JPS6215594B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

本発明は水性インキ組成物に関するものであ
る。詳細には筆記具用、スタンプ用、印刷用、イ
ンクジエツト用、記録計用等に好適な水性インキ
組成物に関し、耐水性、染料溶解性、経時保存性
等に優れた性能を有し、紙質に滲みや裏抜けを起
こすことなく、筆記具に適用した場合は前記した
諸性能を具備すると共に、ペン先部分でのインキ
のカス詰りもなく、同様にインクジエツトに使用
した場合、インキ噴射ノズル部分でのカス詰りが
なく、常時スムーズなインキ出が得られる等の性
能を有するものである。 従来より前記した如き性能を満足するための多
くの方法が見られるが、これらの方法は多くの問
題点を有しているため、その使用範囲が極めて限
定される。 例えば、特公昭47−17010に見られる非水溶性
溶剤であるベンジルアルコールを用いて耐水性イ
ンキを得るという方法であるが、ベンジルアルコ
ール自身が非水溶性溶剤であるため、使用量が極
く限られること、水溶性染料の溶解力が全くない
ために経時によりインキの変色が起ること、油で
あるが故に筆跡の滲み、裏抜けが大である等実用
に供し難い。特公昭47−251に見られるジエチレ
ングリコールモノブチルエーテルを代表とするジ
エチレングリコールのモノアルキルエーテルは、
これらの溶剤の表面張力が低いために、インキの
筆跡の滲み、裏抜けが大となること、又水溶性染
料の溶解能が乏しいため、耐熱経時により変色を
起こし易い。 特公昭50−40484に見られる多価アルコールを
用いた水性インキは筆記具用インキに於いては、
古くから使用されていた処方であるが、これらの
溶剤をインクジエツトに用いる場合は、一般に粘
度が高いこと、耐水性を有する染料に対する溶解
能が弱いこと等からインクジエツトによる連続噴
射の場合、噴射ノズル部分でのカス詰り現像を起
こし易い。 本発明は前記した如き従来のインキ組成にみら
れる欠陥を改善し、しかも冒頭に記載したような
性能が兼備された水性インキ組成物を提供するも
ので種々の研究を重ねた結果、染料、ジエチレン
グリコールモノベンジルエーテル及び水を含有し
てなる水性インキが前記性能を満足するものであ
ることを見出した。 本発明に用いるジエチレングリコールモノベン
ジルエーテルは広範囲な種類の染料に対し良好な
溶解能を有している。従来水性インキには使用不
可能であつた酒精溶性染料についても溶解するこ
とができ、更に水及びグライコールに難溶である
直接染料、塩基性染料に対しても良好な溶解性を
示す。この溶剤の物性値は高表面張力、高沸点、
低粘度であるため、本発明のインキは筆跡の滲み
や裏抜けはなく、筆記具のペン先部分、インクジ
エツトのノズル部分でカス詰り現像は少なく、ス
ムースなインキ出を示すのである。 ジエチレングリコールモノベンジルエーテルの
添加量は0.5％未満では殆んどその効果はなく、
50重量％を越えると次第に油性インキの性質が強
くなり、筆跡の滲みや裏抜け現像がひどくなる。
従つてベンジルカービトールの添加量は0.5〜50
重量％の範囲であり、好ましくは1.0〜30重量％
の範囲である。 適用される染料としては、ダイワソルベントブ
ラツクＡ（C.I.アシツドブラツク52のシクロヘキ
シルアミン塩）、オスピレツドBT、オスピオレン
ジRD、バリフア−ストレツド1308以上オリエン
ト化学(株)製、酒精溶性染料、スピロンイエロー
C2GH、スピロンバイオレツトCRH、以上保土谷
化学(株)製、酒精溶性染料等の酒精溶性染料。アス
トラゾンイエロー3GL（C.I.ベーシツクイエロー
11）、ベーシツクフラビン8G（C.I.ベーシツクイ
エロー１）、ローダミンＢ（C.I.ベーシツクバイ
オレツト10）、ビクトリアブルーBOH（C.I.ベー
シツクブルー７）、アストラゾンレツドGTL（C.
I.ベーシツクレツド18）等の塩基性染料がある。
ダイレクトデイープブラツクEX（C.I.グイレク
トブラツク38）、ダイレクトデイープブラツクXA
（C.I.ダイレクトブラツク154）、スミライトブラ
ツクＧ（C.I.ダイレクトブラツク19）、シリヤス
スプラオレンジRRL（C.I.ダイレクトオレンジ
41）、シリヤススプラブル−FBGL（C.I.ダイレク
トブルー98）、ベンゾイエローLG（C.I.ダイレク
トイエロー12）、スミライトバイオレツトBB（C.
