JPS6332458Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔考案の技術分野〕 この考案は金属ガスケツトの改良に係り、接合
面の歪みや部分的面圧の不均一を補償し、所定面
圧を保持できるようにすると共に、シール面に対
する面圧力を増加させシール効果の向上を図つた
ガスケツトに関する。

〔考案の技術的背景〕

従来、内燃機関の例えばシリンダヘツドとシリ
ンダブロツク間をシールするガスケツトは、金網
あるいはフツク付金属板にアスベスト又はゴム混
和物を被覆したガスケツト用シート又はアスベス
トとゴム混和物シート等の柔軟材シートを所定の
形状に打抜いて成る構造のものが殆どであつた。
しかしながら、この柔軟材シートよりなるガスケ
ツトは、平面的構造で弾性力が乏しいため、熱歪
み等によるシール部の部分的面圧の不均一や接合
面の歪みを補償できず、充分なシール効果を得る
ことができなかつた。また、シリンダヘツドをシ
リンダブロツクに固定するボルトの締付位置の不
均等な場合にも、前記したような問題が生じ、さ
らにはシール力の低下に対してボルト締付力の増
加で維持を図る場合にはガスケツトに所謂へたり
を生じてシール力の低減を招くと共に、ヘツドに
も機械的歪みを生じる結果となつた。

そこで、弾性金属板にビードを形成し、このビ
ードによつて接合面を効率よくシールする金属性
のガスケツトが、この考案の出願人により出願さ
れた。このガスケツトは、弾性金属板からなるビ
ードを設けた基板と、この基板の表裏両面に設け
た副板とを一枚板状に積層して構成し、シリンダ
ヘツドとシリンダブロツクのボルト締付力により
ビードの弾性復元力で接合面にシール線を形成し
て密着し、シール効果を奏するものである。

〔背景技術の問題点〕

しかし、このガスケツトは復元力が充分でなく
接合面の熱歪みや傷等の不整状態および歪みによ
る部分的面圧の不均一を充分に補償することがで
きないため、間隙を生じてしまい、接合面を効果
的にシールすることが困難であつた。さらには、
燃焼室間の接合面の如くシール幅が狭い場合は、
充分な面圧を得られなかつた。

〔考案の目的〕

この考案の目的とするところは、ビードを形成
した基板を積層することによりビードの弾性復元
量および復元力を増加させ、接合面の歪みやこれ
に起因する部分的面圧の不均一を補償し、間隙の
発生をなくして所定面圧を保持できるようにする
と共に、シール面に対する面圧力を増加させてシ
ール効果の向上を図ることを目的とする。

〔考案の構成〕

この目的を達成するためにこの考案は、弾性金
属板にビードを形成した基板によりシールを果た
す金属ガスケツトにおいて、前記基板を２枚積層
し、この２枚の基板には夫々ビード間に平面部位
を有することなく連続して数条のビードを形成す
るとともにこれら各ビードのビード頂を夫々同方
向に指向させて配設し、前記２枚の基板間にはこ
の基板材と略同一硬度の弾性金属板からなる中副
板を介設し、前記各ビードを形成したビード部位
において同厚になるべく軟質金属板からなる副板
を前記各基板の外側面に夫々積層して設けたこと
を特徴とする。

〔考案の実施例〕

次に、この考案の実施例を図に基づいて詳細に
説明する。図は、この考案によるガスケツトの実
施例を示す一部省略断面図である。図において、
２枚の基板１，２はそれぞれSK・SUS等の硬性
金属薄板からなる弾性金属板からなり、その形状
は接合面と同一ないし類似して形成されている。
これら基板１，２には、シール面を囲繞し、かつ
必要面圧に応じた高さ等の形状を有する数条のビ
ード３…，４…がビード間に平面部を有すること
なく連続して形成されている。これらビード３
…，４…のビード頂を同方向に指向させて配設
し、前記基板１と基板２との間に基板材と略同一
硬度を有する弾性金属板からなる中副板５を介設
している。

