JPH116039A - 加工性に優れた高珪素鋼板 - Google Patents
加工性に優れた高珪素鋼板Info
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Abstract
炉内雰囲気条件やその変動に拘りなく優れた加工性を示
す高珪素鋼板を得る。 【解決手段】 実質的に、Si:4〜7wt%、B:
0.0004〜0.0020wt%およびFeからな
り、好ましくはC:0〜0.01wt%、Si:4〜7
wt%、B:0.0004〜0.0020wt%、M
n:0〜0.5wt%、P:0〜0.01wt%、S:
0〜0.01wt%、Sol.Al:0〜0.2wt
%、N:0〜0.01wt%、O:0〜0.02wt%
およびFeからなることを特徴とし、粒界に偏析したB
による粒界酸化抑制作用により優れた加工性が得られ
る。
Description
珪素鋼板に関する。
を工業的に製造する方法として、特開昭62−2270
78号等に示される浸珪処理法(CVD法)が知られて
いる。この製造方法は、Si:4wt%未満の薄鋼板を
SiCl4等のSi化合物ガスと高温で反応させること
によりSiを鋼板表層に浸透させ、浸透したSiを板厚
方向に拡散させることにより高珪素鋼板を得る方法であ
る。
原料ガスとしてSiCl4が使用され、このSiCl4は
高温下(通常、1023〜1200℃程度)で下記反応
式により鋼板と反応してSiが鋼板表層に浸透する。 SiCl4+5Fe→Fe3Si+2FeCl2 このようにして鋼板表層に浸透したSiは、SiCl4
を含まない無酸化性ガス雰囲気中で鋼板を均熱処理する
ことにより板厚方向に拡散される。
浸珪処理するための連続浸珪処理ラインは、入側から加
熱帯、浸珪帯、拡散均熱帯及び冷却帯を備え、鋼板を加
熱帯において処理温度まで連続的に加熱した後、浸珪帯
でSiCl4と反応させることによりSiを浸透させ、
次いで、拡散均熱帯においてSiを板厚方向に拡散させ
るための熱処理を連続的に施した後、冷却帯で冷却する
ことでコイル状の高珪素鋼板が製造される。
冷間圧延を経て薄板化する所謂圧延法によっても製造す
ることが可能である。ところで、高珪素鋼板をトランス
やモータ等の部品として使用する場合、剪断機やプレス
機等による部品加工が必要となるが、高珪素鋼板は脆性
であるため加工による割れ等の欠陥が生じ易いという欠
点がある。従来、浸珪処理法により製造される高珪素鋼
板の加工性改善に関して、以下のような提案がなされて
いる。
化を抑制するために炉内の酸素濃度及び露点を一定レベ
ルに保持して操業を行っているが、特開平6−2123
97号では露点−30℃以上に相当する水蒸気濃度の雰
囲気中で浸珪・拡散処理を施すと、鋼板の結晶粒界が酸
化されて製品鋼板の曲げ加工性が劣化するという問題点
が指摘され、このため同号では結晶粒界の酸化を防止
し、加工性の良好な高珪素鋼板を製造する方法として、
炉内雰囲気中の酸素濃度45ppm以下、露点−30℃
以下で、且つ酸素濃度[O2](ppm)と水蒸気濃度
[H2O](ppm)が下記の条件を満足するような炉
内雰囲気に制御することが提案されている。
方法以外に、特開平6−172940号では鋼板中に含
まれる炭素の強い還元力を利用することにより、鋼板の
粒界酸化を抑制し、加工性の良好な高珪素鋼板を製造す
る方法が提案されている。この方法は、Siの浸透・拡
散を行うために1023℃以上の高温に保持された炉内
雰囲気中での鋼板の脱炭作用を利用するもので、上記の
ような高温下で炉内雰囲気中の酸素及び水蒸気を鋼板中
の炭素と反応(鋼板の脱炭反応)させてCOを生成さ
せ、これにより鋼板の結晶粒界の酸化を抑制し、加工性
の良好な高珪素鋼板を得るものである。
囲気の水分濃度や酸素濃度を特開平6−212397号
のような水準に安定させることは実操業上は非常に困難
である。また、特開平6−172940号のように鋼板
中の炭素の還元力を利用する方法では、炉内水分濃度や
酸素濃度が極端に増加し場合には鋼板の脱炭だけでは炉
内水分濃度や酸素濃度を十分に低下させることができ
ず、このため結晶粒界の酸化とそれに伴う加工性の劣化
が生じてしまう。また、炉内水分濃度や酸素濃度が極端
に減少した場合には鋼板は殆んど脱炭しないため、鋼板
中に大量の炭素が残留して炭化物を生成し、磁気特性や
加工性が劣化してしまう。
工性改善を目的としてBを実質的に0.002wt%以
