JPS6311404Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は、自動車用エンジンのパワートレイン
への駆動力伝達経路に設けられるフライホイール
に関し、とくにエンジンからパワートレインに伝
わるトルク変動および曲げ振動を低減するように
した振動低減フライホイールに関する。

［従来の技術］ エンジンからフライホイールを介してパワート
レインに伝わる振動には、エンジンのトルク変動
に伴なうねじり振動すなわちクランクシヤフト回
転方向の振動と、爆発に伴なうクランクシヤフト
の軸心と直角方向の加振力による曲げ振動との２
種類がある。従来、エンジンのトルク変動低減装
置（たとえば特開昭50−25907号公報、特開昭54
−7008号公報、特公昭57−18049号公報、特開昭
55−109844号公報）とクランク軸の曲げ振動によ
るフライホイールの振れを低減する機構（たとえ
ば、特開昭53−32524号公報）を一つのエンジン
部品に有する装置はなく、この２種類の加振力に
よる振動は別々の車輌部品で低減するように対処
されてきた。

［考案が解決しようとする問題点］ このため、大きなスペースが必要になつたり、
部品点数が増してコストアツプを招くなどの多く
の問題を有していた。

本考案はエンジンのトルク変動とフライホイー
ルの振れ振動の両方を一つのフライホイール機構
の中で吸収するようにすることを目的とし、これ
によつて前記のスペースの問題、コストアツプの
問題を大幅に解消することを目的としている。

［問題点を解決するための手段］ 上記問題点は、次の本考案に係る振動低減フラ
イホイールによつて解決される。すなわち、フラ
イホイールをクランクシヤフト側に取付けた第一
のフライホイールとパワートレイン側に連結した
第二のフライホイールとの２枚のフライホイール
から構成し、第一のフライホイールと第二のフラ
イホイールにピンを突設するとともに第一のフラ
イホイールに取付けたピンと第二のフライホイー
ルに取付けたピンとに弾性帯をかけ渡して両フラ
イホイールを周方向に連結し、さらに第一のフラ
イホイールと第二のフライホイールとを中心軸上
で球面軸受にて連結し、第一のフライホイールと
第二のフライホイールの対向面間に、皿ばねを皿
ばねの大径部が第一のフライホイールに接し皿ば
ねの小径部が第二のフライホイールに接するよう
に介装したことを特徴とする振動低減フライホイ
ール。

［作用］ このように構成したフライホイールでは、ねじ
り剛性が弾性帯によつて大幅に低減されてトルク
変動は低減され、かつ曲げ振動は球面軸受による
連結によつて本質的に遮断され、２種類の振動は
同時に低減される。

［実施例］ 以下に、本考案の振動低減フライホイールの望
ましい実施例を図面を参照して説明する。

第１図および第２図は本考案の一実施例に係る
振動低減フライホイールを示している。図中１は
エンジンのクランクシヤフトで、２はパワートレ
インの一部を構成するクラツチである。

フライホイールは円板状の第一のフライホイー
ル３（以下単にフライホイール３という）と第二
のフライホイール４（以下単にフライホイール４
という）との２枚のフライホイールから成つてい
る。そして一方のフライホイール３がクランクシ
ヤフト１にボルト５等により固定され、他方のフ
ライホイール４がパワートレインのクラツチ２に
連結されている。

フライホイール３とフライホイール４とはフラ
イホイール回転方向につぎのように連結される。
すなわち、フライホイール３，４は、その外周部
において互いに間隔をもたせて対向されており、
対向面３ａ，４ａにはそれぞれピン６，７が取付
けられている。ピン６，７のフライホイール３，
４への固定は、図示例では、フライホイール３，
４に穴を形成して、この穴にピン６，７の一端を
圧入する方式をとつているが、ゆるみや脱落が防
止されればねじ込み等の他の手段によつて固定し
てもよい。

ピン６，７は、第２図に示すようにフライホイ
ール３，４の円周上に複数箇所対にして設けられ
る。このとき、ピン６，７は互いにフライホイー
ル３，４の中心から半径方向外方に向かつて延び
る同一の直線上に位置するように、半径方向に整
列されて設けられる。エンジン側のフライホイー
ル３のピン６とパワートレイン側のフライホイー
ル４のピン７とに跨つて、弾性帯８が掛け渡され
ている。弾性帯８はゴム、合成樹脂等の弾性を有
する帯から成り、引張力をかけた状態でピン６，
７まわりに装着される。この弾性帯８に掛け渡し
により、フライホイール３とフライホイール４と
は周方向にばね作用をもたせて連結される。

