸)を発生させるもの、特にラジカルを発生するものを使用する。
本発明の光増幅材料用または発光材料用のフッ素樹脂組成物によると、前記活性エネルギー線により容易に硬化反応を開始でき、高温で加熱する必要がなく、比較的低温で硬化反応が可能であるので、耐熱性が低く、熱で変形や分解、着色が起こりやすい基材、たとえば透明樹脂基材などにも適応できる点で好ましい。
本発明の組成物における活性エネルギー線硬化開始剤(III)は、含フッ素プレポリマー(I)中の炭素−炭素二重結合の種類(ラジカル反応性か、カチオン(酸)反応性か)、使用する活性エネルギー線の種類(波長域など)と照射強度などによって適宜選択される。
一般に紫外線領域の活性エネルギー線を用いてラジカル反応性の炭素−炭素二重結合を有する含フッ素プレポリマー(I)を硬化させる開始剤(光ラジカル発生剤)としては、たとえばつぎのものが例示できる。
アセトフェノン系
アセトフェノン、クロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、α−アミノアセトフェノンなど
ベンゾイン系
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタールなど
ベンゾフェノン系
ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシ−プロピルベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、ミヒラーケトンなど
チオオキサンソン類
チオキサンソン、クロロチオキサンソン、メチルキサンソン、ジエチルチオキサンソン、ジメチルチオキサンソンなど
その他
ベンジル、α−アシルオキシムエステル、アシルホスフィンオキサイド、グリオキシエステル、3−ケトクマリン、2−エチルアンスラキノン、カンファーキノン、アンスラキノンなど
また、必要に応じてアミン類、スルホン類、スルフィン類などの光開始助剤を添加してもよい。
また、カチオン(酸)反応性の炭素−炭素二重結合を有する含フッ素プレポリマー(I)を硬化させる開始剤(光酸発生剤)としては、つぎのものが例示できる。
オニウム塩
ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩など
スルホン化合物
β−ケトエステル、β−スルホニルスルホンとこれらのα−ジアゾ化合物など
スルホン酸エステル類
アルキルスルホン酸エステル、ハロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、イミノスルホネートなど
その他
スルホンイミド化合物類、ジアゾメタン化合物類など
なお、ラジカル反応性の炭素−炭素二重結合としては、たとえば前記式
Figure 2002072706
などで示されるものが、カチオン反応性の炭素−炭素二重結合としては、たとえば前記式
Figure 2002072706
などのものがあげられる。
本発明の光増幅材料または発光材料に用いるフッ素樹脂組成物は、前記のとおり、含フッ素プレポリマー(I)と希土類金属イオンおよび/または希土類金属を含む化合物(II)からなり、さらに要すれば、活性エネルギー線硬化開始剤を加えて硬化性含フッ素樹脂組成物を形成し、さらに後述する溶剤を含めた塗工用の含フッ素樹脂組成物塗工液に、これらにさらに必要に応じて硬化剤を添加してもよい。
硬化剤としては、炭素−炭素不飽和結合を1つ以上有しかつラジカルまたは酸で重合できるものが好ましく、具体的にはアクリル系モノマーなどのラジカル重合性の単量体、ビニルエーテル系モノマーなどのカチオン重合性の単量体があげられる。これら単量体は、炭素−炭素二重結合を1つ有する単官能であっても炭素−炭素二重結合を2つ以上有する多官能の単量体であってもよい。
これらの炭素−炭素不飽和結合を有するいわゆる硬化剤は、本発明の組成物中の活性エネルギー線硬化開始剤と光などの活性エネルギー線との反応で生じるラジカルやカチオンで反応し、本発明の組成物中の含フッ素プレポリマー(I)の炭素−炭素二重結合と共重合によって架橋を達成することができるものである。
単官能のアクリル系単量体としては、アクリル酸、アクリル酸エステル類、メタクリル酸、メタクリル酸エステル類、α−フルオロアクリル酸、α−フルオロアクリル酸エステル類、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸エステル類のほか、エポキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基などを有する(メタ)アクリル酸エステル類などが例示される。
なかでも硬化物の近赤外透明性を高く維持するために、フルオロアルキル基を有するアクリレート系単量体が好ましく、たとえば一般式:
Figure 2002072706
(XはH、CHまたはF;Rfは炭素数2〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表わされる化合物が好ましい。
具体的には、
Figure 2002072706
(以上、XはH、CHまたはF;nは1〜5の整数)
などがあげられる。
多官能アクリル系単量体としては、ジオール、トリオール、テトラオールなどの多価アルコール類のヒドロキシル基をアクリレート基、メタアクリレート基、α−フルオロアクリレート基に置き換えた化合物が一般的に知られている。
具体的には、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどのそれぞれの多価アルコール類の2個以上のヒドロキシル基がアクリレート基、メタクリレート基、α−フルオロアクリレート基のいずれかに置き換えられた化合物があげられる。
また、含フッ素アルキル基または含フッ素アルキレン基を有する多価アルコールの2個以上のヒドロキシル基をアクリレート基、メタアクリレート基、α−フルオロアクリレート基に置き換えた多官能アクリル系単量体も利用でき、特に硬化物の近赤外透明性を高く維持できる点で好ましい。
具体例としては
Figure 2002072706
(Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基)、
Figure 2002072706
(Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基;RはHまたは炭素数1〜3のアルキル基)、
Figure 2002072706
(以上、Rf’は炭素数1〜40の含フッ素アルキレン基、RはHまたは炭素数1〜3のアルキル基)
などの一般式で示される含フッ素多価アルコール類の2個以上のヒドロキシル基をアクリレート基、メタアクリレート基またはα−フルオロアクリレート基に置き換えた構造のものが好ましくあげられる。
また、これら例示の単官能、多官能アクリル系単量体を硬化剤として本発明の組成物に用いる場合、なかでも特にα−フルオロアクリレート化合物が硬化反応性が良好な点で好ましい。
