JP5396752B2 - 靭性に優れたフェライト系ステンレス鋼およびその製造方法 - Google Patents

靭性に優れたフェライト系ステンレス鋼およびその製造方法 Download PDF

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本発明は、自動車や2輪車の排気管やプラントの排気ダクト、熱交換器、燃料電池などの高温環境下で使用される部材用として好適な、耐熱性と成形性とを兼ね備えたフェライト系ステンレス鋼に関する。
エキゾーストマニホールド,排気パイプ,コンバータケース,マフラー等に代表される自動車用排気部材には,高温環境で特性を保つための耐熱性と,限られたスペースに配置されるための成形性が要求される。このような用途に、室温において軟質で成形性に優れ、高温耐力も比較的高い、NbとSiを含むフェライト系ステンレス鋼、例えば、Type429Nb鋼(14Cr-0.9Si-0.4Nb鋼)が多く使用されている。
しかし、自動車排気ガス規制の強化により、排気ガスが高温化すると、前記したType429Nb鋼では高温耐力が不足するという問題がある。このような問題に対しては、Type429Nb鋼よりも合金元素の添加量を増加させたSUS444鋼(18Cr-2Mo-Nb鋼)などが使用される。
しかし、SUS444鋼は、Type429Nb鋼に比べて、室温における加工性が低下する上に、靱性が乏しいために加工時に脆性破壊を起こし易いという問題がある。これらの対策として、析出物量を抑制することで靭性を確保した技術がある。
例えば、特許文献1では、最終仕上げ焼鈍において、加熱後600℃までの冷却速度を、2℃/s以上とすることで、靭性の低下を抑制する技術が開示されている。しかしながら、Nb含有量が多い場合は、析出量も多くなり、2℃/s以上で冷却を行っても、析出を十分に抑制できずに靱性が低下する場合がある。
特許文献2は、最終焼鈍後の冷却速度をNb含有量に応じて変更することで靭性を改善する技術である。しかしながら、最終焼鈍後の冷却速度を早くするだけでは、析出抑制が十分ではないケースもある。
特許第2923825号公報 特願2006−18331号
上述のような技術を用いても加工の程度によっては脆性破壊を十分抑制するまでには至っていないという問題がある。そこで、本発明は、掛かる事情に鑑み、自動車用排気系部品に要求される、高温耐力と靭性を両立させたフェライト系ステンレス鋼およびその製造方法を提案することを目的とする。
発明者等はフェライト系ステンレス鋼の靭性に及ぼす析出物の関係について鋭意研究を重ね、粒界に析出する析出物の量を適切に制御することにより、靭性に優れるフェライト系ステンレス鋼を得られることを知見した。その要旨は、以下の通りである。
第一の発明は、冷延鋼板の任意の切断面に出現する結晶粒及び析出物を電子顕微鏡で観察して、結晶粒界上析出物の占有率を、結晶粒界上において各析出物の占める長さと結晶粒界長さとの比として、式(1)で算出し、該占有率を0.4以下としたことを特徴とする靱性に優れたフェライト系ステンレス鋼である。
Figure 0005396752
第二の発明は、質量%で、C<0.020%、Si≦0.25%、Mn<2.00%、P<0.060%、S<0.008%、Cr:12.0%以上、20.0%未満、Ni<1.00%、Nb:10×(C+N)%以上、0.80%未満、N<0.020%、B:0.0005%以上、0.0100%未満を含み、残部はFeおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする第一の発明に記載の靱性に優れたフェライト系ステンレス鋼である。
第三の発明は、更に質量%で、Mo<3.00%、W<5.00%、Ti<0.5%、Zr<0.5%、Co<3%、Cu<2.00%、V<0.5%の1種または2種以上を含有することを特徴とする第二の発明に記載の靱性に優れたフェライト系ステンレス鋼である。
