JPS6311451B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は強固に集束された緊密集束部とゆるや
かに集束された嵩高集束部とを交互に有し、シヤ
リ味特性と柔軟性と杢調の表面効果を兼ねそなえ
た編織物を得るに適した複合仮撚加工糸に関する
ものである。

従来熱可塑性合成繊維糸条の仮撚糸は伸縮性と
嵩高性を兼ねそなえた加工糸としてその特徴を有
し、編織物分野に多く用いられてきたが、本質的
に合成繊維本来のヌメリ感、ロウ様の感触などの
人工的風合を嫌う消費者嗜好が強まり近年多くの
改善が試みられてきた。

例えば、長手方向において繊度差、色の濃淡
差、異色性、捲縮差等を有する糸条が数多く提案
されているが、そのほとんどのものは、生産能率
が悪く、品位が不安定でコストが割高になる等の
欠点を有している。

更に仮撚部分融着に関しては、従来より数多く
の提案があるが、これらはいずれも融着系の有す
るシヤリ感シボ立ち等を活用したものであり、フ
アンシー効果を有するものはほとんどない。

たとえば特公昭46―5261号公報では融点の異な
る２種類の糸を引揃えて仮撚し、芯糸よりも融点
の低い捲付け糸を融着捲付けすることによる交互
撚を有する捲縮糸の製造方法が提案されている。
又特公昭46―18820公報では熱可塑性繊維と非熱
可塑性繊維とを相互に交絡し、熱可塑性繊維の周
囲に非熱可塑性繊維がゆるやかなカール状となつ
ている融着捲縮糸が提案されている。しかしこれ
らの糸条には糸条の長手方向に仮撚加撚方向と同
方向の実撚を有する緊密集束部や仮撚解撚方向の
実撚を有する嵩高集束部は存在せず２本の糸条が
分離し易いなどの欠点を有し、しかも布帛上でフ
アンシー効果はまつたく得られない。

本発明は、かかる従来技術の諸欠点を解消する
ものであつて、その目的とするところは糸条の長
手方向に沿つて強固に捲き付いてなる緊密集束部
とゆるやかに捲付いてなる嵩高集束部を交互に存
在せしめて、熱可塑性合成繊維と非熱可塑性繊維
を分離することなく強固に集束させると共に、極
めて変化に富んだ外観、風合の編織物を得るに適
した複合仮撚加工糸を提供するにある。

本発明は上記目的を達成するため次の構成を有
する。

すなわち、本発明は、一部もしくは全部の単フ
イラメントが融着し集束された熱可塑性合成繊維
糸条を芯に非熱可塑性繊維糸条が分散することな
く該合成繊維糸条の外側に仮撚加撚と同方向の実
撚で強固に捲き付いてなる緊密集束部と、単フイ
ラメントがほとんど融着することなく集束された
熱可塑性合成繊維糸条を芯に非熱可塑性繊維糸条
が分散することなく該合成繊維糸条の外側に仮撚
解撚方向の実撚でゆるやかに捲き付いてなる嵩高
集束部とを糸条の長手方向に交互に有することを
特徴とする複合仮撚加工糸に関するものである。

以下本発明について詳細に説明する。

本発明の複合仮撚加工糸は熱可塑性合成繊維糸
条と非熱可塑性繊維糸条とを引揃えて同時に仮撚
加撚域に供給することにより得られ、第１図に示
すとおり緊密集束部Ａと嵩高集束部Ｂとをそれぞ
れ不規則な長さで糸条の長手方向に交互に有する
糸条である。前記緊密集束部Ａは見かけ繊度の細
い部分であり、一部もしくは全部の単フイラメン
トが融着されて仮撚加撚と同方向の撚を有する熱
可塑性合成繊維糸条１を芯に、該糸条１の周囲に
非熱可塑性繊維糸条３が仮撚加撚と同方向の撚で
強固に捲き付いてなる集束形態を呈する。又、嵩
高集束部Ｂは見かけ繊度の太い部分であり、単フ
イラメントがほとんど融着されることなく、仮撚
加撚と逆方向の撚で集束された熱可塑性合成繊維
糸条２を芯に、該糸条２の周囲に非熱可塑性繊維
糸条３が仮撚加撚と逆方向の撚でゆるやかに捲き
付いてなる集束形態を呈する。

前記緊密集束部Ａ及び嵩高集束部Ｂの長さは比
較的長い方が好ましいが、その長さを長くするた
めには仮撚加工に際してオーバーフイード率を出
来るだけ高くして、仮撚数は通常の加撚数よりや
や低目に設定するのが良い。本発明者の実験結果
によれば、オーバーフイード率は10％以上、好ま
しくは15〜35％仮撚数は20000／√Ｄ〜35000／√ＤＴ／
Ｍ 〔Ｄはマルチフイラメントの繊度〕にするのがよ
く、オーバーフイード率が10％未満の場合および
仮撚数が35000／√ＤＴ／Ｍを上廻る場合はいずれも前 記両集束部とも長さが短かくなりフアンシー効果
が劣ると共に、熱可塑性合成繊維糸条と非熱可塑
性繊維糸条とが分離しやすいなどの欠点を生じ
る。又仮撚数が極度に低くなり20000／√ＤＴ／Ｍを下 過ると嵩高集束部Ｂのクリンプ形成能が低いため
見かけの細い部分（緊密集束部）と見かけの太い
部分（嵩高集束部）の太さの差が小さくなり、フ
アンシー効果が得られず、風合的にもヌメリ感を
有し、好ましいものが得られない。

