JPS6336085B2 - - Google Patents

Info

Publication number
JPS6336085B2
JPS6336085B2 JP55086051A JP8605180A JPS6336085B2 JP S6336085 B2 JPS6336085 B2 JP S6336085B2 JP 55086051 A JP55086051 A JP 55086051A JP 8605180 A JP8605180 A JP 8605180A JP S6336085 B2 JPS6336085 B2 JP S6336085B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
coating layer
composite coating
layer
conductor
resin
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired
Application number
JP55086051A
Other languages
English (en)
Other versions
JPS5711415A (en
Inventor
Ryukichi Usuki
Yukio Endo
Katsuhiko Ueda
Yoji Yamada
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fujikura Cable Works Ltd
Original Assignee
Fujikura Cable Works Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fujikura Cable Works Ltd filed Critical Fujikura Cable Works Ltd
Priority to JP8605180A priority Critical patent/JPS5711415A/ja
Publication of JPS5711415A publication Critical patent/JPS5711415A/ja
Publication of JPS6336085B2 publication Critical patent/JPS6336085B2/ja
Granted legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Insulated Conductors (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
この発明は電気機器の巻線等に使用される耐熱
絶縁電線に関するもので、通常は従来のエナメル
巻線と同様に使用でき、かつ高温時にはセラミツ
ク絶縁層を形成して高温での連続使用をも可能に
したものであり、特に還元性雰囲気で使用するに
適したものである。 絶縁電線を使用する電気機器の種類やその使用
条件によつては、平常時はセラミツク絶縁被覆を
要するほど高温とはならないが、間欠的に大きな
負荷が加わることによる温度上昇や異常発生的に
高温になつた時にはじめてセラミツク被覆を要す
るような場合がある。このような条件に巧みに対
応しうる耐熱絶縁電線として、この発明の発明者
等は既に特願昭53−152647号で提案しているよう
に、常温の巻線加工時やその後の常温に近い通常
の使用温度においては従来の有機質エナメル絶縁
電線と同様な機械的・電気的特性を示し、また異
常な高温時にはじめてセラミツク絶縁電線として
の特性を示すようにした耐熱絶縁電線の開発に成
功している。すなわちこの提案の製法により得ら
れた耐熱絶縁電線は、導体上に無機物粉末とシリ
コーン樹脂とからなる混合物(または無機物粉
末、シリコーン樹脂およびその他の樹脂との混合
物)の複合被覆層が形成され、かつこの複合被覆
層の上には可撓性を有する樹脂からなる保護用の
オーバーコート層が形成されたもので、高温時に
はセラミツク絶縁層が形成されるようにしたもの
である。この耐熱絶縁電線は、その複合被覆層が
予め人口的な焼成熱処理によりセラミツク化され
ていないものであるから、巻付け加工等の加工時
には複合被覆層およびその上のオーバーコート層
が可撓性に富むに加え、線同士の摩擦や対物摩擦
等が生じても、オーバーコート層の存在により複
