JP5217714B2 - 光ドーピング用材料含有ワニスの製造方法及びこれから得られるワニスを用いてなる光導波路アンプ - Google Patents
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Description
一方、エルビウムの励起効率を高くするために、増感剤としてイッテルビウム(Yb)が共添加されたガラスが知られている。
ところで、光導波路用材料として、耐熱性、耐湿性に優れ、かつ光通信波長帯(1.3〜1.6μm)において非常に高い透明性を有するフッ素化ポリイミドが知られている。本願発明者等は、フッ素化ポリイミドの前駆体ワニス中に、従来から知られている希土類金属の複合体の添加を試みるとゲル化してしまいワニスが調整できないこと、そのため薄膜形成が困難となり、生産レベルではフッ素化ポリイミドを光導波路アンプの光導波路用材料として用いることはできないことを見出した。
(a)エルビウム(Er)の塩とイッテルビウム(Yb)の塩とカルボン酸化合物とを、有機溶媒中にて混合し、光ドーピング用材料を得る光ドーピング用材料生成工程、
(b)前記光ドーピング用材料とフッ素化ポリイミド前駆体ワニスとを混合して、光ドーピング用材料含有ワニスを得るワニス合成工程。
(2)前記エルビウムの塩と前記イッテルビウムの塩の配合量が、モル比で1:1〜1:6であることを特徴とする上記(1)に記載の光ドーピング用材料含有ワニスの製造方法。
(3)前記エルビウムの塩が、酢酸エルビウムである上記(1)又は(2)に記載の光ドーピング用材料含有ワニスの製造方法。
(4)前記イッテルビウムの塩が、酢酸イッテルビウムである上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の光ドーピング用材料含有ワニスの製造方法。
(5)前記カルボン酸化合物が、トリフルオロ酢酸である上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の光ドーピング用材料含有ワニスの製造方法。
(6)上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の光ドーピング用材料含有ワニスの製造方法で得られた光ドーピング用材料含有ワニスを用いて形成された光導波路を少なくとも備える、光導波路アンプ。
(7)前記光導波路のコア部におけるエルビウムの濃度が0.01〜50質量%である上記(6)に記載の光導波路アンプ。
(a)エルビウム(Er)の塩とイッテルビウム(Yb)の塩とカルボン酸化合物とを、有機溶媒中にて混合し、光ドーピング用材料を得る光ドーピング用材料生成工程、
(b)前記光ドーピング用材料とフッ素化ポリイミド前駆体ワニスとを混合して、光ドーピング用材料含有ワニスを得るワニス合成工程。
これによれば、エルビウムをフッ素化ポリイミド前駆体ワニス中に高濃度で分散させることができ、且つイッテルビウムの添加量を多くしなくともエルビウムに対する高い増感性を有することが可能となる。
エルビウムは1.55〜1.61μm帯の光を増幅させ、またイッテルビウムはエルビウムの0.98μm励起帯を等価的に広げるため、エルビウムの増感剤としてガラスに共添加して利用できることは既に知られている。しかし、前述のように、Ybが増感剤として効力を発揮するには、イッテルビウムの添加量は、エルビウムの30倍(モル換算)以上である。
本発明者等は、イッテルビウムが効率的にエルビウムを増感させるには、光導波路アンプとしたとき、あるいはワニスの状態で、両者の距離間が重要であることを予測した。つまり、ガラスにおいては、エルビウムとイッテルビウムの存在距離が離れているため、ガラス中にイッテルビウムを多く配合させないと、エルビウムの光増幅を増感させることが難しいと考えた。本発明者等は、光導波路アンプとしたとき、あるいはワニスの状態で、両者の存在距離が近ければ、例え、両者が光ドーピング用材料内で均一に分散されていなくとも、また、エルビウムに対してイッテルビウムを多量に加えなくとも、効率的にエルビウムの光増幅性を上げることができると予測した。そこで、鋭意検討した結果、Er塩とYb塩とカルボン酸化合物とを、有機溶媒中にて混合した混合物を光ドーピング用材料に用いると、エルビウムとイッテルビウムがモル比で1対1であっても、効率的にエルビウムの光増幅を増感させることが可能であることを見出した。つまり、Er塩とYb塩とカルボン酸化合物とを有機溶媒中で混合することにより、エルビウムとイッテルビウムとが互いに近い距離で存在した化合物となることが考えられる。