又本発明の糸条において、該糸条の緊密集束部
Ａと嵩高集束部Ｂがある特定の比率の時、即ち糸
条１ｍ当りについて測定した緊密集束部Ａの占め
る比率が20〜50％の場合に極めて優れたフアンシ
ー効果が得られると共に、熱可塑性合成繊維糸条
と非熱可塑性繊維糸条の集束性も極めて優れてい
る。この様な糸条はオーバーフイード率、仮撚
数、ヒーター温度を供給糸条の物性に合わせて適
宜選定する事によつて得られる。

本発明の複合仮撚加工糸の特徴ある形態が形成
される理由は、熱可塑性合成繊維糸条と非熱可塑
性繊維糸条とを引揃えて同時に該熱可塑性合成繊
維の軟化点以上融点近傍の温度でしかも高オーバ
ーフイードで仮撚加工を施すために、該熱可塑性
合成繊維糸条はその長手方向に強固に融化して仮
撚加撚方向の実撚が残存する部分とゆるやかな解
撚方向の実撚を有する部分とを交互に形成しつつ
全体として仮撚オーバーフイード量にほぼ対応し
た量だけ収縮し、一方非熱可塑性繊維糸条は熱に
よる収縮性能を持たないため分散することなく熱
可塑性合成繊維糸条の前記両部分にそれぞれの撚
方向と同一方向の撚で捲付いてその余剰長さを補
償しようとするからであり、結果として緊密集束
部Ａと嵩高集束部Ｂとが交互に形成されるものと
考えられる。

本発明に適用する熱可塑性合成繊維糸条および
非熱可塑性繊維糸条の種類は特に制限はないが、
前者としてはポリアミド系およびポリエステル系
合成繊維糸条が、また後者としては再生繊維糸条
がそれぞれ好適である。

本発明の複合仮撚加工糸は以上のごとく熱可塑
性合成繊維糸条と非熱可塑性繊維糸条との熱によ
る収縮性能の違いと、熱可塑性合成繊維糸条の融
着仮撚を高オーバー下で行うことによる特異な加
工特性とを巧みに応用して得られるものである。

次に本発明の糸条の特徴、効果について述べ
る。

糸条の長手方向に見かけが細く適度の長さを
有する緊密集束部と明らかに見かけが太くかつ
適度の長さを有する嵩高集束部とが混在しフア
ンシー効果を与える。

熱可塑性合成繊維糸条と非熱可塑性繊維糸条
とが分離することなく強固に集束されており、
異染性の杢調効果と吸水性に富み、合成繊維の
もつ静電気障害の防止効果を与える。

熱可塑性合成繊維糸条を構成する一部もしく
は全部の単フイラメントが融着し、該糸条の外
側に非熱可塑性繊維糸条が仮撚加撚と同方向の
撚で強固に捲き付いてなる緊密集束部によるシ
ヤリ味と、捲縮が付与され個々の単フイラメン
トがほとんど融着することなく集束された熱可
塑性合成繊維糸条を芯に、その外側に非熱可塑
性繊維糸条が仮撚解撚方向の撚でゆるやかに捲
き付いてなる嵩高集束部による柔軟性、嵩高性
を有するものであるから、前記フアンシー効果
に加えて適度のシヤリ味と柔軟性、嵩高性を有
する、従来にない極めて新規な雅趣に富んだ外
観風合の製品が得られる。

従来の融着仮撚加工に比べ極めて高いオーバ
ーフイード下で仮撚加工して得られるため同じ
シヤリ感を得る場合でも仮撚温度を低くするこ
とが出来るので、糸条品位の安定性がよく糸条
の強度も高い。

次に本発明の実施例をあげて更に具体的に説明
する。

実施例 １ ポリエステル75d／48fブライト糸とレイヨンフ
イラメント50d／24fを、市販のスピンドル式仮撚
機を使用して、スピンドル回転数15万rpm、仮撚
数2360T／Ｍ、仮撚方向Ｓ、第１ヒーター温度
242℃、第１オーバーフイード等17.7％、第２オ
ーバーフイード率５％、第２ヒーター温度230℃、
捲取率５％で仮撚加工を行い下記特徴を有する加
工糸を得た。

