JPWO2002056291A1 - 弦楽器用糸巻装置およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
本体10と、この本体10の両側部から立ち上がって互いに相対向する軸受12と、この軸受12の大径孔15および小径孔16に回転自在に支持されて一端部に摘み29を有するウオームギヤ21と、このウオームギヤ21にウオームホイール40を介して接続された巻取軸30とを備えた弦楽器用糸巻装置である。軸受12をばね性材料で構成したことにより、弾性限界を高めて変形を防止した。
Description
発 明 の 背 景
1.技術分野
本発明は、ギターなどの弦楽器の糸巻装置およびその製造方法に係り、特に、ウオームギヤと軸受とのガタが生じないようにすることにより、ギヤどうしのバックラッシュを低減する技術に関する。
2.背景技術
第9図は従来のクラシックギター用の糸巻装置の一例を示す図である。この図に示す糸巻装置は、ギターのヘッドに取り付けられる本体1に、一端部に摘み2が固定されたウオームギヤ3を回転自在に支持し、本体1にウオームギヤ3と噛み合うウオームホイール4を回転自在に支持するとともに、ウオームホール4にこれと軸線を一致させた巻取軸5をネジ6で取り付けて構成されている。
ここで、本体1には、普通鋼板をプレス成形してほぼ直角に曲げ起こされた複数対の軸受7が形成されている。軸受7は、側部が開放されてなるU字状の凹部7aを備え、凹部7aにウオームギヤ3の両端部に形成された溝3aを嵌合させることによって、ウオームギヤ3の両端部を支持している。
また、2つの軸受7,7によってウオームギヤ3の壁部を両側から挟み込むことによって、ウオームギヤ3の回転に抵抗を与え、その逆転(弦の緩み側への回転)防止としている。そして、この糸巻装置は、巻取軸5の巻取面5aに弦を巻き、摘み2を回転させて弦を巻き取ったり巻き解いたりすることによって、チューニングを行うようになっている。
しかしながら、上記のような糸巻装置にあっては、ウオームギヤ3とウオームホイール4との間のバックラッシュが大きく、さらに、使用している間にバックラッシュが徐々に大きくなるため、チューニングがやり難くしかも演奏にも支障を来すという問題があった。
すなわち、上記のような糸巻装置では、軸受7の側方が開放されているので組立が簡単ではあるが、そのためにウオームギヤ3とウオームホイール4との間に比較的大きなクリアランスを設定しており、ウオームギヤ3がウオームホイール4に対してクリアランスの分だけ移動可能となる。このため、両者の間のバックラッシュが大きく、摘み2を少し回転させただけでは巻取軸5が追従しないために、微妙なチューニングがやり難くいという問題がある。
また、ウオームギヤ3を第9図における側方から見て時計方向へ回転させると、ウオームギヤ3に作用する図中点Pを中心とする時計回りのモーメントにより、ウオームギヤ3がウオームホイール4側へ移動する。その結果、両者の歯面どうしの擦過により歯面が摩耗し、ギヤのバックラッシュがさらに大きくなってしまう。さらに、上記糸巻装置では、軸受7が強度の低い普通鋼板で製造され、しかも、軸受7の側方が開放されているために丸穴の軸受と比べて軸を支える壁部が少ない。
一方、ウオームギヤ3の溝3aは、軸受7の製造誤差と組立作業性を考慮して、軸受7の厚さよりも広く形成されている。このため、ウオームギヤ3から受けるスラスト荷重により、当初はウオームギヤ3の溝3a,3aを両側から挟み込んでいた軸受7,7が変形して開いてしまい、その結果、ウオームギヤ3は、そのスラスト方向(軸線方向)へも移動可能となってしまう。そのようなスラスト方向のガタが生じた場合には、ウオームギヤ3を回転させても、その溝3aが軸受7に当接するまでは空回りの状態となるから、摘み2を回転させたときの遊びが大きくチューニングが非常にやり難くなる。
さらに、ウオームギヤ3と軸受7との間にガタがあってウオームギヤ3がフリーな状態であると、演奏中に弦の振動がウオームギヤ3に伝わって異音を発生したり、また、ウオームギヤ3が振動によって逆転し、チューニングが狂うという問題も生じる。
軸受を丸穴のものにすれば、ウオームギヤ3のウオームホイール4側への移動を阻止し、大きなバックラッシュとギヤ歯面の摩耗によるバックラッシュの拡大という問題は解決される。しかしながら、軸受が丸穴であるから軸受の強度も向上するものの、それだけではウオームギヤから受けるスラスト荷重による変形防止には不充分であり、したがって、軸受の変形によるガタの発生と、これに起因する異音の発生およびウオームギヤの逆転といった問題は依然として残っていた。
ここで、本体と軸受とを別々に作製し、両者を溶接やかしめ加工で接合した糸巻装置も提供されている。この糸巻装置では、ウオームギヤに形成したフランジやワッシャおよびネジなどを用いて軸受のそれぞれを両側から完全に挟み込んでいる。このような糸巻装置では、いずれの方向のスラスト荷重も一対の軸受で支持しているから、軸受の変形に対する抵抗が高い。しかしながら、この軸受では、それぞれの軸受を挟み込むための多くの部品を必要とするばかりでなく、ウオームギヤの抜止めのためのかしめ加工も必要となり、組立の工数も大きいという問題がある。