本発明におけるEr塩としては、特に限定されないが、例えば、エルビウムの硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩等を用いることができ、この中でもエルビウムの酢酸塩であることが好ましい。また、上記Er塩は、110〜120℃で1〜2時間程度脱水したものであることが好ましい。
<Yb塩>
本発明におけるYb塩としては、特に限定されないが、例えば、イッテルビウムの硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩等を用いることができ、この中でもイッテルビウムの酢酸塩であることが、熱安定性が高く、有機溶媒への溶解性が高いことから好ましい。また、上記Yb塩は、110〜120℃で1〜2時間程度脱水したものであることが好ましい。
本発明におけるカルボン酸化合物としては、特に限定されないが、そのpKa値(水中、25℃における酸解離定数)が1.5以下であるものが好ましく、1.0以下であるものがより好ましい。このpKa値が1.5を超えるカルボン酸化合物を用いた場合には、ワニスがゲル化してしまう傾向にある。
で表されるカルボン酸化合物を用いることが好ましい。Yはフッ素、塩素が好ましい。
上記式(I)又は(II)で表される化合物として具体的には、トリフルオロ酢酸(TFA)フルオロクロロ酢酸(C(F2Cl)COOH)、ブロモクロロ酢酸(C(BrClH)COOH)、ペンタフルオロプロパン酸(FPA)、ヘプタフルオロブタン酸(FBA)、トリデカフルオロヘプタン酸(FHA)、トリクロロ酢酸、ペンタフルオロ安息香酸等が挙げられる。より好ましくは、一般式(I)又は(II)のXが0〜2のカルボン酸化合物であり、特に好ましくはトリフルオロ酢酸(TFA)である。
本発明における光ドーピング用材料含有ワニスは、下記(a)及び(b)の工程を含む製造方法により得られる。
(a)エルビウム(Er)の塩とイッテルビウム(Yb)の塩とカルボン酸化合物とを、有機溶媒中にて混合し、光ドーピング用材料を得る光ドーピング用材料生成工程、
(b)前記光ドーピング用材料とフッ素化ポリイミド前駆体ワニスとを混合して、光ドーピング用材料含有ワニスを得るワニス合成工程。
(a)光ドーピング用材料生成工程
(a)光ドーピング用材料生成工程に用いられるEr塩、Yb塩、カルボン酸化合物は前述したものが挙げられる。
(a)光ドーピング用材料生成工程において、用いられる有機溶媒は、特に限定されないが、例えば、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、γーブチロラクトン、プロピレングルコールモノメチルエーテル、プロピレングルコールモノエチルエーテル、プロピレングルコールモノプロピルエーテル、プロピレングルコールモノブチルエーテル、ブチレングリコールモノメチルエーテル、ブチレングリコールモノエチルエーテル、ブチレングリコールモノプロピルエーテル、ブチレングリコールモノブチルエーテル等を挙げることができる。
(a)光ドーピング用材料生成工程において、上記Er塩と上記Yb塩とカルボン酸化合物とを有機溶媒中混合させる方法としては、特に制限はなく、上記Er塩と上記Yb塩とカルボン酸化合物とを有機溶媒中に混合すればよい。もちろん、有機溶媒中に上記Er塩を含む溶液と、有機溶媒中に上記Yb塩を含む溶液と、有機溶媒中にカルボン酸化合物を含む溶液とを混合してもよい。
上記(a)光ドーピング用材料生成工程において、Yb塩の使用量は、Er塩を基準にしてモル換算で1〜6当量であるのが好ましく、より好ましくは1.0〜4当量である。この範囲でYb塩を使用することにより、効率よくエルビウムの光増幅を増感させることができる。