第四の発明は、質量%で、C<0.020%、Si≦0.25%、Mn<2.00%、P<0.060%、S<0.008%、Cr:12.0%以上、20.0%未満、Ni<1.00%、Nb:10×(C+N%)以上、0.80%未満、N<0.020%、B:0.0005%以上、0.0100%未満を含み、残部はFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材を用いた、熱間圧延、熱延板焼鈍および冷延板焼鈍工程において、900〜700℃に曝される時間の合計を150秒以下、且つ熱延板焼鈍および冷延板焼鈍後の900℃から700℃への冷却時間の合計を20秒以下として製造することを特徴とする靱性に優れたフェライト系ステンレス鋼の製造方法である。
第五の発明は、更に質量%で、Mo<3.00%、W<5.00%、Ti<0.5%、Zr<0.5%、Co<3%、Cu<2.00%、V<0.5%の1種または2種以上を含有することを特徴とする第四の発明に記載の靱性に優れたフェライト系ステンレス鋼の製造方法である。
第六の発明は、さらに、質量%で、Cu:0.8〜2.0%を含む鋼素材の熱延板焼鈍および冷延板焼鈍後の700℃から500℃への冷却時間の合計を20秒以下とすることを特徴とする第四の発明に記載の靱性に優れたフェライト系ステンレス鋼の製造方法である。
第七の発明は、さらに、質量%で、Cu:0.8〜2.0%を含み、且つMo<3.00%、W<5.00%、Ti<0.5%、Zr<0.5%、Co<3%、V<0.5%の1種または2種以上を含有する鋼素材の熱延板焼鈍および冷延板焼鈍後の700℃から500℃への冷却時間の合計を20秒以下とすることを特徴とする第四の発明に記載の靱性に優れたフェライト系ステンレス鋼の製造方法である。
本発明によれば、鋼の結晶粒界上において析出物の占める割合を制御することで、靱性及び高温強度に優れたフェライト系ステンレス鋼が得られる。そして、本発明のフェライト系ステンレス鋼は、靱性と高温強度に優れるため、例えば、自動車用排気系部材として好適な部材が安価に得られ、産業上、大きな効果をもたらすことができる。また、本発明は、自動車用排気系部材と同様の特性が要求され、主に高温環境で使用されるような種々の部材としても好適であり、工業的価値は極めて高い。
以下、本発明を詳細に説明する。
1.実験結果について
まず、本発明者等が行った基礎的な実験結果について説明する。なお、本明細書において、鋼の成分を示す%は全てmass%をあらわす。
0.01%C−0.01%N−0.1%Si−15%Cr−0.5%Nb−0.0015%B鋼をベースとした100Kg鋼塊を種々溶製した後、種々の条件で熱間圧延、熱延板焼鈍、酸洗、冷間圧延、冷延板焼鈍を順次施し、板厚1.5〜2.5mmの冷延焼鈍板を作製した。得られた冷延焼鈍板について以下の方法で評価した。
(a)結晶粒界上析出物の占有率
得られた、冷延焼鈍板の圧延方向に垂直な任意の切断面から試料を採取し、析出物3の分布を電子顕微鏡で観察を行った。図3に走査型電子顕微鏡による結晶粒界上析出物の観察結果の一例を示す。結晶粒界長さ3mmに相当する視野を詳細に観察し、結晶粒界2の長さと結晶粒界上に析出している析出物3の長さを測定した。
ここで、結晶粒界2の長さは、図3に示すように、電子顕微鏡の1視野に出現した全結晶粒界長さの合計値(A)+(B)+(C)である。そして、結晶粒界上析出物の占有率を式(1)により算出した。
Figure 0005396752
(b)靱性
冷延焼鈍板から、JISZ2242の規定に準拠して、Vノッチの方向を板幅方向とするVノッチシャルピー試験片を採取し、−80〜+20℃の範囲でシャルピー試験を実施し、延性脆性破面遷移温度を調査した。ここで、本発明に於いて「靱性に優れる」とは、延性脆性破面遷移温度が−30℃未満になることをいう。また、特に靱性に優れるものは延性脆性遷移温度が−60℃未満になることをいう。
(c)高温強度
冷延焼鈍板から、JISZ2201に規定された13号B試験片を各2本ずつ採取し、JISG0567の規定に準拠して、試験温度900℃、歪速度0.3%/minの条件で高温引張試験を実施した。900℃における0.2%耐力を測定し、2本の平均値を求めた。