合被覆層の剥離が防止されるから、通常の有機質
エナメル絶縁電線と同様に加工でき、かつ複合被
覆層の樹脂の耐熱温度以下の通常の使用条件下で
は通常の有機質エナメル絶縁と同様な電気的・機
械的特性を示し、一方異常時に樹脂の耐熱温度以
上の高温に曝された場合や樹脂の耐熱温度以下の
低温状態と耐熱温度以上の高温状態とが繰返され
るような場合においては電気的特性の急激な低下
や1時的な低下を招くことなく複合被覆層がセラ
ミツク化して、そのまま低温から高温の状態まで
連続して使用することができるものである。 しかるに前記提案の耐熱絶縁電線につきさらに
検討を重ねたところ、次のような問題があること
が判明した。すなわち前記提案の電線の導体上に
被覆された複合被覆層においては無機物粉末粒子
に対しシリコーン樹脂(または変性シリコーン樹
脂さらにはシリコーン樹脂と他の樹脂との混合
物)がバインダとして作用しており、したがつて
巻付加工時にはその巻付円周の外側に位置する複
合被覆層内の無機物粉末粒子間のバインダ樹脂が
伸ばされることになるが、この際複合被覆層とそ
の上に形成されているオーバーコート層とが接着
されている状態すなわち両層が連続した状態で形
成されていれば、複合被覆層内のバインダ樹脂が
無機物粉末粒子間の伸びに耐えられずにバインダ
樹脂に亀裂が生じた場合には、これに伴つてオー
バーコート樹脂にも亀裂が生じるおそれがあり、
このため巻付加工性が低下する問題がある。そし
てこの問題を解決するためには、オーバーコート
層に使用される樹脂として、複合被覆層のシリコ
ーン樹脂等のバインダ樹脂よりも伸び特性が著し
く良好でしかも強靭なものを選ぶ必要が生じ、そ
のためオーバーコート樹脂として使用される樹脂
の選択の幅が著しく狭くなつて使用目的に応じた
最適な樹脂を使用できなくなるおそれがある。ま
た、前述の如く複合被覆層とその上のオーバーコ
ート層とが接着されていれば、異常時等の高温に
おいて複合被覆層のバインダ樹脂が分解する際に
オーバーコート層の存在により分解ガスの放出が
妨げられて、分解ガスの放出が困難となるから、
高温に急速加熱されたときには内部からの分解ガ
スの圧力が急激に上昇してオーバーコート層およ
び複合被覆層が局部的に吹き飛ばされ、これによ
り導体が局部的に露出して線間短絡が生ずる等の
問題があつた。 そこでこのような上述の巻付加工性の問題と高
温加熱時の問題とを同時に解決できるようにする
ことを目的としてこの発明の発明者等は先に、特
願昭54−114740号において導体上に形成された複
合被覆層すなわち高温時にセラミツク化される複
合被覆層の上に、該複合被覆層に対し接着されて
いない状態または非接着に近い接着状態すなわち
部分的にしか接着していないかまたは簡単に複合
被覆層から剥離できる状態(以下この明細書では
これらの状態を含めて非接着状態と記す。)に保
護用の樹脂層(オーバーコート層)を形成し、こ
れによつて前述の諸問題を解決することを提案し
たが、その後さらにこの方法について検討したと
ころ、この型式の電線においては、酸化性雰囲気
で高温に曝された場合には特に問題がないが、還
元性雰囲気で高温に曝された場合に問題があるこ
とが判明した。 すなわち、酸化性雰囲気で高温状態に曝された
場合には酸化と熱分解によつてオーバーコート層
の劣化が急速に進み、一方、内側の複合被覆層か
らは熱分解によるガスが発生してオーバーコート
層に亀裂が生じ、その後は外側から複合被覆層に
酸素が供給されるようになつて複合被覆層の熱分
解が進行するため、導体として、金、銀、白金な
どの難酸化性の金属が用いられている場合を除
き、導体上に密着性の酸化膜が生成され、この酸
化膜が複合被覆層のセラミツク化した物質と一体
的に固く結合し、その結果密着性がきわめて良好
なセラミツク絶縁層が生成される。ところが還元
性の雰囲気において高温状態に曝された場合に
は、オーバーコート層の酸化による劣化がほとん
どないため、オーバーコート層の亀裂の発生や分
解剥離による除去がすみやかに起りにくくなるか
ら、温度条件などによつて複合被覆層からの分解
ガスの発生量が多い場合には前述のようにオーバ
ーコート層を複合被覆層に対し非接着の状態で設
けていてもその分解ガスをオーバーコート層と複
合被覆層との間で保持し切れなくなり、その結果
耐熱絶縁層である複合被覆層が導体から剥離して
しまうなどの欠点が生じることがあつた。 この発明は以上の事情に鑑みてなされたもの
