JPH1188101A - 弾性表面波素子および弾性表面波素子の製造方法 - Google Patents

弾性表面波素子および弾性表面波素子の製造方法

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JPH1188101A
JPH1188101A JP32836297A JP32836297A JPH1188101A JP H1188101 A JPH1188101 A JP H1188101A JP 32836297 A JP32836297 A JP 32836297A JP 32836297 A JP32836297 A JP 32836297A JP H1188101 A JPH1188101 A JP H1188101A
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JP
Japan
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dielectric film
acoustic wave
piezoelectric substrate
surface acoustic
film
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JP32836297A
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Takuya Iwasaki
拓哉 岩崎
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Toshiba Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 酸や水に溶解する性質を有する圧電性基板を
用いた場合でも周波数特性の優れた、信頼性、耐久性の
高い弾性表面波素子を提供する。 【解決手段】 Li2 4 7 (LBO)からなる圧電
性基板101と、この圧電性基板上に形成されたSiO
2 からなる膜厚hの第1の誘電体膜102と、この第1
の誘電体膜102上に形成されたアルミニウム薄膜から
なるピッチLの櫛歯状電極103bとをする弾性表面波
素子100の第1の誘電体膜102を、その膜厚と比誘
電率が、電気機械結合係数k2 が約0.74%より大き
くなるように選択して形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は弾性表面波素子に関
し、特に四硼酸リチウム(LBO:Li2 4 7 )か
らなる圧電性基板など酸、水に対して溶解する圧電性基
板を用いた弾性表面波素子に関する。
【0002】
【従来の技術】弾性表面波装置は圧電性基板上に設けら
れた櫛歯状電極(IDT:InterDigital
Transducer) により電気信号を弾性表面波
(SAW:Surface Acoustic Wav
e)に変換し、圧電性基板上を伝搬してくる弾性表面波
を同じく圧電性基板上に設けられたIDTにより弾性表
面波を受信し、電気信号と弾性表面波との変換に関わる
周波数特性を利用する素子である。弾性表面波素子は、
弾性表面波フィルタ、弾性表面波共振子、遅延回路をは
じめとして幅広く用いられている。
【0003】近年、特に携帯電話など移動体通信の分野
などで、薄型化・小型化が可能であるというメリットに
より弾性表面波素子が広く用いられるようになってきて
いる。この中で、例えばごく最近普及の始まった日本の
簡易携帯電話システム(PHS:Personal H
andy−phone System)の中間周波数
(IF)段(約240MHz)には、約0.1%程度の
比帯域を有し急峻な帯域外減衰特性を有する弾性表面波
フィルタが要求されている。このような用途において
は、周波数温度特性の1次係数が0で電気機械結合係数
2 が1%程度と比較的大きく、IDT1本当たりの弾
性表面波の反射係数が約3%と大きい45°XカットZ
伝搬のLBO基板 (45°X−Z LBO、特公平7
−16141)を利用することが有望視されている。
【0004】このLBO基板を用いると、水晶基板(周
波数温度特性の1次係数=0、k2=0.15%、ID
T1本当たりの弾性表面波の反射係数=0.7%)を利
用した場合に比べて弾性表面波素子を小型化できるとい
う長所がある。
【0005】ところが、LBO基板は酸にも水にも溶解
するという性質を有するため、アルミニウムなどにより
電極を形成するにはプロセス上の工夫が必要となる。図
11及び図12はLBO基板を用いた場合における従来
の電極形成プロセスを概略的に示す図である。
【0006】まず、LBO基板901上にスパッタ法、
真空蒸着法などによりアルミニウム薄膜902を堆積す
る(図11(a))。
【0007】ついで、アルミニウム薄膜902上にアル
ミニウム薄膜をパターニングするためにレジスト903
を形成する(図11(b))。そして、このレジスト9
03をマスクとして、pH5程度の混酸(燐酸、酢酸、
硝酸の混合液)によりアルミニウム薄膜902をエッチ
ングする。
【0008】このような場合、四硼酸リチウムはpH5
程度の酸に対して、25℃においてほぼ1μm/min
の溶解速度を有する。このため、アルミニウム薄膜90
2のエッチングが完了した直後から図11(c)に示す
ようにLBO基板901がエッチングされてしまうこと
になる。したがって、レジスト903を除去した後に、
LBO基板901に窪み904が形成されてしまうこと
になる(図11(d))。
【0009】さらに、アルミニウム薄膜902を個々の
弾性表面波素子内で、またウエハ全体として均一性を保
つため、追加のエッチングを行う必要があるが、追加す
るエッチング時間を10秒とすると、LBO基板901
に形成される窪み904の深さは0.17μm程度にも
なる。そして、この窪み904の深さは均一ではなくウ
エハ内、弾性表面波素子内でばらついてしまう。このた
め、IDTによる弾性表面波の反射特性が変化し弾性表
面波素子としての特性がばらついてしまうという問題が
ある。
【0010】これらの点を改善するため、従来はエッチ
ング液にpH10程度のアルカリ液(例えばKOH+K
3 [CN]6 等)が使用されている。このエッチング液
によるアルミニウムのエッチング速度は0.013μm
