JPS6213768Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、二種又はそれ以上の熱可塑性樹脂に
よつて多層化した成形物に関するもので、さらに
詳しくは、同一の金型キヤビテイに二種又はそれ
以上の熱可塑性樹脂を同一のゲートから射出成形
した多層成形物に関する。

第１図に示すように、従来から、同一の金型キ
ヤビテイに二種又はそれ以上の樹脂を順次射出し
て成形された多層成形物は知られている。しかし
ながら、従来の多層成形物は主として内核材とし
て、発泡剤やガスを混入した発泡樹脂を用い、外
皮材として非発泡の樹脂を用いる大型で肉厚の多
層成形物である。一般の金型は、出来上る成形物
の肉厚がどの場所でも比較的均一な厚みとなるよ
うにできており、この様な金型を用いて、発泡し
ない二種以上の樹脂を使用した薄肉の多層成形物
を成形すると第２図に示すように、多層成形物２
１の内核材３１と外皮材４１との層間の面が平滑
で化学的接着力のみに頼つてしまうので、ストレ
スが生じやすく落下強度が低下するという問題が
あつた。

本考案は、以上の欠点を除いた層間の接着力に
強く、落下強度が優れた多層成形物を提供するも
のである。

すなわち、本考案は二種又はそれ以上の熱可塑
性樹脂が物理的に接着した構造を持つもので、以
下実施例により図面を用いて詳細に説明する。第
３図が本考案の多層成形物の一実施例を示すもの
であつて、第３図の多層成形物２は内核材３と外
皮材４の接着面が襞状態になつているので、内核
材３と外皮材４の互いに一方の樹脂で他方の樹脂
を強く挟んでいる為、例えば化学的な接着力が小
さな樹脂同志であつても、接着面積が２〜３倍に
増加するので、接着力は実質的に２〜３倍増加す
ることになるのである。本考案の多層射出成形物
は層間すなわち内核材３と外皮材４との接着力が
強いので、広い範囲の樹脂同志を使用できるばか
りではなく、樹脂間の接着性を向上させるための
樹脂の変性率を下げることができるので、価格も
実質的に安価にするなどのメリツトがある。

次に上記の如き本考案の多層成形物の製造方法
は、第４図に示すように、二種又はそれ以上の熱
可塑性樹脂を、同一の金型キヤビテイ１に順次射
出して多層成形物を製造する方法において、第５
図はゲート５近くの拡大断面図であつて、 (a) 金型キヤビテイ１のゲート５から等距離ｒに
ある断面の全断面積Ｓが、ある距離r₂において
極上となり、かつゲート近傍r₁，r₂及びr₂より
ゲートから遠い点r₃の各々における成形物厚み
t₁，t₂，t₃，が次式を満たすようなr₁，r₂，r₃
が存在する金型を用い、 0.9t₁＞t₂、t₃＞t₂ …… (b) この金型キヤビテイ１に、まず外皮材の熱可
塑性樹脂４′を、ゲート５からr₂までの容積以
上で、金型キヤビテイ１の全容積以下の量を射
出し、次いで一種又はそれ以上の内核材の熱可
塑性樹脂を順次射出する。

このとき、樹脂粘度を10⁴ポイズ以下、好ま
しくは10³ポイズに射出して射出成形する。

なお、t₂は0.9t₃以下であることが好ましく、
一層好ましくは0.4〜0.8t₃程度である。

第６図は第４図の金型より得られた多層成形物
であつて、第６図は同じ位置の金型を例にとつ
て、その断面積を説明する説明図であり、この断
面積はそのキヤビテイ内の断面積Ｓに一致するた
め同じＳの記号を付してある。

なお、上記二番目の実施例においては円筒形状
としたが、その形状は円筒形状に限ることなく、
四角の形状でもよく、その場合には、ゲートから
キヤビテイ周縁部まで樹脂が流れつつ時間が同じ
にするように、樹脂の流れとは直角方向の肉厚を
調整する必要がある。又、第７図および第８図は
第４図に示す金型におけるゲートからの距雄ｒと
その距離における全断面積Ｓとの関係、およびゲ
ートからの距離ｒと成形物厚みｔとの関係を示
す。

