JPS6323632Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、車輛に装着される差動装置に関す
る。

従来、車輛においては、旋回する場合に左右両
駆動輪に回動差を持たせるために差動装置が用い
られている。この差動装置は、例えば、一対のサ
イドギアと一対のピニオンギアとを具備し、一対
のサイドギアの各々が、夫々、互いに対向して差
動装置ハウジング内に回動自在に装着され、また
一対のピニオンギヤの各々が、夫々、一対のサイ
ドギアに噛合され且つ互いに対向して差動装置ハ
ウジング内に回動自在に装着され、そして、この
一対のサイドギアの各々に、夫々、左右両駆動輪
に夫々駆動力を伝達するドライブシヤフトがスプ
ラインにより連結されたものが知られている。

一方、かような差動装置は、直線走行時等左右
両駆動輪に回転差がない場合には作動せず、単に
内燃機関からの駆動を左右両駆動輪に伝達するに
すぎない。従つて、車輛の走行中において、車輛
の慣性力と内燃機関からの駆動力とがほぼ釣合つ
た状態（特に低負荷走行時に発生する）では、サ
イドギアとピニオンギヤとの間又はサイドギアの
スプラインとドライブシヤフトのスプラインとの
間に遊び（いわゆるバツクラツシユ）が存在して
いると、内燃機関からのトルク変動に起因して、
両ギア間又は両スプライン間に、両ギア又は両ス
プラインの衝撃による打音（歯面の打音）が発生
し、この打音が運転者に伝達されて不快感を与え
ていた。

そこで、上述したバツクラツシユによる打音を
防止するために、例えば、差動装置ハウジングと
各々のサイドギアとの間に、サイドギアとピニオ
ンギヤとの噛合状態を調整するためのスラストワ
ツシヤを配設した差動装置が提案されている。

これらの場合には、スラストワツシヤ又はコイ
ルスプリングによつて、サイドギアの各々とピニ
オンギヤの各々との間にバツクラツシユを実質的
になくしてこのサイドギアとピニオンギヤとの間
に発生する打音を除去することができるが、しか
し、各々のサイドギアのスプラインと各々のドラ
イブシヤフトのスプラインとの間のバツクラツシ
ユに対しては何ら手段が講じられておらず、その
ため、両スプライン間のバツクラツシユによる打
音は解消されず、差動装置における打音を完全に
除去するには至つていない。

特に、この両スプライン間のバツクラツシユに
ついては、両ギアの噛合部と両スプラインの噛合
部を比較した場合に、両スプラインの噛合部の方
が両ギアの噛合部に比して回動中心に近い所に位
置しているために、両者のバツクラツシユが同一
であるとすると、両ギア間のバツクラツシユに比
して打音の発生により大きな影響力を与えるもの
と考えられる。

本考案は、上記事実に鑑みてなされたものであ
つて、その目的は、内燃機関からの駆動力を左右
両駆動輪に確実に伝達することができると共に、
サイドギアとピニオンギヤとの間又はサイドギア
のスプラインとドライブシヤフトのスプラインと
の間のバツクラツシユに起因して、特に車輛の低
負荷走行時に発生する歯面の打音を除去すること
ができる改良された差動装置を提供することであ
る。

本考案によれば、一対のドライブシヤフトの
各々にスプライン結合された一対のサイドギア
と、該一対のサイドギアに噛合する一対のピニオ
ンギアと、該一対のドライブシヤフトと差動装置
ハウジングとの間に介在されたクラツチ手段とを
備え、 該クラツチ手段の各々は、夫々、ドライブシヤ
フトにスプライン結合される一対の弧状の伝達部
材及び該一対の弧状の伝達部材の一端部間に装着
されるばね部材を含んでおり、 該クラツチ手段の該ばね部材は該一対の伝達部
材をそれらの他端部を支点として拡張せしめる方
向に偏倚せしめ、これによつて該一対の伝達部材
の外周面が該差動装置ハウジングの一部に弾性的
に圧接される、ことを特徴とする差動装置が提供
される。 以下、本考案に従つて構成された差動
装置の好適具体例を添付図面を参照して説明す
る。

第１図において、全体を参照番号２で示す差動
装置は、差動装置ハウジング４を具備している。
この差動装置ハウジング４は、軸受６を介してア
クスルハウジング（図示せず）内に回動自在に装
着される。

上記差動装置ハウジング４内には、互いに対向
して、一対のサイドギア８ａ及び８ｂ並びに一対
のピニオンギヤ１０ａ及び１０ｂが配設されてい
る。ピニオンギヤ１０ａ及び１０ｂは、夫々、差
動装置ハウジング４に両端部が固定されたピニオ
ンシヤフト１２に、回動自在に且つ一対のサイド
ギア８ａ及び８ｂに噛合するように装着されてい
る。サイドギア８ａ及び８ｂには、夫々、取付用
貫通孔の内周面にスプライン１４ａ及び１４ｂ
（第１のスプラインを構成する）が形成され、ま
たドライブシヤフト１６ａ及び１６ｂの一端部の
外周面にも、夫々、上記スプライン１４ａ及び１
４ｂに対応するスプライン１８ａ及び１８ｂ（第
２のスプラインを構成している）が形成されてお
り、そして、このサイドギア８ａ及び８ｂの各々
が、夫々、各々のドライブシヤフト１６ａ及び１
６ｂにスプライン結合されている。このドライブ
シヤフト１６ａ及び１６ｂの他端部には、夫々、
駆動輪（図示せず）が固定されている。

