JPS6340270B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明はシリンダヘツドの締付時におけるシリ
ンダボアの変形を防止するようにしたエンジンの
シリンダブロツクの改良に関するものである。

従来より、多気筒水冷式エンジンにおいて、シ
リンダブロツク上面にガスケツトを介在させてシ
リンダヘツドをヘツドボルトで締付固定した場合
に、上記シリンダブロツク、特にシリンダボアに
好ましくない変形が生起することは良く知られて
いる。

すなわち、上記ガスケツトは、シリンダボアの
内径に対応した開口の周辺のグロメツト部で高圧
燃焼ガスのシールを行うように、このグロメツト
部の剛性が他の部分に比べて大きくなるように形
成されている。よつて、上記ガスケツトを介在さ
せシリンダヘツドを多数のヘツドボルトによつて
締め付けた場合に、シリンダボア周縁は剛性の大
きいガスケツトのグロメツト部によつて他の部分
に比較して面圧が高くなり、上間ボルトのボルト
穴近傍は面圧が低くなる。このため、シリンダブ
ロツクのボルト穴近傍はボルト軸力によつてシリ
ンダヘツド側に引き寄せられる引張り荷重を受け
るのに対し、シリンダボア周縁はボルト軸力によ
つて圧縮荷重を受けることになる。そして、この
相反する作用力によつて、シリンダブロツクに変
形が発生し易くなる。

このようにシリンダブロツク、特にシリンダボ
アに変形が発生すると、シリンダボアの真円度、
真直度が狂い、シリンダボア内周面とピストンと
の摺接に悪影響を与え、ピストン等の耐久性が劣
化したり、騒音が発生するなどの不具合が生じ
る。

本出願人はかかる点に鑑み、実開昭56−13521
号において、ヘツドボルトの締付力によるシリン
ダボア周縁の応力伝播を寸断すべく、ヘツドボル
ト用ボルト穴周辺の上壁上面に溝を設け、この溝
に応力集中させてシリンダボア周縁への応用伝播
を軽減するとともに、シリンダボア周縁に伝播さ
れた応力に対しては上記溝とシリンダボアとの間
の上壁下面からシリンダボアの側壁に至つて設け
たリブでシリンダ側壁を補強することにより、シ
リンダボアの変形の発生を防止するようにしたエ
ンジンのシリンダブロツクを提案した。

ところで、シリンダブロツクのシリンダボア周
縁のボルト穴近傍のボルト軸力の圧縮荷重による
沈み込みが大きいほど、シリンダボアの真円度を
くるわせる変形が大きくなる。従つて、シリンダ
ブロツクのシリンダボア周縁のボルト穴近傍の沈
み込みはできるだけ少なくする必要があるが、シ
リンダボア周縁のボルト穴近傍部分は、シリンダ
ボア周縁の他の部分に比べてボルト軸力が高く作
用するため、沈み込み代は大きい。しかし、上記
従来の考案では、リブはヘツドボルト用ボルト穴
周辺の上壁上面に設けた溝とシリンダボアとの間
の上壁下面からシリンダボアの側壁に至つて設け
られているため、シリンダボア周縁のボルト穴近
傍のボルト軸力による沈み込みに対する補強は充
分ではなかつた。

本発明の目的は、ボルト軸力によつて引つ張ら
れるボルト穴近傍のシリンダボア周縁部を他のシ
リンダボア周縁部より剛性を高め、ボルト軸力に
よるボルト穴近傍のシリンダボア周縁部の沈み込
みをできるだけ少なくして、この沈み込み（圧
縮）と引張りの相反する作用によつてもたらされ
るシリンダボアの変形を防止したエンジンのシリ
ンダブロツクを提供することである。

このため、本発明は、シリンダヘツドを取り付
けるヘツドボルトのボルト穴をシリンダボア周辺
の上壁に穿設し、シリンダボア周縁に対応した開
口周辺にグロメツトが配設されたガスケツトを介
してシリンダヘツドが締結され、この締結状態に
おいてシリンダボア周縁が上記ボルト穴周辺部よ
り高い面圧を受けるエンジンのシリンダブロツク
において、上記シリンダボアの側壁のシリンダボ
アの軸と直交する同一横断面における上記ボルト
穴近傍のみにシリンダの周方向に延びるリブを設
けたことを特徴としている。

以下、添付の図面を参照して本発明の実施例を
説明する。

第１図および第２図に示す多気筒エンジン用の
シリンダブロツクにおいて、１，１，…は複数個
直列に配設されたシリンダボア、２はこれらシリ
ンダボア１，１，…の外周を囲繞し、下方のクラ
ンクケース（図示せず。）に連接されたブロツク
外壁であつて、該ブロツク外壁２は上記シリンダ
ボア１，１，…の上下端において上壁３ａと下壁
３ｂとにより一体に連結され、該ブロツク外壁２
とシリンダボア１，１，…の側壁４との間に冷却
水が循環するウオータジヤケツト５が形成されて
いる。