また、本体と軸受とをプレス成形で一体的に作製する糸巻装置の中には、ウオームギヤの一端部にリングを回転自在に支持し、このリングの外周にネジを形成し、軸受の内周に形成したネジと螺合させるようにしたものもある。このような糸巻装置では、リングを移動させてウオームギヤのウオーム端面を押圧することにより、軸受を外側に開くように締め付けることができ、軸受とウオームギヤとのスラスト方向のガタを消失させることができる。その他、ウオームギヤの軸にネジを形成してそこに螺合させたリングで軸受を締め付けるように構成したものもある。しかしながら、このような糸巻装置においても、複雑な部品の点数が増加して製造コストが割高になるという問題がある。
本発明は、製造コストをさ程増加させることなく軸受のスラスト方向への変形を抑制することができるとともに、ウオームギヤと軸受のスラスト方向のガタを消失させることができ、したがって、チューニングがやり易く異音の発生やウオームギヤの逆転といったトラブルも生じない糸巻装置を提供することを目的としている。
発 明 の 概 要
本発明の弦楽器の糸巻装置は、弦楽器のヘッド部に取り付けられる本体と、この本体と一体的に構成されるとともにその両側部から立ち上がって互いに相対向する一対の軸受と、これら一対の軸受に相互に対向するように設けられた丸孔に両端部が回転自在に支持されるとともに一端部に摘みを有するウオームギヤと、このウオームギヤにウオームホイールを介して接続された巻取軸とを備えた弦楽器用糸巻装置において、軸受をばね性材料で構成したことを特徴としている。
上記構成の糸巻装置にあっては、軸受がばね性材料で構成され、しかも丸孔のものであるから、ウオームギヤからスラスト荷重が入力されても変形し難い。したがって、ウオームギヤと軸受との間にガタが発生し難く、バックラッシュの増加や異音あるいはウオームギヤの逆転によるチューニングの狂いといったトラブルの発生が抑制される。
ここで、ばね性材料とは、たとえば、ばね用ステンレス板材、SUP材やばね用リン青銅といったばね用材料は勿論のこと、普通の材料に熱処理等を施して弾性限界を高めたものも含まれる。たとえば、冷間圧延軟鋼板(SPC材)のような普通鋼板に、表面から好ましくは深さ0.05〜0.3mm、より好ましくは深さ0.1〜0.15mmまでの浸炭焼入れ処理を施したものを用いることにより、表面の抗張力が高まり、弾性限度が高くなってばね性を付与することができる。あるいは、普通鋼板に窒化や炭窒化を施したものを用いても良い。ただし、これらの場合には弾性限界の上昇(ばね性)が充分ではなく、また、メッキ処理が困難となるので浸炭焼入れの方が好ましい。なお、浸炭焼入れ等の処理は、軸受(本体との境界部分も含む)に施されていれば足りる。
軸受は、立ち上がる方向へ向けて僅かに拡開するように本体に対して傾斜して設け、ウオームギヤの両端部に、軸受を接近方向へ向けて両側から締め付ける締結手段を設けことが望ましい。このような構成では、軸受を締結手段で締め付けることにより軸受が弾性変形し、軸受のばね性による反発力でウオームギヤとの間に摩擦抵抗が付与される。これにより、軸受とウオームギヤとのスラスト方向のガタが無くなるとともに、摘みを回す際に適度な抵抗が生じてチューニングがやり易くなる。
さらに、ウオームギヤに振動が伝わっても異音の発生や巻取軸の逆転といったトラブルの発生が抑制される。また、予め拡開させた軸受を締め付けると、それらが互いに平行またはそれに近い状態となるので、軸受のばね性による反発力が軸方向へ直接作用し、ウオームギヤとの摩擦抵抗が効率よく生成される。さらに、軸受の丸孔が真円の状態でウオームギヤと嵌合し、軸受特性が良好に維持される。なお、軸受の本体に対する傾斜角度は、本体と直交する面に対して0〜6°の範囲が適度な締付け力を得る上で好適である。
具体的には、締結手段は、ウオームギヤの基端部側に設けたフランジ部と、同ウオームギヤの先端部に圧入したプッシュナットを備え、ウオームギヤの先端部に、プッシュナットの内周が係合するべく周方向へ刻設された溝を設けるのが好ましく、そのような溝を複数条設ければさらに好適である。プッシュナットは、一般にワッシャ状の部材の中央部を板厚方向に窪ませて、そこに放射状にスリットを形成したものである。プッシュナットに軸を挿入したときにスリットが開く方向へは挿通できるが、逆方向ではスリットが閉じ、プッシュナットが軸に噛み込んで抜けないようになっている。
一方、ウオームギヤは、一般にはメッキを施して使用されるので、そのままでは摩擦係数が小さく、プッシュナットがウオームギヤから抜ける可能性がある。したがって、上記のように、ウオームギヤの先端部に溝を形成してプッシュナットの内周と係合させることが好ましい。これにより、ウオームギヤの軸受からの抜け止めと、スラスト方向への締め付け力の設定をワンタッチで行うことができ、組立の工数を低減することができる。
また、溝を複数連設することにより、軸受のスラスト方向への締付け力を適正に調整することができるとともに、溝の位置や間隔(例えば0.1mm)を厳格に管理し、どの溝にプッシュナットを係合させるかも規格化することによって、軸受のスラスト方向の締め付け力を一定にして品質を安定させることができる。さらに、万が一軸受が内側へ変形した場合には、プッシュナットをさらに締め付けてウオームギヤと軸受とのガタを消失させることができる。