このようにしてEr塩とYb塩とカルボン酸化合物とを有機溶媒中で混合することにより、ワニスの状態としたとき、あるいは光導波路アンプとしたときに、エルビウムとイッテルビウムが互いに近くに存在した光ドーピング用材料が得られると考えられ、多量のYbを添加せずとも効率よくエルビウムの光増幅を増感することができる。なお、Er塩とYb塩とカルボン酸化合物とを混合する方法や条件は特に限定されない。
なお、本発明における光ドーピング用材料は、Er塩とYb塩とを同じカルボン酸化合物と有機溶媒中で混合して得られるが、異なるカルボン酸化合物と有機溶媒中で混合した2つ以上の組み合わせであっても構わない。具体的には、Er塩とYb塩と第一のカルボン酸化合物とを、有機溶媒中で混合して得られた第一の光ドーピング用材料と、Er塩とYb塩と第二のカルボン酸とを、有機溶媒中で混合して得られた第二の光ドーピング用材料を併用して用いることができる。
本発明の光ドーピング用材料は、(a)工程で得られる混合溶液を溶液のまま用いることも可能である。また、(a)工程で得られた混合溶液から有機溶媒を留去して、固体として取り出してもよい。有機溶媒の留去方法は特に制限されないが、有機溶媒だけでなく、原料であるカルボン酸化合物も同時に留去されることが好ましい。あるいは、得られた混合溶液をそのまま、(b)ワニス合成工程において、フッ素化ポリイミド前駆体ワニスと混合することが可能である。
本発明の製造方法により得られたワニスは、上記光ドーピング用材料とフッ素化ポリイミド前駆体ワニスを含むことをその特徴とするものであり、例えば、上記光ドーピング用材料を混合溶液のまま、フッ素化ポリイミド前駆体ワニスを混合することによって得ることができ、また、上記光ドーピング用材料中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分とを重合させてフッ素化ポリイミド前駆体ワニスを合成することによって得ることもできる。なお、前者の場合、フッ素化ポリイミド前駆体ワニスの合成で使用した溶媒と上記光ドーピング用材料を生成する際に用いる有機溶媒が同一のものであることが好ましく、また、後者の場合、(a)工程で用いる有機溶媒は、フッ素化ポリイミド前駆体ワニスの合成で使用される公知の溶媒であることが好ましい。また、光ドーピング用材料は、固体状態でフッ素化ポリイミド前駆体ワニスと混合しても良い。
本発明の製造方法により得られたワニスは、製膜性に優れ、なおかつエルビウムイオンを高濃度に含ませることも可能であるため、光導波路アンプの光導波路(コア部)用材料として好適であり、これを塗布、硬化させてなる膜は、フッ素化ポリイミドの膜と同様、優れた強度や透明性を示す。
フッ素化ポリイミド前駆体ワニスに添加する際に、エルビウムとイッテルビウム以外のその他の希土類金属の塩とカルボン酸化合物とを有機溶媒中にて混合して得られた他の光ドーピング用材料を併用して添加しても良い。この場合、前記(a)工程において、Er塩とYb塩とそれ以外の希土類金属塩(以下、「他の希土類金属塩」ともいう)とを同一フラスコ内で有機溶媒中にてカルボン酸化合物と混合して得られる、他の希土類金属を含有した光ドーピング用材料を併用して用いても良い。あるいは、前記(a)工程と同様に、異なるフラスコで他の希土類金属塩をカルボン酸化合物と混合して、他の光ドーピング用材料としたものをワニスに混合しても良い。なお、後者の場合、他の希土類金属塩と混合するカルボン酸化合物は、Er塩とYb塩と混合したカルボン酸化合物と異なっていてもよい。
なお、他の希土類金属塩の希土類金属とは、ランタニド類(ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、ツリウム(Tm)、ルテチウム(Lu))、スカンジウム及びイットリウムを指し、本発明においては、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、ツリウム(Tm)が有用であり、好ましい。また、上記他の希土類金属塩は、110〜120℃で1〜2時間程度脱水したものであることが好ましい。
で表されるフッ素化ポリアミド酸であることがより好ましい。