また、差動装置ハウジング４と各々のサイドギ
ア８ａ及び８ｂとの間には、サイドギア８ａ及び
８ｂとピニオンギヤ１０ａ及び１０ｂとの噛合状
態を調整するためのスラストワツシヤ２０ａ及び
２０ｂが夫々配設されている。

他方、差動装置ハウジング４の外側には、リン
グギア２２がボルト２４によつて固定されてい
る。このリングギア２２には、内燃機関（図示せ
ず）からの駆動力が伝達されるドライブピニオン
（図示せず）が噛合される。

上述した通りの構成を有する差動装置は公知の
ものであり、内燃機関からの駆動力は、ドライブ
ピニオン（図示せず）、リングギア２２、差動装
置ハウジング４、ピニオンギヤ１０ａ及び１０
ｂ、サイドギア８ａ及び８ｂ並びにドライブシヤ
フト１６ａ及び１６ｂを経て左右両駆動輪（図示
せず）に夫々伝達される。

本考案は、上述した通りの差動装置に、更に、
クラツチ手段を配設したことを特徴とするもので
ある。

更に、第１図及び第２図を参照して説明する
と、ドライブシヤフト１６ａ及び１６ｂの各々に
は、夫々、全体を参照番号２６ａ及び２６ｂで示
すクラツチ手段が装着されている。このクラツチ
手段２６ａ及び２６ｂは、夫々、実質上同一の構
成であり、本具体例において、一対の弧状の伝達
部材２８ａ及び２８ｂとばね部材２９から構成さ
れている。クラツチ手段２６ａを図示する第２図
において、弧状の伝達部材２８ａ及び２８ｂに
は、その内周面に各々のドライブシヤフト１６ａ
及び１６ｂに形成されたスプライン１８ａ及び１
８ｂに対応するスプライン３０ａ及び３０ｂ（第
３のスプラインを構成している）が夫々形成さ
れ、またその一端部にばね部材２９が装着される
凹部３２ａ及び３２ｂが夫々形成されている。

上記凹部３２ａ及び３２ｂ間にばね部材２９が
装着された各々の一対の伝達部材２８ａ及び２８
ｂは、夫々、そのスプライン３０ａ及び３０ｂが
各々のドライブシヤフト１６ａ及び１６ｂのスプ
ライン１８ａ及び１８ｂに夫々噛合されるよう
に、各々のドライブシヤフト１６ａ及び１６ｂの
スプライン１８ａ及び１８ｂの外側において差動
装置ハウジング４と各々のサイドギア８ａ及び８
ｂとの間に装着されている。この各々の一対の伝
達部材２８ａ及び２８ｂは、夫々、ドライブシヤ
フト１６ａ及び１６ｂに装着された状態において
その他端部間に若干の間隙が存在し、従つて、
このとき、各々の一対の伝達部材２８ａ及び２８
ｂは、その他端部の第３のスプライン３０ａ及び
３０ｂと各々のドライブシヤフト１６ａ及び１６
ｂのスプライン１８ａ及び１８ｂとの噛合部を中
心としてばね部材２９の作用によつて夫々若干外
方（第２図に矢印３４ａ及び３４ｂで示す方向）
に押拡げられ、その外周面の各々が、夫々、差動
装置ハウジング４の一部（各々の内径部）に弾性
的に押圧せしめられる。

次に、上述した通りの差動装置２の作用効果に
ついて説明する。

低負荷走行時においては、各々の一対の伝達部
材２８ａ及び２８ｂの外周面がばね部材２９の作
用によつて差動装置ハウジング４に夫々弾性的に
結合（ばね部材２９の弾性復元力による摩擦力で
もつて連結される）される。従つて、内燃機関
（図示せず）からリングギア２２を経て差動装置
ハウジング４に伝達されてきた回動力は、ピニオ
ンギア１０ａ及び１０ｂ並らびにサイドギア８ａ
及び８ｂを経て各々のドライブシヤフト１６ａ及
び１６ｂに夫々伝達されると共に、その一部が
各々のクラツチ手段２６ａ及び２６ｂの伝達部材
２８ａ及び２８ｂを経て直接各々のドライブシヤ
フト１６ａ及び１６ｂに夫々伝達される。

