JP3840535B2 - 高延性電縫鋼管の製造方法 - Google Patents

高延性電縫鋼管の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は優れた加工性が要求される自動車用、機械構造用電縫鋼管に関し、特定の成分からなる鋼と、特定の高周波電縫溶接条件および素管の熱処理条件により得られる加工性の優れた電縫鋼管の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ハイドロフォ−ム技術は複雑形状部品の一体化と高精度化が可能なことから、自動車の軽量化およびコストダウンが可能な新車体構造実現の技術として期待されている。このような背景のもと電縫鋼管を素材とし、ハイドロフォ−ムにより成形した足廻り部品およびボディ−部品の適用が増加しつつある。ハイドロフォ−ムは軸力+内圧を高精度に制御することにより複雑形状部品の一体化と高精度化が可能な技術である。よって、ハイドロフォ−ム用の電縫鋼管は複雑な加工に耐え得る良好な延性を有することが重要であり、特に張り出し性の指標となる均一伸び、n値の高い材料が適しているものと考えられる。
【0003】
これまで薄鋼板分野において、同程度の強度でありながら延性を向上させる、すなわち強度−延性バランスの向上を目的とした研究開発が数多く行われてきた。過去において、飛躍的に強度−延性バランスを向上させたのは、フェライトとマルテンサイトの混合組織からなるいわゆる二相鋼である。例えば、特開昭51−12317号公報に熱延後急冷することにより得られる二相鋼の技術、特公昭57−45454号公報には連続焼鈍により得られる技術がある。最近では、特開昭60−43430号公報に低合金系ながら15%以上の残留オ−ステナイトを含有し、その変態誘起塑性を利用して高延性・高強度の鋼板が得られる技術がある。
【0004】
一方、このような薄鋼板を電縫鋼管用鋼板として使用した場合、Si、Mnの添加量が高いため、電縫溶接部に粒状の反応生成物が発生し溶接欠陥が生ずる。特に、ハイドロフォ−ム加工は厳しい加工状態となることから、電縫溶接部の溶接欠陥は致命的となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ハイドロフォ−ム用の電縫鋼管は複雑な加工に耐え得る良好な延性を有することが重要である。本発明は加工性に優れた電縫鋼管の製造方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は重量%で、
C :0.05〜0.25 Si:0.3〜2.5
Mn:0.5〜3.0 S :0.005以下
P :0.15以下 Al:0.005〜0.10
N :0.0050以下、残部Fe及び不可避不純物
からなる鋼を熱延にて750℃以下の捲取温度で捲取り、これらの鋼帯を酸素濃度100ppm以下の溶接雰囲気で高周波電縫溶接を施し、その素管をAC1変態点温度〜AC3変態点温度に加熱し20分以下保持した後、0.5℃/s以上の冷却速度でMS 変態点温度+100℃〜MS変態点温度の温度範囲に冷却し、その温度で30s〜300s保持し、それ以降は室温まで空冷することを特徴とする加工性に優れた電縫鋼管の製造方法および
重量%で、
C :0.05〜0.25 Si:0.3〜2.5
Mn:0.5〜3.0 S :0.005以下
P :0.15以下 Al:0.005〜0.10
N :0.0050以下、 Ca:0.0002〜0.0020
残部Fe及び不可避不純物
からなる鋼を熱延にて750℃以下の捲取温度で捲取り、これらの鋼帯を酸素濃度100ppm以下の溶接雰囲気で高周波電縫溶接を施し、その素管をAC1変態点温度〜AC3変態点温度に加熱し20分以下保持した後、0.5℃/s以上の冷却速度でMS 変態点温度+100℃〜MS変態点温度の温度範囲に冷却し、その温度で30s〜300s保持し、それ以降は室温まで空冷することを特徴とする加工性に優れた電縫鋼管の製造方法である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の特徴は残留オ−ステナイトが5〜10%と残部マルテンサイトおよびベイナイトおよびフェライトからなる複合組織を有することを特徴とする加工性の優れた鋼からなり、電縫鋼管を製造する方法としては電縫溶接条件を限定することにより溶接欠陥を防止することと光輝炉による熱処理条件を限定することにより残留オ−ステナイトが5〜10%と残部マルテンサイトおよびベイナイトおよびフェライトの複合組織を生成させて伸びを改善させるこにある。すなわち、上記の鋼を高周波電縫溶接し造管するに際し、電縫溶接部でのSi、Mn系の反応生成物の発生を防ぐために酸素濃度100ppm以下の溶接雰囲気で溶接することおよび鋼管を光輝炉にて、AC1変態点温度〜AC3変態点温度に加熱し20分以下保持した後、0.5℃/s以上の冷却速度でMS変態点温度+100℃〜MS変態点温度の温度範囲に冷却し、その温度で30s〜300s保持し、それ以降は室温まで空冷することを特徴とする加工性に優れた電縫鋼管の製造方法である。