また、上記の上壁３ａのシリンダボア１の四方
向周辺には、シリンダヘツド６を取り付けるため
のヘツドボルト７を螺合するボルト穴８，…８が
穿設され、上記シリンダヘツド６とシリンダブロ
ツクの上壁３ａの上面との間には、ガスケツト９
が介装される。

上記シリンダボア１，１，…の側壁４には、シ
リンダブロツクのシリンダボア１上端の周辺部に
グロメツト部１２を当接させ、シリンダブロツク
の上壁３ａの上面にガスケツト９を介在させてシ
リンダヘツド６をヘツドボルト７で締付固定した
場合に最大変形する位置、すなわち、上記ボルト
穴８，…，８に対向する位置とその近傍に、円弧
状もしくは三日月状のリブ１１，１１，…を上記
側壁４の周面に沿つて突出させている。

上記リブ１１，１１，…は、シリンダブロツク
鋳造時にシリンダブロツクと一体に形成される。

上記のようにすれば、ヘツドボルト７のボルト
軸力によつて引つ張られるボルト穴８近傍のシリ
ンダボア１周縁部は上記リブ１１によつて他のシ
リンダボア１周縁部よりも剛性が高くなり、上記
ボア軸力によるボルト穴８近傍のシリンダボア１
周縁部の沈み込みが少なくなる。すなわち、第２
図に示すように、シリンダヘツド６をガスケツト
９を介在させてヘツドボルト７により締付固定し
た際、上記ガスケツト９のグロメツト部１２が当
接するシリンダブロツクのシリンダボア１上端の
周辺部のボルト穴８の近傍に作用する締付圧力に
より、シリンダボア１の側壁４が２点鎖線で示す
ようにシリンダボア１の径方向に変形しようとし
ても、上記側壁４はリブ１１，１１，…で補強さ
れているため、シリンダボア１の側壁４がその径
方向に変形することはなくなり、また、２点鎖線
で示す変形によりシリンダボア１の側壁４が連続
的に交互に凹凸変形しようとするのも第３図に示
すように千鳥状に配設したリブ１１，１１，…に
よつてシリンダボア１の側壁４の径方向への変形
による真円度および真直度に狂いが生じることは
ない。

また、上記のようにすれば、リブ１１，１１，
…は、第３図に示すように、シリンダボア１の側
壁４の周面に、ウオータジヤケツト５内を矢印Ａ
で示す冷却水の流れに沿つて突出されているた
め、シリンダブロツクの冷却効率が低下すること
もない。

本発明は上記実施例に限定されるものではな
く、シリンダボア内にシリンダライナーを装着し
たものに対しても適用が可能であり、上記実施例
と同様にシリンダヘツド締付時におけるシリンダ
ライナーの変形を防止することもできる。

以上、詳細に説明したことからも明らかなよう
に、本発明によれば、シリンダボアの側壁のシリ
ンダボアの軸と直交する同一横断面におけるボル
ト穴近傍にシリンダの周方向に延びるリブが設け
られているので、ヘツドボルトのボルト軸力によ
つて引つ張られるボルト穴近傍のシリンダボア周
縁部が他のシリンダボア周縁部よりも剛性が上が
り、ボルト軸力によるシリンダボルト周縁部のボ
ルト穴近傍の沈み込みが小さくなり、この沈み込
みと引張りの相反する作用によつてもたらされる
シリンダボアの変形が防止される。これにより、
シリンダの径方向の変形が確実に防止され、シリ
ンダ内周の真円度および真直度が良好に維持さ
れ、ピストンとの摺接も良好であつて、潤滑油の
燃焼室への流入増加も防止でき、耐久性の向上、
騒音防止等を図ることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に係るエンジンのシリンダブロ
ツクの平面図、第２図は第１図の−′線断面
図、第３図は第１図の−′線断面図である。 １……シリンダボア、２……ブロツク外壁、３
ａ……上壁、３ｂ……下壁、４……側壁、５……
ウオータジヤケツト、６……シリンダヘツド、７
……ヘツドボルト、８……ボルト穴、９……ガス
ケツト、１１……リブ、１２……グロメツト部。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ シリンダヘツドを取り付けるヘツドボルトの
   ボルト穴をシリンダボア周辺の上壁に穿設し、シ
   リンダボア周縁に対応した開口周辺にグロメツト
   が配設されたガスケツトを介してシリンダヘツド
   が締結され、この締結状態においてシリンダボア
   周縁が上記ボルト穴周辺部より高い面圧を受ける
   エンジンのシリンダブロツクにおいて、上記シリ
   ンダボアの側壁のシリンダボアの軸と直交する同
   一横断面における上記ボルト穴近傍のみにシリン
   ダの周方向に延びるリブを設けたことを特徴とす
   るエンジンのシリンダブロツク。