JPS6127984Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、纒乱構造意匠糸の改良に関し、マル
チフイラメント糸または紡績糸からなる芯糸の周
囲に、繊維軸方向に配列せしめた多数の微細孔が
中空繊維壁の壁面および内部に分布して中空の内
外が連通している仮撚捲縮を有する中空繊維から
なるポリエステルマルチフイラメント糸が、一重
に巻き付いた状態と三重以上に巻き付いた状態と
を交互に繰返すように纒絡していることを特徴と
する纒乱構造意匠糸にある。

従来、仮撚捲縮を有する熱可塑性マルチフイラ
メント糸の芯糸の周囲に仮撚捲縮を有する熱可塑
性マルチフイラメント糸が一重に巻き付いた状態
と三重に巻き付いた状態とを交互に繰返すように
纒絡している纒乱構造意匠糸は、特公昭50−
35147号公報により知られている。このような纒
乱構造意匠糸の一番の問題点は纒絡構造の安定性
にあり、少し強い擦過作用を受けると、纒絡糸の
寄りや離れが生じ易く、この傾向は纒絡糸が嵩性
を示して、多重巻き付き状態によるスラブ効果が
強調されるようになる程増大する。この傾向は、
纒絡糸に嵩性の大きい中空繊維からなるマルチフ
イラメント糸を用いてスラブ効果を強調しようと
した場合に、一般に中空繊維の曲げ剛さが中実繊
維よりも大きいことから、纒絡構造がルーズにな
つて、一層増大する。したがつて、纒絡構造の安
定性の面から中空繊維のマルチフイラメント糸は
纒絡糸として用い難いものであつた。

一方、アルカリ処理することによつて繊維軸方
向に配列せしめた形の多数の微細孔が中空繊維壁
の壁面および内部に分布して形成され、それによ
つて中空の内外が連通する中空繊維からなるポリ
エステルマルチフイラメント糸は、優れた吸水
性、吸湿性を与えるポリエステルフイラメント糸
として、特開昭56−20612号、同57−11212号公報
等により知られている。

本考案は、このように中空繊維のポリエステル
マルチフイラメント糸が事前にアルカリ処理をし
た場合に限らず事後にアルカリ処理をした場合に
おいても通常の中空繊維のポリエステルマルチフ
イラメント糸に較べて、纒絡糸に用いた場合に纒
絡構造の安定性に優れることを見出してなされた
ものであり、本考案の纒乱構造意匠糸は、アルカ
リ処理によつて微細孔が形成された中空繊維のポ
リエステルマルチフイラメント糸によつて、優れ
た吸水性、吸湿性を示すばかりでなく、その多重
巻き付き状態部分が一層スラブ効果を強調し、し
かも寄りや離れが生じ難く、さらに、糸の段階や
織編物にしてからカレンダー加工を行つたりする
と、スラブ効果を与える部分が扁平化して優れた
光沢意匠効果も示すようになるなどの多くの特長
を有する。

尚、本考案の纒乱構造意匠糸は、前記特開昭56
−20612号、同57−11212号公報に記載されている
ような微細孔形成剤を混入した中空ポリエステル
マルチフイラメント糸を纒絡糸として用いて複合
糸を得、それを用いた布帛をアルカリ処理するこ
とにより微細孔形成剤が除去されて得られたよう
なものであることが最終的な使用目的に対し生産
性に優れることから好ましい。

以下、本考案を図面に基いて説明する。

第１図は纒絡糸に用いられるポリエステルマル
チフイラメント糸のアルカリ処理後の中空繊維の
部分切断斜視図、第２図乃至第４図はそれぞれ本
考案の意匠糸の例を模式的に示した側面図、第５
図は本考案の意匠系を製造する装置の例を示す概
要構成側面図である。