また、フライホイール３とフライホイール４と
は軸方向にもつぎのように連結される。すなわ
ち、一方のフライホイール３の中央部には他方の
フライホイール４に向かつて延びていて先端にボ
ール部９が設けられており、他方のフライホイー
ル４には、このボール部９に係合するソケツト部
１０が形成されている。ボール部９とソケツト１
０とはフライホイール３，４の軸心上で互いに回
動自在かつ屈曲自在に係合されて球面軸受を構成
し、この球面軸受によつてフライホイール３，４
は互いに軸方向に連結される。ボール部９とソケ
ツト部１０との隙間にはグリース１１が充填され
る。

フライホイール３とフライホイール４の対向面
３ａ，４ａ間には皿ばね１２が介在されている。
この皿ばね１２は円板状で軸方向に滑らかにテー
パをもたせたばねから成り、大径端がフライホイ
ール３に当接され、小径端がフライホイール４に
ねじ１３等により固定される。また、皿ばね１２
のフライホイール３の当接面には、潤滑材１４が
設けられている。

上記構成を有するフライホイールにおける作用
について説明する。

まず、エンジンの回転のパワートレインへの伝
達は、クランクシヤフト１、フライホイール３、
ピン６、弾性帯８、ピン７、フライホイール４、
クラツチチ２の順で行なわれる。

この場合、弾性帯８によるトルク伝達はばね作
用を伴ないトルク変動に伴なう振動は低減され
る。弾性帯８はピン６，７がフライホイール３，
４の半径方向に整列されているので、周方向の角
変位に対しては強いばね力を示さず、したがつて
フライホイール３，４のねじり剛性は十分に小さ
くとれるので、効果的なトルク変動の低減が行な
われる。このようなねじり剛性の低下は、従来の
コイルスプリングを用いたばね機構に比べてフラ
イホイールの周方向に小さなスペースで達成で
き、コイルスプリングのばねを利用したフライホ
イールに比べてフライホイール３，４の小径化、
軽量化をもはかることができる。

一方、エンジンの爆発力を受けてクランクシヤ
フト１に生じる曲げ振動は、フライホイール３の
振れ、皿ばね１２、フライホイール４の振れの順
でパワートレインに伝わろうとするが、皿ばね１
２のばね作用と、パワートレイン側フライホイー
ル４側の皿ばね１２との接触径がエンジン側フラ
イホイール３の皿ばね１２との接触径より小さな
ことによる振動量の縮小とによつて、パワートレ
インに伝達される振動が大幅に低減される。

このように、エンジンのトルク変動に伴なう振
動も、クランクシヤフト１の曲げ振動も、大幅に
低減されまたは遮断されるので、自動車の乗心地
は良くなり、パワートレインからボデーを経て振
動が伝わつて誘起される車室内のこもり音も大幅
に抑制される。

［考案の効果］ 以上の通りであるから、本考案による振動低減
フライホイールによるときは、エンジンのトルク
変動に伴なうねじり振動とクランクシヤフト曲げ
振動との２種類の振動が一つのフライホイール機
構によつて大幅に低減できるという主効果が得ら
れる他、各々の振動抑制に振動低減装置を設けた
場合に生じるスペース上の問題を解消できる他、
大幅なコストダウンをはかることができるという
効果も得られる。

また、皿ばねの大径端をクランクシヤフト側の
フライホイールに接触させ、小径端をパワートレ
イン側のフライホイールに接触させたので、皿ば
ねの変形により振動低減の他、クランクシヤフト
端の曲げ振幅は皿ばねの小径端径と大径端径との
比分だけ、さらに低減され、振動低減が効果的と
なる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例に係る振動低減フラ
イホイールの断面図、第２図は第１図の振動低減
フライホイールの−線に沿う断面図、であ
る。 １……クランクシヤフト、２……パワートレイ
ン（クラツチ）、３……第一のフライホイール、
４……第二のフライホイール、６，７……ピン、
８……球面軸受のボール部、１０……球面軸受の
ソケツト部。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. フライホイールをクランクシヤフト側に取付け
   た第一のフライホイールとパワートレイン側に連
   結した第二のフライホイールとの２枚のフライホ
   イールから構成し、第一のフライホイールと第二
   のフライホイールにピンを突設するとともに第一
   のフライホイールに取付けたピンと第二のフライ
   ホイールに取付けたピンとに弾性帯をかけ渡して
   両フライホイールを周方向に連結し、さらに第一
   のフライホイールと第二のフライホイールとを中
   心軸上で球面軸受にて連結し、第一のフライホイ
   ールと第二のフライホイールの対向面間に、皿ば
   ねを皿ばねの大径部が第一のフライホイールに接
   し皿ばねの小径部が第二のフライホイールに接す
   るように介装したことを特徴とする振動低減フラ
   イホイール。