かくして、低負荷走行時に、ばね部材２９の作
用によつて、差動装置ハウジング４と各々のドラ
イブシヤフト１６ａ及び１６ｂとが、各々の一対
の伝達部材２８ａ及び２８ｂを介して摩擦結合状
態となるため、サイドギア８ａ及び８ｂとピニオ
ンギア１０ａ及び１０ｂとの間又はサイドギア８
ａ及び８ｂのスプライン１４ａ及び１４ｂとドラ
イブシヤフト１６ａ及び１６ｂのスプライン１８
ａ及び１８ｂとの間に多少のバツクラツシユが存
在していても、上述した打音（歯面の打音）の発
生を防止することができる。

他方、高負荷走行又は旋回走行時等において
は、差動装置ハウジング４と各々のクラツチ手段
２６ａ及び２６ｂ（各々の一対の伝達部材２８ａ
及び２８ｂ）の外周面との間に大きな回動力が作
用するために、上述した各々の一対の伝達部材２
８ａ及び２８ｂと差動装置ハウジング４との結合
状態が実質上解除される。従つて、内燃機関（図
示せず）からの駆動力は、従来と同様に、リング
ギア２２、差動装置ハウジング４、ピニオンギア
１０ａ及び１０ｂ並びにサイドギア８ａ及び８ｂ
を経て各々のドライブシヤフト１６ａ及び１６ｂ
に夫々伝達される。

尚、図示の具体例では、各々の一対の伝達部材
２８ａ及び２８ｂが、夫々、各々のドライブシヤ
フト１６ａ及び１６ｂに装着された後にばね部材
２９の作用によつて若干外方に押拡げられるため
に、各々の一対の伝達部材２８ａ及び２８ｂのス
プライン３０ａ及び３０ｂと各々のドライブシヤ
フト１６ａ及び１６ｂのスプライン１８ａ及び１
８ｂとの噛合状態が一層確実になり、従つて、上
記スプライン３０ａ及び３０ｂと上記スプライン
１８ａ及び１８ｂとのバツクラツシユを実質上存
在しない状態に保持することができる。

また、図示の具体例では、当業者には容易に理
解される如く、差動装置ハウジング４から各々の
一対の伝達部材２８ａ及び２８ｂに回動力が伝達
される際に、一対の伝達部材２８ａ及び２８ｂの
うち片側の伝達部材第２図では差動装置ハウジン
グ４を図示していないが、例えば、第２図におい
て差動装置ハウジング４が時計方向に回動せしめ
られると伝達部材２８ｂが常に差動装置ハウジン
グ４に食い込むように作用するため、差動装置ハ
ウジング４の回動力を一層確実に各々の一対の伝
達部材２８ａ及び２８ｂを介してドライブシヤフ
ト１６ａ及び１６ｂに伝達することができる。

以上記載したように、本具体例においては、サ
イドギア８ａ及び８ｂとピニオンギア１０ａ及び
１０ｂとのバツクラツシユによる打音並びに、特
に差動装置２における打音に大きな影響を与える
と考えられるサイドギア８ａ及び８ｂのスプライ
ン１４ａ及び１４ｂとドライブシヤフト１６ａ及
び１６ｂのスプライン１８ａ及び１８ｂとのバツ
クラツシユによる打音をも除去することができ
る。

以上、本考案に従つて構成された差動装置の好
適具体例を添付図面を参照して説明したけれど
も、本考案はかかる具体例に限定されるものでは
なく、本考案の範囲を逸脱することなく種々の変
形乃至修正が可能である。

例えば、本具体例においては用いられていない
が、必要により差動装置ハウジングと各々の一対
の伝達部材との間の摩擦力を大きくしてその結合
状態を強くするために、各々の一対の伝達部材の
外周面にそれ自体公知の摩擦材（例えば、レジン
モールド、ゴムモールド等）を配設してもよい。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本考案に従つて構成された差動装置
の好適具体例を図示する断面図。第２図は、第１
図に示す差動装置のクラツチ手段をドライブシヤ
フトに装着した状態を図示する断面図。 ２……差動装置、４……差動装置ハウジング、
８ａ及び８ｂ……サイドギア、１０ａ及び１０ｂ
……ピニオンギア、１６ａ及び１６ｂ……ドライ
ブシヤフト、２６ａ及び２６ｂ……クラツチ手
段。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 一対のドライブシヤフトの各々にスプライン結
   合された一対のサイドギアと、該一対のサイドギ
   アに噛合する一対のピニオンギアと、該一対のド
   ライブシヤフトと差動装置ハウジングとの間に介
   在されたクラツチ手段とを備え、 該クラツチ手段の各々は、夫々、ドライブシヤ
   フトにスプライン結合される一対の弧状の伝達部
   材及び該一対の伝達部材の一端部間に装着される
   ばね部材を含んでおり、 該クラツチ手段の該ばね部材は該一対の伝達部
   材をそれらの他端部を支点として拡張せしめる方
   向に偏倚せしめ、これによつて該一対の伝達部材
   の外周面が該差動装置ハウジングの一部に弾性的
   に圧接される、ことを特徴とする差動装置。