/minと遅いため、エッチング時間が長くなりエッチ
ング途中でアルカリに対して耐性の低いレジストが剥が
れてしまうという問題がある。
【0011】さらに、上述のような製造プロセス中に限
らず、パターンニング完了後においても多湿の環境下に
おいては圧電性基板が腐食されてしまうという問題があ
る。また、多湿の環境下では圧電性基板が腐食されるだ
けでなく、櫛歯状電極や反射器など圧電性基板上に配設
した電極が腐食してしまい、特性劣化を生じたり、耐久
性が低下したりするという問題がある。
【0012】図12はLBO基板上でのリフトオフプロ
セスによる従来の電極形成方法を概略的に示す図であ
る。
【0013】まずLBO基板911上にレジスト912
を形成してパターニングする(図12(a))。つい
で、このレジスト912の上側からスパッタ法、真空蒸
着法などによりアルミニウム薄膜913を堆積する(図
12(b))。そして、有機溶剤などの剥離液によりレ
ジスト912を除去することにより所定形状のアルミニ
ウム薄膜913を得ることができる。
【0014】この方法はいわゆるリフトオフ法として知
られている手法であるが、一般的にリフトオフ法によっ
て形成されたアルミニウム電極は圧電性基板との密着性
が悪く、弾性表面波素子としての信頼性が低下するとい
う問題がある。また、例えばワイヤボンディング工程な
どにおいて、アルミニウム薄膜913が圧電性基板91
1から剥がれるなど生産性を低下させるという問題があ
る。
【0015】このような問題を解決する方法の一つとし
て、可溶性の圧電性基板に不溶性の誘電体膜を形成し、
この上に櫛歯状電極を形成する方法が提案されている。
しかしながら誘電体膜を形成することにより、圧電性基
板と櫛歯状電極との電気的、機械的結合は弱まってしま
うという問題がある。
【0016】さらに、上述のようにLBO基板は酸にも
水にも溶解するという性質を有するため、デバイスプロ
セスはもちろんのこと、製品としての耐環境性などにも
向上する工夫が必要となる。
【0017】図13はLBO基板を用いた従来の弾性表
面波素子の製造方法の例を概略的に示す図である。ま
ず、LBO基板1201上にスパッタ法、真空蒸着法な
どにより金属薄膜1202を堆積させる(図13
(a))。ついで、金属薄膜1202上に金属薄膜をパ
ターニングするためにレジスト1203をマスクとし
(図13(b))、PH5程度の混酸(燐酸、硝酸等の
混合液)により金属薄膜1202をエッチングして電極
パターン1202bに形成する(図13(c))。
【0018】ついで、マスクを剥離し(図13
(d))、ダイシングを経た後にLBO基板裏面に粘着
材1204を塗布し(図13(e))、パッケージ12
05に収める(図13(f))。
【0019】このような揚合、LBOは水に溶解すると
いう性質を有しているため、ダイシング中に冷却水等に
よりLBO裏面の粘着性が弱まってしまうという問題が
生じる。特に複数の弾性表面波素子パターンを配設した
ウエハを個々の弾性表面波素子に分離するダイシング工
程においては、ウエハの電極形成面の裏面とダイシング
のステージとを粘着テープなどにより固定したうえでダ
イシングを行って個々の弾性表面波素子を分離する。と
ころが、ダイシングには水あるいは水溶液が用いられる
ため、ダイシング中にウエハとステージとの接着力が弱
まり、弾性表面波素子がステージから飛散したりすると
いう問題がある。
【0020】また、パッケージング後においても、大気
中の水分等によりパッケージ内でのLBO裏面の粘着性
が弱まり、弾性表面波素子の特性に大きな変動を招来し
てしまうという問題がある。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような問
題点を解決するためになされたものである。すなわち、
本発明は酸や水に溶解する性質を有する圧電性基板を用
いた場合でも周波数特性の優れた、信頼性、耐久性の高
い弾性表面波素子を提供することを目的とする。また本
発明は、酸や水に溶解する性質を有する圧電性基板を用
いた場合においても、周波数特性が優れ、信頼性、生産
性、耐久性の高い弾性表面波素子の製造方法を提供する
ことを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】本発明の弾性表面波素子
は、四硼酸リチウムからなる圧電性基板と、この圧電性
基板上に配設された第1の誘電体膜と、前記第1の誘電
体膜上に前記第1の誘電体膜を介して前記圧電性基板と
電気機械結合するように配設された櫛歯状電極と、この
櫛歯状電極を覆うように配設された第2の誘電体膜とを
具備したことを特徴とする。
【0023】前記第1の誘電体膜は前記櫛歯状電極を前
記圧電性基板上に直接配設したときの電気機械結合係数
と前記櫛歯状電極を前記第1の誘電体膜上に配設したと
きの電気機械結合係数とがほぼ等しくなるように選択さ
れた膜厚および比誘電率を有するようにしてもよい。例
えば、第1の誘電体膜を配設した場合における電気機械
結合係数の低下が最小限度に抑制されるように、第1の
誘電体膜または第2の誘電体膜の膜厚および比誘電率を
選択・調節して配設するようにすればよい。
【0024】また本発明の弾性表面波素子は、圧電性基
板と、この圧電性基板上を伝搬する弾性表面波の電気機
械結合係数k2 が約0.74%より大きくなるように膜
厚または比誘電率を選択して配設した第1の誘電体膜
と、この第1の誘電体膜上に配設された櫛歯状電極と、
この櫛歯状電極を覆うように配設された第2の誘電体膜
とを具備するようにしてもよい。ここで約0.74%
は、後で詳述するように、弾性表面波素子として所定の
機能を得るための電気機械結合係数k2 の下限を定めた
ものであって、電気機械結合係数k2 はできるだけ大き
くなるように第1の誘電体膜の膜厚、比誘電率を選択し
て配設するようにすればよい。第1の誘電体膜は常誘電
体にかぎらず強誘電体を用いて配設するようにしてもよ
い。
【0025】また本発明の弾性表面波素子は、四硼酸リ
チウムからなる圧電性基板と、この圧電性基板上を伝搬
する弾性表面波の電気機械結合係数k2 が約0.74%
以上となるような膜厚および比誘電率を有する第1の誘
電体膜と、前記第1の誘電体膜上に配設された櫛歯状電
極と、前記櫛歯状電極を覆うように配設された第2の誘
電体膜とを具備するようにしてもよい。
【0026】また本発明の弾性表面波素子は、四硼酸リ