このように中副板５を介設した前記基板１，２
を外側面から挟持する如く、基板材よりもやや軟
質の金属板からなる２枚の副板６，７を装着して
いる。これら副板６，７は、前記数条のビード３
…，４…を形成したビード部位において同厚にな
るべく、各基板１，２の外側面に夫々積層して設
けている。また、これら副板６，７は、ボルト孔
８側の端部同士を係着することにより、前記基板
１，２を内装して一体に組付けられる。即ち、一
方の副板６の一端部６ａはボルト孔８の内側に向
けて折曲げ、さらに孔８内の一端部６ａを逆方向
に折曲げて係止段部６ｂを形成する。他方の副板
７は、その一端部７ａをボルト孔８の内側に向か
つて略直角に折曲げた後、さらに先端７ｂを前記
係止段部６ｂに係止する如く折曲げ、図のように
互いに係着結合させる。

次に作用を説明する。

前記の如く構成されたガスケツトを、例えばシ
リンダブロツクとシリンダヘツド間に介装してボ
ルトを締付けると、基板１，２に設けたビード３
…，４…は中副板５の両面及び各副板６，７の内
面を滑つて変形しながら展延し、両内面方向に潜
在押圧力を有して密着される。このとき、中副板
５を基板材と略同一硬度の弾性金属板としたこと
により、ビード３…，４…の滑動・変形を担保し
得て、各基板１，２には数条のビード３…，４…
が平面部位を有することなく連続して形成されて
いるので、圧縮変形された基板１の数条のビード
３…が互いに影響し合うとともに基板２の数条の
ビード４…が互いに影響し合うことにより、ビー
ド部位の当接するシリンダヘツド及びシリンダブ
ロツクの夫々接合面に面圧を、狭い間隔に集中し
て作用させることができる。また、このとき、ビ
ード３…，４…を形成したビード部位において、
副板６，７が同厚になるように積層されているの
で、ビード３…，４…の夫々頂部及び基部が及ぼ
す面圧を両接合面に対し均等に作用させることが
できる。従つて、副板６，７の夫々外側面は、シ
リンダヘツド及びシリンダブロツクの夫々接合面
に強力に押圧されると同時に、夫々接合面全域に
わたつて均一な面圧である押圧力により完全密封
されるものである。

また、副板６，７をやや軟質金属板にて構成し
たことにより、シリンダヘツド及びシリンダブロ
ツクの夫々接合面の粗さを副板６，７によつて補
償吸収させ、極めて高いシール効果を発揮させる
ことができる。

また、シリンダブロツクの接合面とシリンダヘ
ツドの接合面とに僅かな歪みが生じた場合に基板
１のビード３…と基板２のビード４…とのビード
頂を中副板５を挟んで同方向に指向させて配設し
ているので、ビード３…，４…の弾性復元量が倍
増されるとともに弾性復元力も倍増され、つまり
追従性能が大きくなり、その歪みを補償させ得
る。また、ビード３…，４…の夫々が及ぼす面圧
（シール線圧）は、前述の如く両接合面に対して
集中し均等に作用させ得るので、面圧を高くする
ことができるとともに、大きな歪みや接合面の部
分的面圧の不均一が生じた場合にでも、シール面
圧を所定に保持し、シール効果が担保されるもの
である。即ち、ガスケツトは、シリンダヘツドの
接合面及びシリンダブロツクの接合面が高熱に晒
され、温度差等の要因により大きく歪んだ場合に
でも、その大なる歪みをビード３…，４…の弾性
復元力及び弾性復元量によつて補償させ得るもの
である。