光導波路アンプの光導波路を構成する場合には、光導波路の長さが長ければ、すなわち、光信号の増幅に寄与する長さが長ければ、本発明の製造方法により得られたワニスの固形分(コア層)中のエルビウムの含有量が少量でも光アンプとしての効果を得ることができる。この場合には、ワニスが光ドーピング用材料を含有することによる透明性の低下、すなわち、光損失の増大を最小限にとどめることができる上、光ドーピング用材料含有による屈折率の増大をも少なくすることができるので、コアとクラッドの屈折率差を小さくとった光導波路アンプを実現することができ、その結果、通常の光ファイバとの接続における結合損失を低減することができる。従来の希土類(特にエルビウム)添加光ファイバでは、コアとクラッドとの比屈折率差が大きくなるため、光ファイバとの接続での損失が大きくなる問題があった。これを回避するためには、接続部をTEC処理等特殊な処理を施す等工程を追加する必要があり、製造コストの増大を招いていた。
なお、上記エルビウムの含有量は、本発明の製造方法により得られたワニスもしくはその硬化物を空気(酸素)雰囲気下、900℃まで昇温速度10〜50℃/分で加熱し、熱分解して得られる残渣(酸化物(Er2O3)の質量を測定し、エルビウムの質量を算出する)より正確に測定できる。イッテルビウムの含有量も同様に測定できる。
本発明の光導波路アンプは、上記本発明の製造方法により得られたワニスを用いて形成された光導波路(コア部)を少なくとも備えることをその特徴とするものであり、エルビウムイオンを高濃度に含む本発明の製造方法により得られたワニスを用いることで、前述のとおり、光導波路アンプの小型、軽量化を実現することが可能となる。また、信号光は、励起光と共に本発明の光導波路アンプのコア層内部を通過させることで増幅させることができ、この際に用いる励起光の波長は、コア層に含まれるエルビウムが吸収し、且つイッテルビウムが増感作用を有する980nm付近(970〜990nm)とする。
従来の希土類添加光ファイバでは、希土類イオンのみを添加した場合には、多くの場合、添加前に比べて屈折率が高くなるが、本発明のように、Er塩やYb塩等の希土類イオンを、カルボン酸化合物と混合して得られた混合物(以下、「希土類イオンの有機化合物」ともいう)を光ドーピング用材料として添加する場合においては、カルボン酸化合物の組成、構造などによって、屈折率を高める効果には差がある。カルボン酸化合物としてTFAと混合したフッ素化合物を上記希土類イオンの有機化合物として用いることで、屈折率を高める効果を低減することができる。これは、フッ素原子の導入によって分子容が大きくなる効果によるところが大きい。そこで、本発明のように、カルボン酸化合物としてフッ素化合物を採用することは、フッ素を含まない化合物を採用する場合に比べて、コア層とクラッド層との比屈折率差が過剰に大きくなることを防ぐことができるため好ましい。
一方で、上述のように、希土類イオンや希土類イオンの有機化合物を添加した場合の屈折率は、希土類イオンの有機化合物添加前の樹脂の屈折率によるので、たとえ、希土類イオンの有機化合物の添加による屈折率の増分が大きすぎるような場合であっても、本発明のように、樹脂として、共重合組成によって屈折率を連続的に変化させられる樹脂を利用した場合には、通常の樹脂選択とは反対に、クラッド層に用いる希土類イオンの有機化合物添加前の樹脂の屈折率を、コア層に用いる希土類イオンの有機化合物添加前の樹脂の屈折率に比べて高い樹脂を採用することで、比屈折率差を過剰になりすぎないように調整することが可能である。なお、通常のコア層、クラッド層の樹脂の選択では、コア層の屈折率をクラッド層の屈折率より高くなるように選択している。この場合、最終的に希土類イオンの有機化合物添加樹脂であるコア層の屈折率が希土類イオンの有機化合物添加樹脂であるクラッド層の屈折率に比べて高くなる範囲で樹脂を選択し、かつ、上述の結合損失が過大とならない程度とすることが好ましい。ここで、コア層に用いる希土類イオンの有機化合物添加前の樹脂の屈折率とクラッド層に用いる希土類イオンの有機化合物添加前の樹脂の屈折率との選択は、希土類イオンの有機化合物の添加量とは、独立に選択することができるので、最終的な光導波路の比屈折率差を所望の値に調整するための設計範囲が格段に広がることになる。同質の樹脂でありながら、共重合比を変えることで他の物性を損なうことなく連続的に屈折率を変化させることができることが有効に活用されている。