ウオームギヤの基端部側に設けるフランジ部の軸受側の面は、軸線に対して直角であっても良く、また、軸受の傾斜に合わせてテーパ状にすることもできる。また、フランジ部と軸受およびプッシュナットと軸受との間には、合成樹脂製または表面に潤滑被膜を設けた金属製のワッシャを介装することが望ましい。これにより、金属どうしの面接触を防止し、ウオームギヤを回転させたときの摺接面の焼付きを防止することができるとともに、チューニング時にソフトで滑らかな感触を得ることができる。
ワッシャの材質としては、ポリアセタール樹脂にポリテトラフルオロエチレンを10重量%以上含むもの、あるいは、金属製のワッシャの表面に二硫化モリブデンなどの固体潤滑材を被膜したものや、表面をメッキした後にテフロン混合被膜を設けたものなどを用いることができる。
次に、上記のような糸巻装置は、普通鋼板を板金成形して両側から軸受が互いに相対向するように立ち上がる本体を形成し、この本体に浸炭焼入れを施した後メッキ等の仕上げ加工を施し、次いで、軸受に、一端部に摘みを有するウオームギヤを回転自在に装着するとともに、本体に、ウオームギヤと噛み合うウオームホイールを有する巻取軸を装着することにより製造すると好適である。この製造方法では普通鋼板を板金成形するから、ばね用材料を用いる場合と比較して材料費を大幅に低減することができる。また、ばね用材料や浸炭焼入れをした普通鋼板を加工するものではないから、加工費も大幅に低減することができる。
発明を実施するための最良の形態
本発明の実施の形態について第1図〜第6図を参照して説明する。
第1図は実施の形態の糸巻装置を示す組立図である。図において符号10は本体、20はウオームギヤ組立体、30は巻取軸、40はウオームホイールである。以下、これらの構成を順に説明する。第2図は本体10を示す平面図である。この図に示すように、本体10は平面視略長方形状をなし、平らな基部11と、基部11の両側から立ち上がる軸受12とから概略構成されている。基部11には、巻取軸30を回転自在に支持するための支持孔13が形成されている。また、基部11には、糸巻装置をクラシックギターのヘッドにネジで取り付けるための孔14が形成されている。
一方の軸受12には、ウオームギヤ組立体20の基部を回転自在に支持する大径孔15が形成され、他方の軸受12には、ウオームギヤ組立体20の先端部を回転自在に支持する小径孔16が形成されている。第3図(B)に示すように、軸受12は、基部11に対してそれぞれ外側へ傾斜している。その傾斜角度は、第3図(B)における鉛直方向に対して最大6°とされている。
なお、第2図および第3図に示す本体は、ギターのヘッドの一側に取り付けられるもので、他側に取り付けられるものは、第4図に示すように勝手違いとなる。以上の構成からなる本体10は、SPC材等の普通鋼板からプレスにより一体成形された後、浸炭焼入れが施されることによりばね性が付与されている。
第5図はウオームギヤ21を示す側面図である。ウオームギヤ21は、ウオーム22とウオーム軸23とから概略構成されている。ウオーム22とウオーム軸23との間には、フランジ24が形成されている。フランジ24のウオーム22側の端面は、テーパ状とされ、そのテーパ角θは6°以下とされている。ウオーム22の一端部には、軸受12の小径孔16と回転自在に嵌合する小径軸25が形成されている。小径軸25の先端部には、さらに小径の係合部26が形成され、係合部26の外周には、その全周に亘って延在する複数の溝27が等間隔に形成されている。また、ウオーム軸23の他端部には、それよりも小径な取付部28が形成され、取付部28の両側面には平坦な切欠28aが形成されている。そして、取付部28には、第1図に示すように摘み29が切欠28aと回転方向に係合する状態で取り付けられ、接着等の適宜な手段で固定されている。
第1図に示すように、巻取軸30の一端部には、鼓状に中央部が縮径した巻取面31が形成されている。巻取面31の中央部には、貫通孔32が形成され、そこに弦の端部を挿通して弦を巻き始めるようになっている。また、巻取軸30の他端部には、本体10の支持孔13と回転自在に嵌合する小径軸33が形成されている。小径軸33の先端部には、さらに小径な取付軸34が形成され、取付軸34の両側面には、平坦な切欠35が形成されている。
ウオームホイール40は、ウオーム22と噛み合うようになっている。ウオームホイール40の中央一端部には、巻取軸30の取付軸34と嵌合する孔41が形成され(第6図参照)、孔41は取付軸34の切欠35と回転方向において係合している。また、ウオームホイール40の中央他端部には、孔41よりも大径の座ぐり穴42が形成されている。そして、ウオームホイール40は、頭部43aを座ぐり穴42に収容されて取付軸34のネジ穴34aに螺合されたネジ43により、基部11を挟むようにして巻取軸30に取り付けられている。第1図および第6図において符号50,51はワッシャ、52はプッシュナットである。ワッシャ50,51は合成樹脂により構成されている。
以上の構成の糸巻装置を組み立てるに際しては、第1図に示す状態からワッシャ50をウオームギヤ組立体20に挿通し、ウオームギヤ組立体20を軸受12の大径孔15に挿通する。そして、ウオームギヤ21の小径軸25を軸受の小径孔16に嵌合させ、小径軸25にワッシャ51を嵌合させて係合部26にプッシュナット52を圧入する。これにより、プッシュナット52の内周が溝27に係合し、プッシュナット52は抜けない状態となる。次いで、巻取軸30の小径軸33を本体10の支持孔13に嵌合させ、巻取軸30の取付軸34にウオームホイール40の孔41を嵌合させる。そして、ネジ43を取付軸34のネジ穴34aに螺合させて糸巻装置の組立が完了する。