本発明の光増幅材料用または発光材料用のフッ素樹脂組成物において、活性エネルギー線硬化開始剤の添加量は、含フッ素プレポリマー(I)中の炭素−炭素二重結合の含有量、硬化剤の使用の有無や硬化剤の使用量によって、さらには用いる開始剤、活性エネルギー線の種類や、照射エネルギー量(強さと時間など)によって適宜選択されるが、硬化剤を使用しない場合では、含フッ素プレポリマー(I)100重量部に対して0.01〜30重量部、さらには0.05〜20重量部、最も好ましくは、0.1〜10重量部である。
詳しくは、含フッ素プレポリマー(I)中に含まれる炭素−炭素二重結合の含有量(モル数)に対し、0.05〜50モル%、好ましくは0.1〜20モル%、最も好ましくは、0.5〜10モル%である。
硬化剤を使用する場合は、含フッ素プレポリマー(I)中に含まれる炭素−炭素二重結合の含有量(モル数)と硬化剤の炭素−炭素不飽和結合のモル数の合計モル数に対して0.05〜50モル%、好ましくは0.1〜20モル%、最も好ましくは0.5〜10モル%である。
本発明の組成物には、前述の化合物のほかに、必要に応じて種々の添加剤を配合してもよい。
そうした添加剤としては、たとえばレベリング剤、粘度調整剤、光安定剤、水分吸収剤、顔料、染料、補強剤などがあげられる。
本発明の光増幅用材料または発光用材料に用いるフッ素樹脂組成物は、後述するように、溶剤に溶解または分散させて光増幅用または発光用の各種部材の製造に供される。
ここで溶液の調製に使用する溶剤は、含フッ素プレポリマー(I)、活性エネルギー線硬化開始剤、および必要に応じて添加する硬化剤、レベリング剤、光安定剤などの添加剤が均一に溶解または分散するものであれば特に制限はないが、特に含フッ素プレポリマー(I)を均一に溶解するものが好ましい。
かかる溶剤としては、たとえばメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのセロソルブ系溶剤;ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル−2−ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、酢酸ブチル、酢酸アミル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチルなどのエステル系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどのプロピレングリコール系溶剤;2−ヘキサノン、シクロヘキサノン、メチルアミノケトン、2−ヘプタノンなどのケトン系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶剤;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類あるいはこれらの2種以上の混合溶剤などがあげられる。
またさらに、含フッ素プレポリマー(I)の溶解性を向上させるために、必要に応じてフッ素系の溶剤を用いてもよい。
フッ素系の溶剤としては、たとえばCHCClF(HCFC−141b)、CFCFCHCl/CClFCFCHClF混合物(HCFC−225)、パーフルオロヘキサン、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)、メトキシ−ノナフルオロブタン、1,3−ビストリフルオロメチルベンゼンなどのほか、
Figure 2002072706
などのフッ素系アルコール類;
ベンゾトリフルオライド、パーフルオロベンゼン、パーフルオロ(トリブチルアミン)、ClCFCFClCFCFClなどがあげられる。
これらフッ素系溶剤は単独でも、またフッ素系溶剤同士、非フッ素系とフッ素系の1種以上との混合溶剤として用いてもよい。
これらのなかでもケトン系溶剤、酢酸エステル系溶剤、アルコール系溶剤、芳香族系溶剤などが、塗装性、塗布の生産性などの面で好ましいものである。
本発明のフッ素樹脂組成物は、光硬化させることによって硬化物となり、光増幅器などの光増幅型素子の一部または発光素子の一部を構成する。
この硬化物は、600〜900nmの波長範囲、1290〜1320nmの波長範囲および1530〜1570nmの波長範囲での吸光度係数の最大値が1cm−1以下のものである。
本発明の第2は、以上に説明したフッ素樹脂組成物を硬化させて得られる光増幅材料および該材料をコア部に使用した光増幅型素子に関する。
本発明の第3は、前記フッ素樹脂組成物を硬化させて得られる発光材料および該材料をその一部または全部に使用した発光素子、たとえばコア部に前記発光材料を使用した発光素子に関する。
本発明のフッ素樹脂組成物を用いて光増幅型素子または発光素子を作製する方法としては、フッ素樹脂組成物を適当な溶剤に溶解させて塗布液を調製し、この塗布液を所定の基板上に塗布することで、本発明のフッ素組成物の膜を形成し、つぎに、この膜を定法により光増幅部または発光部の形状にパターニングすることで光増幅部または発光部を形成した後、硬化、好ましくは光硬化する方法が採用できる。活性エネルギー線開始剤を配合するときは、組成物が活性エネルギー線(光)硬化性組成物となるため、光リソグラフィの技術を使用してのパターニングが可能になる。
この光増幅部および発光部のパターンを形成するための本発明の組成物を含む塗布液には、必要に応じて硬化剤、レベリング剤、光安定剤などの添加剤が含まれていてもかまわない。また、塗布液を調製する溶剤としては本発明の組成物を均一に溶解または分散するものであれば特に制限はなく、特に硬化性含フッ素プレポリマー(I)を均一に溶解する前記の汎用溶剤が好ましい。
光増幅型素子とはコア部とクラッド部を有する光導波路デバイスの一種で、基板上に形成された光導波路のコア部中を光信号が通過中に信号強度が増幅される素子のことを一般的にいう。この光増幅型素子ではコア部を光増幅作用をもつ材料で形成する必要がある。
本発明の光増幅型素子はそのコア部(光増幅作用を有する光導波路の部分)を前記の本発明の希土類金属を含むフッ素樹脂組成物で構築したものである。
本発明のフッ素樹脂組成物を光増幅型素子のコア部として使用するには適切なクラッド材が必要となる。クラッド部用材料としてはコア部の材料よりも屈折率の低いものを使用する必要があるが、本発明のフッ素樹脂組成物をコア部として使用する場合、クラッド部用材料は特に制限はなく、既存の有機材料が用いられる。もちろん、前記の硬化性含フッ素プレポリマー(I)をそのまま使用してもよい。
本発明の発光素子とは、たとえばEL素子、ポリマー発光ダイオード、発光ダイオード、光ファイバーレーザー、レーザー素子、光ファイバー、液晶バックライト、光検知器等であり、大型ディスプレイ、照明、液晶、光ディスク、レーザープリンター、医療用レーザー、レーザー加工、印刷、コピー機器等に応用される。
コア部とクラッド部とから構成される発光素子の場合、光増幅型素子と同様に、コア部に本発明の発光材料を使用し、クラッド部には既存の有機材料、たとえば前記の硬化性含フッ素プレポリマー(I)をそのまま使用することができる。
本発明の光増幅型素子および発光素子は、本発明のフッ素樹脂組成物をコア部として使用する以外は、従来公知の製法で作製できる。