一方、石英ガラス、フッ化物ガラス、特殊ガラスなどを母材として、希土類イオン添加ガラスを得る場合などでは、母材のガラスの選択範囲が必ずしも広くないため、本発明のような屈折率調整方法を採用することが困難であったため、上述のように、接合部分において、TEC処理など特殊な結合方法を採用する必要があった。また、従来のガラス母材の希土類イオン添加ガラスにおいては、そもそも、希土類イオンの添加濃度に限界があり、低濃度で用いられることが多かった。
また、本発明においては、最終的に希土類イオンの有機化合物添加樹脂であるコア層の屈折率が希土類イオンの有機化合物非添加樹脂であるクラッド層の屈折率に比べて高くなる範囲で樹脂を選択し、かつ、上述の結合損失が過大とならない程度とすることもできる。
<光特性の評価>
本発明における光ドーピング用材料は、下記の方法で光特性を評価することができる。
まず、光特性の評価に用いる測定サンプルとしての光導波路を作製する。測定サンプルとしての光導波路は、図5(a)に示すように、シリコンウェハ、石英、ポリイミド等の基板1(ワニスの効果温度である350℃以上の加熱に耐えられれば、材質は限定されない)、好ましくは酸化膜付きシリコンウェハ、より好ましくは、厚み1μmの酸化膜を持つ総厚み1mmのシリコンウェハの基板1上に、接着性向上のための表面処理剤や、必要な場合は、波長1.5ミクロン帯において本発明の製造方法により得られたワニスからなる膜よりも低屈折率な有機重合体をスピンコート法等により塗布(好ましくは5μm以上)し、熱又は紫外線により硬化(乾燥、縮合・重合・架橋反応)させ下部クラッド層又は接着補助膜となる膜2を形成する。なお、ここでいう接着補助膜とは、例えば、シランカップリング剤による表面改質層や、コア層3に用いられる材料に対して親和性の良い材料による層を用いることで、コア層3との接着性を向上させるための膜である。特に、屈折率がコア層よりも小さい材料は下部クラッド層として働く(図5の(b))。次に前記下部クラッド層又は接着補助膜となる膜2上に本発明のワニスをスピンコート法等により塗布し、同様に熱又は紫外線により硬化(乾燥、縮合・重合・架橋反応)させ、コア層3を形成する(図5の(c))。
次にダイシングソー((株)ディスコ製、オートマチックダイシングソーDAD−522等)を用い、前記コア層3を幅10〜20μm残すように、余分な部分を切削する(図5の(d))。好ましくは、側面を垂直にするため、シリコンウェハ等の基板1まで切削したほうが良い。続いて、光導波路方向と垂直な方向において(導波路長となる)所定の長さにおいて切削し、光導波路測定サンプル11を得る。図6に示すように、光導波路測定サンプル11を用いて、光特性評価を行う。詳細は図8を用いて後述する。
なお、接着性の問題により、切削時に剥離が見られる膜に関しては、例えば、ポリイミドフィルムの場合、イミド化前の温度、約200℃において乾燥のみを行ったのちに切削を行い、続いて350℃等においてイミド化を行う方法を採用することで、剥離の問題を解決することが出来る。
なお、図7は図5の断面図を示す。
ヘリウムネオン(He−Ne)レーザ(波長632.8nm)を光導波路測定サンプルに結合した場合の出力側光導波路端面における近視野像を観察し、導波を確認する。
上記で得られた光導波路測定サンプルを用いて、図8に示すように、光特性評価を行う。励起する光源としては、波長980nm又は1480nmの半導体レーザを用いる。
信号光源としては波長1460〜1625nmの間で任意に選択可能な波長可変レーザを用いる。信号光源からの出射光はシングルモード光ファイバに結合され、光ファイバ端面等からの戻り光による光源の安定性への影響をなくす為、光を一方向にのみ透過する光アイソレーターを通過させる。励起光源からの出射光は同様にシングルモード光ファイバに結合される。続いて、励起光及び信号光はWDM(波長分割多重方式, Wavelength Division Multiplexing)カプラーにより、1本のシングルモード光ファイバに合波される。続いて、合波された励起光及び信号光は前記記載の方法で作製された光導波路に結合される。光導波路からの出射光は同様にシングルモード光ファイバに結合され、WDMカプラーにより分波される。分波された信号光は異なる光アイソレーターを通過し、分光器及び検出器等に結合され、蛍光発光スペクトルや信号光強度変化が測定される。