さらに、この実施例では基板１，２を成形する
ところの金型は同一のものを使用できるので、金
型の共通化によるコストダウンや生産性の向上を
図ることができる。

また、副板６，７の一端部同士を係着し、基板
１，２を内装して一体に組み付けられており、従
来のように鋲等の部材は何ら使用していないの
で、シール効果を何ら損なうことなく、その組付
け作業の簡略化をはかることができる。さらに、
接合面が粗面であるため副板６，７と接合面とが
うまくなじまず、両者間に間隙が生じるような場
合は、副板６，７の外面にメツキ、塗装等の表面
処理を施せば、前記副板６，７と接合面とがうま
くなじんで、前記接合面の粗さを吸収でき、よつ
て確実なシール効果を保証することができる。

〔考案の効果〕

以上詳細な説明から明らかなようにこの考案に
よれば、弾性金属板にビードを形成した基板によ
りシールを果たす金属ガスケツトにおいて、前記
基板を２枚積層し、この２枚の基板には夫々ビー
ド間に平面部位を有することなく連続して数条の
ビードを形成するとともにこれら各ビードのビー
ド頂を夫々同方向に指向させて配設し、前記２枚
の基板間にはこの基板材と略同一硬度の弾性金属
板からなる中副板を介設し、前記各ビードを形成
したビード部位において同厚になるべく軟質金属
板からなる副板を前記各基板の外側面に夫々積層
して設けたことにより、ビードの滑動・変形を担
保し得て、大なる追従性能やビードが及ぼす面圧
を両接合面に対して集中し且つ均等に作用させる
等によつて接合面の歪みや部分的面圧の不均一を
補償することができる。即ち、ガスケツトをシリ
ンダヘツドとシリンダブロツク間の接合部に介在
して使用した際に、シリンダヘツド及びシリンダ
ブロツクの夫々接合面に歪みが生じた場合には、
ガスケツトはその歪みを補償し得る充分な追従性
能（弾性復元力及び弾性復元量）を有し、また各
基板には数条のビードが平面部位を有することな
く連続して形成されているので、圧縮変形された
隣接する数条のビードが互いに影響し合うことに
より、シリンダヘツド及びシリンダブロツクの
夫々接合面に面圧を集中して作用させることがで
き、更に、ビードを形成したビード部位において
副板が同厚になるように積層されているので、面
圧を両接合面に対して均等に作用させることがで
きる。これにより、接合面の歪みや部分的面圧の
不均一をビードの弾性復元力及び弾性復元量によ
つて補償させ、確実なシール効果を発揮し得る。

また、副板を軟質金属板で構成したことによ
り、接合面の粗さを補償吸収させ、シール効果を
発揮させ得て、さらに、隣接する数条のビードが
互いに影響し合つて面圧を集中させるとともに基
板と中副板の積層による各ビードの重畳で弾性復
元力及び弾性復元量が増加されるので、多気筒内
燃機関の燃焼室間のようにシール幅が狭い部分で
も面圧力の増加で充分なシールを果すことができ
る。加えて、この考案のガスケツトは、各基板を
成形するところの金型は同一のものを使用できる
ので、金型の共通化によるコストダウンや生産性
の向上を図ることができる等、本考案実施後の実
用的効果は極めて大きい。

【図面の簡単な説明】

図はこの考案によるガスケツトの実施例を示す
一部省略断面図である。 図において、１，２は基板、３，４は基板のビ
ード、５，５ａは中副板、６，７は外側の副板、
９は中副板５ａのビードである。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 弾性金属板にビードを形成した基板によりシー
   ルを果たす金属ガスケツトにおいて、前記基板を
   ２枚積層し、この２枚の基板には夫々ビード間に
   平面部位を有することなく連続して数条のビード
   を形成するとともにこれら各ビードのビード頂を
   夫々同方向に指向させて配設し、前記２枚の基板
   間にはこの基板材と略同一硬度の弾性金属板から
   なる中副板を介設し、前記各ビードを形成したビ
   ード部位において同厚になるべく軟質金属板から
   なる副板を前記各基板の外側面に夫々積層して設
   けたことを特徴とするガスケツト。