で、前記提案の耐熱絶縁電線をさらに改良して、
還元性雰囲気で高温状態に曝された場合でも被覆
層の剥離が生じることなく密着性の高いセラミツ
ク絶縁層を生成するようにした耐熱絶縁電線を提
供することを目的とするものである。すなわちこ
の発明の耐熱絶縁電線は、導体直上に少くともそ
の導体の表面部分を構成している金属の酸化物を
含有する薄層、例えば導体表面を酸化させた酸化
皮膜、あるいは前記金属の酸化物粉末を含む組成
物を導体上に被覆してなる層を形成し、その薄層
上に前記提案と同時にシリコーン樹脂等の無機高
分子と無機物粉末との混合物からなる複合被覆層
を形成し、さらにその複合被覆層上に可撓性を有
する樹脂を主成分とする保護用のオーバーコート
層を非接着状態で形成し、高温時には前記複合被
覆層が前記薄層中の酸化物を介して導体と固く結
合したセラミツク層となるようにしたものであ
る。 以下この発明の耐熱絶縁電線についてより詳細
に説明する。 第1図はこの発明の耐熱絶縁電線の構造例を示
すものであつて、導体1上には薄層2、複合被覆
層3、およびオーバーコート層4がその順に形成
されている。 前記導体1としては、銅線、銅合金線、アルミ
ニウム線、アルミニウム合金線、コンスタンタン
線、銀線、金線、白金線、ステンレス鋼線、さら
にはニツケルや銀等の耐熱性金属もしくは合金の
メツキ銅線やクラツド銅線などの良導電性金属
線、望ましくは耐熱性を有する良導電性金属線が
用いられる。導体1上に形成される薄層2は、少
くとも導体1の表面部分を構成している金属(す
なわち導体1が銅線等の非複合線である場合には
その導体1の金属、また導体1がメツキ線もしく
はクラツド線である場合にはそのメツキ金属また
はクラツド金属であり、以下これらを導体金属と
総称する)の酸化物を含有していれば良いもので
あり、具体的には、導体1の表面自体を酸化させ
てなる酸化皮膜であつても良く、あるいは別途前
記酸化物の粉末を含有する組成物を塗布、焼付け
等によつて被覆しても良い。 前者の如く、薄層2として酸化皮膜を生成する
具体的方法としては、導体1を酸化性雰囲気にお
いて高温に加熱する高温酸化法、あるいは酸化剤
で処理する化学的酸化法、さらには陽極酸化によ
る電気化学的方法等がある。このように薄層2と
して酸化皮膜を生成する場合、その厚みが厚過ぎ
れば皮膜に割れが生じて剥離し易くなるから、通
常は5μm以下、より好ましくは2μm以下の膜厚
とする。 一方、後者の如く、導体1上に薄層2として別
途酸化物粉末を含有する組成物を被覆する場合、
例えば導体金属の酸化物粉末とその結合剤となる
無機物例えばH3BO3,B2O3、ホウ酸塩、リン酸
塩、ケイ酸塩、あるいはガラスフリツトなどとを
混合してスラリーとし、そのスラリーを導体1上
に薄く被覆して高温で熱処理(焼付け)すれば良
い。あるいはまた、前記導体金属の酸化物粉末と
バインダ樹脂および溶剤からなるスラリーや、さ
らにこれに骨材粒子を混合させたスラリーを導体
上に薄く塗布し、溶剤を揮発させるかまたはバイ
ンダ樹脂を半硬化させ、これによつて前記薄層2
を形成しても良い。この場合、バインダ樹脂とし
ては、後述する複合被覆層3に使用されている無
機高分子と同様なシリコーン樹脂等の無機高分子
を使用しても良く、あるいはその他の熱分解性の
有機質樹脂を用いても良い。また骨材粒子として
も、後述する複合被覆層3に使用される高融点無
機物粉末と同様なもの、例えばアルミナ、シリ
カ、クレー、ガラスフリツド等が使用される。そ
してまた、薄層2としては、前述のように導体金
属の酸化物粉末とバインダ樹脂と溶剤からなるス
ラリー、もしくはこれに骨材粒子を配合したスラ
リーを薄く塗布した後、必要に応じて溶剤を揮発
もしくはバインダ樹脂を硬化させたのち、バイン
ダ樹脂の熱分解温度以上の高温で熱処理してバイ
ンダ樹脂を分解させ、これによつて塗覆層をセラ
ミツク化させて強固に結合させたものでも良い。
この場合、バインダ樹脂としてシリコーン樹脂等
の無機高分子が使用されていれば、その分解に伴
う無機残渣物例えばシリカやシリカと他の酸化物
との複合酸化物がセラミツク化の際の結合剤とし
て作用することになる。なお、前述のようにバイ
ンダ樹脂を用いしかも高温での熱分解を行なわな
い場合、電線の使用時の高温によつて複合被覆層
中の無機高分子が分解するのと同時的に薄層2中
のバインダ樹脂も分解することになる。そしてま
たこのように薄膜2中のバインダ樹脂を予め高温