(合成例1)
1リットルのガラス製の4つ口フラスコを用い、30ml/分の流量で乾燥窒素を通しながら、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル95.7g、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル6.7g、及び水含有量が0.008質量%のN,N−ジメチルアセトアミド375gを仕込み、溶解した後に、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物147.6gを添加し、氷浴で1時間攪拌後、N,N−ジメチルアセトアミド375gを追加して、12時間撹拌して粘度800ポイズの含フッ素ポリイミド系前駆体溶液を得た。この溶液に水3.0gを添加した後、65℃で3時間撹拌し、粘度70ポイズのフッ素化ポリイミド前駆体ワニス1を得た。この溶液の水含有量は0.4質量%であった。
(合成例2)
1リットルのガラス製の4つ口フラスコを用い、30ml/分の流量で乾燥窒素を通しながら、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル62.8g、及び水含有量が0.008質量%のN,N−ジメチルアセトアミド850gを仕込み、溶解した後に、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物87.2gを添加し、室温で15時間撹拌して粘度800ポイズの含フッ素ポリイミド系前駆体溶液を得た。この溶液に水3.0gを添加した後、65℃で3時間撹拌し、粘度50ポイズのフッ素化ポリイミド前駆体ワニス2を得た。この溶液の水含有量は0.4質量%であった。
(合成例3)
1リットルのガラス製の4つ口フラスコを用い、30ml/分の流量で乾燥窒素を通しながら、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル40.2g、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル16.8g、及び水含有量が0.008質量%のN,N−ジメチルアセトアミド225gを仕込み、溶解した後に、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物93.0gを添加し、氷浴で1時間攪拌後、N,N−ジメチルアセトアミド625gを追加して、12時間撹拌して粘度800ポイズの含フッ素ポリイミド系前駆体溶液を得た。この溶液に水3.0gを添加した後、65℃で3時間撹拌し、粘度50ポイズのフッ素化ポリイミド前駆体ワニス3を得た。この溶液の水含有量は0.4質量%であった。
(合成例4)
1リットルのガラス製の4つ口フラスコを用い、30ml/分の流量で乾燥窒素を通しながら、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル46.6g、及び水含有量が0.01質量%のN−メチル−2−ピロリドン850gを仕込み、溶解した後に、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物103.4gを添加し、室温で15時間撹拌して粘度800ポイズの含フッ素ポリイミド系前駆体溶液を得た。この溶液に水3.0gを添加した後、65℃で3時間撹拌し、粘度100ポイズのフッ素化ポリイミド前駆体ワニス4を得た。この溶液の水含有量は0.4質量%であった。
<光ドーピング用材料の調整>
(調製例1)
酢酸エルビウム4水和物及び酢酸イッテルビウム4水和物をバキュームオーブン中で温度120℃、減圧度約10mmHgの条件下に2時間加熱し、結合水を除去した。その後、乾燥した酢酸エルビウム2.00g及び酢酸イッテルビウム2.03gをナス型フラスコに秤取し、乾燥したジメチルアセトアミド(DMAc)16gを添加した後、室温にて攪拌して酢酸エルビウム及び酢酸イッテルビウムを分散させた。これに酢酸エルビウム及び酢酸イッテルビウムの各々に対して三倍モルのトリフルオロ酢酸(TFA)3.97gを添加した。室温にて攪拌しながら均一に溶解したことを確認後、約1時間同温度を保持したまま攪拌した。