上添加した高珪素鋼板が示されている。しかしながら、
この鋼板ではBは粒界酸化の抑制とは関係のない加工性
向上元素として添加されており、同号の提案ではBによ
る粒界酸化の抑制作用は認めていない。また、一般の焼
鈍ラインや浸珪処理ラインでは雰囲気ガスとして安価な
窒素を用いているが、本発明者らが検討したところによ
れば、特開平6−192797号に示されるようなB添
加量ではBが窒化されてBNが生成し、このBNの生成
よって加工性及び磁気特性が劣化することが判明した。
いても、その優れた磁気特性を発揮させるためには最終
焼鈍が必要であり、この焼鈍時に高珪素鋼板が容易に酸
化するため、浸珪処理法で製造される高珪素鋼板と同様
の加工性の劣化が生じる。したがって本発明の目的は、
製造時の浸珪処理或いは最終焼鈍等における炉内雰囲気
条件やその変動に拘りなく優れた加工性を示す高珪素鋼
板を提供することにある。
を解決すべく、製造時における炉内雰囲気中の酸素濃度
や露点等に拘りなく結晶粒界の酸化が安定して抑制さ
れ、しかも従来技術のような加工性や磁気特性の劣化を
生じない高珪素鋼板を得るための方策について検討を行
い、その結果、鋼板中に微量のBを添加することが極め
て有効であることを知見した。本発明はかかる知見に基
づきなされたもので、その特徴は以下の通りである。
0.0004〜0.0020wt%およびFeからなる
ことを特徴とする加工性に優れた高珪素鋼板。 [2] 実質的に、C:0〜0.01wt%、Si:4〜7
wt%、B:0.0004〜0.0020wt%、M
n:0〜0.5wt%、P:0〜0.01wt%、S:
0〜0.01wt%、Sol.Al:0〜0.2wt
%、N:0〜0.01wt%、O:0〜0.02wt%
およびFeからなることを特徴とする加工性に優れた高
珪素鋼板。
由ととともに説明する。Cは軟磁気特性に有害な元素で
あるが、一方において鋼板の粒界酸化を防ぐ作用があ
る。しかし、Cが0.01wt%を超えると時効現象に
より軟磁気特性が劣化し、また、加工性に悪影響を及ぼ
す炭化物が非常に析出しやすくなる。このためCは0.
01wt%以下(但し、無添加の場合を含む)とするこ
とが好ましい。Siは、その添加量が約6.5wt%で
最も優れた軟磁気特性を示す。Siが4wt%未満では
高珪素鋼板としての所望の軟磁気特性が得られず、ま
た、鋼板の加工性自体も特に問題はない。一方、Siが
7wt%を超えると飽和磁束密度が著しく減少する。こ
のためSiは4〜7wt%とする。
段階での熱間加工性を改善する作用がある。しかし、M
nが0.5wt%を超えると飽和磁束密度の減少が大き
くなる。このためMnは0.5wt%以下(但し、無添
加の場合を含む)とすることが好ましい。Pは鋼板を脆
化させる元素であり、その含有量はできるだけ低いほう
が好ましい。経済性及びPが0.01wt%以下であれ
ば実質的にその影響は無視できることから、Pは0.0
1wt%以下(但し、無添加の場合を含む)とすること
が好ましい。
ともに、軟磁気特性も劣化させるためにその含有量はで
きるだけ低いほうが好ましい。経済性及びSが0.01
wt%以下であれば実質的にその影響は無視できること
から、Sは0.01wt%以下(但し、無添加の場合を
含む)とすることが好ましい。Alは脱酸により鋼を清
浄化する作用を有するとともに、軟磁気特性の面でも電
気抵抗を高める作用を有する。しかし、Siを4〜7w
t%添加する鋼ではSiにより軟磁気特性の向上を図
り、Alは鋼の脱酸作用のみを果たせばよいことから、
Sol.Alは0.2wt%以下(但し、無添加の場合
を含む)とすることが好ましい。
時効により磁気特性の劣化も引き起こすため、その含有
量はできるだけ低いほうが好ましい。経済性及びNが
0.01wt%以下であれば実質的にその影響は無視で
きることから、Nは0.01wt%以下(但し、無添加
の場合を含む)とすることが好ましい。Oは軟磁気特性
を劣化させる元素であり、また加工性にも悪影響を与え
るため、その含有量はできるだけ低いことが望ましく、
経済性の観点からOは0.02wt%以下(但し、無添
加の場合を含む)とすることが好ましい。
化防止効果を発揮し、加工性を向上させる。表1に示す
化学成分を有する高珪素鉄合金スラブを熱間圧延し、得
られた熱延板を脱スケール後0.3mm厚まで圧延し、
最終焼鈍後、加工性を評価するための三点曲げ試験に供
した。最終焼鈍は1200℃×20分と800℃×1時
