JPS62935B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は所定の形状に保たれたポリビニルアル
コール系含水ゲル状成形物の製造方法に関するも
のであり、さらに詳しくは冷水不溶性のポリビニ
ルアルコールと水溶性のゲル化剤とを主要成分と
して含む水系分散液を、常温もしくはそれ以下の
温度において所定の形状に成型した後、該分散液
を加熱処理することを特徴とするポリビニルアル
コール系含水ゲル状成形物の製造方法に関する。

近年ゲル状物としての親水性高分子材料の医
療、食品、農林水産業分野への利用が進むにつれ
て特に水不溶性でかつ親水性を有する高分子材料
が各種のメンブレンや液体クロマト担体などの分
離精製材料、人工餌料などの農林水産用材料とし
て、あるいは吸水性や保水性を利用する種々の用
途に用いられる様になつた。このような親水性高
分子材料の中でも優れた含水能を有し生体に対し
て毒性のない点に着目してポリビニルアルコール
からなるゲル状物の用途開発が活発に行なわれて
いる。

一般にポリビニルアルコール水溶液に金属塩類
とかコンゴーレツド等の各種ゲル化剤を添加する
ことによりポリビニルアルコールの水性ゲル体を
得ることはよく知られている。しかしながら、該
水溶液にゲル化剤を添加するとただちにポリビニ
ルアルコールがゲル化してしまい、均質なしかも
一定の形状を有するゲル体とはなり得ない。例え
ばポリビニルアルコールの水溶液にポリビニルア
ルコールに対するゲル化剤として硫酸チタン水溶
液をよく混合しながら徐々に添加してゆくと、つ
いには流動性のないゲル体を得ることができる
が、このものは均質なゲル体とはなりがたく、硬
く強度的に強い部分と軟らかくて弱い部分がいり
まじつたものであり全く実用に耐えないものであ
る。

この様にポリビニルアルコールの水溶液とポリ
ビニルアルコールに対して良好なゲル化能を有す
るゲル化剤とを均一に混合して均質なゲル体を得
ることは極めて困難なことであつた。

本発明者らは上記の如き実情に鑑みてポリビニ
ルアルコール系ゲル状物を各種用途に応じた任意
の形状に成形するための方法について鋭意検討を
重ねた結果、冷水不溶性のポリビニルアルコール
と水溶性のゲル化剤とを主要成分として含む水系
分散液を、常温もしくはそれ以下の温度において
所定の形状に成型した後、該分散液を加熱処理す
ることにより組成が均質でかつ強靭なポリビニル
アルコール系含水ゲル体の任意の形状の成形物が
容易に製造できることを見出し本発明を完成する
に到つた。

本発明で用いられる水系分散液はポリビニルア
ルコールに対してゲル化作用を有する水溶性のゲ
ル化剤の均一水溶液に冷水不溶性のポリビニルア
ルコールを分散せしめる等の方法により調整され
る。

一般にポリビニルアルコールの冷水に対する膨
潤、溶解の挙動はポリビニルアルコールのケン化
の程度に大きく依存し、残存酢酸基の多いいわゆ
る部分ケン化ポリビニルアルコールは冷水に対し
て膨潤してよく溶解するので水に溶解したゲル化
剤と共存した形で用いることは前述した理由から
不可能であるが、一方残存酢酸基が少ないいわゆ
る完全ケン化ポリビニルアルコールは冷水に対す
る膨潤性が劣ると同時に溶解しにくく加熱により
はじめて溶解する性質を有するので本発明の目的
には好ましく用いることができる。すなわちポリ
ビニルアルコールについては95モル％以上のケン
化度のポリビニルアルコールさらに望ましくは97
モル％以上のケン化度のポリビニルアルコールを
用いればより良好な作業性を期待することができ
る。さらに作業性を改善するために熱処理により
結晶化度が増大したポリビニルアルコールを用い
ることも効果的である。

水系分散液としてはこのほか分散液の流動性を
そこなわない範囲でまずポリビニルアルコールと
ゲル化剤の希薄な混合水溶液を調整しておき、こ
れに冷水不溶性のポリビニルアルコールを分散せ
しめたものを用いることもできる。

ゲル化剤としては例えば、硼酸、コンゴーレツ
ドおよびその類似化合物、４，4′―ジアミノスチ
ルベン、２，2′―ジスルホン酸誘導体、メタアク
リルアミド―メタアクリル酸共重合体、さらには
ピロガロール、フエノール、α―ナフトールの如
きフエノール類、硼砂、硼酸カルシウム、硫酸チ
タン、塩化ジルコニウムなどの金属塩類、乳酸チ
タンキレートの如き金属キレート類等が使用でき
る。この中でも特にチタン系化合物を用いた場合
は非常に耐熱水性のよい、強靭な含水ゲル体を得
ることができるので最も好ましい。

