JPS6231329Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、車両等に装着されるブレーキ用また
はクラツチ用のマスタシリンダと、このマスタシ
リンダの作動を補助する倍力装置との結合部構造
に関するものである。

従来、こうした結合部構造として、倍力装置の
前方に形成した凹所に、マスタシリンダのシリン
ダ孔開孔端部に形成した筒状部を嵌入するととも
に、シリンダ孔に摺動自在に挿入して圧力室を形
成するピストンの延長部を、前記凹所を貫通して
倍力装置の内部に突出させ、ピストンとシリンダ
孔内面との間に位置する第１の密封手段をシリン
ダ孔の開口から嵌装し、ピストンの延長部と凹所
との間に第２の密封手段を、筒状部と凹所との間
に第３の密封手段を各々配設し、第１の密封手段
と第２の密封手段との間を筒状部と凹所との間を
介して大気に連通する通路を設けたものが知られ
ている。（例えば実開昭56−44960号公報参照。） これは、第１の密封手段によりマスタシリンダ
内の液が漏れることを防ぎ、第２の密封手段によ
り延長部と凹所との間を介して、また第３の密封
手段により筒状部と凹所との間を介して、倍力装
置の圧力が漏れたり倍力装置内に異物が侵入した
りすることを防止し、さらに、第１の密封手段の
不良によりマスタシリンダからの液漏れが生じた
ときに、漏れた液を倍力装置内に侵入させないよ
うに、通路から凹所と筒状部との間を介して大気
に排出するようにしたものであるが、従来のもの
においては、３つの独立した密封手段を各々結合
部に設けなければならないため、部品点数が多く
組付作業が煩雑になるという問題がある。

こうした問題を解決するにあたつては、実公昭
55−48904号公報に示されるような三者間を互い
に密封する単一の密封部材を用い、密封手段の総
数を減らすことが考えられる。しかしながら、単
にこれを適用したところで、密封手段を固定する
ために独立した抜け止め具を用いその抜け止め具
を組付ける必要があることから、組付作業が煩雑
になる。さらに、漏れた液を排出するための通路
として、筒状部に径方向に貫通する孔を穿設しな
ければならないことから、マスタシリンダの筒状
部に対することはできず、加工、組付等の能率を
上げて生産効率を向上することができない。

本考案は、上記問題に鑑み成されたものであつ
て、密封手段の固定、通路の形成をも考慮して、
結合部の構造をできる限り簡略化して生産効率を
向上し得る倍力装置とマスタシリンダとの結合部
構造を提供することを目的とする。

本考案は、上記目的を達成するために、前記第
２の密封手段と第３の密封手段とは、筒状部端面
と凹所低面との間に位置する板状部と、筒状部内
面と延長部外面との間に位置する環状部と、筒状
部に設けた係止部に嵌着される保持部とを含む単
一の密封部材より構成し、前記通路を前記単一の
密封部材に筒状部に沿つて設けた溝から形成して
成るものである。

こうすることにより、保持部を筒状部の係止部
に嵌着すると、密封部材は筒状部に対する抜け止
めを施されてマスタシリンダに嵌装され、こうし
た後筒状部を凹所に嵌入してマスタシリンダと倍
力装置とを結合すると、密封部材により延長部、
筒状部及び凹所の三者間が、倍力装置からマスタ
シリンダ側または大気側への圧力漏れ、倍力装置
内への異物の侵入を防止するべく密封されるとと
もに、第１の密封手段と環状部との間が、密封部
材の溝から凹所と筒状部との間を介して大気に連
通されるようになる。

このように本考案によれば、密封手段の総数が
減少するのみならず、密封部材を固定するために
別途抜け止め具を用いる必要はなく、また通路を
形成するための筒状部に対する孔あけ加工が不要
になるため、加工、組立といつた各工程の作業能
率を一層上げて生産効率を向上することができ
る。そうしてさらに、筒状部内面に通路となる前
述の如き貫通孔が開口しなくなるので、第１の密
封手段を筒状部内部に嵌装するとき、第１の密封
手段が貫通孔の開口端縁に喰われて損傷すること
がなく、液漏れを招くような第１密封手段の損傷
をも防止できるという別格の効果を奏する。

以下、図示の実施例に基いて詳説する。

第１図は、本考案の一実施例を示す部分断面図
で、第２図は、その要部拡大図である。

第１図において、１はブレーキ用タンデムマス
タシリンダであり、該マスタシリンダ１は、図示
しない１つのピストンと、ボルト２を螺着しした
ピストン３とが摺動自在に挿入されるシリンダ孔
４を穿設したシリンダ本体５を有している。