本考案の纒乱構造意匠糸は、最終的に第１図に
示したような中空繊維からなるポリエステルマル
チフイラメント糸が纒絡糸１として、第２図乃至
第４図に示したようにマルチフイラメント糸また
は紡績糸からなる芯糸２の周囲に、一重に巻き付
いた状態のａ部分と三重以上に巻き付いた状態の
ｂ部分とを交互に繰返すように纒絡している構造
からなる。そして纒絡糸１は、構成中空繊維が繊
維壁の壁面および内部に繊維軸方向に配列された
形の多数の微細孔Ｖを分布していて、それにより
中空の内外が連通した構造をとるために、優れた
吸水性、吸湿性を与えるだけでなく、芯糸２に緊
密に纒絡して、嵩性に優れて多重巻き付き部分ｂ
によるスラブ効果が強調されるにもかゝわらず、
寄りや離れの生じ難い纒絡構造を与える。なお、
第２図は纒絡糸１が中空繊維からなるポリエステ
ルマルチフイラメント糸をそのまゝ芯糸２に纒絡
させた本考案の意匠糸の例を示しており、第３図
は纒絡糸１が中空繊維からなるポリエステルマル
チフイラメント糸をタスラン加工した後に芯糸２
に纒絡させた本考案の意匠糸の例を示しており、
第４図はタスラン加工した中空繊維からなるポリ
エステルマルチフイラメント糸をグラインダ処理
でループ切断した後に芯糸２に纒絡させることに
より、または、第３図の意匠糸にグラインダ処理
を施してタスラン加工のループを切断することに
より得られる本考案の意匠糸の例を示している。

纒絡糸１を芯糸２に纒絡させるのは第５図に示
したような装置によつて行われる。すなわち、供
給ローラFR２によつて引き出されてヒータＨを
通過し、仮撚スピンドルＳを経て引き取りローラ
DRによつて引き取られ、巻き取りローラWRに
よつて巻き取りボビンに巻き取られる芯糸２のヒ
ータＨに入る前の仮撚旋回している部分に纒絡糸
１を供給ローラFR１によつて供給すると、その
供給速度を芯糸２の供給速度よりも適当に早くす
ることによつて、纒絡糸１が芯糸２に合流する合
流点が芯糸２の進行方行にトラバースするように
なり、その結果、纒絡糸１は芯糸２の周囲に一重
で巻き付いた状態と三重以上で巻き付いた状態と
を交互に繰返すような纒絡をする。そして、その
状態がヒータＨによつてセツトされるから安定
し、同時に纒絡糸１のポリエステル繊維には仮撚
捲縮が与えられる。また芯糸２が熱可塑性繊維か
らなる場合には芯糸２にも仮撚捲縮が与えられ
る。なお、纒絡糸１には、先に述べたように、中
空繊維からなるポリエステルマルチフイラメント
糸やそのタスラン加工糸、あるいはさらに、それ
をグラインダ処理のようなループ切断処理した加
工糸が用いられ、タスラン加工糸を用いると、五
重巻き付き状態が得られたりして一層スラブ効果
が強調され、しかも纒絡構造が一層安定すると云
つた効果も得られる。

纒絡糸１の中空繊維の微細孔Ｖは、纒絡させら
れる前にアルカリ処理によつて生ぜしめられてい
ることが纒絡構造の安定の上から好ましいが、そ
れでは処理コストが高くなるので、先に触れたよ
うに布帛を形成した後に布帛のアルカリ処理によ
つて生ぜしめることが処理コスト上好ましい。

また、本考案の意匠糸は、糸の段階、あるいは
織編物とした後にカレンダー処理すると、スラブ
効果が光沢変化効も与えて一段と優れたものとな
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は纒絡糸に用いられるポリエステルマル
チフイラメント糸のアルカリ処理後の中空繊維の
部分切断斜視図、第２図乃至第４図はそれぞれ本
考案の意匠糸の例を模式的に示した側面図、第５
図は本考案の意匠糸を製造する装置の例を示す概
要構成側面図である。 １……纒絡糸、２……芯糸、ａ……一重巻き付
き部分、ｂ……多重巻き付き部分、Ｖ……微細
孔、FR１，FR２……供給ローラ、Ｈ……ヒー
タ、Ｓ……仮撚スピンドル、DR……引き取りロ
ーラ、WR……巻き取りローラ。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 １ マルチフイラメント糸または紡績糸からなる
   芯糸の周囲に、繊維軸方向に配列せしめた多数
   の微細孔が中空繊維壁の壁面および内部に分布
   して中空の内外が連通している仮撚捲縮を有す
   る中空繊維からなるポリエステルマルチフイラ
   メント糸が、一重に巻き付いた状態と三重以上
   に巻き付いた状態とを交互に繰返すように纒絡
   していることを特徴とする纒乱構造意匠糸。 ２ 前記中空繊維からなるポリエステルマルチフ
   イラメント糸がタスラン加工またはさらにタス
   ランループの切断加工されている実用新案登録
   請求の範囲第１項記載の纒乱構造意匠糸。