チウムからなる圧電性基板と、この圧電性基板上に配設
された第1の誘電体膜と、この第1の誘電体膜上に配設
されたピッチL(Lは弾性表面波素子が動作する中心周
波数における弾性表面波の波長λとほぼ等しい)の櫛歯
状電極とを有する弾性表面波素子において、前記第1の
誘電体膜は、h/Lが約0.6%より小さくなるような
膜厚hを有するとともに、前記櫛歯状電極を覆うように
配設された第2の誘電体膜とを具備するようにしてもよ
い。
【0027】そして第1の誘電体膜は、SiO2 、Ta
2 5 、Si3 4 、AlN、MgTiO3 、CaTi
3 、SrTiO3 からなる群の少なくとも1種を用い
て配設するようにしてもよい。ここでこれらの物質のス
トイキオメトリーは多少ずれていてもかまわない。例え
ばSiO2 の場合、SiとOとの組成比は厳密に1:2
でなくともよく、いわゆるSiOx のように組成がずれ
ていてもよい。同様にSi3 4 の場合、SiとNとの
組成比は厳密に3:4でなくともよく、いわゆるSiN
x のように組成がずれていてもよい。他の誘電体につい
ても同様である。
【0028】これらの物質を適宜組み合わせて用いるこ
とにより、第1の誘電体膜、第2の誘電体膜の比誘電率
を選択するようにすればよい。このとき、比誘電率の異
なるこれらの物質の積層膜を配設するようにしてもよい
し、混合膜を配設するようにしてもよい。例えばSiO
2 (ε=約5)と、Ta2 5 (ε=約20)とをほぼ
1:1に組み合わせて第1の誘電体膜、第2の誘電体膜
を配設した場合、この第1の誘電体膜の比誘電率は約1
2.5程度になる。また、成膜材料の比誘電率に応じて
配設する第1の誘電体膜、第2の誘電体膜の膜厚を変え
るようにしてもよい。このとき、配設する第1の誘電体
膜、第2の誘電体膜の膜厚は少なくとも約5nmより厚
く配設することが好ましい。これは、本発明の弾性表面
波素子が備える第1の誘電体膜、第2の誘電体膜は、エ
ッチング工程や、ダイシング工程などにおいて圧電性基
板の保護膜としても機能するが、第1の誘電体膜、第2
の誘電体膜の膜厚が約5nmより薄くなると、エッチン
グ工程や、ダイシング工程などにおける保護膜としての
機能が十分ではなくなるからである。第1の誘電体膜ま
たは第2の誘電体膜を比誘電率の異なる2種以上の誘電
体材料からなる積層構造としてもよい。各層の材質、厚
さを選択することにより、第1の誘電体膜、第2の誘電
体膜全体として比誘電率、膜厚が選択される。さらに、
第1の誘電体膜または第2の誘電体膜を積層構造とする
ことにより、1層に欠陥があった場合でも圧電性基板は
他の層により保護されるから、エッチング液への保護膜
としての信頼性はより高いものとなる。
【0029】なお、櫛歯状電極は例えばAl、Cu、A
uあるいはこれらをベースとした合金、例えばAl−T
i系合金、Al−Cu系合金などから配設するようにす
ればよい。
【0030】本発明の弾性表面波素子の製造方法は、四
硼酸リチウムからなる圧電性基板上に第1の誘電体膜を
形成する工程と、前記第1の誘電体膜上に櫛歯状電極を
形成する工程と、前記櫛歯状電極を覆うように前記第1
の誘電体膜上に第2の誘電体膜を形成する工程とを有す
ることを特徴とする。
【0031】前記第1の誘電体膜を形成する工程は、前
記圧電性基板上を伝搬する弾性表面波の電気機械結合係
数k2 が0.74%より大きくなるように膜厚および比
誘電率を選択して形成することが好適である。
【0032】また本発明の弾性表面波素子の製造方法
は、四硼酸リチウムからなる圧電性基板と、この圧電性
基板上に形成された厚さhの第1の誘電体膜と、この第
1の誘電体膜上に形成されたピッチLの櫛歯状電極と、
前記櫛歯状電極を覆うように配設された第2の誘電体膜
とを有する弾性表面波素子の製造方法において、前記圧
電性基板上に、h/Lが約0.6%以下となるように膜
厚hを予め選択して前記第1の誘電体膜を形成する工程
と、前記第1の誘電体膜上にピッチLの櫛歯状電極を形
成することが好適である。
【0033】さらに本発明の弾性表面波装置の製造方法
においては四硼酸リチウムからなる圧電性基板と、この
圧電性基板上に形成された厚さhの第1の誘電体膜と、
この第1の誘電体膜上に形成されたピッチLの櫛歯状電
極と前記櫛歯状電極を覆うように配設された第2の誘電
体膜とを有する弾性表面波素子の製造方法において、前
記圧電性基板上に、h/Lが約0.6%以下となるよう
に、かつこの圧電性基板上を伝搬する弾性表面波の電気
機械結合係数k2 が約0.74%以上となるように膜厚
および比誘電率を選択して前記第1の誘電体膜を形成す
る工程と、前記第1の誘電体膜上にピッチLの櫛歯状電
極を形成することが好適である。
【0034】すなわち、本発明の弾性表面波素子の製造
方法は、LBO基板のようなアルミニウム薄膜のエッチ
ング液、特に酸に対して溶解する性質を持つ圧電基板を
保護するために予め圧電基板表面を酸に対して溶解しな
い誘電膜、例えばSiO2 膜を形成して保護膜とし、こ
の誘電膜上に形成したアルミニウム薄膜を酸によりエッ
チングすることによりアルミニウム電極パターンを得る
ものである。第1の誘電体膜、第2の誘電体膜を形成す
る際には、上述のように第1の誘電体膜の比誘電率と膜
厚とを選択するようにすればよい。また、第2の誘電体
膜の比誘電率と膜厚とを選択についても、第1の誘電体
膜と同様に行うようにすればよい。
【0035】また本発明の弾性表面波素子は、四硼酸リ
チウムからなり、第1の面と第2の面とを有する圧電性
基板と、前記圧電性基板の第1の面に配設された櫛歯状
電極と、前記圧電性基板の第2の面に配設された第3の
誘電体膜とを具備したことを特徴とする。また前述のよ
うに、四硼酸リチウムからなり、第1の面と第2の面と
を有する圧電性基板と、前記圧電性基板の第1の面に配
設された第1の誘電体膜と、前記第1の誘電体膜上に前
記第1の誘電体膜を介して前記圧電性基板と電気機械結
合するように配設された櫛歯状電極と、前記圧電性基板
の第2の面に配設された第3の誘電体膜とを具備するよ
うにしてもよい。さらに前述のように、前記櫛歯状電極
を覆うように配設された第2の誘電体膜をさらに具備す
るようにしてもよい。
【0036】前記第3の誘電体膜の膜厚は約50nm以
下に設定することが好適であり、より好ましくは約30
nm以下、さらに好ましくは約20nmに設定すること