熱処理により分解しておかない場合には、機械的
な特性や高温時の熱分解性の問題から、導体金属
の酸化物やその他の骨材粒子等の無機物100重量
部に対するバインダ樹脂の配合量は、無機残渣を
殆んど生じない有機質樹脂の場合25重量部以下、
またシリコーン樹脂等の無機高分子の場合65重量
部以下とすることが望ましい。但し、オーバーコ
ート層4が10μm以下の薄質なものである場合
や、薄層2自体が2μm未満の著しく薄いもので
ある場合には特にこのように配合比について考慮
する必要はない。なお、上述のように導体1上に
酸化物を含有する薄層2を別途形成する場合もそ
の厚みは5μm程度以下であることが望ましい。 上述のような薄層2上に形成される複合被覆層
3は、無機高分子と無機物粉末との混合組成物か
らなるものである。ここで無機高分子は、複合被
覆層のバインダとして作用し、しかも電線使用中
の異常時等の高温により焼成された時の分解後の
生成物質が無機物粉末の結合剤として作用してよ
り強固なセラミツク層を生成させる作用を果たす
ものである。このような無機高分子としては、各
種のシリコーン樹脂や変性シリコーン樹脂、例え
ばシロキサンとメチルメタクリレート、アクリロ
ニトリル等の有機モノマーとの共重合物、あるい
はシリコーン樹脂とアルキツド樹脂、フエノール
樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂との共重合物
など、さらにはSi以外にTi,B,Al,N,P,
Ge,As,Sb等の元素の1種以上と酸素とを骨格
に持つたシリコーン系樹脂、またはSi以外にTi,
B,Al,N,P,Ge,As,Sb等の元素の1種以
上と酸素と炭素とを骨格に持つたシリコーン系樹
脂、さらにはTi,B,Al,N,P,Ge,As,Sb
等の元素の1種以上と酸素とを骨格に持つた無機
高分子、またはこれらと前記有機モノマーや樹脂
との共重合物等を使用することができるが、これ
らの各種の無機高分子の内でも可撓性に優れかつ
耐熱温度以上では炭化水素基等が徐々に分解する
タイプの無機高分子、例えばメチル―フエニルシ
リコーンの如く、分解温度の異なる2種以上の基
を持つ無機高分子であつて、望ましくは分解生成
する無機物量の割合がより多いものが最も適当で
ある。なお複合被覆層のバインダとしては前述の
ような無機高分子を単独で使用しても良いが、特
に機械的強度等を考慮して無機高分子に他の有機
樹脂例えばエポキシ樹脂、ポリカーボネート、フ
エノール樹脂等を混合して用いることができる。
また前記複合被覆層3に使用される無機物粉末と
しては、バインダとして使用される無機高分子の
分解温度付近で半融または溶融しないもの、すな
わち望ましくは融点が550℃以上、より望ましく
は800℃以上のものであつて電気的絶縁特性が優
れたものを使用することが望ましい。例えば結晶
質粉末、ガラス質粉末、またはこれらの混合粉末
が使用され、より具体的にはアルミナ(Al2O3)、
チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸カルシ
ウム(CaTiO3)、チタン酸鉛(PbTiO3)、ジル
コン(ZrSiO4)、ジルコン酸バリウム(BaZrO3
ステアタイト(MgSiO3)、シリカ(SiO2)、ベリ
リア(BeO)、ジルコニア(ZrO2)、マグネシア
(MgO)、クレー、モンモリロナイト、ベントナ
イト、カオリン、あるいは通常の高融点ガラスフ
リツト、マイカ等の酸化物、ボロンナイトライト
(BN)、窒化ケイ素等の窒化物、またはこれらの
混合粉末等が使用される。これらの無機物粉末の
粒径は導体の径に応じて適宜の大きさのものが使
用されるが、通常は10μm以下のものが好まし
い。また無機物粉末の粒度は均一であつても良い
が、複合被覆層が可及的に緻密な構造となるよ
う、大径の粒子と小径の粒子とがうまく組合され
た状態とすることが望ましい。なお、複合被覆層
3に使用される無機物粉末の全部または一部とし
ては、シリコーン系樹脂などの無機高分子に対し
親和性もしくは反応性の状態となるように表面処
理された粉末、例えばビニル基、エポキシ基、ア
ルキルアミノ基、アルコキシ基、アセトキシ基、
ハロゲン原子などを有するシラン系処理剤や、シ
リルパーオキサイドなどの変性シラン、あるいは
アルキルチタネートなどの有機チタン系物質やリ
ン酸エステルや亜リン酸エステルなどの有機リン