光学デバイス(光増幅型素子および発光素子)の一般的な作製工程を図1に示す。まず基板1上に下部クラッド層2を形成する。このクラッド層2はコア層3に対して屈折率が低い材料を用いる。つぎに下部クラッド層2上へ、本発明のフッ素樹脂組成物をコア層3として形成する。さらにコア層3上へフォトマスク4を用いフォトリソグラフ法によって光導波路のマスクパターンを形成する。マスクパターンが形成されたコア層3に対して、RIE(Reactive Ion Etching)法を用いてエッチングを行い光導波路のコアパターン5を形成する。マスクを除去した後、光導波路のコアパターン5上に上部クラッド層6を形成して光学素子デバイス(光増幅型素子および発光素子)が形成される。
また、本発明の光増幅型素子および発光素子は、他の光素子と集積化することでより多機能な光回路を構築することができる。他の光素子としては、光スイッチ、光フィルタ、光分岐素子など任意のものをあげることができる。特に、本発明の光増幅型素子と、該光増幅型素子のコア部の出力端に接続され該コア部と同じ材料で構成されたN分岐導波路(Nは2以上の整数)を含む光分岐素子とを同一基板に一体に具える光回路は、光損失の少ない分岐素子となり得るので、好ましい。
つぎに合成例、実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
合成例1(OH基を有する含フッ素アリルエーテルのホモポリマーの合成)
撹拌装置温度計を備えた100mlのガラス製四ツ口フラスコに、パーフルオロ−(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノール):
Figure 2002072706
を20.4gと
Figure 2002072706
の8.0重量%パーフルオロヘキサン溶液を21.2g入れ、充分に窒素置換を行なったのち、窒素気流下20℃で24時間撹拌を行なったところ、高粘度の固体が生成した。
得られた固体をジエチルエーテルに溶解させたものをパーフルオロヘキサンに注ぎ、分離、真空乾燥させ、無色透明な重合体17.6gを得た。
この重合体を19F−NMR、H−NMR分析、IR分析により分析したところ、上記含フッ素アリルエーテルの構造単位のみからなり側鎖末端にヒドロキシル基を有する含フッ素重合体であった。また、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒に用いるGPC分析により測定した数平均分子量は9000、重量平均分子量は22000であった。
合成例2(OH基を有する含フッ素アリルエーテルの共重合体の合成)
撹拌装置温度計を備えた100mlのガラス製四ツ口フラスコに、パーフルオロ−(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノール):
Figure 2002072706
を9.6gと
9H,9H−パーフルオロ−2,5−ジメチル−3,6−ジオキサ−8−ノネノイック酸メチル:
Figure 2002072706
を9.6gいれ、よく攪拌し、
Figure 2002072706
の8.0重量%パーフルオロヘキサン溶液を2.0g入れ、充分に窒素置換を行なったのち、窒素気流下20℃で20時間撹拌を行なったところ、高粘度の固体が生成した。
得られた固体をアセトンに溶解させたものを、HCFC225/n−ヘキサン=1/1溶液に注ぎ、分離、真空乾燥させ、無色透明な重合体15.5gを得た。
この重合体を19F−NMR、H−NMR分析、IR分析により分析したところ、上記のヒドロキシル基含有含フッ素アリルエーテルと、メチルエステル構造を有する含フッ素アリルエーテルの構造単位からなる含フッ素共重合体であった。その組成比はNMRより、42:58(モル比)と求められた。
また、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒に用いるGPC分析により測定した数平均分子量は7200、重量平均分子量は11000であった。
合成例3(α−フルオロアクリロイル基を有する硬化性含フッ素プレポリマーの合成)
環流冷却器、温度計、撹拌装置、滴下漏斗を備えた200ml四ツ口フラスコに、ジエチルエーテル80ml、合成例1で得たヒドロキシル基含有含フッ素アリルエーテルの単独重合体5.0gと、ピリジン2.0gを仕込み5℃以下に氷冷した。
窒素気流下、撹拌を行ないながら、さらにα−フルオロアクリル酸フルオライド:CH=CFCOFの2.0gをジエチルエーテル20mlに溶解したものを約30分間かけて滴下した。
滴下終了後、室温まで温度を上げさらに4.0時間撹拌を継続した。
反応後のエーテル溶液を分液漏斗に入れ、水洗、2%塩酸水洗浄、5%NaCl水洗浄、さらに水洗をくり返したのち、無水硫酸マグネシウムで乾燥しついでエーテル溶液を濾過により分離して、硬化性含フッ素プレポリマーを得た。
このエーテル溶液を19F−NMR分析により調べたところ、転化率はほぼ100%であった。
NaCl板に塗布し、室温にてキャスト膜としたものをIR分析したところ、炭素−炭素二重結合の吸収が1661cm−1に、C=O基の吸収が1770cm−1に観測された。
合成例4(α−フルオロアクリロイル基を有する硬化性含フッ素プレポリマーの合成)
合成例2で得たヒドロキシル基含有含フッ素アリルエーテルの共重合体を用い、合成例3と同様にして、硬化性含フッ素プレポリマー(エーテル溶液)を合成した。
得られたプレポリマーを19F−NMRにより調べたところ、転化率がほぼ100%であった。
IR分析において、炭素−炭素二重結合とC=O基の吸収がいずれも合成例3と同様の位置に確認された。
参考例1〜2(硬化物の物性)
(1)フッ素樹脂組成物の調製
合成例3および合成例4で得たα−フルオロアクリロイル基を有する硬化性含フッ素プレポリマー(エーテル溶液)にメチルエチルケトン(MEK)を加えたのち、エーテルをエヴァポレーターにより留去し、ポリマー濃度50重量%に調整した。
得られたポリマー溶液10gに活性エネルギー線硬化開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンを0.1g加えた。
(2)硬化性含フッ素プレポリマーの屈折率の測定
硬化性含フッ素プレポリマーの8%MEK溶液(前述の(1)において硬化開始剤を添加する前のポリマー溶液)をアプリケーターを用いポリエステルフィルム上に乾燥後膜厚が約100μmとなるように塗布し、50℃で10分間真空乾燥後、得られたキャストフィルムをポリエステルフィルムから剥離し、アッベ屈折計を用いて25℃で550nmの波長の光について屈折率を測定した。結果を表1に示す。
(3)硬化フィルムの屈折率の測定
前記(1)で調製した組成物をアルミ箔上にアプリケーターを用いて膜厚が約100μmとなるように塗布し、50℃で10分間真空乾燥した。乾燥後の未硬化フィルムに高圧水銀灯を用い、室温にて1000mJ/cmUの強度で紫外線を照射したのち、アルミ箔を希塩酸で溶かし、硬化フィルムとした。得られた硬化フィルムを前記(2)と同様にして屈折率を測定した。
(4)光透過率の測定
前記(1)で調製した組成物をアルミ箔上にアプリケーターを用いて膜厚が約1mmとなるように塗布し、50℃で10分間真空乾燥した。乾燥後の未硬化フィルムに高圧水銀灯を用い、室温にて1000mJ/cmUの強度で紫外線を照射したのち、アルミ箔を希塩酸で溶かし、硬化フィルムとした。得られた硬化フィルムの光吸収を日立製作所製の分光光度計U3410によって、波長650nm、1310nmと1550nmにて測定した。結果を表1に示す。
