JPS6411656B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は耐熱性にすぐれたフイルム及びその他
の加工体を与える貯蔵安定性にすぐれた耐熱性樹
脂組成物に関する。

ポリアミドイミド樹脂がすぐれた耐熱性、耐薬
品性、機械特性を有することはよく知られてお
り、耐熱電線用塗料、金属表面保護塗料、フイル
ム、積層品、接着剤、粉末成型品等として広く実
用に供されている。ポリアミドイミド樹脂の製造
法についても公知（例えば、特公昭44−19274号
公報）であるが、製造条件によつては得られた樹
脂組成物が経日により増粘し、いわゆる貯蔵安定
性が劣る場合がある。経日により増粘した場合に
は、例えば金属表面保護塗料として用いる場合、
最初に設定した塗装条件を変更したり、増粘した
樹脂組成物を溶剤で希釈して粘度を調節しなけれ
ばならない等の不都合が生じ、また、溶剤を揮発
させて形成した保護塗膜の諸特性が変化すること
もある。

特に電子部品用の回路板等に応用するような場
合は数ミクロンの厚さのフイルムを形成させなけ
ればならず、粘度変化は大きな問題である。

本発明の目的はこのような問題のない、貯蔵安
定性にすぐれた耐熱性樹脂組成物を提供すること
にある。

すなわち本発明は、一分子中に二個以上のイソ
シアネート基を有する多価イソシアネート及び３
価以上の多価カルボン酸の無水物を有機溶媒中で
反応させ、ついでアルコール類を添加後加熱して
得られる耐熱性樹脂組成物に関する。

耐熱性、機械的特性、化学的特性の観点から、
カルボキシル基と酸無水物基の当量の和１に対し
てイソシアネート基の当量を0.6〜1.1とすること
が好ましく0.95〜1.05の実質的に等しい当量比で
反応させることが好ましい。

一分子中に二個以上のイソシアネート基を有す
る多価イソシアネートとしては脂肪族、脂環族、
芳香脂肪族、芳香族及び複素環ポリイソシアネー
ト、例えばエチレンジイソシアネート、１，４−
テトラメチレンイソシアネート、１，６−ヘキサ
メチレンジイソシアネート、１，12−−ドデカン
ジイソシアネート、シクロブテン１，３−ジイソ
シアネート、シクロヘキサン１，３−及び１，４
−ジイソシアネート、１，３及び１，４−フエニ
レンジイソシアネート、２，４−及び２，６−ト
リレンジイソシアネート及びこれらの異性体の混
合物、ジフエニルメタン−２，4′−ジイソシアネ
ート、ジフエニルメタン−４，4′−ジイソシアネ
ート、ジフエニルエーテル−４，4′−ジイソシア
ネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレ
ン−１，４−ジイソシアネート、ナフタレン−
１，５−ジイソシアネート等が用いられ、特に制
限はない。

３価以上の多価カルボン酸の無水物としては、
無水トリメリツト酸、無水ピロメリツト酸、無水
ベンゾフエノンテトラカルボン酸、無水１，２，
３，４−ブタンテトラカルボン酸、無水ビシクロ
−〔２，２，２〕−オクト−（７）−エン−２：３，
５：６−テトラカルボン酸等を使用することがで
きる。

有機溶媒としては、Ｎ−メチル−２−ピロリド
ン、Ｎ，Ｎ−ジメチルアセトアミド、Ｎ，Ｎ−ジ
メチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ニ
トロベンゼン等を使用することができる。

アルコール類としては、メタノール、エタノー
ル、ｎ−プロパノール、ｉ−プロパノール、ｎ−
ブタノール、ｉ−ブタノール、ｔ−ブタノール、
メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルカ
ルビトール、ベンジルアルコール、シクロヘキサ
ノール等が用いられる。

アルコール類の添加量は、一分子中に二個以上
のイソシアネート基を有する多価イソシアネート
及び３価以上の多価カルボン酸の無水物を有機溶
媒中で反応させて得た樹脂に対し0.1〜10重量％
とすることが好ましい。

0.1重量％未満では貯蔵安定性向上効果が乏し
く、10重量％を越えると、溶剤を除去して得られ
たフイルムの機械特性が低下する場合がある。

ポリウレタン絶縁塗料等の分野では、イソシア
ネート基含有モノマあるいは比較的低分子量のイ
ソシアネート基含有化合物のイソシアネート基を
フエノール、クレゾール、キシレノール等のフエ
ノール系化合物でマスクしたものを材料の一部と
して利用する場合があり、その例として日本ポリ
ウレタン社製商品名コロネートAPS、MS−50が
あげられるが、これらのフエノール系化合物は本
発明には適用できない。後述の比較例で示すよう
に、フエノール系化合物を添加して加熱しても組
成物の貯蔵安定性は全く向上しないからである。