化合物、などによつて表面処理されたものを用い
ても良い。斯くすれば複合被覆層を形成するため
の混合物のスラリー状態における均一性が良好と
なつて複合被覆層が平滑化されるとともに塗膜強
度も改善される。 なお、複合被覆層3に使用される前記混合物
は、無機物粉末に対し無機高分子が少な過ぎれば
複合被覆層3の可撓性が不足してコイル巻加工が
困難となり、逆に無機高分子が多過ぎれば使用時
において高温で軟質化して機械的に弱くなるなど
の問題がある。これらの理由から前記混合物の配
合比は、無機物粉末100部に対し無機高分子10〜
200重量部、好ましくは20〜60重量部とする。ま
た複合被覆層3の厚みは1〜100μmとすること
が望ましく、1μm未満では使用時において高温
に加熱されることにより複合被覆層がセラミツク
化した場合、そのセラミツク層の厚みが不足して
高温における絶縁性能が不足し、また100μmを
越えれば可撓性が低下するとともに複合被覆層が
軟質化して耐摩耗性が低下する等の問題がある。
なお、前記複合被覆層は単層に形成されても良い
し、多層に形成されても良い。 前述の如き複合被覆層3の上には、該複合被覆
層に対し非接着の状態で保護用の樹脂層がオーバ
ーコートされる。このように形成されるオーバー
コート層4は巻付等の加工性と高温時の特性との
両者を満足させるためのもので、まず加工特性の
点からはコイル巻加工時等における線同士の摩擦
や対物摩擦により複合被覆層が剥離してしまうこ
とを防止して、巻付け加工特性を良好にするため
のものであり、より具体的にはコイル巻加工に充
分耐え得る程度の可撓性と耐摩耗性とに優れたも
のであることが望ましい。一方耐熱性の点から
は、通常の使用温度における長時間の使用に耐え
るような耐熱性のものであり、そして特に異常時
に急速に温度上昇するような条件で使用されるよ
うな場合には、熱軟化特性の優れた耐熱性の樹
脂、すなわちポリイミド、アミドイミド樹脂、エ
ステルイミド樹脂、ポリヒダントイン、耐熱性ポ
リエステル等の樹脂を用いることが望ましい。ま
た一方、温度が前述のように急速に上昇しないよ
うな場合、すなわち間欠的な温度上昇や、ゆるや
かな温度上昇等の場合には、ウレタン樹脂、フツ
素樹脂、ポリオレフイン、ポリアミド、ホルマー
ル樹脂等が使用できる。そしてオーバーコート層
の厚みは、1〜100μmとすることが望ましい。
これは1μm未満ではコイル巻加工時の摩擦に対
して弱く、また100μmを越えれば、分解性が良
くない樹脂の場合には分解時にセラミツク層の剥
離を招く場合があり、かつスペースフアクターが
低下する等の問題が生じる。そしてまたこのオー
バーコート層は1層の場合に限らず、電線の使用
目的等に応じ多層に形成でき、また種々の他の樹
脂を組合せて多層に形成しても良い。例えば熱軟
化特性と耐摩耗特性を必要とするような場合に
は、耐熱特性の優れたポリイミド等をまず被覆
し、次いでポリアミドイミド、ホルマール樹脂、
ポリアミド等の機械的特性の優れたものを被覆す
る複数層の構成とすることが望ましい。 そして、前述の如くオーバーコート層を複合被
覆層の上に非接着状態で形成するためには、オー
バーコート層の樹脂として複合被覆層に対し接着
性の悪いもの例えば複合被覆層のシリコーン樹脂
に対し接着性の悪いポリイミド、テフロン、アミ
ドイミド樹脂等を使用し、この樹脂を複合被覆層
上に塗覆するか、また線心に伸張力を加えながら
塗覆すると良い。あるいは予め複合被覆上に潤滑
性を有する微粉末例えばBN,MoS2,MoS3
WS2,PbO、フツ化黒鉛、黒鉛、雲母等の無機物
やフツ素樹脂等の有機物を塗布しておき、その上
からオーバーコート樹脂をコーテイングあるいは
巻回、チユービング、押出被覆する。さらにはオ
ーバーコート層をその樹脂のテープ状のものを巻
付けることにより形成しても良く、この場合に
は、テープ巻時のテンシヨンを調節することによ
りオーバーコート樹脂テープが複合被覆層上に強
く締め付けられないようにするかあるいはイボ付
テープのようなものを用いれば良い。またこのよ
うなテープ巻の場合には必要に応じてテープの重
なり部分を種々の方法で接着することも行なわれ
る。そしてまたオーバーコート層として中空なチ
ユーブ状のものを使用して、このチユーブを複合
被覆層の外側に外挿させても良い。また場合によ
つては複合被覆層とオーバーコート層との間に、
これら両層の内少くとも一方の層に対し非接着性