(5)溶剤溶解性の測定
前記(4)で調製した未硬化フィルムに紫外線を照射(1000mJ/cmU、室温)し、光照射の前後での溶剤溶解性を比較した。結果を表1に示す。
作製したフィルム状のサンプルをアセトンに浸漬し、室温で1時間経過後の状態を目視で観察し、つぎの基準で評価した。
○:外観に変化が認められない。
×:アセトン中に溶解した。
(6)熱的特性(DSC)の測定
前記(4)で調製した未硬化フィルムおよび硬化フィルムについて、示差熱量計((株)島津製作所製のDSC−50)を用い、昇温速度10℃/分の条件で熱的特性を測定したところ、いずれのフィルムにも明確な結晶融点を示すピークがなく、いずれのフィルムも非晶性であった。
(7)耐熱性の評価
温度150℃において前記(4)で調製した硬化フィルムを1時間保持し、形態の変化を観察し、つぎの基準で評価した。結果を表1に示す。
○:外観に変化が認められない。
×:フィルムが最初の形状を維持できなかった。
(8)熱分解温度の測定
前記(4)で調製した硬化フィルムについて、熱重量計((株)島津製作所製のTGA−50)を用い、窒素雰囲気の条件で昇温速度10℃/minの条件で測定し、10%重量減の温度で評価した。結果を表1に示す。
比較参考例1
合成例3で得たα−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素ポリマーの未硬化物に関し表1に示す各物性を調べた。結果を表1に示す。
Figure 2002072706
以上により、本発明に用いる硬化性含フッ素樹脂は透明性が高く、耐熱性があり、光硬化が可能で、フォトリソグラフが可能な材料であることがわかる。
実施例1(希土類金属含有フッ素樹脂組成物の製造)
撹拌装置および温度計を備えた100mlのガラス製四ツ口フラスコに、合成例3で得たα−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素アリルエーテルのホモポリマー2.00gとメタノール15gを入れ、攪拌しながら、酢酸ユウロピウム(III)四水和物(Eu(CHCOO)・4HO)0.60g(1.50mmol)を8gの水に溶かしたものを、5分間かけて滴下した。滴下後2時間攪拌を続けた後、30分間静置し生成した粘性の固体を沈殿させた。上澄みのメタノール溶液をデカンテーションして除き、アセトンで3回、固体を洗浄した。その後、60℃で12時間真空乾燥し、本発明の希土類金属含有フッ素樹脂組成物を無色透明の固体として1.82g得た。
実施例2(希土類金属含有フッ素樹脂組成物の製造)
撹拌装置および温度計を備えた100mlのガラス製四ツ口フラスコに、合成例3で得たα−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素アリルエーテルのホモポリマー1.98gとメタノール15gを入れ、攪拌しながら、塩化エルビウム六水和物(ErCl・6HO)0.61g(1.61mmol)を3gのメタノールに溶かしたものを、5分間かけて滴下した。滴下後2時間攪拌を続けた後、溶液をエバポレータで濃縮しながら60℃まで加熱し、1時間加熱を続け、本発明の希土類金属含有フッ素樹脂組成物を淡桃色の固体として2.08g得た。
実施例3(希土類金属含有フッ素樹脂組成物の製造)
合成例4で得たα−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素アリルエーテルの共重合体を用いた以外は実施例1と同様にして本発明の希土類金属含有フッ素樹脂組成物を無色透明の固体として1.78g得た。
実施例4〜7(IR分析による硬化反応性の確認)
(1)コーティング用フッ素樹脂組成物の調製
実施例1〜3で得た硬化性含フッ素プレポリマーの硬化性組成物を用いて、参考例1と同様な操作を行ない、表2に示すポリマー濃度、活性エネルギー線硬化開始剤量となるようにコーティング組成物をそれぞれ調製した。
(2)IR分析用フィルムの作製
上記のコーティング組成物をアプリケーターを用いてポリエステルフィルムに乾燥後膜厚が約100μmとなるように塗布し、50℃で5分間乾燥後、得られた未硬化フィルムをポリエステルフィルムから剥離させ、未硬化キャストフィルムを得た。
(3)IR分析による硬化反応性の測定
上記未硬化フィルムについてIR分析を行なったところ、1661cm−1にポリマー中の炭素−炭素二重結合の吸収が観測された。
(4)硬化反応率の測定
炭素−炭素二重結合の吸収に着目し、光照射後の吸収強度の変化を観測し、硬化反応率を下式にしたがって算出した。
Figure 2002072706
すなわち、高圧水銀灯を用い室温にて、表2に示す照射量で(2)で得られた未硬化フィルムに紫外線照射を行ない硬化フィルムを得た。また照射量を変化させて、上式で表わされる硬化反応率を算出した。結果を表2に示す。
Figure 2002072706
合成例5(α−フルオロアクリル基を有する硬化性含フッ素プレポリマーの合成)
α−フルオロアクリル酸フルオライド(CH=CFCOF)を2.0g、ピリジンを2.0g用いた以外は合成例3と同様にして硬化性含フッ素プレポリマー(エーテル溶液)を合成した。
このプレポリマーのエーテル溶液を19F−NMR分析により調べたところ、
Figure 2002072706
の共重合体であった。
IR分析において、炭素−炭素二重結合とC=O基の吸収がいずれも合成例3と同様の位置に確認された。また、フッ素含有率は56重量%であり、DSCによる分析により非晶性であることが確認された。
実施例8(希土類金属含有フッ素樹脂組成物の製造)
合成例5で得たα−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素アリルエーテルの共重合体を用いた以外は実施例1と同様にして希土類金属含有フッ素樹脂組成物として、無色透明の固体約2gを得た
実施例9〜11(IR分析による硬化反応性の確認)
(1)光硬化フッ素樹脂組成物の調製
実施例8で得た硬化性フッ素樹脂組成物を用いて、参考例1と同様な操作を行ない、表3に示すポリマー濃度、活性エネルギー線硬化開始剤の種類、活性エネルギー線硬化開始剤量となるように組成物をそれぞれ調製した。
(2)IR分析用フィルムの作製
実施例4と同様にして作製した。
(3)IR分析による硬化反応率の測定
実施例4と同様にして、光照射量1500mJ/cm照射したときの硬化反応率を算出した。結果を表3に示す。
実施例12
実施例9で得た光硬化組成物に、さらに硬化剤として
Figure 2002072706
をポリマーに対して20重量%となるように添加し、光硬化性フッ素樹脂組成物を製造した。
この樹脂組成物を用いて実施例9と同様にしてIR分析用フィルムを作製し、硬化反応率の測定を行なった。結果を表3に示す。
Figure 2002072706
合成例6(OH基を有する含フッ素アリルエーテルのホモポリマーの合成)
合成例1において、パーフルオロ−(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノール)を20.0gと
Figure 2002072706