I.ダイレクトバイオレツト51）等の直接染料。エ
オシンGH（C.I.アシツドレツド87）、アシツドフ
ロキシン（C.I.アシツドレツド92）、ニグロシン
NB（C.I.アシツドブラツク２）、ブリリアントブ
ルー5G（C.I.アシツドブルー103）、ソルブルブル
ーOBB（C.I.アシツドブルー93）、スプラノール
ブルーBL（C.I.アシツドブルー59）、イソランイ
エローGL（C.I.アシツドイエロー155）等の酸性
染料がある。 上述の必須成分のほかに必要に応じて、インキ
の蒸発抑止の目的や粘度調節の目的で各種水溶性
有機溶剤を加えることも可能であり、それらの有
機溶剤としては、エチレングリコール、ジエチレ
ングリコール、プロピレングリコール、ポリエチ
レングリコール、グリセリン等の多価アルコー
ル、ジメチルスルホオキシド、スルホラン、チオ
ジエチレングリコール、ベンセンスルホンアミド
誘導体のエチレンオキサイド附加物等の含硫黄系
溶剤、Ｎ−メチル−２−ピロリドン、２−ピロリ
ドン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミ
ン等の含窒素系溶剤等がある。更に染料の溶解性
を向上する目的で尿素、エチレン尿素、ジメチル
スルホン等のヒドロトロープ剤を用いることもで
きる。 又、インキ中のカビの発生を防止する目的で石
炭酸、デハイドロ酢酸ナトリウム等の防カビ剤、
ペン体からのインキ出をよくする目的で界面活性
剤を加えることもある。 次に本発明の実施例について説明する。以下の
配合例中の部は重量部を示す。 実施例 １ ダイワソルベント ブラツクＡ（C.I.アシツドブ
ラツク52のシクロヘキシルアミン塩） 5.0部 ジエチレングリコールモノベンジルエーテル
25.0部 チオジエチレングリコール 5.0部 ２−ピロリドン 5.0部 水 60.0部 スコアロール900（花王石ケン(株)製 ノニオン活
性剤） 0.3部 上記成分を常温でかきまぜることにより、マー
キングペン用黒インキを得た。 比較例 １ 実施例１に於けるジエチレングリコールモノベ
ンジルエーテル25.0部をベンジルアルコールに置
き換え、同様な方法でかきまぜるも、ベンジルア
ルコールと水が相溶しないため相分離を起した。
従つて、以後の性能比較テストには供せなかつ
た。 実施例 ２ ブリリアントブルー5G（C.I.アシツドブルー93）
2.0部 スプラノールブルーBL（C.I.アシツドブルー
59） 3.0部 ジエチレングリコールモノベンジルエーテル
10.0部 ジエチレングリコール 5.0部 水 79.5部 スコアロール900 0.3部 石炭酸 0.2部 上記成分を常温でかきまぜることにより、マー
キングペン用青インキを得た。 比較例 ２ 実施例２に於けるジエチレングリコールモノベ
ンジルエーテル10.0部をジエチレングリコールモ
ノブチルエーテル10.0部に置き換え同様な方法で
比較例インキを得た。 実施例 ３ ダイレクトデイープブラツクEX（C.I.ダイレク
トブラツク38） 5.5部 スミライトバイオレツトBB（C.I.ダイレクトバ
イオレツト51） 1.0部 ジエチレングリコールモノベンジルエーテル
15.0部 水 77.0部 スコアロール900 0.3部 安息香酸ソーダ 1.2部 上記成分を常温でかきまぜることにより、マー
キングペン用黒インキを得た。 比較例 ８ 実施例３に於けるジエチレングリコールモノベ
ンジルエーテル15.0部に置き換え、同様な方法で
比較例インキを得た。 実施例１、２、３、比較例２、３インキを次の
性能試験に供した。 試験方法の概略 各インキを所定量充填したマーキングペンを用
いて以下の試験を行つた。 １ 染料の溶解性 各試料インキについて市販のスポイトにより
インキを少量吸入し、市販のろ紙上に、インキ
を一滴滴加することにより、ろ紙上に不溶解物
の目玉及び残渣の有無を観察する。 ２ 耐水性 所定の用紙に各マーキングペンで一定の文字
を筆記し、用紙を水中にひたして引き上げ、筆
跡の判定状態及び筆跡の濃さの変化を観察す
る。 ３ 筆跡の滲み及び裏抜け 所定の用紙に各マーキングペンで筆記しそれ
