JPS627294B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、腰反撥の良好な風合を可能にする結
束糸に関するものである。

近年、コストの高い紡績糸の代りに仮撚を用い
て不連続繊維束（以下、短繊維束と云う）を結束
させ、これによつて精紡工程の速度を飛躍的に高
め、コストダウンを図る事が行われている。然し
ながら、この方法による糸は独特の芯があつて固
く、この糸を用いた布帛の風合、特に腰反撥に劣
るという一つの欠点を有している。即ち、この方
法による糸は、芯部を形成する繊維束が無撚の短
繊維束からなり、該無撚の短繊維束は、その周囲
にある短繊維により結束されているという構造を
有する。かかる構造の糸の強力を後次加工に耐え
るものにするためには、該芯部にある短繊維の繊
維長を長くする必要がある。短繊維の繊維長を長
くすると、糸のもつ風合が極めてフイラメントラ
イクになり、到底、紡績糸の代りに使用できるも
のではない。特に、芯部の短繊維束が無撚である
ため、通常使用される合成繊維からなるもので
は、繊維間の空隙が少なく、この糸を用いた布帛
の風合は、フイラメント織物のようであり、特に
張り腰や反撥性に劣るものである。

本発明の目的は、かかる従来の欠点を改良し、
高い生産性を維持して製造される糸であつて、紡
績糸としての良好な風合、特にシヤリ感、腰の点
で極めて麻ライクな風合を有する糸を提供するこ
とにある。

即ち、本発明は、芯部の繊維が主として、無撚
の不連続な合成繊維束からなり、該合成繊維束は
その周囲にある不連続な合成繊維により強く拘束
させられている糸であつて、該芯部を形成する合
成繊維の繊維軸と直交する断面が外周部に突起を
有し、かつ中空率10％以上の孔を有する形状から
なると共に、該芯部を形成する合成繊維の平均繊
維長が150mm以上であることを特徴とする結束糸
にある。

以下、本発明を具体的な例を用いて詳しく説明
する。

第１図は、本発明の糸を製造する工程の一例を
示す工程図であつて、１は合成繊維の連続長繊維
トウであり、その構成単繊維一本一本は１′の如
くその断面ほゞ中央に穴を有する、所謂、中空繊
維より成り立つている。この様に構成されたトウ
１をローラー２，３にて破断伸度以上の高倍率で
引き千切つて短繊維フリース化し、次いでアスピ
レーター４でローラー３より引き取りながら、空
気旋回ノズル５で仮撚を与えるとフリース化した
短繊維の先端が周囲を捲回し、結束状の糸となつ
てワインダー７に捲き取られる。一方、第２図イ
は一般の紡績糸の形態を示す斜視図であつて、該
紡績糸には実撚が掛つており、従つて糸は捩れて
いるが、その場合、同じ捩り数でも糸の中央部の
単繊維の捩れ角度と周辺部の捩れ角度では当然変
つてくるので（周辺の捩れ角の方が大きい）構成
単繊維間にずれが起つて微妙な繊維間空隙を生
じ、これが紡績糸独特の風合を発生させている。
然しながら、従来の捲回結束糸は第２図ロの如く
短繊維束がぴつちり緻密に束ねられており、特に
繊維間バラツキの少い合成繊維では非常にコンパ
クトな構造をとる。この結果、この糸を用いて織
編物にすると紡績糸の様な微妙複雑な単繊維間空
隙が生じないため風合が薄つぺらく、かなり感触
の異なるものとなり、好まれない。ここに、第２
図ロは、従来の捲回結束糸の形態を示す斜視図で
ある。然しながら、前記方法で作つた本発明の糸
は第２図ハの如く異形中空繊維で構成されている
為、いくら周囲を固く結束しても空隙が存在し、
完全にコンパクトな構造とはならない。特に、中
空で、且つ、外周部に突起を有する異型断面の繊
維によるものはこの傾向が強い。従つて、出来た
織物は中空によるバルキー性があるのは勿論であ
るが、それのみならず曲げの外力に対しても、こ
の空隙が変形する事によつてクツシヨンの役割を
果し、あたかも紡績糸の様な腰反撥性を発生し、
結束糸固有の頼りない風合が大幅に改善されるの
である。