第6図は以上のようにして組み立てられた糸巻装置を示す図である。図に示すように、軸受12,12は、プッシュナット52を係合部26に圧入することにより、ウオームギヤ21のフランジ24とプッシュナット52との間で締め付けられ、弾性変形することで互いにほぼ平行となっている。この状態でウオームギヤ21にスラスト荷重が作用すると、軸受12にフランジ24またはプッシュナット52を介してスラスト荷重が入力される。上記構成の糸巻装置にあっては、軸受12がばね性材料で構成され、しかもウオームギヤ21を支持する大径孔15および小径孔16は丸孔とされているから軸受12の変形が生じ難い。したがって、ウオームギヤ21と軸受12との間にガタが発生し難く、バックラッシュの増加や異音あるいはウオームギヤ21の逆転によるチューニングの狂いといったトラブルの発生が生じ難い。
特に、上記実施形態では、プッシュナット52を圧入することで軸受12,12を内側に弾性変形させているから、軸受12のばね性による反発力でウオームギヤ21との間に摩擦抵抗が付与され、これにより、軸受12とウオームギヤ21とのスラスト方向のガタが無くなるとともに、摘み29を回す際に適度な抵抗が生じてチューニングがやり易くなる。また、ウオームギヤ21に振動が伝わっても異音の発生や巻取軸30の逆転といったトラブルの発生が抑制される。さらに、フランジ24と軸受12およびプッシュナット52と軸受12との間に、合成樹脂製のワッシャ50,51を介装しているから、金属どうしの面接触を防止し、ウオームギヤ21を回転させたときの摺接面の焼付きを防止することができるとともに、チューニング時にソフトで滑らかな感触を得ることができる。
また、上記実施形態では、軸受12が基部11に対して僅かに拡開するように傾斜させられており、プッシュナット52を圧入することで互いにほぼ平行とされているから、軸受12のばね性による反発力が軸方向へ直接作用し、ウオームギヤ21との摩擦抵抗が効率よく生成されるとともに、軸受12の大径孔15と小径孔16が真円の状態でウオームギヤ21と嵌合し、軸受特性が良好に維持される。
さらに、上記実施形態では、プッシュナット52をウオームギヤ21の溝27に係合させるようにしているから、ウオームギヤ21の軸受12からの抜け止めとスラスト方向への締め付け力の設定をワンタッチで行うことができ、組立の工数を低減することができる。加えて、第1図〜第6図に示すように溝27を複数連設しておけば、軸受12のスラスト方向への締付け力を適正に調整することができるとともに、溝27の位置や間隔を厳格に管理し、どの溝27にプッシュナット52を係合させるかも規格化することによって、軸受12のスラスト方向の締め付け力を一定にして品質を安定させることができる。
次に、第7図および第8図は本発明の他の実施形態を示すものである。この実施形態は、ウオームギヤ21の係合部26の外周に、溝27を1個だけ形成した点においてのみ前記実施形態と異なっており、同一の構成要素には同符号を付してある。この実施形態においても、複数の溝27を連設したことによる前記実施形態の作用・効果以外については同等のものを得ることができる。
以上説明したように本発明によれば、軸受をばね性材料で構成しているので、製造コストをさ程増加させることなく軸受のスラスト方向への変形を抑制することができるとともに、ウオームギヤと軸受のスラスト方向のガタを消失させることができ、したがって、チューニングがやり易く異音の発生やウオームギヤの逆転といったトラブルも生じない等の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の実施形態の糸巻装置を示す組立平面図である。
第2図は実施形態における本体を示す平面図である。
である。
第3図Aは実施形態における本体の側面図であり、第3図Bは第2図の線B−B断面図である。
第4図Aは第3図に示す本体の勝手違いのものを示す側面図、第4図Bはその断面図である。
第5図は実施形態におけるウオームギヤを示す側面図である。
第6図は実施形態の糸巻装置を示す側断面図である。
第7図は本発明の他の実施形態の糸巻装置を示す側断面図である。
第8図は他の実施形態におけるウオームギヤを示す側面図である。
第9図は従来の糸巻装置を示す組立斜視図である。
1.技術分野
本発明は、ギターなどの弦楽器の糸巻装置およびその製造方法に係り、特に、ウオームギヤと軸受とのガタが生じないようにすることにより、ギヤどうしのバックラッシュを低減する技術に関する。
2.背景技術
第9図は従来のクラシックギター用の糸巻装置の一例を示す図である。この図に示す糸巻装置は、ギターのヘッドに取り付けられる本体1に、一端部に摘み2が固定されたウオームギヤ3を回転自在に支持し、本体1にウオームギヤ3と噛み合うウオームホイール4を回転自在に支持するとともに、ウオームホール4にこれと軸線を一致させた巻取軸5をネジ6で取り付けて構成されている。
ここで、本体1には、普通鋼板をプレス成形してほぼ直角に曲げ起こされた複数対の軸受7が形成されている。軸受7は、側部が開放されてなるU字状の凹部7aを備え、凹部7aにウオームギヤ3の両端部に形成された溝3aを嵌合させることによって、ウオームギヤ3の両端部を支持している。