らの筆跡の滲み、裏抜け状態を観察する。 ４ 耐熱安定性 各インキを所定量ビンに秤取し、密栓して50
℃恒温槽中に２カ月放置した後、インキ中の沈
澱の生成及び色の変化について調べる。 試験結果を表１に示した。

【表】 実施例 ４ ソルブルブルーOBB（C.I.アサツドブルー93）
1.0部 ジエチレングリコールモノベンジルエーテル
3.0部 水 95.8部 石炭酸 0.2部 上記成分を常温でかきまぜることにより万年筆
用青インキを得た。 比較例 ４ 実施例４に於けるジエチレングリコールモノベ
ンジルエーテル3.0部をグリセリン3.0部に置き換
え、比較例インキを得た。 実施例 ５ スミライトブラツク（C.I.ダイレクトブラツク
19） 2.5部 ジエチレングリコールモノベンジルエーテル
2.0部 水 95.3部 石炭酸 0.2部 上記成分を常温でかきまぜることにより万年筆
用黒インキを得た。 比較例 ５ 実施例２に於けるジエチレングリコールモノベ
ンジルエーテル2.0部をポリエチレングリコール
（平均分子量200）2.0部に置き換え比較例インキ
を得た。 実施例４、５、比較例４、５インキについて、
市販の万年筆及びインキスペアを用いてインキの
カス詰りテストを行つた。 試験方法の概略 各試験インキをインキスペアに所定量充填した
万年筆を用いて比較テストを行つた。 インキのカス詰り試験 キヤツプを開栓した状態で50℃の乾燥器中に三
日間横置放置を行う。スペア内のインキが乾燥
し、インキカスがペン芯部、ペン体の切り溝部分
等に附着した状態を確認後、新たに試験インキが
充填された新しいスペアインキに差し換え、市販
のレポート用紙に一秒間に一文字の速度でＶ字を
連続筆記する。筆記可能になるまでの秒数でイン
キカス詰りの状態を示す難易度を表す。 試験結果を表２に示した。

【表】 実施例 ６ ローダミンＢ（C.I.ベーシツクバイオレツト10）
0.3部 アストラゾンイエロー3GL（C.I.ベーシツクイエ
ロー11） 0.6部 ジエチレングリコールモノベンジルエーテル
1.5部 水 96.8部 デハイドロ酢酸ナトリウム 0.8部 上記成分を常温でかきまぜることによりインク
ジエツト用赤インキを得た。 比較例 ６ 実施例６に於けるジエチレングリコールモノベ
ンジルエーテル1.5部をグリセリン1.5部に置き換
え比較例インキを同様な方法で得た。 実施例 ７ ダイレクトデイープブラツクXA（C.I.ダイレ
クトブラツク154） 1.2部 ジエチレングリコールモノベンジルエーテル
5.0部 水 92.8部 安息香酸ナトリウム 1.0部 上記成分を常温でかきまぜることによりインク
ジエツト用黒インキを得た。 比較例 ７ 実施例７に於けるジエチレングリコールモノベ
ンジルエーテル5.0部を同量のエチレングリコー
ルに置き換え、同様な方法で比較例７インキを得
た。実施例６、７、比較例６、７インキを性能試
験に供した。 試験方法の概略 各試験インキをインクジエツトによりインキの
ノズル詰まりテストを行つた。 インキのノズル詰り試験 インクヘツドに試験インキを詰めて、１日及び
２日間放置して噴射実験を行う。噴射圧は１〜３
Kg／cm²とし、判定基準を次のようにした。 (1) １〜1.5Kg／cm²で直ちに射出……ノズル詰ま
りなし 〇 (2) 1.6〜2.9Kg／cm²で直ちに射出……部分詰まり
△ (3) ３Kg／cm²でも射出しない場合……完全詰まり
× 試験結果を表３に示した。

【表】 尚、本発明の実施例は、筆記具用インキ、イン
クジエツト用インキについて記載されているが、
スタンプ用、印刷用、記録計用等のインキ組成物
としても適用でき、その場合、適宜の粘度を付与
したり、耐水性を更に高めたり、滲みや裏抜け等
を防止するための水溶性の樹脂を配合することは
有効であり、例えば、カゼイン、シエラツク、マ
レイン酸樹脂、スチレンマレイン酸の共重合物、
アクリル系樹脂、セルロース誘導体、ポリビニル
ピロリドン、ポリビニルアルコール等が配合され
てもよい。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 必須成分として染料、ジエチレングリコール
   モノベンジルエーテル及び水を含有してなる水性
   インキ組成物。