JP2011147956A - Si含有鋼板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C:0.02〜0.6%、Si:0.2〜3.0%、Mn:0.2〜3.5%、P:0.02%以下(0%を含まない)、S:0.02%以下(0%を含まない)、Al:0.15%以下(0%を含まない)を夫々含有する鋼材を、加熱炉内の水蒸気濃度を15〜40体積%、酸素濃度を1.0体積%以下とした雰囲気中において、1173〜1300℃で15〜40分加熱し、デスケーリングした後粗圧延を行い、その後仕上げ圧延直前までの雰囲気を、酸素濃度が10体積%以下の窒素雰囲気として酸化する。
【選択図】なし
Description
ファイアライトはスケールの密着性を高める作用があるが、加熱炉での加熱温度が1173℃以上となるとファイアライトは液相化し、デスケーリング性が向上する。従って、加熱炉での加熱温度は、ファイアライトの溶融温度である1173℃以上とする必要がある。一方、このときの加熱温度が高くなり過ぎると、スケールロスが増大し、歩留まりが低下するため、加熱温度の条件は1300℃以下とする。この加熱温度の好ましい下限は1190℃であり、好ましい上限は1280℃である。
ファイアライトを溶融させることによって、デスケーリング性は向上するが、酸素分圧が高くなり過ぎると、溶融したファイアライトが鋼板表面に楔状に食い込み、デスケーリング性を悪化させて、不均一にファイアライトが取れ残ることになる。従って、溶融ファイアライトは酸素分圧が高いと鋼板表面に食い込み易くなるために、雰囲気の酸素濃度を1.0体積%以下とする必要がある。好ましくは0.8体積%以下である。
加熱炉内で保持時間は、15〜40分とする。15分未満では、スラブの均熱が不十分となって、スケール生成にムラが生じることになる。好ましくは20分以上、より好ましくは25分以上とする。しかしながら保持時間が長くなり過ぎると、スケールロスが生じるので、40分以下とする必要がある。好ましくは35分以下、より好ましくは30分以下とする。
通常、熱間圧延は大気雰囲気(即ち、酸素濃度が20体積%程度)中で行なわれるが、鋼板表面にファイアライトが残ると、Feの拡散が阻害されるため、大気中のような高酸素分圧下では表面酸化がより一層支配的となり、スケールの最表層に高次酸化物であるヘマタイトが不均一に厚く生成する。このヘマタイトは、硬く脆い酸化物であり、圧延中に破壊されやすいために表面性状が凹凸化し、均一冷却を阻害する要因となる。従って、ヘマタイトが発生しないように、酸素分圧の低い雰囲気とすることが好ましい。
Cは鋼材(即ち、鋼板)の強度を高めるのに有効な元素であり、また低温変態生成物の量や変態を変えることで伸びや伸びフランジ性に影響を与える元素である。Cの含有量が0.02%未満では、自動車用の高強度のニーズに応えることができなくなり、一方0.6%を超えて過剰になると、溶接性の低下を招くことになる。好ましいC含有量は、0.05%以上(特に0.1%以上)、0.3%以下(特に0.2%以下)である。
Siは鋼材の強度を確保する上で重要な元素である。本発明で対象とする鋼材では、強度確保に最低限必要なSi量としてその含有量は0.2%とした。しかしながら、Si含有量が過剰となると、延性が劣化する恐れがあり、3.0%以下とした。好ましいSi含有量は、0.5%以上、2.5%以下である。
Mnは鋼材の強度を確保するために有用な元素であり、また加工性の非常に優れた高強度鋼板としての特性を得るためには、少なくとも0.2%以上含有させる必要がある。しかしながら、Mn含有量が過剰になると、伸びの低下や炭素当量の増大を招き、また溶接性が劣化するので3.5%以下とする必要がある。好ましいMn含有量は、0.5%以上、3.0%以下である。
Pは高強度鋼板を得るために有効な元素であるが、0.02%を超えて過剰になると、圧延途中でスケールが剥離しやすくなり、鋼板の表面性状が不安定となるので、不可避的不純物として混入する場合、その上限を0.02%に止める必要がある。P含有量は、好ましくは0.01%以下である。尚、工業生産上、鋼材中のP含有量を0%にすることは困難である。
Sは熱間圧延時の熱間割れの原因となる他、スポット溶接性を著しく損なう元素である。鋼材中では、析出物として固定されるが、その量が増大すると、伸びや伸びフランジ性の劣化を招くので、不可避的不純物として混入する場合、その上限を0.02%に止める必要がある。S含有量は、好ましくは0.01%以下である。尚、工業生産上、鋼材中のS量を0%にすることは困難である。
Alは、製鋼段階での脱酸のために有効な元素である。しかしながら、Al含有量が0.15%を超えると、製造コストの上昇を招くばかりでなく、表面性状を悪化させることになる。そこでAl含有量の上限を0.15%以下と定めた。Al含有量は、好ましくは0.1%以下である。
CuとNiは、鋼材自体の強度を向上させる上で有効な元素である。特に、Feよりも酸化し難いCu、Niが表面に均一に濃化することによって、SiやMnを含有する酸化物の形態を変化させてめっき性の低下を防止する上でも有効である。しかしながら、過剰に含有させることは、経済的に見合わなくなるので、いずれも1.0%以下とすべきである。尚、これらの元素を含有させるときの、好ましい含有量はいずれも0.003%以上である。また、より好ましい上限は0.8%以下である。
