JPS6226660B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 この発明はスリーブ形成用シートに関し、ガラ
ス瓶等の被覆保護に用いる収縮性スリーブの素材
として、収縮性が非常に良好なものを提供しよう
としている。

従来より、ガラス瓶等の外面に熱収縮性を有す
る合成樹脂発泡シートからなるスリーブを被せ、
加熱することによつて該スリーブを収縮させてガ
ラス瓶等の外形に密着するよう被覆し、ガラス瓶
等の保護を果すことが行なわれている。

上記スリーブとしては、加熱によつて迅速に収
縮すると共にガラス瓶等に緊密に密着被覆でき、
ガラス瓶等との一体性にも優れたものでなければ
ならない。

そこでこの発明においては、上記要望を満たす
スリーブの素材となる収縮性合成樹脂発泡シート
として好適なものを提供するものであり、その構
成としては、流れ方向の収縮率が60％以下、幅方
向の収縮率が10％以下であり、表皮層の厚みが表
面と裏面とで差異のある収縮性発泡ポリスチレン
シートであつて、該シートのうち表皮層の厚みが
小さい面に対して溶剤処理を施し、当該面の収縮
性を減少せしめたことを特徴としている。

次いでこの発明の実施態様について図を参照し
ながら以下に例示する。

スリーブ形成用シートＳは従来と同様のインフ
レーシヨン成形等により押出発泡された発泡ポリ
スチレンシートであつて、加熱することによつて
収縮する、いわゆる熱収縮性を有するものであ
る。

上記収縮性は押出発泡後の延伸度合、冷却度合
によつてコントロールされるものであり、例えば
流れ方向と幅方向との収縮率を変えるにはブロー
アツプ比と引取り速度を適宜選択し両方向の延伸
量を調整すればよく、この発明の場合流れ方向の
収縮率を60％以下、幅方向の収縮率を10％以下と
なるように調整する。またシートの表裏で表皮層
の厚みを違えるには、冷却工程においてシートの
片面側の冷却度合を反対面側よりも大きくすれば
よく例えばシートＳの片面１０のみに冷却エアー
を当て、この面１０の表皮層ａを反対面１１の表
皮層ｂよりも厚くしている（ａ＞ｂ）。

上記表皮層の厚さは、加熱収縮するときの収縮
率に影響し、表皮層の厚い面１０の方が収縮率が
大きくなる性質がある。

そして、収縮被覆する際には上記収縮率の大き
い表皮層の厚い面１０を内面にしてガラス瓶等に
被覆させる必要がある。即ち若しも表皮層の厚い
面１０を外側にして収縮被覆した場合、瓶の胴部
のみに被覆する場合にはさほど問題は生じない
が、瓶の首部或いは瓶の胴部を越えて底側に曲が
るように被覆させようとする際には、首部の最上
部或いは底部の最内周が外側に反り返つて、均一
に密着した収縮被覆体が得られないのである。

従つて上記表皮層の厚い面１０を内側にすれば
収縮被覆性はよくなるが、この場合外側に表皮層
の薄い面１１が露出するので、わずかな衝撃等で
傷がつき易くなる欠点が生じる。

そのため本発明においては、上記表皮層の薄い
面１１に後述する溶剤処理を施し、薄い面１１側
の気泡を破壊して厚い被膜を形成すると共に、収
縮性を弱めることによつて、加熱したときにシー
ト全体の彎曲性が大きくなると共に表面硬度を向
上させるものである。