が好適である。
【0037】つまり本発明の弾性表面波素子は、弾性表
面波素子の第2の面(電極パターン配設面の裏面)にも
厚さおよび誘電率の等しい第3の誘電体膜を配設したも
のである。このような構成を採用することにより、弾性
表面波素子の裏面を保護するとともにより平滑にするこ
とができ、余計な反射波の発生を抑制することができる
と同時に、外囲器に接着剤などを用いて搭載する場合な
どに生産性を向上することができる。なお、弾性表面波
素子の裏面にも櫛歯状電極を配設した第1の面と同様
に、第1の誘電体膜と第2の誘電体膜のような積層膜を
配設するようにしてもよい。
【0038】ここで第3の誘電体膜は、圧電性基板を保
護でき得る範囲でできるかぎり薄く形成することが好適
である。これは第3の誘電体膜を厚く(例えば数μm以
上)すると、弾性表面波素子の周波数特性に悪影響を及
ぼしてしまうからである。このため、第3の誘電体膜は
例えばスパッタ法、CVD法などにより配設することが
好ましい。例えばスピンコートなどによりウエハに第3
の誘電体膜を配設すると、膜厚が厚くなってしまい、ま
た研磨したとしても均一な膜を配設することは困難であ
る。
【0039】また本発明の弾性表面波素子の製造方法
は、四硼酸リチウムからなり、第1の面と第2の面とを
有する圧電性基板の前記第1の面と前記第2の面とを研
磨する工程と、前記圧電性基板の前記第1の面に導体薄
膜を堆積する工程と、前記導体薄膜をパターニングする
工程と、前記圧電性基板の前記第2の面に第3の誘電体
膜を堆積する工程とを具備したことを特徴とする。
【0040】また本発明の弾性表面波素子の製造方法
は、四硼酸リチウムからなり、第1の面と第2の面とを
有する圧電性基板の前記第1の面と前記第2の面とを研
磨する工程と、前記圧電性基板の前記第1の面に第2の
誘電体膜を堆積する工程と、前記圧電性基板の第1の面
に導体薄膜を堆積する工程と、前記導体薄膜をパターニ
ングする工程と、前記圧電性基板の第2の面に第3の誘
電体膜を堆積する工程とを具備したことを特徴とする。
【0041】さらに本発明の弾性表面波素子の製造方法
は、四硼酸リチウムからなり、複数の素子領域を有する
ウエハの第1の面に導体薄膜を堆積し前記素子領域ごと
に弾性表面波素子が形成されるようにパターニングする
工程と、前記ウエハの第2の面を研磨する工程と、前記
ウエハの第2の面に誘電体膜を堆積する工程と、前記ウ
エハの第2の面とステージとを接着手段によりに固定す
る工程と、前記ウエハを前記素子領域ごとに分離する工
程とを具備したことを特徴とする。
【0042】このような本発明の弾性表面波素子の製造
方法では、LBOからなる圧電性基板の第2の面に第3
の誘電体膜を配設しているため、ダイシング工程を通じ
てウエハあるいは弾性表面波素子のチップがステージに
強固に固定され、途中で飛散したりすることはなく、生
産性を大きく向上することができる。このような効果
は、圧電性基板の裏面を研磨せずとも、あるいは意図的
に粗面に形成しても同様に得ることができたが、特に研
磨した場合にはその効果が大きい。
【0043】このように本発明の弾性表面波素子の製造
方法によれば、LBOなどの水溶性を有する圧電性基板
を用いて、高い生産性で、良好な特性を有する弾性表面
波素子を製造することができる。また本発明の弾性表面
波素子を搭載した弾性表面波装置では、圧電性基板の裏
面に誘電体膜が配設されており、この膜により圧電性基
板が保護されるため、例えば水分などによる圧電性基板
の経時的変化を防止することができる。このため弾性表
面波装置の信頼性を向上することができる。
【0044】
【発明の実施の形態】以下、本発明についてさらに詳細
に説明する。
【0045】(実施形態1)図1は本発明の弾性表面波
素子の構造の例を概略的に示す図である。図1(a)は
第2の誘電体膜を透視して示す斜視図であり、図1
(b)では図1(a)のAA方向の断面構造を示してい
る。
【0046】図1(a)の弾性表面波素子100は、L
2 4 7 (LBO)からなる圧電性基板101と、
この圧電性基板上に形成されたSiO2 からなる膜厚h
の第1の誘電体膜102と、この第1の誘電体膜102
上に形成されたアルミニウム薄膜からなるピッチLの櫛
歯状電極103bと、この櫛歯状電極103bを覆うよ
うに第1の誘電体膜102上に配設された第2の誘電体
膜105とを有している。
【0047】圧電性基板101上に第1の誘電体膜10
2と第2の誘電体膜105の複数の誘電体膜を配設する
ことにより、どちらか一方の誘電体膜に欠陥が生じて
も、圧電性基板101を保護する機能を維持することが
でき、弾性表面波素子の信頼性を向上することができ
る。また第2の誘電体膜105は、櫛歯状電極103b
あるいは図示しない反射器などの弾性表面波素子を構成
する電極パターンを覆うように配設されており、製造工
程においても、実際に使用されるときにもこれらの電極
パターンを保護することができる。
【0048】例えば、弾性表面波素子は、外囲器と呼ば
れるパッケージに接着剤などにより搭載され、封止され
る。この接着剤からは経時的に揮発性のガス成分が放出
され、このガスが弾性表面波素子を構成する櫛歯状電極
や反射器などに悪影響を及ぼすという問題があるが、本
発明の弾性表面波素子においては第2の誘電体膜105
によりこのような悪影響が生じるのを防止することがで
きる。さらに第2の誘電体膜105を積層構造にするこ
とにより、保護膜としての機能を向上することができ
る。
【0049】また本発明においては、第1の誘電体膜1
02と第2の誘電体膜105とは、弾性表面波素子とし
ての機能を損なわないように、その膜厚と比誘電率とを
調節して配設している。図2は図1(a)に例示した弾
性表面波素子の一部を拡大して示す図である。なお、こ
の図では第2の誘電体膜105を取り除いた状態を示し
ている。
【0050】例えば第1の誘電体膜102は、その膜厚
と比誘電率とが弾性表面波の電気機械結合係数k2
0.74%より大きくなるように選択して形成されてい
る。
【0051】また、第1の誘電体膜の膜厚hを、櫛歯状
電極103bのピッチLで規格化した換算膜厚h/Lが
0.6%以下になるように選択して形成するようにして
もよい。
【0052】また、第2の誘電体膜105の厚さは第1
の誘電体膜と同様に必要に応じて設定するようにすれば
よい。