このように本発明は多くの試行と考察を繰り返
してなされたもので、本発明によりはじめて少量
の（通常は樹脂に対して４重量％以下で十分であ
る。）アルコール類を添加し加熱することによつ
て極めて効果的に貯蔵安定性が向上されるのであ
る。

本発明になる耐熱性樹脂組成物を通常の条件で
直接又は他の絶縁物を介して電気導体上に塗布焼
き付けて絶縁電線とされる。この樹脂組成物を塗
布焼き付けた上にさらに他の絶縁物を被覆して絶
縁電線としてもよい。

他の絶縁物としては、汎用ポリエステル塗料、
トリス（２−ヒドロキシエチル）イソシアネート
変性ポリエステル塗料、ポリエステルイミド塗
料、トリス（２−ヒドロキシエチル）イソシアネ
ート変性ポリエステルイミド塗料、ポリウレタン
塗料、油性塗料、ポリビニルホルマール塗料、ナ
イロン塗料等の他に、主として絶縁電線に自己融
着性を付与するために用いられるエポキシ系塗
料、熱可塑性ポリエステル塗料、ポリビニルブチ
ラール系塗料等が用いられる。

次に本発明の実施例について説明するが、本発
明はこれらの実施例に限定されるものではない。

実施例 Ａ ジフエニルメタン−４，4′−ジイソシアネート
912.6ｇ、無水トリメリツト酸697.4ｇ（イソシア
ネート基／（カルボキシル基と酸無水物基）の当
量比＝1.005）、Ｎ−メチル−２−ピロリドン2415
ｇを温度計、撹拌機、窒素導入管を備えた５フ
ラスコに入れ、90℃で1.5時間、100℃で1.5時間、
120℃で1.5時間135℃で2.5時間反応させ、キシレ
ン575ｇを加えて希釈した。得られた組成物の初
期粘度は29ポアズであつたが、23℃で１ケ月放置
後の粘度は38ポアズであり、また60℃で１ケ月放
置後の粘度は45ポアズであつた。

実施例 １ 実施例Ａで得られた組成物2000ｇにｎ−ブタノ
ール17.5ｇを添加し、110℃で４時間加熱撹拌し
た。得られた組成物の粘度は29ポアズであり、23
℃で１ケ月放置後の粘度は29ポアズ、60℃で１ケ
月放置後の粘度は29ポアズで、いずれの場合にも
経日による粘度変化は認められなかつた。

比較例 １ 実施例Ａで得られた組成物400ｇにフエノール
3.5ｇを添加し100℃で３時間撹拌した。得られた
組成物の粘度は30ポアズで、23℃で１ケ月放置後
の粘度は42ポアズであり、フエノールを添加して
も貯蔵安定性の改良効果は認められなかつた。

比較例 ２ 実施例Ａで得られた組成物400ｇにメタクレゾ
ール5.6ｇを添加し100℃で３時間撹拌した。得ら
れた組成物の粘度は31ポアズで、23℃で１ケ月放
置後の粘度は45ポアズであり、メタクレゾールを
添加しても貯蔵安定性改良効果は認められなかつ
た。

実施例１で得られた組成物を常法により、直径
１mmの銅線に塗布し、炉温350℃で焼き付けるこ
とを７回繰り返して得られたエメナル銅線の特性
を表１に示した。

表１ エナメル銅線特性 項 目 実施例１ 皮膜厚さ（mm） 0.038 可とう性 常態巻付 １倍径良 20％伸長後巻付 １倍径良 絶縁破壊電圧 （kV） 13.1 耐摩耗性（600ｇ） （回） 190 熱軟化温度（２Kg） （℃） 430 耐熱衝撃性（250℃−1h） １倍径良 耐劣化性（200℃−6h） １倍径良 以上のように、本発明になる樹脂組成物は耐熱
性、貯蔵安定性にすぐれており、耐熱電線用塗
料、金属表面保護塗料、フイルム、積層品、接着
剤、粉末成形品等として広く工業的に応用するこ
とが可能である。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 一分子中に二個以上のイソシアネート基を有
   する多価イソシアネート及び３価以上の多価カル
   ボン酸の無水物を有機溶媒中で反応させ、ついで
   アルコール類を添加後加熱して得られる耐熱性樹
   脂組成物。 ２ カルボキシル基と酸無水物基の当量の和１に
   対してイソシアネート基の当量を0.6〜1.1として
   反応させて得られる特許請求の範囲第１項記載の
   耐熱性樹脂組成物。 ３ 一分子中に二個以上のイソシアネート基を有
   する多価イソシアネート及び３価以上の多価カル
   ボン酸の無水物を有機溶媒中で反応させて得た樹
   脂に対し、アルコール類を0.1〜10重量％とした
   特許請求の範囲第１項又は第２項記載の耐熱性樹
   脂組成物。