上記スリーブ形成用シートＳの素材となるポリ
スチレン樹脂としては、スチレン、ビニルトルエ
ン、イソプロピルスチレン、α―メチルスチレ
ン、核メチルスチレン、クロロスチレン、第三ブ
チルスチレン等のビニル芳香族モノマーの重合に
より得られるスチレン重合体、スチレンモノマー
と、１―３―ブタジエン、アクリル酸ブチル、ア
クリル酸エチル、アクリル酸２―エチルヘキシル
等のアクリル酸アルキル、アクリロニトリル、ビ
ニルアセテート、α―メチルエチレン、ジビニル
ベンゼン、ジメチルマレエート、ジエチルマレエ
ートとの共重合により得られる、スチレンモノマ
ーをその50重量％以上含有するスチレン共重合体
が使用され、上記樹脂にプロパン、ブタン、イソ
ブタン、ペンタン、ネオペンタン、イソペンタ
ン、ヘキサン、ブタジエン等の脂肪族炭化水素
類、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキ
サン等の環式脂肪族炭化水素類及びメチルクロラ
イド、メチレンクロライド、ジクロロフルオロメ
タン、クロロトリフルオロメタン、ジクロロジフ
ルオロメタン、クロロジフルオロメタン、トリク
ロロフルオロメタン等のハロゲン化炭化水素類等
の発泡剤を加えて加熱発泡させて発泡シートを形
成する。この発泡シートの厚みは0.1〜１mmの範
囲で使用でき、１mm以上になるとロール巻回が困
難になり好ましくない。

上記のように成形された発泡シートＳのうち表
皮層の厚みが小さい面１１に対して、発泡シート
Ｓの素材であるポリスチレン樹脂を侵す溶剤を塗
布し乾燥させる溶剤処理を施すものであり、溶剤
の塗布はロールコーター、ドクターナイフあるい
はスプレー等を使用する。溶剤処理を施すことに
よつて発泡シートＳの当該面１１の気泡が破壊さ
れて表皮層の厚みが大きくなると共に溶剤によつ
てストレスクラツクが生じ収縮率は逆に減少する
ことになる。即ち発泡シートＳの表裏の表皮層の
厚みの差異が逆転し、溶剤処理を施した面１１の
方が反対面１０よりも表皮層の厚みが大きくなる
（ｂ＞ａ）と共に収縮率の差はより大きくなる。

上記溶剤処理に用いる溶剤としてはポリスチレ
ン樹脂を侵すものであればよく、特に蒸発性の強
いものが好ましく、例えばトルエン、ベンゼン、
キシレン、アセトン、四塩化炭素、ジクロルエチ
レン、テトラクロロエチレン、トリクロルエチレ
ン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチ
ル、等が使用できる。なお上記溶剤は何れもポリ
スチレンに対する溶解性が強いため希釈剤にて50
％以下の濃度に薄めて使用した方がよく、希釈剤
としてはメチルアルコール、エチルアルコール、
プロピルアルコール、ブチルアルコール等が用い
られる。また、水と乳化剤を用いてホモミキサー
により乳化させた状態で用いることも可能であ
る。さらに溶剤中にアクリル樹脂・セルローズ等
の増粘剤を含有させれば、溶剤が塗布用ローラー
に付着し易くなり、発泡シートＳへの塗布も行な
い易く、また塗布面に艷が出て外観上も好適とな
る。

上記のような処理を施したスリーブ形成用シー
トＳには上記処理面１１にさらに印刷を施したり
した後、適宜裁断したものを筒状に巻回し両端を
重ね合せて熱接着等により接合してスリーブＡを
形成する。但しこのとき上記処理面１１を外面に
すると共に収縮率の大きな流れ方向がスリーブＡ
の円周方向になるようにする。

こうして出来たスリーブＡをガラス瓶Ｇ等に被
せ、加熱収縮させることによつてスリーブＡはほ
ぼ円周方向のみに収縮しガラス瓶Ｇ等の外形にぴ
つたり沿うよう密着被覆してガラス瓶Ｇ等の保護
を果すものである。またスリーブＡはガラス瓶Ｇ
のほか、各種ガラス製品、陶磁器など壊れ易い物
品の保護用としても使用できる。

なお前記溶剤処理については、溶剤処理と印刷
工程を同時に行なうことも可能である。即ち発泡
シートＳ外面の印刷に使用する印刷インクとし
て、前記したポリスチレン樹脂を侵す溶剤を含有
するものを用いれば、印刷と同時に溶剤が塗布さ
れることになり、その後乾燥させれば、製造工程
が半分になり能率的となる。

例えば、トルエン５〜40％と酢酸エチル５〜15
％からなる溶剤10〜55％に残り90〜45％の希釈剤
となるアルコールを加え、さらに顔料を加えれば
印刷用インクとして使用できる。