となる別の層を介在させて、オーバーコート層を
複合被覆層に対し非接着状態としても良い。な
お、前述のように形成されたオーバーコート層の
上には、巻付加工等における電線の滑り特性を良
好にするため、潤滑性を与えるような材料からな
る減摩層を設けても良い。なお、また、前記オー
バーコート層4は、高温時に軟化流動または収縮
して実質的に接着状態に近い状態となつてしまう
ことを防止するため、前述のような樹脂のほか、
無機物粉末を小量添加しても良い。すなわち樹脂
100重量部に対し前述の複合被覆層に使用されて
いる無機物粉末と同様な粉末を0.1〜50重量部添
加しても良い。 以上詳述した如き耐熱絶縁電線を電気機器に使
用する際には、通常はコイル巻加工等の成形加工
が行なわれるが、コイル巻加工等の加工時には複
合被覆層はセラミツク化されておらず、したがつ
て可撓性に富むからこの作業が容易に行なえるこ
とになる。しかもこの複合被覆層の上に設けられ
た可撓性を有するオーバーコート層は、複合被覆
層に対し非接着の状態で形成されているから、巻
付加工時にその湾曲半径外側の複合被覆層が伸ば
された際にも、オーバーコート層は複合被覆層に
対し独立に伸ばされ、したがつて複合被覆層に亀
裂が生じてもオーバーコート層はその全体の変形
量がその樹脂自身の変形限界内であれば亀裂が生
じることがない。したがつて電線全体としての加
工性は極めて良好であり、従来の通常の有機質エ
ナメル絶縁電線と同様に小径のコイル巻加工を行
うことができる。そしてオーバーコート層が複合
被覆層に接着されている場合と比較してそれほど
伸び特性や靭性が高くない樹脂をオーバーコート
層に用いても前述の如く良好な加工特性が得られ
るから、オーバーコート層の選択の幅が広く、し
たがつて使用目的に応じて最適な樹脂を使用する
ことができる。なお、前記オーバーコート層の存
在により複合被覆層が直接外面に露出しないこと
になるから、コイル巻加工等の加工時における線
同士の摩擦や対物摩擦により複合被覆層が剥離し
てしまうようなことがない。 そしてこの発明の絶縁電線を複合被覆層の無機
高分子やオーバーコート樹脂の耐熱温度以下の常
温に近い温度で使用している場合には、複合被覆
層はセラミツク化されておらず、かつその上にオ
ーバーコート層がそのまま存在しているからその
機械的特性は従来の通常の有機質エナメル絶縁電
線と同様であり、したがつて機械的な振動が加わ
る状態で使用しても絶縁被覆が剥離したりするこ
とがなく、またその電気的特性も従来の通常の有
機質エナメル絶縁電線と同程度となる。したがつ
て通常の使用温度がオーバーコート樹脂等の耐熱
温度以下となるような電気機器に対しては従来の
有機質エナメル絶縁電線とほぼ同様に使用するこ
とができる。 一方、電線使用中における異常時等に高温に温
度上昇した場合、複合被覆層3中のバインダであ
る無機高分子などが分解し、その有機分が消失し
てシリカやシリカと他の酸化物との複合酸化物な
どが生成され、それらの無機分解生成物が無機物
粉末の結合剤として作用して強固なセラミツク層
が生成される。このセラミツク層は、導体1上の
薄層2中の酸化物と一体的に結合されて生成され
るが、この薄層2中の酸化物は導体金属の酸化物
であるから導体1に対して高い結合力を示し、結
局前記セラミツク層はその生成の初期から導体1
に強力に結合されたものとなる。したがつて特に
還元性の雰囲気で温度上昇してオーバーコート層
の亀裂の発生や剥離によるオーバーコート層の除
去がすみやかに行なわれない場合でも、複合被覆
層の分解の初期から(すなわちセラミツク化の初
期から)その被覆層は導体1に対して高い結合力
を有するため、多量の分解ガスの発生によりその
ガスが複合被覆層とオーバーコート層との間に保
持し切れなくなつても、複合被覆層が分解ガスに
よりオーバーコート層とともに飛ばされて導体か
ら剥離してしまうような事態の発生を防止するこ
とができる。したがつて還元性雰囲気で高温状態
に曝されても、機械的特性、電気的特性を損うこ
となく、そのまま連続使用することができるので
ある。なおもちろんこの発明の耐熱絶縁電線は還
元性雰囲気のみならず酸化性雰囲気でも支障なく
使用することができる。またこの発明の耐熱絶縁
電線は、通常の使用条件下では比較的低温で使用
中の過負荷等の異常時に急速に温度上昇するよう
な用途に適したものであつて、本来は予め人工的
な条件での焼成熱処理によつてセラミツク化させ