【0008】
以下に本発明の加工性に優れた電縫鋼管とその製造方法について詳細に説明する。はじめに鋼の化学成分の限定理由について説明する。
【0009】
Cは、残留オ−ステナイト相生成のため重要な元素で、0.05%未満では十分な量の残留オ−ステナイトを得ることができずそのため良好な加工性を発揮することができない。しかし、Cが0.25%を越えると電縫溶接部の最高硬さが母材と比較して高くなりすぎハイドロフォ−ムのような厳しい加工には好ましくない。したがって、Cの上限を0.25%とした。
【0010】
Siはオ−ステナイト中へのCの濃化を促進し、残留オ−ステナイトの生成を容易にする作用があり、0.3%以上のSi添加が必要である。しかし、過剰なSi添加は鋼の脆化をまねき、強度・延性バランスを劣化させることになる。さらに電縫溶接部にSi系の反応生成物が発生し電縫溶接部の特性を劣化させる。したがってSi添加の上限を2.5%とする。
【0011】
Mnはフェライト・パ−ライト変態のノ−ズを長時間側へ移行するため、ベイナイト変態による残留オ−ステナイトの生成には不可欠な元素である。しかもCと同様にオ−ステナイト安定化元素であって、優れた強度・延性バランスを得るために必要である。0.5%未満であると十分なオ−ステナイトを確保できない。一方、過剰に添加すると鋼板の延性が劣化する。よって、Mn添加の上限を3.0%とする。
【0012】
SはMnSを形成し、靱性およびプレス加工性を低下する元素である。特に高強度とした場合、靱性およびプレス加工性の劣化の影響が強く現れやすい。そのため可能なかぎり低くする必要がある。そのためSは0.005%以下にする。
【0013】
Pは鋼の強化のために有効であるが、0.15%を越えて添加すると電縫溶接性を阻害する。Pは含有していなくてもよい。
【0014】
Alは脱酸のために必要であるが、過剰に添加するとAl23を中心とした脱酸生成物の残存する量が増える。特に、本発明の場合のように電縫鋼管に用いられる場合、電縫溶接部での巨大な介在物は致命的欠陥となるので、その上限を0.10%とした。
【0015】
Nは鋼の耐時効性を最も劣化させる元素であり、含有量が少ないほど好ましく、その上限を0.0050%とした。
【0016】
本発明ではCaは必須成分ではないが、選択成分としてCaを0.0002〜0.0020%含有させると上記効果がより明瞭に発揮される。
【0017】
次に、鋼の熱延条件の限定理由について説明する。熱延での捲取温度は本発明において重要であり、750℃以下で捲取る必要がある。これは熱延原板組織をラメラ−間隔の小さいパ−ライトとするか、またはラメラ−間隔の小さいパ−ライトとベイナイトの混合組織とするためである。これらの組織は光輝炉による二相域加熱温度でFeC3またはパ−ライトが容易に溶解し、速やかに二相域平衡状態に達することができる。捲取温度が750℃以上ではパ−ライトのラメラ−間隔が大きくなり二相域加熱でパ−ライトが溶解し難くなる。よって、熱延での捲取温度は750℃以下にする必要がある。
【0018】
次に電縫鋼管の造管工程および光輝炉による熱処理条件について説明する。
【0019】
まず最初に、上記に説明した熱延原板の鋼帯の造管工程について説明する。鋼帯を高周波にて電縫溶接し素管を形成する。しかし、上記に説明した鋼帯はSiおよびMnの添加量が高い。これらの鋼を高周波にて加熱溶融すると、電縫溶接面にはFeO系の酸化物が生成され、さらに鋼中のSi、Mnなどにより還元されSiO2、MnOなどの反応生成物が生成される。これらの反応生成物は電縫溶接部に微少な粒状酸化物として残存し、電縫溶接部の特性を劣化させる。このような溶接欠陥を防ぐためには溶接雰囲気を酸素濃度100ppm以下にし、FeO系の酸化物の生成を抑制することが必須となる。このように上記に説明した鋼帯を電縫鋼管として造管する場合、電縫溶接雰囲気を酸素濃度100ppm以下にすることで溶接欠陥の無い電縫溶接部の優れた電縫鋼管の製造が可能となる。
【0020】
次に電縫鋼管の光輝炉での熱処理条件の限定理由について説明する。
【0021】