その後、この混合溶液を90℃にて減圧して揮発分を除去した。固体が析出したことを確認した後、直ちに45℃の減圧真空装置で約5mmHgにて約4時間乾燥させて、光ドーピング用材料1を7.9g得た。
なお、光ドーピング用材料1において、エルビウムとイッテルビウムのモル比は1:1である。
(調製例2)
酢酸イッテルビウムを加えずに、TFAを1.99gとした以外は、調製例1と同様に光ドーピング用材料2を得た。
(調製例3)
酢酸エルビウム4水和物をバキュームオーブン中で温度120℃、減圧度約10mmHgの条件下に2時間加熱し、結合水を除去した。その後、乾燥した酢酸エルビウム2.00gをナス型フラスコに秤取し、乾燥したジメチルアセトアミド(DMAc)8gを添加した後、室温にて攪拌して酢酸エルビウムを分散させた。これに酢酸エルビウムに対して三倍モルのトリフルオロ酢酸(TFA)1.95gを添加した。室温にて攪拌しながら均一に溶解したことを確認後、約1時間同温度を保持したまま攪拌した。
その後、この混合溶液を90℃にて減圧して揮発分を除去した。固体が析出したことを確認した後、直ちに45℃の減圧真空装置で約5mmHgにて約4時間乾燥させて、第一の混合物aを得た。
続いて、酢酸イッテルビウム4水和物をバキュームオーブン中で温度120℃、減圧度約10mmHgの条件下に2時間加熱し、結合水を除去した。その後、乾燥した酢酸イッテルビウム2.03gをナス型フラスコに秤取し、乾燥したジメチルアセトアミド(DMAc)8gを添加した後、室温にて攪拌して酢酸イッテルビウムを分散させた。これに酢酸イッテルビウムの各々に対して三倍モルのトリフルオロ酢酸(TFA)1.95gを添加した。室温にて攪拌しながら均一に溶解したことを確認後、約1時間同温度を保持したまま攪拌した。
その後、この混合溶液を90℃にて減圧して揮発分を除去した。固体が析出したことを確認した後、直ちに45℃の減圧真空装置で約5mmHgにて約4時間乾燥させて、第二の混合物bを得た。
第一の混合物a、1gと第二の混合物b、1.02gを合わせて光ドーピング材料3とする。
なお、光ドーピング用材料3において、エルビウムとイッテルビウムのモル比は1:1である。
<ワニスのゲル化の評価>
上記合成例1で得られたフッ素化ポリイミド前駆体ワニス1の10g(固形分量25%)に、上記の光ドーピング用材料1を0.666g添加し、室温で攪拌しながら溶解させた。その後、静置下に放置して脱泡して、均一でピンク色の透明液であるワニスAを得た。ワニスAは均一分散しており、ゲル化が生じることはなかった。
なお、光ドーピング用材料1はフッ素化ポリイミド前駆体ワニス1の固形分に対して26.6質量%であった(ワニスA中の固形分(フッ素化ポリイミド前駆体ワニス及び光ドーピング用材料の全質量)に対して21.0質量%)。また、ワニスA中のフッ素化ポリイミド前駆体ワニス固形分に対するのエルビウム濃度及び酢酸イッテルビウム濃度を酸化物(Er2O3又はYb2O3)換算で算出したところ、それぞれ5.0質量%、5.15質量%であった。
<本発明のワニスを用いた光導波路アンプの作製と評価>
次いで、得られたワニスAを、スピンコータを用いて1μmの酸化膜付シリコン基板上に塗布し、100℃で1時間、200℃で1時間、350℃で2時間の条件で硬化させ、膜Aを作製した。
上記で作製した酸化膜付シリコン基板上に膜Aが形成されたスラブ光導波路の膜Aに、プリズムカプラ法でプリズムを介して、波長632.8nm(He−Neレーザ)のビームを結合させたところ、光波が良好なストリークを示し直線的に伝搬している様子が観察された。また、出射プリズムを通して、良好なm−lineが観測された。このことから、上記光ドーピング用材料1は、上記ワニスA中においてフッ素化ポリイミドをマトリックスとして均一に分散されていることが確認できた。