シャルピー試験結果を結晶粒界上析出物の占有率の調査結果との関係で整理し、図2に示す。図2は、得られた冷延焼鈍板の靱性に及ぼす結晶粒界上析出物の占有率の影響の一例を示すものである。
結晶粒界上析出物の占有率を0.4以下に制御することで、延性脆性波面遷移温度(図中DBTTと略記)は−30℃未満となり、良好な靭性となることがわかる。従って発明者等は、フェライト系ステンレス鋼の結晶粒界上析出物の占有率を0.4以下とすることにより、本発明の課題である、靭性に優れたフェライト系ステンレス鋼を得ることを見出した。
そこで、発明者等は、以上の知見に基づき、フェライト系ステンレス鋼を以下に示す成分組成、製造方法に制御することで、結晶粒界上析出物の占有率を0.4以下とした、靭性に優れたフェライト系ステンレス鋼を提供するものである。
2.成分組成について
本発明に係る靭性に優れたフェライト系ステンレス鋼の成分組成の限定理由は、以下の通りである。なお、成分%は、全て質量%を意味する。
C:0.020%未満
Cは鋼の強度を増加させる元素であるが、0.020%以上含むと靱性および成形性の低下が顕著となるため、0.020%未満とした。成形性を考慮すると、C含有量は低いほど好ましく、より好適には0.008%以下である。
Si:0.25%以下
Siは本発明において重要な元素である。Siは合金元素の析出を促進する元素であり、Siを低減することで結晶粒界上析出物の占有率は減少する。Siを低減するほどその効果は大きいが、低減しすぎると耐酸化性の低下を招く。好ましくは0.01%以上0.1%未満である。
Mn:2.00%未満
Mnは脱酸剤としての作用を有するとともに、酸化皮膜の密着性を向上させる元素である。しかしながら、過剰に添加されると粗大なMnSを形成し、成形性、耐食性を低下させる。このため、本発明では2.00%未満に限定した。より好適には1.00%未満である。
P:0.060%未満
Pは成形性,靱性を低下させる元素であり,できるだけ低減するのが望ましいが,脱Pコストの観点から,0.060%未満に限定した。より好適には0.030%未満である。
S:0.008%未満
Sは耐食性を低下させる元素であるであり、できるだけ低減するのが望ましいが、脱Sコストの観点から、0.008%未満に限定した。より好適には0.005%未満である。
Cr:12.0%以上、20.0%未満
Crは耐食性、耐酸化性を向上させる元素であり、このような効果は12.0%以上の添加で認められる。ただし、過剰に添加されると靱性を低下させるので、20.0%未満に限定した。より好適には13.0%以上、16.0%未満である。
Ni:1.00%未満
Niは靱性を向上させる元素であるが、過剰な添加は原料コストの増大を招くので1.00%未満に限定した。より好適には0.01%以上、0.80%未満である。
Nb:10×(C+N)%以上、0.80%未満
NbはC、Nを固定することにより、鋼の成形性や耐食性等を向上させ、また鋼に固溶することにより、高温強度を高める効果を有する。このような効果は、10×(C+N)%以上の含有で認められる。しかしながら、過剰な添加は靱性の低下を招くため、0.80%未満に限定した。より好適には、0.20%以上、0.70%未満である。
N:0.020%未満
Nは鋼の靱性および成形性を低下させる元素であり、0.020%以上含むと、靱性および成形性の低下が顕著となる。このため、0.020%未満に限定した、より好適には0.010%未満である。
B:0.0005%以上、0.0100%未満
Bは本発明において重要な元素である。Bは加工性、特に2次加工性を向上させる元素として知られているが、本明細書において定義する粒界上析出物占有率を低減する効果を持つ。このような効果は、0.0005%以上で顕著となるが、0.0100%以上添加するとBNが析出し、加工性が低下するため、0.0100%未満に限定する。より好適には0.0005%以上、0.0050%未満である。
Mo:3.00%未満、W:5.00%未満