の8.0重量%パーフルオロヘキサン溶液を10.0gを用いた以外は合成例1と同様にして合成し、得られたポリマーの精製を行ない、無色透明な重合体18.2gを得た。
この重合体を19F−NMR、H−NMR分析、IR分析により分析したところ、上記含フッ素アリルエーテルの構造単位のみからなり側鎖末端にヒドロキシル基を有する含フッ素重合体であった。また、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒に用いるGPC分析により測定した数平均分子量は30000、重量平均分子量は59000であった。
合成例7(OH基を有する含フッ素アリルエーテルとフッ化ビニリデンの共重合体の合成)
バルブ、圧力ゲージ、温度計を備えた300ml内容量のステンレススチール製オートクレーブに、パーフルオロ(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネール)を34.2gとCHCClF(HCFC−141b)を200g、ジノルマルプロピルパーオキシカーボネート(NPP)の50重量%メタノール溶液を0.16g入れ、ドライアイス/メタノール溶液で冷却しながら系内をチッ素ガスで充分置換した。ついでバルブからフッ化ビニリデン(VdF)を5.8g仕込み、40℃にて振とうさせながら反応を行なった。反応の進行とともに、系内のゲージ圧が反応前の4.4MPaG(4.5kgf/cmG)から12時間後に0.98MPaG(1.0kgf/cmG)まで低下した。
この時点で未反応モノマーを放出し、析出した固形物を取り出し、アセトンに溶解させ、ついでヘキサンとトルエンの混合溶剤(50/50)で再沈殿させることにより共重合体を分離した。この共重合体を恒量になるまで真空乾燥し、共重合体31.2gを得た。
この共重合体の組成比は、H−MNR分析および19F−NMR分析により分析したところ、VdF/OH基含有含フッ素アリルエーテルが55/45(モル%)であった。また、THFを溶媒として用いるGPC分析により測定した数平均分子量は12000、重量平均分子量は18000であった。
合成例8(含フッ素活性エネルギー線硬化開始剤の合成)
環流冷却器、温度計、撹拌装置、滴下漏斗を備えた200ml四ツ口フラスコに、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンを2.0g、ピリジンを1.0g、CFCFCHCl/CClFCFCHClF混合物(HCFC−225)を20g仕込み5℃以下に氷冷した。
窒素気流下、撹拌を行ないながら、
Figure 2002072706
の2.5gを1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに4.0時間撹拌を継続した。
反応後のエーテル溶液を分液漏斗に入れ、2%塩酸水洗浄、5%NaCl水洗浄を行なって有機層を分取し、無水硫酸マグネシウムで乾燥したのち蒸留により生成物2.6gを単離した(収率62%)。
得られた生成物をH−NMR分析、19F−NMR分析およびIR分析により調べたところ、
Figure 2002072706
であった。
合成例9(α−フルオロアクリロイル基を有する硬化性含フッ素プレポリマーの合成)
環流冷却器、温度計、撹拌装置、滴下漏斗を備えた200ml四ツ口フラスコに、メチルエチルケトン(MEK)40ml、合成例2で得たヒドロキシル基含有含フッ素アリルエーテルの単独重合体5.0gと、ピリジン2.0gを仕込み5℃以下に氷冷した。
窒素気流下、撹拌を行ないながら、さらにα−フルオロアクリル酸フルオライド1.2gを約30分間かけて滴下した。滴下終了後、室温まで温度を上げさらに4.0時間撹拌を継続した。
反応後のMEK溶液を分液漏斗に入れ、水洗、2%塩酸水洗浄、5%NaCl水洗浄、さらに水洗をくり返し、有機層を分取したのち、無水硫酸マグネシウムで乾燥して硬化性含フッ素プレポリマーを得た。濾過後のポリマー濃度は10.7重量%であった。
このプレポリマーのMEK溶液を19F−NMR分析により調べたところ、
Figure 2002072706
であった。
また合成例3と同様にしてIR分析を行なったところ、炭素−炭素二重結合の吸収が1660cm−1に、C=Oの吸収が1770cm−1に観測された。また、フッ素含有率は56重量%であり、DSCによる分析により非晶性であることが確認された。
合成例10(α−フルオロアクリロイル基を有する硬化性含フッ素プレポリマーの合成)
合成例7で得たOH基含有含フッ素アリルエーテルとVdFの共重合体を5.0gとピリジンを2.2g、α−フルオロアクリル酸フルオライドを2.0g用いた以外は合成例9と同様にして硬化性含フッ素プレポリマー(MEK溶液)を合成した。ポリマー濃度は9.9重量%であった。
このプレポリマーを19F−NMRにより調べたところ、転化率はほぼ100%であった。また、フッ素含有率は56重量%であり、DSCによる分析により非晶性であることが確認された。
実施例13
(1)希土類金属含有光硬化性フッ素樹脂組成物の調製
合成例9で得た硬化性含フッ素ポリマー(MEK溶液)にさらにMEKを加えてポリマー濃度を8重量%に調整した。さらにEu−アセチルアセトン錯体を溶解させその錯体濃度を1重量%になるように調整し、溶液とした。
この希土類金属含有フッ素樹脂組成物のMEK溶液に活性エネルギー線硬化開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンをポリマーに対して2.0重量%となるように添加したところ、白濁して相溶しなかった。
そこで、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンに代えて合成例8で得た含フッ素活性エネルギー線硬化開始剤をポリマーに対して3.6重量%となるように添加したところ相溶し、無色透明の溶液になった。これを本発明の希土類金属含有光硬化性フッ素樹脂組成物とした。
(2)光硬化性組成物の評価
前記(1)で調製した活性エネルギー線硬化開始剤配合の光硬化性フッ素樹脂組成物をアプリケーターを用いて種々の厚さの未硬化フィルムを作製し、高圧水銀灯を用い、室温にて3000mJ/cmUの強度で紫外線を照射して、硬化フィルムを得た。得られた硬化フィルムに関し、つぎの測定を行なった。
▲1▼蛍光スペクトルの測定
自記分光光度計((株)日立製作所製のU−34110)により、300〜1700nmの波長領域の吸光スペクトルを測定し、吸光度のピークに相当する吸光波長を求め、つぎの蛍光測定の励起波長とした。ユーロピウムを含む試料では、上記の吸光スペクトル測定で得られたユーロピウム由来の吸光波長を励起波長とし、蛍光光度計((株)日立製作所製のF−3040)により、300〜700nmの波長領域の蛍光スペクトルを測定した。エルビウムを含む試料では、1500nm付近の近赤外領域の蛍光を発生することが知られているので、近赤外カメラ(浜松ホトニクス(株)製のC−5840)により、近赤外蛍光の有無を観察した。結果を表4に示す。
▲2▼屈折率の測定
アッベ屈折計を用いて25℃で550nmの波長の光について屈折率を測定した。結果を表4に示す。
▲3▼希土類金属陽イオンの含有量
試料約2gを精秤し、600℃の電気炉内で完全に灰化させた残差の重量分率より算出した。結果を表4に示す。