水系分散液に対しては本発明の本質をそこなわ
ない範囲で、例えば染料、顔料の様な着色剤とか
香料、またアルコール類、多価アルコール類の様
な溶剤類、さらにはデンプン、CMC（カルボキ
シメチルセルロース）、メチルセルロース、アル
キン酸ソーダ、ゼラチンの様な天然高分子化合
物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレング
リコール、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル
アミド、ポリビニルピロリドンの様な水溶性合成
高分子類、その他の添加剤を加えることも可能で
ある。又、無機、有機の充填材、紙、繊維、布等
の異種材料をゲル体中に含有せしめて補強するこ
ともできる。

ポリビニルアルコールとゲル化剤及び水との配
合割合はゲル状成形物の要求性能に応じて適宜選
択することができるので一律に規定することはで
きないが、ポリビニルアルコールの配合割合が多
くなる程、またゲル化剤の配合割合が多くなる程
硬い強靭なゲル体となる傾向がみられる。したが
つて、例えば乳酸チタンキレートをゲル化剤とし
て用いる場合、水系分散液中のポリビニルアルコ
ールの配合割合が10重量％以上でかつ40重量％以
下、乳酸チタンキレートが１重量％以上であれば
良好な成形性を有する含水ゲル体を得ることがで
きる。ポリビニルアルコールの配合割合が40重量
％を越える場合は水系分散液の流動性が著しく損
なわれ本発明を実施すること自体が不可能にな
る。

水系分散液を所定の形状に成型後ゲル化して一
定の形をもつた成形物とするための成形方法とし
ては、分散液を常温もしくはそれ以下の温度にお
いて型に注型した後、加熱してゲル化する方法、
紙または織物に分散液を被覆した後加熱してゲル
化するコーテイング法などが具体的に考えられる
が、特に中空成形物を得るためには分散液中に金
型を浸漬して引き上げ金型に付着した分散液を加
熱してゲル化する浸漬法、金型に分散液を充填し
て予備加熱してゲル化した後未ゲル化物を排出
し、次いで再加熱を行なうスラツシユモールデイ
ング法、さらには回転成形法等を適用することが
可能である。

成型後の水系分散液を加熱する際の条件は、加
熱が成形機の容量、加熱効率により大きく影響を
受けるので温度と時間のみで一律に規定すること
は困難であるが、90℃〜95℃の温度で５分間ない
し30分間加熱するのが最も効率的である。

本発明の方法によれば十分な強度と弾性、およ
び形態保持性を有し、しかも耐熱水性の良好な含
水のゲル状成形物を得ることができる。この成形
物は例えばその製造過程で種々の添加剤を配合せ
しめて形成すれば人工餌としての用途、あるいは
蓄熱体、寝台のクツシヨン材、各種振動吸収材、
液漏れ防止材（シーリング材）、生理活生物質の
支持体、微生物の培養用培地、植物育成用培地、
コンタクトレンズ、透析膜、さらには漁網又は水
中構築物などの表面にゲル体を形成せしめてカキ
とかフジツボの様な水中生物の付着を防止するな
どの用途展開が可能である。

次に実施例により本発明を更に詳細に説明する
が、本発明はこれらによつて何ら限定されるもの
ではない。

実施例 １ 水75重量部にピロガロール８重量部を溶解した
後、重合度1750、ケン化度98.5モル％のポリビニ
ルアルコール17重量部を分散せしめ、1.5cmの間
隔をもつた30cm四方の２枚のステンレス板の間に
流しこみ90℃で20分間加熱し、冷却後型枠よりと
り出した所2.1Kg／cm²の引張強度を有するきれい
なポリビニルアルコール系含水ゲル体の平板を得
た。

実施例 ２ 乳酸チタンキレート1.5重量部を水84重量部に
溶解した水溶液に140℃で30分間熱処理をほどこ
した重合度1750、ケン化度99.9モル％のポリビニ
ルアルコール20重量％を添加して得た水性分散液
を魚の形をした金型に注入し、90℃で20分間加熱
処理を行なつた後冷却して取り出した所、3.9
Kg／cm²の引張強度を有し適度の硬さをもつたポリ
ビニルアルコール系含水ゲル体よりなる人工魚を
得た。このものを30℃の水中に３ケ月間放置して
も形態は保持されていた。一方このものを沸騰水
中で５時間煮沸しても何ら形態はそこなわれなか
つた。

実施例 ３ ホウ砂３重量部、重合度2400、ケン化度98.5モ
ル％のポリビニルアルコール10重量部、水87重量
部を用いて調整した水系分散液を球状の型枠に注
入し95℃で20分間加熱処理した結果、非常に弾性
に富む球形のポリビニルアルコール系含水ゲル体
が得られた。このものの引張強度を測定したとこ
ろ2.6Kg／cm²の値を示した。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 冷水不溶性のポリビニルアルコールと水溶性
   のゲル化剤とを主要成分として含む水系分散液
   を、常温もしくはそれ以下の温度において所定の
   形状に成型した後、該分散液を加熱処理すること
   を特徴とするポリビニルアルコール系含水ゲル状
   成形物の製造方法。