Moは鋼に固溶することにより高温強度および耐食性を高める。このような効果は、0.80%以上の添加で認められるが、3.00%以上含むと成形性が低下し、原料コストの増大も招くため、3.00%未満に限定した。より好適には1.00%以上、2.50%未満である。WもMo同様の効果を有するが、好適範囲が異なる。5%以上添加で成形性が低下する。好適範囲は1.00%以上、3.00%未満である。
Ti:0.5%未満、Zr:0.5%未満
Ti、Zrは成形性を向上させる元素であり、NbよりC、Nとの親和力が強いため、Nbの固溶量を増加させる。このような効果は、0.02%以上で顕著となるが、0.50%以上添加すると粗大なTi(C,N)が析出し、表面性状を劣化させるため、0.50%未満に限定する。より好適には0.02%以上、0.40%未満である。
Co:3%未満
Coは、高温強度を向上させる元素であり、必要に応じて含むことができる。このような効果は、0.50%以上の添加で顕著となるが、3.00%以上添加すると、鋼が脆化するため、3.00%未満に限定する。より好適には、0.80%以上、2.00%未満である。
Cu:2.00%未満
Cuは、成形性および耐食性を向上させる元素である。このような効果は、0.05%以上の添加で顕著となるが、2.00%以上の過剰な添加により脆化するため、2.00%未満に限定する。より好適には、0.05%以上、1.5%未満である。
また、Cuは自動車排気系部品などに与えられる熱サイクルにおいて、固溶と析出を繰り返すことで、長時間にわたって疲労寿命を向上する効果を有する。鋼素材中に0.8%未満の添加では、その効果が現れにくく、2.0%を超えて添加すると脆化するため、0.8〜2.0%の範囲が好ましい。
V:0.5%未満
Vは、成形性を向上させる元素である。このような効果は、0.05%以上で顕著となるが、0.50%以上添加すると、粗大なV(C,N)が析出し、表面性状を劣化させるため、0.50%未満に限定する。より好適には、0.05%以上、0.40%未満である。
3.製造方法について
本発明に係る靭性に優れたフェライト系ステンレス鋼の製造方法は、含有成分を上述した成分組成の範囲に限定し、熱延板、冷延板の焼鈍条件、冷延圧下率、熱間仕上圧延における温度範囲を制御する点以外に関しては、特に限定されるものではなく、通常公知の方法がすべて適用できる(以下、各製造プロセスで使用する装置については、公知につき図示しない)。
例えば、製鋼工程は、転炉、電気炉等で上記した適正組成範囲に調整した溶鋼を溶製し、強攪拌・真空酸素脱炭処理(SS−VOD法という)により2次精錬を行って、溶鋼を溶製するのが好適である。鋳造方法は、生産性、品質の面から連続鋳造が好ましい。鋳造により得られた鋼鋳片(スラブ等)の圧延工程は、必要により再加熱し、熱間圧延し、900〜1100℃で熱延板焼鈍したのち酸洗するのが良い。酸洗された熱延板は、冷間圧延、仕上げ焼鈍、酸洗の各工程を順次経て、冷延焼鈍板とするのが好適である。以下に本発明を実施するにあたり好ましい条件を示す。
(a)加熱炉抽出後の熱間圧延、熱延板焼鈍および冷延板焼鈍工程において、900〜700℃に曝される時間の合計が150秒以下、且つ焼鈍後の900℃から700℃への冷却時間の合計が20秒以下とするのが、本発明の必須事項である。
本発明において、Nb含有金属間化合物などが析出し易い、900〜700℃の間に曝される時間を、可能な限り低減することが重要である。特に冷却工程における冷却時間を短くすることが重要であるが、焼鈍工程における昇温時間を短くすることも重要であることが明らかとなった。
また、詳細な原因については研究中であるが、析出サイトと析出量は前工程の影響を受け易いので、冷延焼鈍板に於いて結晶粒界上析出物の占有率を0.4以下の範囲内とするためには、析出物が析出し易い温度域の合計の時間を制御する必要がある。