▲4▼蛍光寿命の測定
硬化フィルムの発光寿命(パルス励起直後の発光強度が、その37%まで減少するのに要する時間)を測定したところ、約0.8msであった。この発光寿命は、通常の色素系化合物(例えばフルオレセイン、ローダミン等)の場合に比べ、10〜10倍程度長いことから、光増幅作用を起こすのに必要な反転分布状態を容易に形成できることを示している。
▲5▼耐久試験
硬化フィルムを温度80℃、湿度85%の環境下で1週間保存したが、透明性は全く低下しなかった。
実施例14
(1)希土類金属含有光硬化性フッ素樹脂組成物の調製
合成例10で得た硬化性含フッ素プレポリマー(MEK溶液)にさらにMEKを加えてポリマー濃度を8重量%に調整した。さらにEr−アセチルアセトン錯体を溶解させその錯体濃度を1重量%になるように調整し、溶液とした。この硬化性含フッ素プレポリマーのMEK溶液に活性エネルギー線硬化開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンをポリマーに対して6.7重量%となるように添加したところ相溶し、無色透明の溶液となった。これを本発明の希土類金属含有光硬化性フッ素樹脂組成物とした。
(2)光硬化用組成物の評価
活性エネルギー線硬化開始剤配合の光硬化性フッ素樹脂組成物をアプリケーターを用いて種々の厚さの未硬化フィルムを作製し、高圧水銀灯を用い、室温にて3000mJ/cmUの強度で紫外線を照射して、硬化フィルムを得た。得られた硬化フィルムに関し、実施例13と同様な試験を行なった。結果を表4に示す。
Figure 2002072706
実施例15(光増幅型素子の作製)
光増幅型素子の形成は以下の手順で行なった。
コア部用材料として実施例1で調製したフッ素樹脂組成物を用い、クラッド部用材料として合成例1で調製した含フッ素プレポリマーを用いて光増幅型素子を作製した。
これら2種の材料をそれぞれメチルイソブチルケトンに溶かし溶液とした。まず、クラッド部用材料をプラスチック基板あるいはシリコン基板上に約15μmの厚さに塗布した。これをベークし、乾燥処理した後、クラッド部用材料の膜上にコア部用材料を約8μmの厚さに塗布した。つぎに、ホトマスクを介して光照射を行い、コア部用の膜を硬化させた。その後、コア部用膜の未硬化の部分を溶剤で洗い流し、コア部として長さ50mm、幅8μm、高さ8μmの直線矩形パターンに加工した。加工後、クラッド部を図1にしたがって説明したように、コア部上に塗布して光増幅型素子を作製した。
つぎに、作製した光増幅型素子の伝播損失の測定を、コア部に波長633nmの光を通すことによって、伝播損失の測定を行った。その結果、0.3dB/cmであった。
また、このように形成した光増幅型素子に紫外線ランプを照射し光増幅型素子の主面上方より観察したところ、コア部に対応する線状のEuイオンに特有な赤色発光パターンが観察できた。このことはコア部にのみ、光増幅作用に必要な希土類Euイオンが含有されていることを示している。
合成例11(Eu(HFA)の合成)
酢酸ユーロピウム(Eu(CHCOO)・4HOの2.0g(5mmol)とヘキサフルオロアセチルアセトン(CFCOCHOCCF)HFAの4.53g(30mmol)を水メタノール混合溶媒(水8ml、メタノール3ml)中、50℃で4時間攪拌した。反応途中に、溶液のpHを中性にするために、アンモニア水をpHが7になるまで滴下した。反応溶液が中性に近づくにつれて、沈殿量は増加した。得られた粗生成物をクロロホルム、エタノールで2回再結晶した。再結晶後の錯体を2日間減圧乾燥し、DTGAの結果より水和数は2と決定した。続いて元素分析を行い、目的の錯体が合成されていることを確認した。以後、これをEu(HFA)と略する。
合成例12(ヒドロキシル基を有する含フッ素アリルエーテルのコポリマーの合成)
撹拌装置および温度計を備えた100mlのガラス製四ツ口フラスコに、パーフルオロ−(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノール)
Figure 2002072706
を20.0g入れ、よく撹拌し、
Figure 2002072706
の8.0重量%パーフルオロヘキサン溶液を12.9g入れ、充分に窒素置換を行なったのち、窒素気流下30℃で5時間撹拌を行なったところ、高粘度の固体が生成した。
得られた固体をアセトンに溶解させたものをHCFC−141b(CHCClF)/ヘキサン混合溶媒(HCFC−141b/ヘキサン=1/9容量%)に注ぎ、分離、真空乾燥させ、無色透明な重合体18.0gを得た。
この重合体を19F−NMR、H−NMR分析、IR分析により分析したところ、上記含フッ素アリルエーテルの構造単位のみからなり側鎖末端にケトン基およびヒドロキシル基を有する含フッ素重合体であった。また、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒に用いるGPC分析により測定した数平均分子量は6700、重量平均分子量は9200であった。
合成例13(α−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素アリルエーテルのコポリマーの合成)
環流冷却器、温度計、撹拌装置、滴下漏斗を備えた100mlの四つ口フラスコにMIBK20ml、合成例12で得たヒドロキシル基を含有する含フッ素アリルエーテル共重合体5.0gとピリジン0.94gを仕込み5℃以下に氷冷した。
窒素気流下、撹拌を行いながら、さらにα−フルオロアクリル酸フルオライド(CH=CFCOF)の1.0gをMIBK20mlに溶解したものを約15分間かけて滴下した。
滴下終了後、室温まで温度を上げさらに4.5時間撹拌を継続した。
反応後のエーテル溶液を分液漏斗に入れ、1N炭酸水素ナトリウム水溶液、1N塩酸、飽和食塩水、さらに水洗を繰り返した後に、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、硬化性部位を有する含フッ素アリルエーテルのコポリマーを得た。
このコポリマーのMIBK溶液を19F−NMR分析により調べたところ、転化率はほぼ50%であり、フッ素含有率は58重量%であった。IR分析により炭素−炭素二重結合の吸収が1661cm−1に観測された。
またDSCによる分析により非晶性であることが確認された。
実施例16(硬化フィルムの作製)
合成例13で得られた硬化性部位(α−フルオロアクリロイル基)を有する含フッ素プレポリマー(MIBK溶液)にMIBKを加え、ポリマー濃度を50重量%に調整した。その溶液に合成例11で得られたEu(HFA)を加え、ユーロピウムイオン濃度がポリマーに対して1重量%になるように調整した。次に、この溶液10gに活性エネルギー線硬化開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンを0.1g加えた。
溶液は無色透明であった。また、アルミ箔上にアプリケーターを用いて膜厚が約100μmとなるように塗布し、50℃で10分間真空乾燥した。乾燥後の未硬化フィルムに高圧水銀灯を用い、1000mJ/cmUの強度で紫外線を照射したのち、アルミ箔を希塩酸で溶かし、硬化フィルムとした。