【0053】ここでは第1の誘電体膜102、第2の誘
電体膜105としてSiO2 を用いた例をとりあげる
が、第1の誘電体膜102、第2の誘電体膜105の材
質はこれに限ることはない。例えば、SiO2 の他に、
Ta2 5 、Si3 4 、AlN、MgTiO3 、Ca
TiO3 、SrTiO3 などを用いるようにしてもよ
い。また、これらの物質を適宜組み合わせて用いること
により、第1の誘電体膜102および第2の誘電体膜1
05の比誘電率を選択するようにしてもよい。また、比
誘電率に応じて形成する第1の誘電体膜102、第2の
誘電体膜105の膜厚を変えるようにしてもよい。第1
の誘電体膜102および第2の誘電体膜105を異なる
誘電体材料からなる積層構造としてもよい。各層の材
質、厚さを選択することにより、第1の誘電体膜102
全体として比誘電率、膜厚が選択される。さらに、第1
の誘電体膜102または第2の誘電体膜105を積層構
造とすることにより、いずれかの誘電体層のうちの1層
に欠陥があった場合でも圧電性基板は他の層により保護
されるから、エッチング液、製造後の湿度などに対応す
る保護膜としての信頼性はより高いものとなる。
【0054】(実施形態2)また、図3は本発明の弾性
表面波素子の構成を概略的に示す図であり、図1(a)
に例示した弾性表面波素子の裏面にも厚さおよび誘電率
の等しい第3の誘電体膜203を形成したものである。
ここでは第1の誘電体膜102を圧電性基板101の櫛
歯状電極103b形成面(第1の面)だけでなく、その
反対側の面(第2の面)にも第3の誘電体膜203を形
成することにより、弾性表面波素子の裏面をより平滑に
することができ、余計な反射波の発生を抑制することが
できると同時に、外囲器に接着剤などを用いて搭載する
場合などに生産性を向上することができる。なお、弾性
表面波素子の裏面にも櫛歯状電極形成面と同様に、第1
の誘電体膜102と第2の誘電体膜105との積層膜を
配設するようにしてもよい。
【0055】圧電性基板101の第2の面に配設する第
3の誘電体膜203は、圧電性基板を保護でき得る範囲
でできるかぎり薄く形成することが好適である。これは
第3の誘電体膜203を厚く(例えば数μm以上)する
と、弾性表面波素子の周波数特性に悪影響を及ぼしてし
まうからである。このため本発明の弾性表面波素子で
は、第3の誘電体膜203の厚さを約20nm程度に設
定している。発明者はこの程度の厚さでは弾性表面波素
子の周波数特性にほとんど悪影響を及ぼすことなく、圧
電性基板を保護できることを見出だした。 さらに、誘
電体膜(第1の誘電体膜、第2の誘電体膜、または第3
の誘電体膜203)はスパッタ法、CVD法、PECV
D法などにより堆積することが好適である。これは配設
する誘電体膜は、その膜厚を薄く、かつ均一に形成する
必要があるからである。スピンコートなどにより比較的
厚い膜を配設し、その後この膜を研磨等により薄くしよ
うとすると、誘電体膜の膜厚を均一に維持することが極
めて困難になる。
【0056】このように、圧電性基板101の第2の面
に第3の誘電体膜203を配設する場合には、圧電性基
板の第2の面をパフなどにより鏡面に研磨するようにす
ることが好適である。圧電性基板101の第2の面を研
磨することにより、第3の誘電体膜203を均一な膜厚
で配設することができる。また圧電性基板101と第3
の誘電体膜203との接合強度が大きくなり、弾性表面
波装置の信頼性が向上する。このような研磨は圧電性基
板101に電極パターンや、第1の誘電体膜102を配
設するより前に両面同時に行うようにしてもよい。
【0057】(実施形態3)ここで第1の誘電体膜10
2としてSiO2 を形成した場合を例にとって、弾性表
面波の励振特性へ及ぼす影響について説明する。
【0058】図4は第1の誘電体膜102をSiO2
形成したとき、その膜厚とLBO基板(45°Xカット
Z伝搬Li2 4 7 )上の弾性表面波の励振効率の目
安となる電気機械結合係数k2 と関係を示す図である。
図4から電気機械結合係数k2 は第1の誘電体膜102
が厚くなるにつれて小さくなることがわかる。図4のx
軸は、第1の誘電体膜102の膜厚hを弾性表面波のピ
ッチLとほぼ一致する波長λ(λ=Vs /f0 、f0
弾性表面波素子の動作周波数、Vs :弾性表面波の位相
速度)で規格化した換算膜厚h/λ(%)として示し
た。LBOの位相速度は約3400m/sであるから、
弾性表面波素子の動作周波数を71MHzとした場合、
波長λは48μmとなる。このとき、第1の誘電体膜1
02を形成しない場合のk2 が1.02%であるのに対
し、第1の誘電体膜102としてSiO2 膜を膜厚0.
29μm (h/λ=0.6%)とした場合のk2
0.74%まで低下することがわかる。
【0059】図5は、このときの弾性表面波素子の周波
数特性への影響をシミュレーションにより比較した結果
を示す図である。弾性表面波フィルタは例えば携帯電話
システムの一つであるGSM (Global Sys
tem for Mobile communicat
ion)のIF段(動作周波数:71MHz)に用いる
ことができる弾性表面波フィルタを想定し、2ポートI
DT共振子フィルタ構造2段従属接続、IDT40本、
反射器60本、IDTの交差幅0.48mmとしてその
特性を検討した。図5から電気機械結合係数k2 が減少
するとともにフィルタの通過帯域幅が減少し、また通過
帯域内のリップルも増大することがわかる。
【0060】図6はこの弾性表面波フィルタの3dB帯
域幅のSiO2 膜厚依存性を示す図である。GSM用I
F段弾性表面波フィルタの場合、LBO基板の周波数温
度ドリフトを含め275KHz程度の通過帯域幅を必要
とするのに対し、SiO2 第1の誘電体膜102の換算
膜厚h/λがほぼ0.6%までは275KHz以上の帯
域幅を確保することができるが、換算膜厚h/λが0.
6%を越えると通過帯城内のリップルが増大するため急
速に帯域幅が減少し275KHz以下となることがわか
る。したがって、SiO2 の膜厚は換算膜厚h/λが約
0.6%以下になるように設定する必要がある。図7は
図6の弾性表面波フィルタの3dB帯域幅の電気機械結
合係数k2 依存性を示す図である。約0.74%の電気
機械結合係数k2 を得られれば、275KHz以上の帯
域幅を確保することができることがわかる。なお約0.