図1に、熱間圧延、熱延板焼鈍および冷延板焼鈍工程において、900〜700℃に曝される時間の合計(秒)と熱延板焼鈍および冷延板焼鈍後における900℃から700℃への冷却時間の合計(秒)および結晶粒界上析出物の占有率の関係を示す。なお、冷延板圧下率は60%とした。本結果によれば、結晶粒界上析出物の占有率を0.4以下にするためには、熱間圧延、熱延板焼鈍および冷延板焼鈍工程において、900〜700℃に曝される時間の合計を150秒以下、且つ熱延板焼鈍および冷延板焼鈍後における900℃から700℃への冷却時間の合計を20秒以下とする必要があることが判る。
また、Cuを0.8〜2.0%含む場合は、熱延板焼鈍および冷延板焼鈍後の700℃から500℃への冷却時間の合計を20秒以下とすることで冷延板の靱性をより優れたものとすることが可能となる。700℃以下で保持される時間は小さいほど好ましい。
(b)冷間圧延について
冷間圧延に於いて、あまり大きな歪を導入すると、最終焼鈍における析出量が増加したり、大きすぎる圧下率は鋼板の異方性を大きくする。また圧下率が低いと十分な再結晶組織を得られない。従って、好ましい冷間圧下率は40〜75%である。
(c)焼鈍条件について
熱延板焼鈍および冷延板焼鈍に於いて、高温に曝される時間が長いと、結晶粒の粗大化を招き、靭性を低下させる恐れがある。従って、1000℃以上に曝される時間は短いほど良く、好ましくは300秒以下である。
表1及び表2に示す成分組成を有する種々のフェライト系ステンレス鋼を溶製した。得られた鋼塊を1200℃に加熱後、熱間圧延により板厚5〜6mmの熱延板とし、900〜1200℃の熱延板焼鈍および酸洗処理を施した。次いで、冷間圧延により板厚1.5〜2.5mmの冷延板とし、900℃〜1200℃の仕上げ焼鈍を行った。
このようにして得られたフェライト系ステンレス鋼の冷延焼鈍板について試験用の試料を採取して、以下に記載の評価方法に基づいて、シャルピー試験、高温引張試験、電子顕微鏡観察をおこなった。
(a)靱性評価
冷延焼鈍板から、JISZ2242の規定に準拠して、Vノッチの方向を板幅方向とするVノッチシャルピー試験片を採取し、−80〜+20℃の範囲でシャルピー試験を実施し、延性脆性破面遷移温度を判定した。延性脆性波面遷移温度は−30℃未満を本発明の範囲と判断した。
(b)高温強度評価
冷延焼鈍板から、JISZ2201に規定された13号B試験片を各2本ずつ採取し、JISG0567の規定に準拠して、試験温度900℃、歪速度0.3%/minの条件で高温引張試験を実施した。900℃における0.2%耐力を測定し、2本の平均値を求めた。高温強度は、25MPa以上の強度を本発明の範囲と判断した。
(c)結晶粒界上析出物の占有率評価
冷延焼鈍板の圧延方向に垂直な任意の切断面から試料を採取し、析出物の分布を電子顕微鏡で観察を行った。図3に示した実験結果と同様に、結晶粒界長さ3mmに相当する視野を詳細に観察し、結晶粒界の長さと結晶粒界上に析出している析出物の長さを測定した。
結晶粒界の長さは、図3に示した場合と同様に、電子顕微鏡の1視野に出現した全結晶粒界長さの合計値(A)+(B)+(C)で表した。そして、結晶粒界上析出物の占有率を式(1)により算出した。算出した値が0.4以下を本発明の範囲とした。
Figure 0005396752
製造条件と得られた鋼板の延性脆性破面遷移温度、結晶粒界上析出物の占有率および900℃における高温強度を表1に示す。
なお、表1及び表2の分類区分中、HR+HA+CAは、熱間圧延、熱延板焼鈍および冷延板焼鈍において900〜700℃に曝された時間(秒)を、HA↓+CA↓は、熱延板焼鈍および冷延板焼鈍における900℃から700℃への冷却時間(秒)および700℃から500℃への冷却時間(秒)を、HA+CAは、熱延板焼鈍および冷延板焼鈍において1000℃以上に曝された時間(秒)を、Σ/Σは、結晶粒界上析出物の占有率を、DBTTは延性脆性破面遷移温度を意味している。
Figure 0005396752
Figure 0005396752
熱間圧延、熱延板焼鈍および冷延板焼鈍において900〜700℃に曝される時間、熱延板焼鈍および冷延板焼鈍における900℃から700℃への冷却時間、1000℃以上に曝される時間および冷延圧下率を本発明の範囲内とした発明例である鋼種A〜Qは、結晶粒界上析出物の占有率は0.4以下、延性脆性波面遷移温度は−30℃未満、900℃における高温強度は25MPa以上の値が得られた。