間の2水準とし、それぞれを窒素ガス雰囲気中と比較の
ためのArガス雰囲気中で行った。三点曲げ試験は図1
に示す方法で行い、試料(鋼板)に対して押し治具を2
mm/minの速度で押し込み、割れが発生するまでの
押し込み量で曲げ加工性を評価した。その結果を、焼鈍
条件毎に図2に示す。なお、図2の横軸のB量は最終焼
鈍後の鋼板の化学分析値である。また、図2において押
し込み量が55mmを超えているものは、試料の破断を
生じなかったものである。
た場合は最終焼鈍後の供試材のB量が0.0004〜
0.0020wt%の範囲において加工性の大幅な向上
が見られ、また特に、0.0004〜0.0016wt
%の範囲において最も良好な加工性が得られている。こ
れに対して、比較のため行ったArガス雰囲気中での焼
鈍の場合には加工性に関してB量の上限はない。また、
各供試材の破面を観察すると、加工性の大幅な向上が見
られた供試料は粒内劈開破壊であり、一方、加工性が劣
る供試料は粒界破壊であった。B量が0.0004〜
0.0020wt%の範囲の供試材では粒界破壊は起き
ていないため、これらの供試材ではBが粒界に偏析して
鋼板の粒界酸化を抑制したものと考えられる。
る場合、Bは最終焼鈍等の過程でB2O3の形で少しずつ
鋼板から脱離していくが、最終焼鈍後の段階で0.00
04wt%以上のB量が確保されていれば、粒界に偏析
したBによる粒界酸化抑制作用が有効に発揮されるもの
と考えられる。一方、最終焼鈍後のB量が0.0004
wt%未満の供試料は粒界破壊しており、この場合には
Bによる粒界酸化抑制作用が有効に発揮されず、その結
果、粒界酸化が生じたと考えられる。
t%超で且つ窒素ガス雰囲気中で焼鈍した供試料の破壊
形態は粒界破壊であり、これらの供試材では粒界に多量
のBNが観察されること、また、Arガス雰囲気中で焼
鈍した場合には最終焼鈍後のB量が0.0020wt%
超であっても加工性の劣化が見られないことからして、
鋼板中に過剰のBが存在する場合には粒界にBNが生成
して加工性を劣化させるものと考えられる。以上の結果
から、本発明ではBは0.0004〜0.0020wt
%、好ましくは0.0004〜0.0016wt%の範
囲とする。本発明の高珪素鋼板には、上述した各成分元
素およびFe以外に不避的不純物元素等の他の元素が微
量含まれることは妨げない。
学成分を含む高珪素鋼板において十分に得られるが、加
工性を劣化させる元素を規制した請求項2に記載の化学
成分を含む高珪素鋼板において、その効果はより顕著な
ものとなる。また、Cは粒界酸化抑制元素であることか
ら、Cを製品鋼板の段階でC:0.01wt%以下とな
るような範囲でBと複合添加することにより、両元素の
相乗効果によってより大きな雰囲気変動等に対応した粒
界酸化抑制効果を得ることができる。
位分布に関係なく得られるものであり、したがって、本
発明は方向性高珪素鋼板および無方向性高珪素鋼板のい
ずれにも適用できる。さらに、本発明の効果は高珪素鋼
板の製造方法に拘りなく得られるものであり、したがっ
て、本発明は浸珪処理法及び圧延法のいずれで製造され
た高珪素鋼板にも適用できる。
wt%の母材鋼板(板厚0.3mm)を窒素ガス雰囲気
の連続浸珪処理ラインにおいて浸珪処理し、Si:4〜
7wt%の高珪素鋼板を作製し、これらを三点曲げ試験
に供した。製品鋼板の結晶粒径はいずれも0.4mmで
あり、Si含有量の違いによる相違は見られなかった。
図3に、製品鋼板のB量と三点曲げ試験での押し込み量
との関係を調べた結果を示す。なお、図3のB量は浸珪
処理後の鋼板の化学分析値である。三点曲げ試験は図2
に関する試験と同様の方法で行った。なお、図3におい
て押し込み量が55mmを超えているものは、試料の破
断を生じなかったものである。
る押し込み量は製品鋼板のSi含有量によって異なり、
Si含有量が多くなるにしたがって加工性が劣化するた
め、加工性の評価は各Si含有量別に行う必要がある。
同図によれば、いずれのSi含有量においても製品鋼板
のB量が0.0004〜0.0020wt%の領域で加
工性が顕著に向上している。
高珪素鉄合金スラブを熱間圧延し、得られた熱延板を脱
スケール後0.3mm厚まで圧延し、最終焼鈍後、三点
曲げ試験に供した。最終焼鈍は、炉内露点を−60℃、
−45℃、−30℃の3水準にそれぞれ調整した窒素ガ
ス雰囲気中において1200℃×20分の条件で行っ