まず、電縫鋼管はAC1変態点温度〜AC3変態点温度の温度範囲において20分以下保持する必要がある。これは、フェライトとオ−ステナイトの二相の状態にする必要があるためである。加熱温度がAC3変態点温度以上であると、加熱中全オ−ステナイト状態になり、さらにオ−ステナイトが粗大化するために最終的にオ−ステナイトを残留させることが困難となり所望の特性が得られない。また、加熱温度がAC1変態点温度以下であると、オ−ステナイトが得られない。また、二相域での加熱保持時間は20分以上では効果が飽和し、かつ生産性も落とすので、二相域での加熱保持時間は20分以下とする。その後、冷却速度を0.5℃/s以上とし、MS変態点温度+100℃〜MS点温度の温度範囲に冷却する必要がある。0.5℃/s以上の冷却速度は冷却途上でのパ−ライトの変態が避けられるとともに、その後のオ−ステンパ−を行うための前段階の処理として重要な要件である。冷却速度が0.5℃/s未満であると、オ−ステナイトは炭化物の析出を伴う変態をおこしてしまう。よって、所望の強度延性特性が得られない。0.5℃/s以上の冷却終了温度はMS変態点温度+100℃〜MS変態点温度の範囲までとする。これは最適なオ−ステンパ−処理を行うことによりオ−ステナイトを残留させるために必要な条件である。冷却終了温度がMS変態点温度未満であると、オ−ステナイトはマルテンサイトに変態してしまい、安定なオ−ステナイトが確保されないばかりか硬質化してしまい所望の特性が得られなくなる。また、冷却終了温度がMS変態点温度+100℃以上であると、オ−ステナイト中のCは、炭化物生成によりオ−ステイトから排出され所望の特性が得られない。さらに、該温度範囲での保持時間を30s〜300sにする必要がある。これはベイナイト変態の利用によるオ−ステンパ−処理であり、この段階でベイナイト生成と同時にCがオ−ステナイトに富化し、オ−ステナイトを安定化させる。保持時間が30s未満ではオ−ステナイトが十分安定化せず、また300sを超えるとベイナイトの比率が増大しオ−ステナイトが減少するので保持時間を30s〜300sと限定する。
【0022】
【実施例】
【0023】
【表1】
Figure 0003840535
【0024】
【表2】
Figure 0003840535
【0025】
【表3】
Figure 0003840535
第1表に鋼の化学成分、MS変態点温度および熱延捲取温度を示す。
【0026】
第2表に光輝炉での熱処理条件を示す。
【0027】
第3表に本発明により製造された電縫鋼管および比較で製造された電縫鋼管の残留オ−ステナイト量、JIS12B号弧状引張試験での機械的特性を示す。第3表から明らかのように、本発明により製造された電縫鋼管においては、残留オ−ステナイト量が多く、また高強度でありながらEL、均一伸びが非常に高い。また、電縫溶接部での溶接欠陥もない。
【0028】
【発明の効果】
本発明法により製造された電縫鋼管は、残留オ−ステナイトが5〜10%と残部マルテンサイトおよびベイナイトおよびフェライトからなる複合組織を有することを特徴とし加工性に優れている。今後、ハイドロフォ−ムのような複雑な加工に耐え得る高い延性を有する電縫鋼管の要求がますます増える。従って、本発明により製造された電縫鋼管の効果は極めて大きいものである。

Claims (2)

  1. 重量%で、
    C :0.05〜0.25 Si:0.3〜2.5
    Mn:0.5〜3.0 S :0.005以下
    P :0.15以下 Al:0.005〜0.10
    N :0.0050以下、残部Fe及び不可避不純物
    からなる鋼を熱延にて750℃以下の捲取温度で捲取り、これらの鋼帯を酸素濃度100ppm以下の溶接雰囲気で高周波電縫溶接を施し、その素管をAC1変態点温度〜AC3変態点温度に加熱し20分以下保持した後、0.5℃/s以上の冷却速度でMS 変態点温度+100℃〜MS変態点温度の温度範囲に冷却し、その温度で30s〜300s保持し、それ以降は室温まで空冷することを特徴とする加工性に優れた電縫鋼管の製造方法。
  2. 重量%で、
    C :0.05〜0.25 Si:0.3〜2.5
    Mn:0.5〜3.0 S :0.005以下
    P :0.15以下 Al:0.005〜0.10
    N :0.0050以下、 Ca:0.0002〜0.0020
    残部Fe及び不可避不純物
    からなる鋼を熱延にて750℃以下の捲取温度で捲取り、これらの鋼帯を酸素濃度100ppm以下の溶接雰囲気で高周波電縫溶接を施し、その素管をAC1変態点温度〜AC3変態点温度に加熱し20分以下保持した後、0.5℃/s以上の冷却速度でMS 変態点温度+100℃〜MS変態点温度の温度範囲に冷却し、その温度で30s〜300s保持し、それ以降は室温まで空冷することを特徴とする加工性に優れた電縫鋼管の製造方法。
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