JPS6331355Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は電圧非直線性抵抗素子に係り、更に詳
しくは電圧非直線性抵抗素子の電極構造に関す
る。

電圧非直線性抵抗素子はバリスタとも呼ばれ、
印加電圧によつて抵抗値が非直線的に変化し、印
加電圧がその素子の持つバリスタ電圧（制限電
圧）を超える範囲で、抵抗値が激減する特異な性
質を有する。この特性に着目し、電圧非直線性抵
抗素子は、音響機器に関する小形直流モータのノ
イズ防止、リレー接点の保護、半導体素子の静電
気に対する保護、カラーテレビブラウン管回路の
放電吸収などの手段として広く利用されている。
本考案はこのような利用分野の内で、特に小形直
流モータのノイズ防止用として好適な電圧非直線
性抵抗素子に関するものである。

一般に小形直流モータは、整流子片や、刷子の
幅が小さく、電機子コイル電流の時間的変化の割
合が大きく、これに依存するリアクタンス電圧が
大きくなることもあつて、刷子が整流子片間を移
動する瞬間に、整流子面と刷子との間に火花が発
生し易い。この火花は整流子と刷子の摩耗を生
じ、モータとしての寿命を短縮するだけでなく、
スパイク状のノイズ電圧の発生原因となる。この
とき発生するノイズ電圧は両極性の電圧で、その
波高値が電源電圧の数十倍にもなり、音響機器等
に悪影響を及ぼすものであるから、除去する必要
がある。そのようなノイズ防止手段として電圧非
直線性抵抗素子が使用され、ノイズ電圧がバリス
タ電圧を超える範囲で、これを短絡し吸収するも
のである。

次に電圧非直線性抵抗素子を装着した小形直流
モータおよび従来の電圧非直線性抵抗素子を、第
１図、第２図を参照して説明する。第１図は電圧
非直線性抵抗素子１を装着した小形直流モータの
構造を、慨略的に示す図であり、２は電機子コイ
ル、３は回転軸、４は整流子、５ａ，５ｂは刷
子、６ａ，６ｂは界磁である。電圧非直線性抵抗
素子１は、電機子コイル２と整流子４との間の回
転軸３上に嵌着され、後述する如く、電極を整流
子４の各片に導通接続して設けられる。

第２図Ａ，Ｂは従来の電圧非直線性抵抗素子の
平面図および底面図をそれぞれ示している。この
従来例は、整流子４の片数が３個である場合に対
応する電極構造の電圧非直線性抵抗素子を示すも
ので、中心部に取付孔７を有する円板状の焼結体
８の表面に、３個の電極９ａ，９ｂ，９ｃを、ギ
ヤツプg₁を介して、円状に３等配すると共に、裏
面の各電極９ａ，９ｂ，９ｃと対向する位置に、
それぞれ電極９ｄ，９ｅ，９ｆを形成し、電極９
ａと９ｅ、９ｂと９ｆ、９ｃと９ｄとを、それぞ
れリード線１０ａ，１０ｂ，１０ｃによつて導通
接続し、各電極９ａ，９ｂ，９ｃにそれぞれ外部
との接続用のリード線１０ｄ，１０ｅ，１０ｆを
半田付け等により取付けて成るものである。

この電圧非直線性抵抗素子は、第３図に示すよ
うに、各リード線１０ｄ，１０ｅ，１０ｆを整流
子４の各整流子片４ａ，４ｂ，４ｃにそれぞれ接
続すると、電極９ａ−９ｄ，９ｂ−９ｅ，９ｃ−
９ｆ間の各バリスタ層イ，ロ，ハが三角結線され
たものとなる。なお、２ａ，２ｂ，２ｃは電機子
コイルであり、この例では三角結線としてある
が、星形結線される場合もある。