た。三点曲げ試験は図2に関する試験と同様の方法で行
った。表4及び表5に焼鈍前後の鋼板のB量及びC量の
分析値と三点曲げ試験による加工性の評価結果を示す。
加工性の評価は、三点曲げ試験における押し込み量が2
0mm超のものを“○”、20mm以下のものを“×”
とした。
る元素としてCのみを添加した場合(鋼種d,鋼種e,
鋼種f)は、露点のレベルによって加工性が大きく左右
され、これらは広い範囲の露点変動に対応できる鋼種で
はないことが判る。例えば、露点が−30℃の雰囲気で
粒界酸化を抑制するためには鋼種fのC量でも不十分で
あり、さらに多量のCを添加する必要がある。しかし、
多量のCを添加した鋼種を露点が−60℃の雰囲気で焼
鈍した場合、炭化物が多量に生成し加工性を劣化させ
る。
てBのみを添加した場合(鋼種a,鋼種b,鋼種c)
は、Cのみを添加した場合よりも安定して加工性の向上
効果が認められる。特に、鋼種bは露点−60℃〜−3
0℃のいずれの雰囲気においても加工性の良好な製品が
得られる。これは、BはCに較べて焼鈍中に減少する
(鋼板中からB2O3、COの形態で脱離する)速度が遅
いため、雰囲気の露点の変動に強いためであると考えら
れる。
(焼鈍後の鋼板)のB量が0.0004wt%未満のも
のは粒界酸化を生じ、また、同じくB量が0.0020
wt%を超えるものは粒界にBNが生成し、いずれも加
工性が劣っている。また、B及びCを析出物(炭化物、
BN)が生成しない範囲で複合添加することにより、−
30℃よりも更に高い露点で焼鈍しても良好な加工性の
高珪素鋼板を得ることができる。
は、製造時における炉内雰囲気の露点や雰囲気ガスの種
類等に拘りなく優れた加工性を示す。このため製品鋼板
の二次加工を行う際に安価な手法を用いることが可能に
なる等、工業上有用な効果が得られる。
方法を示す説明図
性)との関係を焼鈍条件をパラメータにして示すグラフ
量と加工性(三点曲げ特性)との関係を高珪素鋼板のS
i含有量をパラメータにして示すグラフ
Claims (2)
- 【請求項1】 実質的に、Si:4〜7wt%、B:
0.0004〜0.0020wt%およびFeからなる
ことを特徴とする加工性に優れた高珪素鋼板。 - 【請求項2】 実質的に、C:0〜0.01wt%、S
i:4〜7wt%、B:0.0004〜0.0020w
t%、Mn:0〜0.5wt%、P:0〜0.01wt
%、S:0〜0.01wt%、Sol.Al:0〜0.
2wt%、N:0〜0.01wt%、O:0〜0.02
wt%およびFeからなることを特徴とする加工性に優
れた高珪素鋼板。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP16944197A JP4304728B2 (ja) | 1997-06-11 | 1997-06-11 | 高珪素鋼板 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP16944197A JP4304728B2 (ja) | 1997-06-11 | 1997-06-11 | 高珪素鋼板 |
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Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH116039A true JPH116039A (ja) | 1999-01-12 |
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ID=15886673
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP16944197A Expired - Fee Related JP4304728B2 (ja) | 1997-06-11 | 1997-06-11 | 高珪素鋼板 |
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JP (1) | JP4304728B2 (ja) |
-
1997
- 1997-06-11 JP JP16944197A patent/JP4304728B2/ja not_active Expired - Fee Related
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