シリンダ孔４の開孔端部は、段部６を介在して
増径部４ａが形成してあり、段部６に対するシリ
ンダ本体５の外部には、取付け用のフランジ７が
形成してある。フランジ７の一部に連続して、リ
ザーバ（図示せず）が接続される液接続部８が設
けてあり、この液接続部８の凹所９は、従来よく
知られている戻し孔１０及び補給孔１１によりシ
リンダ孔４内に連絡している。また、フランジ７
の後方側のシリンダ本体５の一部は、一部を示す
負圧式倍力装置１２のフロントシエル１３に形成
して凹所１４に嵌合する筒状部１５とされてお
り、その後端部１６及び前端部１７は、凹所１４
内径とほぼ等しくしてあり、後端部１６の上下に
は、凹所１４内面との間に若干の空隙が形成され
るように切欠き１８，１９が形成してある。

上記ピストン３は、ボルト２上に移動可能なリ
テーナ（図示せず）に一端を支持されたばね２０
を一体的に有し、当該ばね２０と、シリンダ孔底
部と図示しないピストンとの間に配設したばねと
によつて、後方に付勢され、負圧式倍力装置１２
の出力軸（図示せず）に当接して図示位置、換言
すれば、ピストン３の前方側に装着した圧力室２
１密封用のダブルリツプシール２２の先端が戻し
孔１０のやや後方に位置する復帰位置にある。２
３はばね受けである。上記シール２２の後方に
は、補給用の小孔２４を多数形成したフランジ部
２５が形成してあり、このフランジ部２５の後方
側には、シリンダ孔４の内径より若干小径とした
延長部２６が形成してあり、この延長部２６は、
負圧式倍力装置１２の凹所１４底部に穿設した孔
２７を貫通して同装置１２の負圧が常時導入され
ている負圧室２８に突出しているとともに、図示
しない装置１２の出力軸が嵌合当接する凹所２９
が延長部２６のほぼ全長にわたつて形成してあ
る。

こうした延長部２６と増径部４ａの内面との間
には、補給孔１１と小孔２４とを連絡する補給室
３０を区画しかつ延長部２６と増径部４ａとの間
の液漏れを防止する第１の密封手段としてのダブ
ルリツプシール３１が配置されているとともに、
このシール３１の後方に隣接して合成樹脂製のリ
ング３２が配置してある。リング３２は、外周に
溝３３が形成してあり、この溝３３に連絡して内
外周側を連絡する半径方向の孔３４を穿設してい
る。

上記リング３２の後方の増径部４ａ内部、及
び、筒状部１５と凹所１４底部との間にわたつ
て、第２及び第３の密封手段としての密封部材３
５が配置してある。密封部材３５は、延長部２６
外周面に弾接する略三角形状の内周突起３６を有
する環状部分３７を延長部２６と筒状部１５との
間に配置され、外周の突状部分３７ａを筒状部１
５の内周面に形成した溝３８に嵌着して抜止めを
施されているとともに、この環状部分３７から、
延長部２６との間に若干の空隙を形成しつつ一体
的に形成した連絡部３９を介在して形成される板
状部分４０を、筒状部１５端面と凹所１４底部と
の間に配置している。また、密封部材３５には、
当該部材３５のリング３２側の増径部４ａ内を外
気に連絡するための溝４１を環状部分３７、連絡
部３９、板状部分４０にわたつて形成してあり、
この溝４１は、前記後端部１６の切欠き１８，１
９，及び、フロントシエル１３を形成した溝４２
を介在して外気に連絡している。更に、前記板状
部分４０は、第２図に、その部分拡大図を示す如
く、半径方向外方に向つて順次厚肉となつてお
り、この部分は、マスタシリンダ１のフランジ７
に、倍力装置１２のフロントシエル１３に取付け
たボルト（図示せず）を挿通して、ナツトを締付
けることにより、マスタシリンダ１と倍力装置１
２とを組付ける際、充分に圧縮される。

これによつて、凹所１４底面と筒状部１５との
間、及び、筒状部１５と延長部２６との間を各々
密封するとともに、凹所１４底面と延長部２６と
の間を密封して負圧室２８の負圧が孔３４から漏
れるのを防止し、かつまた、外部から異物が筒状
部１５内に侵入するのを防止し、逆に、補給室３
０からシール３１を越えてくる液漏れが生じた場
合には、漏れた液が溝４１から外部に流れ、負圧
室２８への侵入を防止している。