Crは鋼材の焼入れ性を高め、組織強化を図る上で有効な元素である。またCrは、オーステナイト中にCを濃化させて安定度を高め、マルテンサイトを生成させるだけでなく、酸化物の鋼板表面に形成することによって、めっき性に影響を与える元素である。こうした効果を発揮させるためには、0.003%以上含有させることが好ましい。しかしながら、Cr含有量が1.0%を超えて過剰になっても、その効果が飽和し、コスト面でも不利になる。そこでCr含有量の上限を1.0%以下と定めた。より好ましくは0.8%以下とするのがよい。
Ti、VおよびNbは、いずれも炭化物を形成し、鋼材を高強度化するために有効な元素である。このうち、TiはC、Nを固定し、鋼材の深絞り性(r値)を向上させる上でも有効である。こうした効果を発揮させるためには、いずれも0.003%以上含有させることが好ましい。しかしながら、これらの含有量が1.0%を超えて過剰になると、コスト高となる上、加工性の劣化をもたらすことになる。尚、これらのより好ましい上限は0.5%以下である。
Moは鋼材の固溶強化を図る上で有効な元素である。しかしながらMo含有量が1.0
%を超えて過剰になると、製造コストを上昇させることになる。尚、こうした効果を発揮させるためには、Mo含有量は0.003%以上(より好ましくは0.01%以上)含有させることが好ましい。尚、Mo含有量のより好ましい上限は0.5%以下である。
Bは鋼材の溶接性を向上させ、また焼入れ性を高める作用のある元素である。しかしながらB含有量が0.1%を超えて過剰になると、これらの効果が飽和するだけでなく、延性を劣化させ、加工性を低下させることになる。尚、こうした効果を発揮させるためには、B含有量は0.0002%以上(より好ましくは0.0004%以上)含有させることが好ましい。尚、B含有量のより好ましい上限は0.005%以下である。
CaおよびMgは、介在物の形態を制御して、延性を高め、加工性を向上させる作用がある。しかしながら、これらの含有量がCaで0.005%、Mgで0.01%を超えて過剰になると、鋼材中の介在物が増加し、延性が劣化し、加工性が悪くなる。尚、こうした効果を発揮させるためには、いずれも0.0005%以上(より好ましくは0.0007%以上)含有させることが好ましい。尚、これらの含有量のより好ましい上限は、Caで0.004%以下、Mgで0.008%以下である。
下記表1に示す化学成分組成の鋼材スラブ(鋼種A〜U)を溶製し、下記表2に示す加熱条件(加熱炉温度、加熱炉保持時間、加熱炉内酸素濃度、加熱炉内水蒸気濃度)で加熱した後、10MPa以上の高圧水でデスケーリングを行なった。このとき、仕上げ圧延前のスケールの最表面の酸化物組成を調整するため(ヘマタイト抑制)、粗圧延後から仕上げ圧延までの雰囲気(酸素濃度)を調整した後、通常の圧延条件で圧延して板厚:3mmの鋼板とした後、水冷し、目標巻取り温度を450℃として巻取りを行なった。尚、温度管理は、放射温度計で行なった。尚、粗圧延後から仕上げ圧延までは、雰囲気中の水蒸気濃度の制御は、行なわなかった(実質5体積%未満)。
仕上げ圧延前のスケール最表面の組成を更に改善するため(ヘマタイト抑制)、粗圧延後から仕上げ圧延までの雰囲気(酸素濃度、水蒸気濃度)を下記表3に示すように調整した後、通常の圧延条件で圧延、冷却し、巻取りを行なった。このとき、加熱炉での加熱温度:1250℃、加熱炉での保持時間:25分、加熱炉の酸素濃度:0.1体積%、水蒸気濃度:25体積%とした。
Claims (8)
- C:0.02〜0.6%(質量%の意味。鋼の化学成分において以下同じ。)、Si:0.2〜3.0%、Mn:0.2〜3.5%、P:0.02%以下(0%を含まない)、S:0.02%以下(0%を含まない)、Al:0.15%以下(0%を含まない)を夫々含有する鋼材を、加熱炉内の水蒸気濃度を15〜40体積%、酸素濃度を1.0体積%以下とした雰囲気中において、1173〜1300℃で15〜40分加熱し、デスケーリングした後粗圧延を行い、その後仕上げ圧延直前までの雰囲気を、酸素濃度が10体積%以下の窒素雰囲気として酸化することを特徴とするSi含有鋼板の製造方法。
- 前記粗圧延を行なった後、仕上げ圧延直前までにおいて、酸素濃度が10体積%以下、水蒸気濃度が5〜30体積%を含む雰囲気中で酸化を行なう請求項1に記載のSi含有鋼板の製造方法。
- 前記鋼材は、更にCu:1.0%以下(0%を含まない)および/またはNi:1.0%以下(0%を含まない)を含有する請求項1または2に記載のSi含有鋼板の製造方法。
- 前記鋼材は、更にCr:1.0%以下(0%を含まない)を含有する請求項1〜3のいずれかに記載のSi含有鋼板の製造方法。
- 前記鋼材は、更にTi:1.0%以下(0%を含まない)、V:1.0%以下(0%を含まない)およびNb:1.0%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1〜4のいずれかに記載のSi含有鋼板の製造方法。
- 前記鋼材は、更にMo:1.0%以下(0%を含まない)を含有する請求項1〜5のいずれかに記載のSi含有鋼板の製造方法。
- 前記鋼材は、更にB:0.1%以下(0%を含まない)を含有する請求項1〜6のいずれかに記載のSi含有鋼板の製造方法。
- 前記鋼材は、更にCa:0.005%以下(0%を含まない)および/またはMg:0.01%以下(0%を含まない)を含有する請求項1〜7のいずれかに記載のSi含有鋼板の製造方法。
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