ておかずに未焼成のまま使用することが多いが、
用途によつては焼成して使用しても良いことはも
ちろんである。 以下にこの発明の実施例および比較例を記す。 実施例 1 外径1mmφの銅線に亜塩素酸処理を施してその
表面に膜厚約1μmの黒色の酸化銅(CuO)から
なる皮膜を形成し、さらにその上に平均粒径5μ
m以下のアルミナ粉末100重量部とシリコーンワ
ニス(樹脂分)47重量部と溶剤55重量部とからな
る混合組成物を塗布し、400〜500℃の温度で熱処
理して23μmの厚さの複合被覆層を形成し、さら
に線心に伸張力を加えながらオーバーコート層と
してポリイミド樹脂(内層)10μm、アミドイミ
ド樹脂(外層)5μmを非接着の状態で形成した。 実施例 2 外径0.5mmφのオーステナイト系ステンレス線
を700℃の酸化雰囲気で酸化させ、表面に約300Å
厚の褐色の酸化皮膜を生成した。その上に実施例
1と同様にして複合被覆層およオーバーコート層
を形成した。 実施例 3 外径1.0mmφの銅線に、平均粒径1μm程度の酸
化銅(CuO)粉末10重量部と、粒径1.5μm以下の
アルミナ50重量部と、シリコーンワニス(樹脂
分)28重量部と、溶剤37重量部とからなる組成物
を塗布し、350〜450℃の温度で熱処理して4.5μm
厚の酸化物含有被覆層を形成した。さらにその上
に実施例1と同様にして20μm厚の複合被覆層と
15μmのオーバーコート層を形成した。 比較例 0.5mmφのステンレス線上に、実施例1と同様
にして複合被覆層およびオーバーコート層を形成
した。 以上の各実施例および比較例の耐熱絶縁電線を
窒素気流中において450℃〜700℃の各温度に急速
加熱したときの被覆層の状態を観察したところ、
次の第1表に示す結果が得られた。なお第1表中
において〇印は導体上からの被覆層の飛びが認め
られなかつたもの、×印は被覆層の飛びが認めら
れたものを示す。
【表】 第1表の結果から明らかなように、比較例のも
のにおいては500℃以上では被覆層の飛びが発生
したのに対し、各実施例のものでは700℃まで飛
びが認められなかつた。 なお場合によつては導体1上の薄層2に用いら
れる導体金属の酸化物にかえ、H3BO3,B2O3
ホウ酸塩,リン酸塩,ケイ酸塩など、導体に対す
る結合性を有する無機物を用いたり、あるいは導
体金属と反応性を有するかまたは導体金属に固溶
し得る金属イオンを含む酸化物を前記導体金属の
酸化物に代えて用いても良い。 以上の説明で明らかなようにこの発明の耐熱絶
縁電線は、通常の有機質エナメル絶縁電線と同様
にコイル巻加工等の加工を容易に行うことがで
き、また樹脂の耐熱温度以下の通常の使用温度で
は有機質エナメル絶縁電線と同様に長時間連続使
用することができ、かつ使用中の過負荷等、各種
の異常等によつて高温となつた場合には複合被覆
層がセラミツク化し、これによつて低温から高温
まで電気的特性が低下することなく連続使用可能
となるものであり、特に還元性雰囲気で高温状態
に曝された場合でも被覆層が導体から剥落するこ
となく連続使用可能である顕著な効果を有するも
のである。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明の耐熱絶縁電線の一構造例を
示す略解的な要部拡大断面図である。 1……導体、2……薄層、3……複合被覆層、
4……オーバーコート層。

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1 導体上に少くともその導体表面部分を構成す
    る金属の酸化物を含有する薄層が形成され、かつ
    この薄層の上に、無機高分子と無機物粉末との混
    合物からなる複合被覆層が形成され、さらにその
    複合被覆層の上に、可撓性を有する樹脂を主成分
    とするオーバーコート層が前記複合被覆層に対し
    非接着の状態で設けられた、高温時にはセラミツ
    ク絶縁層が形成されることを特徴とする耐熱絶縁
    電線。 2 前記薄層が、導体表面を酸化させた酸化皮膜
    である特許請求の範囲第1項記載の耐熱絶縁電
    線。 3 前記薄層が、導体表面部分を構成する金属の
    酸化物粉末を含む組成物を導体上に被覆した層に
    よつて構成されている特許請求の範囲第1項記載
    の耐熱絶縁電線。