(1) 該加工糸は、糸条の長手方向に緊密集束部と
嵩高集束部を交互に有し、該緊密集束部はポリ
エステル糸条の一部もしくは全部の単フイラメ
ントが融化接着し、仮撚加撚方向の実撚で強固
に集束されていると共に、該糸条を芯としてそ
の外側にレイヨン糸条が同方向の実撚で強固に
捲き付いており、一方嵩高集束部はポリエステ
ル糸条のほとんどのフイラメントが接着してお
らず前記緊密集束部とは逆方向の撚を有すると
共に、該糸条を芯としてその外側にレイヨン糸
が仮撚解撚方向の撚でゆるやかに捲き付いてい
る。

(2) 該加工糸５ｍについて緊密集束部と嵩高集束
部の長さを測定した結果は次のとおりであつ
た。

緊密集束部：３〜20mm，平均15mm 嵩高集束部：５〜50mm，平均25mm (3) 該加工糸を0.5ｇ／ｄの荷重で緊張―弛緩処
理を行なつたところ、ポリエステルとレイヨン
の２糸条は分離する事なく緊密集束部で強固に
集束されていた。

(4) 得られた加工糸（138デニール）に0.1ｇ／ｄ
の荷重を掛け長さ50cmの印間長を計り、この印
間長の長さについてポリエステル（88デニー
ル）とレイヨン（50デニール）の２糸条に塑性
変形を与えることなく分離して各々0.1ｇ／ｄ
の荷重をかけその長さを測定した結果、ポリエ
ステル糸条は50cm、レイヨン糸条は57.7cmであ
つた。

次いで該加工糸を使用して編織物を作製し、染
色仕上を行なつた結果、糸条の太細と異染色性が
自然な斑として極めて優雅なフアンシー効果を製
品布帛表面に与え、加えてレイヨンの持つ落ちつ
いた光沢と重量感のあるドレープ性及びポリエス
テルの適度のシヤリ味と柔軟性がミツクスされ、
従来にない独特の外観、風合を有する製品が得ら
れた。

実施例 ２ ポリエステル100d／48fセミダル糸とレイヨン
フイラメント75d／30f原糸を使用して、圧縮流体
噴射式旋回流ノズルを有する仮撚装置により第１
デリベリ速度75ｍ／min、エアー圧力2.0Kg／cm²、
オーバーフイード率28.6％、ヒーター濃度247℃、
仮撚方向Ｓの条件で仮撚加工を行い、下記の特徴
を有する加工糸を得た。

(1) 該加工糸は、糸条の長手方向に緊密集束部と
嵩高集束部とを交互に有し、該緊密集束部はポ
リエステル糸条の一部もしくは全部の単フイラ
メントが融化接着し仮撚加撚方向の実撚で強固
に集束されていると共に、該糸条を芯としてそ
の外側にレイヨン糸条が同方向の実撚で強固に
捲き付き、一方嵩高集束部はポリエステル糸条
のほとんどのフイラメントは接着しておらず前
記緊密集束部とは逆方向の撚を有すると共に、
該糸条を芯としてその外側にレイヨン糸が仮撚
解撚方向の撚でゆるやかに捲き付いている。

(2) 該加工糸５ｍについて緊密集束部と嵩高集束
部の長さを測定した結果は次のとおりであつ
た。

緊密集束部：４〜50mm，平均24mm 嵩高集束部：７〜85mm，平均35mm (3) 該加工糸を0.5ｇ／ｄの荷重で緊張―弛緩処
理を行なつたところ、ポリエステルとレイヨン
の２糸条は分離することなく緊密集束部で強固
に集束されていた。

(4) 得られた加工糸（203デニール）に0.1ｇ／ｄ
の荷重を掛け50cmの印間長を計り、この印間長
の長さについてポリエステル（128デニール）
とレイヨン（75デニール）の２糸条に塑性変形
させることなく分離して、各々に0.1ｇ／ｄの
荷重をかけその長さを測定した結果、ポリエス
テル糸条は50cm、レイヨン糸条は63.6cmであつ
た。

該加工糸を編織物にしたところ、フアンシーな
外観と、シヤリ味があつて、更に柔軟な風合を兼
ねそなえた製品が得られた。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の複合仮撚加工糸の外観模式図
である。 Ａ…緊密集束部、Ｂ…嵩高集束部、１…熱可塑
性合成繊維糸条の融着加撚部、２…熱可塑性合成
繊維糸条の解撚部、３…非熱可塑性繊維糸条。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 一部もしくは全部の単フイラメントが融着し
   集束された熱可塑性合成繊維糸条を芯に非熱可塑
   性繊維糸条が分散することなく該合成繊維糸条の
   外側に仮撚加撚と同方向の実撚で強固に捲き付い
   てなる緊密集束部と、単フイラメントがほとんど
   融着することなく集束された熱可塑性合成繊維糸
   条を芯に非熱可塑性繊維糸条が分散することなく
   該合成繊維糸条の外側に仮撚解撚方向の実撚でゆ
   るやかに捲き付いてなる嵩高集束部とを糸条の長
   手方向に交互に有することを特徴とする複合仮撚
   加工糸。