また、2つの軸受7,7によってウオームギヤ3の壁部を両側から挟み込むことによって、ウオームギヤ3の回転に抵抗を与え、その逆転(弦の緩み側への回転)防止としている。そして、この糸巻装置は、巻取軸5の巻取面5aに弦を巻き、摘み2を回転させて弦を巻き取ったり巻き解いたりすることによって、チューニングを行うようになっている。
しかしながら、上記のような糸巻装置にあっては、ウオームギヤ3とウオームホイール4との間のバックラッシュが大きく、さらに、使用している間にバックラッシュが徐々に大きくなるため、チューニングがやり難くしかも演奏にも支障を来すという問題があった。
すなわち、上記のような糸巻装置では、軸受7の側方が開放されているので組立が簡単ではあるが、そのためにウオームギヤ3とウオームホイール4との間に比較的大きなクリアランスを設定しており、ウオームギヤ3がウオームホイール4に対してクリアランスの分だけ移動可能となる。このため、両者の間のバックラッシュが大きく、摘み2を少し回転させただけでは巻取軸5が追従しないために、微妙なチューニングがやり難くいという問題がある。
また、ウオームギヤ3を第9図における側方から見て時計方向へ回転させると、ウオームギヤ3に作用する図中点Pを中心とする時計回りのモーメントにより、ウオームギヤ3がウオームホイール4側へ移動する。その結果、両者の歯面どうしの擦過により歯面が摩耗し、ギヤのバックラッシュがさらに大きくなってしまう。さらに、上記糸巻装置では、軸受7が強度の低い普通鋼板で製造され、しかも、軸受7の側方が開放されているために丸穴の軸受と比べて軸を支える壁部が少ない。
一方、ウオームギヤ3の溝3aは、軸受7の製造誤差と組立作業性を考慮して、軸受7の厚さよりも広く形成されている。このため、ウオームギヤ3から受けるスラスト荷重により、当初はウオームギヤ3の溝3a,3aを両側から挟み込んでいた軸受7,7が変形して開いてしまい、その結果、ウオームギヤ3は、そのスラスト方向(軸線方向)へも移動可能となってしまう。そのようなスラスト方向のガタが生じた場合には、ウオームギヤ3を回転させても、その溝3aが軸受7に当接するまでは空回りの状態となるから、摘み2を回転させたときの遊びが大きくチューニングが非常にやり難くなる。
さらに、ウオームギヤ3と軸受7との間にガタがあってウオームギヤ3がフリーな状態であると、演奏中に弦の振動がウオームギヤ3に伝わって異音を発生したり、また、ウオームギヤ3が振動によって逆転し、チューニングが狂うという問題も生じる。
軸受を丸穴のものにすれば、ウオームギヤ3のウオームホイール4側への移動を阻止し、大きなバックラッシュとギヤ歯面の摩耗によるバックラッシュの拡大という問題は解決される。しかしながら、軸受が丸穴であるから軸受の強度も向上するものの、それだけではウオームギヤから受けるスラスト荷重による変形防止には不充分であり、したがって、軸受の変形によるガタの発生と、これに起因する異音の発生およびウオームギヤの逆転といった問題は依然として残っていた。
ここで、本体と軸受とを別々に作製し、両者を溶接やかしめ加工で接合した糸巻装置も提供されている。この糸巻装置では、ウオームギヤに形成したフランジやワッシャおよびネジなどを用いて軸受のそれぞれを両側から完全に挟み込んでいる。このような糸巻装置では、いずれの方向のスラスト荷重も一対の軸受で支持しているから、軸受の変形に対する抵抗が高い。しかしながら、この軸受では、それぞれの軸受を挟み込むための多くの部品を必要とするばかりでなく、ウオームギヤの抜止めのためのかしめ加工も必要となり、組立の工数も大きいという問題がある。
また、本体と軸受とをプレス成形で一体的に作製する糸巻装置の中には、ウオームギヤの一端部にリングを回転自在に支持し、このリングの外周にネジを形成し、軸受の内周に形成したネジと螺合させるようにしたものもある。このような糸巻装置では、リングを移動させてウオームギヤのウオーム端面を押圧することにより、軸受を外側に開くように締め付けることができ、軸受とウオームギヤとのスラスト方向のガタを消失させることができる。その他、ウオームギヤの軸にネジを形成してそこに螺合させたリングで軸受を締め付けるように構成したものもある。しかしながら、このような糸巻装置においても、複雑な部品の点数が増加して製造コストが割高になるという問題がある。
本発明は、製造コストをさ程増加させることなく軸受のスラスト方向への変形を抑制することができるとともに、ウオームギヤと軸受のスラスト方向のガタを消失させることができ、したがって、チューニングがやり易く異音の発生やウオームギヤの逆転といったトラブルも生じない糸巻装置を提供することを目的としている。
発 明 の 概 要
本発明の弦楽器の糸巻装置は、弦楽器のヘッド部に取り付けられる本体と、この本体と一体的に構成されるとともにその両側部から立ち上がって互いに相対向する一対の軸受と、これら一対の軸受に相互に対向するように設けられた丸孔に両端部が回転自在に支持されるとともに一端部に摘みを有するウオームギヤと、このウオームギヤにウオームホイールを介して接続された巻取軸とを備えた弦楽器用糸巻装置において、軸受をばね性材料で構成したことを特徴としている。
上記構成の糸巻装置にあっては、軸受がばね性材料で構成され、しかも丸孔のものであるから、ウオームギヤからスラスト荷重が入力されても変形し難い。したがって、ウオームギヤと軸受との間にガタが発生し難く、バックラッシュの増加や異音あるいはウオームギヤの逆転によるチューニングの狂いといったトラブルの発生が抑制される。