74%の電気機械結合係数k2 はここでは275KHz
以上の帯域幅を確保する場合に必要な下限値であるか
ら、形成する第1の誘電体膜102はより大きな電気機
械結合係数k2 が得られるように必要に応じて選択する
ようにすればよい。
【0061】このように本発明の弾性表面波素子におい
ては、圧電性基板と櫛歯状電極との間に形成する第1の
誘電体膜102の膜厚および誘電率を、この弾性表面波
素子を伝搬する弾性表面波の電気機械結合係数k2 がで
きるかぎり低減しないように選択することにより、周波
数特性が良好で、かつばらつきの少ない高品質な弾性表
面波素子を得ることができる。
【0062】図4、図5、図6、図7においては第1の
誘電体膜102としてSiO2 膜を用いた例について説
明したが、絶縁体で比誘電率が4以上であればSiO2
膜と同様に用いることができる。第1の誘電体膜102
として利用できる材料としては、例えばSiO2 、Ta
2 5 、Si3 4 、AlNのなどの単体かもしくは複
数を混合した成分からなる材料を用いるようにしてもよ
い。また前述のように、これらの誘電体材料を積層構造
にして第1の誘電体膜102を形成するようにしてもよ
い。
【0063】また、ここでは圧電性基板については45
°XカットZ伝搬の四硼酸リチウム(Li2 4 7
を用いた例について説明したが、本発明の弾性表面波素
子はこのカット角には限定されない。これ以外にも、例
えば米国特許第4672255号明細書に示されている
オイラー角の範囲を好適に用いることもできる。
【0064】さらに上述の例では、第1の誘電体膜10
2としてSiO2 を用いて膜厚を選択した例について説
明したが、比誘電率と膜厚とを調節・選択するようにし
てもよい。また、第2の誘電体膜105もその比誘電率
または膜厚を調節・選択して配設するようにしてもよ
い。
【0065】図8は第1の誘電体膜102を形成する物
質の比誘電率(ε)を変化させたときの、換算膜厚と圧
電性基板101上の弾性表面波の励振効率の目安となる
電気機械結合係数k2 との関係を示す図である。
【0066】比誘電率を問わず、第1の誘電体膜102
が厚くなるにしたがい電気機械結合係数k2 が低下する
ことがわかる。また、比誘電率が大きいほど同じ電気機
械結合係数k2 を得るのに必要な誘電体の最大膜厚は小
さくなることがわかる。例えば、電気機械結合係数k2
として0.74%とすると、比誘電率εが5の場合には
ほぼ0.6%以下の換算膜厚(h/λ)とする必要があ
るが、比誘電率εが100の場合にはほぼ0.3%以下
の換算膜厚(h/λ)としなければならないことがわか
る。
【0067】図9は形成する第1の誘電体膜102の比
誘電率と、所定の電気機械結合係数k2 を得るために最
小限必要な第1の誘電体膜102の最大膜厚との関係を
示す図である。第1の誘電体膜102の比誘電率を大き
くするためには例えばSiO2 、Ta2 5 、Si3
4 、AlN、MgTiO3 、CaTiO3 、MgTiO
3 、CaTiO3 のような材料と、例えばSrTiO3
のような比誘電率の大きな材料との割合を必要に応じて
変えてスパッタリングなどにより堆積することにより、
必要な電気機械結合係数k2 を有する第1の誘電体膜1
02を形成するようにすればよい。
【0068】また、第2の誘電体膜105の誘電率、膜
厚についても上述した第1の誘電体膜102の誘電率、
膜厚と同様な手法で設定するようにすればよい。
【0069】なお、ここでは、本発明の弾性表面波素子
を用いた弾性表面波装置の1例として上述の弾性表面波
フィルタを例示したが、本発明はこれに限ることはな
く、四硼酸リチウムなどの、酸、水に対して溶解する圧
電性基板を用いた弾性表面波素子一般に適用することが
できる。
【0070】(実施形態4)つぎに本発明の弾性表面波
素子の製造方法について説明する。
【0071】図10は、本発明の弾性表面波素子の製造
方法を模式的に示す図である。ここでは、動作周波数7
1MHz、櫛歯状電極のピッチ48μm(L)の弾性表
面波素子を例にとって説明する。
【0072】図10(a)のように、まず四硼酸リチウ
ムからなる圧電性基板101上にスパッタ法などにより
第1の誘電体膜102を形成し、この上に例えば真空蒸
着法などによりアルミニウム薄膜103を形成する。な
お、櫛歯状電極はアルミニウムに限らず他の導電性材料
により形成するようにしてもよい。
【0073】この製造例では、形成する第1の誘電体膜
102の膜厚と比誘電率が、電気機械結合係数k2
0.74%より大きくなるように選択して形成した。ま
た、第1の誘電体膜102の膜厚hを、櫛歯状電極のピ
ッチLで規格化した換算膜厚h/Lが0.6%以下にな
るように選択して形成するようにしてもよい。
【0074】ここでは第1の誘電体膜102として、厚
さ40nmのSiO2 膜を形成し、アルミニウム薄膜1
03の厚さは0.5μmとした。このときSiO2 第1
の誘電体膜102の換算膜厚h/λは、約0.08%と
なり、図4から約0.98%の電気機械結合係数k2
得られることがわかる。この電気機械結合係数k2 は、
第1の誘電体膜102を形成しない場合ときのk2 とほ
ぼ等しい。したがって、例えば上述したGSM用のIF
段フィルタを製造した場合にも、十分な帯域幅を確保す
ることができ、また通過帯域内のリップルも小さくする
ことができる(図5、図6、図7参照)。
【0075】ついで、堆積したアルミニウム薄膜103
上にレジスト104を堆積し、フォトリソグラフィー法
などにより櫛歯状電極、反射器などの所定形状にパター
ニングする。その後、形成したレジストパターンをマス
クとしてpH5の混酸(燐酸、酢酸、硝酸の混合液)に
よりアルミニウム薄膜103をエッチングし、櫛歯状電
極103b、図示しない反射器などの形状にパターニン
グする(図10(c))。この状態からレジスト104
をレジスト剥離液などにより除去することによって、ア
ルミニウム薄膜からなる電極パターンが形成されること
になる(図10(d))。この際、第1の誘電体膜10
2により四硼酸リチウム基板は保護されており、基板の
溶解は防止される。したがって、基板の窪みに起因する
特性のばらつきのない、高品質な弾性表面波素子を製造
することができる。さらに、櫛歯状電極と接続して圧電
性基板上に配設された外部回路との接続端子の部分にレ
ジストを堆積、露光してマスクを形成し、櫛歯状電極1
03b、図示しない反射器などの電極を覆うように、ス
パッタ法などによりSiO2 からなる第2の誘電体膜1
05を形成した(図10(e))。この第2の誘電体膜
105の厚さについては、第1の誘電体膜102と同様
に必要に応じて設定するようにすればよい。第2の誘電
体膜105形成後、レジストは除去した。
【0076】この第2の誘電体膜105を配設すること
により、まず、圧電性基板101を保護する保護膜が多
重化され、弾性表面波素子の信頼性を向上することがで
きる。さらに、櫛歯状電極103bやグレーティング反
射器は第2の誘電体膜105により被覆されるから、弾
性表面波素子を外囲器に搭載する際の接着剤などから経
時的に放出されるガス成分や、水分、さらに製造後に弾