こうした上述の実施例において、装置等の基本
的作動は、従来のものとほぼ同様であるので詳細
な説明は略すが、以下の如き種々の有用な効果を
奏するものである。

すなわち、第１に、密封部材３５は、単一の部
材でありながら、凹所１４と筒状部１５と延長部
２６との３者間を密封しているため、従来と比較
して部品点数を少なくでき、組立作業等における
作業効率が向上し、また、部材３５は、筒状部１
５内の係止部としての溝３８に保持部としての突
状部分３７ａを嵌着して止めるだけであるから、
その作業自在が簡単であるとともに、当該部材３
５を取付けるための形状も簡単であり、形状の複
雑化を防止し、機械加工工程の作業を簡略化し作
業効率を向上する。

そしてまた、シール３１のリング３２側は密封
部材３５の溝から切欠き１９、溝４２を介して大
気に連絡されているため、シール３１のリング３
２側を大気に連絡するために筒状部１５に半径方
向に貫通する孔を穿設する必要がない。従つて、
シリンダ本体５の加工をさらに簡略化して作業効
率を向上できるとともに、シール３１が増径部４
ａ内に嵌装されるときに、孔の開口端縁との接触
により液漏れを招くような喰われといつた損傷を
受けることをも防止できる。

更に、部材３５は、延長部２６と環状部分３７
の突起３６でけで接触しており、連絡部３９とは
接触しないように空隙を形成するようにしている
から、ピストン３の摺動抵抗を不必要に増大する
ことがなく装置の作動効率を向上する。

以上の如く、上述の実施例によれば種々の効果
を奏しているが、本考案は上述の実施例に限定さ
れることなく実施可能である。

すなわち、第３、４図は、密封部材３５の板状
部分の変更例を示す第２図と同様な図であるが、
板状部分４０′の凹所１４底面との接触面に多数
の同心円状に突起５０を形成して密封性能をより
高くしたり、或は、板状部分４０″の半径方向外
周端部に一対の可動リツプ６０を形成してもよ
い。また、筒状部１５内面に溝３８を、部材３５
の環状部分３７外周に溝３８に嵌着される突出部
分３７を各々設けることに代えて、筒状部１５外
周に係止部を設け、部材３５に筒状部１５外周に
沿う折り返し部を設け、そこに係止部に嵌着され
る保持部を設けてもよい。

以上の如く、本考案は、種々の変更例が挙げら
れるが、勿論これら以外の例でも所期の目的を達
成することは可能である。

以上種々述べた如く、本考案によれば、構造を
簡略化可能な倍力装置とマスタシリンダとの結合
部構造が得られるものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本考案の一実施例を示す部分断面
図、第２図は、その要部拡大図、第３，４図は、
他の実施例の第２図と同様な図である。 １……ブレーキ用タンデムマスタシリンダ、１
２……負圧式倍力装置、１４……凹所、１５……
筒状部、２６……延長部、３５……密封部材、３
７……環状部分、３７ａ……突出部分、３８……
溝、４０，４０′，４０″……板状部分、４１……
溝。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 倍力装置の前方に形成した凹所に、マスタシリ
   ンダのシリンダ孔開孔端部に形成した筒状部を嵌
   入するとともに、シリンダ孔に摺動自在に挿入し
   て圧力室を形成するピストンの延長部を、前記凹
   所を貫通して倍力装置の内部に突出させ、ピスト
   ンとシリンダ孔内面との間に位置する第１の密封
   手段をシリンダ孔の開口から嵌装し、ピストンの
   延長部と凹所との間に第２の密封手段を、筒状部
   と凹所との間に第３の密封手段を各々配設し、第
   １の密封手段と第２の密封手段との間を筒状部と
   凹所との間を介して大気に連通する通路を設けた
   倍力装置とマスタシリンダとの結合部構造におい
   て、前記第２の密封手段と第３の密封手段とは、
   筒状部端面と凹所底面との間に位置する板状部
   と、筒状部内面と延長部外面との間に位置する環
   状部と、筒状部に設けた係止部に嵌着される保持
   部とを含む単一の密封部材より構成し、前記通路
   を前記単一の密封部材に筒状部に沿つて設けた溝
   から形成して成る倍力装置とマスタシリンダとの
   結合部構造。