上述の従来電圧非直線性抵抗素子は、焼結体８
の全周に亘つてその厚み方向にバリスタ領域が形
成されるから、焼結体の片面にのみ電極を実施例
したものに比べて、バリスタとして作用する焼結
体の領域が大きくとれるという利点と安定性があ
り、耐パルスノイズ特性にも優れている。しかし
ながら、表面と裏面の電極を、リード線１０ａ，
１０ｂ，１０ｃにより接続する構造であるため、
生産性が悪く、量産性に欠ける欠点がある。また
外部接続用リード線１０ｄ，１０ｅ，１０ｆ以外
に、電極間接続用リード線１０ａ，１０ｂ，１０
ｃが存在するため、リード線数が多く、構造的に
複雑化し、機器への装着が容易でなく、かつ信頼
性がそれだけ乏しいものとなる。

本考案は上述する欠点を除去し、電極間接続用
のリード線が不要で、量産性に富み、機器への装
着が容易で、しかも信頼性の高い電圧非直線性抵
抗素子を提供することを目的とする。

上記目的を達成するために、本考案は、焼結体
の表面及び裏面にそれぞれ複数個の電極を設ける
とともに、前記焼結体に複数個の貫通孔を設け、
該貫通孔を介して表面側と裏面側の電極を電気的
に導通させた電圧非直線性抵抗素子であつて、前
記貫通孔は角状とし、角部が同一方向を向くよう
にして、前記電極の形成領域内に形成したことを
特徴とする。

以下実施例たる添付図面を参照し、本考案の内
容を具体的に詳説する。第４図は本考案に係る電
圧非直線性抵抗素子の平面図、第５図は同じくそ
の展開図を示している。この実施例に示す電圧非
直線性抵抗素子も前述と同様に整流子片数が３個
である３極構造の小形直流モータのノイズ防止用
として構成してある。

８は中心に取付孔７を有して薄円環状に形成さ
れた焼結体である。該焼結体８としては、シリコ
ンカーバイト（SiC）系、酸化錫（S_oO₂）系、酸
化鉄（Fe₂O₃）系のものも使用し得るが、小形直
流モータ用としては、耐電圧が高く、低電圧範囲
で優れたバリスタ特性を示す酸化チタン（TiO₂）
系のものが好適である。

１１ａ，１１ｂ，１１ｃは、焼結体８の表面
に、それぞれギヤツプg₂を隔てて円状に３等配さ
れた扇形の電極、１１ｄ，１１ｅ，１１ｆは、焼
結体８の裏面に、それぞれギヤツプg₃を隔てて形
成された扇形の電極である。これらの電極１１ａ
〜１１ｃと１１ｄ〜１１ｆは、銀合金ペースト印
刷法などによつて形成される。また電極１１ａ〜
１１ｃと１１ｄ〜１１ｆは互いにずらして形成し
あつて、電極１１ａと１１ｄ、１１ｂと１１ｄ、
１１ｂと１１ｅ、１１ｃと１１ｅ、１１ｃと１１
ｆ、１１ａと１１ｆとの間に、重なり部分S₁，
S₂，S₃，S₄，S₅およびS₆が形成されている。

前記重なり部分S₁，S₃およびS₅における焼結体
８の厚み方向には、貫通孔１２ａ，１２ｂ，１２
ｃを設けてあつて、該貫通孔１２ａ，１２ｂ，１
２ｃを介して、表面側の電極１１ａと１１ｄ、１
１ｂと１１ｅ、１１ｃと１１ｆとを、互いに電気
的に導通接続してある。すなわちこの貫通孔１２
ａ，１２ｂ，１２ｃは、電極１１ａ〜１１ｆを印
刷形成する以前に、予め焼結体８に穿設してあつ
て、電極１１ａ〜１１ｆを印刷形成するときに該
貫通孔１２ａ，１２ｂ，１２ｃ内にペーストを垂
れ込ませ、それによつて表側の電極と裏側の電極
とを導通接続するものである。焼結体８の厚み
は、通常のものでは１mm前後と小さいから、電極
印刷時の印圧、ペースト粘度、スキージ速度など
の印刷条件を適宜選定することにより、ペースト
を、表側電極と裏側電極とを導通させる如く、貫
通孔１２ａ，１２ｂ，１２ｃ内に垂れ込ませるこ
とは容易である。