第２図ハは、本発明の糸の断面の例を示す断面
図である。又、この場合、構成単繊維の中空率は
第２図ニに示す如く全体断面ａ＋ｂに対する中空
部ｂの割合が６％以下ではこの効果の発現が薄
い。出来れば10％以上にする事が望ましい。ま
た、この穴は２個以上の複数個であつても勿論良
く、その場合には変形に対して潰れ難いというメ
リツトがある。またこの様な中空構造に加えて第
２図ホの如く外周部にも突起を有するものは、単
繊維間でも空隙を生じ易く好ましい外、繊維間の
摩擦が増えて捲回部での結束力が増し、堅固な構
造の糸を作るのに効果がある。たとえ、糸が周囲
の繊維により強い結束状態で形成されていても本
発明の糸は前記の様な理由によつて堅くはならな
い。また、この様な結束糸は高速加工による合理
化をめざして製造されるので、出来るだけ少い結
束で必要な糸強度を保つのが望ましく、その為短
繊維の繊維長は一般に出来るだけ長く設定した
い。ここに、第２図ニは、繊維断面の中空率を説
明する断面図、第２図ホは、本発明の糸に使用さ
れる中空繊維の横断面を示す断面図である。然し
ながら、繊維長が長くなればなるほど結束された
繊維束はフイラメント糸の如くバルキーの無い固
いものとなつて風合的に面白くないが、本発明の
糸はその様な場合でも、バルキーが損われないメ
リツトがあり、特に平均繊維長150mm以上になる
とその効果は大きい。

また、この様に繊維長の長い中空繊維を結束し
て得た糸は麻ライク独特のシヤリ感も併せ持つ特
徴がある。麻の織物はその長い繊維長、固有の空
隙から来る強い張り，腰，シヤリ感，光沢等が特
長であるが、従来の合成繊維紡績法では、この様
な長い繊維長の紡績は困難であり、短い繊維長に
よる紡績糸では風合的にかなり掛け離れていた。
また繊維長の長さや、シヤリ感を補うため、長繊
維の融着加工糸等も開発されているが、自然感に
劣る点はまぬがれない。これに対し繊維長の長い
中空繊維を無撚状態で束ねた本発明の糸は、驚く
ほど麻の風合やシヤリ味，腰，光沢等が似て来
る。特に長繊維の中空繊維を200mm以上の長さに
引き千切り方式にて牽切し、直接これを結束して
得た糸は繊維の長さに加え適度の長い斑が目立
ち、非常に麻糸の外観に近ずく。即ち、牽切後に
はドラフト工程を通さない事により繊維長の制限
なく自由に長い繊維長が選べると共に、牽切時に
受けた歪や斑が是正される事なく直ちに糸になる
ので中空断面と相俟つて好ましい風合外観を与え
る訳である。この斑の発生は牽切時に起る自然な
牽切斑でも良いが、積極的に牽切斑が起る様に工
夫すれば更に効果的である。

また、本発明の糸に必要な結束は、前記例の如
く空気旋回流にて短繊維を捲回する等の方法によ
つて得られるが、その結束状態は取扱性の点、風
合の点より強いものでなければならない。それに
は旋回流の圧力は例えば３Kg／cm²程度以上の強い
ものが好ましく、又供給繊維束の束は12mm以上に
拡げて捲付き易くするのも良い。或いは構成繊維
の断面に於いて第２図ホの如く外部に突起を設け
れば、繊維間の摩擦が増え、捲回時の結束力が増
す。また断面の中空率が大きいと捲回時に捲回繊
維の断面が潰れ易く、結束が容易にほどけなくな
つて強い結束が得られるメリツトがある。

尚、本発明の糸を構成する繊維には中空以外の
ものも混つていても良いが、多くても半分以下が
望ましい。又中空繊維は機能性及び生産性より合
成繊維が必要であるが、捲回の強さ，腰反撥性，
寸法安定性等の点よりポリエステルである事が望
ましい。

以下、実施について説明する。

〔実施例 １〕 中空率12％の突起付三角断面ポリエステル未延
伸トウ（38000De／3450Fil）を3.5倍に延伸しな
がら牽切長750mmにて、20倍の牽伸により牽切
し、且つ牽切ゾーンの張力を変動させる事により
斑混入繊維束とし、５Kg／cm²圧力のアスピレータ
ー及び５Kg／cm²の旋回ノズルによりこれを捲回抱
合し、10番手のスラブ状結束糸を得た。これをシ
ングルニツトにて鹿の子に編んだところ、極めて
ナチユラルで光沢と腰のあるリネン調ニツトが得
られた。

またこの製品は糸の結束状態が強い為シングル
ニツトであるにもかゝわらずピリング４級で良好
であつた。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本発明の糸を製造する工程の例を示
す工程図、第２図イは、従来の紡績糸の形態を示
す斜視図、第２図ロは、従来の捲回結束糸の形態
を示す斜視図、第２図ハは、本発明の糸の断面の
例を示す断面図、第２図ニは、繊維断面の中空率
を説明する断面図、第２図ホは、本発明の糸に使
用される中空繊維の横断面を示す断面図である。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 芯部の繊維が主として、無撚の不連続な合成
   繊維束からなり、該合成繊維束はその周囲にある
   不連続な合成繊維により強く結束させられている
   糸であつて、該芯部を形成する合成繊維の繊維軸
   と直交する断面が、外周部に突起を有し、かつ中
   空率10％以上の孔を有する形状からなると共に、
   該芯部を形成する合成繊維の平均繊維長が150mm
   以上であることを特徴とする結束糸。