得られた硬化フィルムは無色透明で、ユーロピウムの励起波長である394nmの光を照射したところ赤色に発光した。また、615nm帯の発光の面積強度を蛍光分光器((株)日立製作所製のF−4010)により励起波長394nmにて測定したところ、基準の塩化ユーロピウムの濃度の水溶液中における面積強度1に対して、約70という高い値を示した。
合成例14(CO基およびヒドロキシル基を有する含フッ素アリルエーテルのコポリマーの合成)
撹拌装置および温度計を備えた100mlのガラス製四ツ口フラスコに、3H,12H,12H−パーフルオロ−5,8−ジメチル−6,9−ジオキサ−3−トリフルオロアセチル−11−ドデセン−2,4−ジオン(CO基含有含フッ素アリルエーテル):
Figure 2002072706
を10.0gと、パーフルオロ−(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノール):
Figure 2002072706
を10.2g入れ、よく撹拌し、
Figure 2002072706
の8.0重量%パーフルオロヘキサン溶液を9.8g入れ、充分に窒素置換を行なったのち、窒素気流下30℃で5時間撹拌を行なったところ、高粘度の固体が生成した。
得られた固体をアセトンに溶解させたものをパーフルオロヘキサンに注ぎ、分離、真空乾燥させ、無色透明な重合体14.7gを得た。
この重合体を19F−NMR、H−NMR分析、IR分析により分析したところ、上記含フッ素アリルエーテルの構造単位のみからなり側鎖末端にケトン基およびヒドロキシル基を有する含フッ素重合体であった。
この含フッ素重合体を19F−NMR分析により調べたところ、
Figure 2002072706
であった。
また、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒に用いるGPC分析により測定した数平均分子量は3200、重量平均分子量は4200であった。
合成例15(CO基および硬化性部位を有する含フッ素アリルエーテルのコポリマーの合成)
環流冷却器、温度計、撹拌装置、滴下漏斗を備えた200mlの四つ口フラスコにジエチルエーテル80ml、合成例14で得たCO基およびOH基を含有する含フッ素アリルエーテル共重合体5.1gとピリジン2.1gを仕込み5℃以下に氷冷した。
窒素気流下、撹拌を行いながら、さらにα−フルオロアクリル酸フルオライド(CH=CFCOF)の2.0gをジエチルエーテル20mlに溶解したものを約30分間かけて滴下した。
滴下終了後、室温まで温度を上げさらに4.5時間撹拌を継続した。
反応後のエーテル溶液を分液漏斗に入れ、水洗、2%塩酸水洗浄、5%NaCl水洗浄、さらに水洗を繰り返した後に、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ついでエーテル溶液を濾過により分離し、CO基および硬化性部位を有する含フッ素アリルエーテルのコポリマーを得た。
このエーテル溶液を19F−NMR分析により調べたところ、転化率はほぼ100%であり、フッ素含有率は57重量%であった。IR分析により炭素−炭素二重結合の吸収が1661cm−1に観測された。またDSCによる分析により非晶性であることが確認された。
実施例17(硬化フィルムの作製)
合成例9で得られたCO基および硬化性部位(α−フルオロアクリロイル基)を有する含フッ素プレポリマー(エーテル溶液)にMEKを加えたのちに、エーテルをエバポレーターにより留去し、ポリマー濃度50重量%に調整した。その溶液に塩化ユーロピウムを加え、ユーロピウムイオン濃度がポリマーに対して5重量%になるように調整した。次に、この溶液10gに活性エネルギー線硬化開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンを0.1g加えた。
溶液は無色透明であった。また、アルミ箔上にアプリケーターを用いて膜厚が約100μmとなるように塗布し、50℃で10分間真空乾燥した。乾燥後の未硬化フィルムに高圧水銀灯を用い、1000mJ/cmUの強度で紫外線を照射したのち、アルミ箔を希塩酸で溶かし、硬化フィルムとした。
得られた硬化フィルムは無色透明で、ユーロピウムの励起波長である394nmの光を照射したところ赤色に強く発光した。
産業上の利用可能性
本発明によれば、可視光から近赤外領域での透明性を維持しながら、特定の含フッ素ポリマーにより希土類金属イオンと安定な構造を形成した好適な光増幅材料および発光材料を得ることができる。このフッ素樹脂組成物を用いるときは、比較的簡単な工程で優れた光増幅型素子および発光素子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の光増幅型素子または発光素子を製造する工程図である。

Claims (31)

  1. (I)含フッ素プレポリマーと(II)希土類金属イオンおよび/または希土類金属元素を含む化合物とからなる組成物であって、含フッ素プレポリマー(I)が、
    (1)フッ素含有率が25重量%以上の非晶性ポリマーであり、かつ
    (2)ポリマーの側鎖中および/またはポリマー主鎖末端に硬化性の部位を有する
    ことを特徴とするフッ素樹脂組成物。
  2. (I)含フッ素プレポリマーと(II)希土類金属イオンおよび/または希土類金属元素を含む化合物とからなる組成物であって、含フッ素プレポリマー(I)が、
    (1)フッ素含有率が25重量%以上の非晶性ポリマーであり、かつ
    (2)ポリマーの側鎖中および/またはポリマー主鎖末端に硬化性の部位を有する
    ことを特徴とする光増幅材料に用いるフッ素樹脂組成物。
  3. (I)含フッ素プレポリマーと(II)希土類金属イオンおよび/または希土類金属元素を含む化合物とからなる組成物であって、含フッ素プレポリマー(I)が、
    (1)フッ素含有率が25重量%以上の非晶性ポリマーであり、かつ
    (2)ポリマーの側鎖中および/またはポリマー主鎖末端に硬化性の部位を有する
    ことを特徴とする発光材料に用いるフッ素樹脂組成物。
  4. 含フッ素プレポリマー(I)のフッ素含有率が40重量%以上である請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載のフッ素樹脂組成物。
  5. 含フッ素プレポリマー(I)が、1290〜1320nmの波長範囲での吸光度係数の最大値が1cm−1以下のポリマーである請求の範囲第1項〜第4項のいずれかに記載のフッ素樹脂組成物。
  6. 含フッ素プレポリマー(I)が、1530〜1570nmの波長範囲での吸光度係数の最大値が1cm−1以下のポリマーである請求の範囲第1項〜第5項のいずれかに記載のフッ素樹脂組成物。
  7. 含フッ素プレポリマー(I)が、600〜900nmの波長範囲での吸光度係数の最大値が1cm−1以下のポリマーである請求の範囲第1項〜第6項のいずれかに記載のフッ素樹脂組成物。
  8. 含フッ素プレポリマー(I)の硬化性部位が炭素−炭素二重結合である請求の範囲第1項〜第7項のいずれかに記載のフッ素樹脂組成物。
  9. 含フッ素プレポリマー(I)が、そのポリマー側鎖末端に炭素−炭素二重結合を有する請求の範囲第8項記載のフッ素樹脂組成物。