次に以下の方法で光導波路を作製した。厚み1μmの酸化膜を持つ総厚み1mmのシリコンウェハに、シランカップリング剤(信越化学工業(株)製:KBM−573)をスピンコート法(1000rpm、30秒)により塗布し、120℃で10分間乾燥させた。ついで、上述のワニスAをスピンコート法(1000rpm、30秒)により塗布し、加熱(100℃において1時間、ついで200℃において1時間、ついで350℃において2時間)し、硬化させた。膜厚を探針式表面段差計(DEKTAK)により測定した結果、約8μmであった。次にダイシングソー((株)ディスコ製、オートマチックダイシングソーDAD−522等)を用い、前記膜を幅20μm残すように余分な部分を切削した。このようにして、断面8μm×20μmのリッジ型光導波路を得た。次に前記のダイシング方向と垂直方向に導波路の長さが2mmとなるように切断し、リッジ型光導波路1を得た。
<光特性の評価>
上記リッジ型光導波路を用い、コア径50μmのグレーデッドインデックス光ファイバを用い光導波路に結合し、波長977nmのレーザ(THORLABS社製、製品名:PL980P200)励起光として、0〜59.0mWにおける、波長1400〜1650nmのASE光強度スペクトルを評価した。結果を図9に示すように、波長1530nmをピークとする蛍光が確認された。蛍光スペクトルの半値全幅(FWHM:Full Width at Half Maximum)は約63nmであった。また、図10に示すように、励起光強度に比例して、ASE光強度が上昇した。
<ワニスのゲル化の評価>
光ドーピング用材料1の代わりに、調製例2で得られた光ドーピング用材料2を0.331g添加する以外は、実施例1のワニスAと同様にワニスBを作製した。ワニスBは均一分散しており、ゲル化が生じることはなかった。なお、フッ素化ポリイミド前駆体ワニス1中の固形分に対するエルビウム濃度及び酢酸イッテルビウム濃度を酸化物(Er2O3又はYb2O3)換算で算出したところ、それぞれ5.0質量%、0質量%であった。
<光特性の評価>
ワニスBを用い、実施例2と同様にして光導波路長さが2mmのリッジ型光導波路2を作製して、蛍光特性の評価を行った結果を図10に示す。励起光強度を上げても、実施例2で得られたリッジ型光導波路2に比べ、ASE光強度がそれほど上がっていないことがわかる。
<ワニスのゲル化の評価>
光ドーピング用材料1の代わりに、光ドーピング用材料3を用いる以外は同様にして、ワニスCを作製した。ワニスCは均一分散しており、ゲル化が生じることはなかった。なお、フッ素化ポリイミド前駆体ワニス1中の固形分に対するエルビウム濃度及び酢酸イッテルビウム濃度を酸化物(Er2O3又はYb2O3)換算で算出したところ、それぞれ5.0質量%、5.15質量%であった。
<光特性の評価>
ワニスCを用い、実施例2と同様にして光導波路長さが2mmのリッジ型光導波路3を作製して、蛍光特性の評価を行った結果を図10及び図11に示す。図11に示すように、波長1530nmをピークとする蛍光が確認された。蛍光スペクトルの半値全幅(FWHM:Full Width at Half Maximum)は約59nmであった。
しかし、図10からわかるように、励起光強度を上げるに従い、比例的にASE光強度も上がるが、実施例2で得られたリッジ型光導波路1に比べ劣っていることがわかる。
2 下部クラッド層
3 コア層
4 上部クラッド層
5 光導波路
6 光入射用プリズム
7 光出射用プリズム
10 光導波路アンプ
11 光導波路測定サンプル
Claims (5)
- 下記(a)及び(b)工程を含む、光ドーピング用材料含有ワニスの製造方法。
(a)エルビウム(Er)の塩とイッテルビウム(Yb)の塩とカルボン酸化合物とを、有機溶媒中にて混合し、光ドーピング用材料を得る光ドーピング用材料生成工程、
(b)前記光ドーピング用材料とフッ素化ポリイミド前駆体ワニスとを混合して、光ドーピング用材料含有ワニスを得るワニス合成工程。 - 前記エルビウムの塩と前記イッテルビウムの塩の配合量が、モル比で1:1〜1:6であることを特徴とする請求項1に記載の光ドーピング用材料含有ワニスの製造方法。
- 前記エルビウムの塩が、酢酸エルビウムである請求項1又は2に記載の光ドーピング用材料含有ワニスの製造方法。
- 前記イッテルビウムの塩が、酢酸イッテルビウムである請求項1〜3のいずれか一項に記載の光ドーピング用材料含有ワニスの製造方法。
- 前記カルボン酸化合物が、トリフルオロ酢酸である請求項1〜4のいずれか一項に記載の光ドーピング用材料含有ワニスの製造方法。
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