ここで、ばね性材料とは、たとえば、ばね用ステンレス板材、SUP材やばね用リン青銅といったばね用材料は勿論のこと、普通の材料に熱処理等を施して弾性限界を高めたものも含まれる。たとえば、冷間圧延軟鋼板(SPC材)のような普通鋼板に、表面から好ましくは深さ0.05〜0.3mm、より好ましくは深さ0.1〜0.15mmまでの浸炭焼入れ処理を施したものを用いることにより、表面の抗張力が高まり、弾性限度が高くなってばね性を付与することができる。あるいは、普通鋼板に窒化や炭窒化を施したものを用いても良い。ただし、これらの場合には弾性限界の上昇(ばね性)が充分ではなく、また、メッキ処理が困難となるので浸炭焼入れの方が好ましい。なお、浸炭焼入れ等の処理は、軸受(本体との境界部分も含む)に施されていれば足りる。
軸受は、立ち上がる方向へ向けて僅かに拡開するように本体に対して傾斜して設け、ウオームギヤの両端部に、軸受を接近方向へ向けて両側から締め付ける締結手段を設けことが望ましい。このような構成では、軸受を締結手段で締め付けることにより軸受が弾性変形し、軸受のばね性による反発力でウオームギヤとの間に摩擦抵抗が付与される。これにより、軸受とウオームギヤとのスラスト方向のガタが無くなるとともに、摘みを回す際に適度な抵抗が生じてチューニングがやり易くなる。
さらに、ウオームギヤに振動が伝わっても異音の発生や巻取軸の逆転といったトラブルの発生が抑制される。また、予め拡開させた軸受を締め付けると、それらが互いに平行またはそれに近い状態となるので、軸受のばね性による反発力が軸方向へ直接作用し、ウオームギヤとの摩擦抵抗が効率よく生成される。さらに、軸受の丸孔が真円の状態でウオームギヤと嵌合し、軸受特性が良好に維持される。なお、軸受の本体に対する傾斜角度は、本体と直交する面に対して0〜6°の範囲が適度な締付け力を得る上で好適である。
具体的には、締結手段は、ウオームギヤの基端部側に設けたフランジ部と、同ウオームギヤの先端部に圧入したプッシュナットを備え、ウオームギヤの先端部に、プッシュナットの内周が係合するべく周方向へ刻設された溝を設けるのが好ましく、そのような溝を複数条設ければさらに好適である。プッシュナットは、一般にワッシャ状の部材の中央部を板厚方向に窪ませて、そこに放射状にスリットを形成したものである。プッシュナットに軸を挿入したときにスリットが開く方向へは挿通できるが、逆方向ではスリットが閉じ、プッシュナットが軸に噛み込んで抜けないようになっている。
一方、ウオームギヤは、一般にはメッキを施して使用されるので、そのままでは摩擦係数が小さく、プッシュナットがウオームギヤから抜ける可能性がある。したがって、上記のように、ウオームギヤの先端部に溝を形成してプッシュナットの内周と係合させることが好ましい。これにより、ウオームギヤの軸受からの抜け止めと、スラスト方向への締め付け力の設定をワンタッチで行うことができ、組立の工数を低減することができる。
また、溝を複数連設することにより、軸受のスラスト方向への締付け力を適正に調整することができるとともに、溝の位置や間隔(例えば0.1mm)を厳格に管理し、どの溝にプッシュナットを係合させるかも規格化することによって、軸受のスラスト方向の締め付け力を一定にして品質を安定させることができる。さらに、万が一軸受が内側へ変形した場合には、プッシュナットをさらに締め付けてウオームギヤと軸受とのガタを消失させることができる。
ウオームギヤの基端部側に設けるフランジ部の軸受側の面は、軸線に対して直角であっても良く、また、軸受の傾斜に合わせてテーパ状にすることもできる。また、フランジ部と軸受およびプッシュナットと軸受との間には、合成樹脂製または表面に潤滑被膜を設けた金属製のワッシャを介装することが望ましい。これにより、金属どうしの面接触を防止し、ウオームギヤを回転させたときの摺接面の焼付きを防止することができるとともに、チューニング時にソフトで滑らかな感触を得ることができる。
ワッシャの材質としては、ポリアセタール樹脂にポリテトラフルオロエチレンを10重量%以上含むもの、あるいは、金属製のワッシャの表面に二硫化モリブデンなどの固体潤滑材を被膜したものや、表面をメッキした後にテフロン混合被膜を設けたものなどを用いることができる。
次に、上記のような糸巻装置は、普通鋼板を板金成形して両側から軸受が互いに相対向するように立ち上がる本体を形成し、この本体に浸炭焼入れを施した後メッキ等の仕上げ加工を施し、次いで、軸受に、一端部に摘みを有するウオームギヤを回転自在に装着するとともに、本体に、ウオームギヤと噛み合うウオームホイールを有する巻取軸を装着することにより製造すると好適である。この製造方法では普通鋼板を板金成形するから、ばね用材料を用いる場合と比較して材料費を大幅に低減することができる。また、ばね用材料や浸炭焼入れをした普通鋼板を加工するものではないから、加工費も大幅に低減することができる。
発明を実施するための最良の形態
本発明の実施の形態について第1図〜第6図を参照して説明する。
第1図は実施の形態の糸巻装置を示す組立図である。図において符号10は本体、20はウオームギヤ組立体、30は巻取軸、40はウオームホイールである。以下、これらの構成を順に説明する。第2図は本体10を示す平面図である。この図に示すように、本体10は平面視略長方形状をなし、平らな基部11と、基部11の両側から立ち上がる軸受12とから概略構成されている。基部11には、巻取軸30を回転自在に支持するための支持孔13が形成されている。また、基部11には、糸巻装置をクラシックギターのヘッドにネジで取り付けるための孔14が形成されている。