一方、比較例である鋼種V〜Zは、成分組成および/または製造条件が発明の範囲を外れているので、靱性、高温強度が不足した。
本発明のフェライト系ステンレス鋼は、靱性と高温強度に優れるため、自動車用排気系部材として好適な部材が得られる。また、自動車用排気系部材と同様の特性が要求され、主に高温環境で使用されるような種々の部材にも適用できる。
熱延以降900〜700℃に曝された時間の合計、900℃から700℃への冷却時間の合計および結晶粒界上析出物の占有率の関係を説明する図である。 結晶粒界上析出物の占有率と靭性(延性脆性破面遷移温度)の関係を説明する図である。 結晶粒界上の析出物の観察例を説明する図である。
符号の説明
1 結晶粒
2 結晶粒界
3 析出物

Claims (6)

  1. 質量%で、C<0.020%、Si≦0.25%、Mn<2.00%、P<0.060%、S<0.008%、Cr:12.0%以上、20.0%未満、Ni<1.00%、Nb:10×(C+N)%以上、0.80%未満、N<0.020%、B:0.0005%以上、0.0100%未満を含み、残部はFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、冷延鋼板の任意の切断面に出現する結晶粒及び析出物を電子顕微鏡で観察して、結晶粒界上析出物の占有率を、結晶粒界上において各析出物の占める長さと結晶粒界長さとの比として、式(1)で算出し、該占有率を0.4以下としたことを特徴とする靱性に優れたフェライト系ステンレス鋼。
    占有率=Σ(結晶粒界上において各析出物の占める長さ)/Σ(結晶粒界長さ)・・・(1)
  2. さらに、質量%で、Mo<3.00%、W<5.00%、Ti<0.5%、Zr<0.5%、Co<3%、Cu<2.00%、V<0.5%の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項記載の靱性に優れたフェライト系ステンレス鋼。
  3. 質量%で、C<0.020%、Si≦0.25%、Mn<2.00%、P<0.060%、S<0.008%、Cr:12.0%以上、20.0%未満、Ni<1.00%、Nb:10×(C+N)%以上、0.80%未満、N<0.020%、B:0.0005%以上、0.0100%未満を含み、残部はFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材を用いた、熱間圧延、熱延板焼鈍および冷延板焼鈍工程において、900〜700℃に曝される時間の合計を150秒以下、且つ熱延板焼鈍および冷延板焼鈍後の900℃から700℃への冷却時間の合計を20秒以下として製造することを特徴とする靱性に優れたフェライト系ステンレス鋼の製造方法。
  4. さらに、質量%で、Mo<3.00%、W<5.00%、Ti<0.5%、Zr<0.5%、Co<3%、Cu<2.00%、V<0.5%の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項記載の靱性に優れたフェライト系ステンレス鋼の製造方法。
  5. さらに、質量%で、Cu:0.8〜2.0%を含む鋼素材の熱延板焼鈍および冷延板焼鈍後の700℃から500℃への冷却時間の合計を20秒以下とすることを特徴とする請求項記載の靱性に優れたフェライト系ステンレス鋼の製造方法。
  6. さらに、質量%で、Cu:0.8〜2.0%を含み、且つMo<3.00%、W<5.00%、Ti<0.5%、Zr<0.5%、Co<3%、V<0.5%の1種または2種以上を含有する鋼素材の熱延板焼鈍および冷延板焼鈍後の700℃から500℃への冷却時間の合計を20秒以下とすることを特徴とする請求項記載の靱性に優れたフェライト系ステンレス鋼の製造方法。
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