このように、本考案においては、貫通孔１２
ａ，１２ｂ，１２ｃを設け、該貫通孔１２ａ，１
２ｂ，１２ｃ内に電極印刷時にペーストを垂れ込
ませて表側の電極と裏側の電極を導通させるもの
であるから、電極接続作業が電極の印刷形成時に
同時に行われることとなり、従来のような電極接
続用のリード線、およびその接続作業が不要にな
る。この結果、生産性が著しく向上し、量産性が
非常に高くなると同時に、構造的に単純化され、
機器への装着が容易となり、かつ信頼性が向上す
ることとなる。

前述の貫通孔１２ａ，１２ｂ，１２ｃは、図に
示すように、角形たとえば四角状とし、その角部
P₁，P₂，P₃の方向を一致させる。角状であると、
スキージによつて押し出されるペーストに対する
抵抗が大きくなり、ペーストが効率良く貫通孔１
２ａ，１２ｂ，１２ｃ内に垂れ込むこととなるか
らである。

また、貫通孔１２ａ，１２ｂ，１２ｃを前述の
ように角状とした場合に、その角部P₁，P₂，P₃
の方向を一致させると、スキージの移動によつて
押出されるペーストに対する抵抗が貫通孔１２
ａ，１２ｂ，１２ｃの各々において、ほぼ一定と
なる。このため、貫通孔１２ａ，１２ｂ，１２ｃ
の各々に垂れ込むペースト量が平均化、一定化さ
れ、バラツキのない安定した貫通導電部を形成す
ることができる。

上述のように、貫通孔１２ａ，１２ｂ，１２ｃ
によつて、表側の電極と裏側の電極とを互いに導
通接続した場合、電極１１ａと１１ｄ、１１ｂと
１１ｅ、１１ｃと１１ｆが等電位となり、各重な
り部分S₂，S₄，S₆において焼結体８の厚み方向の
バリスタ層が得られる。したがつて表側の電極１
１ａ，１１ｂ，１１ｃにリード線１０ｄ，１０
ｅ、１０ｆを半田付けし、該リード線１０ｄ，１
０ｅ，１０ｆの他端を小形直流モータの整流子片
４ａ，４ｂ，４ｃに接続した場合、第３図に示す
ように、各重なり部分S₂，S₄，S₆における各バリ
スタ層イ，ロ，ハを三角結線した回路構成をとる
こととなる。

なお、実施例では、表裏の電極数を３個として
あるが、これに限らず２個以上形成するものであ
ればよい。

以上説明したように、本考案に係る電圧非直線
性抵抗素子は、焼結体の表面及び裏面にそれぞれ
複数個の電極を設けるとともに、前記焼結体の表
裏方向に貫通する複数個の貫通孔を設け、該貫通
孔を介して表面側の電極と裏面側の電極とを電気
的に導通接続してあるから、電極間接続用のリー
ド線が不要で量産性に富み、機器への装着が容易
で、しかも信頼性の高い電圧非直線性抵抗素子を
提供することができる。

また貫通孔は角状とし、その角部の方向を一致
させて、電極の形成領域内に形成してあるから、
電極印刷時にペーストを貫通孔内に効率良く垂れ
込ませ、表裏の電極の電気的接続の信頼性を向上
させることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は電圧非直線性抵抗素子を装着した小形
直流モータの構造を概略的に示す図、第２図Ａ，
Ｂは従来の電圧非直線性抵抗素子の平面図および
底面図、第３図は第２図の電圧非直線性抵抗素子
を使用した小形直流モータの回路図、第４図は本
考案に係る電圧非直線性抵抗素子の平面図、第５
図は同じくその展開断面図を示している。 ８……焼結体、１１ａ〜１１ｆ……電極、１２
ａ，１２ｂ，１２ｃ……貫通孔。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 焼結体の表面及び裏面にそれぞれ複数個の電極
   を設けるとともに、前記焼結体に複数個の貫通孔
   を設け、該貫通孔を介して表面側と裏面側の電極
   を電気的に導通させた電圧非直線性抵抗素子であ
   つて、前記貫通孔は角状とし、角部が同一方向を
   向くようにして、前記電極の形成領域内に形成し
   たことを特徴とする電圧非直線性抵抗素子。