次に上記スリーブ形成用シートＳの製造の一例
について述べると、先ず0.32mm厚の発泡ポリスチ
レンシートをインフレーシヨン成形により表裏の
表皮層厚みを違えて形成する。この発泡ポリスチ
レンシートをラインスピード60m／min〜90m／
minで走行させながらロール塗布にて溶剤を１μ
〜３μの厚さで塗布した後、直ちに60℃〜85℃で
熱風乾燥すればスリーブ形成用シートＳが形成さ
れる。

上記スリーブ形成用シートＳの収縮性を測定す
るため、従来品との比較試験を行なつた。

サンプルとして単なる発泡ポリスチレンシート
（従来品厚さ0.32mm）と上記シートに溶剤を含有
する印刷インクで印刷を行なつた本発明のスリー
ブ形成用シート（厚さ0.32mm）とを90mm角の試験
片Ｔに裁断し、恒温槽（100℃）に10秒間入れ加
熱して収縮彎曲させ、これを取出した後彎曲変位
量を測定した。彎曲変位量として加熱前後シート
幅（ｔ；加熱前、t₁；t₂；加熱後、第３図〔〕
および〔〕参照）を測定比較したところ下表の
ようになつた。

加熱前 加熱後 従来品 ｔ＝90mm t₁＝82mm 本発明品 ｔ＝90mm t₂＝59mm 以上で明らかなごとく、本発明品のほうが彎曲
性即ち収縮性あるいは表裏の収縮性の差が格段に
大きいことが解る。

以上のごとく構成されたこの発明のスリーブ形
成用シートによれば、ガラス瓶等を被覆保護する
スリーブとして用いるとき、内面側となる面１０
の表皮層の厚みが反対側の面１１よりも大きく、
従つて収縮率も前者の面１０の方が後者の面１１
よりも大きく形成された発泡ポリスチレンシート
Ｓを用い、これに対しさらに上記表皮層の厚みの
小さい面１１に溶剤処理を施し当該面１１の表皮
層を厚くすると共に収縮率はより減少させたもの
であるから、スリーブＡの内面側１０と外面側１
１との収縮率の差異は一層大きなものとなり、ガ
ラス瓶Ｇ等に被覆したときに上記収縮率の大きな
内面側１０にて一層優れた密着性および接合力が
発揮出来るものである。即ちスリーブＡが収縮す
る際に、より大きな収縮量を必要とする内面１０
の収縮率を外面に比べて一層大きくすることによ
り収縮性が良好になり、ガラス瓶Ｇ等の複雑な外
形に沿わせ易く、収縮力によるガラス瓶Ｇ等への
接合性もよくなり、瓶の肩口や底の返り部に反り
が生じる心配もなくなる。

しかもスリーブ形成用シートＳの外面１１の表
皮層が溶剤処理によつて厚みが大きくなつている
為、処理後の印刷性がよくなると共に表面硬度な
どの強度が向上し、傷つき難くなる利点もある。

従つて単なる発泡シートに比べガラス瓶等の被
覆用としての収縮性及びその他の諸性能に優れた
収縮性シートを提供できるものである。

【図面の簡単な説明】

図はこの発明の実施態様を例示するものであ
り、第１図は溶剤処理前の模式的断面図、第２図
は処理後の模式的断面図、第３図〔〕，〔〕は
収縮性実験時の加熱前後の正面図、第４図は筒状
体の斜視図、第５図は使用状態の断面図である。 Ｓ…スリーブ形成用シート、１０…溶剤非処理
面、１１…溶剤処理面、Ａ…スリーブ、Ｇ…ガラ
ス瓶。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 流れ方向の収縮率が60％以下、幅方向の収縮
   率が10％以下であり、表皮層の厚みが表面と裏面
   とで差異のある収縮性発泡ポリスチレンシートで
   あつて、該シートのうち表皮層の厚みが小さい面
   に対して溶剤処理を施し、当該面の収縮性を減少
   せしめたことを特徴とするスリーブ形成用シー
   ト。