一方の軸受12には、ウオームギヤ組立体20の基部を回転自在に支持する大径孔15が形成され、他方の軸受12には、ウオームギヤ組立体20の先端部を回転自在に支持する小径孔16が形成されている。第3図(B)に示すように、軸受12は、基部11に対してそれぞれ外側へ傾斜している。その傾斜角度は、第3図(B)における鉛直方向に対して最大6°とされている。
なお、第2図および第3図に示す本体は、ギターのヘッドの一側に取り付けられるもので、他側に取り付けられるものは、第4図に示すように勝手違いとなる。以上の構成からなる本体10は、SPC材等の普通鋼板からプレスにより一体成形された後、浸炭焼入れが施されることによりばね性が付与されている。
第5図はウオームギヤ21を示す側面図である。ウオームギヤ21は、ウオーム22とウオーム軸23とから概略構成されている。ウオーム22とウオーム軸23との間には、フランジ24が形成されている。フランジ24のウオーム22側の端面は、テーパ状とされ、そのテーパ角θは6°以下とされている。ウオーム22の一端部には、軸受12の小径孔16と回転自在に嵌合する小径軸25が形成されている。小径軸25の先端部には、さらに小径の係合部26が形成され、係合部26の外周には、その全周に亘って延在する複数の溝27が等間隔に形成されている。また、ウオーム軸23の他端部には、それよりも小径な取付部28が形成され、取付部28の両側面には平坦な切欠28aが形成されている。そして、取付部28には、第1図に示すように摘み29が切欠28aと回転方向に係合する状態で取り付けられ、接着等の適宜な手段で固定されている。
第1図に示すように、巻取軸30の一端部には、鼓状に中央部が縮径した巻取面31が形成されている。巻取面31の中央部には、貫通孔32が形成され、そこに弦の端部を挿通して弦を巻き始めるようになっている。また、巻取軸30の他端部には、本体10の支持孔13と回転自在に嵌合する小径軸33が形成されている。小径軸33の先端部には、さらに小径な取付軸34が形成され、取付軸34の両側面には、平坦な切欠35が形成されている。
ウオームホイール40は、ウオーム22と噛み合うようになっている。ウオームホイール40の中央一端部には、巻取軸30の取付軸34と嵌合する孔41が形成され(第6図参照)、孔41は取付軸34の切欠35と回転方向において係合している。また、ウオームホイール40の中央他端部には、孔41よりも大径の座ぐり穴42が形成されている。そして、ウオームホイール40は、頭部43aを座ぐり穴42に収容されて取付軸34のネジ穴34aに螺合されたネジ43により、基部11を挟むようにして巻取軸30に取り付けられている。第1図および第6図において符号50,51はワッシャ、52はプッシュナットである。ワッシャ50,51は合成樹脂により構成されている。
以上の構成の糸巻装置を組み立てるに際しては、第1図に示す状態からワッシャ50をウオームギヤ組立体20に挿通し、ウオームギヤ組立体20を軸受12の大径孔15に挿通する。そして、ウオームギヤ21の小径軸25を軸受の小径孔16に嵌合させ、小径軸25にワッシャ51を嵌合させて係合部26にプッシュナット52を圧入する。これにより、プッシュナット52の内周が溝27に係合し、プッシュナット52は抜けない状態となる。次いで、巻取軸30の小径軸33を本体10の支持孔13に嵌合させ、巻取軸30の取付軸34にウオームホイール40の孔41を嵌合させる。そして、ネジ43を取付軸34のネジ穴34aに螺合させて糸巻装置の組立が完了する。
第6図は以上のようにして組み立てられた糸巻装置を示す図である。図に示すように、軸受12,12は、プッシュナット52を係合部26に圧入することにより、ウオームギヤ21のフランジ24とプッシュナット52との間で締め付けられ、弾性変形することで互いにほぼ平行となっている。この状態でウオームギヤ21にスラスト荷重が作用すると、軸受12にフランジ24またはプッシュナット52を介してスラスト荷重が入力される。上記構成の糸巻装置にあっては、軸受12がばね性材料で構成され、しかもウオームギヤ21を支持する大径孔15および小径孔16は丸孔とされているから軸受12の変形が生じ難い。したがって、ウオームギヤ21と軸受12との間にガタが発生し難く、バックラッシュの増加や異音あるいはウオームギヤ21の逆転によるチューニングの狂いといったトラブルの発生が生じ難い。
特に、上記実施形態では、プッシュナット52を圧入することで軸受12,12を内側に弾性変形させているから、軸受12のばね性による反発力でウオームギヤ21との間に摩擦抵抗が付与され、これにより、軸受12とウオームギヤ21とのスラスト方向のガタが無くなるとともに、摘み29を回す際に適度な抵抗が生じてチューニングがやり易くなる。また、ウオームギヤ21に振動が伝わっても異音の発生や巻取軸30の逆転といったトラブルの発生が抑制される。さらに、フランジ24と軸受12およびプッシュナット52と軸受12との間に、合成樹脂製のワッシャ50,51を介装しているから、金属どうしの面接触を防止し、ウオームギヤ21を回転させたときの摺接面の焼付きを防止することができるとともに、チューニング時にソフトで滑らかな感触を得ることができる。