JP8605180A 1980-06-25 1980-06-25 Refractory insulated wire Granted JPS5711415A (en)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP8605180A JPS5711415A (en) 1980-06-25 1980-06-25 Refractory insulated wire

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP8605180A JPS5711415A (en) 1980-06-25 1980-06-25 Refractory insulated wire

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPS5711415A JPS5711415A (en) 1982-01-21
JPS6336085B2 true JPS6336085B2 (ja) 1988-07-19

Family

ID=13875877

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP8605180A Granted JPS5711415A (en) 1980-06-25 1980-06-25 Refractory insulated wire

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPS5711415A (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4617634B2 (ja) * 2003-02-20 2011-01-26 ダイキン工業株式会社 電気機器の製造方法
JP4762841B2 (ja) * 2006-09-25 2011-08-31 日東電工株式会社 光半導体素子保護用ガラス材料組成物およびそれを用いた光半導体装置
US8884476B2 (en) * 2011-09-23 2014-11-11 General Electric Company Hybrid dielectric film for high temperature application

Also Published As

Publication number Publication date
JPS5711415A (en) 1982-01-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US4342814A (en) Heat-resistant electrically insulated wires and a method for preparing the same
US5436409A (en) Electrical conductor member such as a wire with an inorganic insulating coating
US5834117A (en) Heat-resistant electrical wire comprising a benzimidazole-based polymer coating
JPS6336085B2 (ja)
JPS6336084B2 (ja)
JP4245244B2 (ja) 絶縁電線
JPH0125166B2 (ja)
JPS5941244B2 (ja) 耐熱マグネットワイヤ−
JPS6336086B2 (ja)
JPH11345523A (ja) 耐熱電線、耐熱絶縁材およびその耐熱電線の製造方法
JPH0223961B2 (ja)
JPS6161526B2 (ja)
JPS5914842B2 (ja) 耐熱マグネットワイヤ−
JPS6362042B2 (ja)
JPS621242B2 (ja)
JPS6193510A (ja) 無機絶縁電線
JPH02301909A (ja) 無機絶縁電線およびその製造方法
JP2909768B2 (ja) 耐熱絶縁電線及び耐熱絶縁電線の製造方法
JPH03105803A (ja) 無機絶縁電線およびその製造方法
JPH06104493A (ja) 被覆熱電対
JPH04242011A (ja) 無機絶縁部材
JP2686148B2 (ja) 絶縁電線
JPH076568Y2 (ja) 絶縁電線
JPH05290644A (ja) 超耐熱性絶縁電線
JPH06309946A (ja) 耐熱電線