  10. 炭素−炭素二重結合がラジカル反応性を有するエチレン性炭素−炭素二重結合である請求の範囲第8項または第9項記載のフッ素樹脂組成物。
  11. 炭素−炭素二重結合がカチオン反応性を有するエチレン性炭素−炭素二重結合である請求の範囲第8項または第9項記載のフッ素樹脂組成物。
  12. 含フッ素プレポリマー(I)が硬化性部位を有する含フッ素エチレン性単量体の繰り返し単位を含む重合体である請求の範囲第1項〜第11項のいずれかに記載のフッ素樹脂組成物。
  13. 含フッ素プレポリマー(I)が、式(1):
    Figure 2002072706
    [式中、構造単位Mは式(M):
    Figure 2002072706
    (式中、XおよびXは同じかまたは異なり、HまたはF;XはH、F、CHまたはCF;XおよびXは同じかまたは異なり、H、FまたはCF;Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にY(Yは末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基)が1〜3個結合している有機基;aは0〜3の整数;bおよびcは同じかまたは異なり、0または1)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位、構造単位Aは該構造単位Mを与える含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位である]で示され、構造単位Mを0.1〜100モル%および構造単位Aを0〜99.9モル%含む数平均分子量500〜1000000の含フッ素ポリマーである請求の範囲第1項〜第12項のいずれかに記載のフッ素樹脂組成物。
  14. 含フッ素プレポリマー(I)が、式(1)の重合体であり、構造単位Mが式(M1):
    Figure 2002072706
    (式中、XおよびXは同じかまたは異なり、HまたはF;XはH、F、CHまたはCF;XおよびXは同じかまたは異なり、H、FまたはCF;Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にY(Yは末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基)が1〜3個結合している有機基;aは0〜3の整数;cは0または1)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位M1である請求の範囲第13項記載のフッ素樹脂組成物。
  15. 含フッ素プレポリマー(I)が、式(1)の重合体であり、構造単位Mが式(M2):
    Figure 2002072706
    (式中、Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にY(Yは末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基)が1〜3個結合している有機基)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位M2である請求の範囲第13項記載のフッ素樹脂組成物。
  16. 含フッ素プレポリマー(I)が、式(1)の重合体であり、構造単位Mが式(M3):
    Figure 2002072706
    (式中、Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にY(Yは末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基)が1〜3個結合している有機基)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位M3である請求の範囲第13項記載のフッ素樹脂組成物。
  17. 前記式(M)、(M1)、(M2)および(M3)におけるRf中のYの少なくとも1つが、Rfの末端に結合している請求の範囲第13項〜第16項のいずれかに記載のフッ素樹脂組成物。
  18. 前記式(M)、(M1)、(M2)および(M3)におけるRf中のYが、
    Figure 2002072706
    (式中、Yは末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜5のアルケニル基または含フッ素アルケニル基;dおよびeは同じかまたは異なり、0または1)である請求の範囲第17項記載のフッ素樹脂組成物。
  19. 前記式(M)、(M1)、(M2)および(M3)におけるRf中のYが、
    Figure 2002072706
    (式中、XはH、F、CHまたはCF;XおよびXは同じかまたは異なり、HまたはF)である請求の範囲第18項記載のフッ素樹脂組成物。
  20. 請求の範囲第1項〜第19項のいずれかに記載の含フッ素プレポリマー(I)と(II−1)希土類金属イオンからなるフッ素樹脂組成物。
  21. 請求の範囲第1項〜第19項のいずれかに記載の含フッ素プレポリマー(I)と(II−2)希土類有機金属錯体からなるフッ素樹脂組成物。
  22. (I)含フッ素プレポリマーおよび(II)希土類金属イオンおよび/または希土類金属元素を含む化合物に加え、(III)活性エネルギー線硬化開始剤を含む請求の範囲第1項〜第21項のいずれかに記載のフッ素樹脂組成物。
  23. 含フッ素プレポリマー(I)が請求の範囲第10項記載の含フッ素プレポリマーであり、活性エネルギー線硬化剤(III)が光ラジカル発生剤(III−1)である請求の範囲第22項記載のフッ素樹脂組成物。
  24. 含フッ素プレポリマー(I)が請求の範囲第11項記載の含フッ素プレポリマーであり、活性エネルギー線硬化開始剤(III)が光酸発生剤である請求の範囲第22項記載のフッ素樹脂組成物。
  25. 請求の範囲第1項〜第24項のいずれかに記載のフッ素樹脂組成物において、含フッ素プレポリマー(I)を硬化してなる含フッ素光増幅材料。
  26. 請求の範囲第1項〜第24項のいずれかに記載のフッ素樹脂組成物において、含フッ素プレポリマー(I)を光硬化してなる請求の範囲第25項記載の含フッ素光増幅材料。
  27. コア部とクラッド部を有する光増幅型素子であって、コア部が請求の範囲第25項または第26項記載の含フッ素光増幅材料からなる光増幅型素子。
  28. 請求の範囲第1項〜第24項のいずれかに記載のフッ素樹脂組成物において、含フッ素プレポリマー(I)を硬化してなる含フッ素発光材料。
  29. 請求の範囲第1項〜第24項のいずれかに記載のフッ素樹脂組成物において、含フッ素プレポリマー(I)を光硬化してなる請求の範囲第28項記載の含フッ素発光材料。
  30. 発光素子であって、その発光素子の一部または全部が請求の範囲第28項または第29項記載の含フッ素発光材料からなる発光素子。
  31. コア部とクラッド部を有する発光素子であって、コア部が請求の範囲第28項または第29項記載の含フッ素発光材料からなる発光素子。
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