性表面波素子が用いられる環境に起因する水分などから
櫛歯状電極、反射器、圧電性基板などを保護することも
できる。
【0077】また、本発明の弾性表面波素子の製造方法
は、第1の誘電体膜102の比誘電率または厚さを、製
造する弾性表面波素子の動作周波数、通過周波数帯域、
許容されるリップルなどに応じて形成している。したが
って、第1の誘電体膜102を形成しても、通過周波数
帯域が減少したり、通過周波数帯域内でのリップルが増
大したりすることはなく、特性の優れた弾性表面波素子
を製造することができる。
【0078】なお、ここに取り上げた製造例では第1の
誘電体膜102、第2の誘電体膜105の成膜にはスパ
ッタ法を用いたが、P−CVD法(Plasma Ch
emical Vapour Deposition
法)やその他の成膜方法を必要に応じて用いるようにす
ればよい。また、アルミニウム薄膜103bの成膜には
真空蒸着法を用いたが、スパッタ法により成膜するよう
にしてもよい。さらに、アルミニウム薄膜のエッチング
には、混酸によるエッチング(ウエット・エッチング)
を行ったが、例えば塩素系のガスなどを用いてエッチン
グするドライ・エッチング法を用いるようにしてもよ
い。
【0079】(実施形態5)図14は本発明の弾性表面
波素子を外囲器に搭載した弾性表面波装置の構造の例を
概略的に示す図である。また図15は図14に例示した
本発明の弾性表面波装置の断面構造を概略的に示す図で
ある。
【0080】この弾性表面波装置200は、Li2 4
7 (LBO)からなる圧電性基板201と、この圧電
性基板201の第1の面に配設された金属薄膜からなる
櫛歯状電極202bを含む電極パターンと、圧電性基板
201の第2の面に配設されたSiO2 からなる第3の
誘電体膜203とを有する弾性表面波素子を外囲器20
4に搭載したものである。外囲器204と弾性表面波素
子とは接着層205により接合されている。また外囲器
204は図示しない接続端子を有しており、櫛歯状電極
202bの入出力端子と図示しないボンディングワイヤ
などにより電気的に接続されている。
【0081】そして第3の誘電体膜203は、弾性表面
波素子の周波数特性を損なわないような所望の膜厚に調
節して形成されている。第3の誘電体膜の膜厚は約50
nm以下程度に設定することが好ましく、約30nm以
下に設定することがより好ましい。ここでは第3の誘電
体膜203はスパッタ法により約20nmの厚さに形成
している。第3の誘電体膜203は、種類の異なる絶縁
性物質を混合したり積層させたり、あるいは適宜組み合
わせて配設するようにしてもよい。また厚さとととも
に、前述のように誘電率を選択して配設するようにして
もよい。
【0082】なおこの例では、圧電性基板201の第1
の面に直接櫛歯状電極202bを配設した例を示してい
るが、実施形態1乃至実施形態4で説明したように、圧
電性基板201上に第1の誘電体膜を配設しその上に櫛
歯状電極202bを配設するようにしてもよいし、さら
に櫛歯状電極202bを第3の誘電体膜により覆うよう
にしてもよい。
【0083】(実施形態6)図16は本発明の弾性表面
波素子の製造方法の例を説明するための図である。ここ
では図14、図15に例示した本発明の弾性表面波素子
の製造例について説明する。
【0084】まず四硼酸リチウムからなる圧電性基板2
01を所定のカット角で切り出してその両面をパフなど
により研磨する。
【0085】ついで、圧電性基板201の第1の面に例
えばスパッタ法などにより、例えばSiO2 などの第3
の誘電体膜203を堆積する。このとき第3の誘電体膜
203は、弾性表面波素子の周波数特性を損なわないよ
うな所望の膜厚に調節して形成している。第3の誘電体
膜の膜厚は約50nm以下程度に設定することが好まし
く、約30nm以下に設定することがより好ましい。こ
こでは第3の誘電体膜203はスパッタ法により約20
nmの厚さに形成している。第3の誘電体膜203は、
種類の異なる絶縁性物質を混合したり積層させたり、あ
るいは適宜組み合わせて配設するようにしてもよい。ま
た厚さととともに、前述のように誘電率を選択して配設
するようにしてもよい。
【0086】そして圧電性基板201の第1の面には例
えば真空蒸着法などにより金属薄膜202aを形成する
(図16(a))。
【0087】ついで、この金属薄膜202a上にレジス
ト206を堆積し、フォトエッチングプロセスにより露
光、現像し(図16(b))、このレジスト206をマ
スクとして金属薄膜202aをパターニングして櫛歯状
電極202bを形成する(図16(c))。
【0088】そしてレジスト206を除去し(図16
(d))、ダイシングによりウエハ状態から個々の弾性
表面波素子を分離する。本発明の弾性表面波素子では、
LBOからなる圧電性基板201の第2の面に誘電体膜
203を配設しているため、ダイシング工程を通じてウ
エハあるいは弾性表面波素子のチップがステージに強固
に固定され、途中で飛散したりすることはなく、生産性
を大きく向上することができた。このような効果は、圧
電性基板の裏面を研磨せずとも、あるいは意図的に粗面
に形成しても同様に得ることができたが、特に研磨した
場合にはその効果が大きかった。
【0089】この後、弾性表面波素子の第3の誘電体膜
203上に粘着材等の接着層205を塗布し(図16
(e))、この接着層205を介して外囲器204の素
子搭載面とを粘着材205を介して対向配置する(図1
6(f))。さらに外囲器204と弾性表面波素子の入
出力端子とをボンディングワイヤなどにより電気的に接
続し、メタルキャップ等により外囲器を気密封止すれば
弾性表面波装置が完成する。
【0090】このように本発明の弾性表面波素子の製造
方法によれば、LBOなどの水溶性を有する圧電性基板
を用いて、高い生産性で、良好な特性を有する弾性表面
波素子を製造することができる。また本発明の弾性表面
波素子を搭載した弾性表面波装置では、圧電性基板の裏
面に誘電体膜が配設されており、この膜により圧電性基
板が保護されるため、例えば水分などによる圧電性基板
の経時的変化を防止することができる。このため弾性表
面波装置の信頼性を向上することができる。
【0091】
【発明の効果】本発明の弾性表面波素子によれば、圧電
性基板上に第1の誘電体膜と第2の誘電体膜の複数の誘
電体膜を配設することにより、どちらか一方の誘電体膜
に欠陥が生じても、圧電性基板を保護する機能を維持す
ることができ、弾性表面波素子の信頼性を向上すること
ができる。また第2の誘電体膜は、櫛歯状電極あるいは
図示しない反射器などの弾性表面波素子を構成する電極
パターンを覆うように配設されており、製造工程におい
ても、実際に使用されるときにもこれらの電極パターン
を保護することができる。また本発明の弾性表面波素子
は、比誘電率または膜厚を選択した第1の誘電体膜を圧
電性基板上に形成するので、酸や水に溶解する性質を有
する四硼酸リチウムなどからなる圧電性基板を用いるこ
とができる。またこの構造によれば、第1の誘電体膜を
形成して弾性表面波素子の特性を均一にすることができ