以下、この図面を用いて、本考案の多層成形物
の製造法を具体的に説明する。

まず、予め外皮材となる熱可塑性樹脂（例え
ば、無水マレイン酸でグラフト変性させたポリプ
ロピレン）４′と、内核材となる熱可塑性樹脂
（例えば、ナイロン６）３′を加熱溶融させ、それ
ぞれ独立した射出シリンダー６，６に計量して充
填する。このとき、外皮材の樹脂粘度と内核材の
樹脂粘度を約10³ポイズとする。

次に金型キヤビテイ１のセンターゲート５から
まず外皮材の熱可塑性樹脂３′を少なくとも、ゲ
ート５からr₂点に相等する所までの金型キヤビテ
イの容積以下の量射出充填する。このとき、外皮
材の熱可塑性樹脂４′が完全に射出シリンダー６
内からなる前で、かつ熱可塑性樹脂３′がゲート
５からｒト点に相等する所までの金型キヤビテイ
を満した後、内核材の熱可塑性樹脂４′の射出圧
力よりも高い圧力にして、内核材の熱可塑性樹脂
３′を金型キヤビテイ１内の外皮材４の中に射出
し、該内核材の熱可塑性樹脂３′を射出終了し
て、金型キヤビテイの樹脂が低下すると同時に、
外皮材と同一の熱可塑性樹脂４′をさらにもう一
度金型キヤビテイのゲート近傍に射出充填して、
金型キヤビテイを完全に樹脂で満し、冷却固化さ
せる。

このように第４図がごとくの金型キヤビテイ１
を用いて射出成形すると、成形物ゲート近傍は第
６図のごとく、均一な多層成形物が得られ、しか
も互いの接着層が挟み込んでいるのでストレス等
が少ないのである。

本考案に使用する樹脂は、熱可塑性樹脂ならば
何んでも良いがたとえば、変性ポリオレフイン
（不飽和多価カルボン酸やその他無水物などのモ
ノマーで、グラフト変性したポリオレフイン）と
ポリアミド系樹脂、変性ポリオレフインとエチレ
ン−酢酸ビニル共重合体ケン化物変性ポリオレフ
インとポリエステル、無機質充填変性ポリオレフ
インとポリアミド系樹脂、スチレン−アクリロニ
トリル共重合体樹脂とポリスチレンなどの組合せ
でガスバリヤー性を持つ容器やキヤツプおよび低
価格な多層成形品が得られる。

本考案は上記の如き多層成形物であつて、襞状
の接着面を持つため、強い融着力を持たない樹脂
同志による多層成形物でもかなり接着力を持たせ
ることが可能であると共に、接着させる為の変性
率を下げる事が可能であるので安価な樹脂を使用
できるなど実用上優れている。

【図面の簡単な説明】

第１図は一般的な射出成形装置を示すもので、
第２図は従来の多層成形物を示す一部断裁斜視図
で、第３図は本考案の多層成形物の一実施例を示
す断面図で、第４図は本考案の多層成形物を製造
する金型およびその周辺を示す説明図で、第５図
は金型のゲート近傍を示す説明図で、第６図は第
４図の金型より成形された本考案の多層成形物の
一部断裁斜視図で、第７図および第８図は第４
図、第５図に示す金型におけるゲートからの距離
ｒとその距離における全断面積Ｓとの関係、およ
びゲートからの距離ｒと成形物厚みｔとの関係を
示すグラフである。 １……金型キヤビテイ、２……多層成形物、３
……内核材、４……外皮材、５……ゲート。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 二種又はそれ以上の異なつた熱可塑性樹脂を同
   一の金型キヤビテイに同時又は逐次射出する事に
   よつて得られた内核材と外皮材とからなる多層成
   形物において、前記内核材と前記外皮材との接合
   面を襞状とし、前記内核材と前記外皮材とが互い
   に強く挟んでいることを特徴とする多層成形物。