また、上記実施形態では、軸受12が基部11に対して僅かに拡開するように傾斜させられており、プッシュナット52を圧入することで互いにほぼ平行とされているから、軸受12のばね性による反発力が軸方向へ直接作用し、ウオームギヤ21との摩擦抵抗が効率よく生成されるとともに、軸受12の大径孔15と小径孔16が真円の状態でウオームギヤ21と嵌合し、軸受特性が良好に維持される。
さらに、上記実施形態では、プッシュナット52をウオームギヤ21の溝27に係合させるようにしているから、ウオームギヤ21の軸受12からの抜け止めとスラスト方向への締め付け力の設定をワンタッチで行うことができ、組立の工数を低減することができる。加えて、第1図〜第6図に示すように溝27を複数連設しておけば、軸受12のスラスト方向への締付け力を適正に調整することができるとともに、溝27の位置や間隔を厳格に管理し、どの溝27にプッシュナット52を係合させるかも規格化することによって、軸受12のスラスト方向の締め付け力を一定にして品質を安定させることができる。
次に、第7図および第8図は本発明の他の実施形態を示すものである。この実施形態は、ウオームギヤ21の係合部26の外周に、溝27を1個だけ形成した点においてのみ前記実施形態と異なっており、同一の構成要素には同符号を付してある。この実施形態においても、複数の溝27を連設したことによる前記実施形態の作用・効果以外については同等のものを得ることができる。
以上説明したように本発明によれば、軸受をばね性材料で構成しているので、製造コストをさ程増加させることなく軸受のスラスト方向への変形を抑制することができるとともに、ウオームギヤと軸受のスラスト方向のガタを消失させることができ、したがって、チューニングがやり易く異音の発生やウオームギヤの逆転といったトラブルも生じない等の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の実施形態の糸巻装置を示す組立平面図である。
第2図は実施形態における本体を示す平面図である。
である。
第3図Aは実施形態における本体の側面図であり、第3図Bは第2図の線B−B断面図である。
第4図Aは第3図に示す本体の勝手違いのものを示す側面図、第4図Bはその断面図である。
第5図は実施形態におけるウオームギヤを示す側面図である。
第6図は実施形態の糸巻装置を示す側断面図である。
第7図は本発明の他の実施形態の糸巻装置を示す側断面図である。
第8図は他の実施形態におけるウオームギヤを示す側面図である。
第9図は従来の糸巻装置を示す組立斜視図である。
Claims (6)
- 弦楽器のヘッド部に取り付けられる本体と、この本体と一体的に構成されるとともにその両側部から立ち上がって互いに相対向する一対の軸受と、これら一対の軸受に相互に対向するように設けられた丸孔に両端部が回転自在に支持されるとともに一端部に摘みを有するウオームギヤと、このウオームギヤにウオームホイールを介して接続された巻取軸とを備えた弦楽器用糸巻装置において、上記軸受をばね性材料で構成したことを特徴とする弦楽器用糸巻装置。
- 前記軸受は、普通鋼板に浸炭焼入れを施したものであることを特徴とする請求項1に記載の弦楽器用糸巻装置。
- 前記軸受を、立ち上がる方向へ向けて僅かに拡開するように前記本体に対して傾斜して設け、前記ウオームギヤの両端部に、上記軸受を両側から締め付ける締結手段を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の弦楽器用糸巻装置。
- 前記締結手段は、前記ウオームギヤの基端部側に設けたフランジ部と、同ウオームギヤの先端部に圧入したプッシュナットを備え、ウオームギヤの上記先端部に、上記プッシュナットの内周が係合するべく周方向へ刻設された溝を少なくとも1条設けたことを特徴とする請求項3に記載の弦楽器用糸巻装置。
- 前記フランジ部と前記軸受および前記プッシュナットと軸受との間に、合成樹脂製または表面に潤滑被膜を設けた金属製のワッシャを介装したことを特徴とする請求項4または5に記載の弦楽器用糸巻装置。
- 普通銅板を板金成形して両側から軸受が互いに相対向するように立ち上がる本体を形成し、この本体に浸炭焼入れを施した後メッキ等の仕上げ加工を施し、次いで、軸受に、一端部に摘みを有するウオームギヤを回転自在に装着するとともに、上記本体に、上記ウオームギヤと噛み合うウオームホイールを有する巻取軸を装着することを特徴とする弦楽器用糸巻装置の製造方法。
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Legal Events
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Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20071018 |
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A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20100805 |
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A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20101125 |