るとともに、周波数特性の優れた、信頼性の高い弾性表
面波素子となる。
【0092】本発明の弾性表面波素子の製造方法によれ
ば、圧電性基板上に第1の誘電体膜を形成しても、通過
周波数帯域が減少したり、通過周波数帯域内でのリップ
ルが増大したりすることはなく、特性の優れた弾性表面
波素子を製造することができる。
【0093】また、酸に圧電基板が直接触れない構造と
することにより、従来から用いられているエッチング・
スピードの高い酸をエッチング液として用いアルミニウ
ム電極を形成することができる。また、アルミニウム電
極形成後に圧電基板は、直接外気に晒されないため基板
の吸湿性等に起因するアルミニウム電極の腐食を防止す
ることができる。
【0094】本発明の弾性表面波素子の製造方法によれ
ば、ダイシング中の冷却水などの要因による弾性表面波
素子の飛散がなくなり、また、圧電性基板裏面に誘電体
膜を形成しても通過周波数帯域が減少したり、通過周波
数帯域内でのリップルが増大することはなく、特性の優
れた弾性表面波素子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の弾性表面波素子の構造を概略的に示す
図。
【図2】図1(a)に例示した弾性表面波素子の一部を
拡大して示す図。
【図3】本発明の弾性表面波素子の構造の別の例を概略
的に示す図。。
【図4】第1の誘電体膜102の膜厚と電気機械結合係
数との関係を示す図。
【図5】第1の誘電体膜102を含むLBO基板の電気
機械結合係数k2 と弾性表面波フィルタの周波数特性と
の関係を示す図。
【図6】弾性表面波フィルタの3dB帯域幅とSiO2
膜厚との関係を示す図。
【図7】弾性表面波フィルタの3dB帯域幅と電気機械
結合係数k2 の関係を示す図。
【図8】換算膜厚と電気機械結合係数k2 との関係を示
す図。
【図9】第1の誘電体膜102の比誘電率と所定の電気
機械結合係数k2 を得るために必要な第1の誘電体膜1
02の膜厚との関係を示す図。
【図10】本発明の弾性表面波素子の製造方法を説明す
るための図。
【図11】従来の弾性表面波素子の製造方法を説明する
ための図。
【図12】従来の弾性表面波素子の製造方法を説明する
ための図。
【図13】LBO基板を用いた従来の弾性表面波素子の
製造方法の例を概略的に示す図。
【図14】本発明の弾性表面波素子を外囲器に搭載した
弾性表面波装置の構造の例を概略的に示す図。
【図15】図14に例示した本発明の弾性表面波装置の
断面構造を概略的に示す図。
【図16】本発明の弾性表面波素子の製造方法の例を説
明するための図。
【符号の説明】
100…………弾性表面波素子 101…………圧電性基板 102…………第1の誘電体膜 103…………アルミニウム薄膜 103b………櫛歯状電極 104…………レジスト 105…………第2の誘電体膜 200…………弾性表面波装置 201…………圧電性基板 202…………導体薄膜 202b………櫛歯状電極 203…………第3の誘電体膜 204…………外囲器 205…………接着層

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 四硼酸リチウムからなる圧電性基板と、 この圧電性基板上に配設された第1の誘電体膜と、 前記第1の誘電体膜上に前記第1の誘電体膜を介して前
    記圧電性基板と電気機械結合するように配設された櫛歯
    状電極と、 この櫛歯状電極を覆うように配設された第2の誘電体膜
    とを具備したことを特徴とする弾性表面波素子。
  2. 【請求項2】 前記第1の誘電体膜は前記櫛歯状電極を
    前記圧電性基板上に直接配設したときの電気機械結合係
    数と前記櫛歯状電極を前記第1の誘電体膜上に配設した
    ときの電気機械結合係数とがほぼ等しくなるように選択
    された膜厚および比誘電率を有することを特徴とする請
    求項1に記載の弾性表面波素子。
  3. 【請求項3】 四硼酸リチウムからなる圧電性基板上に
    第1の誘電体膜を形成する工程と、 前記第1の誘電体膜上に櫛歯状電極を形成する工程と、 前記櫛歯状電極を覆うように前記第1の誘電体膜上に第
    2の誘電体膜を形成する工程とを有することを特徴とす
    る弾性表面波素子の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記第1の誘電体膜を形成する工程は、
    前記圧電性基板上を伝搬する弾性表面波の電気機械結合
    係数k2 が0.74%より大きくなるように膜厚および
    比誘電率を選択して形成することを特徴とする弾性表面
    波素子の製造方法。
  5. 【請求項5】 四硼酸リチウムからなり、第1の面と第
    2の面とを有する圧電性基板と、 前記圧電性基板の第1の面に配設された第1の誘電体膜
    と、 前記第1の誘電体膜上に前記第1の誘電体膜を介して前
    記圧電性基板と電気機械結合するように配設された櫛歯
    状電極と、 前記圧電性基板の第2の面に配設された第3の誘電体膜
    とを具備したことを特徴とする弾性表面波素子。
  6. 【請求項6】 前記櫛歯状電極を覆うように配設された
    第2の誘電体膜をさらに具備したことを特徴とする請求
    項5に記載の弾性表面波素子。
  7. 【請求項7】 前記第3の誘電体膜の膜厚は約50nm
    以下であることを特徴とする請求項5乃至請求項6のい
    ずれかに記載の弾性表面波素子。
  8. 【請求項8】 四硼酸リチウムからなり、第1の面と第
    2の面とを有する圧電性基板の前記第1の面と前記第2
    の面とを研磨する工程と、 前記圧電性基板の前記第1の面に導体薄膜を堆積する工
    程と、 前記導体薄膜をパターニングする工程と、 前記圧電性基板の前記第2の面に第3の誘電体膜を堆積
    する工程とを具備したことを特徴とする弾性表面波素子
    の製造方法。
  9. 【請求項9】 四硼酸リチウムからなり、第1の面と第
    2の面とを有する圧電性基板の前記第1の面と前記第2
    の面とを研磨する工程と、 前記圧電性基板の前記第1の面に第2の誘電体膜を堆積
    する工程と、 前記圧電性基板の第1の面に導体薄膜を堆積する工程
    と、 前記導体薄膜をパターニングする工程と、 前記圧電性基板の第2の面に第3の誘電体膜を堆積する
    工程とを具備したことを特徴とする弾性表面波素子の製
    造方法。
  10. 【請求項10】 四硼酸リチウムからなり、複数の素子
    領域を有するウエハの第1の面に導体薄膜を堆積し前記
    素子領域ごとに弾性表面波素子が形成されるようにパタ
    ーニングする工程と、 前記ウエハの第2の面を研磨する工程と、 前記ウエハの第2の面に誘電体膜を堆積する工程と、 前記ウエハの第2の面とステージとを接着手段によりに
    固定する工程と、 前記ウエハを前記素子領域ごとに分離する工程とを具備
    したことを特徴とする弾性表面波素子の製造方法。
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